JP5558338B2 - 接合体、接合体の製造方法および電池パック - Google Patents

接合体、接合体の製造方法および電池パック Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、接合体、接合体の製造方法および電池パックに関する。
異種金属材料を接合する方法の例としては、レーザー溶接法、TIGアーク溶接法などの溶融接合法が挙げられる。これらの方法では、接合部を被接合材料の一方または両方の溶融温度以上に加熱して、合金化を行う。その際、合金系によっては脆い金属間化合物が形成する場合があり、このような脆い金属間化合物を含んだ接合部では、十分な接合強度が得られないことがある。
アルミニウム(Al)材と銅(Cu)材とを溶融接合法によって直接溶接すると、溶融部の固化の際に、Al−33重量%Cuの組成にて、548℃で共晶反応が起き、接合部にラメラ状の共晶組織が形成される。このラメラ状の組織は、Al中にCuが固溶したα(Al)相とθ(CuAl2)相とを含んでいる。このθ(CuAl2)相は脆いので、この相を多量に含む接合部は、接合強度に著しく劣る。そのため、このような接合部を含む接合体は信頼性が低くなる。
特開平10−137952号公報
本発明が解決しようとする課題は、接合強度に優れ、信頼性の高い接合体およびその製造方法と、この接合体を用いた電池パックとを提供することである。
実施形態に係る接合体は、第1金属部材と、第2金属部材と、接合部とを含む。第1金属部材は、Alを含み、Cuの含有量が5.7重量%未満である。第2金属部材は、Cuを含み、Alの含有量が9.4重量%未満である。接合部は、第1金属部材と第2金属部材とを接合する。また、接合部は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。接合部は、TiとBとをさらに含む。
実施形態に係る接合体の製造方法は、上記接合体の製造方法に関するものである。当該製造方法は、第1金属部材と第2金属部材との間に接合材を配置する工程を含む。第1金属部材は、Alを含み、Cuの含有量が5.7重量%未満である。第2金属部材は、Cuを含み、Alの含有量が9.4重量%未満である。接合材は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Tiと、Bとを含む。また、当該製造方法は、接合材を溶融し、溶接部を形成する工程を含む。更に、当該製造方法は、溶融部を固化させることにより、上記実施形態に係る接合体を得る工程を含む。
実施形態に係る電池パックは、複数の素電池とバスバーとを備えている。複数の素電池は、各々、電極端子を含む。電極端子は、Alを含み、Cuの含有量が5.7重量%未満である。バスバーは、複数の素電池の電極端子間を電気的に接続する。また、バスバーは、Cuを含み、Alの含有量が9.4重量%未満である。電極端子は、接合部を介して、バスバーに接合されている。接合部は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。接合部は、TiとBとをさらに含む。
図1は、第1実施形態に係る接合体の概略断面図である。 図2は、第3実施形態に係る接合体の製造方法の一工程を示した概略図である。 図3は、第3実施形態に係る接合体の製造方法の変形例の一工程を示した概略図である。 図4は、図3の接合体の製造方法により得られる接合体の概略断面図である。 図5は、第4実施形態に係る電池パックを概略的に示す分解斜視図である。 図6は、図5の電池パックの部分拡大図である。 図7は、図5の電池パックを上方から見た概略平面図である。 図8は、比較例で得られる接合体の概略断面図である。
以下、実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
また、以下の説明における各部材の電気伝導率(単位:%IACS)は、国際標準軟銅線の電気伝導率を100%IACSとした際の、各部材の相対電気伝導率である。前記国際標準軟銅線の電気伝導率は、20℃の温度で、1.72μΩ・cmである。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る接合体は、第1金属部材と、第2金属部材と、接合部とを含む。第1金属部材は、Alを含み、Cuの含有量が5.7重量%未満である。第2金属部材は、Cuを含み、Alの含有量が9.4重量%未満である。接合部は、第1金属部材と第2金属部材とを接合する。また、接合部は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。
第1金属部材は、Alを含み、Cuの含有量が5.7重量%未満(0重量%を含む)である。
Cuの含有量が5.7重量%以上であると、脆性なCu(Al)金属間化合物が形成し、第1金属部材の強度があまり増加しない割りに電気伝導率が大きく低下するためである。
実際の用途において、電気伝導率を多少犠牲にしても第1金属部材の機械的性質を確保する必要がある場合は、第1金属部材に不可避不純物を合金元素として含有させることができる。第1金属部材の不可避不純物としては、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Zn、Crなどが挙げられる。不可避不純物の含有量は、第1金属部材に含まれたAlと接合部に含まれたSi、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素との固溶体若しくは金属間化合物の形成に大きな影響を及ぼすことがないように設定すれば良い。高い接合強度に加え、優れた電気伝導性を得るには、第1金属部材中のAlの含有量を99.5重量%以上にすることが望ましい。このような第1金属部材は、不可避不純物の含有量が0.5重量%以下になり、電気伝導率を60%IACS以上にすることができる。
このような第1金属部材の例としては、例えば1050アルミニウム材、1080アルミニウム材、1100アルミニウム材などが挙げられる。
第2金属部材2は、Cuを含み、Alの含有量が9.4重量%未満(0重量%を含む)である。
Alの含有量が9.4重量%以上であると、脆性な(Al)Cu金属間化合物が形成し、第2金属部材の強度があまり増加しない割りに電気伝導率は大きく低下するためである。
実際の用途において、電気伝導率を多少犠牲にしても第2金属部材の機械的性質を確保する必要がある場合は、不可避不純物を合金元素として含有させることができる。第2金属部材の不可避不純物としては、酸素、P、Zn、Sn、Fe、Al、Pbなどが挙げられる。不可避不純物の含有量は、第2金属部材に含まれたCuと接合部に含まれたSi、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素との固溶体若しくは金属間化合物の形成に大きな影響を及ぼすがことないように設定すれば良い。高い接合強度に加え、優れた電気伝導性を得るには、第2金属部材中のCuの含有量を99.9重量%以上にすることが望ましい。このような第2金属部材は、不可避不純物の含有量が0.1重量%以下となり、電気伝導率を90%IACSにすることができる。
このような第2金属部材の例としては、例えば無酸素銅が挙げられる。
接合部は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。以下、無用な重複を避けるべく、接合部が含むSi、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、「接合元素」と呼ぶ。
上記のような構成を有する接合体は、以下に詳細に説明する理由により、接合強度に優れている。
接合部が含む接合元素として選択され得る各元素は、該元素とAlとの反応性および該元素とCuとの反応性が、AlとCuとの反応性よりも高い。
表1に、AlおよびCuのそれぞれと各接合元素との反応性を示す。
Figure 0005558338
表1おいて、Alの行で「○」が記載された列にある元素は、該元素とAlとの反応性が、AlとCuとの反応性よりも高い元素、すなわちAlとの固溶範囲が広い元素であり、「◎」が記載された列にある元素は、該元素とAlとの反応性が、「○」が記載された列にある元素とAlとの反応性よりも更に高い、すなわちAlとの固溶範囲が更に広い元素である。同様に、Cuの行で「◎」が記載された列にある元素は、該元素とCuとの反応性が、AlとCuとの反応性よりも極めて高い元素、すなわちCuとの固溶範囲が極めて広い元素である。
表1から、Alと接合元素として選択され得る各元素との反応性はAlとCuとの反応性よりも高く、Cuと接合元素として選択され得る各元素との反応性はCuとAlとの反応性よりも高いことが分かる。つまり、AlおよびCuは、AlとCuと接合元素とが共存している場合、互いよりも接合元素と優先的に反応する。このため、接合元素を含む接合部を用いることにより、AlとCuとの反応を抑えつつ、第1金属部材と第2金属部材とを該接合部を介して強固に接合することができる。これにより、信頼性の高い接合体を得ることができる。
以下、第1実施形態に係る接合体を、図1を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る接合体の概略断面図である。
図1に示した接合体10は、第1金属部材1と、第2金属部材2と、第1金属部材1および第2金属部材2を接合する接合部3とを含んでいる。
第1金属部材1および第2金属部材2の形状は、それぞれ、用途に応じて当業者が適宜選択することができる。
接合部3は、第1金属部材1に隣接した第1領域31と、第2金属部材2に隣接した第2領域32と、第1領域31および第2領域32の間に位置する第3領域33とを含んでいる。
接合部3が含んだ第1領域31は、この第1領域31に隣接した第1金属部材1に由来するAlと、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含んでいる。また、第1領域31はSnを含んでいない。
接合部3が含んだ第2領域32は、この第2領域32に隣接した第2金属部材2に由来するCuと、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含んでいる。また、第2領域32はSnを含んでいない。
接合部3が含んだ第3領域33は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を主に含んでいる。また、第3領域33はSnを含んでいない。
このように、接合部3は、第1領域31から第3領域33に亘って、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含んでいる。
第1領域31は、上で説明したように、第1金属部材1に由来するAlと、接合元素とを含んでいる。Alは、接合元素に対する反応性が高いため、接合元素と共に固溶体および/または金属間化合物を形成することができる。よって、図1の接合体10の接合部3が含む第1領域31は、Alと接合元素との固溶体および/または金属間化合物を含むことが好ましい。
第2領域32は、上で説明したように、第2金属部材2に由来するCuと、接合元素とを含んでいる。Cuは、接合元素に対する反応性が高いため、接合元素と共に固溶体および/または金属間化合物を形成することができる。よって、図1の接合体10の接合部3が含む第2領域32は、Cuと接合元素との固溶体および/または金属間化合物を含むことが好ましい。
接合元素がAlおよびCuとそれぞれ固溶体および/または金属間化合物を形成することによって、第1金属部材1に由来するAlおよび第2金属部材2に由来するCuは、固溶体または金属間化合物の形成に消費され、それぞれが第2金属部材2に由来するCuおよび第1金属部材1に由来するAlと直接反応することが少なくなる。このように、粗大で、脆性なAl(Cu)金属間化合物の形成が抑制されるので、接合部3において、優れた接合強度および高い信頼性を得ることができる。
図1の接合体10がこのような第1領域31および第2領域32を含む接合部3を用いることにより、AlおよびCuからなる粗大であり且つ脆弱な金属間化合物を含む接合部を含んだ接合体に比して接合強度を向上させることができる。
接合元素として選ばれ得る各元素は全てAlとの反応性が高い。しかしながら、表1に示したとおり、これらの中で、特にMn、Zn、GeおよびAgは、Alとの反応性が非常に高い。そのため、接合部3が接合元素としてMn、Zn、GeおよびAgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含んでいれば、Alとの固溶体および/金属間化合物がより形成され易く、その結果、より信頼性の高い接合体を提供することができる。
また、Ni、Mn、Co、Zn、GeおよびAgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を接合元素として選択することは、Alとの固溶体および/金属間化合物が形成され易く、Cuとの固溶体および/金属間化合物が形成され易いという利点があるだけでなく、経済的な面からも好ましい。
更に、上で説明したように、接合部3はSnを含んでいない。Snを含んだ材、即ちSn系ハンダ材を用いて金属部材を接合する所謂ハンダ付けは、Sn系ハンダ材の融点が低いために比較的低温で実施が可能であるという利点を有する。しかしながら、Sn系ハンダ材を用いて金属部材を接合して得られた接合体と、第1実施形態に係る接合体とを比較すると、以下の表2から明らかなように、後者は、電気伝導性および機械的強度の点で前者よりも優れている。また、高温に曝され得る接合体の場合、Sn系ハンダ材の低い融点は欠点となり得る。
Figure 0005558338
つまり、第1実施形態に係る接合体は、少なくとも電気伝導性および機械的強度の点で、Sn系ハンダ材を用いて得られる接合体よりも優れている。
このように、第1実施形態によると、接合強度に優れていて信頼性が高く、更には電気伝導性に優れた接合体を得ることができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る接合体について説明する。
第2実施形態に係る接合体は、第1実施形態に係る接合体の接合部にTiおよびBを更に含むものである。
詳細に述べると、接合部において、TiおよびBは、粒径1μm以下のTi(B)金属間化合物で均一に分散することが望ましい。このような微細なTi(B)金属間化合物が接合材の溶融・凝固過程で、凝固核として接合部の結晶粒を微細化し、接合強度を向上することができる。
本発明者らは、具体的な理由は不明であるが、この微細なTi−B相の形成は、接合部の形成時に、AlとCuとの反応を阻害すると共に、形成される接合部の結晶組織をより微細化することを発見した。
このような接合部を含む接合体は、接合強度を更に向上させることができ、信頼性をより高くすることができる。
このように、第2実施形態によると、接合強度が更に向上した接合材を得ることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態は、接合体の製造方法に関するものである。当該製造方法は、Cuの含有量が5.7重量%未満で、Alを含む第1金属部材と、Alの含有量が9.4重量%未満で、Cuを含む第2金属部材との間に、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む接合材を配置する工程を含む。また、当該製造方法は、前記接合材を溶融し、溶融部を形成する工程を含む。更に、当該製造方法は、前記溶融部を固化させることにより、第1金属部材と第2金属部材との間に前記少なくとも1種の元素を含む接合部が形成された接合体を得る工程とを含む。
第1実施形態および第2実施形態に係る接合体は、例えば第3実施形態に係る接合体の製造方法で製造することができる。
以下、第3実施形態に係る接合体の製造方法を、図2を参照しながら説明する。
図2は、第3実施形態に係る接合体の製造方法の一工程を示した概略図である。なお、この図2では、第1金属部材1と第2金属部材2と接合材3’とを、これらの断面図として示している。
本実施形態に係る方法では、まず、第1金属部材1および第2金属部材2を、これらの間の少なくとも一部に間隙を設けて向き合わせる。詳細に述べると、それぞれの端部に切り欠き部を設けた第1金属部材1および第2金属部材2を、これら端部において突き合わせる。
次に、第1金属部材1と第2金属部材2との間に、接合材3’を配置する。詳細に述べると、ワイヤ状の接合材3’を、第1金属部材1の端部および第2金属部材2の端部にそれぞれ設けられた2つの切り欠き部からなる間隙に挿置する。
接合材3’は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素、即ち接合元素を含んでいる。また、接合材3’は、TiおよびBを更に含んでいても良い。更に、接合材3’はSnを含んでいない。つまり、接合材3’は、Sn系ハンダではない。
次に、第1金属部材1と第2金属部材2との間に配置した接合材3’を溶融する。溶融は、例えば加熱により行うことができる。加熱を行う方法としては、例えば、局所的な溶融溶接を行うことができる、レーザー溶接法、電子ビーム溶接法、MIGアーク溶接法またはTIGアーク溶接法が挙げられる。また、加熱は、例えば、レーザービーム溶接装置、電子ビーム溶接装置、MIGアーク溶接装置およびTIGアーク溶接装置などの溶接装置で行うことができる。小型の接合体を製造する場合は、加熱スポットを小さくすることのできるレーザービーム溶接装置および電子ビーム溶接装置が好ましい。
図2は、接合材3’をレーザービーム溶接装置4を用いた溶融する例を示している。
レーザービーム溶接装置4および/または溶融した接合材3’は、接合材3’に接した第1金属部材1の一部31’および第2金属部材2の一部32’を更に溶融する。溶融した接合材3’と第1金属部材1の溶融した部分31’と第2金属部材2の溶融した部分32’とは、互いに混ざり合って溶融部を形成する。
次に、この溶融部を固化させる。固化の際、溶融部において、そこに存在する元素間での共晶反応が起きる。
溶融部は、上で説明したように、溶融した接合材3’と、第1金属部材1の溶融した部分31’と、第2金属部材2の溶融した部分32’とから形成される。そのため、溶融部は、接合材3’に由来する接合元素と、第1金属部材1に由来するAlと、第2金属部材2に由来するCuとを含んでいる。なお、AlおよびCuは、溶融部において、それぞれの由来である第1金属部材1に近い部分および第2金属部材2に近い部分にそれぞれ偏在する。
第1実施形態において説明したように、AlおよびCuは、互いとの反応性よりも、接合元素との反応性が高い。そのため、AlおよびCuは、互いよりも接合元素と優先的に共晶反応を起こし、この接合元素と共に固溶体および/または金属間化合物を形成することができる。AlおよびCuを含んだ溶融部に接合元素が存在することにより、AlおよびCuはそれぞれ該接合元素と反応して固溶体および/または金属間化合物を形成することができるため、AlおよびCuからなる粗大であり且つ脆性である金属間化合物の形成を抑制することができる。
溶融部の固化が完了すると、第1金属部材1と第2金属部材2との間に、接合材3’に由来する接合元素を含む接合部が形成された接合体を得ることができる。
このように、本実施形態によると、第1実施形態に係る接合体、即ち接合強度に優れていて信頼性が高い接合体を製造することができる。
また、本実施形態において、TiおよびBを更に含んだ接合材3’を用いると、Ti−B相が分散した接合部を含んだ接合体を製造することができる。即ち、本実施形態によると、第2実施形態に係る接合体を製造することもできる。
なお、図2を参照しながら説明した接合体の製造方法では、第1金属部材1および第2金属部材2のそれぞれの端部を突き合わせる、突き合せ接合をしているが、接合方式は、特に限定されない。例えば、第1金属部材1の少なくとも一部に、第2金属部材2の少なくとも一部を重ね合わせる重ね合わせ接合もできるし、一方の端部を他方の表面に突き付ける突き合わせ接合もできる。
接合材3’の形態は、第1金属部材1の形状、第2金属部材2の形状およびこれら金属部材の接合方式に応じて、当業者が適宜選択することができる。接合材3’の形態としては、ワイヤ形状の他に、例えば、棒状、シート状または線状の形態を挙げることができる。
接合材3’を第1金属部材1および第2金属部材2の間に配置する方法も、当業者が適宜選択することができる。
端部を突き合わせる場合であれば、例えば、第1金属部材1の端部を、シート状の接合材3’を間に挟んで第2金属部材2の端部に突き合わせることを挙げることができる。
第1金属部材1の一部に第2金属部材2を重ね合わせる場合であれば、例えば、第1金属部材1の上にシート状の接合材3’を載置し、その上に第2金属部材2を重ね合わせることを挙げることができる。或いは、第1金属部材1の表面に溝を設け、この溝の中に例えば線状、棒状またはワイヤ状の接合材3’を挿置し、その上に第2金属部材2を重ねることを挙げることもできる。
また、接合材3’は、接合元素を含み且つ第1金属部材1と第2金属部材2との間に配置されれば良いので、例えば第1金属部材1または第2金属部材2の表面の少なくとも一部に設けられた接合元素を含んだ金属層の一部を接合材3’として使用することができる。
ここで、このような変形例の1つを、図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、第3実施形態に係る接合体の製造方法の変形例の一工程を示した概略図である。図4は、図3の接合体の製造方法によって得られる接合体の概略断面図である。
図3に一工程を示した接合体の製造方法は、第1金属部材1の表面を金属層34によって被覆することを除いて、図2を参照しながら説明した接合体の製造方法と同じである。
金属層34は、例えば耐食性や電気伝導性を向上させる目的で、第1金属部材1の表面に被覆される。
金属層34は、接合元素を含んでいる。接合元素は、合金または化合物の形態で金属層34に含有させることができる。金属層34に含まれる接合元素は、接合材3’が含む接合元素と同じであっても良いし、異なっていても良い。
また、金属層34は、単層でも良いし、2層以上の積層構造を有していても良い。2層以上の積層構造を用いることによって、効果を更に発揮することができる。
金属層34の形成方法は特に限定されない。金属層34は、例えば、無電解めっき、電気めっき、物理蒸着、化学蒸着、粉末の塗布および溶射などによって、第1金属部材1上に形成することができる。
金属層34の厚さは、金属層34を設ける目的などに依存するが、特に限定されない。金属層34の厚さは、例えば、単層であれば0.1μm以上、100μm以下の範囲内にすることができ、複数の層であれば0.1μm以上、500μm以下の範囲内にすることができる。例えば、めっき法で形成する場合、金属層34の厚さは、3μm以上、5μm以下の範囲内にあることが好ましく、粉末塗布法で形成する場合、金属層34の厚さは、30μm以上、50μm以下の範囲内にあることが好ましい。
また、複数層で構成される場合、金属層34の厚さは、各々の金属層の適当な厚さの合計とすることもできる。
金属層34の第2金属部材2と対向する面の少なくとも一部は、例えばレーザービーム溶接装置4によって溶融した接合材3’および/またはレーザービーム溶接装置4によって、第1金属部材1の一部31’と共に溶融する。溶融した金属層34、接合材3’、第1金属部材1の溶融した部分31’および第2金属部材2の溶融した部分32’は、溶融部を形成する。
この溶融部が固化することにより、図4に示すような、金属層34によって表面が被覆された第1金属部材1と、第2金属部材2と、第1金属部材1および第2金属部材2の間で前記溶融部が固化してなる接合部3とを含む接合体10が得られる。
前記溶融部が固化する際、該溶融部に含まれる元素間で、共晶反応が起きる。
溶融部のうち第1金属部材1に隣接した部分は、第1金属部材1に由来するAlと、接合材3’に由来する接合元素と、金属層34に由来する接合元素とを主に含む。溶融部のうち第1金属部材1に隣接した部分は、このように、互いに反応性の高いAlと接合元素とを含んでいるので、固化の際にこれらの元素が共晶反応を起こす。その結果、溶融部のうち第1金属部材1に隣接した部分が固化してなる第1領域31は、Alと接合元素との固溶体および/または金属間化合物を含むようになる。これにより、第1領域31が形成される際、第1金属部材1のAlとCuとの反応を抑制することができる。
また、溶融部のうち第2金属部材2に隣接した部分は、固化することにより、図2を用いて説明した接合材の製造方法と同様に、第2領域32になる。更に、溶融部のうち、第1金属部材1に隣接した部分と第2金属部材2に隣接した部分とに挟まれた部分は、固化することにより、図2を用いて説明した接合材の製造方法と同様に、第3領域33になる。
よって、図3に一工程を示した接合体の製造方法によると、第1実施形態に係る接合体を製造することができる。
また、図3に示した接合体の製造方法によると、例えば耐食性や電気伝導性を向上する目的で設けた金属層34を接合に寄与させることができるので、耐食性や電気伝導性に更に優れた接合体を少ない工程で製造することができる。
更に、図3に示した接合体の製造方法において、TiおよびBを更に含んだ接合材3’を使用することにより、第2実施形態に係る接合体を製造することもできる。
なお、図3に一工程を示した接合体の製造方法では、第1金属部材1に金属層34を設けているが、第2金属部材2に金属層を設けることもできるし、第1金属部材1および第2金属部材2の両方に金属層を設けることもできる。
以上説明したように、第3実施形態によれば、接合強度に優れていて信頼性の高い接合体を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る電池パックについて説明する。
第4実施形態に係る電池パックは、複数の素電池とバスバーとを備えている。複数の素電池は、各々、電極端子を含む。電極端子は、Alを含み、Cuの含有量が5.7重量%未満である。バスバーは、複数の素電池の電極端子間を電気的に接続する。また、バスバーは、Cuを含み、Alの含有量が9.4重量%未満である。電極端子は、接合部を介して、バスバーに接合されている。接合部は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。
第4実施形態に係る電池パックには、第1〜第3の実施形態のうち、1つを適用しても、複数を組み合わせて適用しても良い。
図5は第4実施形態に係る電池パック51の分解斜視図である。図6は図5の電池パック51の部分拡大図である。図7は図5の電池パック51を真上から見た図である。
図5〜7に示した電池パック51は複数の素電池52を含む。それぞれの素電池52は、第1金属部材からなる正極端子56および負極端子57を含んでいる。
1つの素電池52の正極端子56は、第2金属部材からなるバスバー55を介して、他の素電池52の負極端子57に電気的に直列に接続されている。しかしながら、一連の電気的接続の一端に位置する素電池52の正極端子56および他端に位置する素電池52の負極端子57は、それぞれ、バスバーに接続されていない状態にある。電池パック51は、この両端に位置する素電池のバスバーに接続されていない正極端子および負極端子を電気機器に接続して使用する。
バスバー55は、平板の中央に逆U字型の構造を形成した形状にあり、中央の逆U字型の湾曲部553と、湾曲部553を挟んで両側に存在する平面部552とを有している。また、バスバー55の2つの平面部552の中央部には正極端子56または負極端子57を嵌合するための開口部554が設けられている。さらに、バスバー55は、一方の平面部552から垂直にせり出した針状の接続用ピン551を有している。接続用ピン551は、第2金属部材からなる。
各素電池52の正極端子56および負極端子57は、それぞれ、対応したバスバー55の開口部554の周縁にレーザー溶接されて、接合部56aおよび57aを形成している。
これらの素電池52は電池ケース54の中に収容されており、この電池ケース54の上には、正極端子56、負極端子57ならびにバスバー55の湾曲部553の一部および接続用ピン551の一部が露出する窓が形成された電池カバー53が被せられている。電池パック51の上面には制御基板58が取付けられる。制御基板58には、複数の孔581が形成されている。接続用ピン551は、孔581に、該孔581を通して該制御基板58を貫通するように嵌合されている。また制御基板58の表面上には金属(例えば無酸素銅)製の回路(図示せず)が形成されている。
本実施形態に係る電池パック51は、第1実施形態または第2実施形態に係る接合体が、バスバー55と正極端子56および負極端子57のそれぞれとの間の接合部56aおよび57aに適用されている。
本実施形態に係る電池パック51では、接合部56aおよび57aが、例えば第3実施形態に係る方法で形成される。まず、第1金属部材からなる正極端子56および負極端子57を、それぞれ、バスバー55の対応した開口部554に少なくとも一部間隙を設けた状態で嵌合する。次に、この間隙に沿って、接合元素を含んだ線状の接合材3’を挿置する。その後、線状の接合材3’をレーザービームによって溶融させると共に、接合材3’に隣接した正極端子56および負極端子57の一部と、同じく接合材3’に隣接したバスバー55の開口部554の周縁の一部とを溶融させて、溶融部を形成する。この溶融部を冷却によって固化させて、接合部56aおよび57aを得る。
上で説明したように、第1および第2実施形態に係る接合体ならびに第3実施形態に係る方法で製造された接合体は、接合強度を向上することができ、信頼性を高くすることができる。これら接合体を適用した本実施形態に係る電池パック51は、接合強度に優れたこのような接合部56aおよび57aを含んでいるので、高性能であり且つ信頼性が高い。
なお、第4実施形態として、電極端子が第1金属部材からなり、バスバーが第2金属部材からなる構成を有した電池パックを説明した。しかしながら、当然に、電極端子が第2金属部材からなり、バスバーが第1金属部材からなる構成を有した電池パックに、第1実施形態に係る接合体または第2実施形態に係る接合体、あるいは第3実施形態に係る方法で製造された接合体を適用することもできる。また、図5では、素電池52を直列接続したが、素電池52が並列接続された電池パックにも適用することができる。
以上説明したように、第4実施形態によれば、高性能であり且つ信頼性の高い電池パックを実現することができる。
(実施例)
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
本例では、図1に示した接合体10と同様の構造を有する接合体を製造した。
まず、第1金属部材1および第2金属部材2を準備した。
第1金属部材1としては、0.2重量%のSiと、0.3重量%のFeと、残部のAlとを含有したAl材を使用した。このAl材は、厚さ3mm、幅15mm、長さが50mmであり、電気伝導率が61%IACSであった。
第2金属部材2としては、10ppm未満の酸素、0重量%のAlと、99.97重量%のCuとを含有した無酸素銅材を使用した。このCu材は、厚さ3mm、幅15mm、長さが50mmであり、電気伝導率が101%IACSであった。
第1金属部材1および第2金属部材2のそれぞれの一端に対し、切り欠きによって、60°の面取りを施した。
次に、第1金属部材1および第2金属部材2を、面取りを施した端部で突き合わせた。これにより、第1金属部材1および第2金属部材2との間に、前記切り欠き部によって形成された空隙が設けられた。
次に、上記突合せによって設けられた空隙に、線状の接合材3’を挿置した。
接合材3’としては、10重量%のNiと、残部のAgとを含有した線材を使用した。この線材は、直径が2.8mm、長さが15mmであった。この接合材3’は、粉末冶金法でAg中にNiが均一に分散した焼結体を製作し、その後、これを押出しおよび線引き加工に供して製作した。
接合材3’を挿置したのち、YAGレーザー溶接法によって、接合材3’を溶融させた。溶融した接合材3’の熱および/またはYAGレーザーにより、第1金属部材1の一部31’および第2金属部材2’の一部32’も溶融した。この溶融によって、第1金属部材1および第2金属部材2との間に溶融部が形成された。
次に、この溶融部を、冷却によって固化させた。それにより、図1に示した接合体10と同様の、第1金属部材1と第2金属部材2と第1金属部材1および第2金属部材2を接合する接合部3とを含む接合体10を得た。
次に、得られた接合体10に対し、(i)接合部の断面観察および組成分析;ならびに(ii)接合体の引張り強度分析を行った。
(i)接合部の断面観察および組成分析
得られた接合体10を切断し、第1金属部材1、第2金属部材2および接合部3を通る断面を得た。得られた切断面を、サンド・ペーパーで研磨したあと、バブ研磨に供した。その後、研磨に供した断面に対し、光学顕微鏡で断面観察を行い、その後、EPMAによって組成分析を行った。
光学顕微鏡による断面観察により、得られた接合体10の接合部は、図1に示した接合体10と同様に、第1金属部材1に隣接した第1領域31と、第2金属部材2に隣接した第2領域32と、第1領域31および第2領域32に挟まれた第3領域33とを含んでいることが分かった。
EPMAによる成分分析の結果、第1領域31は、(Ag)Al固溶体と、(Ag)Al金属間化合物と、(Ni)Al金属間化合物と、(Ag、Ni)Al金属間化合物とを含んでいることが分かった。また、第2領域32は、(Ni、Ag)Cu固溶体を含んでいることが分かった。更に、第3領域33は、Ni粒子が分散したAg基材を含んでいることが分かった。
また、EPMAによる分析では、接合部3において、AlとCuとの直接反応によって形成されるCu(Al)金属間化合物は観察されなかった。
(ii)強度分析
得られた接合体10からJIS−Z2201の金属材料引張試験片13B号を作成し、引張試験片の両端、即ち第1金属部材1側の端部と第2金属部材2側の端部とをそれぞれ引張強度試験機のホルダに固定し、この接合体10の引張り強度をJIS−Z2241の金属材料引張試験法に従って測定した。
得られた接合体10は、Ni粒子が分散したAg基材の第3領域33において、80MPaで破断した。
(実施例2)
本例では、第1金属部材1、第2金属部材2および接合材3’として異なるもの使用した点を除いて、実施例1と同じ方法により接合体を製造した。
本例では、第1金属部材1として、0.3重量%のSiと、0.7重量%のFeと、0.25重量%のCuと、1.2重量%のMnと、1.2重量%のMgと、0.25重量%のZnと、残部のAlとからなる3004Al合金材を用いた。このAl合金材は、厚さ3mm、幅10mm、長さが50mmであり、電気伝導率が38%IACSであった。
また、第2金属部材2として、1.0重量%のNiと、0.9重量Snと、残部のCuとからなるCu−Ni−Sn合金を用いた。この合金は、厚さ3mm、幅10mm、長さが50mmであり、電気伝導率が40%IACSであった。
更に、接合材3’として、30重量%のCoと、残部のAgとを含有した線材を用いた。この線材は、直径が2.8mm、長さが10mmであった。この接合材3’は、粉末冶金法でAg中にCoが均一に分散した焼結体を製作し、その後、この焼結体を押出しおよび線引き加工に供して製作した。
得られた接合体10に対し、実施例1と同様に、(i)接合部の断面観察および組成分析;ならびに(ii)接合体の引張り強度分析を行った。
光学顕微鏡による断面観察により、得られた接合体10の接合部は、図1に示した接合体10と同様に、第1金属部材1に隣接した第1領域31と、第2金属部材2に隣接した第2領域32と、第1領域31および第2領域32に挟まれた第3領域33とを含んでいることが分かった。
EPMAによる成分分析の結果、第1領域31は、(Ag)Al固溶体と、(Co)Al金属間化合物と、(Ag、Co)Al金属間化合物とを含んでいることが分かった。また、第2領域32は、(Co、Ni、Ag)Cu固溶体を含んでいることが分かった。更に、第3領域33は、Co粒子が分散したAg基材を含んでいることが分かった。
第1金属部材1にCuが微量含まれていたにも関わらず、EPMAによる分析では、得られた接合体10の接合部3において、AlとCuとの直接反応によって形成されるCu(Al)金属間化合物は観察されなかった。
得られた接合体10からJIS−Z2201の金属材料引張試験片13B号を作成し、引張試験片の両端、即ち第1金属部材1側の端部と第2金属部材2側の端部とをそれぞれ引張強度試験機のホルダに固定し、この接合体10の引張り強度をJIS−Z2241の金属材料引張試験法に従って測定した。
得られた接合体10は、Co粒子が分散したAg基材の第3領域33において、150MPaで破断した。
(実施例3)
本例では、接合材3’および接合材3’の溶融手段として異なるものを使用したことを除いて、実施例1と同じ方法で接合体を製造した。
本例では、接合材3’として、直径2.8mmのAg線材を使用した。この接合材3’は、純度99.7重量%のAgインゴットを鋳造し、その後、これを押出しおよび線引き加工に供して製作した。
また、接合材3’の溶融は、電子ビームを用いて行った。
得られた接合体10に対し、実施例1と同様に、(i)接合部の組成分析;および(ii)接合体の引張り強度分析を行った。
光学顕微鏡による断面観察により、得られた接合体10の接合部は、図1に示した接合体10と同様に、第1金属部材1に隣接した第1領域31と、第2金属部材2に隣接した第2領域32と、第1領域31および第2領域32に挟まれた第3領域33とを含んでいることが分かった。
EPMAによる成分分析の結果、第1領域31は、(Ag)Al固溶体と、(Ag)Al金属間化合物とを含んでいることが分かった。また、第2領域32は、Cu(Ag)固溶体を含んでいることが分かった。更に、第3領域33は、Ag基材を含んでいることが分かった。
EPMAによる分析では、得られた接合体10の接合部3において、AlとCuとの直接反応によって形成されるCu(Al)金属間化合物は観察されなかった。
一方、得られた接合体10を引張り試験機で試験した結果、この接合体10は、Ag基材において、60MPaで破断した。
(実施例4)
本例では、接合材3’および接合材3’の溶融手段として異なるものを使用したことを除いて、実施例1と同じ方法で接合体を製造した。
本例では、接合材3’として、3重量%のPdと、残部のAgとを含有した線材を使用した。この線材は、直径が2.8mm、長さが15mmであった。この接合材3’は、3重量%のPdと残部のAgとからなるインゴットを鋳造し、その後、これを押出しおよび線引き加工に供して製作した。
また、接合材3’の溶融は、電子ビームを用いて行った。
得られた接合体10に対し、実施例1と同様に、(i)接合部の組成分析;および(ii)接合体の引張り強度分析を行った。
光学顕微鏡による断面観察により、得られた接合体10の接合部は、図1に示した接合体10と同様に、第1金属部材1に隣接した第1領域31と、第2金属部材2に隣接した第2領域32と、第1領域31および第2領域32に挟まれた第3領域33とを含んでいることが分かった。
EPMAによる成分分析の結果、第1領域31は、(Ag)Al固溶体と、(Ag)Al金属間化合物と、(Pd)Al金属間化合物と、(Ag、Pd)Al金属間化合物とを含んでいることが分かった。また、第2領域32は、(Ag、Pd)Cu固溶体を含んでいることが分かった。更に、第3領域33は、Pdが固溶したAg基材を含んでいることが分かった。
EPMAによる分析では、得られた接合体10の接合部3において、AlとCuとの直接反応によって形成されるCu(Al)金属間化合物は観察されなかった。
一方、得られた接合体10を引張り試験機で試験した結果、この接合体10は、Pdが固溶したAg基材において、100MPaで破断した。
(実施例5)
本例では、接合材3’として異なるものを使用したことを除いて、実施例3と同じ方法で接合体を製造した。
本例では、接合材3’として、直径2.8mmのAg(Ti、B)線材を使用した。この接合材3’は、粒径が10〜25μmであり、純度が99.7重量%であるAg粉末と、粒径1μm以下であるTiB粉末とを、99.5:0.5の重量%比で混合させ、この混合物を焼結させ、その後、この焼結体を押出しおよび線引き加工に供して製作した。
得られた接合体10に対し、実施例1と同様に、(i)接合部の組成分析;および(ii)接合体の引張り強度分析を行った。
光学顕微鏡による断面観察により、得られた接合体10の接合部は、図1に示した接合体10と同様に、第1金属部材1に隣接した第1領域31と、第2金属部材2に隣接した第2領域32と、第1領域31および第2領域32に挟まれた第3領域33とを含んでいることが分かった。また、接合部3に含まれる結晶粒が、実施例3の接合体の接合部3に比べて著しく微細であった。
EPMAによる成分分析の結果、第1領域31は、(Ag)Al固溶体と、(Ag)Al金属間化合物とを含んでいることが分かった。また、第2領域32は、Cu(Ag)固溶体を含んでいることが分かった。更に、第3領域33は、TiBが分散したAg基材を含んでいることが分かった。
EPMAによる分析では、得られた接合体10の接合部3において、AlとCuとの直接反応によって形成されるCu(Al)金属間化合物は観察されなかった。
一方、得られた接合体10を引張り試験機で試験した結果、この接合体10は、TiBが分散したAg基材において、85MPaで破断した。
本例で得られた接合体の強度が実施例3で得られた接合体に比べて高いのは、接合部3に含まれる結晶粒が、著しく微細であり、それにより接合強度を向上させたものと考えられる。
(実施例6)
本例では、第1金属部材1の表面に金属層を設けた点で異なることを除いて、実施例1と同じ方法で、図4に示した接合体10と同様の構造を有する接合体を製造した。
本例では、第1金属部材1の表面に、厚さ3μmのPd金属層を、無電解めっきによって形成した。
得られた接合体10に対し、実施例1と同様に、(i)接合部の組成分析;および(ii)接合体の引張り強度分析を行った。
光学顕微鏡による断面観察により、得られた接合体10の接合部は、図4に示した接合体10と同様に、第1金属部材1に隣接した第1領域31と、第2金属部材2に隣接した第2領域32と、第1領域31および第2領域32に挟まれた第3領域33とを含んでいることが分かった。
EPMAによる成分分析の結果、第1領域31は、実施例1で得られた接合体10の接合部3の第1領域31が含む固溶体および金属間化合物に加えて、(Ag)Pd固溶体を含んでいることが分かった。また、第2領域32は、Cu(Ni)固溶体を含んでいることが分かった。更に、第3領域33は、Ni粒子が分散したAg基材を含んでいることが分かった。
EPMAによる分析では、得られた接合体10の接合部3において、AlとCuとの直接反応によって形成されるCu(Al)金属間化合物は観察されなかった。
一方、得られた接合体10を引張り試験機で試験した結果、この接合体10は、第1金属部材1において、80MPaで破断した。
(比較例)
本例では、接合材3’を用いなかった点で異なることを除いて、実施例6と同じ方法で、図8に示した接合体10を製造した。
得られた接合体10は、図8に示すように、第1金属部材1と、第2金属部材と、第1金属部材1および第2金属部材2に挟まれた接合部3とを含んでいた。
得られた接合体10に対し、実施例1と同様に、(i)接合部3の組成分析;および(ii)接合体の引張り強度分析を行った。
光学顕微鏡による断面観察により、得られた接合体10の接合部3は、大きさ数十μm〜数百μmの複数のボイド欠陥を含んでいることが分かった。
EPMAによる分析により、得られた接合体10のボイド欠陥以外の接合部3において、ラメラ状で粗大なα(Al)相とθ(CuAl2)相との共晶組織が観察された。
一方、得られた接合体を引張り試験機で試験した結果、この接合体10は、第1金属部材1側の接合部3において、20MPaで破断した。
(結果の考察)
実施例1ないし実施例6で得られた接合材は、接合部にCuおよびAlからなる粗大なθ相が含まれていなかった。一方、比較例で得られた接合材は、接合部にCuおよびAlからなる粗大なθ相が含まれていた。
実施例1ないし実施例6で得られた接合材のそれぞれの引張り強度は、比較例で得られた接合材の引張り強度よりも優れていた。これは、粗大なθ相が存在しない接合部を含んだ接合材が、このθ相が存在する接合部を含んだ接合材よりも強度が高いことを証明するものである。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の発明の実施態様を付記する。
[1]Cuの含有量が5.7重量%未満で、Alを含む第1金属部材と、Alの含有量が9.4重量%未満で、Cuを含む第2金属部材と、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを接合する接合部とを含み、前記接合部は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする接合体。
[2]前記接合部は、TiとBとをさらに含むことを特徴とする[1]に記載の接合体。
[3]前記第1金属部材と前記第2金属部材のうち少なくとも一方が、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素と固溶体、若しくは、金属間化合物を形成することを特徴とする[1]又は[2]に記載の接合体。
[4]前記第1金属部材は、Alを99.5重量%以上含有し、前記第2金属部材は、Cuを99.9重量%以上含有することを特徴とする[1]ないし[3]の何れか1つに記載の接合体。
[5][1]ないし[4]のいずれか1つに記載の接合体の製造方法であって、Cuの含有量が5.7重量%未満で、Alを含む第1金属部材と、Alの含有量が9.4重量%未満で、Cuを含む第2金属部材との間に、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む接合材を配置する工程と、前記接合材を溶融し、溶融部を形成する工程と、前記溶融部を固化させることにより、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記少なくとも1種の元素を含む接合部が形成された接合体を得る工程とを含むことを特徴とする製造方法。
[6]前記溶融部の形成は、レーザー溶接法、電子ビーム溶接法、MIGアーク溶接法およびTIGアーク溶接法から選択される溶融溶接法により行われることを特徴とする[5]に記載の製造方法。
[7]Cuの含有量が5.7重量%未満で、Alを含む電極端子を各々が含む複数の素電池と、前記複数の素電池の前記電極端子間を電気的に接続し、Alの含有量が9.4重量%未満で、Cuを含むバスバーとを備え、前記電極端子は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む接合部を介して、前記バスバーに接合されていることを特徴とする電池パック。
10…接合体、1…第1金属部材、2…第2金属部材、3…接合部、3’…接合材、31…第1領域、32…第2領域、33…第3領域、4…レーザービーム溶接装置、51…電池パック、52…素電池、53…電池カバー、54…電池ケース、55…バスバー、551…接続用ピン、552…バスバーの平面部、553…バスバーの湾曲部、554…バスバーの開口部、56…正極端子、56a…正極端子とバスバーの接合部、57…負極端子、57a…負極端子とバスバーの接合部、58…制御基板、581…制御基板に形成された孔。

Claims (6)

  1. Cuの含有量が5.7重量%未満で、Alを含む第1金属部材と、
    Alの含有量が9.4重量%未満で、Cuを含む第2金属部材と、
    前記第1金属部材と前記第2金属部材とを接合する接合部とを含み、
    前記接合部は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含み、
    前記接合部は、TiとBとをさらに含む接合体。
  2. 前記第1金属部材と前記第2金属部材のうち少なくとも一方が、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素と固溶体、若しくは、金属間化合物を形成する請求項1に記載の接合体。
  3. 前記第1金属部材は、Alを99.5重量%以上含有し、前記第2金属部材は、Cuを99.9重量%以上含有する請求項1又は2に記載の接合体。
  4. uの含有量が5.7重量%未満で、Alを含む第1金属部材と、Alの含有量が9.4重量%未満で、Cuを含む第2金属部材との間に、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Tiと、Bとを含む接合材を配置する工程と、
    前記接合材を溶融し、溶融部を形成する工程と、
    前記溶融部を固化させることにより、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接合体を得る工程と
    を含む接合体の製造方法。
  5. 前記溶融部の形成は、レーザー溶接法、電子ビーム溶接法、MIGアーク溶接法およびTIGアーク溶接法から選択される溶融溶接法により行われる請求項4に記載の製造方法。
  6. Cuの含有量が5.7重量%未満で、Alを含む電極端子を各々が含む複数の素電池と、
    前記複数の素電池の前記電極端子間を電気的に接続し、Alの含有量が9.4重量%未満で、Cuを含むバスバーとを備え、
    前記電極端子は、Si、Ni、Mn、Co、Zn、Ge、Au、AgおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む接合部を介して、前記バスバーに接合されており、
    前記接合部は、TiとBとをさらに含む電池パック。
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