以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成装置としての画像形成部1と、白紙供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから記録紙を送り出す送出ローラ43、送り出された記録紙を分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に、シート状部材としての記録紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の記録紙を画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2や、黒,イエロー,マゼンタ,シアン(K,Y,M,C)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
図2は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。また、図3は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図3においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサ10などを有している。
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサ10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
ドラムクリーニング装置15としては、弾性体からなるクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
先に示した図2において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサが配設されている。図示しない白紙供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録紙Pは、その先端がレジストローラセンサに検知された所定時間後記録紙Pの搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。この結果、記録紙Pの姿勢が修正され、画像形成との同期をとる準備が整う。このようにして、記録紙Pは、姿勢が修正されるが、その修正が上手く行われない場合もある。すると、レジストローラ対33の下流側で記録紙Pのスキューが発生する。
記録紙Pの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録紙Pを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録紙に一括2次転写され、記録紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
定着装置34に搬送された記録紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
先に示した図1において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録紙が、切換爪で記録紙の進路を記録紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部152を有している。移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどを搭載した移動体としてのキャリッジを図中左右方向に移動させることができる。そして、キャリッジを図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させてCCD等の撮像素子で読み取る。
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部151と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部151を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、シート状部材としての原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。図4に示すように、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図示のように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス154上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図1に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
図5は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。ADF51は、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
原稿セット部Aは、原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離給送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス155の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス155の下方で図示しないスキャナの内部に配設されている第1固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、第2固定読取部95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を第2固定読取部95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、b方向に揺動可能な可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサ63が原稿MSのセットを検知して、検知信号を図示しないコントローラに送信する。そして、この検知信号は、コントローラからI/Fを介してスキャナの読取制御部に送られる。
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサ又はアクチュエーター・タイプのセンサからなる第1長さセンサ57、第2長さセンサ58が保持されている。これら長さセンサにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ56によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ80が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、やがてテーブル上昇検知センサ59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ56が停止するとともに、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。コピースタートキーが押下されると、図示しない本体制御部からADF51のコントローラに原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モータ76の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
ピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82と駆動ローラ82とによって張架されており、給紙モータ76の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モータ76の正転によって図中時計回りに回転駆動されるリバースローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、リバースローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、リバースローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
給紙ベルト84やリバースローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサ72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ56の駆動力を受けているピックアップローラ80がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル54の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサ72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウト駆動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。
プルアウト従動ローラ87は、原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っており、給紙モータ76の逆転によって回転駆動される。給紙モータ76が逆転すると、プルアウト従動ローラ87と、互いに当接している中間ローラ対66における一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
プルアウト従動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサ73の直下を通過する。原稿幅センサ73は、反射型フォトセンサ等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサ72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサ72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
原稿幅センサ73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサ67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサ67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送される間での間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、読取モータ77の回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサ65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサ65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、図示しない読取制御部に対してレジスト停止信号が送信される。
レジスト停止信号を受けた読取制御部が読取開始信号を送信すると、ADF51のコントローラの制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、読取モータ77の回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モータ77のパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第1固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラから読取制御部に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1固定読取部151によって読み取られる。
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサ61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第2固定読取部95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサ61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モータ78の正転駆動が開始されて、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサ61によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モータパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モータ78の駆動速度が減速せしめられて、原稿MSがスタック台55から飛び出さないような速度で排紙される。
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサ61によって原稿MSの先端が検知された後、第2固定読取部95に到達するまでのタイミングが読取モータ77のパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラから読取制御部に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第2固定読取部95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が第2固定読取部95によって読み取られる。
読取手段としての第2固定読取部95は、密着型イメージセンサ(CIS)からなり、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦すじを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第2固定読取部95との対向位置には、原稿MSを非読取面側(第1面側)から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、第2固定読取部95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第2固定読取部95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。
次に、スキャナ150の移動読取部152で発生する不具合について説明する。
図1に示した移動読取部152は、図4に示したコンタクトガラス155上に載置された原稿の画像を、副走査方向に移動するキャリッジによってコンタクトガラス155越しに光走査するフラットベッド型の読取部である。キャリッジは、光源や反射ミラーの他、結像レンズや撮像素子までを搭載した読取部一体方式のものと、結像レンズや撮像素子を搭載していない差動ミラー方式のものとに大別される。差動ミラー方式のキャリッジを用いる場合には、結像レンズやCCD等の画像読取センサをスキャナ本体側に固定する。読取部一体方式は、光源から画像読取センサまでを一体化することで読取精度を向上させることができるが、差動ミラー方式に比べてキャリッジが大きくなったり、キャリッジ移動時の振動が大きくなったりする。これに対し、差動ミラー方式は、結像レンズや画像読取センサを搭載しない分、キャリッジの小型化を図ることができる。また、画像読取センサがスキャナ本体に固定されていることにより、キャリッジが主走査方向に変位してもその変位が画像の読み取り結果に影響を与えないことから、主走査方向にキャリッジの移動をガイドシャフトでガイドせずに、張架ワイヤー等による簡易な構成を採用することが可能である。このため、一般家庭用の複写機では差動ミラー方式が主流になっている。
差動ミラー方式では、ガイドシャフトを使用しない代わりにキャリッジの主走査方向の両端部をそれぞれ張架ワイヤーに接続し、それぞれのワイヤーを駆動することでキャリッジを副走査方向に移動させる方式が採用される。移動するキャリッジに搭載された光源から発せられた光は、原稿面で反射した後、キャリッジに搭載された反射ミラーで反射して、スキャナ本体に固定された結像レンズと撮像素子とに導かれる。このような構成においては、移動するキャリッジと、スキャナ本体に固定された結像レンズ及び撮像素子とが平行な関係で向き合っている必要がある。製造工程では、その平行が精度良く調整される。しかし、上述した張架ワイヤーは経時的な伸びを生じ、しかもその伸びの量が2つの張架ワイヤーで一律でないため、本来は主走査方向に延在すべきキャリッジの姿勢が経時的に主走査方向から傾いていく。以下、このようにキャリッジの姿勢が傾いた状態で行われる画像の読み取りを斜めスキャンと言う。
図6は、縦横の罫線画像が描かれた罫線原稿の一例を示す模式図である。図中のX方向はスキャナの主走査方向を示している。また、Y方向はスキャナの副走査方向(キャリッジの設計上の移動方向)を示している。図示のように、罫線原稿には、主走査方向に延びる複数の横線と、副走査方向に延びる複数の縦線とによるマトリクスが描かれている。このマトリクスにおける複数の横線は罫線原稿の短辺と平行な姿勢で描かれている。また、複数の縦線は罫線原稿の長辺と平行な姿勢で描かれている。このような罫線原稿をスキャナ(150)の移動読取部(152)によって読み取る際に、斜めスキャンが発生したとする。すると、読取画像のマトリクスは、全体が斜めに傾いたものにはならず、図7に示すように、マトリクス内の個々の領域の形が矩形から平行四辺形に変形したものになる。これに対し、罫線原稿がコンタクトガラス上で斜めの姿勢でセットされ、且つ副走査方向に沿って正しく走行するキャリッジによる走査が行われた場合には、読取画像のマトリクスは矩形が斜めに傾いた姿勢になる。このように、斜めスキャンが発生すると、画像全体がその傾斜角度にならって傾くのではなく、画像の形状そのものが変形してしまう。なお、図7におけるθは、罫線原稿の読取画像の主走査方向からの傾き角度を示している。罫線原稿は、横線を主走査方向に沿わせる姿勢でコンタクトガラス上にセットされた状態で読み取られている。このため、読取画像の傾き角度θは、キャリッジの姿勢の傾きによるものである。図示のように、読取画像が本来よりも時計回り方向に傾き角度θだけ傾いている場合には、キャリッジはそれとは逆に反時計回り方向に傾き角度θだけ傾いていることになる。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、図8に示す実験装置を用意した。この実験装置は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に線速Vで回転駆動せしめられる回転ドラム920と、回転ドラムの側方でドラム表面と所定の間隙を介して対向するように配設された光学式変位センサ910とを具備している。回転ドラム920の表面は、鏡面仕上げされており、拡散反射光を殆ど発生させないことから、拡散反射光を検出する後述のLED方式の光学式変位センサでは、回転ドラム920の表面移動を検出することができない。そこで、回転ドラム920の表面には、記録紙Pを巻き付けてある。回転ドラム920としては、直径100[mm]のものを用い、これを20〜200rpm(線速換算で105〜1047mm/s)の速度で回転させる。なお、同図において、矢印y方向は光学式変位センサ910との対向位置における回転ドラム920表面の移動方向を示している。また、矢印x方向は、回転ドラム920の回転軸線方向を示しており、これは矢印y方向と直交する。
光学式変位センサ910は大別すると、LED方式のものと、LD(レーザーダイオード)方式のものとに分類される。LED方式の光学式変位センサ910は、例えば図9に示すように、発光素子としてのLED911から発した光ビーム(波長λ=639nm)を、照射対象部材の表面で反射させる。そして、得られた反射光を、図示しない複数の受光素子がマトリクス状に配設された撮像モジュール912の各受光素子で受光して、各受光素子による受光パターンを得る。その後、所定の受光パターン取得周期(フレームレートの逆数)が経過した後に、再び受光パターンを得て、前回の受光パターンとの差を把握することで、照射対象部材のx方向の移動量と、y方向の移動量とを把握してそれらを一時記憶する。そして、図示しないCPU(Central Processing Unit)から所定のサンプリング周期で送られてくる読み出し命令に応じて、それらの移動量データを出力する。また、LD方式の光学式変位センサ910は、図10に示すように、発光素子としてのVCSEL(Vertical-Cavity urface-Emitting Laser)モジュール915から発したレーザー光(波長λ=832〜865nm)光を照射対象部材の表面で反射させる。LD方式がLED方式と異なる点は、コヒーレント光であるレーザー光を用いることにより、ごく微細な凸凹であっても反射光の干渉パターンが得られることである。LD方式、LED方式ともに、「Avago Technologies」社から市販されている。実験では、同社から市販されているLED方式の「ADNS−3080」を使用した。この光学式変位センサ910は、撮像モジュール912における受光素子のマトリクスが30×30[pixel]になっており、毎秒2000〜6469フレームの受光パターンを取り込んでx方向、y方向の移動量に相当する信号を出力する。LD方式においても、同等以上の性能のものが市販されている。
図11は、光学式変位センサの撮像モジュールによる画像検出結果の一例を示す模式図である。画像として、静止状態の400[dpi]の孤立1dot画像を読み込ませたときの各撮像素子からの出力(ダンプデータ)を示している。撮像素子(受光素子)の1[pixel]と画像の1[dot]とが同じ大きさで対応している。つまり、図示の撮像モジュールの基本解像度は400[dpi]であり、その視野は約1.9mm角である。解像度はレンズ特性によって変更することが可能であるので、最大検出移動度とのバランスを考慮して必要に応じて更に高解像度化することも可能である。なお、同図では、光学式変位センサとしてLED方式のADNS−3080を使用した場合の結果を示している。LD方式では画像を直接検出することはできないが、基本解像度は同じである。
図12は、光学式変位センサの一般的な配設態様を説明するための模式図である。光学式変位センサは、自らの発した光の照射対象となる照射対象部材が移動している一方で自らが停止している場合には、照射対象部材のX−Y座標上の変位を検知する。また、自らが移動している一方で、照射対象部材が停止している場合には、自らのX−Y座標上の変位を検知する。何れの場合においても、通常は、図示のように、撮像モジュールにおける複数の受光素子の横並び方向であるα方向をX方向に沿わせるとともに、複数の受光素子の縦並び方向であるβ方向をY方向に沿わせる姿勢で、光学式変位センサを配設する。このように配設した光学式変位センサのα方向用の出力端子からは、例えば所定のサンプリング周期内で被検対象がX方向に3画素分だけ移動すると、「3」を示す信号が出力される。また、光学式変位センサのβ方向用の出力端子からは、例えば所定のサンプリング周期内で被検対象がY方向に4画素分だけ移動すると、「4」を示す信号が出力される。光学式変位センサでは、このように、被検対象の変位量に相当する画素値が整数(離散値)で出力される。つまり、光学式変位センサは、被検対象の変位量を1画素単位で検知する仕様になっている。
図13は、上述した実験装置における光学式変位センサの配設態様を説明するための模式図である。実験装置では、図示のように、被検対象としての回転ドラムの表面移動方向であるy方向に対して、撮像モジュールのα方向やβ方向を傾ける姿勢で、光学式変位センサ(910)を配設している。なお、実験に用いた光学式変位センサの撮像モジュール912は、複数の受光素子のマトリクスが30×30[pixel]になっているが、同図では、便宜上、16×16[pixel]で示している。
同図に示す姿勢で光学式変位センサ910を配設した状態で、回転ドラム920を回転させてその表面をy方向に移動させると、光学式変位センサ910のα方向用の出力端子や、β方向用の出力端子から、それぞれほぼ同じ値の出力がなされる。これは、先に示した図13において、被検対象のα方向への移動量をα、β方向への移動量をβで示した場合に、例えば、被検対象がy方向に「α2+β2」の平方根と同じ量だけ移動する毎に、光学式変位センサが被検対象のα方向の1画素分の移動と、β方向の1画素分の移動とを検知するからである。実験装置では、被検対象としての回転ドラム920の表面はx方向に移動しないので、ドラム表面のy方向への移動量は、次式によって表される。
図14は、実験装置の光学式変位センサ910からのα方向変位の出力波形を示すグラフである。この出力波形は、α方向を、回転ドラム920の表面移動方向であるy方向に沿わせる姿勢で光学式変位センサ910を配設し、回転ドラム920を419[mm/s]の線速で回転させたときに得られたものである。出力のサンプリング周期は1[ms]としている。被検対象を419[mm/s]の速度でy方向(図8参照)に移動させながら、1[ms]周期でサンプリングを行うと、光学式変位センサ910のα方向変位の出力は、「6」、「7」あるいは「8」の整数値が得られることがわかる。光学式マウス用のセンサとして使用する場合には、このような出力が便利であるが、被検対象の変位を連続的に把握する場合には、1画素よりも細かな変位も捉えることが望ましい。そこで、本発明者らは、光学式変位センサからの出力値を所定時間内で平均化したものを変位の連続量として扱うことを考えた。なお、回転ドラム920の表面移動方向であるy方向と、光学式変位センサ910のβ方向とを一致させた場合も、センサからのβ方向変位の出力波形は同様のものが得られる。
センサ出力の平均化を行う上で、どの程度の数のサンプリングデータに対して平均をとればよいのかを知るために、まず、1000個のサンプル数で平均変位量を求めた。この平均変位量を基準変位量として、様々な平均算出サンプル数で求めた平均変位量の基準変位量に対する相対値を求めた。この相対値と、平均算出サンプル数との関係を図15に示す。平均算出サンプル数が1000である場合の平均変位量は、基準変位量そのものであるので、同図において、平均算出サンプル数が1000である場合の相対値は1になっている。平均算出サンプル数が少なくなるほど、グラフの振幅が大きくなる。相対値に対する振幅の大きさが±1%以内になる条件でみると、20個のサンプルで平均をとれば(20サンプル周期分)、安定した結果が得られることがわかった。そこで、光学式変位センサからの出力を20サンプル毎に平均して平均変位量を求めることにした。
図16は、光学式変位センサからの出力を20サンプル毎に平均化した平均変位量と、回転ドラム920の線速との関係を示すグラフである。−1〜1[m/s]に渡る速度範囲にて、速度と平均変位量との関係が良好な相関を示していることがわかる。なお、同図では、α方向の変位量を示すセンサ出力の平均変位量と、速度との関係を示したが、β方向についても、同様の関係が成立する。
本発明者らは、次に、図13に示した角度θを0[°]から徐々に大きくしていった場合における、α方向の平均変位量と、β方向の平均変位量と、上記数1の数式によって求められる合成変位量との関係を調べる実験を行った。この結果を図17に示す。実験装置では、照射対象部材となる回転ドラム920の表面がy方向にしか移動しないので、合成変位量はドラムのy方向の移動量と一致する。図示のように、光学式変位センサ910の図10の状態に対する傾きを示す角度θが0〜6[°]の範囲では、α方向の平均変位量がほぼゼロになっているのに対し、β方向の平均変位量がほぼ飽和状態にある。角度θが0〜6[°]の範囲では、β方向がドラム表面移動方向であるy方向に一致するか、あるいは、ほぼy方向に沿うので、y方向の移動しか検知していないことになる。つまり、角度θが0〜6[°]の範囲では、照射対象部材(あるいは光学式変位センサ自体)の斜め移動を検知することができないことを示している。これに対し、角度θが45[°]の付近になると、α方向の平均変位量が角度θ=0[°]の条件に比べてかなり大きくなっており、y方向の変位と、x方向の変位とをそれぞれ感度良く検知していることがわかる。
角度θにおけるα方向の変位に対する感度の有無を一元的に表す目的で、次式で求められる数値を、α方向の変位に対する感度の指標値として用いることにした。
回転ドラム920を互いに異なる3つの線速モードで回転させた場合における、α方向の変位に対する感度の指標値と、角度θと、線速との関係を図18に示す。図示のように、角度θが0〜4[°]の範囲では、α方向の変位に対する感度が全く無いが、角度θが5[°]を上回り始めると、α方向の変位に対する感度が現れ始める。そして、角度θが10[°]あたりになると、α向の変位に対する感度が飽和付近まで上昇するが、角度θが10〜25[°]あたりでは、飽和感度が安定して得られていまい。角度θを[°]よりも大きく設定することで、α方向の変位に対する飽和感度を安定して得られることがわかった。この理由は後述するが、α方向とβ方向とで、センサ感度が同等でないことによる。
次に、本発明者らは、光学式変位センサ910を45[°]の角度θで傾けた姿勢で、回転ドラム920を回転させた状態を基準にして、光学式変位センサ910を角度θの方向に微小角度回転させて、センサ出力を取得する実験を行った。光学式変位センサ910を角度θの方向に僅かに回転させる(この時点で角度θが45°から変化する)ことで、移動する照射対象部材(あるいは光学式変位センサ自体)がスキューを起こしているのと同じ状態を擬似的につくりだすことができる。スキューとは、移動する照射対象部材(あるいは光学式変位センサ自体)が搬送方向であるy方向に向けて真っ直ぐに進まずに、y方向から傾いた状態で進む現象である。微小なスキュー角を検出することが可能か否かを調べるために、光学式変位センサ910からの出力に基づいて算出されるα方向の平均変位量(α)と、β方向の平均変位量(β)とを、次式に代入して、擬似的なスキューによるスキュー角の指標となる傾き指標値Aを算出した。
この傾き指標値Aにおいて、α方向の平均変位量αと、β方向の平均変位量βとの差をとるのは、両方向の変位量を加味してスキュー角φを捉えることで、検出精度を高める狙いからである。また、前述の差を、合成変位量(α2+β2の平方根)で除算しているのは、速度の影響を除外する規格化を行うためであり、この規格化により、スキュー角φを速度から分離して検出することが可能になる。
傾き指標値Aと、光学式変位センサ910のx方向の移動量によって求められるスキュー角φとの関係を図19に示す。0[°]近傍ではスキュー角φを1/6[°]というかなり細かい刻みで変化させているが、この細かい変化を敏感に捉えることができている。よって、光学式変位センサ910を45[°]の角度θで傾けた姿勢にすることで、被検対象のスキュー角φを1/6[°]以下の分解能で検出し得ることが確かめられた。
図20は、角度θを0[°]にした姿勢で配設した光学式変位センサの撮像モジュール912と、被検対象のスキュー角φ1との関係を示す模式図である。なお、実験では、上述したように、30×30[pixel]の撮像モジュールを用いているが、同図では、便宜上、撮像モジュール912のマトリクスを16×16[pixel]で示している(後述する図21も同様)。あるサンプリングタイミングで、β方向の下端に位置する受光素子913によって被検対象の特徴箇所(丸印)が捉えられている。この特徴箇所が、次のサンプリングタイミングで、β方向の上端に位置する受光素子913によって捉えられたとする。このとき、被検対象の搬送方向であるy方向に対する移動方向の傾き(φ1の正接)は、図示のように1/15である。この1/15よりも小さな傾きを、図示の態様で検出することはできない。
図21は、角度θを45[°]にした姿勢で配設した光学式変位センサの撮像モジュール912と、被検対象のスキュー角φ2との関係を示す模式図である。光学式変位センサの角度θを45[°]に傾けると、図示のように、被検対象のy方向に対する移動方向の傾きを、1/21の分解能で検出することが可能になる。つまり、角度θを45[°]にした条件では、角度θを0[°]にした条件に比べて、より小さなスキュー角を検出できるようになる(φ1>φ2)。
より小さなスキュー角を検出できるようになると、より少ないサンプリング数で、安定した平均変位量を求めることが可能になる。例えば、上述したように、角度θを45[°]にした条件では、1[m/s]のサンプリング周期で20個のサンプリングを行った平均をとることで、安定した平均変位量を求めることが可能になることは既に述べた通りである。ところが、角度θを0[°]にした条件では、サンプリング数をもっと増やさないと、安定した平均変位量を得ることができないのである。
光学式変位センサは、わずか30×30[pixel]の検知範囲内で例えば0〜1[m/s]程度の速度変化を連続して検出できるように、被検対象の速度に応じてフレームレートを変化させるのが一般的である。被検対象の速度が比較的速い場合には、フレームレートを大きくする(受光パターン取得周期を短くする)一方で、被検対象の速度が比較的遅い場合には、フレームレートを小さくするのである。ここで、被検対象がスキューを引き起こしていると、被検対象が搬送方向(y方向)だけでなく、搬送方向と直交する方向(x方向)にも移動するようになるが、単位時間あたりにおいて、x方向への変位量はy方向への変位量に比べて僅かである。また、x方向への移動速度も、y方向への移動速度に比べて僅かである。例えば、スキュー角φが1[°]の場合では、x方向への移動速度はy方向への移動速度の17[%]程度である。y方向への移動速度が比較的速いことに対応して、フレームレートを比較的大きくすると、各フレームにおいて、y方向への変位を的確に捉えることが可能になるが、x方向においては、x方向の速度に比べて受光パターン取得周期が短すぎることから、各フレームでx方向の変位を捉え難くなる。但し、角度θを45[°]にしてより小さなスキュー角φを捉え得るようにすると、0[°]にした場合に比べて、各フレームでのx方向の変位を捉え易くなるので、比較的少ないサンプリング数で安定した平均変位量を算出することが可能になるのである。
本発明者らは、次に、光学式変位センサからのα方向用の出力と、β方向用の出力とを用いて算出される、スキュー角φの指標となる傾き指標値について検討した。上述した数3の数式に基づいて算出される傾き指標値Aもその一つであるが、この他にも、スキュー角φと良好な相関を示す傾き指標値がいくつか考えられた。何れも、三角関数に基づいて、α方向の変位量と、β方向の変位量と、それらの合成変位量とから算出される。その1つとして、「sinφ」を検討した。これは、「x方向の変位量/合成変位量」という数式によって求めることができる。また、他の傾き指標値として、「sinφ−cosφ」を検討した。sinφは「x方向の変位量/合成変位量」であり、cosφは「y方向の変位量/合成変位量」であることから、その解は、両方向の変位量の差に基づいて算出されることになる。更に、他の傾き指標値として、「tanφ」を検討した。周知のように、「tanφ=sinφ/cosφ」という関係が成立し、この式の右辺のsinφやcosφを各種の変位量で表すと、右辺を、「x方向の変位量/y方向の変位量」という式に変形することができる。つまり、この傾き指標値は、x方向の変位量とy方向の変位量との比に基づいて算出されるものである。これら3つの傾き指標値とスキュー角φとの関係を理論演算によって求めた結果を、図22に示す。なお、同図においては、「tanφ」から1を減算したり、「sinφ」から「sinπ/4」を減算したりしているが、これは、3つのグラフをそれぞれ原点を通るように位置調整したためである。3つのグラフを傾きが大きい順に並べると、「tanφ」、「sinφ−cosφ」、「sinφ」となる。つまり、スキュー角φを感度良く検出するには、「tanφ」が有利である。また、3つのグラフを直線性の良い順で並べると、「sinφ−cosφ」、「sinφ」、「tanφ」となる。つまり、そのままでスキュー角φを把握するには、「sinφ−cosφ」が高精度の観点から有利である。
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
図23は、スキャナ150を示す概略構成図である。また、図24は、スキャナ150の内部構成を示す斜視図である。実施形態に係る複写機のスキャナ150は、差動ミラー方式によってキャリッジを移動させるものである。スキャナ150内部の主走査方向の一端側には、第1張架ワイヤー165が主走査方向に延在しながら、副走査方向の両端部でそれぞれ折り返す姿勢で張架されている。また、スキャナ150内部の主走査方向の他端側においても、同様にして、第2張架ワイヤー166が張架されている。第1張架ワイヤー165の先端側領域には、第1キャリッジ160の主走査方向の一端部が固定されている。また、第2張架ワイヤー165の先端側領域には、第1キャリッジ160の主走査方向の他端部が固定されている。このようにして、第1キャリッジ160が第1張架ワイヤー165と第2張架ワイヤー166とによって支持されている。
第1張架ワイヤー165及び第2張架ワイヤー166は、第1キャリッジ160の他に、第2キャリッジ161も支持している。具体的には、第2キャリッジ161の主走査方向の一端と他端とには、それぞれリールが回動自在に固定されている。そして、第2キャリッジ161の一端に回動自在に固定されたリールには、第1張架ワイヤー165の後端側領域が巻き掛けられている。また、第2キャリッジ161の他端に回動自在に固定されたリールには、第2張架ワイヤー166の後端側領域が巻き掛けられている。このようにそれぞれのリールに巻き掛けられることで、それら張架ワイヤーは第2キャリッジ161を支持している。
また、第1張架ワイヤー165の張架方向の中央付近は、第1プーリー168に巻き掛けられており、且つ、第2張架ワイヤー166の張架方向の中央付近は、第2プーリー169に巻き掛けられている。そして、それらプーリーは、何れも軸部材167に固定されており、軸部材167と一体となって回動する。この軸部材167には、それらプーリーの他に、ベルトプーリー170が固定されており、このベルトプーリーには、スキャナモータ171によって駆動されるVベルト172が巻き掛けられている。スキャナモータ171が回転駆動すると、その駆動力がVベルト172とベルトプーリー170とを介して、第1プーリー168や第2プーリー169に伝わる。これによって第1プーリー168、第2プーリー169が回転すると、第1キャリッジ160や第2キャリッジ161が主走査方向に前進する。また、スキャナモータ171の逆転によって第1プーリー168、第2プーリー169が逆転すると、第1キャリッジ160や第2キャリッジ161が主走査方向に後退する。
スキャナモータ171としては、エンコーダーを内蔵するサーボモータやステッピングモータなどからなるものを採用している。なお、第2キャリッジ161の前進量や後退量は、第1キャリッジ160の前進量や後退量の半分である。つまり、第2キャリッジ161の移動速度は第1キャリッジ160の移動速度の半分である。
第1キャリッジ160は、光源としてのキセノンランプ160aや、第1反射ミラー160bを支持体によって支持している。そして、キセノンランプ160aから発した走査光を、コンタクトガラス155を通してガラス上の原稿に照射する。原稿面で反射した光は、コンタクトガラス155を先とは逆方向に通過して第1キャリッジ160の反射鏡としての第1反射ミラー160bで反射する。
第1キャリッジ160の第1反射ミラー160bで反射した走査光は、第1キャリッジ160と対向しながら移動する第2キャリッジ161の第2反射ミラー161a、第3反射ミラー161bで順次反射して、スキャナ本体に固定された結像レンズ163に導かれる。そして、同じくスキャナ本体に固定された撮像素子164の素子面に結像されて、画像として読み取られる。
差動ミラー方式では、移動中の第1キャリッジ160や第2キャリッジ161に主走査方向へのガタツキが生じても、それによって原稿と撮像素子164との相対位置がずれることはない。このため、第1キャリッジ160や第2キャリッジ161の主走査方向へのガタツキはある程度許容される。このため、図示のような張架ワイヤーで張架するだけで、ガイドシャフトなどのガイド機構を設けないのが一般的である。
図25は、参考例に係る複写機のスキャナの一部における正面からの眺めを示す部分正面図である。同図において、第1キャリッジ160の支持体における主走査方向の他端部には、光学式変位センサ198が固定されている。この光学式変位センサ198は、コンタクトガラス155の縁部を下側から支持するフレーム部材195の下面に向けて光を照射する。照射対象部材としてのフレーム部材195は、副走査方向において、コンタクトガラス155の縁部の全領域を支持するものである。つまり、副走査方向(図25の紙面に直交する方向)に延在しており、第1キャリッジ160が副走査方向のどのような位置に移動しても、第1キャリッジ160上の光学式変位センサ198に対向している。なお、実施例に係る複写機のスキャナにおける光学式変位センサ198の固定の状態については、後に図29を用いて説明する。
光学式変位センサ198の発光素子から発せられた光は、フレーム部材195の下面で反射した後、光学式変位センサ198の撮像モジュールによって受光される。光学式変位センサ198は、先に説明した実験で用いたものと同様のものである。光学式変位センサ198は、撮像モジュールにおける各受光素子の受光量の変化に基づいて、自らの水平平面上での変位、即ち、第1キャリッジ160の水平平面上での変位を検知する。
フレーム部材195としては、板金あるいは樹脂からなるものであって、その下面が鏡面仕上げされていない非光沢面となっているものを用いている。従来から使用されている一般的なフレーム部材195は、外部に露出する面である上面については光沢処理を施すことはあっても、下面については成型直後の非光沢面のままとすることが殆どであるため、従来から一般的に使用されてきたものでよい。必要に応じて、フレーム部材195の下面を粗面仕上げにして、光学式変位センサ198の読取解像度そのままの検知分解能を実現できるようにしてもよい。
図26は、スキャナ150の電気回路の一部を示すブロック図である。第1キャリッジ(160)に搭載された光学式変位センサ198から出力される変位情報は、図示しないCPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Onry Memory)等から構成される読取制御部199に取得される。また、撮像素子164によって読み取られた画像情報も、読取制御部199に取得される。読取制御部199は、光学式変位センサ198からの出力を所定周期で取得した結果に基づいて、第1キャリッジ(160)の副走査方向の移動量を算出したり、本来は主走査方向に延在する姿勢であるべき第1キャリッジの姿勢の傾き量(以下、キャリッジ傾き量という)を算出したりする。この際、上述した張架ワイヤーの伸びがある場合には、検出されるキャリッジ傾き量に主走査方向への変位情報がノイズとして混入する可能性があるので、フィルタ処理後の平均を使って後処理するのが望ましい。キャリッジ傾き量が所定の閾値を超えた場合には、ユーザーに向けて警報が発信される。これにより、過剰な傾き走行によるキャリッジや周囲部材の破損の発生を回避することができる。
なお、キャリッジ傾き量については、次のようにして求めることが可能である。即ち、例えば、光学式変位センサ198の撮像モジュールにおけるマトリクスの縦並び方向を副走査方向に沿わせる姿勢で光学式変位センサ198を第1キャリッジ上に固定したとする。この場合、第1キャリッジの姿勢が傾いていなければ、マトリクス内でフレーム部材195の特徴箇所(高反射率箇所又は低反射率箇所)を検知する受光素子の変化軌跡が縦並び方向に沿うことになる。つまり、第1キャリッジの移動軌跡として、マトリクスの縦並び方向に沿ったものが検知される。これに対し、第1キャリッジの姿勢が傾いていると、マトリクス内でフレーム部材195の特徴箇所を検知する受光素子の変化軌跡が縦並び方向から傾くことになる。つまり、第1キャリッジの移動軌跡として、マトリクスの縦並び方向から傾いたものが検知される。そして、その移動軌跡の傾き量は、第1キャリッジの姿勢の傾き量と同じになる。よって、第1キャリッジの移動軌跡の傾き量により、キャリッジ傾き量を把握することができる。後述するように、光学式変位センサ198の撮像モジュールにおけるマトリクスの縦並び方向から45°傾いた方向を副走査方向に沿わせる姿勢で、光学式変位センサ198を配設した場合には、副走査方向から45°傾いた方向が第1キャリッジの正規の移動軌跡となる。
また、読取制御部199は、算出した第1キャリッジの移動量に基づいて、同期情報を構築する。この同期情報は、後述する間欠読取動作を行う際に、撮像素子から送られてくる画像部分情報と、その画像部分情報の副走査方向における位置とを関連付けるためのものである。更に、読取制御部は、キャリッジ傾き量に基づいて、傾きに起因する読取画像の湾曲を補正するための画像補正量を算出したり、算出結果に基づいて画像データを補正したりする。
撮像素子(164)から送られてくる画像情報で表現される画像は、キャリッジ傾き量に応じた湾曲を引き起こしている。この画像情報における各画素の位置情報を(X,Y)で表し、キャリッジ傾き量(角度)をθで表すと、傾きのないキャリッジによって読み取られるべき画像の各画素の位置情報である正規位置情報(X’,Y’)は、(X’=X,Y’=Y(1−sinθ))となる。この関係に基づいて、読取制御部199は、画像データを補正して、結果を記憶装置197に記憶させる。
図27は、通常読取動作における第1キャリッジの移動速度の経時変化を示すグラフである。通常読取動作は、原稿画像の読み取り開始から終了まで、第1キャリッジや第2キャリッジを一時停止させないで連続して移動させながら読取を行う動作である。第1実施形態に係る複写機では、白黒の2値で画像を読み取る場合には、読取解像度や原稿の大きさにかかわらず、読取データを確実に一時記憶バッファ内に蓄えることが可能であるので、通常読取動作での読み取りが行われる。
通常読取動作では、図示のように、移動を開始した第1キャリッジは、原稿の先端位置に到達する前に、速度Vまで加速される。そして、速度Vで等速移動している状態で、原稿画像の読み取りを開始する。第1キャリッジが原稿の後端の位置まで移動して画像の読み取りが終わると、第1キャリッジの減速が開始されて、やがてその移動が停止する。その後、読み取り時よりも速い速度で、読み取り開始位置まで第1キャリッジが戻される。第1キャリッジの原点への復帰は、モータを最大トルクで駆動した状態で行われている。
図28は、間欠読取動作における第1キャリッジの移動速度の経時変化を示すグラフである。第1実施形態に係る複写機では、カラー画像を多値で読み取る場合には、読取解像度や原稿の大きさによっては、読取データを一時記憶バッファ内に収容しきれなくなる場合があり、この場合に間欠読取動作が行われる。
間欠読取動作では、図示のように、画像の読み取り中に、一時記憶バッファ内の空き容量が少なくなってくると、第1キャリッジの移動を一時停止させる。このとき、第1キャリッジを一気に停止させるのではなく、徐々に減速させていく。そして、一時記憶バッファから一時記憶データが吐き出されてバッファ空き容量に余裕がでてくると、第1キャリッジの移動を再開する。このとき、第1キャリッジを速度Vまで徐々に加速していく。このような第1キャリッジの加速と減速とを繰り返すので、第1キャリッジの副走査方向の位置と、撮像素子のレートとを同期させる必要がある。従来は、モータの駆動量の基づいて第1キャリッジの副走査方向の位置を把握していたが、モータの駆動量と第1キャリッジの移動量との関係には誤差が生ずる。これにより、位置誤差が生じて画像の曲がりを引き起こしていた。そこで、本複写機においては、光学式変位センサ198によって第1キャリッジの副走査方向の移動量を実際に計測している。この計測結果に基づくことで、第1キャリッジの副走査方向の位置を精度良く把握して、位置誤差による画像の曲がりを抑えることができる。
先に示した図25において、第1キャリッジ160のキセノンランプ160aから発せられた光が、フレーム部材195の下面まで届くと、光学式変位センサ198による第1キャリッジ160の変位量の検知に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、キセノンランプ160aからの光がフレーム部材195まで届いてしまう場合には、フレーム部材195の代わりに、光学式変位センサ198の下方に存在する部材を照射対象部材として利用することが望ましい。
図29は、第1キャリッジ160の下方に、第1キャリッジ160を張架ワイヤーとともに支持するガイドレール194を設け、これを光照射部材として利用した、実施形態に係る複写機のスキャナにおけるガイドレール周辺部を示す正面図である。この構成では、キセノンランプ160aから発せられた光の鉛直方向下方への進行が第1キャリッジ160の支持体によって遮られる。このため、ガイドレール194の長手方向の全域のうち、第1キャリッジ160の直下に位置する領域には、キセノンランプ160aからの光が届かない。光学式変位センサ198は、ガイドレール194におけるかかる領域を光照射対象にするように配設されている。
図30は、実施形態に係る複写機の変形例におけるスキャナ150を示す概略構成図である。また、図31は、同複写機のスキャナ150の内部構成を示す斜視図である。このスキャナ150は、読取部一体方式によってキャリッジを移動させるものである。移動読取部152は、キャリッジ162を有しており、このキャリッジ162は、支持体により、キセノンランプ160a、第1反射ミラー162b、第2反射ミラー162c、第3反射ミラー163d、結像レンズ162e、撮像素子162fなどを支持している。差動ミラー方式とは異なり、結像レンズ162eや撮像素子162fもキャリッジ162に搭載した構成である。かかる構成では、移動中のキャリッジ162に主走査方向のガタツキが生ずると、コンタクトガラス155上の原稿と、撮像素子162fとの相対位置が主走査方向に変化してしまう。このため、キャリッジ162の主走査方向へのガタツキを極力発生させなくする工夫が必要になる。変形例に係るスキャナ150では、キャリッジ162をガイドレールに係合させることで、主走査方向へのガタツキを抑えている。
ガイドレールとしては、スキャナ150内部の主走査方向の一端側に固定されて副走査方向に延在している第1ガイドレール171と、主走査方向の他端側に固定されて主走査方向に延在している第2ガイドレール172とが設けられている。第1ガイドレール171は、キャリッジ162の主走査方向の一端部に係合しながら、その一端部を自らの上で副走査方向にスライド移動させる。また、第2ガイドレール172は、キャリッジ162の主走査方向の他端部に係合しながら、その他端部を自らの上で副走査方向にスライド移動させる。
キャリッジ162の移動は、スキャナモータ174の回転駆動力を、タイミングベルト173を介してキャリッジ162に伝達することによって行われる。スキャナモータ174としては、エンコーダーを内蔵するサーボモータやステッピングモータからなるものを用いている。
キャリッジ162の主走査方向の他端部には、光学式変位センサ198が固定されている。この光学式変位センサ198は、実施形態に係る複写機と同様に、フレーム部材の下面で反射させた光に基づいて、第1キャリッジ162の副走査方向の移動量を検知する。
かかる構成のスキャナ150においては、キャリッジ162を2本のガイドレールによってガイドすることで、キャリッジ162の傾きを引き起こさないようになっているが、間欠読取動作時において、キャリッジ162の副走査位置の把握誤差を発生させるおそれがある。そこで、実施形態と同様に、光学式変位センサ198により、キャリッジ162の副走査方向への移動量を検知し、検知結果に基づいてキャリッジ162の副走査方向の位置を把握している。
これまで、いわゆるタンデム方式によってフルカラー画像を形成する複写機の例について説明してきたが、単色画像だけを形成する画像形成装置や、タンデム方式とは異なる方式によって多色画像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。
以上、実施形態に係る複写機においては、光学式変位センサ198からの出力に基づいて、移動体たる第1キャリッジ160の副走査方向の移動量を算出する移動量算出手段や、これによる算出結果に基づいて第1キャリッジ160の副走査方向の位置を把握する位置把握手段として機能するように、読取制御部199を構成している。かかる構成では、第1キャリッジ160の副走査方向の移動量を実際に検知して、その結果に基づいて第1キャリッジ160の副走査方向の位置を把握することで、把握位置誤差の発生を抑える。これにより、間欠読取動作時の把握位置誤差に起因する画像の曲がりの発生を抑えることができる。
また、実施形態に係る複写機においては、光学式変位センサ198からの出力に基づいて、第1キャリッジ160の副走査方向(設計上の移動方向)からの傾き量を算出する傾き量算出手段や、これによる算出結果に基づいて、画像の読み取りデータを補正する補正手段として機能させるように、読取制御部199を構成している。かかる構成では、斜めスキャンに起因する画像の歪みを補正して画像劣化を抑えることができる。
また、実施形態に係る複写機においては、原稿載置部材たるコンタクトガラス155の周縁部を支持する支持部材としてのフレーム部材195を、照射対象部材として兼用しているので、専用の照射対象部材を設けることによるコストアップを解消することができる。
また、実施形態に係る複写機においては、副走査方向に対して、複数の受光素子のマトリクスにおける縦並び方向、横並び方向をそれぞれ斜めに傾ける姿勢で、光学式変位センサ198を第1キャリッジ160に固定している。かかる構成では、既に説明したように、被検対象である第1キャリッジ160の変位量を光学式変位センサ198の1画素未満の単位で検知することが可能になる。
また、実施形態に係る複写機においては、第1キャリッジ160の副走査方向における単位時間当たりの移動量[画素/単位時間]と、光学式変位センサ198の解像度[dpi]との比を整数比にするように、第1キャリッジ160の駆動を制御するように、読取制御部199を構成している。かかる構成では、次に説明する理由により、第1キャリッジ160の変位量を精度良く検知することができる。即ち、図12を用いて説明したように、光学式変位センサ198は、第1キャリッジ160の変位量を1画素単位で検知する仕様になっているので、移動量と解像度との比を整数比にすることで、整数比にしない場合に比べて検知誤差を少なくすることができるのである。