JP5555303B2 - 光学活性ジベンジルアミン誘導体及びその製造方法 - Google Patents

光学活性ジベンジルアミン誘導体及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、医薬の有効成分等として有用な光学活性ジベンジルアミン誘導体及びその製造方法に関する。
近年、生活水準の向上に伴う高カロリー及び高コレステロール型食への変化、肥満、運動不足、高齢化等により脂質異常症(高脂血症)及びこれに起因する動脈硬化性疾患に罹患する者が急増している。低比重リポタンパク質(LDL)コレステロール値が心疾患の発症率に正相関することはフラミンガム・スタディの研究を始めとする多くの疫学研究からも明らかにされており、それ故に脂質異常症及び動脈硬化症の薬物治療はLDLコレステロール値を低下させることに重点が置かれている(非特許文献1)。
高LDLコレステロール血症は心血管疾患の強力な危険因子の一つであるが、その治療方法はHMG−CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の登場とともに飛躍的に進歩した。しかし、スタチンは強力にLDLコレステロールを低下させるが、心血管疾患による心事故、死亡率の低下は約30%にとどまる。LDLコレステロールをさらに低下させることにより心血管疾患による死亡リスクをさらに低減できると考えられるが、スタチンの高用量での投与は横紋筋融解症のリスクを高めるため行なうことができないという問題がある。
そこで、スタチンとは作用機序が異なり、かつ、強力な血中LDLコレステロール低下作用を有する医薬が求められている。
プロタンパク質コンバターゼ(PCs)は哺乳類のセリンプロテアーゼファミリーのメンバーであり、細菌におけるサブチリシンや酵母におけるケキシンと相同性が認められている。PCsの一つであるPCSK9 (プロタンパク質コンバターゼサブチリシン/ケキシン9型:Proprotein convertase subtilisin/kexin 9)は主に肝臓で発現して細胞外に分泌され、肝細胞膜表面上でLDL受容体と結合し、LDL受容体の細胞内移行を促進する。細胞内に移行したLDL受容体は細胞内器官で分解を受ける。LDL受容体はLDLコレステロールを含むリポ蛋白を循環血液中から肝臓へと輸送する機能を有しているため、PCSK9タンパクの産生は、肝臓への血中LDLコレステロールの取り込みを阻害し、結果として、血中LDLコレステロールを上昇させる。実際に、PCSK9遺伝子に機能獲得型変異を有するヒトの血中LDLコレステロールレベルは高く、常染色体優性高コレステロール血症と関連していることが知られている(非特許文献2)。一方、PCSK9遺伝子に機能喪失変異を有するヒトの血中LDLコレステロールレベルは低く維持されている(非特許文献3)。また、動物レベルでは、肝臓のPCSK9遺伝子を欠損させたマウスのLDLコレステロールは低値であることが示されている(非特許文献4)。
以上のことより、PCSK9タンパクの産生抑制等によりその量を低減することやPCSK9タンパクの機能を阻害することは、LDL受容体量の増加につながり、ひいては強力なLDLコレステロール低下作用に結びつくものと考えられる。
このような背景から、最近、PCSK9タンパクの機能阻害や産生抑制に関する研究が活発に行われている。例えば、抗体やアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いるものとしては、PCSK9のモノクローナル抗体によるPCSK9タンパクの機能阻害やRNA干渉によるPCSK9タンパクの産生抑制などが報告されている(非特許文献5〜7)。また、低分子化合物を用いるものとしては、ベルベリンがHepG2細胞におけるPCSK9のmRNAとタンパクレベルを低下させるという報告(非特許文献8)や、アネキシンA2活性化剤である5−アザシチジンがPCSK9タンパクとアネキシンA2の結合を促進し、LDL受容体の分解を抑制するという報告がある(特許文献1)。しかし、低分子化合物のPCSK9タンパク機能阻害剤又はPCSK9タンパク産生抑制剤は前記したものの他にはほとんど報告がない。
なお、特許文献2にはコレステロールエステル転送タンパク(CETP)に対して強い阻害活性を示し、強い血中HDLコレステロール増加作用を有するジベンジルアミン構造を有するピリミジン化合物が開示されており、その実施例45化合物として、ラセミ体である下記式(I):
Figure 0005555303
で表される化合物(trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸:以下、本明細書において、「ラセミ体化合物(I)」とも称する。)が開示されているが、ラセミ体化合物(I)とPCSK9タンパクとの関連性は一切記載も示唆もされていない。
ところで、PCsは癌細胞の増殖、運動、接着、侵襲に影響を与えることから、癌治療の標的として注目されている(非特許文献9)。その他、PCsは、肥満、糖尿病、アルツハイマー病との関連や、後天性免疫不全症候群(AIDS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)等のウイルス感染症等の疾患にも関与することが知られている(非特許文献10及び11)。
従って、PCSK9タンパク量の低下作用や機能阻害作用を有する化合物は、上記疾患に対する医薬の有効成分としての利用も期待できる。
国際公開第2009/143633号パンフレット 国際公開第2008/129951号パンフレット
日本臨床, 59巻増刊3, 高脂血症(下), 381-386 (2001) Nat. Genet. 34, 154-156 (2003) N. Engl. J. Med. 354, 1264-1272 (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 102, 5374-5379 (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 106, 9820-9825 (2009) J. Lipid Res. 48, 763-767 (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 105, 11915-11920 (2008) Atherosclerosis, 201(2), 266-273 (2008) Mol. Carcinogen., 44(3), 151-161 (2005) J. Mol. Med., 83, 842-843 (2005) J. Mol. Med., 83, 844-855 (2005)
本発明の課題は、PCSK9タンパク量を低下させ、LDL受容体量を増加させる作用を有する低分子化合物、及び当該低分子化合物を有効成分とする医薬を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を続けた結果、ラセミ体化合物(I)、及びそのエナンチオマーの一つである下記式(II):
Figure 0005555303
で表される(R)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(以下、本明細書において、「(R)体化合物(II)」とも称する。)では、PCSK9タンパク量の低下作用、LDL受容体量の増加作用がほとんど認めらないが、ラセミ体化合物(I)を構成するもう一つのエナンチオマーである下記式(III):
Figure 0005555303
で表される、左旋性の(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(以下、本明細書において、「(S)体化合物(III)」とも称する。)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物では、強力なPCSK9タンパク量低下作用、及びLDL受容体量の増加作用が認められることを見出した。
ラセミ体化合物(I)はおよそ50%の(S)体化合物(III)を含むものであるにも拘わらずPCSK9タンパク量の低下作用を殆ど示さず、また、LDL受容体量の増加作用を全く示さなかったことから、ラセミ体化合物(I)においては、その構成成分である(R)体化合物(II)が(S)体化合物(III)の作用発現を阻害しているものと推察される。そして、(R)体化合物(II)の含有量を減少させて(S)体化合物(III)の光学純度を高くすることにより、所望のPCSK9タンパク量低下作用、及び高いLDL受容体量増加作用を有する医薬を提供できるものと考えられる。本発明は上記の知見を基にして完成された。
すなわち、本発明は、(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物(好適には、実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物)を提供するものである。
また、別の観点から、本発明は、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の左旋性のエナンチオマー、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物(好適には、実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の左旋性のエナンチオマー、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物)を提供するものである。
さらに、本発明は、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬を提供するものである。
また、本発明は、有効成分としての(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有する医薬組成物を提供するものである。
当該医薬及び医薬組成物は、血中LDLコレステロールを低下させることにより、高血中LDLコレステロール状態に起因する疾患(例えば、高LDL血症、脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管障害、狭心症、虚血、心虚血、血栓症、心筋梗塞、再灌流障害、血管形成性再狭窄、高血圧等)の予防及び/又は治療のための医薬として用いることができる。
さらに、本発明は、高血中LDLコレステロール状態に起因する疾患の予防及び/又は治療のための医薬を製造するための(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用;高血中LDLコレステロール状態に起因する疾患の予防及び/又は治療に用いるための(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を提供するものである。
また、本発明は、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするPCSK9 mRNA発現抑制剤;(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするPCSK9タンパク量の低下剤;(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするPCSK9タンパク産生抑制剤;及び(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするLDL受容体量の増加剤を提供するものである。
さらに、本発明は、PCSK9 mRNA発現抑制剤、PCSK9タンパク量の低下剤、PCSK9タンパク産生抑制剤又はLDL受容体量の増加剤を製造するための(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用;及びPCSK9 mRNA発現抑制剤、PCSK9タンパク量の低下剤、PCSK9タンパク産生抑制剤又はLDL受容体量の増加剤の有効成分として使用するための(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を提供するものである。
また、本発明は、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、PCsの関与する疾患(癌、肥満、糖尿病、アルツハイマー病、又はウイルス感染症等)の予防及び/又は治療のための医薬を提供するものである。
さらに、本発明は、PCsの関与する疾患の予防及び/又は治療のための医薬を製造するための(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用;及びPCsの関与する疾患の予防及び/又は治療に用いるための(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を提供するものである。
さらに別の観点から、本発明は、ラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物(trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸)、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするHMG−CoA還元酵素mRNA発現抑制剤;ラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするHMG−CoA還元酵素産生抑制剤;及びラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするHMG−CoA還元酵素mRNA発現に起因する疾患(例えば、炎症、癌、アルツハイマー病、骨粗鬆症、前立腺肥大、糸球体疾患、寄生虫感染、ウイルス感染、乾癬、黄斑変性など)の予防及び/又は治療のための医薬を提供するものである。
また、本発明は、HMG−CoA還元酵素mRNA発現抑制剤、HMG−CoA還元酵素産生抑制剤、又はHMG−CoA還元酵素mRNA発現に起因する疾患の予防及び/又は治療のための医薬を製造するためのラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の使用;及びHMG−CoA還元酵素mRNA発現抑制剤、HMG−CoA還元酵素産生抑制剤、又はHMG−CoA還元酵素mRNA発現に起因する疾患の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として使用するためのラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を提供するものである。
また、本発明は、ヒトを含む哺乳類動物の生体内においてPCSK9 mRNAの発現を抑制する方法であって、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を、ヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;ヒトを含む哺乳類動物の生体内においてPCSK9タンパク量を低下させる方法であって、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を、ヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;ヒトを含む哺乳類動物の生体内においてPCSK9タンパクの産生を抑制する方法であって、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;ヒトを含む哺乳類動物の生体内においてLDL受容体量を増加する方法であって、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;及び、ヒトを含む哺乳類動物の血中LDLを低下させる方法であって、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法を提供するものである。
また、本発明は、ヒトを含む哺乳類動物における高血中LDLコレステロール状態に起因する疾患の予防及び/又は治療方法であって、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法を提供するものである。
さらに、本発明は、ヒトを含む哺乳類動物におけるPCsの関与する疾患の予防及び/又は治療方法であって、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法を提供するものである。
さらに、本発明は、ヒトを含む哺乳類動物の生体内においてHMG−CoA還元酵素mRNAの発現を抑制する方法であって、ラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;ヒトを含む哺乳類動物の生体内においてHMG−CoA還元酵素の産生を抑制する方法であって、ラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;及び、ヒトを含む哺乳類動物においてHMG−CoA還元酵素mRNA発現に起因する疾患を予防及び/又は治療する方法であって、ラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物、若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を、ヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法を提供するものである。
また、本発明は、(S)体化合物(III)及び/又は(R)体化合物(II)を実質的に光学的に純粋な形態として製造する方法をも提供するものである。
特許文献2にはラセミ体化合物(I)の製造方法は記載されているものの、(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)を実質的に光学的に純粋な形態として製造することは、以下の通り極めて困難な状況にあった。
すなわち、一般論として、実質的に光学的に純粋な化合物は、そのラセミ体を合成した後にキラルカラムにより光学分割して製造することができる場合があることが知られている。
しかしながら、キラルカラムを用いる光学分割法は、化合物によっては分割条件の設定が非常に困難な場合があり、また、工業的な大量スケールでの製造には不向きである。加えて、キラルカラムを用いる光学分割法による、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)の製造は、その分割条件の設定が非常に困難であった。すなわち、キラルカラムの種類(例えば、CHIRALCEL OD−H、CHIRALCEL OJ−Hなど)、移動相として用いる溶媒の種類・組成(例えば、MeOH/TFA混液、EtOH/TFA混液など)、移動相の流速等の条件を種々変更して、特許文献2 実施例45記載の方法に従って製造したラセミ体化合物(I)からの各エナンチオマーの分取が試みられたが、殆どの条件では分離が上手くいかなかった。そのような中、後記実施例1−1に記載した条件であれば各エナンチオマーの分離が可能であることが判明したものの、当該条件では分解物(エチルエステル体)が生じることが判明した。
また、特許文献2には、ラセミ体化合物(I)につき、下記のスキーム1に示す方法に従って、中間体化合物(a)とラセミ体のベンジルブロミド体(b)とを塩基存在下にてカップリングさせ、得られた化合物(c)のエステル基を加水分解して化合物(d)とし、最後に硫黄原子を酸化する方法で製造することができる旨開示されている。
スキーム1
Figure 0005555303
スキーム1を参考に、本発明者らはラセミ体のベンジルブロミド体(b)の代わりに光学活性な1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−1−メタンスルホニルオキシエタンを用いて実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)を得ることを試みたが、1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−1−メタンスルホニルオキシエタンの脱離反応が優先し、目的化合物を得ることができなかった。
また、メタンスルホニル基の代わりにトルエンスルホニル基、クロロメタンスルホニル基又は2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル基等の脱離基を有する光学活性ベンジル化剤を用いて検討を行なったが、1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−1−メタンスルホニルオキシエタンの場合と同様に、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)を得ることはできなかった。
また、これまで、ベンジルフロミド体(b)を用いた場合に、中間体化合物(a)の窒素原子への[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−1−エチル基の導入が達成されていることから、ラセミ体のベンジルブロミド体(b)の代わりに光学活性なベンジルブロミド体を用いることにより実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)を得ることも考えられる。
しかしながら、一般的に臭化物イオンが脱離する求核置換反応では、反応により生じた臭化物イオンが反応系中でベンジルブロミドと反応し、ラセミ化が進行することが知られている。また、一般にベンジル位での求核置換反応は、ベンジルカチオンの安定化によりSN1型の置換反応も競合するため、部分的にラセミ化が起こることが知られている。
ここで、部分ラセミ化により光学純度が低下した結果得られる、中程度の光学純度を有する化合物(本明細書において、「中程度の光学純度を有する化合物」とは10%ee程度以上90%ee未満、好適には20〜80%ee程度、特に好適には40〜70%ee程度の光学純度を意味しており、中程度の光学純度を有する化合物を、以下、「セミキラル体」とも称する。さらに、当該セミキラル体において、下記の部分構造中、*印で示される不斉炭素原子がS配置の化合物が、R配置の化合物よりも過剰量存在する場合を特に「(S)体優位のセミキラル体」と称する。一方、当該セミキラル体において、*印で示される不斉炭素原子がR配置の化合物が、S配置の化合物よりも過剰量存在する場合を特に「(R)体優位のセミキラル体」と称する。
Figure 0005555303
については、片方のエナンチオマーのみを優先晶析させることにより光学純度を高められることが知られている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、ラセミ体化合物(I)及びそのエチルエステル誘導体では結晶化が進行せず、優先晶析法によって光学純度を高めることは出来なかった。
かかる状況下において、本発明者らは、ラセミ体化合物(I)のカルボン酸をベンジルエステルに変換したところ、得られるベンジルエステル化合物がラセミ体を主成分とする結晶として単離可能であることを見出した。
そして、下記のスキーム2に示すように、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルエステル化合物のセミキラル体(IV)を製造し、ラセミ体が成分として優位な低光学純度の結晶(以下、本明細書において「ラセミ体優位の結晶」と称する場合がある。)を晶析させた後除去することにより、高い光学純度のアリールアルキル又はヘテロアリールアルキルエステル体(V)又は(V´)を得、これを原料とすることによって、ラセミ体化合物(I)の所望のエナンチオマー((S)体化合物(III)及び(R)体化合物(II))を実質的に光学的に純粋な形態として製造することに成功した。
スキーム2
Figure 0005555303
(スキーム図中、Rは置換基を有していてもよいC6-10アリール基又は置換基を有していてもよい5−10員へテロアリール基を示し、nは1〜6の整数を示す。)
すなわち、本発明は、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)若しくは実質的に光学的に純粋な(R)体化合物(II)、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の製造方法であって、下記の一般式(IV):
Figure 0005555303
(式中、Rは置換基を有していてもよいC6-10アリール基又は置換基を有していてもよい5−10員ヘテロアリール基を示し、nは1〜6の整数を示す)で表される化合物のセミキラル体から、溶媒中で、ラセミ体優位の結晶を優先晶析(preferential crystallization)で除去することにより、下記の一般式(V)又は(V´):
Figure 0005555303
(式中、R及びnは一般式(IV)におけるものと同義である)で表される実質的に光学的に純粋な化合物を得る工程を含む方法を提供するものである。
上記方法において、一般式(IV)で表される化合物が(S)体優位のセミキラル体である場合は(S)体化合物(III)を、一般式(IV)で表される化合物が(R)体優位のセミキラル体である場合は(R)体化合物(II)をそれぞれ製造することができる。
また、本発明は、一般式(V)又は(V´)で表される化合物から、−(CH2)n−Rで表される基を除去する工程をさらに含む、上記の方法を提供するものである。
さらに、本発明は、
(A)下記の一般式(VI):
Figure 0005555303
(式中、R及びnは一般式(IV)におけるものと同義である)で表される化合物のセミキラル体を、溶媒中で、酸化剤と反応させて、一般式(IV)で表される化合物のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、上記の方法;
(B)下記の式(VII):
Figure 0005555303
で表される化合物のセミキラル体と、下記の一般式(VIII):
Figure 0005555303
(式中、R及びnは一般式(IV)におけるものと同義である)で表される化合物とを、溶媒中で、触媒の存在下に反応させて、一般式(VI)で表される化合物のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、上記の方法(A);
(C)下記の一般式(IX):
Figure 0005555303
(式中、R1はC1-6アルキル基を示す)で表される化合物のセミキラル体を、溶媒中で、塩基の存在下に加水分解して、式(VII)で表される化合物のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、上記の方法(B);
(D)下記の一般式(X)又は(X´):
Figure 0005555303
(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表される化合物と、下記の一般式(XI):
Figure 0005555303
(式中、R1は一般式(IX)におけるものと同義である)で表される化合物とを、溶媒中で、塩基の存在下に反応させて、一般式(IX)で表される化合物のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、上記の方法(C)を提供するものである。
また、本発明は、光学活性1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノールを、ハロゲン化剤の存在下でハロゲン化して、一般式(X)又は(X´)で表される化合物を製造する工程をさらに含む、上記の方法(D)を提供するものである。
別の観点からは、本発明は、上記の一般式(IV)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を提供するものである。この発明の好ましい態様は、Rがフェニルであり、nが1である化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物である。
また、本発明は、上記の一般式(V)又は(V´)で表される実質的に光学的に純粋な化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を提供するものである。この発明の好ましい態様は、Rがフェニルであり、nが1である化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物である。
(S)体化合物(III)は、優れたPCSK9タンパク量の低下作用、LDL受容体量の増加作用を有し、また、優れた血中LDLコレステロール低下作用を示すことから、例えば血中LDLコレステロールを低下させるための医薬の有効成分等として有用である。
また、(S)体化合物(III)は、PCsの関与する疾患、より具体的には癌、肥満、糖尿病、アルツハイマー病、又はウイルス感染症に対する予防及び/又は治療のための医薬の有効成分としても有用である。
さらに、本発明の製造方法によれば、ラセミ体化合物(I)の所望のエナンチオマー((S)体化合物(III)及び(R)体化合物(II))を実質的に光学的に純粋な形態として簡便に製造することができることから、本発明の方法は、例えば、医薬の有効成分等として有用な、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)を製造する方法として好適に利用できる。
本明細書において、「実質的に光学的に純粋な」とは、化合物の光学純度が90%ee以上、好ましくは95〜100%ee、特に好ましくは97〜100%eeであることを意味する。
従って、例えば「実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸」、「実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の左旋性のエナンチオマー」及び「実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)」とは、光学純度が90%ee以上、好ましくは95〜100%ee、特に好ましくは97〜100%eeである(S)体化合物(III)を意味する。
本発明において、(S)体化合物(III)の光学純度としては、良好なPCSK9タンパク量の低下作用及び/又はLDL受容体量の増加作用を得る観点から、下記実施例1−1に示すキラルHPLC分析条件において98%ee以上であるのが好ましく、99%ee以上であるのが特に好ましい。係る光学純度であれば、他方のエナンチオマー((R)体化合物(II))を実質的に含有しないこととなる。
本明細書において、「C1-6アルキル基」とは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよいC6-10アリール基」の「C6-10アリール」部は、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を意味し、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基等が挙げられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい5−10員へテロアリール基」の「5−10員へテロアリール」部は、酸素原子、イオウ原子、及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を環構成原子として1から4個含有する5〜10員の単環式、多環式、又は縮合環式の芳香族ヘテロ環基を意味し、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、プリニル基、プテリジニル基、フロピリジル基、チエノピリジル基、ピロロピリジル基、オキサゾロピリジル基、チアゾロピリジル基、イミダゾピリジル基等が挙げられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよいC6-10アリール基」、「置換基を有していてもよい5−10員ヘテロアリール基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、ニトロ基等が挙げられる。また、置換基の数は、1〜置換可能な最大数であり、通常、1〜5個の置換基を有していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれを用いてもよい。
一般式中、Rにおける置換基を有していてもよいC6-10アリール基としては、フェニル基が好ましい。
また、一般式中、nが示す整数としては、1が好ましい。
また、一般式中、R1におけるC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
また、一般式中、Xが示すハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
本発明において、各化合物(例えば、(S)体化合物(III)、一般式(IV)で表される化合物、一般式(V)で表される化合物、一般式(V´)で表される化合物など)の塩としては例えば、酸付加塩や塩基付加塩等が挙げられ、医薬として許容される塩であれば特に制限されない。具体的には例えば、酸付加塩であれば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩のような無機酸との酸付加塩;安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等の有機酸との酸付加塩が挙げられる。また、塩基付加塩であればナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属との塩基付加塩;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、ルチジン等のアミン塩;リシン、アルギニン等の有機塩基との塩基付加塩等が挙げられる。
本発明において、各化合物(例えば、(S)体化合物(III)、一般式(IV)で表される化合物、一般式(V)で表される化合物、一般式(V´)で表される化合物など)又はその塩の溶媒和物を形成する溶媒としては、水のほか、生理学的に許容される有機溶媒、例えばエタノール、ヘキサン、酢酸エチルなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。本発明の医薬の有効成分としては、例えば、水和物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)の製造方法の一例を下記のスキーム3に、実質的に光学的に純粋な(R)体化合物(II)の製造方法の一例を下記のスキーム4にそれぞれ示す(下記スキーム図中、R、R1、X及びnは前記と同義である)。
スキーム3
Figure 0005555303
スキーム4
Figure 0005555303
<工程A>
本工程はアミン(XI)を塩基存在下、光学活性なベンジルハライド(X)又は(X´)と反応させ、セミキラル体(IX)を製造する工程である。化合物(X)又は(X´)の量は、化合物(XI)に対して1.0〜3.0モル当量、好ましくは1.5〜2.5モル当量用いればよい。
なお、アミン(XI)は公知の化合物であり、その製造方法は、例えば特許文献2に記載されている。
本反応は溶媒中、塩基の存在下により行うことができる。溶媒としては、特に制限は無いが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等を単独又は組み合わせて使用することができる。溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びその混合溶媒を挙げることができる。溶媒の量は、特に限定されないが、化合物(XI)に対して2〜20倍量(V/W)、好ましくは5〜12倍量(V/W)、より好ましくは7〜10倍量(V/W)を用いればよい。
塩基としては、特に制限は無いが、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類;金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム等のアルカリ金属類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属類;リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド等のアルカリ金属アミド類;t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウム等のアルコキシアルカリ金属類;n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等の有機リチウム類を使用することができる。塩基としては、好ましくは水素化アルカリ金属類を、より好ましくは水素化ナトリウムを挙げることができる。塩基の量は、化合物(XI)に対して1.0〜5.0モル当量、好ましくは2.0〜4.0モル当量用いればよい。
反応温度は、通常−80〜100℃の範囲で行えばよく、好ましくは−30〜50℃、より好ましくは−20〜5℃である。反応時間は、通常5分〜48時間、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは3〜8時間である。本反応では、実質的に光学的に純粋なベンジルハライド(X)又は(X´)を用いることが好ましい。当該反応により、部分的にラセミ化が進行して、セミキラル体(IX)が得られる。このセミキラル体(IX)を次工程にそのまま用いることができる。工程B〜Dにおいて光学純度は実質的に維持され、セミキラル体(IX)と同程度の光学純度を有する、セミキラル体(IV)が得られる。なお、本発明者らの研究によれば、本工程においてR1がベンジル基であるアミン(XI)を用いて光学活性ベンジルハライド(X)又は(X´)との反応を行っても目的物であるセミキラル体(IX)を収率よく得ることはできず、R1としてC1-6アルキル基を用いることによって所望のセミキラル体(IX)を収率よく得ることができる。
<工程B>
本工程はセミキラル体(IX)を加水分解し、セミキラル体(VII)を製造する工程である。
本反応は溶媒中で塩基の存在下により行うことができる。溶媒としては、特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類やアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン及び水等を単独又は組み合わせて使用することができる。溶媒としては、好ましくはアルコール類と水の組合わせ、より好ましくはエタノールと水の組合せを挙げることができる。溶媒の量は、特に制限はないが、化合物(IX)に対して10〜100倍量(V/W)、好ましくは20〜50倍量(V/W)、より好ましくは30〜40倍量(V/W)を用いればよい。
塩基としては、特に制限は無いが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(Triton B)等の水酸化四級アンモニウム等を使用することができる。塩基としては、好ましくは水酸化アルカリ金属類、より好ましくは水酸化ナトリウムを挙げることができる。塩基の量は、化合物(IX)に対して好ましくは1.0〜5.0モル当量、より好ましくは2.0〜3.0モル当量用いればよい。
反応温度は、通常0〜100℃の範囲で行えばよく、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜60℃である。反応時間は、通常5分〜48時間が好ましく、より好ましくは30分〜12時間、特に好ましくは2〜5時間である。
<工程C>
本工程はセミキラル体(VII)とアルコール(VIII)とを縮合し、セミキラル体(VI)を製造する工程である。アルコール(VIII)の量は、化合物(VII)に対して、0.8〜2.0モル当量、好ましくは1.0〜1.2モル当量用いればよい。
本反応は溶媒中、塩基の存在下又は非存在下、縮合剤を用いて行うことができる。縮合促進剤の存在下で反応を行ってもよい。溶媒としては特に制限はないが、例えば、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル等を使用することができる。溶媒としては、好ましくはハロゲン化炭化水素類、より好ましくはジクロロエタンを挙げることができる。溶媒の量は、特に制限はないが、化合物(VII)に対して、5〜100倍量(V/W)、好ましくは10〜20倍量(V/W)を用いればよい。
塩基としては特に制限はないが、例えば、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、コリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、トリメチルアミン等の有機塩基類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属類;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の重炭酸アルカリ金属等を使用することができる。
縮合促進剤としては特に制限はないが、DMAP、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HODhbt)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HONB)、ペンタフルオロフェノール(HOPfp)、N−ヒドロキシフタルイミド(HOPht)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等を使用することができる。縮合促進剤としては、DMAPが好ましい。縮合促進剤の量は、化合物(VII)に対して、0.001〜1.0モル当量、好ましくは0.05〜0.5モル当量を用いればよい。
縮合剤としては特に制限はないが、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N‘−エチル−カルボジイミド(通称:Water soluble carbodiimide:WSCI)、WSC・HCl等を使用することができる。縮合剤としては、好ましくはWSC・HClである。縮合剤の量は、化合物(VII)に対して、1.0〜3.0モル当量、好ましくは1.0〜1.2モル当量を用いればよい。
反応温度は、通常0〜100℃の範囲で行えばよく、好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜30℃である。反応時間は、通常5分〜48時間が好ましく、より好ましくは30分〜24時間、特に好ましくは8〜16時間である。
<工程D>
本工程はセミキラル体(VI)の硫黄原子を酸化することにより、セミキラル体(IV)を製造する工程である。
酸化方法としては硫黄原子をスルホニル基へと変換する通常の方法を適用することができる。酸化剤としては、例えば、触媒量のタングステン酸ナトリウム、二塩化二酸化モリブデンあるいは五塩化タンタルを用いた過酸化水素水による酸化反応や、過ホウ素酸ナトリウム、Oxone(登録商標)、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、ピリジニウムクロロクロメート(PCC)、ピリジニウムジクロメート(PDC)、N−クロロコハク酸イミド(NCS)、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−ヨードコハク酸イミド(NIS)、ヨウ素、臭素等を使用することができる。酸化剤としては、好ましくは五塩化タンタルと過酸化水素水の組合わせである。五塩化タンタルの量は、化合物(VI)に対して、0.001〜1.0モル当量、好ましくは0.05〜0.5モル当量を用いればよい。過酸化水素水の量は、化合物(VI)に対して、1.0〜10モル当量、好ましくは4.0〜6.0モル当量を用いればよい。
溶媒としては特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸等が挙げられる。溶媒としては、好ましくはアルコール類、より好ましくは2−プロパノールを挙げることができる。溶媒の量は、特に制限はないが、化合物(VI)に対して、5〜100倍量(V/W)、好ましくは10〜30倍量(V/W)を用いればよい。
反応温度は、通常0〜100℃の範囲で行えばよく、好ましくは10〜60℃、より好ましくは10〜30℃である。反応時間は、通常5分〜48時間が好ましく、より好ましくは30分〜24時間、特に好ましくは8〜16時間である。
<工程E>
本工程はセミキラル体(IV)からラセミ体優位な低光学純度の結晶を優先晶析することにより、高光学純度の光学活性体(V)又は(V´)を製造する工程である。
本工程は、セミキラル体(IV)を含有する溶媒中で、ラセミ体優位な結晶を晶出させた後、得られたラセミ体優位の結晶を除去することにより、母液中に高光学純度の化合物(V)又は(V´)を残存させる工程である。
溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルコールが好ましく、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。溶媒の量は、化合物(IV)に対して、2〜20倍量(V/W)、好ましくは4〜10倍量(V/W)、より好ましくは5〜8倍量(V/W)である。
結晶化は、セミキラル体(IV)を溶媒に溶解し、10〜40℃、好ましくは15〜20℃で、30分〜2日間、好ましくは15〜24時間攪拌すればよく、結晶の収量を高めたければ次いで温度を−10〜10℃、好ましくは−5〜5℃に冷却して30分〜24時間、好ましくは2〜5時間攪拌してもよい。ラセミ体優位の結晶は、完全なラセミ体結晶であってもよいが、一般的にはラセミ体成分を60〜100%程度含む低光学純度(0〜40%ee程度)の結晶である。
本工程は、別途調製したラセミ体の種晶の存在下で行なってもよい。ここで用いるラセミ体の種晶は、前記一般式(IV)で表される化合物のラセミ体の結晶であり、例えば、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのラセミ体の結晶が挙げられる。
また、本工程Eで得られるラセミ体優位の結晶をそのままラセミ体の種晶として使用してもよいが、前記一般式(IV)で表される化合物のラセミ体を別途製造し結晶化して得られる結晶を、ラセミ体の種晶として用いてもよい。係る一般式(IV)で表される化合物のラセミ体は、例えば、下記に示す方法で製造することができる。
Figure 0005555303
本反応はラセミ体化合物(I)とアルコール(VIII)とを縮合し、ラセミ体(IV)を製造するものである。アルコール(VIII)の量は、ラセミ体化合物(I)に対して、0.8〜2.0モル当量、好ましくは1.0〜1.2モル当量用いればよい。
本反応は溶媒中、塩基の存在下又は非存在下、縮合剤を用いて行うことができる。縮合促進剤の存在下で反応を行ってもよい。溶媒としては特に制限はないが、例えば、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル等を使用することができる。溶媒としては、好ましくはハロゲン化炭化水素類、より好ましくはジクロロメタンを挙げることができる。溶媒の量は、特に制限はないが、ラセミ体化合物(I)に対して、5〜100倍量(V/W)、好ましくは10〜20倍量(V/W)を用いればよい。
塩基としては特に制限はないが、例えば、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、コリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、トリメチルアミン等の有機塩基類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属類;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の重炭酸アルカリ金属等を使用することができる。
縮合促進剤としては特に制限はないが、DMAP、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HODhbt)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HONB)、ペンタフルオロフェノール(HOPfp)、N−ヒドロキシフタルイミド(HOPht)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等を使用することができる。縮合促進剤としては、DMAPが好ましい。縮合促進剤の量は、ラセミ体化合物(I)に対して、0.001〜1.0モル当量、好ましくは0.05〜0.5モル当量を用いればよい。
縮合剤としては特に制限はないが、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N‘−エチル−カルボジイミド(通称:Water soluble carbodiimide:WSCI)、WSC・HCl等を使用することができる。縮合剤としては、好ましくはWSC・HClである。縮合剤の量は、ラセミ体化合物(I)に対して、1.0〜3.0モル当量、好ましくは1.0〜1.2モル当量を用いればよい。
反応温度は、通常0〜100℃の範囲で行えばよく、好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜30℃である。反応時間は、通常5分〜48時間が好ましく、より好ましくは30分〜24時間、特に好ましくは8〜16時間である。
一般式(IV)で表される化合物のラセミ体の結晶化(ラセミ体の種晶の製造)は、セミキラル体(IV)からのラセミ体優位な結晶の優先晶析と同様の条件で行なうことができる。
すなわち、ラセミ体(IV)を溶媒に溶解し、10〜40℃、好ましくは15〜20℃で、30分〜2日間、好ましくは15〜24時間攪拌すればよく、結晶の収量を高めたければさらに温度を−10〜10℃、好ましくは−5〜5℃に冷却して、30分〜24時間、好ましくは2〜5時間攪拌してもよい。また、溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルコールが好ましく、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。溶媒の量は、ラセミ体(IV)に対して、2〜20倍量(V/W)、好ましくは4〜10倍量(V/W)、より好ましくは5〜8倍量(V/W)である。
<工程F>
本工程は高光学純度の化合物(V)又は(V´)を脱保護することにより、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)又は(R)体化合物(II)を製造する工程である。
本反応は、溶媒中で金属触媒及び水素源を用いた接触還元、又は溶媒中で塩基を用いた加水分解反応により行うことができる。接触還元により脱保護を行う場合は、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類;酢酸;水等を用いることができる。溶媒としては、好ましくはアルコール類、より好ましくはエタノールである。溶媒の量は、化合物(V)又は(V´)に対して、5〜30倍量(V/W)、好ましくは5〜15倍量(V/W)を用いればよい。
水素源としては、例えば、水素、シクロヘキサジエン、ギ酸、ギ酸アンモニウム等を使用することができる。水素源としては水素が好ましい。金属触媒としては例えばパラジウム炭素、パラジウム黒、ラネーニッケル、二酸化白金、白金黒等を使用することができる。金属触媒としてはパラジウム炭素が好ましい。パラジウム炭素の量は10%Pd−C(wet)の量として化合物(V)又は(V´)に対して、0.001〜0.5倍量(W/W)、好ましくは0.05〜0.2倍量(W/W)を用いればよい。
接触還元は、通常0〜100℃の範囲で行えばよく、好ましくは10〜60℃、より好ましくは10〜30℃である。反応時間は、通常5分〜24時間が好ましく、より好ましくは30分〜16時間、特に好ましくは1〜6時間である。
加水分解反応により脱保護を行う場合は、溶媒としては特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノール等のアルコール類やアセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン及び水等を単独又は組み合わせて使用することができる。塩基としては、特に制限は無いが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(Triton B)等の水酸化四級アンモニウム等を使用することができる。
なお、光学活性なベンジルハライド(X)又は(X´)は、例えば下記に示す方法で合成することができる。
Figure 0005555303
本反応は、光学活性な1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール(XII)又は(XII´)をハロゲン化剤の存在下でハロゲン化し、光学純度をほとんど低下させることなく高効率的に光学活性な1−ハロ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(X)又は(X´)を製造する工程である。
本反応に使用するハロゲン化剤は、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン等の塩素化剤;三臭化リン、三臭化リンと臭化水素 (30%酢酸溶液)、三臭化リンとピリジン、N−ブロモコハク酸イミドとメチルスルフィド、N−ブロモコハク酸イミドとトリフェニルホスフィン、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンとトリフェニルホスフィン、ブロモジメチルスルホニウムブロミド、ピリジニウムブロミドペルブロミドとヘキサメチルジシラン、臭素とトリフェニルホスフィン、臭素とトリブチルホスフィン、臭素とメチルスルフィド、臭化亜鉛とトリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジメチル、臭素化リチウムとクロロトリメチルシラン、臭素化リチウムと無水トリフルオロ酢酸、ブロモトリメチルシラン、四臭化炭素とトリフェニルホスフィン、臭素化チオニル等の臭素化剤;ヨウ化水素、ヨウ化カリウムとリン酸等のヨウ素化剤が挙げられる。ハロゲン化剤が臭素化剤の場合、好ましくは三臭化リンと臭化水素 (30%酢酸溶液)、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンとトリフェニルホスフィン、N−ブロモコハク酸イミドとメチルスルフィドである。
以下に、ハロゲン化剤として三臭化リンと臭化水素を用いる場合、及び1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンとトリフェニルホスフィンを用いる場合について特に具体的に説明する。
<ハロゲン化剤として三臭化リンと臭化水素 (30%酢酸溶液)を用いる場合>
ハロゲン化剤として三臭化リンと臭化水素 (30%酢酸溶液)を用いる場合は、三臭化リンはフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して0.3〜2.0モル当量使用されるが、好ましくは0.4〜0.6モル当量を用いるのがよい。臭化水素はフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して0.7〜3.0モル当量使用されるが、好ましくは0.8〜1.2モル当量を用いるのがよい。
本反応は溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒の存在下で反応を行う場合、使用する溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられ、その中でも、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンが好ましく、特にトルエン、塩化メチレン、n−ヘプタンがより好ましい。また、これらの溶媒は、単独又は組み合わせて使用することもでき、溶媒の使用量は特に制限されない。
反応温度は、通常−50〜150℃の範囲で行えばよく、−20〜80℃がより好ましく、0〜15℃が特に好ましい。反応時間は、通常5分〜48時間が好ましく、30分〜36時間がより好ましく、12〜24時間が特に好ましい。
<ハロゲン化剤として1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンとトリフェニルホスフィンを用いる場合>
ハロゲン化剤として1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンとトリフェニルホスフィンを用いる場合は、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンはフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して1.0〜3.0モル当量使用されるが、好ましくは1.0〜1.2モル当量を用いるのがよい。トリフェニルホスフィンはフェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して1.0〜3.0モル当量使用されるが、好ましくは1.0〜1.2モル当量を用いるのがよい。
本反応は溶媒の存在下で行うことができる。使用する溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。溶媒としては、好ましくは芳香族炭化水素類又はハロゲン化炭化水素類、より好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、特に好ましくはトルエン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンを挙げることができる。また、これらの溶媒は、単独又は組み合わせて使用することもできる。溶媒の使用量は特に制限されないが、フェニルエタノール(XII)又は(XII´)に対して、1〜10倍量(V/W)、好ましくは2〜4倍量(V/W)を用いればよい。
反応温度は、通常−50〜150℃の範囲で行えばよく、−20〜80℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。反応時間は、通常5分〜48時間が好ましく、30分〜36時間がより好ましく、1〜2時間が特に好ましい。
(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、下記の実施例に具体的に示すように、PCSK9 mRNA発現抑制作用を有し、また、PCSK9タンパク量の低下作用及びLDL受容体量の増加作用を有し、生体内において血中LDLコレステロールを低下させる作用を有する。
本発明は下記推察に何ら拘束されるものではないが、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、PCSK9タンパクの産生を抑制することにより、LDL受容体の分解を抑制し、LDL受容体の量の増加させる結果、血中LDLコレステロールのLDL受容体への取り込みを促進する。そして、斯かる血中LDLコレステロールのLDL受容体への取り込みの促進が、血中LDLコレステロール値の低下作用を発揮させる要因の一つとなっているものと推察される。
従って、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する医薬や医薬組成物は、高LDL血症のほか、脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管障害、狭心症、虚血、心虚血、血栓症、心筋梗塞、再灌流障害、血管形成性再狭窄、又は高血圧等の疾患の予防及び/又は治療のための医薬として用いることができる。
また、PCSK9が属するプロタンパク質コンバターゼ(PCs)は、癌、肥満、糖尿病、アルツハイマー病、又はウイルス感染症においての発症、進行、及び悪化などに関与する酵素であることが知られていることから、(S)体化合物(III)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する医薬や医薬組成物は上記のPCsが関与する疾患に対する予防及び/又は治療のための医薬としての利用も期待できる。
一方、ラセミ体化合物(I)、及び特許文献2 実施例44記載の化合物(trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸)は下記の実施例に具体的に示すようにHMG−CoA還元酵素mRNA発現抑制作用を有している。従って、ラセミ体化合物(I)、特許文献2 実施例44記載の化合物若しくはそれらのエナンチオマー、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物は、HMG−CoA還元酵素mRNA発現に起因する疾患(例えば、Ras、Rho、Racといった種々の蛋白質の翻訳後脂質修飾を行うイソプレノイド(ファルネシルピロリン酸、ゲラニルゲラニルピロリン酸等)の産生に伴う疾患。具体的には例えば、炎症、癌、アルツハイマー病、骨粗鬆症、前立腺肥大、糸球体疾患、寄生虫感染、ウイルス感染、乾癬、黄斑変性など。)に対する予防及び/又は治療のための医薬としての利用も期待できる。
本発明の医薬としては上記の有効成分自体を投与してもよいが、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することができる。経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、静脈内注射剤や筋肉内注射剤などの注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
上記の医薬組成物は、薬理学的、製剤学的に許容しうる添加物を加えて製造することができる。薬理学的、製剤学的に許容しうる添加物の例としては、例えば、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、矯味剤、香料、被膜剤、希釈剤などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、疾患の種類、予防又は治療の目的、有効成分の種類などに応じて適宜選択することができ、さらに患者の体重や年齢、症状、投与経路など通常考慮すべき種々の要因に応じて、適宜増減することができる。例えば、経口投与の場合には成人一日あたり有効成分の重量として0.1 〜500mg程度の範囲で用いることができるが、投与量は当業者に適宜選択可能であり、上記の範囲に限定されることはない。
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例中で用いられている略号は下記の意味を示す。
s:シングレット(singlet)
d:ダブレット(doublet)
t:トリプレット(triplet)
q:クアルテット(quartet)
m:マルチプレット(multiplet)
br:ブロード(broad)
J:カップリング定数(coupling constant)
Hz:ヘルツ(Hertz)
CDCl3:重クロロホルム
1H-NMR:プロトン核磁気共鳴
IR:赤外線吸収スペクトル
実施例1:実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)の製造方法の確立
実施例1−1:キラルカラムを用いた光学分割
下記条件であれば、特許文献2(国際公開第2008/129951号パンフレット) 実施例45に記載の方法に従って製造したラセミ体化合物(I)からの各エナンチオマーの分離が可能であり、キラルHPLC分析法による(S)体化合物(III)及び(R)体化合物(II)の光学純度の測定に用いることができることが明らかとなった。なお、本発明は、下記キラルHPLC分析条件(特に、下記カラムと下記移動相の組合せ)を用いる、ラセミ体化合物(I)、(S)体化合物(III)若しくは(R)体化合物(II)、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の光学純度測定方法を提供する。
カラム:CHIRALCEL OD‐H
移動相:ヘキサン/エタノール/TFA=90/10/0.1
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:242nm
保持時間:第一ピーク/21.3min((R)体) 、第二ピーク/23.7min((S)体)
しかしながら、上記条件に係る移動相の溶媒にはエタノールとトリフルオロ酢酸(TFA)が含まれているため、ラセミ体化合物(I)及び/又は各エナンチオマーのカルボン酸と反応して分解物(エチルエステル体)が生じることが判明した。
従って、上記条件でのキラルカラムを用いた光学分割法は光学純度の測定(キラルHPLC分析)には用いることができるものの、実質的に光学的に純粋な各エナンチオマーの製造方法、特に大量スケールでの製造方法としては不適切なものであった。
実施例1−2:優先晶析法による、実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)の製造
本発明者らが実施した、優先晶析法による実質的に光学的に純粋な(S)体化合物(III)の製造方法の概略をスキーム5として以下に示す。
なお、各化合物の絶対配置は、工程1で確認された(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンの絶対配置から判断した。
また、工程6で得られた(S)体化合物(III)((S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸)の光学純度は、上記1−1に記載の条件によるキラルHPLC分析により決定した。
さらに、工程1で得られた1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン、工程4及び5で得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの光学純度は、それぞれ下記条件によるキラルHPLC分析により決定した。なお、本発明は、下記キラルHPLC分析条件(特に、下記カラムと下記移動相の組合せ)を用いる、各化合物、若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物の光学純度測定方法を提供する。
1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンのキラルHPLC分析条件
カラム:CHIRALPAK AS−RH
移動相:エタノール/水=60/40
流速:0.5mL/min
カラム温度:25℃
検出波長:220nm
保持時間:第一ピーク/21.8min((R)体)、 第二ピーク/26.0min((S)体)
trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのキラルHPLC分析条件
カラム:CHIRALCEL OD−H
移動相:ヘキサン/エタノール=80/20
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:242nm
保持時間:第一ピーク/11.3min((R)体)、第二ピーク/13.0min((S)体)
スキーム5
Figure 0005555303
(スキーム図中、Etはエチル基を示し、Bnはベンジル基を示す。)
工程1:(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンの製造
(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンを下記1−(a)の方法により製造し、その絶対配置を以下の通り確認した。すなわち、得られた(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンを(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミンに導いたうえで、市販されている絶対配置既知の(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミンの標準品と比旋光度の実測値の符号を比較することで確認した。
また、(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンを別途下記1−(b)の方法によっても製造した。
1−(a):(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンの製造 その1
アルゴン雰囲気下、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタン(7.57g、23.2mmol)をトルエン(12.5mL)に溶解し、0℃にてトリフェニルホスフィン(6.1g、23.2mmol)を加え30分間撹拌した。これに(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール(1)(5.0g、19.4mmol、>99.5%ee)のトルエン溶液(12.5mL)を0℃で10分以上かけて滴下した後、室温まで昇温し、同温にて1時間撹拌した。反応液にn−ヘキサン(25mL)を加え、セライトろ過した。ろ液を水、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧留去した。得られた残渣を減圧蒸留(56oC、0.7mmHg)することで、5.52gの(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)を無色油状物として得た(収率:88.6%)。
キラルHPLC分析:光学純度>99.5%ee(メインピーク:第一ピーク)、転化率≧99%
[α]D 25 +59.1(c=1.03,CHCl3
1H‐NMR(CDCl3)δ: 2.08(3H,d,J=7.1Hz),5.21(1H,q,J=7.1Hz),7.81(1H,s),7.87(2H,s)
(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンの絶対配置の確認
上記1−(a)で得られた(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)(106mg、0.336mmol、99%ee)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(1mL)にアジ化ナトリウム(64.4mg、0.990mmol)を加え−18〜−15℃にて4時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル/n−ヘキサン(1:1)及び水より抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮することで111.5mgの1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアジド(粗生成物:111.5mg)を得た。
1H‐NMR(CDCl3)δ:1.61(3H,d,J=6.8Hz),4.79(1H,q,J=6.8Hz),7.78(2H,s),7.84(1H,s)
得られた1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアジド(粗生成物:111.5mg)をメタノール(6mL)に溶解し、パラジウム−フィブロイン(18mg)を加え水素置換し、室温で1時間撹拌した。セライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1〜5:1)にて精製し、77.6mgの1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミンを無色油状物として得た(収率:91%、2工程)。
1H‐NMR(CDCl3)δ:1.42(3H,d,J=6.8Hz),1.58(2H,br‐s),4.30(1H,q,J=6.8Hz),7.75(1H,s),7.85(2H,s)
得られた1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミンの比旋光度は以下の通りであった。
[α]D 25 −15.9(c=1.31,CHCl3
一方、市販の標準品((S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミン(セントラル硝子社製:Lot.0102000:光学純度:99%ee))の比旋光度は以下の通りであった。
[α]D 25 −15.9(c=1.15,CHCl3
比旋光度の実測値の符号が、市販の標準品の符号と一致したことから、得られた1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミンは(S)体であることが確認された。そして、当該アミンはアジ化物イオンの求核置換反応を経て1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンから得られていることから、上記1−(a)で得られた1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンは(R)体であることが確認された。
1−(b):(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンの製造 その2
アルゴン雰囲気下、(S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール(1)(300g、1.16mol、96%ee)に水浴下、20℃以下で三臭化リン(157.3g、0.58mol)を滴下し、19〜22℃で30分撹拌した。反応液を冷却し、0℃以下で臭化水素(30%酢酸溶液)(228mL、1.16mol)を滴下し、13〜15℃で16時間撹拌した。反応液を氷水に注加し、n−ヘキサン(3L×2)で抽出した。有機層を合わせ、飽和重曹水(3L)、飽和食塩水(3L)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下(90〜100mmHg)濃縮し、389.2gの粗体を得た。得られた粗体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル900g、展開溶媒:n−ヘキサン)で精製することにより、349.8gの(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)を無色油状物として得た(収率93.8%)。
なお、下記の通りキラルHPLC分析において、第一ピークがメインピークとして現れたことから、1−(b)で製造した1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタンも1−(a)と同様に、(R)体であることが確認された。
キラルHPLC分析:光学純度>93.9%ee(メインピーク:第一ピーク)、転化率97.8%
1H‐NMR(CDCl3)δ: 2.08(3H,d,J=7.1Hz),5.21(1H,q,J=7.1Hz),7.81(1H,s),7.87(2H,s)
工程2:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の、(S)体優位のセミキラル体の製造
アルゴン雰囲気下、特許文献2(国際公開第2008/129951号パンフレット)記載の方法により合成したtrans−[4−([(エチル){2−[({5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}アミノ]メチル)シクロヘキシル]酢酸エチル(3)(565.4g、0.99mol)の無水テトラヒドロフラン(THF、2.26L)溶液に氷冷下、水素化ナトリウム(60% in oil、119g、2.98mol)を加え、室温にて1時間撹拌した。反応液を−30℃に冷却し、工程1で得られた(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)(682g、1.99mol、93.9%ee)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(4.53L)溶液を反応系内が−15℃以下となるように滴下し、−15℃〜−1℃で5時間撹拌した。反応液を氷水(35L)とトルエン(30L)の混合溶液に注加し、pHが6.9になるまでクエン酸を加え、有機層を分離した。
水層をトルエン(20L)で2回抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、粗体を得た。粗体をエタノール(8L)に溶解させ、氷冷下2M NaOH水溶液(1.24L、2.48mol)を加え、50℃にて3.5時間撹拌した。反応液に氷冷下、pH5.4になるまで1M HCl水溶液を加え、水(25L)に注ぎ、酢酸エチル(22L)で2回抽出した。有機層を飽和食塩水(12L)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 21g、展開溶媒:ヘプタン/アセトン=7/1→3/1)で精製することによりtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸のセミキラル体(4)を得た(黄色油状物、744.1g、収率96%)。
なお、上記工程1に記載の通り絶対配置が確認された(R)−1−ブロモ−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン(2)を原料として使用し、アミン(3)による求核置換反応が進行していることから、得られたセミキラル体(4)は(S)体が優位である。
1H‐NMR(CDCl3)δ: 0.85‐0.96(7H,m),1.35‐1.45(4H,m),1.60‐1.78(5H,m),2.18‐2.21(5H,m),2.69(1H,m),2.81‐2.91(5H,m),4.16(2H,q,J=6.8Hz),4.61(1H,d,J=17.1Hz),4.85(1H,d,J=17.1Hz),6.22(1H,q,J=6.8Hz),7.11(1H,d,J=8.6Hz),7.23(1H,s),7.37(1H,d,J=8.3Hz),7.70(1H,s),7.73(2H,s),8.14(2H,s)
工程3:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの、(S)体優位のセミキラル体の製造
アルゴン雰囲気下、工程2で得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の、(S)体優位のセミキラル体(4)(744.1g、0.95mol)の無水ジクロロエタン(11.6L)溶液に、氷冷下、ベンジルアルコール(113.1g、1.05mol)、WSC・HCl(200.5g、1.05mol)及びDMAP(11.9g、98mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に水(10L)を加え、クロロホルム(19L、14L)にて抽出し、有機層を飽和食塩水(12L)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 28g、展開溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=6/1)で精製することにより、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのセミキラル体(5)を得た(黄色油状物、745.8g、収率90%)。
なお、得られたセミキラル体(5)は、セミキラル体(4)と同様(S)体が優位である。
1H‐NMR(CDCl3)δ: 0.87‐0.95(7H,m),1.37(1H.m),1.43(3H,d,J=7.1Hz),1.65‐1.77(5H,m),2.20(2H,d,J=6.8Hz),2.22(3H,s),2.66‐2.71(2H,m),2.82‐2.91(4H,m),4.15(2H,t,J=6.6Hz),4.62(1H,d,J=17.1Hz),4.85(1H,d,J=17.1Hz),5.10(2H,s),6.21(1H,q,J=7.1Hz),7.10(1H,d,J=8.3Hz),7.22(1H,s),7.28‐7.38(6H,m),7.70(1H,s),7.73(2H,s),8.14(2H,s)
工程4:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの、(S)体優位のセミキラル体の製造
アルゴン雰囲気下、工程3で得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの、(S)体優位のセミキラル体(5)(745.8g、0.87mol)の2−プロパノール(15.2L)溶液に、五塩化タンタル(31.3g、87.3mmol)及び30%過酸化水素水(496mL、4.38mol)を加え、室温にて5時間撹拌した。反応液を飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(3.1L)でクエンチし、水(15L)を加え、クロロホルム(14L、12L)で抽出し、有機層を飽和食塩水(20L)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 26kg、展開溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=3/1→2/1)で精製することにより、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのセミキラル体(6)を得た(黄色アモルファス、619.5g、収率79%)。
なお、得られたセミキラル体(6)は、セミキラル体(4)及びセミキラル体(5)と同様、(S)体が優位である。
キラルHPLC分析:光学純度67.7%ee(メインピーク:第二ピーク)
1H‐NMR(CDCl3)δ:0.87‐0.96(7H,m),1.38(1H.m),1.45(3H,d,J=7.1Hz),1.65‐1.80(5H,m),2.21(2H,d,J=6.6Hz),2.69(1H,m),2.81‐2.91(3H,m),3.08(3H,s),3.44(2H,t,J=5.4Hz),4.44(2H,t,J=5.4Hz),4.64(1H,d,J=17.1Hz),4.86(1H,d,J=17.3Hz),5.10(2H,s),6.19(1H,q,J=6.9Hz),7.12(1H,d,J=8.3Hz),7.19(1H,s),7.30‐7.39(6H,m),7.71(1H,s),7.72(2H,s),8.16(2H,s)
工程5:実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの製造
工程4で得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルの、(S)体優位のセミキラル体(6)(111.7g、123.7mmol、67.7%ee)をエタノール(825mL)に溶解し、別途調製した種晶(下記工程7で製造したラセミ体結晶)2.0mgを15℃〜20℃にて加え、同温にて21時間、0℃にて3時間撹拌した。析出物をろ別し、冷エタノール(165mL)で洗浄した後、母液を減圧濃縮することにより、実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(7)を得た(黄色アモルファス、66.38g、収率59%)。
なお、得られたtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(7)は、(S)体優位のセミキラル体(6)からラセミ体優位の結晶をろ別して得られていることから、(S)体である。
キラルHPLC分析:光学純度>99%ee(メインピーク:第二ピーク)
[α]D 20−42.36(c=1.0w/v%,CHCl3
なお、ろ別したラセミ体優位の結晶の光学純度は、キラルHPLC分析の結果、22%eeであった(43.39g、収率39%)。
工程6:実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の製造
窒素雰囲気下、工程5で得られた(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(7)(34.2g、37.88mmol、>99%ee)のエタノール(340mL)溶液に、10%Pd−C(wet)(3.4g)を加え、水素置換後、室温にて2時間撹拌した。反応懸濁液をセライトろ過し、セライトをエタノール(50mL)で洗浄し、洗液を減圧濃縮することにより、実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(III)を得た(白色アモルファス、31.78g、収率100%)。
なお、得られた化合物は、下記比旋光度に示す通り、左旋性の化合物であった。また、得られた化合物は、(S)体であるベンジルエステル(7)よりエステルを脱保護して得られたことから、同様に(S)体である。
キラルHPLC分析:光学純度>99%ee(メインピーク:第二ピーク)
[α]D 20−46.68 (c=1.0,CHCl3)
IR(ATR)cm-1:2921,1706,1479,1279,1134
1H‐NMR(CDCl3)δ:0.80‐0.96(7H,m),1.38(1H.m),1.47(3H,d,J=7.1Hz),1.65‐1.77(5H,m),2.19(2H,d,J=6.8Hz),2.72(1H,m),2.81‐2.91(3H,m),3.08(3H,s),3.45(2H,t,J=5.2Hz),4.44(2H,q,J=5.4Hz),4.62(1H,d,J=17.1Hz),4.86(1H,d,J=17.4Hz),6.21(1H,q,J=7.1Hz),7.13(1H,d,J=8.3Hz),7.19(1H,s),7.38(1H,d,J=6.6Hz),7.71(1H,s),7.73(2H,s),8.15(2H,s)
工程7:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのラセミ体種晶の製造
特許文献2(国際公開第2008/129951号パンフレット) 実施例45記載の方法により合成したtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(ラセミ体化合物(I))(20g、24.61mmol)の無水ジクロロメタン(200mL)溶液に、氷冷下、ベンジルアルコール(2.93g、27.07mmol)、DMAP(300mg、2.46mmol)及びWSC・HCl(5.19g、27.07mmol)を加え、室温に昇温し、16時間撹拌した。反応液に水(100mL)を加え、クロロホルム(500mL)で抽出し、有機層を2M 塩酸水溶液(100mL)及び飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 350g、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1→1/1)で精製することにより、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(21.15g、収率95.2%)を白色アモルファスとして得た。
得られた白色アモルファスのtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステル(7.9g)をエタノール(40mL)に溶解し、室温で15時間撹拌することにより得られた析出物をろ取し、冷エタノール(20mL)で洗浄し、60℃で4時間減圧乾燥することにより、trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸ベンジルエステルのラセミ体結晶(白色結晶性粉末、6.98g、回収率88.4%)を得た。
実施例2:(S)体化合物(III)がPCSK9タンパク量、LDL受容体量に及ぼす影響の確認
ヒト肝癌細胞株であるHepG2細胞に被験化合物を添加し、48時間培養後のPCSK9タンパク量及びLDL受容体(LDLR)量をウエスタンブロット法にて測定することにより、被験化合物がPCSK9タンパク量、LDL受容体量に及ぼす影響を確認した。
すなわち、HepG2細胞を6穴プレートに5×105cells/wellの濃度で播種し一晩培養した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した被験化合物、又はDMSOのみを培養液に対して1000分の1倍量加えた。細胞をCO2 インキュベーターにて37℃で48時間培養した後、RIPA緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.8、150mM NaCl、1% NP−40、0.5% sodium deoxycholate、0.1% SDS、proteinase inhibitor)を100μL加えて破砕して、タンパク質を抽出した。抽出したタンパク質を10000×gで遠心後、上清を回収し、SDSサンプル緩衝液(60mM Tris−HCl、pH6.8、2% SDS、10% Glycerol、3% メルカプトエタノール)を加え、8%アクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)で分離した。分離終了後、iBlotゲルトランスファーシステム(インビトロジェン社)を用いてニトロセルロースメンブレンにタンパク質を固定し、ブロックエース(DSファーマバイオメディカル社、カタログ番号 UK−B 80)を用いてブロッキングを行った。
PCSK9タンパク、LDLR、β−Actinタンパクの検出及び量の測定は、それぞれ1次抗体にAnti−PCSK9(Cayman社、カタログ番号1000718)、Anti−LDLR(BioVision社、カタログ番号3839−100)又はAnti−β−Actin(Sigma社、カタログ番号A5316)を用い、2次抗体にAnti−Rabbit IgG−HRP(Sigma社、カタログ番号A0545)又はAnti−Mouse IgG−HRP(Sigma社、カタログ番A4416)を用いてメンブレン上のタンパク質を抗体で標識し、化学発光試薬(HRPの基質)をメンブレン上の2次抗体と反応させた後、ルミノ・イメージアナライザーLAS‐3000(富士写真フィルム株式会社製)を用いてシグナル強度を測定することにより行なった。得られたシグナル強度は、画像解析ソフトScience Lab 2002 Multi Gauge(富士写真フィルム株式会社製)を用いて数値化した。
得られたPCSK9タンパク量及びLDL受容体量の測定値を、各被験化合物添加サンプル及びコントロールサンプル(DMSOのみ添加サンプル)の間でβ−Actinタンパク量を指標として補正した。補正後の各被験化合物添加サンプルのPCSK9タンパク量及びLDL受容体量を、コントロールサンプルのPCSK9タンパク量及びLDL受容体量をそれぞれ1とした場合の相対値として表現した。
結果を表1に示す。
なお、被験化合物としては、以下のものを使用した。
1:(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸((S)体化合物(III))
(S)体化合物(III)(光学純度>99%ee)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
2:(R)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸((R)体化合物(II))
(R)体化合物(II)(光学純度≧98%ee)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
3:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(ラセミ体化合物(I))
ラセミ体化合物(I)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
Figure 0005555303
表1に記載の結果から明らかなとおり、コントロールとの比較において(S)体化合物(III)はPCSK9タンパク量を顕著に低下させ、LDL受容体量を顕著に増加させたにも拘わらず、(R)体化合物(II)及びラセミ体化合物(I)においては斯かる作用は殆ど見られなかった。特に、LDL受容体量については、コントロールとの比較において(S)体化合物(III)のみが顕著に増加させた。
以上の試験結果から、(S)体化合物(III)は、PCSK9タンパク量の低下作用、LDL受容体量の増加作用を有することが明らかとなった。
なお、本発明は以下の推察に何ら拘束されるものではないが、ラセミ体化合物(I)はおよそ50%の(S)体化合物(III)を含むものであるにも拘わらずPCSK9タンパク量の低下作用を殆ど示さず、また、LDL受容体量の増加作用を全く示さなかったことから、ラセミ体化合物(I)においては、その構成成分である(R)体化合物(II)が(S)体化合物(III)の作用発現を阻害しているものと推察された。そして、(R)体化合物(II)の含有量を減らすことにより(S)体化合物(III)の光学純度を高くすることが、特にLDL受容体量の増加作用を高めるうえで好ましいものと推察された。
実施例3:(S)化合物(III)がPCSK9 mRNA発現に及ぼす影響の確認
上記実施例2で確認されたPCSK9タンパク量の低下作用のメカニズムを確認するため、HepG2細胞に被験化合物を添加し、24時間培養した後のPCSK9 mRNA発現量を定量リアルタイムPCR法により確認した。
すなわち、HepG2細胞を24穴プレートに2×105cells/wellの濃度で播種して一晩培養した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した被験化合物、又はDMSOのみを培養液に対して1000分の1倍量加えた。細胞をCO2インキュベーターにて37℃で24時間培養した後、ISOGEN(ニッポンジーン社、カタログ番号31‐02501)を500μL加えてtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAからHigh Capacity cDNA Reverse Transcription kit(アプライドバイオシステムズ社、カタログ番号4368813)を用いてcDNAを合成した。ヒトPCSK9 mRNA発現量は、ヒトPCSK9に特異的なプライマー(Kourimate S. et.al., J Biol Chem. Vol.283, p9666)及びFast SYBR Green master mix(アプライドバイオシステムズ社、カタログ番号4385614)を用いた定量リアルタイムPCR法により測定した。測定機器としては7900HT Fast Realtime PCR systemを用いた。
得られたPCSK9 mRNA発現量の測定値を、被験化合物添加サンプル(3サンプル)及びコントロールサンプル(DMSOのみ添加サンプル:3サンプル)の間でβ-Actin mRNAの発現量を指標に補正した。補正後の被験化合物添加サンプルのPCSK9 mRNA発現量を、コントロールサンプルのPCSK9 mRNA発現量の平均値を1とした場合の相対値(平均値±標準誤差)として表現した。結果を表2に示す。
なお、被験化合物としては、以下のものを使用した。
1:(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸((S)体化合物(III))
(S)体化合物(III)(光学純度>99%ee)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
Figure 0005555303
表2に記載の結果から、コントロールとの比較において、(S)体化合物(III)がPCSK9 mRNAの発現量を顕著に低下させることが明らかとなった。
従って、実施例2で確認された、(S)体化合物(III)の有するPCSK9タンパク量の低下作用の少なくとも一部はPCSK9遺伝子発現抑制作用に基づくものであり、(S)体化合物(III)はPCSK9タンパクの産生抑制作用を有するものと考えられた。
実施例4:(S)体化合物(III)の血中LDLコレステロール低下作用の検討
(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸((S)体化合物(III):光学純度>99%ee)を0.5%メチルセルロース溶液に懸濁させた後、正常ハムスター(雄性Syrian Hamster)に金属ゾンデを用いて1日1回、14日間反復経口投与した。最終投与の4時間後に血液を採取し、血漿を得た。血漿中のリポタンパク質の分析は、J. Lipid. Res., 43, p805- 814に記載の方法に準じ、ポストラベル法を用いたHPLCシステムにより自動測定することで行なった。すなわち、血漿サンプル15μLを1mM EDTAを含むPBSで10倍希釈後、HPLCシステム(送液ユニット:Shimadzu LC‐20A system、島津製作所)に接続したゲルろ過カラム(Superose6カラム(カラムサイズ:10×300mm)、GEヘルスケアバイオサイエンス製)に80μL注入した。ランニングバッファとして1mM EDTAを含むPBSを用い、流速0.5mL/min、カラム温度40℃にて分離を行なった。カラムからの溶出液に対しコレステロール測定試薬(コレステロールE テストワコー、和光純薬工業社製)を流速0.25mL/minで混合し、反応コイル(0.5mm×15m)中にて送液下40℃にて反応させた。反応コイルからの溶出液中のコレステロールを、波長600nmで検出した。得られたコレステロールのピーク総面積に占めるLDL画分の面積割合を求め、あらかじめコレステロールE テストワコーを用いて測定した総コレステロール量に、LDL画分の面積割合を乗じてLDLコレステロール量を算出した。
なお、コントロール群(0.5%メチルセルロース溶液投与群)、被験化合物投与群((S)体化合物(III) 10mg/kg体重、30mg/kg体重投与群)それぞれにつき、あらかじめ血漿総コレステロール値を指標に群分けした正常ハムスター6匹を用いた。
各群の血漿中のLDLコレステロール量(LDL−C、mg/dl)を表3に示す。なお、表3中の*印及び***印は、それぞれコントロール群と被験化合物投与群の間で行なった多群比較検定(Dunnettの多重比較検定)の結果、危険率5%以下(p<0.05)、及び危険率0.1%以下(p<0.001)で優位差があることを示す。また、被験化合物投与群における、コントロール群に対するLDLコレステロール量の低下率を、LDLコレステロール低下率として下記計算式1により算出し、%で示した。
LDLコレステロール低下率(%)=[(コントロール群の平均LDLコレステロール量−各化合物投与群の平均LDLコレステロール量)/コントロール群の平均LDLコレステロール量]×100 (計算式1)
Figure 0005555303
表3に記載の結果から、(S)体化合物(III)は、優れた血中LDLコレステロール低下作用を有することが明らかとなった。
以上の試験結果から、(S)体化合物(III)は、血中LDL低下作用を有する医薬の有効成分等として有用であることが明らかとなった。
実施例5:ラセミ体化合物(I)等がHMG−CoA還元酵素mRNA発現に及ぼす影響の確認
HepG2細胞に被験化合物を添加し、8時間培養した後のHMG−CoA還元酵素mRNA発現量を定量リアルタイムPCR法により測定した。
すなわち、HepG2細胞を24穴プレートに2×105cells/wellの濃度で播種し一晩培養した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した被験化合物、又はDMSOのみを培養液に対して1000分の1倍量加えた。細胞をCO2 インキュベーターにて37℃で8時間培養後、ISOGEN(ニッポンジーン社、カタログ番号31−02501)を500μL加えてtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAからHigh Capacity cDNA Reverse Transcription kit(アプライドバイオシステムズ社、カタログ番号4368813)を用いてcDNAを合成した。ヒトHMG−CoA還元酵素mRNA発現量は、ヒトHMG−CoA還元酵素に特異的な以下のプライマーセット:5'‐GGTGTTCAAGGAGCATGCAAAG‐3'及び5'‐TGACAAGATGTCCTGCTGCCA‐3'、並びにFast SYBR Green master mix(アプライドバイオシステムズ社、カタログ番号4385614)を用いた定量リアルタイムPCR法により測定した。測定機器としては7900HT Fast Realtime PCR systemを用いた。
得られたHMG−CoA還元酵素mRNA発現量の測定値を、被験化合物添加サンプル(各化合物につき、それぞれ3サンプル)及びコントロールサンプル(DMSO添加サンプル:3サンプル)の間でβ−Actin mRNAの発現量を指標に補正した。補正後の被験化合物添加サンプルのHMG−CoA還元酵素mRNA発現量を、コントロールのHMG−CoA還元酵素mRNA発現量の平均値を1とした場合の相対値(平均値±標準誤差)として表現した。
結果を表4に示す。
なお、被験化合物としては、以下のものを使用した。
1:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(ラセミ体化合物(I))
ラセミ体化合物(I)を終濃度10μMとして培養液に添加した。
2:trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルチオ)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(特許文献2 実施例44記載の化合物)
特許文献2 実施例44記載の化合物を終濃度10μMとして培養液に添加した。
Figure 0005555303
表4に記載の結果から、コントロールとの比較において、ラセミ体化合物(I)、及び特許文献2 実施例44記載の化合物がともにHMG−CoA還元酵素mRNAの発現量を顕著に低下させることが明らかとなった。
(S)体化合物(III)は、PCSK9タンパク量の低下作用、LDL受容体量の増加作用を有し、また、優れた血中LDLコレステロール低下作用を示すことから、例えば血中LDLコレステロールを低下させるための医薬の有効成分等として利用でき、医薬品産業において利用できる。

Claims (12)

  1. 実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬。
  2. 実質的に光学的に純粋なtrans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の左旋性のエナンチオマー、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬。
  3. trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸の光学純度が99%ee以上である、請求項1又は2記載の医薬。
  4. 高LDL血症、脂質異常症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管障害、狭心症、虚血、心虚血、血栓症、心筋梗塞、再灌流障害、血管形成性再狭窄及び高血圧から選ばれる疾患の予防及び/又は治療に用いられるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
  5. 実質的に光学的に純粋な(S)−trans−{4−[({2−[({1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5−[2−(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン−2−イル}アミノ)メチル]−4−(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬の製造方法であって、下記の一般式(IV):
    Figure 0005555303
    (式中、Rは置換基を有していてもよいC6-10アリール基又は置換基を有していてもよい5−10員ヘテロアリール基を示し、nは1〜6の整数を示す)で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体から、溶媒中で、ラセミ体優位の結晶を優先晶析で除去することにより、下記の一般式(V):
    Figure 0005555303
    (式中、R及びnは前記と同義である)で表される実質的に光学的に純粋な化合物を製造する工程を含む方法。
  6. 一般式(V)で表される化合物から、−(CH2)n−Rで表される基を除去する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
  7. 下記の一般式(VI):
    Figure 0005555303
    (式中、R及びnは前記と同義である)で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体を、溶媒中で、酸化剤と反応させて、一般式(IV)で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 下記の式(VII):
    Figure 0005555303
    で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体と、下記の一般式(VIII):
    Figure 0005555303
    (式中、R及びnは前記と同義である)で表される化合物とを、溶媒中で、触媒の存在下に反応させて、一般式(VI)で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
  9. 下記の一般式(IX):
    Figure 0005555303
    (式中、R1はC1-6アルキル基を示す)で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体を、溶媒中で、塩基の存在下に加水分解して、式(VII)で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
  10. 下記の一般式(X):
    Figure 0005555303
    (式中、Xはハロゲン原子を示す)で表される化合物と、下記の一般式(XI):
    Figure 0005555303
    (式中、R1は前記と同義である)で表される化合物とを、溶媒中で、塩基の存在下に反応させて、一般式(IX)で表される化合物の(S)体優位のセミキラル体を製造する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. (S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノールを、ハロゲン化剤の存在下でハロゲン化して、一般式(X)で表される化合物を製造する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. 医薬が、高LDL血症、脂質異常症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管障害、狭心症、虚血、心虚血、血栓症、心筋梗塞、再灌流障害、血管形成性再狭窄及び高血圧から選ばれる疾患の予防及び/又は治療に用いられるものである、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
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