JP5557817B2 - 蒸発源および成膜装置 - Google Patents

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Description

本発明は、蒸着膜を形成する装置に係り、特に蒸着材料を溶融状態で蒸発させて基板上に薄膜を形成するために有効な成膜装置に関する。
現在、有機EL素子の開発が活発化しつつある。有機ELディスプレイ(有機EL表示装置)は液晶やプラズマディスプレイなどに代わる次世代薄膜ディスプレイとして期待されている。現在でも、携帯電話などの携帯機器やカーオーディオに有機ELディスプレイが使用されている。また、有機EL照明は、すでに製品化がされているLED照明の後を追うように開発が進められている。特にLED照明は、ほとんど点発光であるために小型化には向いても発熱という制約や光の拡散に工夫が求められる。一方、有機EL照明は、面発光、形状に制約がない、透明である等の特色を有し、今後住み分けが進むかさらにLEDを超えて普及する可能性があると考えられている。
有機EL表示装置や照明装置に用いられる有機EL素子は、有機層を陰極と陽極で挟んだサンドイッチ状構造がガラス板やプラスチック板などの基板上に形成されたものである。この陰極と陽極に電圧を印加することにより各々から電子と正孔が有機層に注入され、それらが再結合して生じる励起子(エキシトン)の失活により発光する。
この有機層は、一般に電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を含む多層膜構造になっている。この有機層に使用される有機材料には高分子と低分子がある。このうち低分子材料は、蒸着装置を用いて成膜される。
一般に電極には、陰極として金属材料、陽極として透明導電材料が用いられる。陰極は電子を有機層に注入するために仕事関数が小さい方が有利であり、陽極は正孔注入層や正孔輸送層などの有機層に正孔を注入するために仕事関数が大きいことが必要であるからである。具体的には、陽極にはインジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO2)などが用いられる。陰極には、MgAg(比率が9:1)合金、Alなどが用いられる。これらの陰極材料は成膜装置として蒸着装置を用いる場合が多い。
特開昭63−76415号公報 特開2007−327125号公報
蒸発源のAlは溶融された場合、溶融したAlが坩堝の内壁面に沿って上昇し、坩堝からあふれ出る、這い上がり現象が発生することが知られている。このAlの這い上がり、あるいはAl蒸気浸入により、Alが加熱用ヒーター、あるいはヒーターを支持し電気的絶縁性をもつべき碍子に付着して電気的短絡を生じ、蒸発源故障、破損の原因となる問題があった。また、大型基板の成膜では、基板を垂直にして横方向から蒸着する縦型蒸着が必須になりつつある。
本発明の目的は、アルミの這い上がりを防止して破損が起こりにくい安定な蒸発源を有する成膜装置を提供することである。さらには、縦型蒸着できる成膜装置を提供することである。
本発明は、少なくとも、坩堝と、加熱部からなり、坩堝は蒸着材料に対する濡れ性の異なる材質からなる2種類の構造からなる坩堝であって、少なくとも開口部は濡れ性の小さい材料からなり、蒸着材料が供給される部分は濡れ性の大きい材料からなる蒸発源及びそれを有する成膜装置で構成される。
アルミの這い上がりを防止して破損が起こりにくい安定な蒸発源を有する成膜装置を提供することができる。
実施例1の成膜装置の蒸発源の概略断面図である。 実施例2の成膜装置の蒸発源の概略断面図である。 実施例3の成膜装置の蒸発源の概略断面図である。 実施例4の成膜装置の蒸発源の概略断面図である。 実施例5の成膜装置の蒸発源の概略断面図である。 実施例6の成膜装置の蒸発源の概略断面図である。 実施例7の成膜装置の他の蒸発源の概略断面図である。 実施例8の成膜装置の概略構成図である。 実施例9の成膜装置の概略構成図である。 実施例10の成膜装置の概略構成図である。 実施例11の成膜装置の概略構成図である。 実施例12の成膜装置の概略構成図である。 有機ELディスプレイ生産工程の一例を示した工程図である。 固体上に置いた液滴の断面形状を模式的に描いたものである。 比較例の成膜装置の蒸発源の概略断面図(1)である。 比較例の成膜装置の蒸発源の概略断面図(2)である。
アルミの這い上がりにより、以下の問題がある。
(1)アルミが加熱用ヒーターに付着し電気的短絡を生じ、蒸発源が破損する。
(2)冷却時に蒸着材料(アルミ)の収縮による坩堝壁面への応力により、坩堝が破損する。坩堝が大きいほど応力が大きくなるため、破壊され易い。
この問題を解決するための、具体的な主な手段は以下のとおりである。
蒸着材料(アルミ)の這い上がりは、アルミに対する坩堝材料の濡れ性が大きい場合に発生する。一般に用いられるPBN(Pyrolytic Boron Nitride)は気相成長法(CVD法)によって作られた窒化ホウ素(BN)である。PBNはアルミに対して濡れ性が大きいため、這い上がりが起こり易い。この対策として、坩堝開口部に濡れ性の小さい材料の構造体を設ける。
また、応力を小さくするため、なるべく小さい坩堝を用いる。小さい坩堝で蒸着材料の安定な蒸発を行うために、蒸着材料供給部には、蒸着材料に対して濡れ性の大きい材質の内側坩堝を設け、這い上がりによる坩堝開口部からの蒸着材料の流失を防止するため、外側には濡れ性の小さい材質の坩堝を用いる。
小さい坩堝を用いて安定に高レートで長時間蒸着できる成膜装置にするため、蒸着材料を坩堝外部から供給する手段を持たせる。
蒸発源の底面と略水平方向に蒸着材料の蒸気を放射させるために、(外側)坩堝開口部を略水平方向になるようにする。縦型蒸着するためには、略水平方向が望ましいが、略水平〜60°であればよい。坩堝開口部の向き(角度)とは、坩堝の底面部と開口部中心を結ぶ線が図示しない基板保持移動機構により保持された基板15の表面の法線方向となす角とする。
具体的手段及びその効果は、以下の通りである。
<具体的手段1>
蒸着材料(アルミ)に対する濡れ性の異なる材質からなる2種類の構造からなる坩堝で、少なくとも開口部に濡れ性の小さい材料(グラファイト、アルミナ、SiO2、BN、ジルコニア等)の構造体を配し、蒸着材料が供給される部分は濡れ性の大きい材料(PBNなど)からなる。これにより、坩堝開口部側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。そのため、破損が起こりにくい蒸発源を提供することができる。また、蒸着材料が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなるので、蒸着材料が安定に蒸発し安定な成膜ができる。
<具体的手段2>
坩堝開口部の向きが−5〜60度である。これにより、蒸着材料(アルミ)を坩堝外部から供給するので、大型基板で必須な基板縦置きで水平方向に蒸着する縦型蒸着が、安定に高レートで長時間蒸着できる。
<具体的手段3>
蒸着材料(Al)を坩堝外部から供給する手段を有する。これにより、坩堝が小さくできるので、冷却時応力を小さくでき、破損が起こりにくい。また蒸着材料が安定に蒸発する。
<具体的手段4>
Al供給手段が坩堝蒸発の反対側にある。これにより、蒸発の邪魔にならず、基板への一様な蒸着ができる。
本発明は、以下、実施例を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1は本実施例の成膜装置の蒸発源100の概略断面図である。図1(A)〜(D)の全ての蒸発源で二重坩堝(外側坩堝1、内側坩堝2)を採用している。なお、蒸発源は蒸着源ともいう。本発明においては、各坩堝において、坩堝外へ向って開口している外枠付近の部分を開口部と定義し、開口部に対向する部分を底面部といい、開口部と底面部の間に存在する部分を側面部という。
図1(A)は外側坩堝の開口部9が略水平方向を向いた(外側坩堝の開口部9の向きと、図示しない基板保持移動機構により保持された基板15の表面の法線方向とが略0度である)蒸発源100の例である。図1(A)の蒸発源は、坩堝つば8を有し、蒸着材料5の蒸気が坩堝外に向かって放射される外側坩堝1、内側坩堝2、加熱部(ヒーター)3、リフレクタ4、蒸着材料5、外筒6、外側坩堝の開口部9からなる。内側坩堝2は蒸着材料5を収容する部分なので収容部とも言う。
図1においては坩堝7を外側坩堝1と内側坩堝2の二重坩堝で構成する。外筒6と外側坩堝1に囲まれ加熱部3の存在する領域を加熱室10と呼ぶ。本実施例では、蒸着材料5はアルミ(Al)として説明する。坩堝7は蒸着材料5に対する濡れ性の異なる材質からなる2種類の構造からなる坩堝であって、外側坩堝1は、この場合外側坩堝の開口部9をも形成しており、Alに対する濡れ性の小さい材料からなり、蒸着材料5が供給される内側坩堝2は濡れ性の大きい材料からなる。Alは高温で金属と反応して合金を作るため、坩堝はセラミックなどの絶縁体で製作される。例えばPBN(Pyrolytic Boron Nitride)は気相成長法(CVD法)によって作られた窒化ホウ素(BN)である。濡れ性の大きい内側坩堝2はPBNで形成され、濡れ性の小さい外側坩堝1は濡れ性の小さいグラファイト、アルミナ、SiO2、BN、ジルコニア等で形成される。
また、内側坩堝の開口部30の向きと、蒸着材料5が坩堝外に向かって放射される外側坩堝の開口部9の向きが異なる。言い換えると、内側坩堝の開口部30の向きと、蒸着材料5が坩堝外に向かって放射される外側坩堝の開口部9の向きとが略90度(85°〜95°の範囲であれば良い)の関係を有する。さらに、内側坩堝2の底面部と、外側坩堝1の側面部が接しているともいえる。
なお、図1では内側坩堝2の側面部と、外側坩堝1の底面部が接しているが、ここは接することなく、内側坩堝2の側面部と外側坩堝1の底面部とが離れていても本発明で想定する効果を達成できる。
ここで、それぞれの坩堝の開口部の向き(角度)とは、開口部の成す平均的な面に対する法線が水平方向(図示しない基板保持移動機構により保持された基板15の表面の法線方向)となす角θとする。これにより、蒸着材料5が坩堝外に向かって放射される外側坩堝の開口部9の向きが略水平であっても、内側坩堝2に蒸着材料5を供給保持することができる。ここで、外側坩堝1は円筒状であり、水平方向から見た内側坩堝2の断面形状は外側坩堝1の円筒内面に沿うような半円のような形状である。
図1において、図示しない電源からの電力により高温になった加熱部3により内側坩堝2に入っている蒸着材料5であるAlが融点660℃以上に加熱されて溶融状態となる。
リフレクタ4により加熱部3からの輻射熱を反射させて加熱部3あるいは内側坩堝2ないし外側坩堝1に戻し発生した熱ができるだけ無駄なくAlの加熱に用いられるようにしている。
加熱部3は蒸着材料5が供給されている内側坩堝2の存在する付近を集中的に加熱するよう配置されている。これらは外筒6の中に納まり、外側坩堝1は坩堝つば8で外筒6に接している。これらが高真空に維持された図示されない真空チャンバの中に設置されている。外筒6は図示されない水冷などの冷却機構により冷却され、真空チャンバ内への余計な放出ガスを抑制したり、真空チャンバ自身の高温化を抑制している。内側坩堝2の中の溶融状態のAlからはAl蒸気が発生し外側坩堝1内に満たされ、外側坩堝の開口部9からAl蒸気が噴出される。その噴出したAl蒸気は垂直に立てられた基板15に吹き付けられ蒸着される(縦型蒸着される)。
この蒸発源100のAlは溶融された場合、溶融したAlが内側坩堝2の内壁面に沿って上昇し、坩堝からあふれ出る、這い上がり現象が発生することが知られている。実験の結果、1400℃では、溶融Alが濡れ性の大きい内側坩堝2の内壁を這い上がり、外側坩堝1の内壁にこぼれる。しかし、外側坩堝1は、Alに対する濡れ性が小さいため、外側坩堝の開口部9までは至らずにせき止められた。また、内側坩堝2の濡れ性が大きいため、Alを安定に蒸発させることができる。また、内側坩堝2が外側坩堝の開口部9に直交して、奥まった位置に配置されているため、Alのスプラッシュが発生した場合でも、外側坩堝1の内壁に衝突するだけで、基板15へは到達しないので、一様で安定な成膜ができる。
以上のように、外側坩堝の開口部9側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなるので、蒸着材料5が安定に蒸発し安定な成膜ができる。これにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を安価に提供することができる。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着に適した成膜装置を提供することができる。
図1(A)では蒸発源100の外側坩堝の開口部9の向きと、図示しない基板保持移動機構により保持された基板15の表面の法線方向とが略水平となっている。
図1(B)は、図1(A)の蒸発源100をθ=45°傾けて配置した蒸発源100である。この場合でも垂直に配置した基板15に成膜することが可能である。このように、傾けた場合、Alの這い上がりによる外側坩堝の開口部9からの流失を防止し易い。しかし、60°を越える角度になると、利用効率が大幅に低下するので、60°以下であることが望ましい。さらに望ましくは、略水平に配置することである。このとき最も利用効率を高くすることができるし、分布も一様にし易い。
一方、蒸発源100を、外側坩堝の開口部9の向きと、図示しない基板保持移動機構により保持された基板15の表面の法線方向とが5°程度だけマイナス方向に角度をもつように設置したとしても、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着が可能である。
図1(C)は、内側坩堝の開口部30の向きを外側坩堝の開口部9の向きと一致させた例である。この場合円筒形同士で製作が容易である。図1(D)は、内側坩堝の開口部30の向きを、基板保持移動機構により保持された基板15の表面の法線方向と垂直にした例である。しかし、スプラッシュを防げる利点はなくなる。図1(C)〜(D)においても、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着に適した成膜装置を提供することができる。
以上のように、実施例1に拠れば、外側坩堝の開口部9側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなるので、蒸着材料5が安定に蒸発し安定な成膜ができる。これにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を安価に提供することができる。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着に適した成膜装置を提供することができる。
これまで、坩堝の材質に関して蒸着材料に対する「濡れ性」の異なる材質からなる2種類の構造からなる坩堝であると記述した。この「濡れ性」は濡れの程度のことであり、固体上に液体を置いたときの広がり方で表すことができる。図14は固体上に置いた液滴の断面形状を模式的に描いたもので、液体と固体はある角度θで接触している。この角度を接触角といい、接触角が小さいほど(図14(a)より図14(b)の方が)「濡れ性が大きい」(あるいは、濡れ性が良い、あるいは、濡れ性が高い、あるいは、濡れ性が強い)という。ここで、例えば上記「固体」が坩堝であり、「液体、液滴」が溶融状態のAlなどの蒸着材料である。溶融Alに対する接触角の例を以下に示す。濡れ性の大きい材質の例として、窒化ホウ素(BN)は、0°である。濡れ性の小さい材質の例として、グラファイトは120°〜30°のものがあり、アルミナは45〜75°、SiO2は39°、ジルコニアは145°〜59°である。したがって、外側坩堝1の少なくとも表面は、溶融Alに対する接触角が30°以上の物質からなる。さらに、内側坩堝2の少なくとも表面は溶融Alに対する接触角が30°未満、望ましくは10°以下、さらに望ましくは1°以下の物質からなる。
図2は実施例2の成膜装置の蒸発源100の概略断面図である。実施例2では坩堝7は単体で備えられている。坩堝7の底面部、2つの側面部で囲まれる空間を収容部40とする。
図2(A)において、蒸発源100は、蒸着材料(Al)5が供給される例えばPBN製の坩堝7と例えばアルミナ製のノズル11からなる。PBNはAlに対する濡れ性が大きく、坩堝の開口部31付近まで這い上がる。ここでは加熱部3が坩堝の開口部31から遠い位置に配置されているので、蒸着材料5の溶融表面に比べて温度が低下している。さらに、Alに対して濡れ性の小さいアルミナからなるノズル11を坩堝の開口部31に配置したことにより、Alはこれ以上這い上がらず、Alが坩堝外にこぼれ落ちることはない。なお、本発明においてはノズル11を坩堝の開口部31の一部とみなしても良い。
図2(B)は、図2(A)の坩堝7とノズル11の形状を変えたものである。坩堝7には、支持構造13が備わり、坩堝7の内側で濡れ性の小さいノズル11を支持している。
図2(C)は、図2(B)とは異なる坩堝7の支持構造13の例である。これらにより、濡れ性の小さいノズル11が坩堝7内側で溶融Alの這い上がりをせき止めるので、坩堝外への這い上がりが防止できる。
これら図2(A)〜(C)は、図1(B)〜(D)のように、坩堝を傾けて配置することにより、基板15を縦に置いて水平方向(あるいは斜め方向)に蒸着する縦型蒸着のできる成膜装置を提供することができる。
以上のように、実施例2に拠れば、坩堝の開口部31側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなるので、蒸着材料5が安定に蒸発し安定な成膜ができる。
これにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を安価に提供することができる。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着のできる成膜装置を提供することができる。
図3は実施例3の成膜装置の蒸発源100の概略断面図である。本実施例の特徴は、実施例2とは異なり、濡れ性の小さい外側坩堝1の内側に、蒸着材料5の供給された濡れ性の大きい内側坩堝2が配置していることである。また、加熱部3は内側坩堝2の存在する高さまでの範囲に配置されている。これにより、外側坩堝1の上部は無駄に加熱されることなく、Alの這い上がりもし難くしている。内側坩堝2のAlは内側坩堝2の内壁を這い上がるが、濡れ性の小さい外側坩堝1の内壁には這い上がらない。外側坩堝1は図3に描かれているより短くてもよいことは言うまでもない。図3は、図1(B)〜(D)のように、坩堝を傾けて配置することにより、基板15を縦に置いて水平方向(あるいは斜め方向)に蒸着する縦型蒸着のできる成膜装置を提供することができる。
本実施例においても、外側坩堝の開口部9側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなるので、蒸着材料5が安定に蒸発し安定な成膜ができる。これにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を安価に提供することができる。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着のできる成膜装置を提供することができる。
図4は実施例4の成膜装置の蒸発源100の概略断面図である。本実施例の特徴は、濡れ性の小さい外側坩堝1と、蒸着材料5の供給された濡れ性の大きい内側坩堝2からなる坩堝7の容量が小さく、内側坩堝2に供給される蒸着材料5が少量であり、かつ、図示しない蒸着材料蓄積部と蒸着材料供給路12からなる蒸着材料供給手段を設けたことである。外側坩堝1は例えば、アルミナ製で、半径約1.5(cm)、高さ約3(cm)、容量約21(cc)である。内側坩堝2は例えば、PBN製で、半径約1.2(cm)、高さ約1.5(cm)、容量約7(cc)である。内側坩堝2内の蒸着材料(Al)5は例えば、溶融状態で高さ約0.05〜0.5(cm)である。蒸着材料5は、図示しない蒸着材料蓄積部からAl粒を内側坩堝2に供給され蒸着材料供給路12を経て、内側坩堝2に供給される。この蒸着材料供給手段を有することにより、小容量の坩堝7で大量の蒸着を行うことができる。
蒸着材料5が少量の場合、内側坩堝2の濡れ性が小さい場合、蒸着材料5が玉状になり易い。蒸着材料5が玉状になった場合は、蒸発量が安定せず蒸着流量(あるいは蒸着レート)が時間的に変化するため、一様膜厚の成膜が困難である。本実施例の場合、内側坩堝2は濡れ性が大きいので、蒸着材料5が少量の場合でも、玉状になることなく表面を充分濡らすので、安定な蒸着を行うことができる。また、蒸着材料5の溶融表面と外側坩堝の開口部9との長さが時間的にほぼ一定なので、この部分に対応するコンダクタンスは時間的に変らず、一定蒸着レートで安定な蒸着を行うことができる。小容量なため軽量なので、基板15に対して走査して成膜する機構も軽量化できる。図4は、若干の寸法を変えて、図1(B)〜(D)のように、坩堝を傾けて配置することにより、基板15を縦に置いて水平方向(あるいは斜め方向)に蒸着する縦型蒸着のできる成膜装置を提供することができる。
本実施例により、外側坩堝の開口部9側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなり、坩堝7のコンダクタンスを時間的にほぼ一定にできるので、蒸着材料5が安定に蒸発し安定した蒸着レートで成膜ができる。これらにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を安価に提供することができる。また、蒸着材料供給手段を有することにより、小容量の坩堝で大量の蒸着を行うことができる。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着のできる成膜装置を提供することもできる。
図5は、実施例5の成膜装置の蒸発源100の概略断面図である。本実施例は坩堝直径が坩堝高さより大きい点で実施例4と異なる。これにより、坩堝のコンダクタンスを大きくでき、高蒸着レートが必要な成膜装置の蒸発源100に用いることができる。
本実施例により、坩堝のコンダクタンスを大きくでき、高蒸着レートが必要な成膜装置の蒸発源100に用いることができる。
図6は実施例6の蒸着装置の蒸発源100の概略断面図である。本実施例図6(A)の実施例1の図1(A)との違いは、まず、図示しない蒸着材料蓄積部と蒸着材料供給路12からなる蒸着材料(Al)供給手段を有し、蒸着材料供給路12が外側坩堝の開口部9の反対側にあることである。さらに、蒸着材料(Al)供給手段を有すことから、濡れ性大の内側坩堝2の容量が小さい、あるいは小さくてもよい。内側坩堝2内にある蒸着材料(Al)5の量も少量である。また、外側坩堝の開口部9にノズル11を有することである。また、加熱部3が、内側坩堝2の近傍に局所的に配置されている。蒸着材料(Al)5の入った内側坩堝2は濡れ性が大きいため、内側坩堝2内のAlが少量であっても内壁が溶融Alで濡れた状態になる。このため、安定にAlが蒸発する。Alが内側坩堝2から這い上がりによりこぼれても外側坩堝1の内壁が濡れ性が小さいためせき止められ、外側坩堝の開口部9から流出することはない。Al蒸気は外側坩堝1とノズル11からなる空間に加熱された温度で決まる蒸気圧をもってほぼ一様に満たされ、Al蒸気がノズル11の開口から外へ噴出する。外側坩堝の開口部9に対向して垂直に配置された基板15にAlが蒸着される。坩堝7のコンダクタンスをノズル11の開口により決定できるので、安定した蒸着レートで成膜ができる。
さらに、蒸着材料5は、図示しない蒸着材料蓄積部からAl粒を内側坩堝2に供給され蒸着材料供給路12を経て、内側坩堝2に供給される。この蒸着材料供給手段を有することにより、小容量の坩堝7で大量の、長時間の蒸着を行うことができる。また、蒸着材料供給路12が外側坩堝の開口部9の反対側にあることにより、基板15への蒸着の障害になることなく材料供給ができる。また、Alが供給される内側坩堝2を加熱部3が局所的に効率的に加熱するために、最小限の電力で蒸着材料(Al)5を所望の温度にすることができる。
図6(B)は、実施例6の成膜装置の他の蒸発源100の概略断面図である。図6(A)との違いは、蒸着材料供給路12が外側坩堝1の側面に配置されていることである。このような配置においても、図6(A)と同様に、蒸着材料5の蒸気噴出の障害にならない。要は、蒸着材料供給路12を蒸着材料5の蒸気が坩堝外部に噴出するのを妨げない位置に配置することである。すなわち、蒸着材料供給路12が、外側坩堝1の底面部または側面部を通って内側坩堝2に接続することで、蒸着材料5の蒸気の噴出を考慮した設計としている。
本実施例により、外側坩堝の開口部9側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなり、坩堝7の蒸気圧をほぼ一定にできるので、蒸着材料5が安定に蒸発し安定した蒸着レートで成膜ができる。これらにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を提供することができる。また、蒸着材料供給手段を有することにより、小容量の坩堝7で大量の蒸着を行うことができる。また、蒸着材料供給手段の蒸着材料供給路12が、外側坩堝の開口部9の反対側、または蒸着材料5の蒸気が坩堝外部に噴出するのを妨げない位置に配置されているので、蒸着材料5の蒸気噴出の障害にならない。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着に好適な成膜装置を提供することができる。
図7は、実施例7の成膜装置の他の蒸発源100の概略断面図である。本実施例の実施例6の図6(A)との違いは、外側坩堝の開口部9が円状である場合の坩堝直径、または外側坩堝の開口部9が円状以外の形状(例えば、楕円等)である場合の長手方向の長さが外側坩堝1の深さ(外側坩堝の開口部9から底面部までの長さ)より大きいことである。
これにより、ノズル11の開口面積を大きく設定でき、これに依存するコンダクタンスを大きくでき、高蒸着レートが必要な成膜装置の蒸発源100に好適となる。これ以外の効果は、実施例6と同様である。
以上の実施例は、専ら成膜装置に用いる蒸発源100について説明した。以後、これらの蒸発源100を用いた成膜装置に関する例を示す。
図8は、実施例8の成膜装置の概略構成図である。図8は、図6(A)の蒸発源を用いた成膜装置の例である。蒸発源100は、実施例6(A)に限定されるものではなく、例えば実施例7の蒸発源100であってもよいことは言うまでもない。
高真空に維持された、真空チャンバ14の中に、基板15と、その上に成膜された有機薄膜16と、基板15を保持し、上下に走査、移動するための基板保持移動機構20が配置されている。この基板保持移動機構20によって、基板15は移動ガイド21に沿って真空チャンバ14内を上下移動する。また、基板上にパターンを形成するためのメタルマスク17と、図6(A)の蒸発源100を複数個並べた蒸発源群18、基板15への成膜レートをモニタする蒸発源100に固定された膜厚モニタ19が設けられている。蒸発源群18の蒸発源100は蒸着材料供給路12を備え、粒状の蒸着材料(Al)5が格納され、蒸着材料供給路12へのAl粒の量を調整する機構を備えた蒸着材料蓄積部27、蒸着材料蓄積部27を制御する蒸着材料供給制御器28を備える。蒸発源群18が備える図示しない坩堝を加熱する加熱部3に電力を投入する電源23と、膜厚モニタ19からの信号を受けて膜厚情報を電源23にフィードバックする膜厚制御器22を備え、蒸発源群18から蒸発粒子の発生量を調節するために蒸発源群18の温度を制御する。基板15を上下に移動させる基板保持移動機構20を制御する移動機構制御器24と、電源23と膜厚制御器22、蒸着材料供給制御器28および移動機構制御器24を制御する制御器25を備えている。
基板15に成膜された有機薄膜16の次には、界面層としてアルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物やフッ化物、例えばLiFなどの極薄膜(〜0.5nm)が形成される。
この後にAl薄膜(〜150nm)が形成される。このAl薄膜を全て蒸着で形成する場合や、より薄いAl薄膜を蒸着で形成した後、真空チャンバ14から別の真空チャンバに移動してスパッタにより残りのAl薄膜を形成する場合がある。
Alの蒸着は以下のように行う。制御器25により膜厚制御器22、電源23、移動機構制御器24、蒸着材料供給制御器28が制御される。電源23により蒸着材料5としてAlが収容された複数個の蒸発源100からなる蒸発源群18の各加熱部3がそれぞれ加熱され、これらの蒸発源100からなる蒸発源群18の水平向きの各坩堝開口部9から、蒸着粒子、今の場合Al粒子(蒸気)が基板15に向かって噴射する。蒸発源100を列状に並べて蒸発源群18とし、蒸発源群18と基板15を相対的に走査することにより、基板15への一様な成膜が可能となる。膜厚制御器22は、噴出されたAl粒子の一部を検出する膜厚モニタ19からの信号を受けて膜厚情報を電源23にフィードバックし、蒸発源100が備える図示しない坩堝を加熱して蒸発源群18から蒸発粒子を発生させるために蒸発源群18の温度を蒸発源100ごとに制御して、基板15へのAl蒸着速度を一定に維持する。蒸発源群18の蒸発源100にはそれぞれ坩堝7の温度を検出する図示しない温度検出器が備えられ、各蒸発源ユニットの坩堝温度をモニタし、ほぼ1400℃に維持された上で、膜厚モニタ19を用いてより正確に蒸着膜厚が制御される。図8には膜厚モニタ19は1個しか描かれていないが、蒸発源群18の各蒸発源100に対して1個ずつ設けて個別に蒸着速度を制御することが望ましい。蒸発源群18は、移動機構制御器24により制御される基板保持移動機構20によって移動ガイド21に沿って真空チャンバ14内を上下移動する。蒸発源群18は片道、あるいは往復水平方向に走査され、メタルマスク17を通して基板15上に形成された有機薄膜16、LiF薄膜上に蒸着されAl薄膜が形成される。
基板15の走査は以下のように行う。まず、基板15は蒸発源群18から発せられるAl蒸気が到達しない位置まで下方に下げた待機位置で待機する。このとき防着板、あるいはシャッターを蒸発源群18の上方に設置して、待機位置が蒸発源群18から離れすぎないようにすることが望ましい。この位置から基板15を上方に移動、走査しながら、基板15の表面に蒸着材料5を蒸着する。基板15の走査に伴い、基板15の下方から上方に向かって基板15の表面に蒸着材料5が蒸着される。基板15の下方まで蒸着された後、今度は基板15が下方に走査され、さらに蒸着材料5が蒸着されて再び基板15は待機位置に戻る。
蒸着材料5は坩堝7の中に、少なくとも上記走査でなくならない量が収容されている。
待機位置で、待機時間に蒸着材料供給路12から粒状の蒸着材料(Al)5が坩堝7に供給される。蒸着材料供給路12へは、蒸着材料供給制御器28からの命令により、Al粒の供給量を調整する機構を備えた蒸着材料蓄積部27から供給される。Al粒の供給量を調整する機構は、例えば、蒸着材料蓄積部27と蒸着材料供給路12の接続部にシャッタを設けて、供給量を重量計測によりモニタしながら、シャッタを開閉して坩堝7への蒸着材料5の供給量を制御する。また、本成膜装置のメンテナンス前には、坩堝7内の蒸着材料5は全て蒸発させて坩堝7内、あるいは外側坩堝1(内側坩堝2)内に残らないようにする。これにより、坩堝温度が冷却する過程でAlと坩堝材料の間に働く応力をなくすことができ、破損しない蒸発源100となる。Alが坩堝7内に残留する場合でも、坩堝7が小さいため、坩堝温度が冷却する過程でAlと坩堝材料の間に働く応力を小さくすることができるので、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。
また、本実施例では、基板15を垂直(上下)方向に走査したが、蒸発源100を上下方向に並べて蒸発源群18とし、基板15を水平方向に走査してもよい。
本実施例により、坩堝開口部側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。蒸着材料供給手段を有することにより蒸着材料5を収容する坩堝7を小さくでき、坩堝温度が冷却する過程でAlと坩堝材料の間に働く応力を小さくすることができる。さらに、坩堝7が小さいので、蒸着材料5を飛ばしきるシーケンスにすることが容易にでき、冷却時応力が働かないようにすることができる。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される坩堝7が濡れ性の大きい材料からなり、蒸着材料5が坩堝表面を濡らし、蒸着材料5が安定に蒸発し、坩堝7の蒸気圧をほぼ一定にできるので、安定した蒸着レートで成膜ができる。これらにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を提供することができる。また、蒸着材料供給手段を有することにより、小容量の坩堝7で大量かつ長時間の蒸着を行うことができる。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着する成膜装置を提供することができる。
図13は、有機ELディスプレイ生産工程の一例を示した工程図である。図13において、有機層と有機層に流れる電流を制御する薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFT基板と、有機層を外部の湿気から保護する封止基板は別々に形成され、封止工程において組み合わされる。
図13のTFT基板の製造工程において、ウェット洗浄された基板15に対してドライ洗浄を行う。ドライ洗浄は紫外線照射による洗浄を含む場合もある。ドライ洗浄されたTFT基板に先ず、TFTが形成される。TFTの上にパッシベーション膜および平坦化膜が形成され、その上に有機EL層の下部電極が形成される。下部電極はTFTのドレイン電極と接続している。下部電極をアノードとする場合は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜が使用される。
下部電極の上に有機EL層が形成される。有機EL層は複数の層から構成される。下部電極がアノードの場合は、下から、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層である。このような有機EL層は蒸着によって形成される。
有機EL層の上には、各画素共通に、ベタ膜で上部電極が形成される。有機EL表示装置がトップエミッションの場合は、上部電極にはIZO等の透明電極、あるいは、Ag、MaAg等の金属あるいは合金が使用され、有機EL表示装置がボトムエミッションの場合は、Ag、Mg、Al等の金属膜が使用される。以上で説明した前記のAl蒸着等の例は本工程での上部電極の蒸着に相当する。
図13の封止基板工程において、ウェット洗浄およびドライ洗浄を行った封止基板に対してデシカント(乾燥剤)が配置される。有機EL層は水分があると劣化をするので、内部の水分を除去するためにデシカントが使用される。デシカントには種々な材料を用いることができるが、有機EL表示装置がトップエミッションかボトムエミッションかによってデシカントの配置方法が異なる。
このように、別々に製造されたTFT基板と封止基板は封止工程において、組み合わされる。TFT基板と封止基板を封止するためのシール材は、封止基板に形成される。封止基板とTFT基板を組み合わせた後、シール部に紫外線を照射して、シール部を硬化させ、封止を完了させる。このようにして形成された有機EL表示装置に対して点灯検査を行う。点灯検査において、黒点、白点等の欠陥が生じている場合でも欠陥修正可能なものは修正を行い、有機EL表示装置が完成する。なお、封止基板が存在しない、いわゆる固体封止の有機EL表示装置の製造についても、本発明の蒸着装置を使用できることは言うまでもない。
図9は、実施例9の成膜装置の概略構成図である。実施例8との違いは、基板15は静止し、蒸発源群18が走査されることである。実施例8との違いのみを以下に記す。蒸発源群18を保持し、移動ガイド21に沿って上下に移動させる蒸発源保持移動機構29、蒸発源保持移動機構29を制御する移動機構制御器24、および移動機構制御器24を制御する制御器25を備えている。
また、本実施例では、蒸発源群18を垂直(上下)方向に走査したが、蒸発源100を上下方向に並べて蒸発源群18とし、蒸発源群18を水平方向に走査してもよい。
本実施例に拠れば、基板15よりコンパクトな蒸発源群18が移動するので、走査の移動距離をより短縮することができる。これにより、よりコンパクトな成膜装置を提供することができる。
図10は、実施例10の成膜装置の概略構成図である。実施例9との違いは、蒸着材料蓄積部27が静止して配置され、走査される蒸発源群18と切り離されていることである。実施例9と違いのみを以下に記す。蒸着材料蓄積部27は、蒸発源群18の待機位置(図10に示す位置)に配置されている。蒸発源群18は、まず待機位置で蒸着材料蓄積部27から蒸着材料供給路12を経て蒸着材料(Al)粒の補給を受ける。蒸着材料供給路12の入口はラッパ状に広がっており、口にはシャッタを備えており、蒸発源群18が待機位置で蒸着材料5の補給を受けるタイミングでシャッタが自動的に開く。蒸着材料蓄積部27には、蒸発源群18の各蒸発源100の蒸着材料供給路12に対応する位置に、蒸着材料供給のための出口が設けられている。この出口には出口を開閉する開閉機構が設けられており、蒸着材料供給制御器28によってこの開閉機構が制御されることにより、坩堝7への蒸着材料供給量が制御される。蒸着材料の供給を終えると、蒸発源群18の蒸着材料供給路12の入口シャッタは閉じられ、蒸気が外に出ないようにしている。蒸発源群18は上方に走査されるとともに、基板方向へ蒸気を放出して、基板15に蒸着材料5が蒸着される。蒸発源群18は、基板上まで達して、基板全体を一様に成膜すると、下方に走査され、往復で蒸着を行い、再び待機位置へ戻り、1枚の基板15の成膜を終える。次には、自動的に基板15を交換して、同様な手順で次の基板の成膜を行う。
蒸着材料供給制御器28は、基板15へ成膜しないタイミングで蒸着材料5の供給を行う。これは、上述のように蒸着材料5の供給中は蒸着材料供給路12の入口シャッタを開けたままにしておく必要があり、開けたままだと基板15へ成膜に悪影響を及ぼすからである。
また、本実施例では、蒸発源群18を垂直(上下)方向に走査したが、蒸発源100を上下方向に並べて蒸発源群18とし、蒸発源群18を水平方向に走査してもよい。また、蒸着材料供給路12の入口はラッパ状に広がっているとしたが、広がっていなくても、例えば筒状でもよい。ただし、ラッパ状になっていた方が、蒸着材料5が外にこぼれにくい。また、蒸着材料蓄積部27からの蒸着材料5の供給頻度を、基板15を1枚ごとに1回の例を述べたが、これに限るものではない。基板2枚に1回でも、基板8〜10枚に1回でもよいが、頻度を高くするほど、蒸発源群18を軽量化できる。蒸発源群18がコンパクトで、軽量化できるので、蒸発源群18の移動機構もコンパクト化できる。
本実施例に拠れば、静止した蒸着材料蓄積部27とは別に、蒸発源群18の走査が行われる。蒸発源群18がより軽量、コンパクトにできるので、蒸発源群等保持移動機構26も軽量、コンパクトにすることができる。これにより、よりコンパクトな成膜装置を提供することができる。
図11は、実施例11の成膜装置の概略構成図である。実施例10との違いは、蒸発源群18の蒸発源100は図の左から奇数番目の蒸発源100の坩堝7には蒸着材料A、偶数番目の蒸発源100の坩堝7には蒸着材料Bが収容されており、A、B2元の共蒸着を行うことができる。このような蒸発源群18に合わせて、蒸着材料蓄積部27は、個々の蒸発源100ごとに独立した材料室となり、対応する蒸着材料5が仕込まれている。蒸着材料供給路12はこれらの蒸発源群18の個々の蒸発源100と蒸着材料蓄積部27の個々の材料室とを接続する。膜厚モニタ19は図11では右端の蒸発源用の1個しか描かれていないが、すべての蒸発源100に同様に備わっており、個々に蒸着レートが制御される。
本実施例に拠れば、実施例10と同様に、蒸発源群18の蒸発源100が極めて軽量、コンパクトにできるので、多元の共蒸着を行う場合でも蒸発源100を一列に並べることができ、蒸発源群18がコンパクトになり、膜厚モニタ19がモニタし易い位置に設置し易い。これにより、よりコンパクトで、共蒸着を制御性よく行うことができる安定な成膜装置を提供することができる。本実施例では、共蒸着として2元の例を述べたが、3元以上も同様に可能であることは言うまでもない。
図12は、実施例11の成膜装置の概略構成図である。実施例10との違いは基板が水平に配置され、これに伴い、蒸発源群18が上向きであることである。次に、蒸着材料供給路12が蒸着材料蓄積部27側に設けられていることである。まず、蒸着材料蓄積部27が静止して配置され、走査される蒸発源群18と切り離されていることである。実施例10と違いのみを以下に記す。蒸発源群18の各蒸発源100の坩堝7には、待機位置で上方の蒸着材料蓄積部27から蒸着材料供給路12を経て、蒸着材料5が供給される。この供給は坩堝の開口部31が上方向きなので、これと異なる向きに孔を開ける必要がなく、蒸気が漏れる心配がない。本実施例に拠れば、実施例10と同様に、蒸発源群18の蒸発源100が極めて軽量、コンパクトにでき、不要に蒸気が漏れる心配がない安定な成膜装置を提供することができる。
以上の実施例1から12までに述べた本発明は、上記の形態のみに制限されず、上記で述べた様々な組み合わせも含まれる。また、有機EL表示装置や照明装置に用いられる有機EL素子を製造する工程を例にして述べたが、磁気テープ、お菓子の袋のAl内装等、他分野の蒸着工程を含むものの全てに適用可能であることは言うまでもない。
以上のように、本発明による成膜装置によれば、坩堝の開口部側がアルミに対して濡れ性の小さい材料で構成されているので、坩堝外への這い上がりが発生しにくい。これにより、破損が起こりにくい蒸発源100を提供することができる。また、蒸着材料5が供給される部分が濡れ性の大きい材料からなるので、蒸着材料が安定に蒸発し安定な成膜ができる。これにより、Alの這い上がりを防止できて故障、破損が起こりにくく安定に成膜できる蒸発源100を有する成膜装置を安価に提供することができる。さらに、基板15を縦に置いて水平方向に蒸着する縦型蒸着に適した成膜装置を提供することができる。
また、蒸着材料供給手段を有することにより、小容量の坩堝7で大量の蒸着を行うことができる。また、蒸着材料供給手段の蒸着材料供給路12が、坩堝開口部の反対側、ないし蒸着材料の蒸気が坩堝外部に噴出するのを妨げない位置に配置されているので、蒸着材料5の蒸気噴出の障害にならない。
さらには、蒸発源群18がより軽量、コンパクトにできるので、蒸発源群等保持移動機構26も軽量、コンパクトにすることができる。これにより、よりコンパクトな成膜装置を提供することができる。また、多元の共蒸着を行う場合でも蒸発源100を一列に並べることができ、膜厚モニタ19がモニタし易い位置に設置し易い。これにより、よりコンパクトで、共蒸着を制御性よく行うことができる安定な成膜装置を提供することができる。
以上で説明した構成では、基板15に対して蒸発源100が所定の方向に移動して、基板に蒸着する構成である。しかし、本発明は、蒸発源100が固定され、基板15が所定の方向に移動する構成の蒸着装置に対しても適用することができる。すなわち、基板15に均一な蒸着膜を形成するには、基板15と蒸発源100とが相対的に移動すればよい。
しかし、本発明の蒸発源群18は軽量、コンパクトにできるので、蒸発源100を移動させるほうが、移動距離を短縮でき、成膜装置もコンパクトにできる利点がある。また、前述した各実施形態の諸組み合わせで、可能なもの全てが本発明として実施可能であることは言うまでもない。
以上、前記諸実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
<比較例1>
図15は、比較例として、本発明の構成を採用しない成膜装置の蒸発源200の概略断面図(1)を示す。PBN(Pyrolytic Boron Nitride)からなる坩堝207の中に蒸着材料5が収容されており、この坩堝207を加熱部(ヒーター)203により加熱し、リフレクタ204により逃げる熱を坩堝207、加熱部203へ戻して熱効率を上げて蒸着材料205を加熱する。加熱された蒸着材料205は昇華あるいは気化により蒸発して、坩堝の開口部209から噴出し図示しない基板上に蒸着材料205が蒸着される。
特に蒸着材料205がAlの場合、Alは融点以下で蒸気圧が低いため温度を融点(660℃)以上に設定して溶融状態で蒸着する。この場合に、溶融したAlが坩堝207の内壁面に沿って上昇し、坩堝207からあふれ出る、いわゆる這い上がり現象が発生することが知られている。溶融したAlは図14の坩堝(本体)207の内壁を這い上がり、温度等の条件によっては坩堝の開口部209の坩堝つば208上面を這い上がり、加熱部203の配置されている坩堝207と外筒206で囲まれた加熱室210に回り込む場合がある。Alが加熱室210に入り込むと、加熱部203、リフレクタ204に付着反応して、加熱部203を劣化させ断線の原因になったり、加熱部203を支える図示しない絶縁碍子に堆積して導電性をもたせ、リフレクタ204に堆積し、表面導電性をもつ碍子を介して加熱部203とリフレクタ204(この場合接地されているとする)が電気的に短絡するなど、蒸着装置の蒸発源故障の原因となる問題があった。
また、大型基板の成膜では、基板を垂直にして横方向から蒸着する縦型蒸着が、マスクのたわみが無く合わせ精度をよくできるので、必須になりつつある。
<比較例2>
図16は、図15と同様に、比較例として、本発明の構成を採用しない成膜装置の蒸発源200の概略断面図(2)を示す。図16では、坩堝の開口部209略水平方向を向いた(坩堝の開口部209の向きと、図示しない基板保持移動機構により保持された基板の表面の法線方向とが略0度である)蒸発源100の例である。
この蒸発源200のAlは溶融された場合、溶融したAlが坩堝207の内壁面に沿って上昇し、坩堝からあふれ出る、這い上がり現象が発生する。また、Alのスプラッシュが発する可能性もある。
なお、この比較例2に対し、実施例1の図1(A)では内側坩堝2が外側坩堝1の開口部9に直交して、奥まった位置に配置されているため、Alのスプラッシュが発生した場合でも、外側坩堝1の内壁に衝突するだけで、基板15へは到達しない。また、たとえAlが外側坩堝1の側面に流れ出たとしても、外側坩堝1は濡れ性が小さいので這い上がり現象の発生を防ぐことができる。
本発明は、蒸着装置に関し、特に、故障、破損が起こりにくい蒸発源を有する成膜装置に利用可能である。
1 外側坩堝
2 内側坩堝(収容部)
3、203 加熱部(ヒーター)
4、204 リフレクタ
5、205 蒸着材料
6、206 外筒
7、207 坩堝
8、208 坩堝つば
9 外側坩堝の開口部
10、210 加熱室
11、211 ノズル
12 蒸着材料供給路
13 支持構造
14 真空チャンバ
15 基板
16 有機薄膜
17 メタルマスク
18 蒸発源群
19 膜厚モニタ
20 基板保持移動機構
21 移動ガイド
22 膜厚制御器
23 電源
24 移動機構制御器
25 制御器
26 蒸発源群等保持移動機構
27 蒸着材料蓄積部
28 蒸着材料供給制御器
29 蒸発源保持移動機構
30 内側坩堝の開口部
31、209 坩堝の開口部
100、200 蒸発源

Claims (9)

  1. Alを収容する内側坩堝と、前記内側坩堝を収容しAlの蒸気を外部に放射する外側坩堝とを備えた坩堝と、
    前記内側坩堝に収容されたAlを加熱する加熱部と、を有する蒸発源であって、
    前記内側坩堝のAlに対する濡れ性は、前記外側坩堝のAlに対する濡れ性よりも大きく、
    前記内側坩堝の底面部と、前記外側坩堝の側面部が接し、
    前記内側坩堝の開口部が前記外側坩堝の側面部に対向していることを特徴とする蒸発源。
  2. 請求項1に記載の蒸発源であって、
    前記加熱部を前記内側坩堝の近傍に配置したことを特徴とする蒸発源。
  3. 請求項2に記載の蒸発源であって、
    前記坩堝の外部にある蒸着材料蓄積部から前記内側坩堝へAlを供給する蒸着材料供給手段を備えたことを特徴とする蒸発源。
  4. 請求項3に記載の蒸発源であって、
    前記蒸着材料供給手段は、前記内側坩堝のAlの蓄積状態を検出し、Alの蓄積状態に基づいて前記内側坩堝へのAlの供給を中止することを特徴とする蒸発源。
  5. 請求項3または4に記載の蒸発源であって、
    前記蒸着材料供給手段は、前記坩堝の底面部または側面部を通って前記内側坩堝に接続することを特徴とする蒸発源。
  6. 請求項3乃至5のいずれかに記載の蒸発源であって、
    前記蒸着材料供給手段は、基板へ成膜しないタイミングでAlの供給を行うことを特徴とする蒸発源。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の蒸発源を複数並べて構成する蒸発源群と、
    基板を保持する基板保持部とを有する成膜装置であって、
    前記蒸発源または前記基板保持部のうち一方が走査し、他方が静止することで基板を成膜することを特徴とする成膜装置。
  8. 請求項7に記載の成膜装置であって、
    前記外側坩堝の開口部の向きと、前記基板保持部により保持された基板の表面の法線方向とが−5〜60度の範囲にあることを特徴とする成膜装置。
  9. 請求項7または8に記載の成膜装置であって、
    前記蒸発源が走査し、前記基板保持部が静止する場合において、前記蒸着材料蓄積部は静止していることを特徴とする成膜装置。
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