JP5566021B2 - アニオン型燃料電池用隔膜およびその製造方法 - Google Patents

アニオン型燃料電池用隔膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アニオン型燃料電池用隔膜及びその製造方法に関する。該隔膜は、陰イオン交換膜を形成する炭化水素系高分子材料中に陰イオン交換基を複数有する基を有する炭化水素系陰イオン交換膜からなり、含水率が高く、膜抵抗が低く、イオン伝導性に優れた有用なものである。
固体高分子型燃料電池は、イオン交換樹脂等の固体高分子を電解質として用いた燃料電池であり、動作温度が比較的低いという特徴を有する。該固体高分子型燃料電池は、図1に示されるように、それぞれ外部と連通する燃料ガス流通孔2および酸化剤ガス流通孔3を有する電池隔壁1内の空間を、固体高分子電解質膜6の両面にそれぞれ燃料室側ガス拡散電極4および酸化剤室側ガス拡散電極5が接合した接合体で仕切って、燃料ガス流通孔2を通して外部と連通する燃料室7、および酸化剤ガス流通孔3を通して外部と連通する酸化剤室8が形成された基本構造を有している。そして、このような基本構造の固体高分子型燃料電池では、前記燃料室7に燃料流通孔2を通して水素ガスあるいはメタノール等からなる燃料を供給すると共に酸化剤室8に酸化剤ガス流通孔3を通して酸化剤となる酸素や空気等の酸素含有ガスを供給し、更に両ガス拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより次のような機構により電気エネルギーを発生させている。
これまでは、固体高分子電解質膜6として陽イオン交換型電解質膜(以下、陽イオン交換膜ともいう)を使用した陽イオン交換膜型燃料電池の研究・開発が活発に行われてきたが、近年は固体高分子電解質膜6として陰イオン交換型電解質膜(以下、陰イオン交換膜ともいう)を使用した陰イオン交換膜型燃料電池が提案されている。陰イオン交換膜型燃料電池では、水酸イオンが固体高分子電解質膜6内を伝導して、酸化剤ガス室12側から燃料室11側に移動する。即ち、燃料室11に水素あるいはメタノール水溶液などの液体燃料を供給し、酸化剤ガス室12に酸素および水を供給すると、酸化剤ガス室側触媒電極層5において該電極内に含まれる触媒と酸素および水とが接触することにより水酸イオンが生成し、生成した水酸イオンが固体高分子電解質膜6内を伝導して燃料室11側に移動し、燃料室側触媒電極層4で燃料と反応して水を生成する。また、燃料室側触媒電極層4において水と同時に電子が生成し、生成した電子は外部負荷回路を通じて酸化剤ガス室側触媒電極層5へと移動する。
このような陰イオン交換膜型燃料電池は、陽イオン交換膜型燃料電池にはない、次のような利点を有する。
(i)反応場が強塩基性のため、安価な遷移金属触媒が使用可能となる。
(ii)触媒種の選択枝が広がるため、電池の高出力化や様々な燃料の使用が可能となる。
(iii)電解質中の水酸イオンの移動方向が燃料の酸化剤ガス極への透過方向と逆方向であるために酸化剤ガス極への燃料透過が抑制され、燃料と酸化剤ガスとの直接反応による過電圧増大を防止し、出力電圧の低下を抑えることが可能である。
また、陰イオン交換膜の原料として安価な炭化水素系の材料を用いて、コストダウンを図ることも可能である。このため、陽イオン交換膜型燃料電池に代わる固体高分子型燃料電池として、陰イオン交換型電解質膜を用いた燃料電池が幾つか提案されている。
このような利点を有する炭化水素系陰イオン交換膜からなるアニオン型燃料電池用隔膜において、該炭化水素系陰イオン交換膜に用いられている陰イオン交換基としては、その優れたイオン伝導性や該陰イオン交換膜を製造するための原料の入手のし易さ等から、第4級アンモニウム基が用いられることが多い。ここで、こうした第4級アンモニウム基を陰イオン交換基とする炭化水素系陰イオン交換膜(以下、この陰イオン交換膜を単に4級アンモニウム型陰イオン交換膜とも称する)は、通常、クロロメチルスチレンなどのハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体と架橋性重合性単量体とからなる重合性組成物を、多孔質膜と接触させて、該重合性組成物を多孔質膜の有する空隙部に充填させた後重合させ、次いで上記ハロゲノアルキル基を第4級アンモニウム基に変換することにより製造するのが一般的である。この結果、耐久性に優れ、メタノールなどの燃料の透過抑制に優れた陰イオン交換膜型燃料電池が提供できると報告されている(特許文献1〜2)。
しかしながら、このような4級アンモニウム型炭化水素系陰イオン交換膜を固体高分子電解質膜として実際に用いてアニオン型燃料電池を組立て運転させてみると、含水率が低く、電気抵抗が期待したほどに低減できず、また、プロトンに比べて直径が大きな水酸イオンが膜内を移動することから水酸イオン伝導性に今一歩劣り、高い電池出力が得難いことが判明した。
該陰イオン交換膜の電気抵抗を低減しようとすると、その膜厚をかなり薄くしたり、或いは含水率を高めるためその架橋度をかなり低減させイオン交換基数を増大したりしなければならないが、これらの場合、上記物性の改善に相反して膜の強度を十分に保つことが困難であったり、或いは架橋度の低減によるイオン交換基数の増大には物理的に限界があることから、やはり高い電池出力を得ることを困難にしていた。
特開平11−135137号公報 特開平11−273695号公報
このように、4級アンモニウム型炭化水素系陰イオン交換膜を固体高分子電解質膜として用いたアニオン型燃料電池において、膜の含水率が高く電気抵抗が小さく、且つイオン伝導性に優れ、これらに起因して高い電池出力が得られるものは知られていなかった。このような背景にあって本発明は、含水率が高く、電気抵抗が低く、イオン伝導性に優れた陰イオン交換膜を提供することを第1の目的とする。第2にはこの陰イオン交換膜の製造方法を提供することを、第3には高出力のアニオン型燃料電池を提供可能とする燃料電池用隔膜を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意研究を行ってきた。その結果、該課題を良好に解決可能な炭化水素系陰イオン交換膜の開発に成功し、本発明を提案するに至った。
即ち、本発明は、イオン交換樹脂が多孔質膜の空隙部に充填されてなる炭化水素系陰イオン交換膜において、該イオン交換樹脂が芳香族環を有し、かつ、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基が結合してなり、該陰イオン交換基を複数有する基における、複数の陰イオン交換基は3級アミノ基または4級アンモニウム基であって、少なくとも一つが4級アンモニウム基であり、該4級アンモニウム基の対イオンは、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンであり、かつ、多孔質膜の膜厚が5〜60μmである炭化水素系陰イオン交換膜よりなることを特徴とするアニオン型燃料電池用隔膜である。
本発明の炭化水素系陰イオン交換膜は、イオン交換容量が大きく、その結果、含水率が高く、膜抵抗についても小さい。さらには、水酸イオン伝導サイトを増加する事が可能であり、高いイオン伝導性を発現させる事が可能となる。したがって、これを隔膜としてアニオン型燃料電池に使用した場合は、膜抵抗が抑制でき、且つ電池の内部抵抗も低く、陰イオン伝導性に優れるため、高い電池出力が得られる。
本発明においてアニオン型燃料電池用隔膜として使用する炭化水素系陰イオン交換膜は、陰イオン交換樹脂が多孔質膜の空隙部に充填されてなる炭化水素系陰イオン交換膜であって、該イオン交換樹脂が芳香族環を有しており、かつ、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基が結合している。そして、該陰イオン交換基を複数有する基において、複数の陰イオン交換基は3級アミノ基または4級アンモニウム基であって、少なくとも一つが4級アンモニウム基であり、該4級アンモニウム基の対イオンは、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンである。また、陰イオン交換樹脂が空隙部に充填されている多孔質膜は、膜厚が5〜60μmのものである。
本発明において炭化水素系陰イオン交換膜とは、多孔質膜の空隙部に充填される、陰イオン交換樹脂の陰イオン交換基を複数有する基を除く母材部分が、架橋された炭化水素系重合体で構成されているものである。ここで、炭化水素系重合体とは、実質的に炭素−フッ素結合を含まず、重合体を構成する主鎖及び側鎖の結合の大部分が、炭素−炭素結合で構成されている重合体のことを言う。すなわち、上記主鎖及び側鎖を構成する炭素−炭素結合の合間にエーテル結合、エステル結合、アミド結合、シロキサン結合等により酸素、窒素、珪素、硫黄、ホウ素、リン等の他の原子が少量介在していても良い。
また、上記主鎖及び側鎖に結合する原子は、その全てが水素原子である必要はなく少量であれば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等の他の原子、又は他の原子を含む置換基により置換されていても良い。これら、炭素と水素以外の元素の量は、陰イオン交換基を除いた、樹脂を構成する全元素中40モル%以下、好適には10モル%以下であるのが好ましい。
本発明の炭化水素系陰イオン交換膜において、多孔質膜の空隙部に充填される陰イオン交換樹脂は芳香族環を有している。
このような芳香族環を有する陰イオン交換樹脂とは、該陰イオン交換樹脂の高分子鎖の単量体ユニットが芳香族環の連鎖により形成される、もしくは、側鎖に芳香族環を有する単量体ユニットから形成される高分子からなる陰イオン交換樹脂が挙げられる。なかでも、側鎖に芳香族環を有する単量体ユニットである場合、陰イオン交換樹脂を得る際にスチレンまたはスチレン誘導体を重合性単量体として用いることで、該スチレンまたはスチレン誘導体中の芳香族環にハロゲノアルキル基を置換基として導入することが容易となり、さらには陰イオン交換基を複数有する基を導入することが容易となる。
陰イオン交換基を複数有する基において、該複数の陰イオン交換基は3級アミノ基または4級アンモニウム基であって、少なくとも一つが4級アンモニウム基である。
本発明の炭化水素系陰イオン膜を構成する陰イオン交換樹脂としては、具体的には一般式(1)および/または(2)で示される骨格を有する陰イオン交換樹脂が好ましい。
Figure 0005566021
ここで、一般式(1)および(2)において、nおよびmは1〜8の整数であり、R、R、R、R、Rは炭素数1〜4の同一または異なっていてもよいアルキル基であり、RとR、RとRはそれぞれ環を形成していても良く、X は、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンを示す。
nは1〜4の整数であることが好ましく、mは2〜6の整数であることが好ましい。R、R、R、R、Rはメチル基、エチル基であることが好ましい。RとR、RとRとがそれぞれ環を形成している場合、RとR、RとRとでエチレン鎖、n−プロピレン鎖、n−ブチレン鎖を形成していることが好ましく、エチレン鎖であることがより好ましい。このとき、mも2〜4の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
一般式(1)または(2)で示される骨格を有する陰イオン交換樹脂は主鎖がスチレン骨格を有する単環式芳香族重合性単量体の繰り返し単位を含む重合体からなっており、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基が結合してなる。さらに、陰イオン交換基を複数有する基は、該芳香族環に対して4級アンモニウム基がアルキレン鎖を介して結合しており、この芳香族環に結合した4級アンモニウム基のアルキル基の少なくとも一つが3級アミノ基または4級アンモニウム基を有する置換アルキル基となっていることから、一つの側鎖に対して陰イオン交換基を複数有した構造となっている。一般式(1)で示される骨格においては陰イオン交換基を複数有する基の該陰イオン交換基は、3級アミノ基と4級アンモニウム基との混合物であり、一般式(2)で示される骨格においては陰イオン交換基を複数有する基の該陰イオン交換基は、4級アンモニウム基である。
陰イオン交換樹脂は、陰イオン交換基を有する骨格として一般式(1)で示される骨格のみを有していてもよいが、一般式(2)で示される骨格も有し、炭化水素系陰イオン交換膜中の陰イオン交換基の75モル%が4級アンモニウム基となっていることが好ましい。
このような炭化水素系陰イオン交換膜において3級アミノ基は弱塩基性のイオン交換基であり、それ自体は陰イオン交換能を有しないものの、イオン交換容量の増加により含水率を高め、膜抵抗を低減する効果が得られる。一方、4級アンモニウム基は陰イオン交換能を有しておりイオン伝導性を高める効果が得られる。従って、炭化水素系陰イオン交換膜中のイオン交換基の75%以上が4級アンモニウム基であると、陰イオン交換基の対イオンである陰イオンの濃度が高く、イオン伝導性に優れた陰イオン交換膜とすることができ好ましい。
本発明の炭化水素系陰イオン交換膜を構成する陰イオン交換樹脂には、一般式(1)または(2)で示される骨格の他に、得られる膜の緻密性を増して膜強度を上げ、さらには、燃料電池等で用いた場合にはメタノール等の燃料の透過による出力低下を抑制させるために、ジビニルベンゼン等の架橋性重合性単量体の繰り返し単位も含まれている。
なお、上記陰イオン交換樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分も適宜配合されていても良い。特に、上記一般式(1)または(2)で示される骨格や架橋性重合性単量体の繰り返し単位の他に、必要に応じてスチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等の他の単量体の繰り返し単位やジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等の可塑剤類が添加されていても良い。
陰イオン交換樹脂がその空隙部に充填される多孔質膜は、平均孔径0.005〜5μmの細孔を多数有する厚みが5〜60μmの膜状物であって、該細孔にイオン交換樹脂が充填されることによりイオン交換膜が形成可能となるよう、該細孔の少なくとも一部が表裏を連通している。
このような多孔質膜としては、ポリオレフィン系多孔質フィルムが好ましい。中でも、ポリエチレン樹脂製又はプロピレン樹脂製のものが好ましく、ポリエチレン樹脂製のものがもっとも好ましい。
本発明においてアニオン型燃料電池用隔膜として使用する炭化水素系陰イオン交換膜の製造方法を説明する。炭化水素系陰イオン交換膜は、まず、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物を、膜厚が5〜60μmである多孔質膜に含浸させた後に重合して得られる陰イオン交換膜前駆体を、ハロゲノアルキル基と反応して4級アンモニウム基を形成することが可能な3級アミノ基を単一分子中に2つ以上有するポリアミンと反応させることにより陰イオン交換膜前駆体中のハロゲノアルキル基を4級化して4級アンモニウム基とする。これにより、イオン交換樹脂が多孔質膜の空隙部に充填されてなり、該イオン交換樹脂が芳香族環を有し、かつ、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基(ただし、複数の陰イオン交換基は3級アミノ基または4級アンモニウム基であって、少なくとも一つが4級アンモニウム基であり、該4級アンモニウム基の対イオンはハロゲノイオンである)が結合したものである炭化水素系陰イオン交換膜が得られる。そして、この炭化水素系陰イオン交換膜について、4級アンモニウム基の対イオンをハロゲノイオンから、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンにイオン交換する方法により、本発明のアニオン型燃料電池用隔膜が得られる。
本発明の炭化水素系陰イオン交換膜の製造に際して、まず、ハロゲノアルキル基を有する陰イオン交換膜前駆体を得る。得られた陰イオン交換膜前駆体と、ハロゲノアルキル基と反応して4級アンモニウム基を形成することが可能な3級アミノ基を単一分子中に2つ以上有するポリアミンとを反応させ、得られた炭化水素系陰イオン交換膜において4級アンモニウム基の対イオンをハロゲノイオンから、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンにイオン交換することにより、目的とするアニオン型燃料電池用隔膜が製造できる。上記陰イオン交換膜前駆体は、多孔質膜にハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物を含浸した後重合することにより得られる。ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物重合性組成物とは、(a)ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体、(b)架橋性重合性単量体、(c)重合開始剤とからなる混合物であって、必要に応じてその他の成分を含んでいても良い。
上記炭化水素系陰イオン交換膜の製造方法において、(a)ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体としては、公知のものが制限なく使用できる。ハロゲノアルキル基としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、ヨードエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基、ヨードプロピル基、クロロブチル基、ブロモブチル基、ヨードブチル基、クロロペンチル基、ブロモペンチル基、ヨードペンチル基、クロロヘキシル基、ブロモヘキシル基、ヨードヘキシル基である。こうしたハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体の具体例としては、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、ヨードメチルスチレン、クロロエチルスチレン、ブロモエチルスチレン、ヨードエチルスチレン、クロロプロピル基、ブロモプロピル基、ヨードプロピル基、クロロブチル基、ブロモブチル基、ヨードブチル基、クロロペンチルスチレン、ブロモペンチルスチレン、ヨードペンチルスチレン、クロロヘキシルスチレン、ブロモヘキシルスチレン、ヨードヘキシルスチレンが挙げられ、このうちクロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、ヨードメチルスチレン、クロロエチルスチレン、ブロモエチルスチレン、ヨードエチルスチレン、クロロプロピルスチレン、ブロモプロピルスチレン、ヨードプロピルスチレン、クロロブチルスチレン、ブロモブチルスチレン、ヨードブチルスチレンを用いるのが、特に好ましい。
また、本発明で用いる重合性組成物は、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体とともに重合して膜状物を形成することにより、得られる膜の緻密性を増して膜強度を上げ、さらには、燃料電池等で用いた場合にはメタノール等の燃料の透過による出力低下を抑制させる目的で、(b)架橋性重合性単量も含まれている。
このような架橋性重合性単量体としては、公知のものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物やトリビニルベンゼンが用いられる。これら架橋性重合性単量体は、膜の強度を保ち、膨潤等の防止効果の発現に必要な有効量であれば幅広い範囲から採択可能であるが、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体に対する該架橋性重合性単量体の割合が多い場合は得られる陰イオン交換膜のイオン交換容量が減少し、反対に該架橋性重合性単量体の割合が少ない場合はイオン交換容量が増加することから、得られる炭化水素系陰イオン交換膜が目的とする用途にあったイオン交換容量を有するためにハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体に対する該架橋性重合性単量体の割合を決定することは重要である。一般には、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体100質量部に対して、0.1〜40質量部、好適には0.5〜25質量部配合させるのが好ましく、例えば、アニオン型燃料電池用隔膜として用いる場合には、0.1〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜15質量部配合させるのが好ましい。
さらに、重合開始剤としては、従来公知のものが特に制限なく使用される。こうした重合開始剤の具体例としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が用いられる。重合性組成物中において、これら重合開始剤の配合割合は、重合反応を遂行するために必要な有効量であれば幅広い範囲から採択可能であるが、一般には、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体100質量部対して、0.1〜20質量部、好適には0.5〜10質量部配合させるのが好ましい。
ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物を用いて陰イオン交換膜前駆体を製造する場合、重合過程において生成する塩化水素ガスや塩素ガスにより重合が阻害されることを防ぐため、これらの化合物捕捉剤としてエポキシ化合物を重合性組成物に添加することは有効であり、その配合割合は、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物100質量部に対して1〜12質量部、より好適には3〜10質量部とするのが好ましい。
このようなエポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)としては、エポキシ基を分子内に一個または複数個有する公知の化合物が制限なく使用できる。具体的には、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油などのエポキシ化植物油やこれらの誘導体、テルペンオキサイド、スチレンオキサイドやこれらの誘導体、エポキシ化α−オレフィン、エポキシ化ポリマー等が挙げられる。このようなエポキシ化合物は特開平11−158486号公報記載の方法によって得ることも出来るし、市販品(例えば、ADEKA「アデカサイザー」、花王「カボックス」、共栄社化学「エポライト」、ダイセル化学「サイクロマー」「ダイマック」、ナガセケムテックス「デナコール」)として入手することも可能である。
なお、上記重合性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分も適宜配合可能である。特に、上記ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体や架橋性重合性単量体の他に、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他の単量体や可塑剤類を添加しても良い。こうした他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が用いられる。その配合割合としては、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物100質量部に対して100質量部以下、より好適には80質量部以下、更に好適には30質量部以下とするのが好ましい。
また、可塑剤類としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等が用いられる。その配合割合としては、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物100質量部に対して50質量部以下、より好適には30質量部以下とするのが好ましい。
上記した組成の重合性組成物は、多孔質膜の空隙部に充填した後重合し、炭化水素系陰イオン交換膜前駆体とする。このような多孔質膜としては、イオン交換膜の基材として公知の如何なるものを用いても良く、多孔質フィルム、不織紙、織布、不織布、紙、無機膜等が制限なく使用でき、材質としても熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物あるいは無機物でも又はそれらの混合物製等であってもよいが、製造が容易であり、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、炭化水素系陰イオン交換樹脂との馴染みも良いという観点から、ポリオレフィン系多孔質フィルムであるのが好ましい。
このようなポリオレフィン系多孔質フィルムとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン系樹脂により製造されたものが例示される。これらのなかでも特に、ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂製のものが好ましく、ポリエチレン樹脂製のものが最も好ましい。
多孔質膜としてポリオレフィン系多孔質フィルムを用いることで、得られる陰イオン交換膜の補強部分として働くため電気抵抗を犠牲にすることなく陰イオン交換膜の物理的強度を高めることができるため、本発明において好適に用いることができる。
このようなポリオレフィン系多孔質フィルムは、例えば特開平9−216964号公報、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできるし、あるいは、市販品(例えば、旭化成「ハイポア」、宇部興産「ユーポア」、東燃タピルス「セテラ」、日東電工「エクセポール」、三井化学「ハイレット」等)として入手することも可能である。
多孔質膜の平均孔径は、得られる陰イオン交換膜の膜抵抗の小ささや機械的強度を勘案すると、一般には0.005〜5.0μmであり、0.01〜1.0μmであることがより好ましく、0.015〜0.4μmであることが最も好ましい。また、多孔質膜の空隙率は、上記平均孔径と同様の理由により、一般的には20〜95%であり、30〜80%であることがより好ましく、30〜50%であることが最も好ましい。
さらに、多孔質膜の膜厚は、膜抵抗のより小さい膜を得る観点等から5〜60μmであり、さらに、メタノール透過性の低さのバランスや必要な機械的強度を付与するということも加味すると7〜20μmであるのが最も好ましい。
なお、本発明において、多孔質膜の平均孔径は、ASTM−F316−86に準拠し、ハーフドライ法にて測定した値をいう。また、多孔質膜の空隙率は、多孔質膜の体積(Vcm)と質量(Ug)を測定し、多孔質膜の材質の密度をX(g・cm−3)として、下記の式により算出した値をいう。
空隙率=[(V−U/X)/V]×100[%]
こうした多孔質膜への重合性組成物の充填方法は、特に限定されない。例えば、重合性組成物を多孔質膜に塗布やスプレーしたり、あるいは、多孔質膜を重合性組成物中に浸漬したりする方法などが例示される。この様にして多孔質膜の空隙部に充填した重合性組成物を重合し炭化水素系陰イオン交換膜前駆体とする方法としては、一般に重合性組成物を含浸させた多孔質膜をポリエステル等のフィルムに挟んで加圧下で常温から昇温する方法が好ましい。こうした重合条件は、関与する重合開始剤の種類、単量体組成物の組成等によって左右されるものであり、特に限定されるものではなく適宜選択すれば良い。
なお、陰イオン交換前駆体を製造する方法としては、ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体ではなく、これに代えて、スチレン等のハロゲノアルキル基を導入可能な官能基を有する重合性単量体を使用し、樹脂を重合後、該ハロゲノアルキル基を導入可能な官能基に同ハロゲノアルキル基を導入して製造することも考えられる。しかし、この方法の場合、膜状物の表面からハロゲノアルキル基の導入反応が進行するため、膜厚方向においてハロゲノアルキル基を均一に導入することが困難となり、最終的に得られる炭化水素系陰イオン交換膜のイオン交換容量が不十分となり易く膜抵抗が高くなってしまう。一方、膜状物全体に均質にハロゲノアルキル基を導入するために過度の反応条件を用いると樹脂の分解が起こってしまい、緻密性が損なわれるため、最終的に得られる炭化水素系陰イオン交換膜の燃料透過抑制能が不十分となってしまい、前記アニオン型燃料電池用隔膜として好適な4級アンモニウム型炭化水素系陰イオン交換膜を製造することは難しくなる。
本発明の炭化水素系陰イオン交換膜は、上記陰イオン交換膜前駆体をさらにポリアミンと反応させることにより陰イオン交換膜前駆体中のハロゲノアルキル基を4級化して4級アンモニウム基とすることによって得られる。
このようなポリアミンは、ハロゲノアルキル基と反応して4級アンモニウム基を形成することが可能な3級アミノ基を単一分子中に2つ以上有する化合物であり、公知の如何なる化合物が制限無く使用できるが、好ましくはジアミン、トリアミン、テトラアミン、特に好ましくはジアミンが用いられる。このようなポリアミンは、たとえば下記式(3)および(4)にて示される。
Figure 0005566021
式中、Rは、4価の炭化水素骨格であり、好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは2〜6の炭化水素骨格であり、直鎖状であっても分枝状であってもよい。Y、Y、Y、Yは、それぞれ独立に−NR(R、Rはアルキル基または−NR10(R、R10はアルキル基)で示されるアミノ基)で示されるアミノ基または水素であって、かつY、Y、Y、Yの少なくとも2つはアミノ基である。
−R11−Z−R12−Z−R13−Z ・・・(4)

式中、R11、R12、R13は、2価の炭化水素骨格であり、好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは2〜6の炭化水素骨格であり、直鎖状であっても分枝状であってもよく、同一でも異なっていてもよい。Z、Zは−NR1415(R14、R15はアルキル基または−NR1617(R16、R17はアルキル基)で示されるアミノ基)で示されるアミノ基または水素であって、Z、Zは、それぞれ独立に−N(R18)−(R18はアルキル基または−NR1920(R19、R20はアルキル基)で示されるアミノ基)で示されるアミノ基であって、かつZ、Zの少なくとも1つはアミノ基である。
上記において、R、R、R14、R15、R18がアルキル基である場合、これらはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基が挙げられ、より好適にはメチル基、エチル基が挙げられる。
、R10、R16、R17、R19、R20は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基が挙げられ、より好適にはメチル基、エチル基が挙げられる。
これらの中で特に好ましいポリアミンとしては、下記一般式(5)で示されるN,N,N',N'−テトラアルキルアルキレンジアミン化合物を挙げることがきる。
Figure 0005566021
ただし、一般式(5)において、置換基R21、R22、R23、R24は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基が挙げられ、より好適にはメチル基、エチル基が挙げられる。
また、lは1〜8の整数であり、より好適には2〜6の整数である。
本発明の製造方法において、前記一般式(5)で示される化合物については特に限定されるものではないが、例えば、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,5−ペンタンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,5−ペンタンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。
その他、前記一般式(3)または(4)で示される化合物のうち、一般式(5)で示されるもの以外としては、例えばN,N,N',N',N’’,N’’−ヘキサメチルメタントリアミン、N,N,N',N',N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタメチルメタンテトラアミン、N,N,N',N',N’’,N’’−ヘキサメチル−1,1,2−エタントリアミン、N,N,N',N',N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタメチル−1,1,2,2−エタンテトラアミン、N,N,N',N',N’’,N’’−ヘキサメチル−1,1,3−プロパントリアミン、N,N,N',N',N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタメチル−1,1,3,3−プロパンテトラアミン、N,N,N',N',N’’,N’’−ヘキサメチル−1,1,4−ブタントリアミン、N,N,N',N',N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタメチル−1,1,4,4−ブタンテトラアミン、N,N,N',N',N’’,N’’−ヘキサメチル−1,1,5−ペンタントリアミン、N,N,N',N',N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタメチル−1,1,5,5−ペンタンテトラアミン、N,N,N',N',N’’,N’’−ヘキサメチル−1,1,6−ヘキサントリアミン、N,N,N',N',N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタメチル−1,1,6,6−ヘキサンテトラアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−プロパンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,4−ペンタンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,5−ヘキサンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−2,3−ブタンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−2,4−ペンタンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−2,5−ヘキサンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−2,3−ペンタンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−2,3−ヘキサンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチル−2,4−ヘキサンジアミン、2,2’−ビス(ジメチルアミノメチル)プロパン、1,1’,1’’−トリス(ジメチルアミノメチル)エタン、テトラキス(ジメチルアミノメチル)メタン等が挙げられる。
また、上記一般式(3)または(4)において、分子中に存在する2つのアミノ基が有するアルキル基同士が結合してアルキレン鎖として環を形成していてもよい。
このような化合物としては、下記一般式(6)として示される環状化合物を挙げることができる。
Figure 0005566021
一般式(6)において、p、q、rは2〜16の整数であり、好ましくは2〜4の整数であって、これらは同じでも異なっていてもよい。具体的には、エチレン鎖、n−プロピレン鎖、n−ブチレン鎖が挙げられ、より好適にはエチレン鎖が挙げられる。前記一般式(6)で示される化合物のうち、好適なものとして、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンが挙げられる。
これらの化合物のうち、入手のし易さ、ハロゲノアルキル基との反応性、得られる陰イオン交換膜の含水率の向上効果の点で、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等がより好適に用いられる。
本発明の炭化水素系陰イオン交換膜を得るためには、陰イオン交換膜前駆体中のハロゲノアルキル基1つに対してポリアミンが1分子反応するようにすることが重要である。すなわち、ポリアミンの有する複数の3級アミノ基のうちの1つのみをハロゲノアルキル基と反応させるのであって、ハロゲノアルキル基に対して反応させるポリアミンのモル比を高くする必要がある。ハロゲノアルキル基と反応させるポリアミンの量は、陰イオン交換膜前駆体中のハロゲノアルキル基に対するポリアミンのモル比で2以上、好ましくは7以上である。
陰イオン交換膜前駆体中の全ハロゲノアルキル基に対し、反応させるポリアミンのモル比が低い場合、1分子のポリアミンが有する複数の3級アミノ基が陰イオン交換樹脂前駆体に含まれるハロゲノアルキル基の複数と架橋体を形成するように反応し、得られる陰イオン交換膜のイオン交換容量は増加しない。
陰イオン交換膜前駆体中のハロゲノアルキル基とポリアミンとの反応は、陰イオン交換膜前駆体とポリアミンとの馴染みを良くする観点から溶媒中で行うことが好ましい。このような溶媒はポリアミンを溶解し、陰イオン交換膜前駆体とポリアミンによる4級アンモニウム基形成反応が進行するものであれば特に限定されない。その好適に使用できる有機溶媒を例示すればジクロルエタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ニトロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン等が挙げられる。
ポリアミンの濃度は特に限定されず、溶媒と前記化合物の組み合わせに応じて適宜決定すればよいが、1mmol・L−1〜2mol・L−1が好ましく、10mmol・L−1〜2mol・L−1が特に好ましい。ポリアミンの濃度が薄すぎる場合には、ハロゲノアルキル基とポリアミンとの接触が起こりにくくなり、1分子のポリアミンが有する複数の3級アミノ基がハロゲノアルキル基と反応してしまい、本発明の効果が得られなくなる。またポリアミンの濃度が濃すぎる場合は、陰イオン交換膜前駆体とポリアミンをなじませる溶媒の量が相対的に少なくなるためにこれらのなじみが悪くなり、4級アンモニウム基形成反応が進行しにくくなる。
反応温度は5〜60℃、浸漬時間は0.5〜72時間程度である。陰イオン交換膜前駆体とポリアミンを反応させた後は、反応に供しなかった過剰のポリアミンを除去する目的で洗浄を行ってもよく、その後乾燥させてもさせなくともよい。
前述した方法により得られる炭化水素系陰イオン交換膜が有する陰イオン交換基は、ポリアミンとハロゲノアルキル基との反応により形成された4級アンモニウム基と、ポリアミンが有する複数の3級アミノ基のうちハロゲノアルキル基との反応に用いられなかった3級アミノ基との混合物であるが、特にアニオン型燃料電池用隔膜として用いる場合には、該3級アミノ基を4級アンモニウム基に変換することにより、陰イオン交換基の75モル%以上が陰イオン交換能を有する4級アンモニウム基である炭化水素系陰イオン交換膜とすることが、陰イオン伝導性を高める観点から好ましい。
3級アミノ基を4級アンモニウム基に変換した炭化水素系イオン交換膜は、3級アミノ基をハロゲノアルカンと4級化反応させることにより得られる。4級化の方法は定法に従えばよいが、詳述すれば、炭化水素系陰イオン交換膜をヨウ化メチルやヨウ化エチルなどのハロゲノアルカンを含む溶液に浸責することで行われる。ハロゲノアルカン溶液の濃度は、特に限定されず、0.1〜2mol・L−1程度であり、また浸漬温度は5〜60℃、浸漬時間は0.5〜24時間程度である。
上記製造法により得られる炭化水素系陰イオン交換膜は、通常4級アンモニウム基の対イオンとしてハロゲノイオンを有するが、当該陰イオン交換膜をアニオン型燃料電池隔膜として用いる場合は、燃料電池の高出力を得やすいという点で4級アンモニウム基の対イオンを膜内の移動イオンとなる水酸イオンにイオン交換するか、若しくは、燃料電池発電時に触媒反応により容易に水酸イオンに置換する炭酸イオン若しくは重炭酸イオンにイオン交換して用いる


このイオン交換方法は、定法に従えばよく、水酸イオンにイオン交換する際は、上記陰イオン交換膜を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の水酸化アルカリ水溶液に浸漬することで行われる。水酸化アルカリ水溶液の濃度は、特に限定はされず、0.1〜2mol/L程度であり、また浸漬温度は5〜60℃、浸漬時間は0.5〜24時間程度である。また、炭酸イオン若しくは重炭酸イオンへのイオン交換は、水酸イオンにイオン交換した膜を空気中に放置することでも、空気中の二酸化炭素を吸収することで速やかに達成される(通常、水酸イオンから重炭酸イオンへの対イオンの変化は、室温・大気中において10時間でほぼ90%以上が置換し終える速さである)が、炭酸ナトリウム水溶液、重炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、重炭酸カリウム等の炭酸アルカリ水または重炭酸アルカリ溶液に浸漬することで水酸イオンへのイオン交換を経ることなく行うことも出来る。その際、炭酸アルカリ水溶液および重炭酸アルカリ水溶液の濃度は、特に限定はされず、0.1〜2mol/L程度であり、また浸漬温度は5〜60℃、浸漬時間は0.5〜24時間程度である。
以上説明した製造方法によれば、含水率が高く膜抵抗を低く、さらにはイオン伝導性に優れた炭化水素系陰イオン交換膜を製造可能であり、この膜は膜の機械的強度も高い。すなわち、本発明の炭化水素系陰イオン交換膜を5μmの薄いものとしたとしても、その破裂強度は、通常、0.08MPa以上を有している。このような高い破裂強度を有していることにより、陰イオン交換膜を燃料電池に組み込む際に亀裂が生じたり、ガス拡散電極として通常使用されるカーボンペーパーの繊維によってピンホールが発生したりすることが抑制でき好ましい。さらに、多孔質膜の膜厚を厚くしたり、架橋性重合性単量体の使用量を好適な範囲に増加させたりすること等により、破裂強度は、0.1MPa以上のものにすることも可能であり、さらには1.0MPaのものまでをも製造可能である。
このような陰イオン交換膜は、特にアニオン型燃料電池、電気化学式ガスセンサ、電気化学式空気清浄機、電気化学式除湿器などの電気化学デバイス用の隔膜として好適に用いられる。
本発明の炭化水素系陰イオン交換膜をアニオン型燃料電池用隔膜として用いる場合、該陰イオン交換膜の総イオン交換容量は2.0〜5.0mmol・g−1であることが好ましく、2.5〜5.0mmol・g−1であることが最も好ましい。
また、陰イオン交換膜Bにおいては、総イオン交換容量に対する4級アンモニウム基の割合(4級化率とも言う)が75%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが最も好ましい。
該陰イオン交換膜の膜抵抗は、25℃における0.5mol・L−1−NaCl水溶液中での測定で、0.005〜1.2Ω・cmであることが好ましく、0.005〜0.6Ω・cmであることが最も好ましい。
ここで、上記膜抵抗を0.005Ω・cm未満に小さくすることは現実的には困難である。他方、上記膜抵抗が1.2Ω・cmを超えるようになると、電気抵抗が大きすぎて高い電池出力が得られなくなる。
また該炭化水素系陰イオン交換膜において、陰イオン交換基の対イオンが重炭酸イオンである場合の陰イオン伝導度は、40℃における交流インピーダンス法での測定で8.0×10−3S・cm−1以上であることが好ましく、1.0×10−2S・cm−1以上であることがより好ましい。
上記製造された炭化水素系陰イオン交換膜は、必要に応じて洗浄、裁断などが行われ、定法に従って陰イオン交換型燃料電池用の隔膜として用いられる。
本発明の隔膜が採用される陰イオン交換型燃料電池としては、前記した図1の基本構造を有するものが一般的であるが、その他の公知の構造を有するアニオン型燃料電池にも勿論適用することができる。燃料としては、水素またはメタノールが最も一般的であり、本発明の効果が最も顕著に発揮されるものであるが、その他、エタノール、エチレングリコール、ジメチルエーテル、アンモニア、ヒドラジン等においても同様の優れた効果が発揮される。
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例、比較例において炭化水素系陰イオン交換膜の特性評価に用いたアニオン交換容量、含水率、膜抵抗、メタノール透過率、機械強度、燃料電池出力電圧の測定方法を以下に説明する。
1)陰イオン交換容量および4級化率、含水率
陰イオン交換膜を0.5mol・L−1−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、3級アミノ基を4級化すると共に、塩化物イオン型陰イオン交換膜とした後、0.2mol・L−1−NaNO水溶液で硝酸イオン型に置換させ遊離した塩化物イオンを、硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。
次に、同じイオン交換膜を1mol・L−1−HCl水溶液に浸積して再び塩化物イオン型とし、さらに、0.05mol・L−1−NaOH水溶液と、4mol・L−1−NaCl水溶液の1:1混合溶液に16時間以上浸積して3級アミノ基上のプロトンを中和した後、0.2mol・L−1−NaNO水溶液で硝酸イオン型に置換させ遊離した4級アンモニウム基由来の塩化物イオンを、硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置で定量した(Bmol)。
次に、同じイオン交換膜を0.5mol・L−1−NaCl水溶液に25℃下で4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、イオン交換容量、4級化率および含水率を次式により求めた。
総陰イオン交換容量=A×1000/D[mmol・g−1−乾燥重量]
4級化率=B/A×100[モル%]
含水率=100×(W−D)/D[質量%]
2)炭化水素系陰イオン交換膜の炭酸イオンならびに重炭酸イオン濃度測定
まず、炭化水素系陰イオン交換膜1.0gを1mol/L−NaCl水溶液100mlに30分浸漬した後、得られた浸漬液を0.1mol/L−フェノールフタレイン/エタノール溶液で滴定を行い、赤色から無色になる時を終点とする滴定量をV1mlとする。この滴定によって、OHイオンの中和と、CO 2−イオンのHCO イオンへの変化分が測定される。次いで、この浸漬液に0.1mol/L−ブロモクレゾールグリーン・メチルレッド混合エタノール溶液で滴定を行い、緑色から橙色になる時を終点とする滴定量をV2mlとする。この滴定によって、HCO イオンのHCO変化分が測定される。
なお、pKaの関係より、OHイオンとHCO イオンとが共存する場合はどちらか一方のイオンは実質的に無視して良いほどの極微量になることから、炭化水素系陰イオン交換膜中のOHイオンとCO 2−イオン、HCO イオンの濃度は滴定量V1とV2がそれぞれ次のような関係の時、以下のように算出される。
V1>V2の時:イオン種はOHイオンとCO 2−イオンのみ存在。
0.1×V2[ml]×10−3/膜重量[g]
=CO 2− イオン濃度[mmol/g]
0.1×(V1−V2)[ml]×10−3/膜重量[g]
=OHイオン濃度[mmol/g]
V1<V2の時:イオン種はCO 2−イオンとHCO イオンのみ存在。
0.1×V1[ml]×10−3/膜重量[g]
=CO 2− イオン濃度[mmol/g]
0.1×(V2―V1)[ml]×10−3/膜重量[g]
=HCO イオン濃度[mmol/g]
V1=V2の時:イオン種はCO 2−イオンのみ存在。
0.1×V1[ml]×10−3/膜重量[g]
=CO 2− イオン濃度[mmol/g]
3)膜抵抗
まず、陰イオン交換膜を0.5mol・L−1−NaCl水溶液に25℃下で4時間以上浸漬してイオン交換することにより塩化物イオン型陰イオン交換膜とした後、白金電極を備えた2室セルの中央に該陰イオン交換膜を置き、陰イオン交換膜の両側に0.5mol・L−1−NaCl水溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定した。同様にして陰イオン交換膜を設置せずに電極間の抵抗を測定し、これと隔膜を設置した場合の電極間の抵抗の差により膜抵抗を求めた。
電気抵抗=1000×(a−b)/100[Ω・cm
4)陰イオンの伝導性評価
陰イオン交換膜を大気中、乾燥状態で24時間以上放置したものを40℃のイオン交換水に湿潤させた後に切断し、横約6cm、縦2.0cmの短冊状の陰イオン交換膜を準備した。次いで、線幅0.3mmの白金線5本を、横方向(陰イオン交換膜の横方向と同じ方向)に0.5cm間隔で、何れも互いに平行で且つ縦方向(陰イオン交換膜の縦方向と同じ方向)に対して平行となる直線状に配置した絶縁基板を準備し、該絶縁基板の前記白金線を前記陰イオン交換膜に押し当てることにより測定用試料を作成した。
上記測定用試料について、1本目と2本目の白金線間(白金線間隔=0.5cm)、1本目と3本目の白金線間(白金線間隔=1.0cm)、1本目と4本目の白金線間(白金線間隔=1.5cm)および1本目と5本目の白金線間(白金線間隔=2.0cm)についてそれぞれ交流インピーダンスを測定した。x軸に白金線間距離をとりy軸に交流インピーダンスをとって各測定値をプロットしたときに得られるグラフから抵抗極間勾配(R)を求めると共に、下記式に基づき陰イオン伝導度(σ)を求めた。このとき、交流インピーダンスは、測定用試料を40℃、90%RHの恒温恒湿槽中で陰イオン交換膜表面にイオン交換水の水滴が存在する状態に保持し、白金線間に1kHzの交流を印加したときの交流インピーダンスとして測定した。また、膜厚(L)は陰イオン交換膜をイオン交換水で湿潤させて測定した。
δ=1/R×2.0×L
δ :伝導度[S・cm−1
L :膜厚[cm]
R :抵抗極間勾配[Ω・cm−1
なお、上記グラフにおいて、白金線間距離と交流インピーダンスとの間には直線関係(比例関係)が成立ち、測定試料における白金線と陰イオン交換膜との間には接触による抵抗(接触抵抗)はy切片として評価され、グラフの傾きから膜の比抵抗を意味する抵抗極間勾配(R)を算出することができる。本測定では、陰イオン伝導度(σ)は抵抗極間勾配(R)に基づいて求められているので、上記接触抵抗の影響は排除されている。
5)燃料電池出力電圧
分子量3万、スチレン含量60重量%からなるクロルメチルスチレン−スチレン共重合体をトリメチルアミンで4級化した後、大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に懸濁して水酸イオンにイオン交換した陰イオン交換樹脂のテトラヒドロフラン溶液(樹脂濃度5重量%)と白金とルテニウム合金触媒(ルテニウム50mol%)50重量%担持のカーボンブラックとを混合したものを、ポリテトラフルオロエチレンで撥水化処理した厚さ100μm、空孔率80%のカーボンペーパー上に、触媒が2mg・cm−2となるように塗布し、80℃で4時間減圧乾燥しガス拡散電極とした。
次に、測定する陰イオン交換膜の両面に上記のガス拡散電極をセットし、100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置した。これを図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んで燃料電池セル温度50℃に設定し、燃料極側に10重量%メタノール水溶液を、酸化極側に大気圧の酸素を200ml・min.−1で供給して出力が安定するまで繰り返し発電試験を行ない、電流密度0A・cm−2、0.1A・cm−2におけるセルの端子電圧を測定した。
(実施例1〜5)
まず、クロロメチルスチレン100質量部、57%−ジビニルベンゼン10質量部、重合開始剤(商品名:パーブチルO)5質量部、エポキシ化合物(商品名:エポライト40E)5質量部を混合して重合性単量体組成物を得た。得られた重合性組成物400gを500mlのガラス容器に入れ、この重合性組成物中に20×20cmの大きさの多孔質膜(重量平均分子量25万のポリエチレン製、膜厚25μm、平均孔径0.03μm、空隙率37%)を浸漬した。
続いて、この多孔質膜を重合性組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質膜の両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合し陰イオン交換膜前駆体を得た。元素分析の結果、該陰イオン交換膜前駆体中の塩素量は0.18mg・cm−2であり、20×20cmの大きさの陰イオン交換膜前駆体に含まれるハロゲノアルキル基のモル数は2.0mmolと算出される。
この陰イオン交換膜前駆体を、表1に示した所定濃度のポリアミンと25重量%のアセトンを含む水溶液100ml中に室温で48時間浸漬して陰イオン交換基を導入し、陰イオン交換膜を得た。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に懸濁して対イオンを塩化物イオンから水酸イオンにイオン交換し水酸イオン型炭化水素系陰イオン交換膜を得た。
これらの陰イオン交換膜の陰イオン交換容量、含水率、膜抵抗、陰イオン伝導性、膜厚、燃料電池出力電圧を測定した。結果を表2に示した。
(実施例6〜10)
実施例1〜5で得た陰イオン交換膜を、40重量%のヨウ化メチルを含むアセトン溶液100mlに室温で24時間浸積して、それぞれに残存するポリアミン由来の3級アミノ基を4級アンモニウム基に4級化した後、大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に懸濁して対イオンを塩化物イオンから水酸イオンにイオン交換した後、イオン交換水で洗浄し燃料電池用陰イオン交換膜を得た。
これらの燃料電池隔膜の陰イオン交換容量、含水率、膜抵抗、陰イオン伝導性、膜厚、燃料電池出力電圧を測定した。結果を表2に示した。
(実施例11)
実施例8において、0.5mol・L−1−NaOH水溶液の代わりに、大過剰の0.5mol・L−1−NaHCO水溶液を用いて、対イオンを塩化物イオンから重炭酸イオンにイオン交換した後は、実施例8と同様の操作を行った。
得られた燃料電池隔膜の陰イオン交換容量、含水率、膜抵抗、イオン伝導性、膜厚、燃料電池出力電圧を測定した。結果を表2に示した。
(比較例1、2)
実施例1に示したポリアミンの代わりにトリメチルアミンを用いたほかは、実施例1と同じ操作を行い、陰イオン交換膜を得た(比較例1)。次いで、この陰イオン交換膜について実施例6と同様の操作を行い、陰イオン交換膜を得た(比較例2)。
この陰イオン交換膜の陰イオン交換容量、含水率、膜抵抗、陰イオン伝導性、燃料電池出力電圧を測定した。結果を表2に示した。
(比較例3〜6)
表1に示した所定濃度のポリアミンを用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、燃料電池隔膜を得た(比較例3、4)。次いで、それぞれの陰イオン交換膜について実施例6と同様の操作を行い、陰イオン交換膜を得た(比較例5、6)。
この燃料電池隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜抵抗、陰イオン伝導性、燃料電池出力電圧を測定した。結果を表2に示した。
Figure 0005566021
Figure 0005566021
固体高分子型燃料電池の基本構造を示す概念図である。
符号の説明
1;電池隔壁
2;燃料ガス流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側ガス拡散電極
5;酸化剤室側ガス拡散電極
6;固体高分子電解質(陰イオン交換膜)
7;燃料室
8;酸化剤室

Claims (7)

  1. イオン交換樹脂が多孔質膜の空隙部に充填されてなる炭化水素系陰イオン交換膜において、該イオン交換樹脂が芳香族環を有し、かつ、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基が結合してなり、該陰イオン交換基を複数有する基における、複数の陰イオン交換基は3級アミノ基または4級アンモニウム基であって、少なくとも一つが4級アンモニウム基であり、該4級アンモニウム基の対イオンは、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンであり、該陰イオン交換膜の総イオン交換容量は2.5〜5.0mmol・g −1 であり、該陰イオン交換膜の含水率が32%以上であり、かつ、多孔質膜の膜厚が5〜60μmである炭化水素系陰イオン交換膜よりなることを特徴とするアニオン型燃料電池用隔膜。
  2. 請求項1記載の芳香族環を有する陰イオン交換樹脂が、スチレン骨格を有する単環式芳香族重合性単量体の繰り返し単位を含む重合体からなる陰イオン交換樹脂であって、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基が結合してなる炭化水素系陰イオン交換膜よりなることを特徴とするアニオン型燃料電池用隔膜。
  3. 請求項2記載の陰イオン交換膜が、一般式(1)および/または(2)で示される骨格を有する陰イオン交換樹脂からなる炭化水素系陰イオン交換膜よりなることを特徴とするアニオン型燃料電池用隔膜。
    Figure 0005566021
    一般式(1)および(2)において、nおよびmは1〜8の整数であり、R、R、R、R、Rは炭素数1〜4の同一または異なっていてもよいアルキルであり、RとR、RとRはそれぞれ環を形成していても良く、Xは、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンを示す。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のアニオン型燃料電池用隔膜において、陰イオン交換基の75モル%以上が4級アンモニウム基である炭化水素系陰イオン交換膜よりなることを特徴とするアニオン型燃料電池用隔膜。
  5. ハロゲノアルキル基を有する芳香族重合性単量体を含む重合性組成物を、膜厚が5〜60μmである多孔質膜に含浸させた後に重合して得られる陰イオン交換膜前駆体を、ハロゲノアルキル基と反応して4級アンモニウム基を形成することが可能な3級アミノ基を単一分子中に2つ以上有するポリアミンと反応させることにより、
    イオン交換樹脂が多孔質膜の空隙部に充填されてなり、該イオン交換樹脂が芳香族環を有し、かつ、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基(ただし、複数の陰イオン交換基は3級アミノ基または4級アンモニウム基であって、少なくとも一つが4級アンモニウム基であり、該4級アンモニウム基の対イオンはハロゲノイオンである)が結合したものである炭化水素系陰イオン交換膜を得、
    さらに、得られた炭化水素系陰イオン交換膜において4級アンモニウム基の対イオンをハロゲノイオンから、水酸イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンから選ばれる陰イオンにイオン交換することを特徴とする請求項1記載のアニオン型燃料電池用隔膜の製造方法。
  6. 請求項5記載のアニオン型燃料電池用隔膜の製造方法において、陰イオン交換膜前駆体中のハロゲノアルキル基とポリアミンを反応させる際のハロゲノアルキル基に対するポリアミンのモル比が2以上であることを特徴とするアニオン型燃料電池用隔膜の製造方法。
  7. 請求項5または請求項6記載のアニオン型燃料電池用隔膜の製造方法において、
    イオン交換樹脂が多孔質膜の空隙部に充填されてなり、該イオン交換樹脂が芳香族環を有し、かつ、その芳香族環に陰イオン交換基を複数有する基(ただし、複数の陰イオン交換基は3級アミノ基または4級アンモニウム基であって、少なくとも一つが4級アンモニウム基であり、該4級アンモニウム基の対イオンはハロゲノイオンである)が結合したものである炭化水素系陰イオン交換膜を得た後、
    その3級アミノ基をハロゲノアルカンと反応させることにより、陰イオン交換基の75モル%以上が4級アンモニウム基となるように、該3級アミノ基を4級アンモニウム基に変換することを特徴とする請求項4記載のアニオン型燃料電池用隔膜の製造方法。
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