JP5560356B1 - プレス機械及びプレス機械の制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス運転中にサーボモータの電流値が所定の閾値を超えるような場合でも、生産が継続されるプレス機械を提供する。
【解決手段】プレス機械は、回転運動の駆動源であるサーボモータと、サーボモータへ駆動電流を供給するサーボアンプと、駆動電流を検出する電流検出手段と、回転運動の回転角を検出する回転角検出手段と、速度設定手段と、判定手段と、速度変更手段とを備える。速度設定手段は、回転運動を定義する、回転角と該回転角における回転速度との対応関係を設定することによって、プレス生産速度を設定する。判定手段は、電流検出手段により検出された駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定する。速度変更手段は、電流検出手段により検出された駆動電流が第1の閾値以上となる場合、速度設定手段により設定された回転速度の全てを同じ割合で低下させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、プレス機械及びプレス機械の制御方法、特に、電動サーボプレス及び電動サーボプレスの制御方法に関する。
プレス機械としての電動サーボプレスは、サーボモータ、動力変換機構、スライド等を有している。動力変換機構は、サーボモータの回転駆動力をスライドの上下往復動に変換する。そして、このスライドの往復動によって上型と下型との間でワークがプレス加工される。
このような電動サーボプレスにおいては、例えば特許文献1に示されるように、スライド位置に対応する仮想回転角度のそれぞれにおける目標速度を作業者が事前に設定することができる。作業者は、このような設定を行うことによって、最適な生産速度を設定することができる。
電動サーボプレスは、従来のフライホイールを利用した機械式プレス機と比べて、このような柔軟性を有する。しかし、サーボモータに高負荷がかかる設定がされてしまうこともある。このような設定がされたまま、プレス機械を稼動しつづけると、サーボアンプがオーバーヒートしてしまうため、異常停止してしまう。
そこで、特許文献2に示されるように、自動運転中にモータ負荷電流を含む過去の実測値に基づいて熱量積算値を求め、モータ負荷電流もしくは熱量積算値が所定の閾値を超えたときは、スライドを一時停止させる技術が開発されている。
特開2004−058152号公報 特開2004−017122号公報
しかし、プレス運転中にモータ電流値が閾値を超えるような場合に、プレス機械を止めて再度設定を行うのは時間がかかる。したがって、プレス運転中にモータ電流値が閾値を超えるような場合でも、プレス機械を止めずに生産が継続されることが好ましい場合もある。
本発明の目的は、プレス運転中にモータ電流値が閾値を超えるような場合でも生産を継続することが可能なサーボプレス機械を提供することにある。
本発明の第1側面に係るプレス機械は、駆動源により供給される回転運動を、動力変換機構を介してスライドの往復運動に変換するプレス機械であって、サーボモータと、サーボアンプと、電流検出手段と、回転角検出手段と、速度設定手段と、判定手段と、速度変更手段とを備える。サーボモータは、回転運動の駆動源である。サーボアンプは、サーボモータへ駆動電流を供給する。電流検出手段は、駆動電流を検出する。回転角検出手段は、回転運動の回転角を検出する。速度設定手段は、回転運動を定義する、回転角と該回転角における回転速度との対応関係を設定することによって、プレス生産速度を設定する。判定手段は、電流検出手段により検出された駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定する。速度変更手段は、電流検出手段により検出された駆動電流が第1の閾値以上となる場合、速度設定手段により設定された回転速度の全てを同じ割合で低下させる。
判定手段は、往復運動開始後、所定回数の往復運動がされる間に、電流検出手段により検出された駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定するとよい。そして、速度変更手段は、判定手段が、駆動電流が第1の閾値以上となると判定する場合、所定回数の往復運動終了後、速度設定手段により設定された回転速度の全てを所定の割合だけ低下させるとよい。この所定回数とは、例えば、1回である。
速度変更手段によって変更された回転速度の全てを含む集合を第1速度集合とする場合、判定手段は、回転速度の全てを含む集合が第1速度集合に変更されてから所定回数の往復運動がされる間に、電流検出手段により検出された駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定するとよい。そして、速度変更手段は、判定手段が、駆動電流が第1の閾値以上となると判定する場合、回転速度の全てを含む集合が第1速度集合に変更されてから所定回数の往復運動が終了した後、第1速度集合に含まれる回転速度の全てを所定の割合だけ低下させるとよい。この所定回数とは、例えば、1回である。
前述のプレス機械は、駆動電流が第1の閾値よりも高い第2の閾値以上となる場合、サーボモータを停止する非常停止手段をさらに備えるとよい。
前述のプレス機械は、駆動電流が前記第1の閾値以上となる回転角を表示する表示手段をさらに備えるとよい。
表示手段は、回転角を円周上の領域で示すルーレット表示部を有するとよい。そして、ルーレット表示部は、駆動電流が第1の閾値以上となる回転角を表す領域を強調表示するとよい。
ルーレット表示部は、強調表示される領域の色を変えて表示するとよい。
ルーレット表示部は、強調表示される領域を点滅させて表示するとよい。
表示手段は、状態表示部と、生産速度変更履歴表示部とをさらに有するとよい。状態表示部は、速度変更手段によってプレス生産速度が変更されたことを表示するとよい。生産速度変更履歴表示部は、速度設定手段によって設定されたプレス生産速度と、速度変更手段によって変更されたプレス生産速度とを表示するとよい。
前述のプレス機械は、判定手段及び速度変更手段の動作の有効、若しくは無効を設定するモード設定手段をさらに備えるとよい。
モード設定手段は、判定手段及び速度変更手段の動作を共に無効とする第1のモード、判定手段の動作のみを有効として、駆動電流が第1の閾値以上となる回転角を表示手段が表示する第2のモード、及び、判定手段及び速度変更手段の動作を共に有効とする第3のモードのいずれか1つを選択可能であるとよい。
前述のプレス機械は、第1の閾値を設定する閾値設定手段をさらに備えるとよい。
閾値設定手段は、設定者の認証手段を有するとよい。
所定の割合は、1%であるとよい。
本発明の第2側面に係るプレス機械の制御方法は、サーボモータにより供給される回転運動を、動力変換機構を介してスライドの往復運動に変換し、サーボモータへ駆動電流を供給するサーボアンプを含むプレス機械の制御方法であって、回転運動を定義する、回転角と該回転角における回転速度との対応関係を設定することによって、プレス生産速度を設定するステップと、プレス生産速度に応じてプレス動作を行うステップと、駆動電流を検出するステップと、検出された駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定するステップと、検出された駆動電流が第1の閾値以上となる場合、設定された回転速度の全てを同じ割合で低下させるステップと、を含む。
本発明に係るプレス機械及びプレス機械の制御方法は、サーボモータの駆動電流が第1の閾値以上となっても、プレス生産速度を低下させて駆動電流を低下させる。その結果、プレス機械は、サーボモータの駆動電流が第1の閾値以上となっても、生産を継続することができる。
本発明の一実施形態によるプレス機械のシステムブロック図。 動力変換機構の動作を説明するための図。 作業者がモード設定操作を行う場合の表示器15が表示する画面の一例を示す図。 本実施形態に係る電動サーボプレスの動作のフローチャート。 スライドの位置とACサーボモータの駆動電流との関係の一例を示したグラフ。 図5のようなACサーバモータの駆動状態において、生産速度を減少させた場合の一例を示すグラフ。 判定処理と速度変更処理がされた場合に表示器15が表示する画面の一例を示す図。
[構成]
図1は、本発明の一実施形態による電動サーボプレスのブロック図である。この電動サーボプレス1は、スライド2と、ACサーボモータ3と、サーボアンプ4と、を有している。ACサーボモータ3とスライド2との間には、周知の減速機6及び動力変換機構7が設けられている。動力変換機構7としては、例えば、ドラムタイプ、エキセンタイプ、リンクタイプ等が知られている。
図2は、動力変換機構7の動作を説明するための図である。この電動サーボプレス1では、図示しない基台に設置されるボルスタ8上に下型9aが固定される。この下型9aの上方において、下型9aと相対する上型9bがスライド2に固定されている。スライド2は、アーム7aを介して軸7bを中心として回転する回転体7cに接続されている。なお、回転体7cは、模式的に図示されている。スライド2は、図示しない本体フレームに昇降自在に支持されている。軸7bは、減速機6の出力であり、ACサーボモータ3により回転駆動される。
また、この電動サーボプレス1は、NC装置10と、非常停止回路11と、開閉器12と、リニアスケール13と、を有している。
NC装置10は、CPU10a、入力回路10b、記憶回路10c、出力回路10d、フィードバック回路10e等を有している。入力回路10bには、表示器15、サーボモータ3の回転を検出するパルスコーダ18が接続されている。また、入力回路10bには、サーボアンプ3から、サーボアラームが入力される。サーボアラームは、ACサーボモータ3の駆動電流が所定の閾値(以降の説明では、この閾値を第2の閾値と呼ぶ)を超えた場合に出力される。記憶回路10cには、予め設定された各種のパラメータやプログラムが格納されている。出力回路10dからの信号はサーボアンプ4及び非常停止回路11に入力されている。また、フィードバック回路10eにはサーボアンプ4からの信号(ACサーボモータ3の駆動電流)が入力されている。NC装置10は、CPU10aにより記憶回路10cに格納されているプログラムを実行して、必要に応じて、パルスコーダ18からの出力を利用して回転体7cの回転角(図2の上死点Uからの時計回りの角度θ)を算出する。また、NC装置10は、CPU10aにより記憶回路10cに格納されているプログラムを実行して、ACサーボモータ3の駆動電流が第2の閾値より低い所定の閾値(以降の説明では、この閾値を第1の閾値と呼ぶ。なお、第1の閾値とは、電動サーボプレス1の連続運転を可能とするACサーボモータ3の最大電流を表し、例えば定格電流値を示す。)を超えているか否かの判定処理を行う。さらに、NC装置10は、CPU10aにより記憶回路10cに格納されているプログラムを実行して、ACサーボモータ3の駆動電流が第1の閾値以上となる場合、生産速度の変更処理を行う。判定処理、生産速度変更処理の詳細については後述する。
非常停止回路11の出力側には開閉器12が接続されている。また、動力供給電源20とサーボアンプ4との間には、それぞれノーマルオープンタイプのスイッチ21が設けられている。スイッチ21は、非常停止回路11によって制御される開閉器12によって閉じられる。
リニアスケール13は、スライド2の絶対位置を検出するものである。リニアスケール13からの信号は、NC装置10のフィードバック回路10eに入力される。NC装置10は、このフィードバック信号に基づいてサーボアンプ4に制御信号を出力し、スライド2を位置決めする。
表示器15へは、NC装置10の出力回路10dから表示データが出力される。表示器15は、現在の生産速度やスライド2の現在位置などに加え、起動ボタン、速度設定画面、サーボモータの駆動電流が第1の閾値以上となる場合に生産速度を減少させる場合の生産速度制限状態表示画面などを表示する。表示器15は、好ましくはタッチパネルを有するモニターである。なお、表示器15は、起動スイッチ、速度設定、モード設定(詳細は後述)などの各種入力を行うスイッチ、キーなどを別途備えてもよい。
[スライドモーション設定操作]
作業者が電動サーボプレス1を操作するにあたり、まず、表示器15のタッチパネル等を操作して生産速度を設定する。生産速度の設定とは、例えば、上述の特許文献1に示されている段数、各段の目標角と各目標角における回転体7cの回転速度との対応関係等の設定である。この設定の一例を表1に示す。ここで、目標角とは、図2に示される角度θにより表される。回転速度は、ACサーボモータ3の許容最大速度によって実現される回転速度に対する割合(0%〜100%)で設定される。設定された各種値は、記憶回路10cに記憶される。このような設定によって、スライドモーション(回転運動の定義)が定まる。
Figure 0005560356
[生産速度設定]
スライドモーションが設定されると、1分あたりのスライド2の往復回数(strokes/min:spm)によって一般的に表されるプレス生産速度が自動的に演算されて、表示器15に表示される。
[モード設定操作]
生産速度を設定した後、作業者は必要に応じてタッチパネル等を操作して以下に述べるモードを設定する。ここで、電動サーボプレス1に設定されるモードとは以下の3つである。
(1)第1のモード:判定処理、生産速度変更処理を共に無効
NC装置10が、ACサーボモータ3の駆動電流が第1の閾値以上となるか否かの判定処理と、ACサーボモータ3の駆動電流が第1の閾値以上となる場合に行われる生産速度の変更処理を共に実行しないモードである。従来の電動サーボプレスと実質的に同等の動作を行う。
(2)第2のモード:判定処理のみを有効。生産速度変更処理を無効
NC装置10が、ACサーボモータ3の駆動電流が第1の閾値以上となるか否かの判定処理のみを実行するモードである。この場合、駆動電流が第1の閾値以上となる場合の回転角θが表示器15によって表示される。
(3)第3のモード:判定処理、生産速度変更処理を共に無効
NC装置10が、ACサーボモータ3の駆動電流が第1の閾値以上となるか否かの判定処理と、ACサーボモータ3の駆動電流が第1の閾値以上となる場合に行われる生産速度の変更処理を共に実行するモードである。この場合でも、駆動電流が第1の閾値以上となる場合の回転角θが表示器15によって表示される。
図3は、作業者がモード設定操作を行う場合の表示器15が表示する画面の一例である。この設定画面30は、ラジオボタン31〜33と、テキストボックス34とを有する。ラジオボタン31は、作業者が電動サーボプレス1を上述の第1のモードに設定したい場合にONとされる。ラジオボタン32は、作業者が電動サーボプレス1を上述の第2のモードに設定したい場合にONとされる。ラジオボタン33は、作業者が電動サーボプレス1を上述の第3のモードに設定したい場合にONとされる。ラジオボタン31〜33は、択一的に選択されるので、複数のボタンが同時にONとされることはない。なお、ラジオボタン31〜33は、グラフィックユーザインターフェース(GUI)の一例であり、3つのモードから1つのモードを選択可能な他のGUIが用いられてもよい。
テキストボックス34は、上述の第1の閾値を設定するためのインターフェースである。第1の閾値は、プレス作業者が行うのではなく、電動サーボプレス1のメインテナンス作業者によって設定されることが望ましい。したがって、テキストボックス34の編集にあたっては、認証に成功した者だけが行われる。すなわち、例えば、表示器15は、テキストボックス34へのタッチ操作等を検出すると、表示器15は、パスワード入力画面を表示する。そして、メインテナンス作業者のみが知っているパスワードが入力され、認証に成功した場合に限って、テキストボックス34の編集画面が表示される。そして、メインテナンス作業者が当該編集画面を利用して、第1の閾値の編集を行う。
なお、通常のプレス作業者は、第1の閾値の編集を行うことはできないが、表示されている第1の閾値の値を見ることはできる。したがって、その値を参照して、プレス作業者は生産速度を設定することができる。
以上のように設定されたモード、第1の閾値は、記憶回路10cに記憶される。なお、作業者がデフォルトの設定を許容する場合、本設定操作が省略されてもよい。例えば、第3のモードがデフォルトのモードであり、作業者が第3のモードで電動サーボプレス1を動作させたい場合、本設定操作が省略される。
[プレス動作]
上述の設定作業を行った後、作業者が起動ボタンを操作すると、スライド起動信号がNC装置10に入力される。これにより、スイッチ21は閉じられ、サーボアンプ4に電力が供給される。図4は、上述の起動操作後からの本実施形態に係る電動サーボプレス1の動作のフローチャートである。
スライド起動信号がNC装置10に入力されると、電動サーボプレス1は設定された生産速度に応じたプレス動作を行う(ステップS1)。具体的には、記憶回路10cに記憶されているスライドモーションの設定データに基づいて、速度指令(サーボモータ3の回転を指令する電圧指令)及びサーボモータ3の制御を有効にする指令が出力回路10dからサーボアンプ4に出力される。そして、サーボアンプ4は、動力供給電源20から供給される電力を、速度指令に応じた駆動電力信号に変換してサーボモータ3に出力する。また、サーボアンプ4には、サーボモータ3に内蔵されたパルスコーダ18からのパルス信号がフィードバックされている。そして、このサーボアンプ4によって、パルス信号から算出されるモータ回転速度(スライドの駆動速度に対応)と速度指令との偏差が小さくなるようにサーボモータ3が制御される。そして、リニアスケール13からのフィードバック信号は、フィードバック回路10eを介してNC装置10に入力される。そして、このフィードバック信号とACサーボモータ3の駆動電流のフィードバック信号とに基づいて、NC装置10はサーボアンプ4に制御信号を出力し、これによりスライド2が目標位置に位置決めされる。
非常停止状態、もしくは、生産終了になると(ステップS2でYES)、電動サーボプレス1は、動作を終了する。非常停止状態とは、プレス作業中に、図示しない非常停止ボタンからの停止信号、サーボアンプ4からのサーボアラーム等が入力回路10bに入力された状態を言う。非常停止状態になると、NC装置10から非常停止回路11に停止信号が出力される。この停止信号を受けて非常停止回路11から開閉器12に対して制御信号が出力され、これにより、スイッチ21は開状態となる。このため、サーボアンプ4に対する電力が遮断され、サーボモータ3も回転が停止する。なお、作業者が終了ボタンを操作するなどによって生産終了が指示されても、出力回路10bからサーボアンプ4に対して起動停止信号が送信され、サーボモータ3の回転が停止する。
非常停止状態でも生産終了でもない場合(ステップS2でNO)、以下の処理が継続的に実行される。まず、NC装置10は、記憶回路10cに記憶されたモードを参照して判定処理が有効か否かを判定する(ステップS3)。具体的には、記憶回路10cに記憶されたモードが第1のモードである場合、NC装置10は判定処理が無効であると判定し、それ以外の場合、NC装置10は判定処理が有効であると判定する。判定処理が無効である場合(ステップS3でNO)、ステップS1に戻る。
判定処理が有効である場合(ステップS3でYES)、NC装置10は、フィードバック回路10eに入力されるACサーボモータ3の駆動電流を監視する(ステップS4)。図5は、予め設定された生産速度によってスライド2を動作させた場合のスライド2の位置とACサーボモータ3の駆動電流との関係の一例を示したグラフである。図5では、横軸が時間、縦軸がスライド2の上下方向の位置もしくは駆動電流の大きさを示している。図5の一点鎖線は、第1の閾値を示す。図5の例では、上死点Uから下死点Bに向かい始めたばかりの回転角(図中にt1で表された区間、θ≒30°)と、下死点Bから上死点Uに移動する中間付近の点(図中にt2で表された区間、θ≒270°)において、モータ駆動電流が第1の閾値TH以上である。
つぎに、NC装置10は、駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定する(ステップS5)。駆動電流が第1の閾値に満たない場合(ステップS5でNO)、ステップS1に戻る。駆動電流が第1の閾値以上である場合(ステップS5でYES)、NC装置10は、駆動電流が第1の閾値以上である回転角を記憶回路10cに記憶する。そして、表示器15は、当該回転角を表示する(ステップS6)。回転角の表示方法については、後述する。
つぎに、NC装置10は、記憶回路10cに記憶されたモードを参照して速度変更処理が有効か否かを判定する(ステップS7)。具体的には、記憶回路10cに記憶されたモードが第3のモードである場合、NC装置10は速度変更処理が有効であると判定し、それ以外の場合、NC装置10は速度変更処理が無効であると判定する。速度変更処理が無効である場合(ステップS7でNO)、ステップS1に戻る。
速度変更処理が有効である場合(ステップS7でYES)、NC装置10は、駆動電流が第1の閾値を下回るまで、作業者が当初設定したプレス生産速度を減速する処理を行う。そして、表示器15は、作業者が当初設定したプレス生産速度と、減速されたプレス生産速度を表示する(ステップS8)。プレス生産速度の減速とは、具体的には、以下の処理である。まず、プレス動作の往復運動が所定回数(好ましくは1回、但し、10回など異なる回数でもよい)されるごとにステップS1〜S7までの処理を行い、駆動電流が第1の閾値以上である場合、生産速度設定操作で設定された各段の速度を一定の割合だけ減少させる。この一定の割合は、好ましくは、先に設定された速度の1%である。表2は、上述の割合を1%とし、表1のような生産速度が設定された場合において、速度を1回減少させた場合の生産速度の一例を示す。
Figure 0005560356
NC装置10は、駆動電流が第1の閾値を下回るまで、プレス動作の往復運動が所定回数(好ましくは1回)されるごとにステップS1〜S8までの処理を繰り返す。図6は、図5のようなACサーバモータ3の駆動状態において、生産速度を減少させた場合の一例を示すグラフである。図6においても、横軸が時間、縦軸がスライド2の上下方向の位置もしくは駆動電流の大きさを示している。上述した処理を行うことによって、図6に示されるように、NC装置10は、駆動電流が第1の閾値を下回るように、生産速度を変更することができる。
なお、生産速度を減少させたため、スライドが一回往復するのにかかる時間T1は、当初設定した時間(図5のT0)より長くなっている。
図7は、当該判定処理と当該速度変更処理がされた場合に表示器15が表示する画面の一例である。表示画面70は、ルーレット表示部71、現在生産速度表示部72、処理状態表示部73、生産速度変更履歴表示部74、過負荷発生角度表示部75を有している。
ルーレット表示部71は、例えば、特許文献1に示されるように、一周360度を所定角度(例えば5度)ずつ分割して当該分割範囲を1個の点表示にて代表して表示させたものである。ルーレット表示部71は、駆動電流が第1の閾値以上である回転角θにあたる領域を強調表示する。図5の例では、ルーレット表示部71は、30°付近の回転角を含む領域と270°付近の回転角を含む領域とを強調表示する。この強調表示とは、例えば、当該領域にあたる点を他の色で表示させたり、当該領域にあたる点を点滅されたりするとよい。
現在生産速度表示部72は、現在のプレス生産速度を、好ましくは、1分あたりのストローク回数(spm)単位で表示する。処理状態表示部73は、現在の処理状態を表示する。具体的には、速度変更処理がされている場合、図示されているように「生産速度制限中」等のように処理状態が表示される。また、速度変更処理が無効とされている場合(ステップS3,S7でNO)、「生産速度制限せず」、「通常運転中」等のように、速度変更がされていないことが分かるように処理状態が表示される。
生産速度変更履歴表示部74は、作業者によって設定された生産速度と、減速された生産速度との履歴を表示する。図7は、作業者によって設定された生産速度が16spmであって、減速された生産速度が12spmである場合の例を示している。過負荷発生角度表示部75は、駆動電流が第1の閾値以上である回転角θを順に表示している。図7は、図5の例に基づき、当該回転角θが30°と270°である場合を図示している。
図7は、速度変更処理が有効である場合(ステップS7でYES)の例を図示している。速度変更処理が無効である場合(ステップS3,S7でNO)、生産速度変更履歴表示部74の表示が省略されるとよい。また、判定処理が無効である場合(ステップS3でNO)、処理状態表示部73、生産速度変更履歴表示部74、及び、過負荷発生角度表示部75の表示が省略されるとよい。
[特徴]
本実施形態に係る電動サーボプレス1の特徴は、以下の通りである。
(1)電動サーボプレス1は、サーボモータ3と、サーボアンプ4と、サーボアンプ4の駆動電流を検出する電流検出手段(フィードバック回路10e)と、回転運動の回転角を検出する回転角検出手段(パルスコーダ18、入力回路10b、回転角を算出するNC装置10内のプログラム)と、回転運動を定義する、回転角と該回転角における回転速度との対応関係を設定することによって、プレス生産速度を設定する速度設定手段(表示器15)と、駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定する判定手段(NC装置10内のプログラム)と、駆動電流が第1の閾値以上である場合、速度設定手段により設定された回転速度の全てを同じ割合だけ低下させる速度変更手段(NC装置10内のプログラム)と、を備える。したがって、電動サーボプレス1は、サーボモータ3の駆動電流が第1の閾値以上であっても、生産を継続することができる。また、回転速度の全てを同じ割合で低下させることによって、作業者が意図したスライドの動かし方を変更せずに生産を継続することができる。
(2)判定手段は、所定回数の往復運動を基準とした周期ごとに、電流検出手段により検出された駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定する。そして、速度変更手段は、判定手段の判定結果に基づき、予め設定された回転速度の全てを段階的に所定の割合だけ低下させる。したがって、電動サーボプレス1は、生産速度の低下をできるだけ小さくして、駆動電流が第1の閾値を下回るように、生産速度を調整することができる。
(3)電動サーボプレス1は、駆動電流が第1の閾値よりも高い第2の閾値以上である場合、サーボモータを停止する非常停止手段(非常停止回路11)をさらに備える。これにより、作業者の設定速度が速すぎて、そのまま起動すると電動サーボプレス1が故障する恐れがある場合に、電動サーボプレス1はサーボモータの駆動を停止することができる。
(4)電動サーボプレス1は駆動電流が第1の閾値以上である回転角を表示する表示手段(表示器15、過負荷発生角度表示部75)をさらに備える。これにより、作業者は、サーボモータ負荷が大きい回転角を知ることができ、この回転角を参照しながら当初設定した生産速度を変更することができる。
(5)表示手段は、回転角を円周上の領域で示すルーレット表示部71を有し、ルーレット表示部71は、駆動電流が第1の閾値以上である回転角を表す領域を強調表示する。これにより、作業者は、サーボモータ負荷が大きい回転角を視覚的に把握することができる。
(6)ルーレット表示部71は、強調表示される領域の色を他の色と変えて表示する。もしくは、ルーレット表示部71は、強調表示される領域を点滅させて表示する。これにより、作業者は、サーボモータ負荷が大きい回転角を視覚的に把握することが容易となる。
(7)表示手段(表示器15)は、速度変更手段によってプレス生産速度が変更されたことを表示する処理状態表示部73と、速度設定手段によって設定されたプレス生産速度と、速度変更手段によって変更されたプレス生産速度とを表示する生産速度変更履歴表示部74を有する。これにより、作業者は、生産速度が変更されたことを知ることが出来、どの程度生産速度が変更されたか(生産速度が大幅に低下していないか)を知ることが出来る。
(8)電動サーボプレス1は判定手段及び速度変更手段の動作の有効、若しくは無効を設定するモード設定手段(ラジオボタン31〜33)をさらに備える。これによって、作業者は、生産を急ぐ場合には速度変更手段を無効とする設定等を行うことができるので、生産事情に合わせた設定を行うことができる。
(9)モード設定手段は、判定手段及び速度変更手段の動作を共に無効とする第1のモード(ラジオボタン31)、判定手段の動作のみを有効として、駆動電流が第1の閾値以上である回転角を表示手段が表示する第2のモード(ラジオボタン32)、判定手段及び速度変更手段の動作を共に有効とする第3のモード(ラジオボタン33)のいずれか1つを選択可能である。したがって、作業者は、生産を急ぐ場合であっても、第2のモードを選択することができるので、生産速度の修正を早期に行うことが可能となる。
(10)電動サーボプレス1は、第1の閾値を設定する閾値設定手段(テキストボックス34)をさらに備える。これにより、サーボモータ3の過負荷の運転が継続し、サーボモータ3の能力が低下した場合であっても、第1の閾値を変更することによって、電動サーボプレス1の寿命を延ばすことが可能となる。
(11)閾値設定手段は、設定者の認証手段を備える。これにより、第1の閾値の設定が出来る人を、例えば、電動サーボプレス1のメインテナンス作業者に制限することが可能となる。
(12)速度変更手段が減少させる速度の割合は、1%である。これにより、電動サーボプレス1は、生産速度の低下をできるだけ小さくして、駆動電流が第1の閾値を下回るように生産速度を調整することができる。また、上述の回転速度の割合を5%下げれば、駆動電流を大幅に下げることができることが経験的に分かっているので、電動サーボプレス1は、速やかに(多くても5ストローク程度で)駆動電流が第1の閾値を下回るように生産速度を変更することができる。
[変形例]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)上述の実施形態では、ステップS3,S7をスライド2の往復運動が所定回数だけされる度に行うようにしたが、ステップS3,S7の処理を一度行った後は、その処理結果を利用することによって、処理を省略してもよい。あるいは、ステップS3,S7の処理が完全に省略されてもよい。
(b)プレス生産速度の減速方法として、プレス動作の往復運動が所定回数(好ましくは1回)されるごとにステップS1〜S8までの処理を行い、駆動電流が第1の閾値以上である場合、生産速度設定操作で設定された各段の速度を一定の割合だけ減少させる方法を述べたが、他の方法でもよい。例えば、駆動電流が第1の閾値以上となる時間(図6のt1、t2)の最大値が大きくなればなるほど、各段の速度を減少させる割合を大きくする方法によって、プレス生産速度が変更されてもよい。
(c)上述の実施形態では、駆動電流が第1の閾値以上である回転角を表示する方法として、ルーレット表示部71を例示したが、他の方法であってもよい。例えば、表示器15は、ルーレット表示部71の代わりに、図5のようなグラフ、もしくは、横軸を回転角として縦軸を対応する駆動電流とするグラフを表示してもよい。
(d)上述の実施形態では、ステップS6,S8において、駆動電流が第1の閾値以上である回転角θや減速前後の生産速度を表示するようにしたが、それらの表示が省略されてもよい。つまり、プレス生産速度の調整のみが実行されてもよい。
(e)上述の実施形態では、第1の閾値を設定するためのインターフェース34が、モード設定の画面30に表示されているが、別画面にて表示されてもよい。また、処理状態表示部73、生産速度変更履歴表示部74、及び、過負荷発生角度表示部75は、ルーレット表示部71及び現在生産速度表示部72と別画面で表示されてもよい。
(f)上述の実施形態では、非常停止回路11、開閉器12、スイッチ21、減速機6が省略されてもよい。同様に、ステップS2の処理も省略されてもよい。
本発明は、サーボモータの回転駆動力をスライドの上下往復動に変換する電動サーボプレスに有用である。
1 電動サーボプレス
2 スライド
3 サーボモータ
4 サーボアンプ
5 機械式ブレーキ装置
10 NC装置
11 非常停止回路
15 表示器

Claims (15)

  1. 駆動源により供給される回転運動を、動力変換機構を介してスライドの往復運動に変換するプレス機械であって、
    前記回転運動の駆動源であるサーボモータと、
    前記サーボモータへ駆動電流を供給するサーボアンプと、
    前記駆動電流を検出する電流検出手段と、
    前記回転運動の回転角を検出する回転角検出手段と、
    前記回転運動を定義する、前記回転角と前記回転角における回転速度との対応関係を設定することによって、プレス生産速度を設定する速度設定手段と、
    前記電流検出手段により検出された前記駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定する判定手段と、
    前記電流検出手段により検出された前記駆動電流が前記第1の閾値以上となる場合、前記速度設定手段により設定された前記回転速度の全てを同じ割合で低下させる速度変更手段と、
    を備える、プレス機械。
  2. 前記判定手段は、
    前記往復運動開始後、前記所定回数の前記往復運動がされる間に、前記電流検出手段により検出された前記駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定し、
    前記速度変更手段は、
    前記判定手段が、前記駆動電流が第1の閾値以上となると判定する場合、前記所定回数の前記往復運動終了後、前記速度設定手段により設定された前記回転速度の全てを所定の割合だけ低下させる、請求項1に記載のプレス機械。
  3. 前記速度変更手段によって変更された前記回転速度の全てを含む集合を第1速度集合とする場合、
    前記判定手段は、
    前記回転速度の全てを含む集合が第1速度集合に変更されてから前記所定回数の前記往復運動がされる間に、前記電流検出手段により検出された前記駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定し、
    前記速度変更手段は、
    前記判定手段が、前記駆動電流が第1の閾値以上となると判定する場合、前記回転速度の全てを含む集合が第1速度集合に変更されてから前記所定回数の前記往復運動が終了した後、前記第1速度集合に含まれる回転速度の全てを前記所定の割合だけ低下させる、請求項2に記載のプレス機械。
  4. 前記駆動電流が前記第1の閾値よりも高い前記第2の閾値以上となる場合、前記サーボモータへの電力供給を停止する非常停止手段をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載のプレス機械。
  5. 前記駆動電流が前記第1の閾値以上となる前記回転角を表示する表示手段をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載のプレス機械。
  6. 前記表示手段は、
    前記回転角を円周上の領域で示すルーレット表示部
    を有し、
    前記ルーレット表示部は、
    前記駆動電流が前記第1の閾値以上となる前記回転角を表す前記領域を強調表示する、請求項5に記載のプレス機械。
  7. 前記ルーレット表示部は、前記強調表示される前記領域の色を変えて表示する、請求項6に記載のプレス機械。
  8. 前記ルーレット表示部は、前記強調表示される前記領域を点滅させて表示する、請求項6に記載のプレス機械。
  9. 前記表示手段は、
    前記速度変更手段によって前記プレス生産速度が変更されたことを表示する状態表示部と、
    前記速度設定手段によって設定された前記プレス生産速度と、前記速度変更手段によって変更された前記プレス生産速度とを表示する生産速度変更履歴表示部と、
    を有する、請求項5から8のいずれかに記載のプレス機械。
  10. 前記判定手段及び前記速度変更手段の動作の有効、若しくは無効を設定するモード設定手段をさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載のプレス機械。
  11. 前記モード設定手段は、
    前記判定手段及び前記速度変更手段の動作を共に無効とする第1のモード、
    前記判定手段の動作のみを有効として、前記駆動電流が前記第1の閾値以上となる前記回転角を前記表示手段が表示する第2のモード、及び
    前記判定手段及び前記速度変更手段の動作を共に有効とする第3のモード
    のいずれか1つを選択可能である、請求項10に記載のプレス機械。
  12. 前記第1の閾値を設定する閾値設定手段をさらに備える、請求項1から11に記載のプレス機械。
  13. 前記閾値設定手段は、設定者の認証手段を有する、請求項12に記載のプレス機械。
  14. 前記所定の割合は、1%であることを特徴とする、請求項2に記載のプレス機械。
  15. サーボモータにより供給される回転運動を、動力変換機構を介してスライドの往復運動に変換し、前記サーボモータへ駆動電流を供給するサーボアンプを含むプレス機械の制御方法であって、
    前記回転運動を定義する、前記回転角と前記回転角における回転速度との対応関係を設定することによって、プレス生産速度を設定するステップと、
    前記プレス生産速度に応じてプレス動作を行うステップと、
    前記駆動電流を検出するステップと、
    検出された前記駆動電流が第1の閾値以上となるか否かを判定するステップと、
    前記検出された前記駆動電流が前記第1の閾値以上となる場合、設定された前記回転速度の全てを同じ割合で低下させるステップと、
    を含む、プレス機械の制御方法。
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