JP5557781B2 - タイルの施工方法 - Google Patents

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本発明は、建築物の内外装用として、下地材上にタイルを接着して仕上げるためのタイルの施工方法に関する。
従来、建築物の壁の仕上げとしては種々の仕上げ工法が用いられており、その中でタイルによる仕上げは特に種類の豊富さ、意匠的変化の多さ、重厚さ等から好んで使用されている。このタイル仕上げは、通常モルタル下地にタイルをダンゴ付けして施工されている。その際、モルタルはタイルを拘束する力が強いため、下地材となるボード等の変形に伴い、下地材の目地部(継ぎ目)に跨るタイルには、ひび割れや亀裂が発生し易いという問題があった。そこで、この目地部を跨るタイルの施工について様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1には、下地をタイル張り仕上げする際に、その下地に形成された誘発目地をまたぐ形態で張り付けるタイルについて、硬化後も弾性を有する接着材を用いて張り付けることを特徴とするタイル張り仕上げの隠し誘発目地工法;前記誘発目地をまたぐタイルについて、その誘発目地を境界とする少なくとも片側を前記接着材を用いて下地に張り付けることを特徴とする前記タイル張り仕上げの隠し誘発目地工法;前記誘発目地をまたぐタイルについて、その誘発目地を境界とする片側を前記接着材を用いて下地に張り付け、残りの片側をタイル用モルタルにて下地に張り付けることを特徴とする前記タイル張り仕上げの隠し誘発目地工法が開示されている。
また、特許文献2には、パネル下地材にタイルが接着されてなる化粧パネルにおいて、パネル下地材の少なくとも一方の側部のタイル半分の箇所を空けて空白部分とし、化粧パネル取付後の最終工程において隣接の化粧パネルとの空白部分に跨って個別にタイルを弾性接着材を用いて接着して隣接のパネルとの相互の動きによるタイルの亀裂を防止するようにしたことを特徴とする化粧パネルのタイル施工工法が開示されている。
更に、従来のタイルの施工方法の一例を図2に示す。図2において、躯体(11)には、防水シート(19)を介して下地材(12)がスクリューねじ(13)により留め付けられている。また、下地材(12)どうしの目地部(14)には、目地部(14)を跨ぐようにガラス繊維テープ(15)が設置されている。そして、下地材(12)のタイル施工面上[ガラス繊維テープ(15)が設置されている部位については、ガラス繊維テープ(15)表面上]全面にわたりベースコート(18)が塗布されており、更に、ベースコート(18)上にタイル用弾性接着剤(16)が塗布され、タイル用弾性接着剤(16)上にタイル(17)が張り付けられた構成となっている。
特開昭63−236856号公報 特開平4−55559号公報
しかしながら、図2に示すようなタイルの施工方法においては、下地材の目地部を跨ぐようにガラス繊維テープが設置されているが、その幅が目地部を跨いで張り付けられるタイルの幅よりも狭いために、タイルのひび割れや亀裂を充分に防止することができず、更に、躯体と下地材の間に防水シートを布設したり、下地材の不陸調整用のタイル用弾性接着剤を塗布するため、養生期間を含めて作業効率が悪い等の問題点があった。
従って、本発明の目的は、下地材どうしの接合部である目地部にひび割れや亀裂を生ずることなく、目地部に跨ってタイルを施工しても、タイルにひび割れや亀裂を生ずることがないタイルの施工方法を提供することにある。
即ち、本発明のタイルの施工方法は、下地材として水硬性セメント20〜50質量%、無機質混和剤30〜60質量%、繊維原料(石綿を除く)4〜10質量%、けい酸質原料10〜40質量%よりなり、見掛け密度が1.2〜1.8g/cm、厚さ5mm以上の無機質板を用い、下地材の裏面に防水シーラーを塗布後、下地材を下地組の胴縁材に、下地材どうしの接合部を突きつけ状態として留め付け、下地材の接合部のタイル施工面に、施工するタイルの幅より広い幅を有しかつ伸縮性を有するジョイントテープを接合部を跨いで布設した後、下地材表面及びジョイントテープ表面に弾性接着剤を塗布し、その後タイルを張り付けることを特徴とする。
また、本発明のタイルの施工方法は、ジョイントテープがブチルゴムジョイントテープであることを特徴とする。
更に、本発明のタイルの施工方法は、リーマ付きねじを用いて下地材を下地組の胴縁材に留め付けることを特徴とする。
本発明によれば、良好な表面平滑性を有する下地材を使用することで、ベースコート等による不陸調整が不要となり、タイルを効率良く施工することができると共に、本発明によって施工されたタイルは、下地材どうしの接合部である目地部に跨って施工されていても亀裂等を生じることがなく、頑強なタイル壁を形成することができる。
本発明のタイルの施工方法の1実施態様を示す図である。 従来のタイルの施工方法を示す図である。
以下、本発明のタイルの施工方法を詳述する。
本発明のタイルの施工方法において、下地材として用いられる無機質板は、水硬性セメント20〜50質量%、無機質混和剤30〜60質量%、繊維系原料(石綿を除く)4〜10質量%、けい酸質原料10〜40質量%よりなり、見掛け密度が1.2〜1.8g/cm、厚さ5mm以上のものである。
ここで、水硬性セメントとしては例えばポルトランドセメント等を用いることができ、その含有量は20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%の範囲内である。なお、水硬性セメントの含有量が20質量%未満では、得られる無機質板の強度が低下するために好ましくなく、また、50質量%を超えると、得られる無機質板が硬くなり、切断時に割れや欠けが発生するなどの加工性の悪化、現場でネジによる留め付け性が悪くなるなどの施工性の悪化、無機質板の伸縮等による目地部の開きが大きくなるなどの寸法安定性の悪化などを招くために好ましくない。
また、無機質混和剤としては例えば炭酸カルシウム、ワラストナイト、マイカ、石膏等からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができ、その含有量は30〜60質量%、好ましくは40〜50質量%の範囲内である。なお、無機質混和剤の含有量が30質量%未満では、得られる無機質板が硬くなり、加工性、施工性、寸法安定性が悪化するために好ましくなく、また、60質量%を超えると、水硬性セメントとけい酸質原料との水和反応により得られるマトリックス量が不足することにより強度が低下するために好ましくない。
更に、繊維原料としては例えば木質パルプ及び/または綿パルプ等を用いることができ、その含有量は4〜10質量%、好ましくは6〜8質量%の範囲内である。なお、繊維原料の含有量が4質量%未満では、得られる無機質板の強度、靭性が低下するために好ましくなく、また、10質量%を超えると、得られる無機質板の平滑性、寸法安定性、耐火性(不燃性)が悪化するために好ましくない。
また、けい酸質原料としては例えば珪石、石粉等を用いることができ、その含有量は10〜40質量%、好ましくは15〜35質量%の範囲内である。なお、けい酸質原料の含有量が10質量%未満並びに40質量%を超えると、得られる無機質板の強度が低下するために好ましくない。
更に、上記無機質板は、見掛け密度が1.2〜1.8g/cm、好ましくは1.4〜1.7g/cmの範囲内にある。ここで、見掛け密度が1.2g/cm未満であると、無機質板の強度が低下するために好ましくなく、また、1.8g/cmを超えると、無機質板が重くなり、施工性が悪化するために好ましくない。
また、上記無機質板の厚さは、5〜15mm、好ましくは6〜12mmの範囲内である。ここで、下地材の厚さが5mm未満であると、無機質板が充分な強度を保持できないために好ましくなく、また、12mmを超えると、無機質板が重くなり、施工性が悪化し、コストが増加するために好ましくない。
本発明において、下地材として用いられる無機質板は、軟質で、良好な表面平滑性を有するものであり、以後の工程において、ベースコートを塗布するような不陸調整を行なうことなく、タイルを施工することができる。
上記無機質板は、上述のような組成となるように調整した原料を湿式にて混合、成形し、オートクレーブにて140〜190℃、好ましくは160〜190℃の温度で4〜15時間にわたり水蒸気養生することにより得ることができる。ここで、水蒸気養生の温度が140℃未満または190℃を超えると、無機質板の強度が低下するために好ましくない。また、水蒸気養生の時間が4時間未満であると、水硬性セメントとけい酸質原料との水和反応が充分に進行せず、無機質板の強度が低下するため好ましくない。水蒸気養生の時間が15時間を上回っても無機質板の強度等の物性には特に悪影響はないが、エネルギーを無駄に消費するにすぎない。
なお、成形方法としては例えば丸網抄造、長網抄造、フローオン式抄造のような抄造法、モールドプレス法、押出法等を用いることができるが、繊維原料の二次元配向を良好なものとし、それによって高強度の無機質板を得ることができ、薄物を効率良く成形できる抄造法を用い、15〜30N/mm以上、好ましくは20〜30N/mm以上で加圧脱水成形することが好適である。ここで、加圧脱水成形が15N/mm未満であると、無機質板の強度並びに平滑性が低下するために好ましくなく、また、30N/mmを超えると、所望とする見掛け密度を有する無機質板を得ることができないために好ましくない。
上述のような特性を有する無機質板からなる下地材の裏面に、防水シーラーを塗布する。防水シーラーとしては例えばアクリルウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系及びエポキシ樹脂系等のものを使用することができ、特に、アクリルウレタン樹脂系防水シーラーが好ましい。下地材の裏面に防水シーラーを塗布することにより、下地材裏面を隠蔽して吸水あるいは乾燥による下地材の変形を抑制し、タイル施工後の寸法安定性を向上させることができる。ここで、防水シーラーの塗布量は100〜600g/m、好ましくは200〜500g/mであり、塗布量が100g/m未満になると、隠蔽効果が発現しないために好ましくなく、また、600g/mを超えると、塗膜層の表面密着性や、下地材の不燃性能に影響を及ぼすことがあるために好ましくない。
防水シーラーを塗布した下地材を、裏面が下地組側として下地組の胴縁材に、下地材どうし目地部(接合部)を突きつけ(隙間がない)状態で留め付ける。なお、鉄骨枠組として厚さ1.6mm以上の鋼材を用いることが好ましい。鋼材の厚さが1.6mm未満となると、躯体の変形を招くことがあるために好ましくない。
下地材の胴縁材への留め付けは、ねじを用いることができ、特に、リーマ付きねじを用いることが好ましい。リーマによりねじ径より大きな下穴を開けることで、下地材の寸法変化や外力作用に伴う変形によって生じる留め付け部の応力集中を緩和することができ、また、留め付け時には、下地材の持ち上がりを防止することができる。ちなみに、下穴を開けてからねじを打ち込む方法もあるが、施工者への負担が憂慮されるために、リーマ付きねじによる留め付け方法が好ましい。
上述のようにして胴縁材へ留め付けた下地材どうしの接合部(目地部)には、張り付けるタイルの幅より広い幅を有するジョイントテープを接合部を跨るように布設する。目地部を跨るようにジョイントテープを布設することにより、下地材の寸法変化や外力作用に伴う変形に対する追従性を持たせることができ、目地部でのタイルの割れを防止することができる。
ジョイントテープとしてはブチルゴム製、SBR製、シリコンゴム製、クロロプレンゴム製ジョイントテープのような伸縮性を有するテープを使用することができ、特に、耐久性、耐候性に優れていることから、ブチルゴムジョイントテープが好ましい。ジョイントテープの厚さは特に限定されるものではないが、0.5mmを超えると、最終的なタイル仕上げにおいて不陸が生じてしまい好ましくない。また、ジョイントテープの幅は、目地部を跨ぐタイルが全てジョイントテープ上に載るように、タイルの幅よりも広い幅のものを使用することが肝要である。なお、ガラスクロス製テープ等の伸縮性を有さないテープは、最終的なタイル仕上げを行った後、タイルが下地材から剥がれやすい等の問題があるので、本発明に使用するジョイントテープとしては好ましくない。
次に、下地材全面にわたり弾性接着剤を塗布する。弾性接着剤としては、JIS A 5557に規定される外装タイル張り用有機系接着剤を用いることが好ましい。この接着剤は弾力性を有しており、下地材の寸法変化や外力作用に伴う変形に対する追従性を有し、タイルの割れを防止することができる。外装タイル張り用有機系接着剤としては、変性シリコーン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤などを用いることができ、特に、耐候性に優れることから変性シリコーン系接着剤が好ましい。外装タイル張り用有機系接着剤の塗布量は、接着剤ごとの規定の塗布量を基本とし、安全性を考慮して規定量以上の量を塗布するのは特に制限されるものではないが、材料コストと接着性、最終的な不陸の微調整を考慮すると、1.5kg/m以上の量で使用することが好ましい。なお、エポキシ系接着剤等の弾力性を有さない接着剤は、目地部に接着したタイルに割れ等を生じやすいので、本発明に使用する接着剤としては好ましくない。
弾性接着剤を塗布後、タイルを張り付ける。タイルは特に限定されるものではないが、初期の接着性及びデザイン性を考慮して一般的に使用される二丁掛サイズ(幅60mm×長さ227mm×厚さ8mm)以下のサイズのタイルを使用することが好ましい。
以下、実施例により本発明のタイルの施工方法を更に具体的に説明する。
実施例
無機質板の作製:
普通ポルトランドセメント35質量%、粉末珪石(ブレーン4000cm/g相当)25質量%、セルロースパルプ7質量%、ワラストナイト10質量%、炭酸カルシウム粉末23質量%からなる配合物を丸網式抄造法にて湿式成形して生板を得、圧力24.5N/mmで加圧脱水成形した後、180℃で10時間オートクレーブ養生することにより厚さ8mm、見掛け密度1.6g/cm、曲げ強度28MPaの無機質板を得た。
この無機質板を下地材とし、下地材の裏面側にアクリルウレタン樹脂系防水シーラーを400g/mの割合で塗布して乾燥、硬化した。
この下地材を使用して図1に示す構成にてタイルを施工した。即ち、リップ型鋼C−75×45×15×厚さ2.3mmよりなる躯体(1)に、下地材(2)の裏面側が躯体(1)側となるようにリーマ付きねじ(φ4×25mm)(3)を用いて留め付けた。なお、下地材(2)どうしの接合部は突きつけとした。
次に、下地材(2)どうしの接合部、即ち、目地部(4)を跨ぐように、幅235mm、厚さ0.5mmのブチルゴムジョイントテープ[(株)INAX製、ジョイントテープ FATAPE−235](5)を布設した。
次に、下地材(2)表面及びブチルゴムジョイントシート(5)表面に、弾性接着剤(外装タイル張り用有機系接着剤)(6)として、変性シリコーン樹脂系弾性接着剤[(株)タイルメント製、フレックススーパー]を塗布量1.5kg/mで塗布した。
得られた弾性接着剤(6)の表面にタイル[外装用陶器質タイル(二丁掛けタイプ=幅60mm×長さ227mm×厚さ8mm):(株)INAX製、はるかべくん サニーロII](7)を図1に示すように千鳥状に張り付けた。
得られたタイル施工面は、施工4ヶ月経過後もタイルの割れや剥落等の欠陥は発生せず、良好な状態を維持していた。
比較例1
無機質板の作製:
普通ポルトランドセメント65質量%、セルロースパルプ8質量%、ワラストナイト10質量%、炭酸カルシウム粉末17質量%からなる配合物を丸網式抄造法にて湿式成形して生板を得、圧力24.5N/mmで加圧脱水成形した後、常温で2週間養生することにより厚さ8mm、見掛け密度1.7g/cm、曲げ強度32MPaの無機質板を得た。
この無機質板の裏面に防水シーラーによる処理を施さずに下地材として使用し、実施例と同一の材料および施工方法によりタイルを下地材に張り付けた。
施工4ヶ月経過後において、得られたタイル施工面には反りが確認され、突きつけ目地部に接着したタイルには一部割れが確認された。
比較例2
ジョイントテープとしてガラスクロス製テープ[富士川建材工業(株)製、商品名アリスグラスファイバーネット]を用いたこと以外は実施例と同一の材料及び施工方法によりタイルを下地材に張り付けた。
施工4ヶ月経過後において、突きつけ目地部に接着したタイルには、一部下地材と接着部との剥がれが確認された。
比較例3
幅が100mmのジョイントテープを用いたこと以外は実施例と同一の材料及び施工方法によりタイルを下地材に張り付けた。
施工4ヶ月経過後において、ジョイントテープを跨いでタイルが張り付けられた突きつけ目地部では、一部タイルの割れが確認された。
比較例4
接着剤としてエポキシ系接着剤[コニシ(株)製、商品名EK360]を用いたこと以外は実施例と同一の材料及び施工方法によりタイルを下地材に張り付けた。
施工4ヶ月経過後において、得られたタイル施工面には反りが確認され、突きつけ目地部に接着したタイルには一部割れが確認された。
本発明のタイルの施工方法は、建築物の内外装用として好適に適用することができる。
1 躯体、2 下地材、3 リーマ付きねじ、4 目地部、5 ブチルゴムジョイントシート、 6 弾性接着剤、7 タイル、11 躯体、12 下地材、13 スクリューねじ、14 目地部、15 ガラス繊維テープ、16 タイル用弾性接着剤、17 タイル、18 ベースコート、19 防水シート。

Claims (3)

  1. 下地材として水硬性セメント20〜50質量%、無機質混和剤30〜60質量%、繊維原料(石綿を除く)4〜10質量%、けい酸質原料10〜40質量%よりなり、見掛け密度が1.2〜1.8g/cm、厚さ5mm以上の無機質板を用い、下地材の裏面に防水シーラーを塗布後、下地材を下地組の胴縁材に、下地材どうしの接合部を突きつけ状態として留め付け、下地材の接合部のタイル施工面に、施工するタイルの幅より広い幅を有しかつ伸縮性を有するジョイントテープを接合部を跨いで布設した後、下地材表面及びジョイントテープ表面に弾性接着剤を塗布し、その後タイルを張り付けることを特徴とするタイルの施工方法。
  2. ジョイントテープがブチルゴムジョイントテープである、請求項1記載のタイルの施工方法。
  3. リーマ付きねじを用いて下地材を下地組の胴縁材に留め付ける、請求項1記載のタイルの施工方法。
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