JP5555303B2 - 光学活性ジベンジルアミン誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、スタチンとは作用機序が異なり、かつ、強力な血中LDLコレステロール低下作用を有する医薬が求められている。
従って、PCSK9タンパク量の低下作用や機能阻害作用を有する化合物は、上記疾患に対する医薬の有効成分としての利用も期待できる。
また、本発明は、有効成分としての(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有する医薬組成物を提供するものである。
すなわち、一般論として、実質的に光学的に純粋な化合物は、そのラセミ体を合成した後にキラルカラムにより光学分割して製造することができる場合があることが知られている。
しかしながら、キラルカラムを用いる光学分割法は、化合物によっては分割条件の設定が非常に困難な場合があり、また、工業的な大量スケールでの製造には不向きである。加えて、キラルカラムを用いる光学分割法による、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)の製造は、その分割条件の設定が非常に困難であった。すなわち、キラルカラムの種類(例えば、CHIRALCEL OD−H、CHIRALCEL OJ−Hなど)、移動相として用いる溶媒の種類・組成(例えば、MeOH/TFA混液、EtOH/TFA混液など)、移動相の流速等の条件を種々変更して、特許文献2 実施例45記載の方法に従って製造したラセミ体化合物(I)からの各エナンチオマーの分取が試みられたが、殆どの条件では分離が上手くいかなかった。そのような中、後記実施例1−1に記載した条件であれば各エナンチオマーの分離が可能であることが判明したものの、当該条件では分解物(エチルエステル体)が生じることが判明した。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、ラセミ体化合物(I)及びそのエチルエステル誘導体では結晶化が進行せず、優先晶析法によって光学純度を高めることは出来なかった。
(A)下記の一般式(VI):
また、(S)体化合物(III)は、PCsの関与する疾患、より具体的には癌、肥満、糖尿病、アルツハイマー病、又はウイルス感染症に対する予防及び/又は治療のための医薬の有効成分としても有用である。
従って、例えば「実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸」、「実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の左旋性のエナンチオマー」及び「実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)」とは、光学純度が90%ee以上、好ましくは95〜100%ee、特に好ましくは97〜100%eeである(S)体化合物(III)を意味する。
また、一般式中、nが示す整数としては、1が好ましい。
また、一般式中、R1におけるC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
また、一般式中、Xが示すハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
本工程はアミン(XI)を塩基存在下、光学活性なベンジルハライド(X)又は(X´)と反応させ、セミキラル体(IX)を製造する工程である。化合物(X)又は(X´)の量は、化合物(XI)に対して1.0〜3.0モル当量、好ましくは1.5〜2.5モル当量用いればよい。
なお、アミン(XI)は公知の化合物であり、その製造方法は、例えば特許文献2に記載されている。
本工程はセミキラル体(IX)を加水分解し、セミキラル体(VII)を製造する工程である。
本反応は溶媒中で塩基の存在下により行うことができる。溶媒としては、特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類やアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン及び水等を単独又は組み合わせて使用することができる。溶媒としては、好ましくはアルコール類と水の組合わせ、より好ましくはエタノールと水の組合せを挙げることができる。溶媒の量は、特に制限はないが、化合物(IX)に対して10〜100倍量(V/W)、好ましくは20〜50倍量(V/W)、より好ましくは30〜40倍量(V/W)を用いればよい。
本工程はセミキラル体(VII)とアルコール(VIII)とを縮合し、セミキラル体(VI)を製造する工程である。アルコール(VIII)の量は、化合物(VII)に対して、0.8〜2.0モル当量、好ましくは1.0〜1.2モル当量用いればよい。
本工程はセミキラル体(VI)の硫黄原子を酸化することにより、セミキラル体(IV)を製造する工程である。
酸化方法としては硫黄原子をスルホニル基へと変換する通常の方法を適用することができる。酸化剤としては、例えば、触媒量のタングステン酸ナトリウム、二塩化二酸化モリブデンあるいは五塩化タンタルを用いた過酸化水素水による酸化反応や、過ホウ素酸ナトリウム、Oxone(登録商標)、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、ピリジニウムクロロクロメート(PCC)、ピリジニウムジクロメート(PDC)、N−クロロコハク酸イミド(NCS)、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−ヨードコハク酸イミド(NIS)、ヨウ素、臭素等を使用することができる。酸化剤としては、好ましくは五塩化タンタルと過酸化水素水の組合わせである。五塩化タンタルの量は、化合物(VI)に対して、0.001〜1.0モル当量、好ましくは0.05〜0.5モル当量を用いればよい。過酸化水素水の量は、化合物(VI)に対して、1.0〜10モル当量、好ましくは4.0〜6.0モル当量を用いればよい。
本工程はセミキラル体(IV)からラセミ体優位な低光学純度の結晶を優先晶析することにより、高光学純度の光学活性体(V)又は(V´)を製造する工程である。
本工程は、セミキラル体(IV)を含有する溶媒中で、ラセミ体優位な結晶を晶出させた後、得られたラセミ体優位の結晶を除去することにより、母液中に高光学純度の化合物(V)又は(V´)を残存させる工程である。
溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルコールが好ましく、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。溶媒の量は、化合物(IV)に対して、2〜20倍量(V/W)、好ましくは4〜10倍量(V/W)、より好ましくは5〜8倍量(V/W)である。
すなわち、ラセミ体(IV)を溶媒に溶解し、10〜40℃、好ましくは15〜20℃で、30分〜2日間、好ましくは15〜24時間攪拌すればよく、結晶の収量を高めたければさらに温度を−10〜10℃、好ましくは−5〜5℃に冷却して、30分〜24時間、好ましくは2〜5時間攪拌してもよい。また、溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルコールが好ましく、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。溶媒の量は、ラセミ体(IV)に対して、2〜20倍量(V/W)、好ましくは4〜10倍量(V/W)、より好ましくは5〜8倍量(V/W)である。
本工程は高光学純度の化合物(V)又は(V´)を脱保護することにより、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)を製造する工程である。
本反応は、溶媒中で金属触媒及び水素源を用いた接触還元、又は溶媒中で塩基を用いた加水分解反応により行うことができる。接触還元により脱保護を行う場合は、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類;酢酸;水等を用いることができる。溶媒としては、好ましくはアルコール類、より好ましくはエタノールである。溶媒の量は、化合物(V)又は(V´)に対して、5〜30倍量(V/W)、好ましくは5〜15倍量(V/W)を用いればよい。
ハロゲン化剤として三臭化リンと臭化水素 (30%酢酸溶液)を用いる場合は、三臭化リンはフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して0.3〜2.0モル当量使用されるが、好ましくは0.4〜0.6モル当量を用いるのがよい。臭化水素はフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して0.7〜3.0モル当量使用されるが、好ましくは0.8〜1.2モル当量を用いるのがよい。
ハロゲン化剤として1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンとトリフェニルホスフィンを用いる場合は、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンはフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して1.0〜3.0モル当量使用されるが、好ましくは1.0〜1.2モル当量を用いるのがよい。トリフェニルホスフィンはフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して1.0〜3.0モル当量使用されるが、好ましくは1.0〜1.2モル当量を用いるのがよい。
s:シングレット(singlet)
d:ダブレット(doublet)
t:トリプレット(triplet)
q:クアルテット(quartet)
m:マルチプレット(multiplet)
br:ブロード(broad)
J:カップリング定数(coupling constant)
Hz:ヘルツ(Hertz)
CDCl3:重クロロホルム
1H-NMR:プロトン核磁気共鳴
IR:赤外線吸収スペクトル
実施例1−1:キラルカラムを用いた光学分割
下記条件であれば、特許文献2(国際公開第2008/129951号パンフレット) 実施例45に記載の方法に従って製造したラセミ体化合物(I)からの各エナンチオマーの分離が可能であり、キラルHPLC分析法による(S)体化合物(III)及び(R)体化合物(II)の光学純度の測定に用いることができることが明らかとなった。なお、本発明は、下記キラルHPLC分析条件(特に、下記カラムと下記移動相の組合せ)を用いる、ラセミ体化合物(I)、(S)体化合物(III)若しくは(R)体化合物(II)、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の光学純度測定方法を提供する。
移動相:ヘキサン/エタノール/TFA=90/10/0.1
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:242nm
保持時間:第一ピーク/21.3min((R)体) 、第二ピーク/23.7min((S)体)
従って、上記条件でのキラルカラムを用いた光学分割法は光学純度の測定(キラルHPLC分析)には用いることができるものの、実質的に光学的に純粋な各エナンチオマーの製造方法、特に大量スケールでの製造方法としては不適切なものであった。
本発明者らが実施した、優先晶析法による実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)の製造方法の概略をスキーム5として以下に示す。
なお、各化合物の絶対配置は、工程1で確認された(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンの絶対配置から判断した。
カラム:CHIRALPAK AS−RH
移動相:エタノール/水=60/40
流速:0.5mL/min
カラム温度:25℃
検出波長:220nm
保持時間:第一ピーク/21.8min((R)体)、 第二ピーク/26.0min((S)体)
カラム:CHIRALCEL OD−H
移動相:ヘキサン/エタノール=80/20
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:242nm
保持時間:第一ピーク/11.3min((R)体)、第二ピーク/13.0min((S)体)
(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンを下記1−(a)の方法により製造し、その絶対配置を以下の通り確認した。すなわち、得られた(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンを(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミンに導いたうえで、市販されている絶対配置既知の(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミンの標準品と比旋光度の実測値の符号を比較することで確認した。
また、(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンを別途下記1−(b)の方法によっても製造した。
アルゴン雰囲気下、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタン(7.57g、23.2mmol)をトルエン(12.5mL)に溶解し、0℃にてトリフェニルホスフィン(6.1g、23.2mmol)を加え30分間撹拌した。これに(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール(1)(5.0g、19.4mmol、>99.5%ee)のトルエン溶液(12.5mL)を0℃で10分以上かけて滴下した後、室温まで昇温し、同温にて1時間撹拌した。反応液にn−ヘキサン(25mL)を加え、セライトろ過した。ろ液を水、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧留去した。得られた残渣を減圧蒸留(56oC、0.7mmHg)することで、5.52gの(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)を無色油状物として得た(収率:88.6%)。
[α]D 25 +59.1(c=1.03,CHCl3)
1H‐NMR(CDCl3)δ: 2.08(3H,d,J=7.1Hz),5.21(1H,q,J=7.1Hz),7.81(1H,s),7.87(2H,s)
上記1−(a)で得られた(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)(106mg、0.336mmol、99%ee)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(1mL)にアジ化ナトリウム(64.4mg、0.990mmol)を加え−18〜−15℃にて4時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル/n−ヘキサン(1:1)及び水より抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮することで111.5mgの1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアジド(粗生成物:111.5mg)を得た。
[α]D 25 −15.9(c=1.31,CHCl3)
[α]D 25 −15.9(c=1.15,CHCl3)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール(1)(300g、1.16mol、96%ee)に水浴下、20℃以下で三臭化リン(157.3g、0.58mol)を滴下し、19〜22℃で30分撹拌した。反応液を冷却し、0℃以下で臭化水素(30%酢酸溶液)(228mL、1.16mol)を滴下し、13〜15℃で16時間撹拌した。反応液を氷水に注加し、n−ヘキサン(3L×2)で抽出した。有機層を合わせ、飽和重曹水(3L)、飽和食塩水(3L)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下(90〜100mmHg)濃縮し、389.2gの粗体を得た。得られた粗体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル900g、展開溶媒:n−ヘキサン)で精製することにより、349.8gの(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)を無色油状物として得た(収率93.8%)。
1H‐NMR(CDCl3)δ: 2.08(3H,d,J=7.1Hz),5.21(1H,q,J=7.1Hz),7.81(1H,s),7.87(2H,s)
アルゴン雰囲気下、特許文献2(国際公開第2008/129951号パンフレット)記載の方法により合成したtrans−[4−([(エチル){2−[({5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}アミノ]メチル)シクロヘキシル]酢酸エチル(3)(565.4g、0.99mol)の無水テトラヒドロフラン(THF、2.26L)溶液に氷冷下、水素化ナトリウム(60% in oil、119g、2.98mol)を加え、室温にて1時間撹拌した。反応液を−30℃に冷却し、工程1で得られた(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)(682g、1.99mol、93.9%ee)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(4.53L)溶液を反応系内が−15℃以下となるように滴下し、−15℃〜−1℃で5時間撹拌した。反応液を氷水(35L)とトルエン(30L)の混合溶液に注加し、pHが6.9になるまでクエン酸を加え、有機層を分離した。
アルゴン雰囲気下、工程2で得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の、(S)体優位のセミキラル体(4)(744.1g、0.95mol)の無水ジクロロエタン(11.6L)溶液に、氷冷下、ベンジルアルコール(113.1g、1.05mol)、WSC・HCl(200.5g、1.05mol)及びDMAP(11.9g、98mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に水(10L)を加え、クロロホルム(19L、14L)にて抽出し、有機層を飽和食塩水(12L)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 28g、展開溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=6/1)で精製することにより、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのセミキラル体(5)を得た(黄色油状物、745.8g、収率90%)。
なお、得られたセミキラル体(5)は、セミキラル体(4)と同様(S)体が優位である。
アルゴン雰囲気下、工程3で得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの、(S)体優位のセミキラル体(5)(745.8g、0.87mol)の2−プロパノール(15.2L)溶液に、五塩化タンタル(31.3g、87.3mmol)及び30%過酸化水素水(496mL、4.38mol)を加え、室温にて5時間撹拌した。反応液を飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(3.1L)でクエンチし、水(15L)を加え、クロロホルム(14L、12L)で抽出し、有機層を飽和食塩水(20L)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 26kg、展開溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=3/1→2/1)で精製することにより、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのセミキラル体(6)を得た(黄色アモルファス、619.5g、収率79%)。
なお、得られたセミキラル体(6)は、セミキラル体(4)及びセミキラル体(5)と同様、(S)体が優位である。
1H‐NMR(CDCl3)δ:0.87‐0.96(7H,m),1.38(1H.m),1.45(3H,d,J=7.1Hz),1.65‐1.80(5H,m),2.21(2H,d,J=6.6Hz),2.69(1H,m),2.81‐2.91(3H,m),3.08(3H,s),3.44(2H,t,J=5.4Hz),4.44(2H,t,J=5.4Hz),4.64(1H,d,J=17.1Hz),4.86(1H,d,J=17.3Hz),5.10(2H,s),6.19(1H,q,J=6.9Hz),7.12(1H,d,J=8.3Hz),7.19(1H,s),7.30‐7.39(6H,m),7.71(1H,s),7.72(2H,s),8.16(2H,s)
工程4で得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの、(S)体優位のセミキラル体(6)(111.7g、123.7mmol、67.7%ee)をエタノール(825mL)に溶解し、別途調製した種晶(下記工程7で製造したラセミ体結晶)2.0mgを15℃〜20℃にて加え、同温にて21時間、0℃にて3時間撹拌した。析出物をろ別し、冷エタノール(165mL)で洗浄した後、母液を減圧濃縮することにより、実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(7)を得た(黄色アモルファス、66.38g、収率59%)。
[α]D 20−42.36(c=1.0w/v%,CHCl3)
なお、ろ別したラセミ体優位の結晶の光学純度は、キラルHPLC分析の結果、22%eeであった(43.39g、収率39%)。
窒素雰囲気下、工程5で得られた(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(7)(34.2g、37.88mmol、>99%ee)のエタノール(340mL)溶液に、10%Pd−C(wet)(3.4g)を加え、水素置換後、室温にて2時間撹拌した。反応懸濁液をセライトろ過し、セライトをエタノール(50mL)で洗浄し、洗液を減圧濃縮することにより、実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(III)を得た(白色アモルファス、31.78g、収率100%)。
なお、得られた化合物は、下記比旋光度に示す通り、左旋性の化合物であった。また、得られた化合物は、(S)体であるベンジルエステル(7)よりエステルを脱保護して得られたことから、同様に(S)体である。
[α]D 20−46.68 (c=1.0,CHCl3)
IR(ATR)cm-1:2921,1706,1479,1279,1134
1H‐NMR(CDCl3)δ:0.80‐0.96(7H,m),1.38(1H.m),1.47(3H,d,J=7.1Hz),1.65‐1.77(5H,m),2.19(2H,d,J=6.8Hz),2.72(1H,m),2.81‐2.91(3H,m),3.08(3H,s),3.45(2H,t,J=5.2Hz),4.44(2H,q,J=5.4Hz),4.62(1H,d,J=17.1Hz),4.86(1H,d,J=17.4Hz),6.21(1H,q,J=7.1Hz),7.13(1H,d,J=8.3Hz),7.19(1H,s),7.38(1H,d,J=6.6Hz),7.71(1H,s),7.73(2H,s),8.15(2H,s)
特許文献2(国際公開第2008/129951号パンフレット) 実施例45記載の方法により合成したtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(ラセミ体化合物(I))(20g、24.61mmol)の無水ジクロロメタン(200mL)溶液に、氷冷下、ベンジルアルコール(2.93g、27.07mmol)、DMAP(300mg、2.46mmol)及びWSC・HCl(5.19g、27.07mmol)を加え、室温に昇温し、16時間撹拌した。反応液に水(100mL)を加え、クロロホルム(500mL)で抽出し、有機層を2M 塩酸水溶液(100mL)及び飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 350g、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1→1/1)で精製することにより、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(21.15g、収率95.2%)を白色アモルファスとして得た。
ヒト肝癌細胞株であるHepG2細胞に被験化合物を添加し、48時間培養後のPCSK9タンパク量及びLDL受容体(LDLR)量をウエスタンブロット法にて測定することにより、被験化合物がPCSK9タンパク量、LDL受容体量に及ぼす影響を確認した。
結果を表1に示す。
1:(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸((S)体化合物(III))
(S)体化合物(III)(光学純度>99%ee)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
(R)体化合物(II)(光学純度≧98%ee)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
ラセミ体化合物(I)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
以上の試験結果から、(S)体化合物(III)は、PCSK9タンパク量の低下作用、LDL受容体量の増加作用を有することが明らかとなった。
上記実施例2で確認されたPCSK9タンパク量の低下作用のメカニズムを確認するため、HepG2細胞に被験化合物を添加し、24時間培養した後のPCSK9 mRNA発現量を定量リアルタイムPCR法により確認した。
1:(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸((S)体化合物(III))
(S)体化合物(III)(光学純度>99%ee)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
従って、実施例2で確認された、(S)体化合物(III)の有するPCSK9タンパク量の低下作用の少なくとも一部はPCSK9遺伝子発現抑制作用に基づくものであり、(S)体化合物(III)はPCSK9タンパクの産生抑制作用を有するものと考えられた。
(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸((S)体化合物(III):光学純度>99%ee)を0.5%メチルセルロース溶液に懸濁させた後、正常ハムスター(雄性Syrian Hamster)に金属ゾンデを用いて1日1回、14日間反復経口投与した。最終投与の4時間後に血液を採取し、血漿を得た。血漿中のリポタンパク質の分析は、J. Lipid. Res., 43, p805- 814に記載の方法に準じ、ポストラベル法を用いたHPLCシステムにより自動測定することで行なった。すなわち、血漿サンプル15μLを1mM EDTAを含むPBSで10倍希釈後、HPLCシステム(送液ユニット:Shimadzu LC‐20A system、島津製作所)に接続したゲルろ過カラム(Superose6カラム(カラムサイズ:10×300mm)、GEヘルスケアバイオサイエンス製)に80μL注入した。ランニングバッファとして1mM EDTAを含むPBSを用い、流速0.5mL/min、カラム温度40℃にて分離を行なった。カラムからの溶出液に対しコレステロール測定試薬(コレステロールE テストワコー、和光純薬工業社製)を流速0.25mL/minで混合し、反応コイル(0.5mm×15m)中にて送液下40℃にて反応させた。反応コイルからの溶出液中のコレステロールを、波長600nmで検出した。得られたコレステロールのピーク総面積に占めるLDL画分の面積割合を求め、あらかじめコレステロールE テストワコーを用いて測定した総コレステロール量に、LDL画分の面積割合を乗じてLDLコレステロール量を算出した。
LDLコレステロール低下率(%)=[(コントロール群の平均LDLコレステロール量−各化合物投与群の平均LDLコレステロール量)/コントロール群の平均LDLコレステロール量]×100 (計算式1)
以上の試験結果から、(S)体化合物(III)は、血中LDL低下作用を有する医薬の有効成分等として有用であることが明らかとなった。
HepG2細胞に被験化合物を添加し、8時間培養した後のHMG−CoA還元酵素mRNA発現量を定量リアルタイムPCR法により測定した。
すなわち、HepG2細胞を24穴プレートに2×105cells/wellの濃度で播種し一晩培養した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した被験化合物、又はDMSOのみを培養液に対して1000分の1倍量加えた。細胞をCO2 インキュベーターにて37℃で8時間培養後、ISOGEN(ニッポンジーン社、カタログ番号31−02501)を500μL加えてtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAからHigh Capacity cDNA Reverse Transcription kit(アプライドバイオシステムズ社、カタログ番号4368813)を用いてcDNAを合成した。ヒトHMG−CoA還元酵素mRNA発現量は、ヒトHMG−CoA還元酵素に特異的な以下のプライマーセット:5'‐GGTGTTCAAGGAGCATGCAAAG‐3'及び5'‐TGACAAGATGTCCTGCTGCCA‐3'、並びにFast SYBR Green master mix(アプライドバイオシステムズ社、カタログ番号4385614)を用いた定量リアルタイムPCR法により測定した。測定機器としては7900HT Fast Realtime PCR systemを用いた。
結果を表4に示す。
1:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(ラセミ体化合物(I))
ラセミ体化合物(I)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
特許文献2 実施例44記載の化合物を終濃度10μMとして培養液に添加した。
Claims (12)
- 実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬。
- 実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の左旋性のエナンチオマー、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬。
- trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の光学純度が99%ee以上である、請求項1又は2記載の医薬。
- 高LDL血症、脂質異常症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管障害、狭心症、虚血、心虚血、血栓症、心筋梗塞、再灌流障害、血管形成性再狭窄及び高血圧から選ばれる疾患の予防及び/又は治療に用いられるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
- 実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬の製造方法であって、下記の一般式(IV):
- 一般式(V)で表される化合物から、−(CH2)n−Rで表される基を除去する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
- (S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノールを、ハロゲン化剤の存在下でハロゲン化して、一般式(X)で表される化合物を製造する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
- 医薬が、高LDL血症、脂質異常症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管障害、狭心症、虚血、心虚血、血栓症、心筋梗塞、再灌流障害、血管形成性再狭窄及び高血圧から選ばれる疾患の予防及び/又は治療に用いられるものである、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
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