JP5560953B2 - ヒドラジン含有ゲル化物及びこれを用いたヒドラジンの生成方法 - Google Patents
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即ち、本発明の要旨は、(A)窒素原子上にアルキル置換基を有していてもよいポリアクリルアミド及びそのアルカリ金属塩、又はこれらの架橋重合体及び(B)ヒドラジンを含むゲル化物であって、成分(B)に対する成分(A)の割合(重量比)が0.001〜0.1であることを特徴とするヒドラジン含有ゲル化物、に存する。
本発明のヒドラジン含有ゲル化物におけるポリマーは、(A)アミド基、カルボキシル基及びその塩、並びにエーテル結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の基又は結合を有するポリマーである。アミド基、カルボキシル基及びその塩、並びにエーテル結合は、水素結合によりヒドラジンの流動性を抑制することが可能であり、これらの基は1種のみを含んでいても、複数を含んでいてもよい。なかでも、ヒドラジンに対する安定性とヒドラジンとの親和性の点から、アミド基とカルボキシル基又はその塩が好ましい。上記アミド基、カルボキシル基及びその塩、並びにエーテル結合の少なくとも何れかを有するポリマーとしては、これらの基又は結合を有していれば特に限定されず、ポリアクリルアミド、ポリ(N-メチルアクリルアミド)、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-エチルアクリルアミド)、ポリ(N-プロピルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)、ポリ(N-ビニルピロリドン)等の鎖状又は環状アミド基を有するポリマー(好ましくは、窒素原子上にアルキル置換基を有していてもよいポリアクリルアミド又はポリビニルアミド);ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム等のカルボキシル基又はその塩を有するポリマー(好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸及びそれらのアルカリ金属塩);ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリアリルメチルエーテル、ポリ(ポリエチレングリコール)モノビニルエーテル等のエーテル結合を有するポリマー;及びこれらとポリ(メチレンビスアクリルアミド)、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルエーテル、ポリ(ポリエチレングリコールジビニルエーテル)等の二官能モノマーとの架橋体であるポリマーを挙げることができる。尚、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを意味する。
尚、本発明のポリマーは、通常、これを構成する(モノマーに由来する)繰り返し単位の全てがアミド基、カルボキシル基及びその塩、並びにエーテル結合を含むが、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の基及び結合を含まないモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよく、その割合は、通常、20モル%以下、好ましくは10モル%以下程度である。ここで、上記の基及び結合を含まないモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、スチレンスルホン酸、ジビニルベンゼン、アリルアミン等が挙げられる。
本発明のヒドラジン含有ゲル化物におけるポリマー(A)とヒドラジン(B)の割合は、ポリマーの種類によって一概には言えないが、成分(B)に対する成分(A)の割合(重量比)が、0.001〜1.5である。
好ましくは、0.01以上、更に好ましくは0.02以上であり、一方、1以下が好ましく、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.1以下である。この値が小さすぎると、ポリマー量が少なくなり過ぎることによりゲル化が不十分となり、従って、ヒドラジンの固定化が十分に行なわれないこととなる。一方、この割合が大きすぎると、ゲル化に対する効果に変わりはない一方使用するポリマーが多いことにより経済的に不利となり、又、ゲル化物の容量が大きくなる。
本発明のゲル化物は、ヒドラジン利用の際にpHを調整するなどの点から塩を加えた方が望ましい場合においては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等の無機塩を含んでいてもよい。これらの化合物は、通常、ゲル調製の際に、水溶液として用いられ、ゲル中に取り込まれる。
加熱する場合の温度は、通常、30℃以上、好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、一方、通常、130℃以下、好ましくは100℃以下である。この温度が低すぎるとゲルからのヒドラジンの遊離が十分に行なわれない場合があり、この温度が高すぎると、ポリマーが劣化する場合がある。加熱する場合の圧力は特に限定されず、常圧でよいが、加熱と併せて下記の加圧を行ってもよい。
水を加える場合の加える水の量は、通常、ゲル化物の重量に対して、0.1倍以上、好ましくは0.5倍以上、更に好ましくは1倍以上であり、一方、通常、10000倍以下であり、好ましくは1000倍以下、更に好ましくは500倍以下である。この割合が大きすぎると生成するヒドラジン濃度の低下により経済的に不利となる場合があり、小さすぎるとヒドラジンの生成が遅くなる場合がある。尚、水を加える場合には、ゲルに加水後、必要により攪拌し、吸引濾過等により、ゲルを分離することができる。
本発明によるヒドラジンの固定化を具体例で示すと、例えばポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は35%ヒドラジン水溶液中で温度に応答して、ゲル、均一な溶液、ヒドラジン水溶液とポリマーの相分離状態と形体が変化するが、約0℃以下では均一な溶液、約0〜60℃では流動性を持たないゲル、60℃以上ではヒドラジン水溶液とポリマーに分離する。
合成例1
50mlナスフラスコにN-イソプロピルアクリルアミド(0.57g、5mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(5mg、0.03mmol)を測りとり、マグネチックスターラーバーを投入し三方コックをとりつけた。系内を十分に窒素置換し、 蒸留精製したジオキサン(5ml、59mmol)を加えた。60℃の油浴で加熱しながらマグネチックスターラーで4時間撹拌した。4時間後、室温まで冷却し、200ml 三角フラスコに貧溶媒としてジエチルエーテル150mlをとり、再沈殿精製を行った。沈殿物を吸引ろ過により回収し、これを一日減圧乾燥しポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を0.54g(収率95.6%)で得た。
シャーレにアクリルアミド(1.00g、14.1mol)と架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド(0.05g、0.3mmol、又は0.1g、0.6mmol)を測りとり、これを蒸留水 20mlに溶かした。5mlサンプル瓶に過硫酸カリウム(0.1g0.37mmol)を測りとり、これを蒸留水10mlに溶かした。これを先ほどのシャーレに加え、撹拌しながらN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンを約20滴添加した。これを室温で1日静置しゲルを得た。これを蒸留水で洗浄した後、メタノールで洗浄し不溶部を減圧乾燥し架橋ポリアクリルアミドを得た。ここで、N,N’-メチレンビスアクリルアミドを0.05g用いた場合の架橋率は2.1%、0.1g用いた場合の架橋率は4.2%であり、それぞれの収量(収率)は0.868g(82.6%)および0.81g(73.6%)である。
(ヒドラジンの固定化/ゲルの生成)
5mlサンプル瓶に35wt%ヒドラジン水溶液2.5mlを加え、そこに合成例1で合成したポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)0.04gを測りとり、冷凍庫内で−20℃に冷却し溶解させた。これを室温で放置すると、溶液がゲル化物に変化した。この際、ヒドラジンに対するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の重量比(本発明で規定する成分(B)に対する成分(A)の割合(重量比))は0.046である。
上記で得られたゲル化物を、90℃油浴中で加熱するとポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)が凝集し、ヒドラジン水溶液と分離した。この溶液を−20℃まで冷却すると、再び均一な溶液に戻った。先のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)とヒドラジン水溶液が分離した状態では、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)とヒドラジンはろ過などで分離できた。
尚、溶液とゲルの変化(昇温速度:1℃、降温速度:3℃)は、昇温及び降温時の透過率の変化で確認した。結果を図1に示す。図から、昇温により透過率が90%から0%に低下し(ゲル状態に相当)、ゲルを降温することにより透過率が100%に回復(溶液状態に相当)し、ゲル化によるヒドラジンの固定化が行なわれていることがわかる。
(ヒドラジンの固定化/ゲルの生成)
5mlのサンプルビンに、合成例2で得た架橋度の異なる架橋ポリアクリルアミド(表−1に記載)10mgをとり、無水ヒドラジン(202mg)を加えた。室温で6時間整置すると、ヒドラジン含有ゲル化物を得た。ヒドラジン吸収量(ゲル中のヒドラジン量)は、添加したヒドラジン量と吸光光度計を用いて測定した洗浄液中のヒドラジン量の差として求めた。ヒドラジン量の測定は、ASTM Manual of Industrial Water, D1385-78,376 (1979年)の手法に従って、過剰のパラジメチルアミノベンズアルデヒドをもちいた呈色反応を行ったあとの、455nmの吸光度を基準に求めた。
得られたゲルを100mlの蒸留水で洗浄し、吸引ろ過した。ろ液中のヒドラジン量を定量し、放出されたヒドラジン量を求めた。
結果を表−1に示す。
(ヒドラジンの固定化/ゲルの生成)
架橋アクリル酸ナトリウム10mgを水で膨潤させてから無水ヒドラジン101mg(100μl)を加え、室温で12時間放置した。ゲルを100mlの水で洗浄し、洗浄液
のヒドラジン濃度を吸光光度計で測定し、ゲルに含まれたヒドラジン量を求めた。ヒドラジン量の測定は、実施例2,3と同じ手法により求めた。
結果を表−2に示す。
5mlサンプル瓶に、架橋ポリアクリル酸ナトリウム50mgを測りとり、これに無水ヒドラジン50.5mgを加えた。室温で8日間静置した後、約200mlの蒸留水で洗浄し、吸引ろ過によりヒドラジンを含むゲル化物を得た。ヒドラジン吸収量(ゲル中のヒドラジン量)は、43mgであった。又、本発明で規定する成分(B)に対する成分(A)の割合(重量比)は、1.16であった。尚、ヒドラジン吸収量(ゲル中のヒドラジン量)は添加したヒドラジン量と吸光光度計を用いて測定した洗浄液中のヒドラジン量の差として求めた。ヒドラジン量の測定は、ASTM Manual of Industrial Water, D1385-78,376 (1979年)の手法に従って、過剰のパラジメチルアミノベンズアルデヒドをもちいた呈色反応を行ったあとの、455nmの吸光度を基準に求めた。
Claims (3)
- (A)窒素原子上にアルキル置換基を有していてもよいポリアクリルアミド及びそのアルカリ金属塩、又はこれらの架橋重合体及び(B)ヒドラジンを含むゲル化物であって、成分(B)に対する成分(A)の割合(重量比)が0.001〜0.1であることを特徴とするヒドラジン含有ゲル化物。
- 更に水を含むことを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン含有ゲル化物。
- 請求項1又は2に記載のヒドラジン含有ゲル化物からヒドラジンを遊離して遊離のヒドラジンを生成する方法であって、ヒドラジンの遊離を、(1)加熱する、(2)加圧する、及び(3)水を加える、の少なくとも何れかの方法により行なうことを特徴とするヒドラジンの生成方法。
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