JP5560165B2 - タイヤ - Google Patents
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したがって、前記のブチル系ゴムの配合量は制限され、該ブチル系ゴムを配合したゴム組成物を用いる場合、空気バリア性の点からインナーライナー層の厚さは、1mm前後が必要であった。そのため、タイヤに占めるインナーライナー層の重量は約5%程度となり、タイヤの重量を低減し、自動車燃費を向上するための一つの障害となっていた。
そこで、近年の省エネルギー化の社会的な要請に伴い、自動車タイヤの軽量化を目的として、インナーライナー層を薄ゲージ化するための手法が提案されている。
例えば、ナイロンフイルム層や塩化ビニリデン層をインナーライナー層として従来のブチル系ゴムの代わりに用いる手法が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンドからなる組成物のフイルムをインナーライナー層に用いることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある。)はガスバリア性に優れていることが知られている。EVOHは、空気透過量がブチル系ゴムを配合したインナーライナーゴム組成物の100分の1以下であるため、50μm以下の厚さでも、内圧保持性を大幅に向上することができる上、タイヤを重量低減することが可能である。したがって、タイヤの空気透過性を改良するために、EVOHをタイヤインナーライナーに用いることは有効であると言える。例えばEVOHからなるタイヤインナーライナーを有するタイヤが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
すなわち、本発明は、
[1](A)インナーライナー層を構成する(B)変性又は未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂を含むフイルム層と(C)ゴム層とが、(X)二層の接着剤層を介して接合してなるタイヤであり、前記二層の接着層のうちフイルム層と接着する一層の接着剤層(接着剤層1)を構成するための接着剤組成物が、(D)エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物と(E)水を含み、該(D)成分が(E)水100質量部に対して0.1〜70質量部の範囲で含まれることを特徴とするタイヤ、
[2]接着剤層1は、(D)エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物と(E)水を含む接着剤組成物である水分散塗工液を前記(B)フイルム層の表面に塗布した後、100℃以上で乾燥、熱処理することによって得られる、[1]に記載のタイヤ、
[3](X)二層の接着剤層の他の一層に(F)熱硬化性樹脂を用いる、[1]又は[2]に記載のタイヤ、
[4](F)成分の熱硬化性樹脂が(C)ゴム層側に設けられる接着剤層2に用いられる、[3]に記載のタイヤ、
[5](F)成分の熱硬化性樹脂が、フェノール、エポキシ、メラミン、尿素、不飽和ポリエステル、ウレタン、イミド及びレゾルシンのいずれか1種の官能基又はセグメントを含んでなる、[3]又は[4]に記載のタイヤ、
[6](F)成分の熱硬化性樹脂がレゾルシン系化合物・ホルムアルデヒド系化合物・ラテックス(RFL樹脂)からなる、[3]〜[5]のいずれかに記載のタイヤ、
[7]接着剤層2を構成するための接着剤組成物が、レゾルシン系化合物とホルムアルデヒド系化合物とをレゾール化反応により縮合させて得られる(G)初期縮合物及び(H)水性ラテックス中のゴム成分がラテックス状に(E)水中に分散されている、[3]に記載のタイヤ、
[8]前記(G)初期縮合物の(E)水100質量部に対する配合割合は0.1〜50質量部、(H)水性ラテック中のゴム成分の(E)水100質量部に対する配合割合が10〜90質量部の範囲である、[7]に記載のタイヤ、
[9]接着剤層2は、前記(G)初期縮合物、(H)水性ラテックス及び(E)水を含む接着剤組成物である水分散塗工液を前記接着剤層1の上に塗布し乾燥後、100℃以上で、かつ30秒間以上熱処理を行うことによって得られる、[7]又は[8]のタイヤ、
[10]接着剤層1は、イソシアネート基、水酸基、アミノ基及びカルボニル基の中から選ばれる少なくとも一種を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載のタイヤ、
[11](A)インナーライナーを構成する(B)フイルム層のタイヤ径方向の最表面層が、(I)変性又は未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂を含む熱可塑性樹脂10〜100質量%、(J)エラストマー成分0〜90質量%を含むガスバリア層、もしくは(J)エラストマー成分40〜100質量%を含む保護層からなり、該保護層のタイヤ径方向内側に(I)熱可塑性樹脂成分を含むガスバリア層が熱溶着された(B)フイルム層を含む層からなる、[1]〜[10]のいずれかに記載のタイヤ、
[12](I)成分の熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[11]に記載のタイヤ、
[13](J)エラストマー成分が、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム及び(K)熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、[11]に記載のタイヤ、
[14](J)成分のエラストマーが、(K)熱可塑性エラストマーである、[13]に記載のタイヤ、
[15](K)成分の熱可塑性エラストマーが、(L)ポリウレタン系熱可塑性エラストマーである、[13]又は[14]に記載のタイヤ、
[16](B)フイルム層が、接着層1と接着する最表面層に(L)ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含むと共に、変性又は未変性のエチレン−ビニルアルコール共重合体層を少なくとも一層含む多層フイルムからなる、[1]〜[15]のいずれかに記載のタイヤ、
[17](A)インナーライナーを構成する(B)フイルム層の厚さが200μm以下、(C)ゴム層の厚さが200μm以上である、請求項1〜16のいずれかに記載のタイヤ、
を提供するものである。
また、接着剤層1と接着剤層2間においては、を熱処理により、前記RFL樹脂を熱硬化樹脂化(高分子化)する過程で、ウレタン系熱可塑性エラストマーからなるフイルム層表面と化学結合した上記(D)特定の化学結合形成が出来る反応性基を有する化合物の分子鎖とRFL樹脂間での絡み合いにより高い接着力を得ることができる。
上記、絡み合いの他に、フイルム層との水素結合やフイルム層に対するアンカー効果等も接着性能向上の要因と考えられる。
(3)上記(2)項記載のフイルム層との接着に適した接着剤層1と接着剤層に特定の熱硬化性樹脂を用いたゴム層との接着に適した接着剤層2とに機能分離され、上記二層の接着剤層間の接着力が優れる接着剤層を介してフイルム層とゴム層とを接合一体化させることにより、高粘着性及び高接着性能を有した低燃費性の優れたタイヤを提供することができる。
本発明のタイヤは、(A)インナーライナー層を構成する(B)フイルム層を含む層と(C)ゴム層とが、(X)二層の接着剤層を介して接合するに当り、前記二層のうち1層の接着剤層を構成する接着剤組成物が、(D)フイルム層表面と化学結合を形成することができる反応性基を有する化合物を含むことを特徴とする。
1は接着剤層で、5の接着剤層1と4の接着剤層2の二層から構成されている。2はインナーライナーを構成するフイルム層を含む層からなり、本図1の模式図においては6のポリウレタン系熱可塑性エラストマーと7の未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層のそれぞれ二層、合計四層から構成されている。3はゴム層(プライコーテイングゴム)である。
フイルムインナーライナー層を構成する最外層のフイルム層(6)には官能基として水酸基、イソシアネート基、アミノ基、カルボニル基などを含むことが好ましい。例えば、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーフイルムの表面には反応性の高いイソシアネート基や水酸基等の官能基が存在する。前記5の接着剤層1は、上記官能基と化学結合を形成することが出来る反応性基、例えば反応性の高いイソシアネート基及び/又はエポキシ基等を有する化合物の水溶液を塗布し乾燥し、必要に応じて100℃以上で20秒間以上熱処理をおこなうことによって得られる。
また、上記フイルム表面に化合物の水溶液を塗布する前にフイルム表面のコロナ放電処理を行うことが好ましい。
次に、(A)インナーライナー層を構成する(B)フイルムについて説明をする。
(A)インナーライナー層を構成するフイルムとしては、ガスバリア性が良好で、適度の機械的強度を有するものであればよく、特に制限されずに、様々な素材からなるフイルムを用いることができる。このようなフイルムの素材としては、次に詳述する熱可塑性樹脂、エラストマー等を好ましい素材として用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂などの樹脂を挙げることができる。中でもエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂は、空気透過量が極めて低く、ガスバリア性に優れており、好ましい素材である。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、樹脂フイルムとしては、熱可塑性樹脂であるこれらの素材と後述する(J)エラストマー成分とをブレンドしたものを用いることができる。これら樹脂フイルム層は単層であっても良く、二層以上の多層であっても良い。
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂としては、変性又は未変性のエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂が用いられる。特にエチレン−ビニルアルコール共重合体にエポキシ化合物を反応させて得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。このように変性することにより、未変性のエチレン−ビニルアルコール共重合体の弾性率を大幅に下げることができ、屈曲時の破断性、クラックの発生度合いを改良することができる。
この変性処理に用いられる未変性のエチレン−ビニルアルコール共重合体においては、エチレン単位含有量は25〜50モル%であることが好ましい。エチレン単位含有量が25モル%以上であると十分な耐屈曲性及び耐疲労性が得られ、かつ、溶融成形性も良好である。一方50モル%以下であると十分なガスバリア性が得られる。より良好な耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点からは、エチレン単位含有量は、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が特に好ましい。
一方、ガスバリア性の観点からは、エチレン単位含有量は48モル%以下がより好ましく、45モル%以下が特に好ましい。
さらに、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり、最適には99モル%以上である。ケン化度が90モル%以上であると、十分なガスバリア性及び積層体作製時の熱安定性が得られる。
変性処理は、前記の未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して、エポキシ化合物を、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは5〜35質量部を反応させることにより行うことができる。この際、適当な溶媒を用いて、溶液中で反応させるのが有利である。
また、樹脂フイルム層としては、上述した熱可塑性樹脂100%で構成されるフイルムでも良いが、以下の(J)エラストマー成分と熱可塑性樹脂とのブレンド系のものも好ましく用いることができる。
(J)エラストマー成分としては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム及び(K)熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
中でもジエン系ゴム、(K)熱可塑性エラストマーが好ましい。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム及びこれらの変性ゴム、IIR,Br−IIR、Cl−IIR及びイソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化ゴム(Br−IPMS)等が挙げられる。
ガスバリア性を考慮するとIIR,Br−IIR、Cl−IIR及びイソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化ゴム(Br−IPMS)が好ましい。
中でもポリウレタン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
樹脂フイルム層以外のその他の層としては、これらのうち、耐ゴムとゴムに対する接着性の点から、フイルム表面に水酸基やイソシアネート基等の反応性の高い反応性基を有するポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる層が好ましく、特に樹脂フイルム層を挟持する形でフイルム層の外層部分にポリウレタン系熱可塑性エラストマー層を配置することが好ましい。
このような多層フイルムの具体例としては、前記の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂フイルムの両面に、それぞれポリウレタン系熱可塑性エラストマーフイルムが積層された三層構造の多層フイルムを挙げることができる。
種類としては、(イ)カプロラクトン型(カプロラクトンを開環して得られるポリラクトンエステルポリオール)、(ロ)アジピン酸型又はアジペート型(アジピン酸とグリコールとのアジピン酸エステルポリオール)、(ハ)PTMG(ポリテトラメチレングリコール)型又はエーテル型(テトラヒドロフランの開環重合で得られたポリテトラメチレングリコール)などがある。
ガスバリア層として用いられるポリマーの組成は、(I)熱可塑性樹脂10〜100質量%と(J)エラストマー0〜90質量%を含有していることが好ましい。
(I)熱可塑性樹脂と(J)エラストマーの含有量を上記範囲にすることによってガスバリア性と(C)ゴム層との優れた接着性能を確保することができる。
また、最外層であって保護層として用いられるポリマー組成は、(J)エラストマーを40〜100質量%を含み、該保護層のタイヤ径方向内側に(I)熱可塑性樹脂を含むガスバリア層が熱溶着された樹脂フイルム層からなることが好ましい。
さらに、上記(I)熱可塑性樹脂が、変性又は未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂であることがより好ましい。
また、(A)インナーライナーを構成する樹脂フイルム層が、上述のポリウレタン系熱可塑性エラストマー層を含むと共に、変性又は未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層を少なくとも1層含む多層フイルムからなることがガスバリア性、疲労性の観点から見て最も好ましい。
保護層としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ナイロン6、ナイロン66、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン又は無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ハロゲン化ブチルゴム等のブチルゴム、ジエン系エラストマー等が好適なものとして例示される。前記ジエン系エラストマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム等が好適なものとして例示される。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いられる。
保護層の薄膜化及びクラックの発生、伸展抑制の観点から、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ナイロン6、ナイロン66、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン又は無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましく、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
本発明の積層体の製造方法における(A)樹脂フイルム層を含む層の厚さは、該積層体をインナーライナーとして用いる場合の薄ゲージ化の観点から、200μm以下が好ましい。(A)層の厚さの下限については特に限定されないが、通常1μm程度であり、より好ましい厚さは10〜150μm、さらに好ましい厚さは20〜100μmの範囲である。又ゴム層の厚さは200μm以上が好ましいその上限についてはタイヤサイズによって異なるが通常500μm程度である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フイルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
<接着剤層1>
次に、(D)成分としてフイルム層表面と化学結合を形成することができる反応性基を有する化合物を含む接着剤層1を構成する接着剤組成物について説明する。
(D)成分としてフイルム層表面と化学結合を形成することができる反応性基は−COOH基、COOR基、−CX基,−OH基、NH2基、エポキシ基、イソシアネート基が好ましく、中でもエポキシ基、イソシアネート基を有する化合物が特に好ましい。
上記フイルム層としては、上述のように接着性の点から、フイルム表面に水酸基やイソシアネート基等の反応性の高い反応性基を有するポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
反応性基としてエポキシ基有する化合物としては、脂肪族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物のいずれも用いることができる。脂肪族エポキシ化合物を用いると反応性が高くなるので好ましく、芳香族エポキシ化合物を用いると反応性は脂肪族エポキシ化合物より低いが、液の安定性が高いので好ましい。
この脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−512」、「デナコール EX−521」(デナコールは登録商標、以下同じ))、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−321」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−211」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−313」、「デナコール EX−314」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−941」、「デナコール EX−920」、「デナコール EX−931」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−810」、「デナコール EX−811」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−850」、「デナコール EX−851」、「デナコール EX−821」、「デナコール EX−830」、「デナコール EX−832」、「デナコール EX−841」、「デナコール EX−861」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−611」、「デナコール EX−612」、「デナコール EX−614」、「デナコール EX−614B」、「デナコール EX−622」)、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「デナコール EX−411」)等を挙げることができる。
これらの内、グリセロールポリグリシジルエーテルが特に好ましい。
この水分散塗工液を前記フイルム層表面に塗布したのち室温にて乾燥後、必要に応じて、温度100℃以上で20秒間以上、好ましくは130℃〜200℃の範囲で30秒〜5分間熱処理することによってフイルム表面の官能基とエポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物との間に化学結合が形成された接着剤層1を得ることができる。
尚、接着剤層1を構成する前記塗工液を塗布する前にフイルム層表面にコロナ放電による表面処理を行うことが好ましい。
上記接着剤層2のRFL系接着剤は、レゾルシン、ホルムアルデヒド及びゴム成分を含む水性ラテックスの混合水溶液に微量のアルカリ触媒を加え、常温で熟成させた後、レゾルシンとホルムアルデヒドとをレゾール化反応させて得られる所謂レゾルシンホルムアルデヒド初期縮合物を添加して作製される。
上記レゾルシンホルムアルデヒド初期縮合物の水100質量部に対する配合割合は0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲であり、水性ラテックスの配合割合は0.5〜200質量%、好ましくは5〜100質量%の範囲である。レゾルシンホルムアルデヒド初期縮合物及び水性ラテックスの水に対する配合割合を上記範囲にすることによって接着剤組成物の塗布作業性および接着性に優れた接着剤組成物を得ることができる。
該接着剤を上記接着剤層1が形成されているインナーライナー層の最外層を構成するフイルムに塗布し、室温にて乾燥し、必要に応じて更に100℃以上の高温下で30秒から数分間、好ましくは100℃〜200℃の範囲で30秒〜5分間かけて熱処理を行うことによってレゾルシンホルムアルデヒド初期縮合物を熱硬化樹脂化(高分子化)し接着剤層2を形成した後にカーカスコーテイングゴムに代表される(C)ゴム層との加硫による接着処理を行う。
加硫によってさらに熱が加えられることによってRFL樹脂の熱硬化樹脂化(高分子化)がさらに進むことによって(C)ゴム層と接着剤層2との間で接着反応が進むと共に、熱硬化樹脂化(高分子化)する過程で、接着剤層1のフイルム層表面と化学結合した分子鎖とRFL樹脂間での絡み合いにより接着剤層1と接着剤層2の間に高い接着性力及び粘着性を生じ、優れた(X)接着剤層を得ることができる。その結果として(A)樹脂フイルム層または保護層と(C)ゴム層の間に接着剤層1と接着剤層2を介して優れた接着性が付与される。
熱硬化性樹脂として、フェノール、エポキシ、メラミン、尿素、不飽和ポリエステル、ウレタン、イミド及びレゾルシンのいずれか1種の官能基又はセグメントを含婿とが好ましい。
その他の(C)ゴム層としては主にブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムからなるインナーライナーゴムが挙げられる。
本発明の接着剤組成物が含有するレゾルシン系化合物及びホルムアルデヒド系化合物からなる縮合物は、レゾルシン系化合物とホルムアルデヒド系化合物とを縮合反応させて得られる反応物であり、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物であるのが好ましい。
該レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物は、ホルムアルデヒド由来の構成単位とレゾルシン由来の構成単位とを含有し、ホルムアルデヒド由来の構成単位が化学量論的に不足する状態を維持することが重要である。即ちこれにより樹脂を低分子量で可溶性に維持することができる。
該縮合物には、上記のホルムアルデヒドと反応して熱硬化性樹脂を与えるレゾルシン以外の化合物としては、メラミン、尿素、フェノール等を挙げることができ、これらの初期縮合物はメラミン樹脂、尿素樹脂及びフェノール樹脂といった熱硬化性樹脂を得ることができる。
これらの中でメラミンが好適である。すなわち、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物を用いることによっても、ゴムとの優れた接着性を得ることができる。その他、エポキシ、不飽和ポリエステル、ウレタン及びイミドのいずれか1種の官能基又はセグメント等を含んでなることが接着性向上のために好ましい。
レゾルシン系化合物以外のフェノール誘導体が第三成分として含まれていてもよく、また、該縮合物は、スルフィメチル化剤等による変性や、カルボキシル化等の変性を受けていてもよい。
本発明の接着剤組成物に用いる水性ラテックスは、ゴム成分として共役ジエン系共重合体粒子を含む以外特に制限は無く、ビニルピリジンは必須成分ではないが含むことが好ましい。
更に、共役ジエン系共重合体をカルボキシル基あるいはイソシアネート基等で変性した変性ラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス及びその変性ラテックス、天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス、ブチルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスの他、被着ゴムに配合されるゴム成分と同種のゴム成分を水又は有機溶媒に分散させて調製したラテックス等を含んでもよい。上記ゴムラテックスは、一種単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
中でも、水性ラテックスを構成する、ジエン系ゴムの末端又は分子内にイソシアネート基、カルボキシル基及びピリジル基のいずれか一種を含んでいるものを用いることが好ましい。
また、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物と反応する官能基を有するジエン系ゴム、または該初期縮合物と縮合重合ができるジエン系ゴムのいずれか1種を含んでいるものを用いることが好ましい。
エラストマーとして熱可塑性ポリウレタン((株)クラレ製、クラミロン9190)100%を使用し樹脂フイルムインナーライナー最外層の保護層として用いられるフイルム(A)を製造した。タッキネス、剥離接着強さの評価に用いられるためフイルムの厚さは1.5mmを製造した。
押出機仕様:
熱可塑性ポリウレタン:25mmφ押出機 P25−18AC(大阪精機工作株式会社製)
Tダイ仕様:500mm幅 (株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
(株)クラレ製「G156B」エチレン−ビニルアルコール共重合体(EV0H、エチレン共重合比率48%)50質量%と、エラストマーの熱可塑性ポリウレタン((株)クラレ製、クラミロン9190)50質量%とを2軸押出機を用いて200℃で溶融混合しペレット化した。製造例2同様押し出し機を用いて樹脂フイルムインナーライナー最外層のガスバリア層として用いられるフイルム(B)を製造した。タッキネス(粘着性)、剥離接着強さの評価のためにフイルムの厚さは1.5mmのものを製造した。
ゴム層Aのカーカスコーテイングゴムは、天然ゴム70質量部及びスチレン・ブタジエン共重合体ゴム[JSR社製,SBR#1712、ゴム分100質量部に対して37.5質量部のアロマオイルで油展]41.25質量部に対して、カーボンブラック(N330)45質量部、ステアリン酸1質量部、亜鉛華5質量部、加硫促進剤DM[大内新興化学社製、ノクセラーDM]1.0質量部及び不溶性硫黄3.5質量部を配合して調整し、タッキネス、剥離接着強さの評価のために厚さ2.0mmの未加硫のゴムシートを製造した。
尚、カーカスプライは、ポリエステル製コードをコーテイングゴム用ゴム組成物で被覆して作製する。
ブチルゴムは、臭素化ブチルゴム100質量部,GPFカーボブラック60質量部、SUNPAR2280、7質量部、ステアリン酸1質量部、ノクセラーDM1.0質量部、亜鉛華3質量部、硫黄0.5質量部を配合して調整し、タッキネス、剥離接着強さの評価のために厚さ2.0mmの未加硫のゴムシートを製造した。
1.一層目(接着剤層1)
第1表−1及び第1表−2に記載の一層目接着剤組成(%)に従って、エポキシ基を有する化合物;グリセロールポリグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、商品名「デナコール EX−313」]と水、及びイソシアネート基を有する化合物:ブロックドイソシアネート[第一工業(株)社製、商品名「エラストロン」]と水をそれぞれ独立に混合した。
2.二層目(接着剤層2)
第1表−1及び第1表−2に記載の二層目接着剤組成(%)に従って、熱硬化性樹脂としてレゾルシン、ホルムアルデヒド、苛性ソーダ、ラテックスとして[ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合ラテックス:日本ゼオン社製、商品名「Nipol2518FS」固形分40.5質量%]、[スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス:日本ゼオン社製、「NipolLX110」固形分40.3質量%]及び水とを混合し、その混合物を25℃で24時間熟成し接着剤液を作製した。
3.熟成した接着剤液を塗布する前に、信光電気計装社製コロナ放電処理装置[コロナマスターPS−1M]を使用して電極間距離1mm、放電電圧7kV、周波数15kHzの条件でコロナ放電処理を実施した。
4.次に一層目(エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物層)をフイルム表面に塗布した。
5.室温で乾燥後、一層目(接着剤層1)に熱処理があると表1に示している場合150℃で5分間熱処理をした。
6.上記一層目(接着剤層1)の上に2項で得られた接着剤液を塗布した。
7.室温にて乾燥後、150℃で5分間熱処理をし、二層目(接着剤層2)を得た。
上記実施例1〜16、比較例1〜4の試料について、JIS Z0237「粘着テープ・粘着テープ試験方法」に準拠して表1及び表2に記載の被着剤成分のフイルム・ゴム間の粘着力を測定した。評価結果を比較例1の値を100として表1、及び表2に指数で示す。数値の大きいほうが粘着力が優れている。
また、実施例1〜16、比較例1〜4で得られた接着剤組成物が塗布されたフイルム(a)又は(b)の試料とカーカスコーテイングゴムシートA又はブチルゴムシート(B)とをそれぞれ貼合し、加熱処理(加硫)を行ったのちJIS K6854「剥離接着強さ試験法」に準拠して、180度剥離接着強さの測定をおこなった。評価結果を比較例1の値を100として表1及び表2に指数で示す。数値の大きいほうが剥離接着力が優れている。
2.(A)インナーライナーを構成するフイルム層を含む層(B)(6,7)
3.ゴム層(C)
4.接着剤層2
5.接着剤層1
6.ポリウレタン系熱可塑性エラストマー
7.エチレン−ビニルアルコール共重合体層
Claims (17)
- (A)インナーライナー層を構成する(B)変性又は未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂を含むフイルム層と(C)ゴム層とが、(X)二層の接着剤層を介して接合してなるタイヤであり、前記二層の接着層のうちフイルム層と接着する一層の接着剤層(接着剤層1)を構成するための接着剤組成物が、(D)エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物と(E)水を含み、該(D)成分が(E)水100質量部に対して0.1〜70質量部の範囲で含まれることを特徴とするタイヤ。
- 接着剤層1は、(D)エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物と(E)水を含む接着剤組成物である水分散塗工液を前記(B)フイルム層の表面に塗布した後、100℃以上で乾燥、熱処理することによって得られる、請求項1に記載のタイヤ。
- (X)二層の接着剤層の他の一層に(F)熱硬化性樹脂を用いる、請求項1又は2に記載のタイヤ。
- (F)成分の熱硬化性樹脂が(C)ゴム層側に設けられる接着剤層2に用いられる、請求項3に記載のタイヤ。
- (F)成分の熱硬化性樹脂が、フェノール、エポキシ、メラミン、尿素、不飽和ポリエステル、ウレタン、イミド及びレゾルシンのいずれか1種の官能基又はセグメントを含んでなる、請求項3又は4に記載のタイヤ。
- (F)成分の熱硬化性樹脂がレゾルシン系化合物・ホルムアルデヒド系化合物・ラテックス(RFL樹脂)からなる、請求項3〜5のいずれかに記載のタイヤ。
- 接着剤層2を構成するための接着剤組成物が、レゾルシン系化合物とホルムアルデヒド系化合物とをレゾール化反応により縮合させて得られる(G)初期縮合物及び(H)水性ラテックス中のゴム成分がラテックス状に(E)水中に分散されている、請求項3に記載のタイヤ。
- 前記(G)初期縮合物の(E)水100質量部に対する配合割合は0.1〜50質量部、(H)水性ラテック中のゴム成分の(E)水100質量部に対する配合割合が10〜90質量部の範囲である、請求項7に記載のタイヤ。
- 接着剤層2は、前記(G)初期縮合物、(H)水性ラテックス及び(E)水を含む接着剤組成物である水分散塗工液を前記接着剤層1の上に塗布し乾燥後、100℃以上で、かつ30秒間以上熱処理を行うことによって得られる、請求項7又は8のタイヤ。
- 接着剤層1は、イソシアネート基、水酸基、アミノ基及びカルボニル基の中から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のタイヤ。
- (A)インナーライナーを構成する(B)フイルム層のタイヤ径方向の最表面層が、(I)変性又は未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂を含む熱可塑性樹脂10〜100質量%、(J)エラストマー成分0〜90質量%を含むガスバリア層、もしくは(J)エラストマー成分40〜100質量%を含む保護層からなり、該保護層のタイヤ径方向内側に(I)熱可塑性樹脂成分を含むガスバリア層が熱溶着された(B)フイルム層を含む層からなる、請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤ。
- (I)成分の熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項11に記載のタイヤ。
- (J)エラストマー成分が、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム及び(K)熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項11に記載のタイヤ。
- (J)成分のエラストマーが、(K)熱可塑性エラストマーである、請求項13に記載のタイヤ。
- (K)成分の熱可塑性エラストマーが、(L)ポリウレタン系熱可塑性エラストマーである、請求項13又は14に記載のタイヤ。
- (B)フイルム層が、接着層1と接着する最表面層に(L)ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含むと共に、変性又は未変性のエチレン−ビニルアルコール共重合体層を少なくとも一層含む多層フイルムからなる、請求項1〜15のいずれかに記載のタイヤ。
- (A)インナーライナーを構成する(B)フイルム層の厚さが200μm以下、(C)ゴム層の厚さが200μm以上である、請求項1〜16のいずれかに記載のタイヤ。
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