JP2014107037A - 蒸着装置及びこれに用いる蒸発源 - Google Patents

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Kenichi Yamamoto
健一 山本
Toshiaki Kusunoki
敏明 楠
Takeshi Tamakoshi
武司 玉腰
Tatsuya Miyake
竜也 三宅
Hiroyasu Matsuura
宏育 松浦
Eiji Matsuzaki
永二 松崎
Akio Yazaki
秋夫 矢崎
Tomohiko Ogata
智彦 尾方
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Abstract

【課題】材料供給部を有する蒸着装置の蒸発源において、蒸着材料の液体の温度を安定させるとともに、蒸着材料の気体が固体材料供給部に逆流しないようにし、蒸着レートの変動並びに当該気体による材料供給部の汚染及び詰まりを防止し、これにより長時間の稼働を安定的に行う。
【解決手段】真空チャンバと、この真空チャンバに内蔵された蒸発源と、を備えた蒸着装置において、蒸発源は、固体の蒸着材料を供給する材料供給部と、蒸着材料を加熱する加熱源と、蒸着材料を溶融し液体とする溶融部と、その液体を蒸発させ気体とする蒸発部と、を含み、蒸発部からその気体を放出し、真空チャンバに導入した基板に蒸着材料を蒸着する構成を有し、溶融部と蒸発部との間にはその気体の逆流防止部を設け、逆流防止部は、その液体によってその気体の流路を封じる構成とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、蒸着膜を形成する蒸着装置及びこれに用いる蒸発源に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、現在および将来の素子として活発に開発が進められている。現在、有機ELディスプレイ(有機EL表示装置)は、携帯電話などの携帯機器やカーオーディオ等に使用されている。さらに、液晶やプラズマディスプレイなどに代わる次世代大型ディスプレイとして製品化されようとしている。また、有機EL照明は、普及し始めたLED(Light Emitting Diode)照明の後を追うように開発が進められている。LED照明は、ほとんど点発光であるために小型化には向いても発熱という制約や光の拡散に工夫が求められる。一方、有機EL照明は、面発光、形状に制約がない、透明である等の特色を有し、今後住み分けが進むかさらにLEDを超えて普及する可能性があると考えられている。
有機EL表示装置や照明装置に用いられる有機EL素子は、有機材料層(有機層)を陰極と陽極で挟んだサンドイッチ状構造がガラス板やプラスチック板などの基板上に形成されたものである。この陰極と陽極に電圧を印加することにより各々から電子と正孔が有機層に注入され、それらが再結合して生じる励起子(エキシトン)の失活により発光する。
この有機層は、一般に、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を含む多層膜構造になっている。この有機層に使用される有機材料には高分子と低分子がある。このうち低分子材料は、蒸着装置を用いて成膜される。有機EL素子には、有機層の下にあるTFT基板を「底」と考え、光を下から取り出すボトムエミッション型と、上から取り出すトップエミッション型とがある。
一般に、電極には、陰極として金属材料、陽極として透明導電材料が用いられる。陰極は、電子を有機層に注入するために仕事関数が小さい方が有利であり、陽極は正孔注入層や正孔輸送層などの有機層に正孔を注入するために仕事関数が大きいことが必要であるからである。具体的には、陽極にはインジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)などが用いられる。陰極には、マグネシウム銀(MgAg)合金、アルミニウム(Al)などが用いられる。有機層や界面に損傷を与えないため、陰極の成膜装置として蒸着装置を用いる場合が多い。
次世代大型ディスプレイに用いられる大型パネルでは上部電極を低抵抗にできるボトムエミッション型が優位で、上部電極の候補としてAlが考えられる。Alを使用する場合は、MgAgより電流注入特性に優れるLiF(膜厚〜0.5nm)を界面に形成したLiF/Al陰極が用いられる。
Alをボトムエミッション型の上部電極に用いるためには、膜厚を厚くする必要がある。しかし、Alは、Mg及びAgに比べて同温度での蒸気圧が低いため、短時間に厚膜を形成するためには、蒸着材料であるAlをより高温にする必要がある。さらに、メンテナンス頻度を増加させないためには、長時間連続で蒸着を行う必要がある。このためには、蒸着材料供給手段もった蒸発源が有効である。これまでにも蒸着材料供給手段もった蒸発源が用いられ、改善が試みられてきた。
特許文献1には、蒸着材料をAlとし、ワイヤ状の蒸着材料を供給し、案内ノズルと坩堝との間にシャッタを設けた構成とすることにより、非供給時に案内ノズルの先端開口部に蒸発物が付着することを阻止できるようにした蒸着材料供給装置が開示されている。
特許文献2には、少なくとも1つの物質で複数の基板をコーティングするための蒸発装置であって、溶融区域と、蒸発区域と、溶融区域および蒸発区域の間に設けられ、両者を連結する加熱区域と、溶融区域および蒸発区域の各々を異なる温度に加熱する加熱装置とを有する少なくとも1つの坩堝を具備し、加熱区域を介して溶融物質が溶融区域から蒸発区域内へ流入するようになっていて、加熱区域の温度は溶融区域の温度および蒸発区域の温度の間とした蒸発装置が開示されている。
特開2008−50630号公報 特開2007−39809号公報
特許文献1の場合、案内ノズルに高圧蒸気が当たることには変わりがなく、材料供給部からの蒸着材料の蒸気による汚染及び詰まりを根本的に防止するものではない。
特許文献2の場合、材料供給部からの蒸着材料の蒸気による汚染及び詰まりを防止することは考慮されていない。
以上のように、材料供給手段を有する蒸発源の従来例はあるが、坩堝内の溶融蒸着材料の温度変動による蒸着レートの変動、材料供給部からの蒸着材料の蒸気による汚染及び詰まりを防止する効果的な解決手段は存在しなかった。
蒸着材料(例えばAl)を短時間で厚く成膜し、かつ、長時間にわたって連続的に成膜する必要がある。高膜厚の蒸着材料(例えばAl)を短時間で成膜するためには、蒸着材料の蒸着を高温で行う必要があるが、基板の温度上昇を抑制しなければならない。さらに、長時間にわたって連続的に成膜するためには、蒸着材料を供給できる小形の蒸発源を用いることが有利である。これは、基板温度上昇を抑えるため、放熱部を小さくできる。
蒸着材料供給手段を持つ蒸発源には、以下の問題点があった。
蒸着材料を蒸発源の坩堝(蒸発部)に供給することによって蒸発部の溶融した蒸着材料(溶融材料)の温度が変化し、蒸気圧が変化する。これにより、蒸着レートが変化し、一様な成膜ができなくなる。
また、蒸発部からの蒸気が基板だけでなく、材料供給部へ吹き付け、材料供給部の開口部が詰まる、蒸気のチャンバ内汚染による蒸着装置のメンテナンス頻度が増加する等の問題があった。
本発明の目的は、蒸着材料供給手段(材料供給部)を有する蒸着装置の蒸発源において、蒸着材料の液体の温度を安定させるとともに、蒸着材料の気体が固体材料供給部に逆流しないようにし、蒸着レートの変動並びに当該気体による材料供給部の汚染及び詰まりを防止し、これにより長時間の稼働を安定的に行うことにある。
本発明の蒸着装置は、真空チャンバと、この真空チャンバに内蔵された蒸発源と、を備え、蒸発源は、固体の蒸着材料を供給する材料供給部と、蒸着材料を加熱する加熱源と、蒸着材料を溶融し液体とする溶融部と、その液体を蒸発させ気体とする蒸発部と、を含み、蒸発部からその気体を放出し、真空チャンバに導入した基板に蒸着材料を蒸着する構成を有し、溶融部と蒸発部との間にはその気体の逆流防止部を設け、逆流防止部は、その液体によってその気体の流路を封じる構成であることを特徴とする。
本発明によれば、材料供給部を有する蒸着装置の蒸発源において、蒸着材料の液体の温度を安定させるとともに、蒸着材料の気体が固体材料供給部に逆流しないようにすることができ、蒸着レートの変動並びに当該気体による材料供給部の汚染及び詰まりを防止し、これにより長時間の稼働を安定的に行うことができる。
実施例1の蒸発源を示す断面図である。 実施例1の蒸発源の変形例を示す断面図である。 有機ELディスプレイ生産工程の一例を示すフローチャートである。 実施例2の蒸発源の加熱部及び溶融部を示す上面図である。 実施例2の蒸発源の加熱部及び溶融部を示す断面図である。 実施例2の他の蒸発源の加熱部及び溶融部を示す断面図である。 実施例2の他の蒸発源の加熱部及び溶融部を示す断面図である。 実施例3の蒸発源を示す断面図である。 実施例3の蒸発源の溶融部及び加熱部を示す断面図である。 実施例3の蒸発源の溶融部及び加熱部を示す断面図である。 実施例4の蒸発源の溶融部及び蒸発部を示す断面図である。 実施例4の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。 実施例4の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。 実施例5の蒸発源の蒸着材料導入部、溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。 実施例5の蒸発源の蒸着材料導入部、溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。 実施例6の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を組み立てた状態を示す上面図である。 図11AのA−B断面図である。 図11Bの蒸発源の加熱部及び蒸発部の下部を構成する部品を示す上面図である。 図12AのA−B断面図である。 図11Bの蒸発源の溶融部及び加熱部の上部を構成する部品を示す上面図である。 図13Aの部品の側面図である。 図13AのA−B断面図である。 実施例6の変形例を示す上面図である。 図14AのA−B断面図である。 実施例6の他の変形例を示す上面図である。 図15AのA−B断面図である。 実施例6の他の変形例を示す上面図である。 図16AのA−B断面図である。 図16Bの蒸発源の加熱部及び蒸発部の下部を構成する部品を示す上面図である。 図17AのC−D断面図である。 図17AのA−B断面図である。 図16Bの蒸発源の溶融部及び加熱部の上部を構成する部品を示す上面図である。 図18AのA−B断面図である。 実施例7の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を組み立てた状態を示す上面図である。 図19AのA−B断面図である。 実施例8の蒸発源の蒸着材料導入部、溶融部及び加熱部を示す断面図である。 実施例8の変形例を示す断面図である。 実施例8の変形例を示す断面図である。 実施例8の他の変形例を示す上面図である。 図22AのA−B断面図である。 図22Bの蒸発源の加熱部及び蒸発部の下部を構成する部品を示す上面図である。 図23AのA−B断面図である。 図22Bの蒸発源の溶融部及び加熱部の上部を構成する部品を示す上面図である。 図24Aの部品の側面図である。 図24AのA−B断面図である。 図22Bの蒸発源の溶融部を構成する部品を示す上面図である。 図25Aの部品の側面図である。 図25AのA−B断面図である。 実施例8の他の変形例を示す断面図である。 実施例8の他の変形例を示す断面図である。 実施例9の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。 実施例9の変形例を示す断面図である。 実施例9の他の変形例を示す断面図である。 実施例10の蒸発源を示す断面図である。 実施例11の蒸発源を示す断面図である。 実施例の蒸着装置を示す概略構成図である。
本発明は、蒸着膜を形成する蒸着装置に係り、特に有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を構成する有機材料および金属材料を蒸発させて基板上に薄膜を形成するために有効な蒸着装置に関する。
小型蒸発源で安定な蒸着レートを得るためには、蒸着材料を蒸発部へ供給する際、蒸発部の溶融した蒸着材料(溶融材料)の温度変化をできるだけ小さくすればよい。そのためには、供給する蒸着材料の温度を蒸発部の蒸着材料の温度にできるだけ近付ければよい。このために、本発明の蒸発源は、溶融材料を加熱し基板に向って蒸気を吹き付ける加熱・蒸発部のまえに蒸発部の溶融材料より低い温度の溶融部を設ける。
また、蒸発部からの蒸気汚染を防止するためには、加熱・蒸発部と溶融部との間、または溶融部に蒸発ガス逆流防止部を設け、溶融部の溶融材料の温度をできるだけ低く維持すればよい。
逆流防止部は、溶融部、加熱・蒸発部を有する蒸発源であって、溶融部は、加熱・蒸発部との接続部に開口部が設けられ、
(1)溶融部開口部と溶融面で蒸発ガス逆流防止部を形成したことを特徴とする蒸発源である。
(2)溶融部開口部から開口部より下に位置する加熱・蒸発部への溶融材料の移動が段差を有する構造であることを特徴とする蒸発源である。
(3)または、溶融部開口部から出る溶融材料は、加熱・蒸発部の溶融材料の溶融面と不連続であることを特徴とする蒸発源である。
(4)または、溶融部の開口部は、加熱・蒸発部の溶融材料の溶融面から離れて上に存在することを特徴とする蒸発源である。
(5)溶融部の開口部は、溶融部に第一の仕切り、第二の仕切りを用いた開口部であり、第一の仕切りは蒸発部に近い側の溶融部の下面に、第二の仕切りは溶融部の上面に設けられ、第二の仕切りの先端が第一の仕切りの先端より低いことを特徴とする蒸発源である。
本発明によれば、以下の主要な効果が得られる。
本発明の蒸発源は、溶融材料を加熱し基板に向って蒸気を吹き付ける加熱・蒸発部のまえに蒸発部の溶融材料より低い温度の溶融部が設けられているので、低温の固体蒸着材料は溶融部で溶融してより高温となり、加熱・蒸発部の加熱部で加熱されて蒸発部に入るので、蒸発部の溶融した蒸着材料(溶融材料)の温度変化をできるだけ小さくすることができ、小型蒸発源で安定な蒸着レートを得ることができる。
また、加熱・蒸発部と溶融部との間、または溶融部に上記蒸発ガス逆流防止部が設けられているので、加熱・蒸発部の蒸気ガスの材料供給部への進入防止ができる。さらに、溶融部の溶融材料の温度ができるだけ低く維持されているので、溶融部の溶融材料から発生する蒸気ガスを無視できる程度に抑止できる。これにより、材料供給部の開口部の詰り、蒸気のチャンバ内汚染が防止でき、蒸着装置のメンテナンス性がよくなる。
有機EL素子の電極に用いられるアルミニウム(Al)の蒸着を例にとり、本発明を実施するための形態を説明する。
Alは、同じ電極に用いられるAgに比べ、低融点(660℃)であるが、同じ温度での蒸気圧が桁違いに低い。にもかかわらず、大型ディスプレイ用電極として膜を厚くすることが要求されている。したがって、Alを短時間で厚く成膜するためには、Al蒸着を高温で行う必要がある。しかしながら、基板温度の上昇を抑制しなければならない。
さらに、長時間にわたって連続的に成膜する必要がある。このためには、蒸着材料を供給できる小型の蒸発源を用いることが有利である。しかし、蒸発源には、以下の問題点があった。
蒸発源において蒸着材料が溶融した状態となっている蒸発部に固体の蒸着材料を供給すると、溶融している蒸着材料(溶融材料)の温度が変化し、蒸気圧が変化する。これにより、蒸着レートが変化し、一様な成膜ができなくなる。また、蒸発部からの蒸気が基板だけでなく材料供給部へ吹き付けられることによる材料供給部の開口部の詰まり、蒸気のチャンバ内汚染による蒸着装置メンテナンス頻度の増加等の問題があった。
特に、小型の蒸発源で安定な蒸着レートを得るためには、蒸着材料を蒸発部へ供給する際、供給する蒸着材料の温度を蒸発部の蒸着材料の温度にできるだけ近付けることが有効である。また、蒸発部からの蒸気汚染を防止するためには、蒸発部と蒸着材料導入部との間に蒸発ガス逆流防止部を設けることが望ましい。
以下、実施例を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、実施形態を説明する全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図31は、実施例の蒸着装置を示す概略構成図である。
本図において蒸着装置100は、高真空に維持された真空チャンバ115と、蒸着材料111を供給する蒸発源103と、蒸発源103を水平面の一方向に蒸発源ガイド130に沿って移動可能とする水平移動機構114と、金属材料で形成されたメタルマスク113(蒸着マスク)と、を備えている。
基板101は、真空チャンバ115の真空度を維持した状態で真空チャンバ115の内部に導入され、基板保持部(図示していない)によって保持されるようになっている。基板101と蒸発源103との間には、メタルマスク113が配置され、基板101の表面に有機薄膜102のパターンを形成することができるようになっている。蒸発源103は、蒸着材料111を噴射する噴射部であるノズルを複数個、線状に配置したリニアソース、又は、ノズルを1個若しくは複数個配置したポイントソースを複数個並べたものである。膜厚モニタ107は、基板101への成膜レートをモニタするものである。
蒸着装置100は、真空チャンバ115の外部に、膜厚制御部116と、電源117と、水平移動機構制御部118と、これらを制御する全体制御部119と、を有している。
膜厚制御部116は、膜厚モニタ107からの信号を受けて膜厚情報を電源117にフィードバックするものである。電源117は、主に蒸発源103に内蔵された坩堝(図示しない)を加熱するヒータ(加熱源)に電力を供給するものである。水平駆動機構制御部118は、水平駆動機構114により蒸発源103を水平方向に移動するものである。
蒸着装置100を用いた蒸着法では、真空チャンバ115の内部に導入された基板101の主面側に、画素配置に対応したパターンの開口を有するメタルマスク113が配置される。蒸発源103を加熱して蒸発した蒸着材料111は、メタルマスク113の開口を通して、蒸着され、成膜される。
以下、蒸発源の詳細について実施例を用いて説明する。
実施例1は、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、実施例1の蒸着装置の蒸発源を示す断面図である。
本図において蒸発源1は、蒸発部2(坩堝)と、加熱部3と、溶融部4と、全体は図示しない蒸着材料供給部の一部である蒸着材料導入部5と、蒸着材料を加熱するヒータ11(加熱源)と、を含む。
本実施例において、蒸着材料導入部5から供給する蒸着材料は、粒状の固体Al(固体アルミニウム)である。溶融部4においては、供給された粒状の固体Alを融点より高い温度に加熱して溶融材料10とする。加熱部3においては、溶融部4から流入する溶融材料10を加熱して、できるだけ蒸発部2の溶融材料10の温度(本実施例の場合1500℃である。)に近い温度にし、蒸発部2に導入する。
ヒータ11は、電力供給用の電極である正電極12及び負電極13を有する。ヒータ11の周囲には、正電極12をフローティング電位にするための絶縁物14、電極に接続されて電力を投入する直流電源(図示していない)、及び溶融部4にヒータ11の熱を伝えるための高熱伝導材9が設置してある。蒸発部2の開口部を除く上記構成要素を囲むように冷却板15が設置してある。蒸発部2においては、溶融材料10が蒸発し、蒸発部2の上方の開口部から蒸着対象である基板に向けて放出されるようになっている。 本実施例においては、蒸発源1の上部から溶融材料10の蒸気が放出され、蒸発源1の上方に設置された基板に蒸着がなされるようになっている。
また、本図のグラフは、ヒータ11の断面における水平方向の温度分布を示したものである。横軸は、断面の各位置に対応している。縦軸は、ヒータ11の表面温度を示している。このため、縦軸は、鉛直方向の位置が異なる場合がある。
このグラフから、蒸着材料導入部5から供給された蒸着材料である固体のアルミニウム(Al)は、ヒータ11によって融点である660℃を超えて溶融材料10となり、下流側の加熱部3及び蒸発部2において1600℃に達することがわかる。
蒸発部2と加熱部3とを合わせて加熱・蒸発部6と呼び、加熱部3と溶融部4とを合わせて加熱・溶融部7と呼ぶ。
溶融部4と加熱部3との接続部には、溶融材料10を流下させるための開口部8が設けられている。負電極13は、冷却板15と接続され、接地電位になっている。本図においては、冷却板15の底部15aのみを水冷機構により冷却する構成としてある。冷却板15の上部15bは、底部15aからの熱伝導により冷却されている。底部15a及び上部15bを水冷機構により冷却する構成としてもよい。
直流電源により正電極12及び負電極13からなる電極を介してヒータ11に印加される電圧により、ヒータ11に電流が流れ、抵抗加熱によりヒータ11が発熱する。ヒータ11は、蒸発部2(坩堝)を載せる中央部が最も高温になるようにする。抵抗加熱による単位長さ当りの発熱量は、電流をIとし、単位長さ当たりの抵抗をRとすると、I×Rとなるので、ヒータ11の中央部の抵抗を大きくすれば単位長さ当りの発熱量を最大にすることができる。そのためには、ヒータ11の中央部を薄く形成する。
さらに、ヒータ11の端部は、正電極12及び負電極13を介して冷却板15に接続され、冷却されている。このため、ヒータ11の温度分布は、図1に示すような山型になる。蒸発部2は、ヒータ11の温度が最高となる中央部に配置してある。
具体的には、ヒータ11の中央部の最高温度を1600℃とした場合、蒸発部2内の溶融材料10の温度は約1500℃になる。これにより、Alの蒸気圧を高くできるので、基板への高レートな蒸着ができる。
蒸発部2のみでは蒸着材料が短時間で蒸発してしまうため、蒸着材料の供給を行う必要がある。溶融部4の溶融材料10は、固体アルミニウム(固体Al)が供給されても融点660℃以上を維持することができる。しかし、溶融部4における蒸着材料の蒸発を抑制するため、溶融部4ができるだけ低い温度(例えば、700〜900℃)になるようにヒータ11との位置関係及び伝熱量を考慮して配置する。このとき、ヒータ11と溶融部4との間に所定の伝熱面積を有する高熱伝導材9を挟み、溶融部4を所望の温度にする。場合によっては、高熱伝導材9の代わりに断熱材を用いて加熱部からの熱伝導等を利用して所望の温度にしてもよい。
溶融部4と加熱部3との間には、開口部8が設けられている。この開口部8から加熱部3に溶融材料10が流れ込む。加熱部3は、溶融部4よりもヒータ11の温度が高い位置に配置されている。溶融材料10は、蒸発部2の温度に近い温度(例えば1450℃)で加熱部3から供給することができる。これにより、蒸着材料の供給に伴う蒸発部2内の溶融材料10の温度変化を抑制することができ、蒸着材料を供給しても蒸着レートを安定させることができる。
また、溶融部4と加熱部3との間に設けられた開口部8は、溶融部4に溶融材料10がある程度溜まった状態で、表面自由エネルギー(表面張力)の作用により開口部8を塞ぐ(膜を張る)程度の寸法とする。
溶融部4に溜まった溶融材料10は、重力により開口部8から下方にある加熱部3に落ちよう(流れ込もう)とするが、表面張力による抵抗により、溶融材料10がある程度溜まるまで落ちてこない。すなわち、この膜は、開口部8を介して溶融材料10を溶融部4から加熱部3に供給する過程において、蒸発部2及び加熱部3から発生する高密度の蒸気が溶融部4に流れ込むのを防ぐことができる。言い換えれば、開口部8とこれを塞ぐ溶融材料10とにより、蒸発ガス逆流防止部(点線の丸で囲まれた部分)を形成することができる。
この蒸発ガス逆流防止部は、蒸発部2と蒸着材料導入部5との間において液体の弁として作用するため、蒸発部2から溶融材料10の蒸気が逆流して蒸着材料導入部5が汚染されることを防止し、蒸着材料導入部5の開口部の詰まりを防ぐことができる。
開口部8に関しては、以下のように表現することもできる。
すなわち、溶融部4は、加熱・蒸発部6との接続部に開口部8を有し、溶融部4の開口部8からその下方に位置する加熱・蒸発部6に向かって段差を形成している。この段差に沿って溶融材料10が移動する。このため、溶融部4の開口部8から流れ出る溶融材料10は、加熱・蒸発部6の溶融材料10と不連続とすることもできる。
さらに、溶融部4の開口部8は、加熱・蒸発部6の溶融材料10の溶融面から離れて上方に位置する。このため、加熱・蒸発部6の溶融材料10と溶融部4の溶融材料10とが絶縁され、これらの溶融材料10が接触している場合よりも溶融部4と加熱・蒸発部6との溶融材料10の温度差を生じさせることが容易であり、蒸発源1をコンパクトにすることができ、かつ、溶融部4の温度を低く維持することができる。
本実施例における構成要素の材質の例を以下に述べる。ただし、構成要素の材質は、下記の例に限定されるものではない。
蒸発部2(坩堝)は、蒸着材料であるAlに対するぬれ性の低い材質、例えばアルミナ(Al)、窒化アルミ(AlN)等で形成される。これは、蒸発部2がAlに対するぬれ性の高い材質で形成されている場合には、溶融材料10である溶融Alが蒸発部2の上部まで這い上がり蒸発部2外へ染み出し、電気的短絡、セラミックヒータの変質等を生じさせ、断線するおそれがあるからである。
蒸発部2と同様に、Alの這い上がりによる上記の問題を回避するため、加熱部3及び溶融部4も、Alに対するぬれ性の低い材質、例えばアルミナ(Al)、窒化アルミ(AlN)等で形成する。溶融部4においてAlに対するぬれ性の低い材料を用いるもう一つの理由は、溶融材料10が開口部8で膜を張り、穴を塞ぐことができるようにするというものである。同様に、加熱部3においても開口部を設けた構成としてもよい。ただし、加熱部3においては、必ずしも開口部を設ける必要なく、所定の滞留時間を設け、横溢させ、蒸発部2に流下させてもよい。この場合でも、加熱部3は、Alに対するぬれ性の低い材料を用いることが望ましい。
もし、溶融部4及び加熱部3の開口部8ともAlに対するぬれ性の高い材質を用いると、溶融材料10が開口部8を塞ぐことなく加熱部3に流れてしまう可能性があるからである。ヒータ11は、例えば高導電率、高耐熱性及び低熱膨張率を有するセラミックである窒化ホウ素(BN)コンポジットで形成されたセラミックヒータである。冷却板15は、熱伝導率の高い無酸素銅で形成し、正電極12及び負電極13はステンレス鋼を用いる。
図2は、実施例1の蒸着装置の蒸発源の蒸発部2の変形例を示す断面図である。
本図においては、蒸発部2の側壁(側面部)を冷却板15の上部15bの高さに達するものとし、上部15bの一部を覆うひさし24が設けてある。このような構造にすれば、蒸発部2をAlに対するぬれ性の高い材質、例えばPBN(Pyrolytic Boron Nitride)で形成しても、溶融材料10の這い上がりを防止することができる。PBNは、Alに対するぬれ性が高いため、PBNで形成した蒸発部2の内壁を溶融Alが這い上がる傾向があるが、冷却板15の上部15bに接した蒸発部2のひさし24の温度が低くなるため、蒸発部2のひさし24の途中で這い上がりが止まるからである。また、このような構造にすることにより、蒸発部2で発生した蒸着材料の蒸気が、蒸発源1の内部に設けたヒータ11、正電極12、負電極13、絶縁物14等を汚染することがなくなる効果もある。
負電極13は接地電位としたが、負電極13と冷却板15との間に高熱伝導の絶縁物を挟んでフローティング電位にしてもよい。電源は直流電源としたが、ヒータを抵抗加熱できれば交流電源でもよい。
本実施例によれば、以下の効果が得られる。
溶融部4から加熱部3に溶融材料10を供給する開口部8と、これを塞ぐ溶融材料10とは蒸発ガス逆流防止部を形成する。これにより、蒸発部2及び加熱部3から発生する高密度の蒸気が溶融部4及び蒸着材料導入部5で構成された蒸着材料供給部に流れ込むことを防ぐことができる。これにより、蒸発部2からの蒸気汚染を防止し、蒸着材料導入部5の詰まりを防ぐ効果が得られる。
また、固体の蒸着材料を溶融部4で溶融して溶融材料10とし、開口部8を介して加熱部3に供給し、加熱部3において溶融材料10の温度を蒸発部2の温度に近づけた後、蒸発部2に供給することができる。これにより、蒸着材料を供給する際の蒸発部2における溶融材料10の温度変化を最小限にできる。このため、蒸着材料の供給量が変化したとしても蒸着レートを安定化することができ、基板に一様に成膜することができる。
図3は、有機ELディスプレイ生産工程の一例を示すフローチャートである。
有機層、及びこの有機層に流れる電流を制御する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)が形成されたTFT基板と、有機層を外部の湿気から保護する封止基板とは別々に形成され、封止工程において組み合わされる。
本図に示すように、封止基板を製造ラインに投入し(S100)、ウェット洗浄(S110)及びドライ洗浄(S120)を施し、デシカント(乾燥剤)を付設し(S130)、シール剤を塗布する(S140)。
また、TFT基板も、別途、製造ラインに投入し(S200)、ウェット洗浄(S210)、ドライ洗浄(S220)、有機蒸着(S230)及び金属蒸着又は透明電極スパッタ(S240)を施す。
上記のように別々に製造されたTFT基板と封止基板とを組み合わせ、シール部に紫外線を照射して、シール部を硬化させ、封止を完了する(S310)。この後、有機EL表示装置に組み込み、点灯検査を行い、黒点、白点等の欠陥(修正可能なもの)を修正する(S320)。以上の工程により、有機EL表示装置が完成する(S330)。
なお、封止基板が存在しない、いわゆる固体封止の有機EL表示装置の製造についても、本発明の蒸着装置を使用できることは言うまでもない。
一般に、成膜法には、クラスタ方式とインライン方式とがある。例えば、クラスタ方式の場合、中央に搬送用の真空チャンバ(搬送室)を有し、それを中心に成膜用の真空チャンバ(成膜室)が配置される。中央搬送室にはロボットが設けられ、基板のみを枚葉搬送する。基板を最初に加熱室で加熱し、次に、ドライ洗浄室に搬送して表面の清浄化を行い、冷却室で基板を冷却した後に、別のクラスタ装置に搬送して成膜処理を行う。成膜する際は、各成膜室内において、まず、成膜室毎に用意した蒸着マスクと基板とをアライメントし、重ね合わせてから成膜する。
図3のTFT基板の製造工程において、ウェット洗浄(S210)が施された基板に対して行うドライ洗浄(S220)は、紫外線照射による洗浄を含む場合もある。ドライ洗浄(S220)が施されたTFT基板には、有機蒸着(S230)において、先ず、TFTが形成される。そして、TFTの表面にパッシベーション膜及び平坦化膜が形成され、その表面に有機EL層の下部電極が形成される。下部電極は、TFTのドレイン電極に接続されている。下部電極をアノードとする場合は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜が使用される。
下部電極の表面には、有機EL層が蒸着により形成される。有機EL層は、複数の層から構成される。下部電極がアノードの場合は、下部電極の側から、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層が形成される。
有機EL層の表面には、各画素共通に、ベタ膜で上部電極が金属蒸着又は透明電極スパッタ(S240)で形成される。上部電極としては、有機EL表示装置がトップエミッションの場合は、IZO等の透明電極、又は、Ag、MgAg等の金属若しくは合金が使用され、有機EL表示装置がボトムエミッションの場合は、Ag、Mg、Al等の金属膜が使用される。本実施例で説明したAl蒸着の例は本工程における上部電極の蒸着に相当する。
デシカントは、有機EL層の水分による劣化を防止するために使用される。デシカントには種々な材料を用いることができるが、有機EL表示装置がトップエミッションかボトムエミッションかによってデシカントの配置方法は異なる。
実施例2については、図4A〜図6を用いて説明する。以下、実施例1と異なる部分のみを説明する。
図4A及び4Bは、実施例2の蒸着装置の蒸発源の加熱部及び溶融部を示す上面図である。図4Bは、実施例2の蒸着装置の蒸発源の加熱部及び溶融部を示す断面図である。
実施例2の特徴は、加熱部3と溶融部4とを一体で製作し、加熱・溶融部7としたことである。加熱部3と溶融部4とを一体化することにより、溶融部4と加熱部3との間に開口部8以外の隙間がなくなるため、蒸発部2及び加熱部3からの蒸気ガスの溶融部4の方向に逆流することを更に確実に防ぐことができる。
図5は、本実施例の蒸発源の変形例を示したものである。
図4と異なる点は、加熱部3及び溶融部の底部が下流側に向かって傾斜を有することである。これにより、溶融材料10が少量でも流れ易くなる効果がある。
図6は、本実施例の蒸発源のもう一つの変形例を示したものである。
本図の場合、図4の加熱・溶融部7の下部に傾斜を有する高熱伝導材9が設け、加熱部3及び溶融部4の底部が傾斜を有する構成としている。これにより、加熱・溶融部7の加工が容易となるとともに、傾斜の角度の調節が高熱伝導材9を入れ替えることにより可能となるという効果がある。
実施例2においては、加熱部3と溶融部4とを一体化することにより、溶融部4と加熱部3との間に開口部8以外の隙間がなくなるため、蒸発部2及び加熱部3からの蒸気の溶融部4への逆流を確実に防ぐことができる効果がある。また、加熱部3及び溶融部4の底部に傾斜を持たせることにより、少量の溶融材料10でも流れ易くなる効果もある。
実施例3については、図7〜図8Bを用いて説明する。
図7は、実施例3の蒸着装置の蒸発源を示す断面図である。
実施例3の特徴は、電気的に絶縁性を有する材料(例えばアルミナ)のパイプで加熱・溶融部7を形成したことである。この絶縁パイプの下部は、高熱伝導材9を介してヒータ11に接しているため、絶縁パイプにはヒータの温度分布が反映される。
本実施例の場合、加熱・溶融部7である絶縁体パイプの図中右側の開口部から蒸着材料であるアルミニウムワイヤ25をパイプの底部に這わせるように挿入する。絶縁パイプの右側開口部から左の蒸発部2に近づくほど温度が高くなるため、絶縁パイプがAlの融点以上になる位置でアルミニウムワイヤ25が溶融する。この溶融材料10は、重力に従って絶縁パイプの左方高温部へとゆっくり移動するとともに温度が高くなり、蒸発部2の溶融材料10の温度近くまで上昇して蒸発部2に供給される。
本実施例によれば、加熱・溶融部7が絶縁パイプであるため、製作が非常に容易である利点がある。
しかし、このままでは、蒸発部2の蒸気が蒸着材料導入部5へ吹き付けるので、開口部から噴出した蒸気ガスが図示しないアルミニウムワイヤ供給・駆動系を汚染したり、絶縁パイプの開口部が詰まったりする問題が発生する。これを防止するためには、絶縁パイプの中に仕切りを設けることが望ましい。
なお、溶融部において溶融材料10が十分に加熱され、蒸発部2の温度に近づいていれば、必ずしも加熱部は必要ではなく、絶縁パイプで構成された溶融部が蒸発部2に接続されていてもよい。
図8Aは、実施例3の蒸着装置の蒸発源の溶融部及び加熱部を示す断面図である。また、図8Bは、蒸発源の溶融部及び加熱部の変形例を示す断面図である。
これらの図においては、ヒータ11の温度分布を反映して絶縁パイプに挿入されたアルミニウムワイヤ25が溶融する位置(溶融開始部201)がある。溶融開始部201よりも蒸発部2に近い位置に仕切り202を設けてある。仕切り202は、開口部8を有している。この開口部8の右方でAlが溶融している部分が溶融部4であり、開口部8の左方の部分が加熱部3である。溶融部4に溜まった溶融Alは、重力により開口部8を通って加熱部3に流れ込み、徐々に加熱されて高温度となり、蒸発部2に供給される。
図8Aにおいては、開口部8を絶縁パイプの底部に設けてある。このため、開口部8は、溶融材料10である溶融Alが開口部8を塞ぐ状態となる。
一方、図8Bにおいては、開口部8を絶縁パイプの断面の中心部に設けてある。この場合も、開口部8は、溶融材料10である溶融Alが開口部8を塞ぐ状態となる。
よって、蒸発部2からの蒸気は、溶融Alで塞がった開口部8を有する仕切り202でせき止められ、絶縁パイプの蒸着材料導入部5に逆流することがない。したがって、図示しないアルミニウムワイヤ供給・駆動系を汚染したり、絶縁パイプの開口部が詰まったりすることを防止できる効果がある。
図8Bのように開口部8を絶縁パイプの断面の中心部に設けると、絶縁パイプの底部に設けた図8Aの場合より、溶融部に蓄積できる溶融材料10の量を多くすることができ、安定に供給ができる効果がある。さらに、開口部8が加熱部3の溶融材料面から離れて上のなることにより、直接、溶融部4の溶融材料10と加熱部3の溶融材料10との温度差をつけやすくする効果もある。
図9Aは、実施例4の蒸着装置の蒸発源の溶融部及び蒸発部を示す断面図である。
本図においては、加熱部を設けず、蒸発部2に直接、溶融部4の開口部8が接続されている。この場合においても、開口部8が溶融材料10によって塞がれる構成となっている。これにより、蒸発部2からの蒸気が溶融部4及び蒸着材料導入部5に流れ込むことは防止できる。
図9Bは、実施例4の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。
本図においては、蒸発部2及び加熱部3の溶融材料10が連続している。すなわち、蒸発部2の溶融材料10と加熱部3の溶融材料10とが接触し、かつ、これらの液面の高さが等しくなっている。図9Bの場合、図9Aの場合に比べれば、加熱部3が設けてあるため、溶融部4からの溶融材料10の供給に伴う蒸発部2の溶融材料10の温度変化を抑えることができる。
図9Cは、図9Bの変形例であり、加熱部3の底部に傾斜部203を設けてある。
図9Cにおいては、蒸発部2及び加熱部3の溶融材料10が連続しているが、溶融部4の開口部8から加熱部3に流下した溶融材料10は、加熱部3の傾斜部203を流れる過程で徐々に加熱され、蒸発部2の溶融材料10に合流するため、蒸発部2の溶融材料10の温度変化を更に抑えることができる。
本実施例によれば、溶融部4の開口部8が、直接、蒸発部2に接続されている場合、又は蒸発部2及び加熱部3の溶融材料10が連続している場合においても、溶融部4の開口部8が溶融材料10で塞がれるため、蒸発部2からの蒸気が溶融部4及び蒸着材料導入部5に流れることを防止できる。
図10Aは、実施例5の蒸発源の蒸着材料導入部、溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。図10Bは、図10Aの変形例である。
本実施例の特徴は、蒸着材料導入部5と溶融部4とが筒状の一体となった構造である。筒状部材の右側が蒸着材料導入部5であり、筒状部材の左側が溶融部4である。筒状部材の左端には、溶融部4の開口部8が設けてある。筒状部材は、傾斜した状態で加熱部3に結合されている。溶融部4の左端部には、蒸着材料が溶融して溶融材料10となって溜まっている。また、蒸発部2の溶融材料10と加熱部3の溶融材料10とは、液面の高さに違いが生じるようになっている。
開口部8は、図10Aの場合は筒状部材の左端の底面(平面部)に、図10Bの場合は筒状部材の側面(曲面部)の底面寄りに設けられている。
本実施例によれば、溶融部4、加熱部3及び蒸発部2の溶融材料10が接触しない構成となっているため、各部の溶融材料10の温度差を付け易いという効果がある。また、蒸着材料導入部5と溶融部4とが筒状の一体となった構造であるため、製作も容易である。
実施例6については、図11A〜図18Bを用いて説明する。
図11Aは、蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を組み立てた状態を示す上面図である。図11Bは、図11AのA−B断面図である。
図12A〜13Cは、各部品の構成を示したものである。図12Aは、図11Bの蒸発源の加熱部及び蒸発部の下部を構成する部品251を示す上面図である。図12Bは、図12AのA−B断面図である。図13Aは、図11Bの蒸発源の溶融部及び加熱部の上部を構成する部品252を示す上面図である。図13Bは、図13Aの部品の側面図である。図13Cは、図13AのA−B断面図である。
図11Bに示すように、蒸発源の溶融部4、加熱部3及び蒸発部2は、部品251、252及び蒸着材料導入部5で構成されている。
図11A及び11Bには、蒸着材料導入部5から固体蒸着材料であるアルミニウム粒子26が供給され、溶融部4に落下しようとしている状態が示されている。蒸発部2は、部品252のみで形成されている。加熱部3は、部品251と部品252のひさし状の部分とで挟まれた部位である。部品251の上に部品252がはめ込まれ、溶融材料10の蒸気は、図中の左方以外には漏れない構造となっている。部品251には、仕切り27が設けてあり、加熱部3の溶融材料10が部品252の溶融部4の下部に入り込まないようにしている。仕切り27の高さは、加熱部3の溶融材料10の液面より高い方が望ましい。また、蒸着材料導入部5は、筒状(断面は円形または方形など)である。筒状であることにより、供給されたアルミニウム粒子26が蒸着材料導入部5でこぼれることがなくなる。
本実施例によれば、蒸発部2、加熱部3及び溶融部4を2つの加工可能な部品251、252から簡単に構成することができる。
本実施例の変形例について図14A〜図18Bを用いて説明する。
図14Aは、実施例6の変形例を示す上面図である。図14Bは、図14AのA−B断面図である。
この変形例が図11A及び11Bと異なる点は、筒状部材を分割して下半分のみとした蒸着材料導入部5を用いた点である。これにより、蒸発部2及び加熱部3からの溶融材料10の蒸気がわずかでも逆流する場合であっても、蒸着材料導入部5における詰まり等の不具合が生じなくなるという効果がある。
図15Aは、実施例6の他の変形例を示す上面図である。図15Bは、図15AのA−B断面図である。
この変形例が図14A及び14Bと異なる点は、加熱部3を形成する上蓋(ひさし状の部分)の蒸発部2との境界部分を、蒸発部2の底部の輪郭形状と一致するように曲率を設けた点である。これにより、蒸発部2から上方に向かう蒸気の流速分布の対称性を向上することができ、基板への一様成膜に役立つ効果がある。
図16Aは、実施例6の他の変形例を示す上面図である。図16Bは、図16AのA−B断面図である。
この変形例が図14A及び14Bと異なる点は、ひさし28を設けた点である。
図17Aは、図16Bの蒸発源の加熱部及び蒸発部の下部を構成する部品を示す上面図である。図17Bは、図17AのC−D断面図である。図17Cは、図17AのA−B断面図である。
図18Aは、図16Bの蒸発源の溶融部及び加熱部の上部を構成する部品を示す上面図である。図18Bは、図18AのA−B断面図である。
図17A〜17Cに示す部品251のひさし28の方が、図18A〜18Bに示す部品252のひさし28より広くなるようにしている。これにより、蒸着材料であるAlが部品251、252の隙間から滲み出す場合でも部品251のひさし28の途中で滲み出しが止まる効果がある。
以上のように、本実施例によれば、蒸発部2、加熱部3及び溶融部4を2つの加工可能な部品251、252から簡単に構成することができる。
図19Aは、実施例7の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を組み立てた状態を示す上面図である。図19Bは、図19AのA−B断面図である。
実施例7の特徴は、溶融部4、加熱部3及び蒸発部2が一体で製作されたものであるということである。
本実施例によれば、実施例6のような複数の部品で構成していないため、接続部がなく、溶融材料及び蒸気の接続部からの漏れが完全に無くなるという効果がある。
実施例8については、図20〜図27を用いて説明する。
図20は、実施例8の蒸発源の蒸着材料導入部、溶融部及び加熱部を示す断面図である。
本実施例は、実施例3の図8A又は8Bに示す加熱・溶融部7を変形したものである。
本実施例が実施例3と異なる点は、逆流防止部の構造である。
図20に示すように、本実施例の逆流防止部は、中空の筒である絶縁パイプの内部に第一の仕切り29と第二の仕切り30とを備えている。第一の仕切り29は、絶縁パイプの下部であって下流側に配置されている。一方、第二の仕切り30は、絶縁パイプの上部であって上流側に配置されている。
アルミニウムワイヤ25が蒸着材料導入部5から筒内下部に沿って供給されると、Alの融点以上の位置(溶融開始部201)で溶融する。Alの溶融材料10は、第一の仕切り29の高さまで溶融部4に溜まるが、それ以上になると加熱部3に溢れ落ちる。加熱部3に溢れ出た溶融材料10は、加熱部3を左下方(下流側)に移動するとともに加熱され、蒸発部2の溶融材料の温度に近づいた温度になって蒸発部2に供給される。
一方、蒸発部2及び加熱部3から発生する溶融材料の蒸気は、第二の仕切り30と溶融部4の溶融材料10とで形成される逆流防止部8により、溶融部4及び蒸着材料導入部5への逆流が防止できる。溶融材料10溶融面の高さは、第一の仕切り29の高さによって決まる。このため、溶融部4の上面に設けられた第二の仕切り30の下部を第一の仕切り29の上部より低くすれば、溶融部4の溶融材料10と第一の仕切り29と第二の仕切り30とにより、溶融材料の蒸気の逆流を防止する壁を形成することができる。
すなわち、本実施例の逆流防止部8の特徴は、次のように表現できる。
その特徴は、溶融部4に、蒸発部2に近い側から、溶融部4の下面に第一の仕切り29を、上面に第二の仕切り30を設け、第二の仕切り30の先端が第一の仕切り29の先端より低くなるように(下に位置するように)設けたことである。あるいは、溶融部4に、第一の仕切り29、第二の仕切り30を用いた開口部を設け、第一の仕切り29は蒸発部2に近い側の溶融部4の下面に、第二の仕切り30は溶融部4の上面に設けられ、第二の仕切り30の先端が第一の仕切り29の先端より低いことを特徴とする。
本実施例によれば、蒸発部2に近い側の溶融部4の下面に第一の仕切り29が設けられるので、溶融部4の溶融材料10の溶融面が第一の仕切り29の先端高さに等しくなるまで蓄積され、第二の仕切り30の先端が第一の仕切り29の先端より低くなるように設けられている。このため、第一の仕切り29と溶融材料10と第二の仕切り30とにより壁が形成される。
これ以上に溶融材料10が溶融すると、第一の仕切り29を超えて下方にある加熱部2の底面に溢れ落ちる。このとき、加熱部3の溶融材料10の溶融面は、溶融部4の溶融面10と離れているため、両者の間に対流が発生すること、及び直接の熱が伝わることを防止することができる。このため、溶融部4の溶融材料10の温度を溶融材料10の融点付近の低温度に維持し易くなる。よって、溶融部4の溶融材料の蒸気圧を著しく低く維持でき、溶融部4の溶融材料10自体からの蒸気は無視できる程度に抑えることができる。さらに、上述の第一の仕切り29と溶融材料10と第二の仕切り30とにより形成された壁が、蒸発部2及び加熱部で発生した高密度の蒸気が溶融部4及び蒸着材料導入部5に逆流することを防止することができる。
これらにより、溶融材料10から発生する蒸気による溶融部4、蒸着材料導入部5その他の汚染、蒸着材料導入部5の詰まりを防止できるという効果がある。さらに、溶融部4の溶融材料10の溶融面(液面)が第一の仕切り29の先端高さで決まるので、一旦、溶融部4の溶融材料10が第一の仕切り29の先端高さに達すれば、蒸着材料の蒸着材料導入部5からアルミニウム粒子26が補給されなくても溶融部4の溶融材料10の液面が下がらない。したがって、この液面と第二の仕切り30との間に隙間が開くことはなく、第一の仕切り29と溶融材料10と第二の仕切り30とによる壁が崩壊するおそれはない。このため、安定した逆流防止部8を提供することができるという効果がある。
実施例8の他の例を、図21A〜図27を用いて説明する。
図21Aは、実施例8の変形例を示す断面図である。図21Bは、実施例8の変形例を示す断面図である。
これらの図においては、溶融部4及び加熱部3が水平に配置されている。図21Aと図21Bとの違いは、第一の仕切り29に対する第二の仕切り30の位置である。
図21A及び図21Bには、蒸着材料としてアルミニウムワイヤ25が記載されているが、アルミニウム粒子であってもよいことは言うまでもない。
図21Bにおいては、蒸発部2及び加熱部3からの蒸気及び輻射熱が溶融部4の溶融材料10の溶融面に当たる面積が広くなるので、図21Aの方が好ましい。
図22Aは、実施例8の他の変形例を示す上面図である。図22Bは、図22AのA−B断面図である。
図23Aは、図22Bの蒸発源の加熱部及び蒸発部の下部を構成する部品を示す上面図である。図23Bは、図23AのA−B断面図である。図24Aは、図22Bの蒸発源の溶融部及び加熱部の上部を構成する部品を示す上面図である。図24Bは、図24Aの部品の側面図である。図24Cは、図24AのA−B断面図である。図25Aは、図22Bの蒸発源の溶融部を構成する部品を示す上面図である。図25Bは、図25Aの部品の側面図である。図25Cは、図25AのA−B断面図である。
図22A及び22Bは、3個の部品261、262、263を組み合わせたものであり、図21A及び21Bを具体的に示したものである。図23A及び23Bは部品261を、図24A〜24Cは部品262を、図25A〜25Cは部品263を個別に示したものである。
本実施例によれば、蒸発部2、加熱部3及び溶融部4を3つの加工可能な部品で簡単に構成することができる。
図26は、実施例8の他の変形例を示す断面図である。
本図においては、傾斜を有する高熱伝導材9の上に一体に製作した蒸発部2、加熱部3及び溶融部4を載せたものである。このような構造であれば、蒸発部2、加熱部3及び溶融部4を一体に製造することが容易である。図26に示すように、この変形例の第一の仕切り29は、溶融部4の底面に傾斜を持たせることにより形成される。
図27は、実施例8の他の変形例を示す断面図である。
図26との違いは、加熱部3の底面を水平にしたこと、溶融部4の深さを深くしたこと、及び第二の仕切り30の幅を狭くしたことである。ここで、加熱部3の底面を水平にしたが、左下がりの傾斜を持たせて加熱部3の溶融材料10を蒸発部2に流れやすくしてもよい。
加熱部3の底面を水平にする、あるいは左方向が低くなるように傾斜を持たせることにより、加熱部3に溜まる溶融材料10の量が少なくなるので、より効果的に溶融材料10を加熱できる。溶融4の深さを深くすることにより、溶融部4に溜まる溶融材料10の量が多くなるので、固体の蒸着材料であるアルミニウム粒子26を溶融部4に供給する際の溶融部4の溶融材料10の温度変化(低下)を小さくすることができる。したがって、溶融部4の溶融材料10を常に溶融状態に維持したい場合、融点により近い低い温度にできるので、溶融部4の溶融材料10からの蒸発ガスの発生を抑制でき、汚染、詰り等の等の問題の防止により効果的となる。
図26及び27に示す変形例によれば、蒸発部2、加熱部3及び溶融部4を一体で製作することができるので、安価に蒸気の漏れ防止ができるという効果がある。
以上のように、本実施例によれば、蒸発部2に近い側の溶融部4の下面に第一の仕切り29が設けられるので、溶融部4の溶融材料10の溶融面が第一の仕切り29の先端高さに等しくなるまで蓄積され、第二の仕切り30の先端が第一の仕切り29の先端より低くなるように設けられているので、第一の仕切り29と溶融材料10と第二の仕切り30とにより壁が形成される。
溶融材料10が増加し、溶融材料10の液面が第一の仕切り29よりも高くなると、溶融材料10は第一の仕切り29を超えて下方にある加熱部3の底面に溢れ落ちる。このとき、加熱部3の溶融材料10の液面は、溶融部4の溶融面10と離れているので、両者の間に対流及び直接の熱伝導が発生することを防止することができる。このため、溶融部4の溶融材料10の温度を溶融材料10の融点付近の低温に維持し易くなる。よって、溶融部4の溶融材料の蒸気圧を著しく低く維持でき、溶融部4の溶融材料10自体からの蒸気は無視できる程度に抑えることができる。
さらに、第一の仕切り29と溶融材料10と第二の仕切り30とにより形成される壁が、蒸発部2及び加熱部3で発生した高密度の蒸気が溶融部4及び蒸着材料導入部5に逆流することを防止することができる。これらにより、溶融材料10から発生する蒸気による溶融部4、蒸着材料導入部5その他の汚染、及び蒸着材料導入部の詰まりを防止できるという効果がある。
さらに、溶融部4の溶融材料10の液面が第一の仕切り29の先端高さで決まるので、一旦、溶融部4の溶融材料10が第一の仕切り29の先端高さに達すれば、蒸着材料の蒸着材料導入部5からアルミニウム粒子26が補給されなくても溶融部4の溶融材料10の液面が下がらない。したがって、この液面と第二の仕切り30との間に隙間が開くことは無い。このため、第一の仕切り29と溶融材料10と第二の仕切り30とによる壁は崩壊するおそれがなく、安定した逆流防止部8を提供することができるという効果がある。
図28Aは、実施例9の蒸発源の溶融部、加熱部及び蒸発部を示す断面図である。図28Bは、実施例9の変形例を示す断面図である。図28Cは、実施例9の他の変形例を示す断面図である。
本実施例は、蒸発部2、加熱部3等の底部及び側面を構成する部品271の内壁の構成のバリエーションを示したものである。
図28Aは、部品271の基材をAlに対するぬれ性の低い材質(アルミナ等)で製作し、上部端から若干低い位置から下の内壁にAlに対するぬれ性の高い材料(PBN等)を塗布した塗布層31を設けたものである。これにより、塗布層31の上端まで蒸発部2の溶融材料10が濡れ上るので、溶融材料10の量が変化しても上記塗布層31上端部から蒸発し、基板への蒸気流量を一定に維持できるという効果がある。また、塗布層31の上端部の上方は、Alに対するぬれ性が低いため、溶融材料10のぬれ上がりによって溶融材料10が蒸発部2、加熱部3及び溶融部4から溢れて外に出ることはない。
図28Bは、内壁にAlに対するぬれ性の高い材質の塗布層31を設ける代わりに、蒸発部2の内部にAlに対するぬれ性の高い材料(PBN等)からなる小坩堝32を配置したものである。この場合も、図28Aの場合と同様の効果を得ることができる。この場合は、塗布よりも簡易なプロセスでAlに対するぬれ性の高い部分を設けることができる。
図28Cは、図21Bの小坩堝32の代わりに、Alに対するぬれ性の高い材質のリング33(筒状構造体)を設けたものである。これにより、更に単純な構造で図28Bの場合と同様の効果が得られる。
図29は、実施例10の蒸発源を示す断面図である。
本実施例が図1に示す実施例1と異なる点は、溶融部4の上壁が冷却板15の上部15bに接触していることである。これにより、ヒータ11の温度分布だけでなく、冷却板15の温度も利用する。溶融部4は、ヒータ11の中央部の最も高温になる部位と冷却板15の低温部との間に接続することにより、高温の蒸発部2に対して所望の温度まで冷えるようにしている。
本実施例によれば、ヒータ11からの伝熱経路の温度勾配を利用して、所望の蒸発部2、加熱部3及び溶融部4(蒸発部2の温度>加熱部3の温度>溶融部4の温度)の温度分布を得ることができる。
図30は、実施例11の蒸発源を示す断面図である。
図2に示す実施例1との大きな違いは、加熱手段がセラミックヒータではなく、金属線ヒータである第一のヒータ19及び第二のヒータ20とした点である。金属線ヒータの材質は、Ta、W等である。第一のヒータ19は主に蒸発部2と加熱部3とを加熱し、第二のヒータ20は主に溶融部4を加熱する。溶融部4は、高熱伝導体23を通して冷却板15に接している。溶融部4は、低温の冷却板15及び第二のヒータ20によりAlの融点以上の高過ぎない所望の温度に制御される。蒸発部2の開口部には、ノズル22が設けられている。また、冷却板15の内部には、各ヒータの熱を効率よく蒸発部2、加熱部3及び溶融部4に伝えるため、第一のリフレクタ17及び第二のリフレクタ18が配置されている。特に、ノズル22横の基板側に配置された第二のリフレクタ18は、基板側の冷却板15への伝熱を抑制するので、基板側の冷却板15がよく冷却され、基板の温度上昇を抑制することができるという効果がある。ノズル22は、図2に示すひさし24を設けてもよい。
本実施例によれば、ヒータが部位によって異なり、冷却部の熱伝導も利用しているので、温度の制御性を向上する効果がある。
本発明は、上述の各実施例の構成を組み合わせて実施することも可能であることは言うまでもない。
以上、諸実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
実施例1〜実施例11は、上記の形態のみに制限されず、上記で述べた様々な組み合わせも含まれる。また、有機EL表示装置や照明装置に用いられる有機EL素子を製造する工程、特にAlの蒸着を例にして述べたが、磁気テープ、お菓子の袋のAl内装等、他分野の蒸着工程を含むものの全てに適用可能であることは言うまでもない。
上述の実施例においては、蒸着材料をアルミニウム(Al)とした場合について説明したが、蒸着材料もこれに限定されるものではなく、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)等の蒸着においても本発明を適用することができる。
以下、蒸着材料として銀、亜鉛又はゲルマニウムを用いる場合について説明する。
(1)銀
流路の材質は、PBN(Pyrolytic Boron Nitride)、窒化アルミニウム等のセラミック、又はタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の金属が望ましい。これらはAgに対する濡れ性が低い。
銀は、融点が962℃であり、沸点が2210℃であるため、逆流防止部を962℃以上2210℃未満の範囲で蒸発部より低い温度に設定する。蒸発部は、例えば1300℃に設定する。
(2)亜鉛
流路の材質は、Mo、アルミナ、炭素(C)等が望ましい。
亜鉛は、融点が420℃であり、沸点が907℃であるため、逆流防止部を420℃以上907℃未満の範囲で蒸発部より低い温度に設定する。蒸発部は、例えば700℃に設定する。
(3)ゲルマニウム
流路の材質は、Mo、Ta、アルミナ、C等が望ましい。
ゲルマニウムは、融点が938℃であり、沸点が3106℃であるため、逆流防止部を937℃以上3106℃未満の範囲で蒸発部より低い温度に設定する。蒸発部は、例えば1300℃に設定する。
本発明は、蒸着装置及びこれに用いる蒸発源に適用することができ、特に、有機材料および金属材料を蒸発させて基板上に薄膜を形成する蒸着装置に利用することができる。
1:蒸発源、2:蒸発部、3:加熱部、4:溶融部、5:蒸着材料導入部、6:加熱・蒸発部、7:加熱・溶融部、8:開口部又は逆流防止部、9:高熱伝導材、10:溶融材料、11:ヒータ、12:正電極、13:負電極、14:絶縁物、15:冷却板、16:低熱伝導材、17:第一のリフレクタ、18:第二のリフレクタ、19:第一のヒータ、20:第二のヒータ、21:絶縁物、22:ノズル、23:高熱伝導体、24:ひさし、25:アルミニウムワイヤ、26:アルミニウム粒子、27:仕切り、28:ひさし、29:第一の仕切り、30:第二の仕切り、31:塗布層、32:小坩堝、33:リング、201:溶融開始部。

Claims (20)

  1. 真空チャンバと、この真空チャンバに内蔵された蒸発源と、を備え、前記蒸発源は、固体の蒸着材料を供給する材料供給部と、前記蒸着材料を加熱する加熱源と、前記蒸着材料を溶融し液体とする溶融部と、前記液体を蒸発させ気体とする蒸発部と、を含み、前記蒸発部から前記気体を放出し、前記真空チャンバに導入した基板に前記蒸着材料を蒸着する構成を有し、前記溶融部と前記蒸発部との間には前記気体の逆流防止部を設け、前記逆流防止部は、前記液体によって前記気体の流路を封じる構成であることを特徴とする蒸着装置。
  2. 前記逆流防止部の前記蒸発部側の前記液体は、前記蒸発部に貯留される前記液体と離れるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  3. 前記逆流防止部は、前記蒸発部に貯留される前記液体より高い位置になるように配置したことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  4. 前記逆流防止部は、前記溶融部の前記蒸発部側の端部に設けた第一の仕切り部と、前記溶融部の内部に設けた第二の仕切り部とで構成され、前記第一の仕切り部は、前記溶融部の底部に配置され、前記第二の仕切り部は、前記溶融部の上面部に配置され、前記第二の仕切り部の下端部は、前記第一の仕切り部の上端部より低いことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  5. 前記逆流防止部は、前記溶融部に設けられた開口部を有し、前記開口部は、前記液体によって封じられる構成であり、前記液体の表面張力によって前記液体が支持されることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  6. 前記開口部の寸法は、前記溶融部から前記液体が横溢する状態で前記液体が前記表面張力により前記開口部を覆うことができるものであることを特徴とする請求項5記載の蒸着装置。
  7. 前記溶融部と前記蒸発部との間には、前記蒸着材料を加熱する加熱部が配置されていることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  8. 前記溶融部と前記加熱部とが一つの部材で、又は、前記溶融部と前記加熱部と前記蒸発部とが一つの部材で構成されていることを特徴とする請求項7記載の蒸着装置。
  9. 前記加熱部と前記蒸発部とが一つの部材で構成されていることを特徴とする請求項7記載の蒸着装置。
  10. 前記溶融部は、前記液体に対するぬれ性が低い材質で形成されていることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  11. 前記加熱部及び前記蒸発部の少なくとも一部は、前記液体に対するぬれ性が高い材質で形成されていることを特徴とする請求項7記載の蒸着装置。
  12. 前記蒸発部の内部には、前記液体に対するぬれ性が高い材質で形成された筒状構造体を配置したことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  13. 前記溶融部、前記加熱部及び前記蒸発部は、この順に温度が高くなるように構成されていることを特徴とする請求項7記載の蒸着装置。
  14. 前記加熱部の底面は、傾斜を有することを特徴とする請求項7記載の蒸着装置。
  15. 前記蒸発部の開口部の上方にノズルを有することを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  16. 前記蒸着材料は、アルミニウム、銀、亜鉛及びゲルマニウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
  17. 固体の蒸着材料を供給する材料供給部と、前記蒸着材料を加熱する加熱源と、前記蒸着材料を溶融し液体とする溶融部と、前記液体を蒸発させ気体とする蒸発部と、を含み、前記蒸発部から前記気体を放出する構成を有し、前記溶融部と前記蒸発部との間には前記気体の逆流防止部を設け、前記逆流防止部は、前記液体によって前記気体の流路を封じる構成であることを特徴とする蒸発源。
  18. 前記逆流防止部の前記蒸発部側の前記液体は、前記蒸発部に貯留される前記液体と離れるように構成されていることを特徴とする請求項17記載の蒸発源。
  19. 前記逆流防止部は、前記蒸発部に貯留される前記液体より高い位置になるように配置したことを特徴とする請求項17記載の蒸発源。
  20. 前記逆流防止部は、前記溶融部の前記蒸発部側の端部に設けた第一の仕切り部と、前記溶融部の内部に設けた第二の仕切り部とで構成され、前記第一の仕切り部は、前記溶融部の底部に配置され、前記第二の仕切り部は、前記溶融部の上面部に配置され、前記第二の仕切り部の下端部は、前記第一の仕切り部の上端部より低いことを特徴とする請求項17記載の蒸発源。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114318296A (zh) * 2022-02-17 2022-04-12 广东思泉新材料股份有限公司 真空镀膜设备

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