まず、この発明に係る弾性ローラの検査装置について説明する。この発明に係る弾性ローラの検査装置は、軸体の外周面に形成された弾性層を備えてなる弾性ローラを検査する検査装置であって、軸線が二等辺三角形の頂点となるように並置されると共に回転可能に支持された3本の挟圧ローラを備え、前記3本の挟圧ローラで形成され、前記弾性ローラが配置される挟圧空間を有する挟圧部と、前記挟圧ローラの少なくとも1本を960π/minの周速で回転させる駆動部とを備えている。この発明に係る弾性ローラの検査装置は、好ましくは、少なくとも1本の前記挟圧ローラを移動させて挟圧空間の大きさを調整する調整手段を備えている。
この発明に係る弾性ローラの検査装置は、前記挟圧空間に配置された弾性ローラをその半径方向の三方から挟圧する挟圧部を備えており、この発明に係る弾性ローラの検査選別方法及び弾性ローラの製造方法に好適に用いられ、弾性ローラが無端ベルトの蛇行及び斜行を抑えることができるか否かを検査することができる。
この発明に係る弾性ローラの検査装置の一例である弾性ローラの検査装置(以下、検査装置と称することがある。)1は、図1〜図3に示されるように、軸線が二等辺三角形の頂点となるように並置されると共に回転可能に支持された3本の挟圧ローラ11〜13を備え、前記3本の挟圧ローラ11〜13で形成され、前記弾性ローラが配置される挟圧空間14を有する挟圧部2と、前記挟圧ローラ11〜13の少なくとも1本を960π/minの周速で回転させる駆動部3と、前記弾性層の80%の厚さを有する仮想弾性層の(仮想)外径と実質的に同一の外径を有し、前記挟圧空間14の両端側に介挿される2つのスペーサ4A及び4Bと、少なくとも1本の前記挟圧ローラ11〜13を移動させて挟圧空間14の大きさを調整する調整手段5とを備えてなる。
この発明に係る検査装置1は、図1〜図3に示されるように、前記挟圧部2を支持する一対のフレーム6A及び6Bを有している。このフレーム6A及び6Bは、具体的には、互いに略並行に対向する六方体又は壁状を成しており、フレーム6A及び6Bを連結してその強度を補強する連結部材を有していてもよい。このフレーム6A及び6Bには、後述する挟圧ローラ11〜13の軸体を回転可能に支持するための支持機構(図示しない。)等が内蔵されている。フレーム6A及び6Bには、後述する第3挟圧ローラの軸体が貫通し、この軸体を鉛直方向に前後進可能とする縦孔6Cが形成されている。
前記挟圧部2は、図1〜図3に示されるように、それらの軸線C1〜C3がその垂直断面(図3参照。)において二等辺三角形の頂点となるように、又は、正三角形の頂点となるように、互いに離間して並列配置された状態に、前記フレーム6A及び6Bそれぞれに軸支された3本の挟圧ローラ11〜13を備えている。
前記3本の挟圧ローラ11〜13は、例えば図5に示されるように、それらの軸線C1〜C3がその垂直断面において正三角形の頂点となるように、又は、例えば図7に示されるように、それらの軸線C1〜C3がその垂直断面において二等辺三角形の頂点となるように、少なくとも1本が移動可能に軸支されている。この検査装置1においては、後述する第1挟圧ローラ11及び第2挟圧ローラ12がいずれもの方向にも不動に配置され、後述する第3挟圧ローラ13が鉛直方向に移動可能に配置されている。
具体的には、前記3本の挟圧ローラ11〜13は、図3によく示されるように、互いの軸線C1及びC2が同一平面上で実質的に並行になるように前記フレーム6A及び6Bに軸支された第1挟圧ローラ11及び第2挟圧ローラ12と、前記第1挟圧ローラ11及び第2挟圧ローラ12の前記軸線C1及びC2を結ぶ仮想線Lの垂直二等分線上に自身の軸線C3が前記同一平面に対して前後進可能に、すなわち、前記同一平面に対して接近又は離間可能に、軸支された第3挟圧ローラ13とである。
この検査装置1においては、前記挟圧ローラ11〜13は、前記フレーム6A及び6Bに対して略垂直に、すなわち、鉛直方向に略水平に並置されている。
前記挟圧ローラ11〜13それぞれは、検査対象である弾性ローラの弾性層よりも高い硬度を有する材料、例えば、金属又は樹脂で形成された円柱体を成している。前記金属としては、例えば、炭素鋼(例えば、機械構造用炭素鋼「S45C」等)、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられ、前記樹脂として、例えば、エンプラ、スーパーエンプラ等の硬質樹脂等が挙げられる。挟圧ローラ11〜13は、例えば、HRC硬度で33〜43の硬度を有しているのが好ましい。挟圧ローラ11〜13が前記金属で形成される場合には、挟圧ローラ11〜13はその外周面がメッキ処理されていてもよく、例えば、クロムメッキ等が好適に施される。挟圧ローラ11〜13はいずれも同一材料で形成されており、検査装置1の挟圧ローラ11〜13はいずれも機械構造用炭素鋼「S45C」で形成され、その外周面がクロムメッキされている。これら挟圧ローラ11〜13は、同一の寸法を有しており、軸線方向に均一で互いに接触しない程度の外径に調整され、軸線長さは検査対象、スペーサ及び変位量等を考慮して適宜の長さになっている。この検査装置1においては挟圧ローラ11〜13の外径は80mmになっている。
前記3本の挟圧ローラ11〜13を有する挟圧部2は、図1及び図3によく示されるように、前記挟圧ローラ11〜13でそれらの間に形成される挟圧空間14を有している。この挟圧空間14は、検査対象である弾性ローラが配置される空間である。この挟圧空間14は、その外周の三方に前記3本の挟圧ローラ11〜13が位置しており、前記挟圧ローラ11〜13で囲まれる空間である。
前記挟圧ローラ11〜13及び前記挟圧空間14を有する挟圧部2は、図4及び図5に示されるように、前記挟圧空間14の内に配置された前記弾性ローラ20をその半径方向の三方から前記挟圧ローラ11〜13で挟圧し、後述する駆動部3で回転させる。この検査装置1において、弾性ローラ20は、図5によく示されるように、前記挟圧空間14内で、その半径方向の三方から等間隔で、すなわち、挟圧ローラ11〜13それぞれとの圧接点特に最深圧接点P1〜P3が正三角形の頂点となる様に、挟圧される。
前記駆動部3は、図1及び図2に示されるように、フレーム6Bに併設され、前記挟圧ローラ11〜13の少なくとも1本に接続されている。この駆動部13は、少なくともモータ等の回転手段を有していればよく、例えば、検査装置1においては、モータ3A等の回転手段とこの回転手段の動力を少なくとも1本の挟圧ローラ11〜13に伝達する伝達シャフト3B等の伝達機構とを有している。
前記駆動部3は、前記挟圧ローラ11〜13の少なくとも1本を960π/minの周速で自身の軸線C1〜C3の周りに回転させる。すなわち、検査装置1において、駆動部3は、挟圧ローラ11〜13で挟圧された弾性ローラを960π/minの周速で自身の軸線の周りに間接的に回転させる。
前記スペーサ4A及び4Bは、図1〜図3に示されるように、前記挟圧空間14の軸線方向の両端側に配置され、前記挟圧ローラ11〜13の間に介挿される。すなわち、スペーサ4A及び4Bは、図4に示されるように、前記第1挟圧ローラ11及び前記第2挟圧ローラ12上にその軸線方向の両端側に、検査対象である弾性ローラ20に直列に離間して載置され、前記挟圧ローラ11〜13で挟持される。
スペーサ4A及び4Bは、前記金属又は前記樹脂で円柱状又は円盤状に形成され、その外径は弾性ローラの厚さに応じて決定され、弾性ローラ20又はローラ原体20における弾性層23の前記挟圧部2による圧縮量を調整する。すなわち、スペーサ4A及び4Bは、弾性層23の厚さに対して80%の厚さを有する仮想弾性層の外径と実質的に同一の外径に調整される。前記仮想弾性層の外径は、前記挟圧ローラ11〜13で前記弾性層23が挟圧されたときの、前記弾性層23における挟圧ローラ11〜13それぞれとの最深圧接点P1〜P3(図5参照。)を結んでなる圧縮円の直径に相当する。図5において、前記圧縮円は弾性層23と同心でありスペーサ4A及び4Bの外径と一致する。
前記調整手段5は、図1及び図2に示されるように、フレーム6Bに併設され、前記挟圧ローラ11〜13の少なくとも1本に連結されている。この調整手段5は、少なくとも1本の前記挟圧ローラ11〜13を移動可能に構成されていればよく、例えば、ハンドル、及び、このハンドルと少なくとも1本の挟圧ローラ11〜13の軸体に直接又は間接的に連結する伝達機構(図示しない。)を有している。このような調整手段5は、例えば、ハンドル5Aと、このハンドル5A及び挟圧ローラ11の軸体に螺合する歯車機構(図示しない。)とで構成されることができる。
前記調整手段5は、検査装置1において、前記第3挟圧ローラ13に連結され、この第3挟圧ローラ13を前記同一平面に対して前後進可能に移動させて、前記挟圧空間14の大きさすなわち弾性層23の圧縮量(挟圧量)を調整する。このように調整手段5は移動調整手段又は垂直方向移動手段と称することもできる。前記調整手段5は、所定の位置で、すなわち所定の弾性層23の圧縮量となるように、第3挟圧ローラ13を固定できるようになっている。
検査装置1は、前記挟圧部2、前記駆動部3、前記スペーサ4A及び4B、前記調整手段5に加えて、前記挟圧空間14に配置され前記3本の挟圧ローラ11〜13で挟圧された弾性ローラ20等の軸線方向の変位量を測定する測定手段7を備えている。この測定手段7は弾性ローラ20等の変位量を測定することができればよく、例えば、検査装置1と別体とされた各種測量機器、第1挟圧ローラ11の表面に印刷された目盛り等が挙げられる。
前記検査装置1は、図1〜図3に示されるように、前記挟圧部2、前記駆動部3、前記スペーサ4A及び4B並びに調整手段5を備えているから、後述する、この発明に係る弾性ローラの検査選別方法及び弾性ローラの製造方法に好適に用いられる。そして、この検査装置1は、自身に巻回された無端ベルトを蛇行走行及び斜行走行させる弾性ローラであるか否かを実機に装着しなくても検査することができる。したがって、この発明に係る弾性ローラの検査装置によれば、ベルト装置に装着されたときに無端ベルトの蛇行及び斜行を抑えることのできる弾性ローラであるか否かを検査することができる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法を、この発明に係る弾性ローラの検査選別方法と共に説明する。この発明に係る弾性ローラの製造方法は、軸体の外周面に弾性層を成形してローラ原体を作製する成形工程と、得られたローラ原体を、この発明に係る弾性ローラの検査選別方法により選別する検査選別方法とを有している。また、この発明に係る弾性ローラの検査選別方法は、軸線が二等辺三角形の頂点となるように並置された3本の挟圧ローラで前記弾性ローラの軸線に沿って半径方向の三方からこの軸線に向かって前記弾性層における前記挟圧ローラそれぞれとの最深圧接点を結んでなる圧縮円の直径が前記弾性層の80%の厚さを有する仮想弾性層の外径と一致するまで前記弾性層を挟圧する挟圧工程と、前記弾性層を挟圧しつつ前記弾性ローラを周速960π/minで3分間回転させる回転工程と、回転工程後に前記弾性ローラの軸線方向の変位量を測定する測定工程と、測定された前記変位量が75mm以下である弾性ローラを選別する選別工程とを有している。この発明に係る弾性ローラの検査選別方法は少なくとも後述する回転工程を23℃、50RH%の環境下において実施するのがよい。
この発明に係る弾性ローラの製造方法の一例である弾性ローラの製造方法(以下、この発明に係る一製造方法と称することがある。)を以下に説明する。この発明に係る一製造方法は、軸体22の外周面に弾性層23を成形してローラ原体20を作製する成形工程と、得られたローラ原体20をこの発明に係る弾性ローラの検査選別方法の一例であって前記検査装置1を用いた弾性ローラの検査選別方法(以下、この発明に係る一検査選別方法と称することがある。)により選別する検査選別方法とを有している。なお、この発明に係る一製造方法において、挟圧ローラ11〜13で挟圧されたときに、挟圧ローラ11〜13の軸線C1〜C3が正三角形の頂点となるように、軸線方向にそって略同一となるように所定の外径に調整されたローラ原体20及び挟圧ローラ11〜13を用いた場合について説明する。
この発明に係る一製造方法において、前記成形工程は、軸体22の外周面に弾性層23を成形できればよく、公知の方法を適宜に採用することができる。この成形工程においては、軸体22及び弾性層23を形成するゴム組成物を準備する。
軸体22は、良好な導電特性を有する所謂「芯金」と称される軸体であり、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体22に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体22を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、快削鋼、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。この軸体22は、図6に示されるように、略同一の外径を有する筒状の軸体胴部22aと、軸体胴部22aの一方の端部に同軸に延在する筒状のジャーナル部22bとを有している。すなわち、軸体胴部22aの他方の端部にはジャーナル部が形成されていない。軸体胴部22aの外径及び軸線長さ等は、例えば装着されるベルト定着装置に応じて適宜に設定され、具体的には、その外径は8〜50mm程度に設定される。ジャーナル部22bは、前記軸体胴部22aの外径よりも小さい略同一の外径例えば4〜20mmの外径を有している。ジャーナル部22bの軸線長さは、例えば装着されるベルト定着装置に応じて適宜に設定され、具体的には10〜80mmに設定されている。軸体胴部22aとジャーナル部22bとは一体に作製されても別々に作製された後接合されてもよい。
この軸体22は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
前記ゴム組成物は、例えば、弾性ローラが定着ローラとして使用される場合には発泡ゴム組成物であるのが好ましく、ゴムと、発泡剤と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、発泡シリコーンゴム組成物が好ましく挙げられる。この発泡シリコーンゴム組成物としては、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物として、例えば、特開2008−076751号公報に記載されている付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が挙げられる。
この発明に係る製造方法においては、次いで、前記発泡ゴム組成物を軸体22特に軸体胴部22aの外周面に配置する。発泡ゴム組成物は、弾性層23の軸線長さよりも長くなるように、軸体胴部22aの外周面、所望によりジャーナル部22bの外周面に、配置する。前記発泡ゴム組成物の配置は公知の方法、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等を採用することができるが、前記軸体22と前記発泡ゴム組成物とを押出機によって一体分出しする押出成形がよい。
この押出成形において、軸体22は、ジャーナル部22bを移送方向前方に配して前記押出機内を移送されてもよく、また、ジャーナル部22bを移送方向後方に配して前記押出機内を移送されてもよい。軸体22のジャーナル部22bの配置位置は、軸体22の外周面に配置された発泡ゴム組成物の除去量を考慮して適宜選択されると、前記変位量を前記範囲内に容易に調整することができる。
この発明に係る一製造方法において、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整する方法として、軸体22の外周面に配置された状態で前記発泡ゴム組成物をしばらく静置する方法が挙げられる。軸体22の外周面に配置された発泡ゴム組成物をそのままの状態で次工程に供されずに静置されると、前記したジャーナル部22bの配置位置、後述する発泡ゴム組成物の除去量等に大きくかかわらず、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整することができる。この静置は、例えば、15〜30℃、20〜80RH%の環境下に3〜60分程度実施されるとよい。
この発明に係る一製造方法において、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整する方法として、軸体22の外周面に配置された発泡ゴム組成物の軸線方向の両端部分を除去する方法が挙げられる。すなわち、軸体22の外周面に配置された発泡ゴム組成物の軸線方向の両端部分を残部が弾性層23の軸線長さよりも長くなるように、発泡ゴム組成物の除去量を調整するとよい。例えば、軸体22のジャーナル部22bを軸体22の移送方向前方に配した場合には、ジャーナル部22bの外周面及びジャーナル部22b近傍の軸体胴部22aに配置された発泡ゴム組成物を除去するのがよく、例えば、形成予定の弾性層23の端部位置からジャーナル部22b側に5mm程度の位置までの発泡ゴム組成物が残存するように発泡ゴム組成物を除去し、ジャーナル部22bが形成されていない軸体胴部22aの端部の外周面に配置された発泡ゴム組成物を例えば軸体胴部22aの端面から5mm程度の位置まで発泡ゴム組成物が残存するように発泡ゴム組成物を除去するのがよい。一方、軸体22のジャーナル部22bを軸体22の移送方向後方に配した場合には、ジャーナル部22bの端面から5mm程度の位置まで発泡ゴム組成物が残存するように発泡ゴム組成物を除去し、ジャーナル部22bが形成されていない軸体胴部22aの端部の外周面に配置された発泡ゴム組成物を形成予定の弾性層23の端部位置から軸体胴部22aの端面側に5mm程度の位置までの発泡ゴム組成物が残存するように発泡ゴム組成物を除去するのがよい。なお、軸体22のジャーナル部22bの配置位置及び発泡ゴム組成物の除去方法はこのような方法に限定されることはなく、前記方法以外の除去方法であっても、前記した「静置」等によって前記変位量(絶対値)を前記範囲内に調整することができる。
この発明に係る一製造方法においては、次いで、軸体22の外周面に配置された発泡ゴム組成物を発泡硬化し、弾性層23を形成する。発泡ゴム組成物の硬化条件は、発泡ゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、発泡ゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。例えば、発泡ゴム組成物が前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、硬化条件は、通常、100〜400℃、特に200〜400℃の加熱温度、数分以上1時間以下、特に5分以上30分以下の加熱時間であるのが好ましい。発泡ゴム組成物は、必要に応じて、二次加熱されることもできる。二次加熱は、例えば、前記の条件で架橋された発泡ゴム組成物を、さらに、押出成形された状態のままで、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、再度加熱されることによって、行われる。
この発明に係る一製造方法においては、次いで、所望により、発泡硬化された弾性層23を所定の寸法に整える。例えば、所定の軸線長さとなるように、その両端部を切断する。また、所望の外径及び形状となるように、研削工程、研磨工程及び/又は切削工程等が施される。研削工程、研磨工程及び/又は切削工程は、従来から利用されている研削盤、円筒研削盤、やすり等により、定法に従って行うことができる。
このようにして作製されるローラ原体20は、図6に示されるように、軸体22と軸体22の外周面に形成された弾性層23とを備えてなり、検査対象となる弾性ローラである。ローラ原体20は、例えば図6に示されるように、その外径が軸線方向にそって略同一である所謂「ストレート形状」であっても、その外径が軸線方向の中央部に徐々に膨大又は縮小する「クラウン形状」又は「逆クラウン形状」であってもよい。この発明においては、特許文献1及び2のようにローラの形状又は構造等を変更しなくても、すなわち、弾性ローラ又はローラ原体20が所謂「ストレート形状」であっても、無端ベルトの蛇行及び斜行を防止できる。したがって、この発明において、弾性ローラ20及びローラ原体20は所謂「ストレート形状」であるのがよい。
前記弾性層23は、前記発泡ゴム組成物によって軸体胴部22aの外周面に形成されている。弾性層23は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図6において弾性層23のセルは図示しない。)。弾性層23がセルを有していると、弾性層23を低硬度化することができる。ここで、弾性層23に形成されるセルは、発泡ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、発泡ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域をいう。弾性層23に形成される複数のセルは、他のセルに接することのない状態若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接している状態若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。なお、セルの形状は特に限定されず、独立セル状態にあるセルの形状は略球状、楕円球体状、不定形であってもよく、連通セル状態にあるセルの形状は複数のセルが連通して管状となっていてもよい。
弾性層23に形成されたセルは、200〜400μmの平均セル径、150〜250μmのセル径の標準偏差σ、及び/又は、200〜400μmの、周囲に存在する他のセルとの距離(以下、セル間距離と称することがある。)を有しているのが好ましい。前記セルが前記範囲の平均セル径、標準偏差σ及びセル間距離の少なくとも1つを有していると、ベルト定着装置に装着されたときに、長期間にわたって現像剤を記録体に所望のように定着させることに貢献できる。前記平均セル径は、弾性層23の表面、又は、弾性層23を任意の面で切断したときの切断面において、約20mm2の領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さ(セル径と称する。)を算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。セル径の標準偏差σは、前記のようにして測定されたセル径の標準偏差σを定法により求めることができる。セル間距離は、弾性層23の前記観察視野内に存在する複数のセルにおいて、ある特定のセルと、その周囲に存在する複数のセルとの中心間距離を測定し、測定された中心間距離を算術平均して得られた値として、求めることができる。なお、セルの中心は、セル輪郭を基準とした四半円点によって判断することができる。前記平均セル径、前記標準偏差σ及び前記セル間距離は、発泡剤の配合量、硬化条件等により、調整することができる。
弾性層23は、例えば定着ローラ1として使用される場合には、20〜60、特に25〜45のアスカーC硬度を有しているのが好ましい。弾性層23のアスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して、定着ローラ表面の複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とすることができる。弾性層23のアスカーC硬度は、例えば、発泡剤の配合量及び硬化条件等により、調整することができる。
弾性層23の厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。
この発明に係る一製造方法において実施する、この発明に係る一検査選別方法は、検査対象となる弾性ローラ20すなわちローラ原体20の検査選別方法であって、それらの軸線C1〜C3がその垂直断面(図3参照。)において二等辺三角形の頂点となるように、又は、正三角形の頂点となるように、互いに離間して並列配置された3本の挟圧ローラ11〜13で弾性ローラ20の軸線22に沿って半径方向の三方から前記軸線C1〜C3に向かって弾性層23における前記挟圧ローラ11〜13それぞれとの最深圧接点P1〜P3を結んでなる圧縮円の直径が前記弾性層23の80%の厚さを有する仮想弾性層の外径と一致するまで前記弾性層23を挟圧する挟圧工程と、前記弾性層23を挟圧しつつ弾性ローラ20を周速960π/minで3分間回転させる回転工程と、回転工程後に弾性ローラ20の軸線方向の変位量を測定する測定工程と、測定された前記変位量が75mm以下である弾性ローラ20を選別する選別工程とを有している。
この発明に係る一検査選別方法において検査選別する弾性ローラ20は、軸体22の外周面に形成された弾性層23を備えてなる弾性ローラ20であり、例えば、この発明に係る一製造方法における前記成形工程で作製されたローラ原体20である。この発明に係る一検査選別方法において、検査装置1は、図1〜図3に示されるように、第3挟圧ローラ13が前記同一平面に対して離間して、軸線C1〜C3が前記垂直断面において二等辺三角形又は正三角形の頂点となるように挟圧ローラ11〜13が配置された状態に設定される。この状態を初期状態と称する。少なくともこの初期状態においてローラ原体20を前記挟圧空間14に配置可能になる。
この発明に係る一検査選別方法においては、前記挟圧工程を実施する。この挟圧工程は、より詳細には、前記挟圧ローラ11〜13で前記弾性ローラ20の軸線に沿って半径方向の三方から前記軸線に向かって前記弾性層23を挟圧する挟持工程と、前記挟持された前記弾性層23における前記挟圧ローラ11〜13との最深圧接点P1〜P3それぞれを結んでなる圧縮円の直径が挟持前の前記弾性層23の厚さに対して80%の厚さまで圧縮したときの仮想弾性層の外径となるように前記挟圧ローラ11〜13の圧縮量を調整する調整工程とを有している。
前記挟持工程においては、まず、図1〜図3に示される初期状態にある検査装置1の挟圧空間14にローラ原体20と、その軸線方向の両側にローラ原体20と間隔をあけて前記スペーサ4A及び4Bとをそれぞれ配置する。すなわち、ローラ原体20とスペーサ4A及び4Bとを、第1挟圧ローラ11及び第2挟圧ローラ12の外周面上に載置する。次いで、調整手段5のハンドル5Aを操作して第3挟圧ローラ13を前記同一平面すなわちローラ原体20に向かって第3挟圧ローラ13の外周面が前記ローラ原体20における弾性層23の外周面に接触するまで前進させる。このようにして、前記ローラ原体20すなわち弾性層23を挟持する。
前記挟持工程においては、次いで、図4及び図5に示されるように、調整手段5を引き続き操作して、第3挟圧ローラ13をその外周面が前記スペーサ4A及び4Bの外周面に接触するまで前進させ、この接触状態で第3挟圧ローラ13の前進を停止して、挟圧ローラ11〜13による弾性層23の圧縮量を調整する。そうすると、スペーサ4A及び4Bよりも外径の大きなローラ原体20は、挟圧ローラ11〜13によって、自身の軸線に沿って半径方向の三方から等間隔で前記軸線に向かって所定の圧縮量で弾性層23が挟圧される。このとき、弾性層23の圧縮量は、図5に示されるように、挟圧ローラ11〜13との最深圧接点P1〜P3それぞれを結んでなる圧縮円の直径が挟持前の弾性層23の厚さに対して80%の厚さまで圧縮したときの仮想弾性層の外径と一致するように調整されている。さらに、ローラ原体20及び挟圧ローラ11〜13は前記のように外径が調整されているから、図5に明確に示されるように、ローラ原体20は挟圧ローラ11〜13それぞれとの最深圧接点P1〜P3が正三角形の頂点となるように前記軸線に向かって弾性層23が挟圧される。換言すると、挟圧ローラ11〜13それぞれはローラ原体20の弾性層23の軸線全体にわたって弾性層23の厚さに対して20%の割合で凹陥するように弾性層23を半径方向にほぼ均一に圧縮している。
このようにして、前記挟持工程と前記調整工程とを実施すると、前記圧縮円の直径が前記仮想弾性層の外径と一致するまで3本の挟圧ローラ11〜13で弾性層23を挟圧する挟圧工程が終了する。そして、図4及び図5に示されるように、ローラ原体20は前記挟圧ローラ11〜13で挟圧され、軸体22等は支持固定されていない。
なお、この発明に係る一製造方法においては、挟圧ローラ11〜13で挟圧されたときに、挟圧ローラ11〜13の軸線C1〜C3が正三角形の頂点となるように、外径が調整されたローラ原体20及び挟圧ローラ11〜13を用いているが、この発明に係る製造方法においては、挟圧ローラで挟圧されたときに、挟圧ローラの軸線が二等辺三角形の頂点となるように外径が調整されたローラ原体及び挟圧ローラを用いることができる。例えば、この発明に係る一製造方法で用いたローラ原体20よりも大径のローラ原体20a、又は、この発明に係る一製造方法で用いた挟圧ローラ11〜13よりも小径の挟圧ローラ11a、12a及び13aを用いる場合には、図7(a)に示されるように挟圧ローラ11a、12a及び13aの軸線は二等辺三角形の頂点に配置される。また、前記ローラ原体20よりも小径のローラ原体20b又は前記挟圧ローラ11〜13よりも大径の挟圧ローラ11b、12b及び13bを用いる場合には、図7(b)に示されるように挟圧ローラ11b、12b及び13bの軸線は二等辺三角形の頂点に配置される。これらの場合には、3本の挟圧ローラ11a、12a及び13a又は11b、12b及び13bで圧縮される圧縮量は異なるが、弾性層23全体で考慮すると、弾性層23における挟圧ローラ11a、12a及び13a又は11b、12b及び13bそれぞれとの最深圧接点を結んでなる圧縮円の直径が前記弾性層の80%の厚さを有する仮想弾性層の外径と一致している。
この発明に係る一検査選別方法においては、次いで、回転工程を実施する。この回転工程は、前記圧縮量で前記弾性層23を挟圧しつつ前記ローラ原体20を周速960π/minで3分間回転させる工程である。この工程は、挟圧ローラ11〜13の少なくとも1本を前記周速で回転させる駆動部3を駆動させることで実施される。駆動部3で挟圧ローラ11〜13の少なくとも1本を回転させると、挟圧ローラ11〜13に挟圧されたローラ原体20は挟圧ローラ11〜13に従動して略同一の周速で回転する。このとき、ローラ原体20及び挟圧ローラ11〜13はそれぞれ逆方向及び同方向例えば図5に示す矢印の方向に回転する。この回転工程は、弾性層23の前記挟圧状態を維持した状態で、23℃、50RH%の環境下で実施されるのがよい。
この発明に係る一検査選別方法においては、回転工程の後に挟圧ローラ11〜13の回転を停止して、測定工程を実施する。この測定工程は、弾性ローラ20の軸線方向の変位量を測定する工程である。前記回転工程を実施すると、ローラ原体20は理想的には検査装置1に配置したときの位置を保持するが、通常その軸線方向のいずれか一方向に変位する。したがって、この測定工程において、ローラ原体20の回転工程前と回転工程後との前記軸線方向の変位量(差分)と、所望により変位方向とを測定する。
この発明に係る一検査選別方法においては、前記挟圧工程、前記回転工程及び前記測定工程の3工程を連続して複数回例えば3回行い、その算術平均値を前記変位量(絶対値)とするのがよい。
この発明に係る一検査選別方法においては、次いで、選別工程を実施する。この選別工程は、前記のようにして測定された前記変位量に応じて行われ、具体的には、前記変位量が75mm以下であるローラ原体20を適合品として、一方、前記変位量が75mm超であるローラ原体20を不良品として、それぞれ選別する。
この発明の発明者らは、ローラ原体20としての他の特性及び物性が大きく相違しなくても、ローラ原体20の前記変位量(絶対値)が前記範囲内にある場合には、このローラ原体20を実機のベルト定着装置に装着したときに、蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ定着ベルトを走行させることができることを、知見した。したがって、実機のベルト装置に装着されたときに無端ベルトの蛇行及び斜行を許容範囲内に抑えることのできる弾性ローラの判断基準として前記挟圧ローラで挟圧された状態で回転したときの軸線方向の変位量で把握することができる。そして、前記変位量が前記範囲にあるローラ原体20は、ベルト装置に装着されると自身に巻回された無端ベルトを蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ走行させることができる。
この効果により一層優れる点で、前記変位量(絶対値)は、60mm以下であるのが好ましく、50mm以下であるのが特に好ましい。
この発明に係る一検査選別方法においては、このようにして選別した適合品を弾性ローラとする。このようにして、この発明に係る一検査選別方法によれば、ベルト装置に装着されたときに無端ベルトの蛇行及び斜行を抑えることのできる弾性ローラを検査し選別することができる。
この発明に係る一製造方法においては、所望により、この発明に係る一検査選別方法において検査選別された弾性ローラの外周面に表面層等を形成することができる。
このようにして、この発明に係る一製造方法によって弾性ローラ20を製造することができる。製造された弾性ローラ20は、この発明に係る一検査選別方法によって適合品として検査選別されているから、ベルト装置に装着されたときに自身に巻回された無端ベルトの蛇行及び斜行を抑えることができる。したがって、この発明に係る一製造方法によって製造された弾性ローラは、蛇行走行及び/又は斜行走行による無端ベルトの破損を低減することができる。
この発明に係る弾性ローラの検査装置は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記検査装置1はフレーム6Bに併設された駆動部3を備えているが、この発明において、駆動部はフレームに併設される必要はなく、例えば、フレーム内に収納されてもよく、挟圧ローラの少なくとも1本に接触又は圧接する駆動ローラを備えていてもよい。具体的には、検査装置1において、第1挟圧ローラ11及び第2挟圧ローラ12に対して第3挟圧ローラ13の反対側に配置され、第1挟圧ローラ11及び第2挟圧ローラ12の外周面に均等に接触又は圧接する駆動ローラと、この駆動ローラを回転駆動させるモータ等の回転手段を備えていてもよい。
前記検査装置1は2つのスペーサ4A及び4Bを備えているが、この発明において、検査装置は、2つのスペーサを備えている必要はなく、1つのスペーサを備えていてもよく、また、スペーサ自体を備えていなくてもよい。検査装置がスペーサを備えていない場合には、予め定められた圧縮量となる位置で挟圧ローラを停止させるように前記調整手段を操作してもよいし、予め定められた圧縮量となる位置で挟圧ローラを停止させる制御装置等を設けてもよい。
前記検査装置1は第3挟圧ローラ13を前後進させる垂直方向移動手段を備えているが、この発明において、検査装置は、前記垂直方向移動手段に代えて又は加えて、第1挟圧ローラ及び第2挟圧ローラの少なくとも一方を水平方向に移動させる水平方向移動手段を備えていてもよい。前記垂直方向移動手段と前記水平方向移動手段を備えている場合には、これら両手段は同期していてもいなくてもよい。
この発明において、検査装置は、挟圧ローラの少なくとも1本に必要以上の回転抵抗が生じたときに挟圧ローラの回転を停止させる安全装置を備えていてもよい。この安全装置は公知のものを特に制限されることなく採用することができる。
この発明に係る弾性ローラの検査選別方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
この発明に係る弾性ローラの製造方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記軸体22はジャーナル部22bを有しているが、この発明において、ジャーナル部は前記変位量に影響を与えないので、軸体はジャーナル部を有していなくてもよく、また、その両方の端部にジャーナル部を有していてもよい。
この発明に係る一製造方法で製造される弾性ローラ20は、軸体とその外周面に形成された弾性層23とを備えているが、この発明に係る弾性ローラの製造方法で製造される弾性ローラは前記弾性ローラ20に限定されることはない。例えば、弾性ローラ20は弾性層23が最外層となっているが、この発明において、弾性ローラは、弾性層の外周面に他の層、例えば、弾性層、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等が形成されて、これらの他の層が最外層となっていてもよい。
弾性ローラ20の弾性層23は単層構造とされているが、この発明において、弾性層は複数層を積層した弾性層としてもよい。また、製造される弾性ローラは、用途に応じて、軸体内、弾性層内及び/又は軸体と弾性層との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。例えば、弾性ローラが熱ローラ定着器の定着ローラとして使用される場合には、軸体内に加熱体を備えている。さらに、弾性ローラ20は、軸体22の外周面に弾性層23が形成されているが、この発明において、弾性層はプライマー層又は接着剤層を介して軸体の外周面に形成されてもよい。プライマー層を形成するプライマーとしては、特に限定されず、例えば、シランカップリング系プライマー等が挙げられる。また、接着剤層を形成する接着剤としては、特に制限されないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、アミノ基及び/又は水酸基を有する接着剤が好適である。また、これらの樹脂を硬化させるための架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が用いられる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法で製造される弾性ローラを備えたベルト定着装置(以下、この発明に係る定着装置と称することがある。)及び画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図8参照して、説明する。
図8に示されるように、この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲に配置された、帯電手段32例えば帯電ローラ、露光手段33、現像手段40、転写手段34例えば転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着手段35例えばベルト定着装置とを備えている。この現像手段40は、従来の現像手段と基本的に同様に形成され、具体的には、図8に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。現像剤42は、一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
前記定着手段35は、この発明に係る定着装置35であり、定着ローラ53として前記弾性ローラ20を備えている。この定着手段35は、図8にその断面が示されるように、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻回された定着ベルト55と、定着ローラ53と対向配置された加圧ローラ56とを備え、定着ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成るベルト定着装置である。この定着手段35において、定着ローラ53は加圧ローラ56に従動して回転するように軸支され、定着ローラ53及び加圧ローラ56は図8に示されるようにその外径が軸線方向にそって略同一である所謂「ストレート形状」を有している。無端ベルト支持ローラ54は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。定着ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53、無端ベルト支持ローラ54及び加圧ローラ56はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、定着ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。定着ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給され、静電潜像が現像される。次いで、現像剤像は像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着手段35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
この発明に係る画像形成装置30及び前記定着手段35は定着ローラ53としてこの発明に係る弾性ローラの製造方法で製造される弾性ローラ20を備えているから、定着ベルト55を介して定着ローラ53を加圧する前記加圧ローラ56の形状及び定着ローラ53の形状が共に所謂「ストレート形状」であっても、蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ定着ベルト55を走行させることができる。したがって、この発明に係る画像形成装置30及びこの定着手段35は蛇行走行及び/又は斜行走行による定着ベルト55が高度に破損しにくく耐久性にも優れる。
画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
(実施例1)
まず、軸体胴部22a(直径14mm×長さ350mm、SUM22)と、この軸体胴部22aの一方の端部に形成されたジャーナル部22b(直径10mm×長さ23mm、SUM22)とを有する軸体22を準備した。この軸体22の軸体胴部22aに無電解ニッケルメッキ処理を施した後、トルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。この軸体22を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体胴部22aの外周面にプライマー層を形成した。
一方、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴム組成物「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、有機系発泡剤:アゾビス−イソブチロニトリル2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調製した。
次いで、前記軸体22のジャーナル部22bが移送方向前方になるように配置した軸体22と付加反応型発泡シリコーンゴム組成物とを押出成形機にて一体分出して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を軸体胴部22a及びジャーナル部22b全体の外周面に配置した。その後、静置することなく、ジャーナル部22bが形成された軸体胴部22aの端部の外周面に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を形成予定の弾性層23の端部位置からジャーナル部22b側に5mmの位置までの付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去し、ジャーナル部22bが形成されていない軸体胴部22aの端部の外周面に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を軸体胴部22aの端面から5mmの位置まで付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去した。以下、「形成予定の弾性層23の端部位置から軸体22の端部側に5mmの位置までの付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去すること」を軸体22の移送方向にかかわらず「多量除去」と称し、「軸体22端部の端面から5mmの位置まで付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去すること」を軸体22の移送方向にかかわらず「少量除去」と称する。
次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を250℃で10分間加熱して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間放置した。二次加熱してなる付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、円筒研削盤にて30mmの外径を有する所謂「ストレート形状」に整形し、軸線長さが305mmになるように切断して、弾性層23を備えたローラ原体20を製造した。
次いで、前記検査装置1を準備した。この検査装置1において、前記挟圧ローラ11〜13はいずれも外周面がクロムメッキされた機械構造用炭素鋼「S45C」で80mmの外径を有する円柱体に形成され、スペーサ4A及び4Bは外周面がクロムメッキされた機械構造用炭素鋼「S45C」で26.8mm(弾性層23の厚さに対して80%)の外径を有する円盤状に形成されている。
この検査装置1の挟圧空間14にローラ原体20とスペーサ4A及び4Bとをそれぞれ配置して、第3挟圧ローラ13をローラ原体20に向かって前進させ、ローラ原体20を挟圧ローラ11〜13で挟持した。次いで、第3挟圧ローラ13をさらに前進させて、挟圧ローラ11〜13による弾性層23の圧縮量が挟持前の弾性層23の厚さに対して80%の厚さにした。このようにしてローラ原体20を挟圧ローラ11〜13で挟圧した。このとき、挟圧ローラ11〜13の軸線C1〜C3は正三角形の頂点に配置されていた。
23℃、50RH%の環境下で、この挟圧状態を維持したまま駆動部3を駆動させて挟圧ローラ11を周速960π/minで3分間回転させた。このとき、ローラ原体20及び挟圧ローラ11〜13はそれぞれ図5に示す矢印の方向に回転した。その後、駆動部3を停止して、第1挟圧ローラ11の表面に印刷された測定手段7でローラ原体20の軸線方向の変位量を測定した。その結果、測定した変位量は75mm以下で前記閾値の範囲内にあったので前記ローラ原体20を適合品として選別して実施例1の弾性ローラとした。この弾性ローラにおける弾性層23のアスカーC硬度は33.8であった。
(実施例2)
一体分出しにおいて軸体22のジャーナル部22bを軸体22の移送方向後方に配して軸体22を移送し、その後、静置することなく、軸体22の移送方向後方側に(ジャーナル部22b側)に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去し、前記移送方向前方側(ジャーナル部22bが形成されていない軸体胴部22a)に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例1と同様にして弾性層23を備えたローラ原体20を製造した。前記検査装置1を用いて製造したローラ原体の前記変位量を実施例1と同様にして測定した。その結果、測定した変位量は75mm以下で前記閾値の範囲内にあったので前記ローラ原体を適合品として選別して実施例2の弾性ローラとした。この弾性ローラにおける弾性層23のアスカーC硬度は34.0であった。
(実施例3)
軸体22の外周面に付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が配置された状態で押出成形機にて一体分出してから23℃、50RH%の環境下に60分静置した後、軸体22の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例1と同様にして弾性層23を備えたローラ原体20を製造した。前記検査装置1を用いて製造したローラ原体の前記変位量を実施例1と同様にして測定した。その結果、測定した変位量は75mm以下で前記閾値の範囲内にあったので、前記ローラ原体を適合品として選別して実施例3の弾性ローラとした。この弾性ローラにおける弾性層23のアスカーC硬度は39.1であった。
(実施例4)
軸体22の外周面に付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が配置された状態で押出成形機にて一体分出してから23℃、50RH%の環境下に30分静置した後軸体22の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例2と同様にして弾性層23を備えたローラ原体20を製造した。前記検査装置1を用いて製造したローラ原体の前記変位量を実施例1と同様にして測定した。その結果、測定した変位量は75mm以下で前記閾値の範囲内にあったので前記ローラ原体を適合品として選別して実施例4の弾性ローラとした。この弾性ローラにおける弾性層23のアスカーC硬度は38.8であった。
(比較例1)
軸体22の移送方向前方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去したこと以外は、実施例1と同様にして弾性層23を備えたローラ原体20を製造した。前記検査装置1を用いて製造したローラ原体の前記変位量を実施例1と同様にして測定した。その結果、測定した変位量は75mm超え前記閾値の範囲外にあったので前記ローラ原体を不良品として選別して比較例1の弾性ローラとした。この弾性ローラにおける弾性層23のアスカーC硬度は34.9であった。
(比較例2)
軸体22の移送方向前方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去し、軸体22の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例1と同様にして弾性層23を備えたローラ原体20を製造した。前記検査装置1を用いて製造したローラ原体の前記変位量を実施例1と同様にして測定した。その結果、測定した変位量は75mm超え前記閾値の範囲外にあったので前記ローラ原体を不良品として選別して比較例2の弾性ローラとした。この弾性ローラにおける弾性層23のアスカーC硬度は34.0であった。
なお、製造した前記弾性ローラのうち実施例1〜4の弾性ローラ20を画像形成装置30(商品名「CX7500」、株式会社リコー製)のベルト定着装置35に定着ローラ53として装着した(この装置において加圧ローラ56は所謂「ストレート形状」をなしている。)。その後、この画像形成装置を、23℃、50RH%の環境下で、稼動させ、定着ローラ53を7000mm/minの速度で走行させた。このとき、定着ベルト55の走行状態を目視て確認したところ蛇行及び斜行はなかった。一方、比較例1及び2の弾性ローラ20を前記定着装置35に装着して同様に定着ベルト55の走行状態を目視て確認したところ蛇行又は斜行が認められ、定着ベルト55が定着ローラ53から脱離した場合もあった。