JP5552148B2 - エンジンの行程判別装置 - Google Patents

Description

本発明は、エンジンの行程判別装置に関し、特に簡単な構成によって精度よく判定を行うことができるものに関する。

例えば産業用等に用いられる４ストロークの汎用エンジンにおいては、排気行程における点火（捨て火）を行わないことによって、排気系内部で未燃の燃料が燃焼するアフターバーンを防止したり、燃料噴射を、いわゆる毎回噴射ではなく、吸気行程においてのみ行うことによって燃費、排ガス性能を向上する目的で、行程の判別を行うことが求められている。

このようなエンジンの行程判別に関する従来技術として、例えば特許文献１には、クランク軸の回転に応じたパルス信号を生成するパルス生成手段を設けるとともに、パルス間隔の時間をマイコンで測定することによって、圧縮行程と排気行程との判別を行うことが記載されている。
また、特許文献２には、トランジスタ点火装置の点火コイルの放電時間を測定して行程を判別することが記載されている。

特開２００９−２３６０３６号公報 特開２００２− ５４４９３号公報

しかし、特許文献１に記載された技術においては、エンジンにパルス生成手段を設ける必要があり、部品点数が増加して構造が複雑化してしまう。
一方、特許文献２に記載された技術においては、マイコンにタイマ機能を設けて、点火コイルの放電時間を正確に測定する必要があり、装置の構成が複雑となってしまう。また、判別に用いる放電時間の閾値の設定がシビアであり、仮に閾値の設定が不適切であった場合には誤判定が生じることが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡単な構成によって精度よく判定を行うことができるエンジンの行程判別装置を提供することである。

本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項１に係る発明は、トランジスタ点火装置を有する単気筒４ストロークエンジンの行程を判別するエンジンの行程判別装置であって、前記トランジスタ点火装置が圧縮行程及び排気行程において出力する点火信号の電圧が、前記エンジンの回転速度の変化に起因して所定の閾値を上回る回数の変化に基づいて、前記圧縮行程と前記排気行程とを判別することを特徴とするエンジンの行程判別装置である。
エンジンの回転速度は一定ではなく行程に応じて異なり、燃焼行程直後の排気行程においては比較的高速であるのに対し、その後惰性によって吸入行程を行い、さらに新気の圧縮仕事を伴う圧縮行程においては比較的低速となる。
トランジスタ点火装置が出力する点火信号の電圧波形は、このような回転速度の差に応じて変化することから、本発明においては、点火信号の電圧を比較することによって、簡単な構成によって精度よくエンジンの排気行程と圧縮行程とを判別することができる。

請求項２に係る発明は、前記点火信号の電圧に応じて異なった個数のパルスを生成する判別回路を有することを特徴とする請求項１に記載のエンジンの行程判別装置である。
これによれば、回路が出力するパルス数をカウントすることによって、簡単かつ確実に行程判別を行うことができる。

以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成によって精度よく判定を行うことができるエンジンの行程判別装置を提供することができる。

本発明を適用したエンジンの行程判別装置の実施例の回路図である。 トランジスタ点火装置が出力する点火信号及び判別用パルス信号の波形の一例を示すグラフである。

本発明は、簡単な構成によって精度よく判定を行うことができるエンジンの行程判別装置を提供する課題を、トランジスタ点火装置が圧縮行程及び排気行程で出力する点火信号の電圧を比較すること、また、この電圧差に応じて異なった個数のパルスが生成される判別回路を用いることによって解決した。

以下、本発明を適用したエンジンの行程判別装置の実施例について説明する。
実施例の行程判別装置は、例えば、産業用、レジャー用、ガーデニング用などに利用される４ストローク単気筒のガソリンエンジンである。
このエンジンは、燃焼室に設けられた点火プラグに点火信号を供給するトランジスタ点火装置を備えている。

図１は、実施例の行程判別装置の回路図である。
なお、図１には、各処理段階における点火信号波形の一例を併記している。
行程判別装置１は、一例として、入力端子Ｔ１、出力端子Ｔ２、ダイオードＤ、コンデンサＣ１，Ｃ２、抵抗Ｒ１，Ｒ２，Ｒ３，Ｒ４，Ｒ５、フォトカプラＰＣ、コンパレータＣｏ、及び、例えば直流５Ｖの電源を、図１に示すように接続して構成されている。

入力端子Ｔ１から入力された点火信号は、ダイオードＤにおいて整流され、抵抗Ｒ１を通過した後、コンデンサＣ１、Ｃ２にチャージされることによって平滑化される。
その後、抵抗Ｒ２を通過して、フォトカプラＰＣに入力される。
フォトカプラＰＣの出力は、５Ｖの電源に抵抗Ｒ３を介して接続されるとともに、コンパレータＣｏの反転入力（Ｖ−）端子に入力される。
一方、コンパレータＣｏの非反転入力（Ｖ＋）端子は、５Ｖの電源に直列に順次接続された抵抗Ｒ４と抵抗Ｒ５との中間部に接続されている。

図２は、トランジスタ点火装置が出力する点火信号及び判別用のパルス信号の波形の一例を示すグラフである。
図２において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。
図２に示すように、点火信号は、圧縮行程及び排気行程でそれぞれ出力されるとともに、各行程における信号に着目すると最初のピークの後一旦電圧が低下し、再び電圧が増加するスパイク状の波形を示す。
実施例の行程判別装置は、この２つ目のスパイク波形のピーク時の電圧に基づいて行程判別を行なうものである。
排気行程と圧縮行程とでは、エンジンの回転速度が異なることから、図２に示すように、２つ目のスパイク波形のピーク電圧が異なった波形を示す。
このとき、適切な閾値（スレッショルド）Ｔを設けると、電圧がこの閾値Ｔを越えた回数によって、排気行程と圧縮行程とを判別することが可能となる。

すなわち、図２に示すように、圧縮行程においては電圧が閾値Ｔを２回超過し、排気行程においては電圧が閾値Ｔを１回超過するように閾値を設定するとともに、図１に示す回路の各コンデンサＣ１，Ｃ２の容量、各抵抗Ｒ１〜Ｒ５の抵抗値をこのような閾値に合わせて適宜設定することによって、電圧が閾値Ｔを越えたときのみ出力端子Ｔ２からパルス状の判別信号が出力されるようにすることができる。

図１に示すように、コンパレータＣｏに入力される信号波形は、圧縮行程においては上部が欠けた（凹んだ）波形となり、このときコンパレータＣｏは２個のパルスを出力するように調整される。
また、コンパレータＣｏに入力される信号波形は、排気行程においては上部がフラットな波形となり、このときコンパレータＣｏは１個のパルスを出力するように調整される。

そして、出力端子Ｔ２から出力されるパルスの個数を、マイコン等によってカウントすれば、圧縮行程（パルス数＝２）と排気行程（パルス数＝１）の判別が可能となる。
なお、このような行程判別は、例えばエンジン始動後に所定の回転数域において一度判定成立すれば、その後の判定は不要である。

以上説明したように、本実施例においては、圧縮行程と排気行程の点火信号の電圧波形の違いを利用し、圧縮行程と排気行程とで異なった個数のパルスが出力されるよう判別用の回路を構成することによって、行程判別用としてセンサを設けたり、タイマ機能を有するマイコン等を利用することなく、簡単な構成によって精度よく行程判別を行なうことができる。
このような行程判別を行なうことによって、いわゆる捨て火を無くし、アフターバーンを防止することができる。
また、燃料噴射においても毎回噴射とする必要がなくなることから、燃費、機関効率の向上を図ることができる。

（変形例）
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、実施例の回路構成は一例であって、点火信号の電圧に基づいて行程を判別する具体的な回路構成は、適宜変更することが可能である。

１ 行程判別装置
Ｔ１ 入力端子
Ｔ２ 出力端子
Ｒ１〜Ｒ５ 抵抗
Ｃ１，Ｃ２ コンデンサ
Ｄ ダイオード
ＰＣ フォトカプラ
Ｃｏ コンパレータ
Ｔ 閾値

Claims (2)

1. トランジスタ点火装置を有する単気筒４ストロークエンジンの行程を判別するエンジンの行程判別装置であって、
   前記トランジスタ点火装置が圧縮行程及び排気行程において出力する点火信号の電圧が、前記エンジンの回転速度の変化に起因して所定の閾値を上回る回数の変化に基づいて、前記圧縮行程と前記排気行程とを判別すること
   を特徴とするエンジンの行程判別装置。
2. 前記点火信号の電圧に応じて異なった個数のパルスを生成する判別回路を有すること
   を特徴とする請求項１に記載のエンジンの行程判別装置。
   

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