本実施の形態の像保持体について、一例を挙げて説明する。
図1に示すように、本実施の形態の像保持体10は、導電性を有する円筒状の基体12と、該基体12上に設けられた感光層20と、該感光層20上に設けられた被覆層22と、の積層体とされている。なお、本実施の形態の像保持体10は、電子写真方式の画像形成装置(詳細後述)の像保持体として用いられる。
被覆層22は、感光層20を保護する機能を備えており、感光層20の表面と、感光層20の端面と、基体12の表面の少なくとも一部と、を連続して被覆するように設けられている。
なお、図1〜図4には、像保持体10の幅方向の一端部のみを示したが、該幅方向の他端部についても同じ構成とされている。
ここで、従来では、基体12上に設けられた感光層20や被覆層22の積層体の端面がそろった状態とされていた。これは、製造工程の簡略化から、基体12上に感光層20や被覆層22を形成した後に両端部を切断することで像保持体を製造したり、基体12上に該積層体の各層の形成材料を塗布して拭き取る工程を繰り返すことで像保持体を製造したりすることが一般的であったためと考えられる。また、電子写真方式の画像形成装置に用いられる像保持体としては、該画像形成装置における後述する転写装置や除去装置の接触によって負荷がかかることから、感光層20の端部には凸部の無い事が要求されるため、基体12上に設けられた感光層20や被覆層22の積層体の端部が揃えられていた。
一方、本発明者らは、感光層20の表面と、感光層20の端面と、基体12の表面の少なくとも一部と、を連続して被覆するように被覆層22を設けることによって、被覆層22の端部からの剥がれが抑制されることを見いだした。
この被覆層22の、基体12表面に直接接している領域の幅方向の長さ(図2〜図4中、長さA参照)としては、感光層20の厚み(図2〜図4中、長さB参照)の9倍以上40倍以下、または10倍以上20倍以下が挙げられる。
なお、被覆層22の、「基体12表面に直接接している領域の幅方向の長さ(図2〜図4中、長さA参照)」とは、基体12上に設けられた感光層20の幅方向の端部から、該基体12上の被覆層22の該幅方向の端部までの距離を示しており、図2〜図4では、各々長さAで示される。
被覆層22の、基体12表面に直接接している領域の幅方向の長さ(図2〜図4中、長さA参照)が、感光層20の厚み(図2〜図4中、長さB参照)の9倍以上40倍以下であると、該範囲外である場合に比べて、被覆層22の端部からの剥がれがより抑制される、と考えられる。
感光層20は、1層から構成されていてもよく、多層構成であってもよい。例えば、図2に示すように、感光層20は、下引層14上に、電荷発生層16、及び電荷輸送層18が順次重ねられた積層体として構成されていてもよい。また、感光層20は、図3に示すように、下引層14上に、電荷輸送層18及び電荷発生層16が順に重ねられた積層体として構成されていてもよい。また、感光層20は、図4に示すように、下引層14上に、後述する電荷発生材料及び電荷輸送材料を含む感光層17の重ねられた積層体として構成されていてもよい。
また、図2〜図4に示す感光層20は、下引層14を備えない構成であってもよい。
感光層20を構成する1または複数の層の内の、少なくとも、被覆層22に対して厚み方向に接する層の弾性変形率と、被覆層22の弾性変形率と、の差は、20%以下10%以下、または3%以下であることが良い。
感光層20を構成する1または複数の層の内の、少なくとも被覆層22に対して厚み方向に接する層の弾性変形率と、被覆層22の弾性変形率と、が異なる値であるほど、像保持体10の外側の面に付着した異物による外周面の変形によって、被覆層22が感光層20から剥がれやすくなると考えられる。このため、感光層20を構成する1または複数の層の内の、少なくとも被覆層22に対して厚み方向に接する層の弾性変形率と、被覆層22の弾性変形率と、の差が20%以下であると、異物の付着によって、被覆層22が該異物の付着した領域から剥がれることが抑制される、と考えられる。このため、被覆層22の感光層20からの剥がれが抑制される、と考えられる。なお、「被覆層22の感光層20からの剥がれ」とは、被覆層22の、感光層20の表面からの剥がれを示している。
この弾性変形率の測定は、フィッシャースコープH−100(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、25℃/50%RHの条件下で行う。詳細には、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて、測定対象の層に負荷時間10secで2mNの負荷をかけ、5sec間保持した後、10secかけて除荷した時の押し込み深さおよび荷重を測定すると図5(A→B→C)のように表される。弾性変形の仕事Welastは、図5中のC−B−D−Cで囲まれる面積で、塑性変形の仕事量Wplastは、図5中のA−B−C−Aで囲まれる面積で表され、弾性変形率(%)は(Welast/(Welast+Wplast))×100から求められる。
この弾性変形率の調整方法としては、感光層20を構成する1または複数の層の内の、被覆層22に対して厚み方向に接する層における、バインダー分子量を調整する方法や、バインダーと電荷輸送材の混合日を調整する方法や成膜時の乾燥温度・乾燥時間を調整する方法が挙げられる。
なお、被覆層22との弾性変形率の差が上記関係を示す層は、感光層20を構成する複数の層の内の、少なくとも被覆層22に対して厚み方向に接する層であればよいが、感光層20を構成する他の層についても、被覆層22との弾性変形率の差が上記関係を示すものであってもよい。
さらに、この被覆層22は、詳細は後述するが、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成されることが良い。
なお、以下では、−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送材料を、「特定の電荷輸送材料」と称して説明する場合がある。
被覆層22が、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、上記の特定の電荷輸送材料の少なくとも1種と、を含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成されることで、該構成を用いない場合に比べて、被覆層22の機械強度が向上し、被覆層22による感光層20を保護する機能が向上すると考えられる。
ここで、被覆層22は、機械的強度が向上するほど硬くなると考えられる。このため、被覆層22は、上記架橋物を含んだ構成とされることで、感光層20から剥がれやすくなると考えられる。しかし、本実施の形態の像保持体10では、上述のように、感光層20の表面と、感光層20の端面と、基体12の表面の少なくとも一部と、を連続して被覆するように被覆層22を設けた構成とされていることから、被覆層22の端部からの剥がれが抑制される、と考えられる。
また、被覆層22を、上記架橋物を含んだ構成とし、更に感光層20を構成する複数の層の内の、少なくとも被覆層22に対して厚み方向に接する層の弾性変形率と、被覆層22との弾性変形率と、の差を、上記関係を示すように調整すれば、被覆層22による感光層20の保護機能の向上と、該被覆層22の感光層20からの剥がれの抑制と、の両立が図れる、と考えられる。
以下、基体12及び感光層20を構成する各層について、詳細に説明する。
<基体>
基体12は、導電性を有している。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
この基体12としては、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルト、又は、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートしたベルト等が挙げられる。
像保持体10が、電子写真方式の画像形成装置としてのレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、基体12の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが良い。なお、非干渉光を光源に用いた電子写真方式の画像形成装置に適用する場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要ない。
<下引層>
下引層14は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成されている。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが挙げられる。この無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子が挙げられる。
下引層14に含有される結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が挙げられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が良く、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が良い。
下引層14中には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。
下引層14の厚みとしては、耐リーク性能が得られ且つ残留電位の発生の抑制の観点から15μm以上50μm以下が挙げられる。
<電荷発生層>
電荷発生層16は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が良く、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンが良い。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が良い。電荷発生材料としては、380nm以上500nmの露光波長の光源を用いる場合には無機顔料が良く、700nm以下800nmの露光波長の光源を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が良い。
電荷発生層16に使用される結着樹脂としては、絶縁性(体積抵抗率が1013Ωcm以上)の樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比としては、質量比で10:1から1:10までの範囲内が挙げられる。
電荷発生層16の厚みとしては、0.05μm以上0.15μm以下、0.1μm以上5.0μm以下、0.2μm以上2.0μm以下が挙げられる。 電荷発生層16の膜厚を0.05μm以上0.15μm以下の範囲とすると、後述する被覆層22の構成を、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と特定の電荷輸送材料とを用いた架橋物を含む被覆層22(詳細後述)とした組み合わせによって、そのメカニズムは解明されていないが、下引層14から電荷発生層16、さらに電荷輸送層18までの電荷輸送の劣化が抑えられると考えられる。即ち、該組合せによって、残留電位の低減が図れ、長期使用においても、残留電位上昇のない電気特性の安定した像保持体10が提供されると考えられる。
<電荷輸送層>
電荷輸送層18は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成される。なお、電荷輸送層18は、高分子電荷輸送材料を含有した構成であってもよい。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送層18に用いられる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1から1:5が挙げられる。
また、結着樹脂としては、粘度平均分子量50000以上80000以下のポリカーボネート樹脂、及び粘度平均分子量50000以上80000以下のポリアクリレート樹脂の少なくとも1種が良い。電子写真方式の画像形成装置に用いられる像保持体は、光耐性が十分ではないことがある。そこで、上記所定の分子量の樹脂を含む電荷輸送層を用いることで、電子写真感光体への入射光が電荷輸送層へ吸収され、耐光性が向上すると考えられる。
高分子電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものが挙げられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材料は、他種に比べ高い電荷輸送性を有していることから良い。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層18として成膜されるが、上記結着樹脂と混合して成膜されてもよい。
電荷輸送層18の膜厚としては、5μm以上50μm以下、10μm以上30μm以下が挙げられる。
<被覆層>
被覆層22は、像保持体10における最表面層であり、最表面の磨耗、傷などに対する耐性を持たせ、感光層20を保護するための層である。
被覆層22としては、上記の特性(最表面の磨耗、傷などに対する耐性を持たせて、感光層20を保護する特性)を有する層であればよいが、像保持体10の機械的強度及び電気的安定性の向上の観点から、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送材料(特定の電荷輸送材料)の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成されることが良い。
被覆層22を、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、特定の電荷輸送材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んだ構成とすることで、グアナミン化合物やメラミン化合物と、特定の官能基を有する特定の電荷輸送材料とにより、架橋部位(架橋サイト)が多官能化されて高度に架橋されることから、像保持体10の機械的強度が増すと考えられる。
なお、被覆層22に含まれるグアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種の、該被覆層22における含有量は、0.1質量%以上5質量%であることが良い。また、被覆層22に含まれる上記特定の電荷輸送材料の、該被覆層22における含有は95質量%以上99質量%以下であることが良い。
被覆層22に含まれるグアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種、及び上記特定の電荷輸送材料の各々の、被覆層22における含有量が上記範囲内であると、電気特性や耐ゴースト性の向上が図れる、と考えられる。
まず、グアナミン化合物について説明する。
グアナミン化合物は、グアナミン骨格(構造)を有する化合物であり、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、シクロヘキシルグアナミンなどが挙げられる。
グアナミン化合物としては、特に下記一般式(A)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが良い。ここで、多量体は、一般式(A)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(A)で示される化合物は、一種単独で用いもよりが、2種以上を併用してもよい。特に、一般式(A)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上されると考えられる。
一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。R2乃至R5は、それぞれ独立に水素、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素、又は炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
一般式(A)において、R1を示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下、1以下8以上、または1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
一般式(A)中、R1を示すフェニル基は、炭素数6以上10以下、または6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、R1を示す脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下、または5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、R2乃至R5を示す「−CH2−O−R6」において、R6を示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下、1以上8以下、または1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。望ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
一般式(A)で示される化合物としては、特に望ましくは、R1が炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R2乃至R5がそれぞれ独立に−CH2−O−R6を示される化合物である。また、R6は、メチル基又はn-ブチル基から選ばれることが良い。
一般式(A)で示される化合物は、例えば、グアナミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページ)で合成される。
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例として、例示化合物:(A)−1乃至例示化合物:(A)−42を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。尚、本実施形態において、「Me」はメチル基を、「Bu」はブチル基を、「Ph」はフェニル基をそれぞれ示す。
一般式(A)で示される化合物の市販品としては、例えば、”スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126”以上大日本インキ社製、”ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000”以上日本カーバイド社製、などが挙げられる。
また、一般式(A)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
次に、メラミン化合物について説明する。
メラミン化合物としては、メラミン骨格(構造)であり、特に下記一般式(B)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが良い。ここで、多量体は、一般式(A)と同様に、一般式(B)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(B)で示される化合物又はその多量体は、一種単独で用いもよりが、2種以上を併用してもよい。また、前記一般式(A)で示される化合物又はその多量体と併用してもよい。特に、一般式(B)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上される。
一般式(B)中、R6乃至R11はそれぞれ独立に、水素、−CH2−OH、−CH2−O−R12を示し、R12は炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基を示す。当該アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
一般式(B)で示される化合物は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページのメラミン樹脂と同様に合成される)で合成される。
以下、一般式(B)で示される化合物の具体例として、例示化合物:(B)−1乃至例示化合物:(B)−7を示すが、これらに限られるわけではない。を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
一般式(B)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日本油脂社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60(大日本インキ社製)、ユーバン2020(三井化学)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業)、ニカラックMW−30(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
また、一般式(B)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
次に、−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ、特定の電荷輸送材料について説明する。
この特定の電荷輸送材料としては、−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基を少なくとも2つ(さらには3つ)持つものが良い。このように、特定の電荷輸送材料に反応性官能基(置換基)が増えることで、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、像保持体10の表面の磨耗が抑制されると考えられる。この詳細は不明であるが、反応性官能基の数が増すことで、架橋密度の高い硬化膜が得られることから、像保持体10の極表面の分子運動が抑制されて、電子写真方式の画像形成装置に搭載されたときに像保持体10に接触する部材の表面分子との相互作用が弱まるためと推測される。
特定の電荷輸送材料としては、下記一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
F−((−R1−X)n1R2−Y)n2 (I)
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は1以上4以下の整数を示す。Xは酸素原子、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH3、−NH2、−SH、又は−COOHを示す。
一般式(I)中、Fを示す正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が挙げられる。
そして、一般式(I)で示される化合物は、下記一般式(II)で示される化合物であることが望ましい。一般式(II)で示される化合物は、特に、電荷移動度、酸化などに対する安定性等に優れると考えられる。
一般式(II)中、Ar1乃至Ar4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R1−X)n1R2−Yを示し、cはそれぞれ独立に0又は1を示し、kは0又は1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、該R1及び該R2はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、Xは酸素原子、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH3、−NH2、−SH、又は−COOHを示す。
一般式(II)中、Dを示す「−(−R1−X)n1R2−Y」は、一般式(I)における「−(−R1−X)n1R2−Y」と同様であり、該R1及び該R2はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基である。また、n1としては、1が良い。また、Xとしては、酸素原子が良い。また、Yとしては水酸基が良い。
なお、一般式(II)におけるDの総数は、一般式(I)におけるn2に相当し、2以上4以下や、3以上4以下が良い。つまり、一般式(I)や一般式(II)におけるDの総数を、1分子中に2以上4以下、または3以上4以下とすると、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、像保持体10の磨耗が抑制されると考えられる。
一般式(II)中、Ar1〜Ar4としては、下記式(1)〜(7)のうちのいずれかであることが良い。なお、下記式(1)〜(7)は、各Ar1〜Ar4に連結され得る「−(D)C」と共に示す。
式(1)〜(7)中、R9は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R10乃至R12はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、D及びcは一般式(II)における「D」、「c」と同様であり、sはそれぞれ0又は1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが良い。
上記式(8)、(9)中、R13及びR14はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)〜(17)のうちのいずれかで表されるものが良い。
式(10)〜(17)中、R15及びR16はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。
上記式(16)〜(17)中のWとしては、下記(18)〜(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが良い。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
また、一般式(II)中、Ar5は、kが0のときはAr1乃至Ar4の説明で例示された上記(1)〜(7)のアリール基であり、kが1のときはかかる上記(1)〜(7)のアリール基から水素原子を除いたアリーレン基である。
一般式(I)で示される化合物の具体例としては、以下に示す例示化合物:I−1乃至例示化合物:I−34が挙げられる。なお、上記一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
ここで、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の塗布液における固形分濃度としては、0.1質量%以上5質量%以下、または1質量%以上3質量%以下が挙げられる。この固形分濃度が、上記範囲内であると、緻密な膜となりやすいため十分な強度が得られやすく、且つ良好な電気特性が得られると考えられる。
一方、上記特定の電荷輸送材料の少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度としては、95質量%以上99質量%以下、または97質量%以上99質量%以下が挙げられる。この固形分濃度が、上記範囲内であると、良好な電気特性が得られると考えられる。
なお、この固形分濃度は、多いほうが良いが、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種や、他の添加剤が有効に機能する関係上、99質量%以下となる。
以下、被覆層22についてさらに詳細に説明する。
被覆層22には、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種と特定の電荷輸送材料(一般式(I)で示される化合物)との架橋物と共に、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂などを混合して用いてもよい。また、強度を向上させるために、スピロアセタール系グアナミン樹脂(例えば「CTU−グアナミン」(味の素ファインテクノ(株)))など、一分子中の官能基のより多い化合物を当該架橋物中の材料に共重合させることも効果的である。
また、被覆層22には、放電生成ガスを吸着しすぎないように、添加することで放電生成ガスによる酸化を効果的に抑制する目的から、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの他の熱硬化性樹脂を混合して用いてもよい。
また、被覆層22には界面活性剤を添加することが良く、用いる界面活性剤としては、フッ素原子、アルキレンオキサイド構造、シリコーン構造のうち少なくとも一種類以上の構造を含む界面活性剤であれば特に制限はないが、上記構造を複数有するものが電荷輸送性有機化合物との親和性・相溶性が高く被覆層用の塗布液の成膜性が向上し、被覆層22のシワ・ムラが抑制されるため、良い。
また、被覆層22には、さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。この化合物としては、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が挙げられる。
また、被覆層22の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
ここで、アルコールに可溶な樹脂とは、炭素数5以下のアルコールに1質量%以上溶解する樹脂を意味する。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などがあげられる。
更に、被覆層22には、残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。粒子の一例として、構成元素にケイ素を含む粒子が挙げられる。また、被覆層22には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。
被覆層22には、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)や、上述の特定の電荷輸送材料の硬化を促進するために硬化触媒として酸触媒を用いて硬化させてもよい。酸触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの脂肪族、及び芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが良い。
また、上述の特定の電荷輸送材料の硬化が促進されるという効果が顕著になる点で、前記グアナミン構造あるいはメラミン構造を有する化合物100質量部に対する前記酸触媒の量としては、0.1質量部以上50質量部以下、または10質量部以上30質量部以下が良い。
硬化触媒として含硫黄系材料を用いることにより、この含硫黄系材料がグアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)や、特定の電荷輸送材料の硬化触媒として優れた機能を発揮し、硬化反応を促進して得られる被覆層22の機械的強度がより向上されると考えられる。更に、特定の電荷輸送材料として上記一般式(I)(一般式(II)含む)で表される化合物を用いる場合、含硫黄系材料は、これら電荷輸送材料に対するドーパントとしても優れた機能を発揮し、得られる被覆層22の電気特性がより向上されると考えられる。その結果、像保持体10の機械強度、成膜性及び電気特性の全てが高水準で達成されると考えられる。
硬化触媒としての含硫黄系材料は、常温(例えば25℃)、又は、加熱後に酸性を示すものが望ましく、接着性、ゴースト、電気特性の観点で有機スルホン酸及びその誘導体の少なくとも1種が良い。被覆層22中にこれら触媒の存在は、XPS等により容易に確認される。
有機スルホン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒能、成膜性の観点から、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が望ましい。また、硬化性樹脂組成物中で、ある程度解離可能であれば、有機スルホン酸塩を用いてもよい。
また、一定以上の温度をかけたときに触媒能力が高くなる、所謂、熱潜在性触媒を用いることで、液保管温度では触媒能が低く、硬化時に触媒能が高くなるため、硬化温度の低下と、保存安定性が両立される。
熱潜在性触媒として、たとえば有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトの如く空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などがあげられる。
中でも、触媒能、保管安定性、入手性、コストの面でプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが望ましい。
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸として、硫酸、塩酸、酢酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体として、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属円などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基として、アミン類が挙げられる。
アミン類として、1級、2級又は3級アミンに分類される。特に制限はなく、いずれも使用してもよい。
1級アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
2級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,2ージアミノエタン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,3ージアミノプロパン、N,N,N’,N’ーテトラアリルー1,4ージアミノブタン、Nーメチルピペリジン、ピリジン、4ーエチルピリジン、Nープロピルジアリルアミン、3−ジメチルアミノプロパノ−ル、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチル−4−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、N,N,N’,N’ −テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−エチル−3−ヒドロキシピペリジン、3−メチル−4−エチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、イミダゾ−ル、N−メチルピペラジン等が挙げられる。
市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.2以下、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7以上pH6.5以下、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレングリコール溶媒、pH3.5以上pH4.5以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0以上pH4.0以下、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1以上pH6.4以下、解離温度80℃)、「NACUREXC―2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2以上pH8.5以下、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、pH7.0以上pH7.5以下、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.5以下、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8以上pH7.3以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃、「NACURE4575」(リン酸解離、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度110℃)等が挙げられる。
これらの熱潜在性触媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用される。
ここで、触媒の配合量としては、耐光性向上の観点から、上記グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の量(塗布液における固形分濃度)に対し、0.1質量%以上50質量%以下の範囲、または10質量%以上30質量%以下の範囲が挙げられる。
この被覆層22の厚みとしては、3μm以上10μm以下が挙げられる。
<像保持体の作製方法>
上記構成の像保持体10は、基体12上に、感光層20を形成した後に、被覆層22を形成することによって作製される。
この感光層20の形成は、例えば、図2に示す構成の像保持体10であれば、下引層14上に、電荷発生層16、及び電荷輸送層18を順に成膜することで形成される。
下引層14は、下引層14の構成材料として説明した、上記結着樹脂、上記無機粒子、及び上記添加物を溶媒に分散した塗布液を、基体12上に塗布し、乾燥させることで形成される。具体的には、基体12の幅方向の両端部には下引層14用の塗膜が形成されない外部に露出した領域が設けられるように、下引層14用の該塗布液を基体12の中央部(基体12の幅方向の両端部以外の領域)に塗布して塗膜を形成する。その後、該塗膜を乾燥させることで、下引層14が形成される。
この下引層14用の塗布液に用いられる溶媒としては、公知の有機溶剤を用いればよい。なお、分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が挙げられる。また、この下引層14を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷発生層16は、電荷発生層16の構成材料として説明した、上記電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。具体的には、基体12上に形成された下引層14上に該塗布液を塗布して、電荷発生層16用の塗膜を形成した後に、該電荷発生層16用の塗膜の幅方向の両端面が上記下引層14の幅方向(図1〜図4中、矢印X方向参照)の両端面とそろうように、該塗膜の幅方向の両端部を溶剤と、ブラシやスポンジ・ブレード等の拭き取り部材とによって拭き取る。その後、乾燥させることで形成される。
この電荷発生層16用の塗布液に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
また、該塗布液の分散方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等が挙げられる。また、この電荷発生層16を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の方法が挙げられる。
電荷輸送層18は、電荷輸送層18の構成材料として説明した、上記構成材料を溶剤に分散した塗布液を用いて形成される。具体的には、上記電荷発生層16上に該塗布液を塗布して、該電荷輸送層18用の塗膜を形成した後に、該電荷輸送層18用の塗膜の幅方向(図1〜図4中、矢印X方向参照)の両端面が、上記下引層14及び上記電荷発生層16の幅方向(図1〜図4中、矢印X方向参照)の両端面とそろうように、該塗膜の幅方向の両端部を溶剤と、ブラシやスポンジ・ブレード等の拭き取り部材とによって拭き取る。その後、乾燥させることで、電荷輸送層18が形成される。
この電荷輸送層18用の塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられ、これらを単独又は2種以上混合して用いられる。また、上記各構成材料の分散方法としては、公知の方法が使用される。
電荷輸送層18の形成用の塗布液を塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
上記工程によって、感光層20を構成する各層(図2に示す例では、下引層14、電荷発生層16、及び電荷輸送層18)が、基体12の幅方向(図1〜図4中、矢印X方向)の中央部に形成され、且つ、感光層20を構成する各層の幅方向(図1〜図4中、矢印X方向)の両端面が揃うように形成される。
なお、図3及び図4に示す感光層20についても、上記と同様にして作製すればよい。
次に、この感光層20上に、被覆層22が形成される。
被覆層22は、被覆層22の構成材料として説明した、上記構成材料を溶剤に分散した被覆層22用の塗布液を用いて形成される。具体的には、上記感光層20の表面と、感光層20の端面と、基体12の表面(基体12の外側の面の全領域の内の、外部に露出している領域)の少なくとも一部と、を連続して被覆するように、該被覆層22用の塗布液を塗布した後に、乾燥させることで、電荷輸送層18が形成される。
この被覆層22の形成される「感光層20の表面」とは、感光層20の外側の面の全領域を示しており、図2に示す構成の感光層20である場合には、電荷輸送層18の外側の面の全領域を示している。なお、外側とは、基体12に対して反対側の面を示している。
また、基体12の表面とは、基体12の表面の感光層20によって覆われていない領域を示している。また、この基体12の表面の少なくとも一部とは、基体12の表面の感光層20によって覆われていない領域の内の、感光層20に連続する領域から幅方向端部に向かう領域を示している。
この被覆層22用の塗布液を塗布する方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。この被覆層22の、基体12の表面に直接接している領域の幅方向の長さ(図2〜図4中、長さA参照)の調整は、上記塗布方法による塗布領域を調整することで、調整される。
また、この被覆層22による塗膜の乾燥は、必要に応じて、例えば温度100℃以上170以下で加熱して硬化させることで、行っても良い。
上記被覆層22用の塗布液の調整は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行ってもよい。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用可能であるが、望ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤としては、特に、少なくとも1種以上の水酸基を持つ溶剤(例えば、アルコール類等)を用いることがよい。
溶剤量は任意に設定されるが、少なすぎると、構成材料としてグアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)を用いた場合には、これらが析出しやすくなるため、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の1質量部に対し0.5質量部以上30質量部以下、または1質量部以上20質量部以下で使用される。
上述のようにして作製される本実施の形態の像保持体10は、上述のように、基体12上に、感光層20が形成され、感光層20の表面と、感光層20の幅方向の両端面と、基体12の表面の少なくとも一部と、を連続して被覆した被覆層22を設けた構成とされている。
このため、被覆層22の端部からの剥がれが抑制される、と考えられる。
本実施の形態の像保持体10は、電子写真方式の画像形成装置に適用される。
本実施の形態の画像形成装置の一例としては、図6に示す画像形成装置100が挙げられる。
画像形成装置100は、像保持体10を備えたプロセスカートリッジ300と、露光装置9と、転写装置40と、中間転写体50とを備えている。
プロセスカートリッジ300は、筐体内に、像保持体10、帯電装置8、現像装置11及び除去装置13、を含んで構成されている。除去装置13は、像保持体10の表面に接触して配置された板状部材131を備えている。
帯電装置8は、像保持体10の表面を帯電させる装置である。この帯電装置8としては帯電ローラや帯電ブラシ等を用いた接触型帯電器や、コロナ放電を利用した非接触方式の帯電器が挙げられる。
露光装置9は、帯電装置8によって帯電された像保持体10の表面に、画像データに応じて変調した光を照射することで、該像保持体10の表面に静電潜像を形成する装置である。この露光装置9としては、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を露光する光学系機器が挙げられる。
現像装置11は、公知の一成分系現像剤又は二成分系現像剤を貯留し、現像剤に含まれるトナーを像保持体10へ供給することで、像保持体10上の静電潜像をトナーによって現像してトナー像とする装置である。この現像装置11としては、目的に応じて選択すればよい。
転写装置40は、像保持体10上に形成されたトナー像を、図示を省略する記録媒体へ転写する装置である。この転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等が挙げられる。
中間転写体50は、図示を省略する記録媒体を表面に保持して、像保持体10と転写装置40とが向かい合う領域へ搬送した後に、画像形成装置100の外部へと搬送する。この中間転写体50としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いられる。
このような構成の画像形成装置100では、像保持体10が回転され(図6中、矢印Y方向)、帯電装置8によって表面を帯電された像保持体10に、露光装置9によって静電潜像が形成される。そして、この静電潜像は、現像装置11によって現像されてトナー像とされる。そして、このトナー像は、中間転写体50によって転写装置40と像保持体10との向かい合う領域に搬送されてきた記録媒体(図示省略)に転写され、図示を省略する定着装置によって該記録媒体に定着される。
ここで、本実施の形態の像保持体10は、上述のように、被覆層22の感光層20からの剥がれが抑制された構成とされていることから、電子写真方式の画像形成装置100に適用されたときに、像保持体10の磨耗が抑制される、と考えられる。
なお、図6には、電子写真方式の画像形成装置の一例を示したが、本実施の形態の像保持体10の適用される電子写真方式の画像形成装置としては、図6に示す形態に限られない。例えば、複数の像保持体10が配列された、所謂タンデム型の電子写真方式の画像形成装置であってもよい。
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例7及び実施例9は、それぞれ参考例1及び参考例3と読み替えるものとする。
[像保持体の作製]
−像保持体1Aの作製−
まず、基体として、直径60mm、長さ357mm、肉厚1mmの円筒状のアルミニウム基材を用意した。
次に、酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:KBM503、信越化学社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。この表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。そして、このアリザリン付与酸化亜鉛60質量部と硬化剤(ブロック化イソシアネート 商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部と、をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン:25質量部と、を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行って、分散液を得た。
この分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール145、GE東芝シリコーン社製):45質量部を添加し、下引層用の塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、上記アルミニウム基材の幅方向の中央部に塗布して下引層用の塗膜を形成した後に、190℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
なお、このアルミニウム基材の幅方向の両端部には、各々、10mmの露出した領域(下引層の形成されていない領域)が設けられていた。
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に強い回折ピークを持つクロロガリウムフタロシアニンを1質量部、ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)を1質量部、及び酢酸n−ブチルを100質量部混合し、さらにガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散し、電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層用の塗布液を、上記下引層上に浸漬塗布して電荷発生層用の塗膜を形成した後に、該電荷発生層用の塗膜の幅方向端面と、下引層の幅方向端面と、が揃うように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジ用いて、該電荷発生層用の塗膜の幅方向の両端部を拭き取った。
次に、この電荷発生用の塗膜を100℃で10分間加熱乾燥し、膜厚約0.10μmの電荷発生層を形成した。
次に下記式(CT−1)で示される電荷輸送材料:48質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40000,三菱ガス化学社製、商品名Z400):52質量部と、をテトロヒドロフラン280重量部及びトルエン120重量部に十分に溶解混合した塗布液を、電荷輸送層用の塗布液として調整した。この塗布液を、電荷発生層まで塗布したアルミニウム支持体上に浸漬塗布して電荷輸送層用の塗膜を形成した後に、該電荷輸送層用の塗膜の幅方向端面と、下引層及び電荷発生層の幅方向端面と、が揃うように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて、該電荷輸送層用の塗膜の幅方向の両端部を拭き取った。次に、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、これによって、基体上に感光層を形成した。なお、感光層の厚みは、43.10μm(下引層:18μm,電荷発生層:0.10μm,電荷輸送層:25μm)であった。
この感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率を求めたところ、表1に示す結果が得られた。
なお、この弾性変形率の測定は、フィッシャースコープH−100(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、25℃/50%RHの条件下で行った。詳細には、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて、測定対象の層に負荷時間10secで2mNの負荷をかけ、5sec間保持した後、10secかけて除荷した時の押し込み深さおよび荷重を測定すると図5(A→B→C)のように表される。弾性変形の仕事Welastは、図5中のC−B−D−Cで囲まれる面積で、塑性変形の仕事量Wplastは、図5中のA−B−C−Aで囲まれる面積で表され、弾性変形率(%)は(Welast/(Welast+Wplast))×100から求めた。
次に、上記感光層上に、被覆層を形成した。
被覆層の形成には、まず、樹脂としてグアナミン樹脂「ニカラックMW−30(日本カーバイト社製)」0.09質量部、電荷輸送材料として上記I−30で示される化合物99質量部、及びp−トルエンスルホン酸触媒0.1質量部をシクロペンタノールに溶解させ、被覆層用の塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法によって、上記感光層及び基体の露出領域上に塗布し、塗布された被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.5mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った。このため、感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、11.6倍であった。
次に、該被覆層用の塗膜を室温で30分風乾した。その後、150℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約4.5μmの被覆層を形成した。これによって像保持体1Aを作製した。
この像保持体1Aの被覆層の弾性変形率を求めたところ、表1に示す結果が得られた。
また、感光層20の内の被覆層に接する層である電荷輸送層の弾性変形率と、被覆層の弾性変形率と、の差を求め、結果を表1に示した。
−像保持体1Bの作製−
上記像保持体1Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.4mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った以外は、像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体1Bを作製した。
このため、像保持体1Bにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.4mm)は、9.3倍であった。
この像保持体1Bにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体1Cの作製−
上記像保持体1Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取って、被覆層と感光層の幅方向の端面が揃うように調整した以外は、像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体1Cを作製した。
このため、像保持体1Cにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0mm)は、0倍であった。
この像保持体1Cにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体2Aの作製−
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成において用いた電荷輸送層用の塗布液に変えて、上記式(CT−1)で示される電荷輸送材料を38質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量50000,帝人化成社製、商品名TS2050):62質量部と、をテトロヒドロフラン280重量部及びトルエン120重量部に十分に溶解混合した塗布液を、電荷輸送層用の塗布液として用いた以外は、像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体2Aを作製した。
このため、像保持体2Aにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、像保持体1Aと同じ11.6倍であった。
また、この像保持体2Aにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体2Bの作製−
上記像保持体2Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.4mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った以外は、像保持体2Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体2Bを作製した。
このため、像保持体2Bにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.4mm)は、9.3倍であった。
この像保持体2Bにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体2Cの作製−
上記像保持体2Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取って、被覆層と感光層の幅方向の端面が揃うように調整した以外は、像保持体2Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体2Cを作製した。
このため、像保持体2Cにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0mm)は、0倍であった。
この像保持体2Cにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体3Aの作製−
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成において用いた電荷輸送層用の塗布液に変えて、上記式(CT−1)で示される電荷輸送材料を43質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量50000,帝人化成社製、商品名TS2050):57質量部と、をテトロヒドロフラン280重量部及びトルエン120重量部に十分に溶解混合した塗布液を、電荷輸送層用の塗布液として用いた以外は、像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体3Aを作製した。
このため、像保持体3Aにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、像保持体1Aと同じ11.6倍であった。
また、この像保持体3Aにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体3Bの作製−
上記像保持体3Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.4mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った以外は、像保持体3Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体3Bを作製した。
このため、像保持体3Bにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.4mm)は、9.3倍であった。
この像保持体3Bにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体3Cの作製−
上記像保持体3Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取って、被覆層と感光層の幅方向の端面が揃うように調整した以外は、像保持体3Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体3Cを作製した。
このため、像保持体3Cにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0mm)は、0倍であった。
この像保持体3Cにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体4Aの作製−
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成において用いた電荷輸送層用の塗布液に変えて、上記式(CT−1)で示される電荷輸送材料を48質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量50000,帝人化成社製、商品名TS2050):52質量部と、をテトロヒドロフラン280重量部及びトルエン120重量部に十分に溶解混合した塗布液を、電荷輸送層用の塗布液として用いた以外は、像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体4Aを作製した。
このため、像保持体4Aにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、像保持体1Aと同じ11.6倍であった。
また、この像保持体4Aにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体4Bの作製−
上記像保持体4Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.4mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った以外は、像保持体4Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体4Bを作製した。
このため、像保持体4Bにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.4mm)は、9.3倍であった。
この像保持体4Bにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体4Cの作製−
上記像保持体4Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取って、被覆層と感光層の幅方向の端面が揃うように調整した以外は、像保持体4Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体4Cを作製した。
このため、像保持体4Cにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0mm)は、0倍であった。
この像保持体4Cにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体5Aの作製−
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成において用いた電荷輸送層用の塗布液に変えて、上記式(CT−1)で示される電荷輸送材料を43質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量80000,三菱ガス化学社製、商品名Z800):57質量部と、をテトロヒドロフラン280重量部及びトルエン120重量部に十分に溶解混合した塗布液を、電荷輸送層用の塗布液として用いた以外は、像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体5Aを作製した。
このため、像保持体5Aにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、像保持体1Aと同じ11.6倍であった。
また、この像保持体5Aにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体5Bの作製−
上記像保持体5Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.4mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った以外は、像保持体5Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体5Bを作製した。
このため、像保持体5Bにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.4mm)は、9.3倍であった。
この像保持体5Bにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体5Cの作製−
上記像保持体5Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取って、被覆層と感光層の幅方向の端面が揃うように調整した以外は、像保持体5Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体5Cを作製した。
このため、像保持体5Cにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0mm)は、0倍であった。
この像保持体5Cにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体6Aの作製−
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成において用いた電荷輸送層用の塗布液に変えて、上記式(CT−1)で示される電荷輸送材料を48質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量80000,三菱ガス化学社製、商品名Z800):52質量部と、をテトロヒドロフラン280重量部及びトルエン120重量部に十分に溶解混合した塗布液を、電荷輸送層用の塗布液として用いた以外は、像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体6Aを作製した。
このため、像保持体6Aにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、像保持体1Aと同じ11.6倍であった。
また、この像保持体6Aにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体6Bの作製−
上記像保持体6Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.4mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った以外は、像保持体6Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体6Bを作製した。
このため、像保持体6Bにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.4mm)は、9.3倍であった。
この像保持体6Bにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
−像保持体6Cの作製−
上記像保持体6Aの作製において、被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取って、被覆層と感光層の幅方向の端面が揃うように調整した以外は、像保持体6Aと同じ製法及び同じ条件で、像保持体6Cを作製した。
このため、像保持体6Cにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0mm)は、0倍であった。
この像保持体6Cにおける感光層の最も外側の層である電荷輸送層の弾性変形率、被覆層の弾性変形率、これらの差を、像保持体1Aと同じ方法で求めたところ、表1に示す結果が得られた。
―像保持体7Aの作製―
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成までを像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で作成した。
被覆層の形成には、まず、樹脂としてフェノール樹脂(商品名:レジトップPL−2211、群栄化学社製)3質量部、電荷輸送材料として上記I−30で示される化合物3質量部、硬化触媒としてNacure2500(キングインダストリーズ社製)をイソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部に溶解させ、被覆層用の塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法によって、上記感光層及び基体の露出領域上に塗布し、塗布された被覆層用の塗膜の幅方向端部を、基体上の被覆層の幅が0.5mmとなるように、テトラヒドロフラン(関東化学社製)と拭き取りスポンジを用いて拭き取った。このため、感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、11.6倍であった。
次に、該被覆層用の塗膜を室温で30分風乾した。その後、150℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約4.5μmの被覆層を形成した。これによって像保持体7Aを作製した。
―像保持体8Aの作製―
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成までを像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で作成し、該被覆層用の塗布液を像保持体1Aと同じ条件で作成し、室温で30分風乾した。その後、160℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約4.5μmの被覆層を形成した像保持体8Aを作製した。
このため、像保持体8Aにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上被覆層の幅A(0.5mm)は、像保持体1Aと同じ11.6倍であった。
―像保持体9Aの作製―
上記像保持体1Aにおける電荷輸送層の形成までを像保持体1Aと同じ製法及び同じ条件で作成し、該被覆層用の塗布液を像保持体1Aと同じ条件で作成し、室温で30分風乾した。その後、170℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約4.5μmの被覆層を形成した像保持体9Aを作製した。
このため、像保持体9Aにおける感光層の厚みB(43.10μm(0.0431mm))に対する基体上の被覆層の幅A(0.5mm)は、像保持体1Aと同じ11.6倍であった。
<実施例1〜実施例15,比較例1〜比較例6>
上記調整した像保持体の各々を、フルカラーレーザプリンタ(富士ゼロックス社製、「Docu CentreII C7500」改造機、中間転写体あり)の像保持体として装着した。
そして、一般環境(22℃、50%RH)の環境下で、A4用紙にエリアカバレッジ5%の画像を連続して200kpv(200×103枚)連続プリントする走行試験を行った(合計400kpv)。この走行試験後、各像保持体の表面をKEYENCE社製 VKレーザー顕微鏡にて観察し、像保持体の表面の異物痕による被覆層の感光層からの剥がれの評価を行った。評価結果を表1に示した。
その後、さらに、A4用紙にエリアカバレッジ5%の画像を連続して200kpv(200×103枚)連続プリントする走行試験を行った。この走行試験の後、再度、各像保持体の表面をKEYENCE社製 VKレーザー顕微鏡にて観察し、像保持体の表面の異物痕による被覆層の感光層からの剥がれの評価、及び、幅方向端部の被覆層の剥がれの評価を行った。評価結果を表1に示した。
なお、評価基準は、下記評価基準とした。
<異物痕による被覆層の感光層からの剥がれの評価基準>
G4:異物痕の発生は無く、さらに高画質領域での使用上で問題ない。異物痕による感光層からの剥がれもない。
G3:異物痕の軽微な発生は有るが、実使用上問題ない。異物痕による感光層からの剥がれもない。
G2:異物痕の発生が多数有り、問題が確認される。異物痕による感光層からの剥がれもない。
G1:異物痕より感光層からの軽微な剥がれが有り、実使用上耐えられない。
<幅方向端部の被覆層の剥がれの評価基準>
G4:被覆層の剥がれの発生は無く、さらに高画質領域での使用上で問題ない。
G3:基体上において被覆層の剥がれが軽微に有るが、実使用上問題ない。
G2:被覆層の電荷輸送層からの剥がれが多数有り、問題が確認される。
G1:広範囲に剥がれが有り、実使用上耐えられない。
表1に示されるように、実施例1〜実施例15では、比較例1〜比較例6に比べて、被覆層の端部からの剥がれが抑制されていた。
また、被覆層の弾性変形率と、該被覆層に接する電荷輸送層の弾性変形率と、の差が、20%以下であり、被覆層をグアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、特定の電荷輸送材料の少なくとも1種と、を用いた架橋物を含む構成とした実施例1〜実施例6、実施例8、実施例10〜実施例15では、該被覆層に接する電荷輸送層の弾性変形率と、の差が、20%以下であり、被覆層をグアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、特定の電荷輸送材料の少なくとも1種と、を用いた架橋物を含む構成とした実施例9に比べて、異物痕による損傷(ダメージ)が軽度であり、被覆層の感光層からの剥がれが抑制されていた。
また、被覆層をグアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、特定の電荷輸送材料の少なくとも1種と、を用いた架橋物を含む構成とした実施例1〜6、及び実施例8〜15では、被覆層を該架橋物を含まない構成とした実施例7に比べて、走行中の異物痕による損傷(ダメージ)が軽減され、走行中の感光層からの剥がれが無く良好な結果が得られた。