JP6132250B1 - 単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法 - Google Patents

単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法 Download PDF

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Abstract

【課題】センサーレスでありながら4ストロークエンジンの圧縮工程と排気工程とを識別を判断する制御方法の提供。【解決手段】ピストン速度を点火コイルによる誘起電圧として検出し、誘起電圧を波形成形した矩形波の回転検出信号から検出し得るパルス間隔を判別区間とし、今回回転運動が終了し、次回回転運動の開始時に、今回のいずれかの判別区間と今回最終判別区間の今回比を算出し、次に、得られた今回比を、前回のいずれかの判別区間と前回最終判別区間から求める前回比と比べ、その変化比率Aが閾値A以下で、且つ、次回回転運動時が終了し、次々回回転運動の開始時に、次回のいずれかの判別区間と次回最終判別区間の次回比を算出し、得られた次回比を、今回回転運動時に得られる今回比と比べ、その変化比率Bが閾値B以上の場合、次々回回転運動は捨て火と判定する単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法。【選択図】 図4

Description

本発明は、単気筒4ストロークエンジンの制御方法に関し、詳細には、センサーレスでの単気筒4ストロークエンジンの制御方法に関するものである。
4ストロークエンジンは、吸気工程→圧縮工程→爆発工程→排気工程の各工程をシリンダ内でピストンが2回上下する(2回転)間に行っている。そしてイグニッションコイル(点火コイル)は、各工程には関係なく、フライホイールも回転毎に毎回点火が行われ圧縮工程の終了付近(有効な点火)と排気工程の終了付近(無駄火又は捨て火)で点火している。排気工程では、圧縮圧が低く、通常燃焼室内で爆発することはないものの、吸気弁と排気弁が共に開放されている領域であり、新しい燃料ガスの進入や残存の未燃ガスの滞留等、特異な条件で着火する場合があり、この時、排気弁が開いているため火炎が排気系やマフラーに到達し、マフラー内で爆発音を発するアフターバーン等というような不快な現象を生じる。
このような不快な現象を回避するため、従来から4ストロークエンジンの圧縮工程と排気工程とを識別し、排気工程で発生している無駄火(捨て火)をなくすことが行われてきた。
排気工程を判別する技術としては、燃料噴射型のエンジンでは、燃料を噴くタイミングが重要のため、シリンダスピードの検出にクランク角センサー又はエンコーダーを設け、1°毎の角速度を求めて、シリンダ位置と圧縮・排気工程を判別することが開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、単気筒汎用エンジンでは、ピックアップコイルを使用して回転周期を求め、連続する2回の周期を比較して、周期が短い時の点火を有効な点火、長い方を捨て火(無駄火)と判断することが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2009−85085号公報 特開2009−150295号公報 特開2000−282945号公報
しかしながら、特許文献1及び2のようにセンサー類を用いるものにあっては、各種センサー装置の配置によりエンジン装置が複雑となる傾向があり、コスト増の要因となってしまう。また、特許文献3のような技術にあっては、始動時などの燃焼が安定して爆発しなかった場合や、使用者がスロットルを操作して加速・減速した場合の負荷の急変といった場合に誤判定してしまうという課題があった。
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、創案されたもので、センサーレスでありながら4ストロークエンジンの圧縮工程と排気工程とを識別を判断することを技術的課題とし、もって、排気工程で発生している捨て火(無駄火)なくしてアフターバーン等の不快な現象を解消することを目的とする。
上記課題を解決するための手段の主たる構成は、
単気筒4ストロークエンジンにおける圧縮工程と排気工程とを判別する単気筒4ストロークエンジンの制御方法において、
該単気筒4ストロークエンジンのクランク軸に直結したフライホイールの外周に設けられた磁石によって、ピストン速度を点火コイルに誘起された電圧として検出し、該誘起電圧を波形成形した矩形波の回転検出信号(INT信号)から検出し得る一定のパルス間隔を判別区間(CycleNseg)と定義し、
該判別区間の最終区間を最終判別区間(CycleNseg Fi)とし、
今回のピストン回転運動が終了し、次回のピストン回転運動が開始される時の該INT信号の次回INT1時に、今回のいずれかの判別区間(CycleNseg X)と今回の最終判別区間(CycleNseg Fi)の今回比(CycleNseg X/CycleNseg Fi)を算出し、
次に、得られた今回比を、前回のピストン回転運動時における前回のいずれかの判別区間と前回の最終判別区間から算出される前回比と比較し、その数値である変化比率A(前回比/今回比)が閾値A以下であり、
且つ、次回のピストン回転運動時が終了し、次々回のピストン回転運動が開始される時の該INT信号の次々回INT1時に、次回のいずれかの判別区間と次回の最終判別区間の次回比を算出し、得られた次回比を、今回ピストン回転運動時に得られる今回比と比較し、その数値である変化比率B(今回比/次回比)が閾値B以上の場合、
次々回のピストン回転運動は捨て火になると判定する
ことを特徴とする単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法である。
上記方法によって、始動時などの燃焼が安定して爆発しなかった場合や使用者がスロットルを操作して加速・減速した場合の負荷の急変といった場合であっても4ストロークエンジンの圧縮工程と排気工程とを確実に識別することができるため、排気工程で発生している捨て火(無駄火)を無くすことが達成できる。
本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、点火コイルが容量放電式の場合、前記いずれかの判別区間(CycleNseg X)は点火信号が発せられるタイミングの点火判別区間CycleNseg2であり、得られる比は点火判別区間/最終判別区間のCycleNseg2/CycleNseg3とするものである。
変化比率を求めるにあたり、容量放電式での点火信号が発せられるタイミングの点火判別区間CycleNseg2と最終判別区間CycleNseg3から、点火判別区間/最終判別区間のCycleNseg2/CycleNseg3の比を用いることによって、捨て火を確実に判定することが可能となった。
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、閾値Aが0.95であり、かつ閾値Bが1.00とするものである。
容量放電式において閾値A0.95、閾値B1.00とするのものにあっては、捨て火を確実に判定することができる。
本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、点火コイルが誘導放電式の場合、前記いずれかの判別区間(CycleNseg X)は開始区間である開始判別区間CycleNseg0であり、得られる比は開始判別区間/最終判別区間のCycleNseg0/CycleNseg3とするものである。
変化比率を求めるにあたり、誘導放電式での開始判別区間CycleNseg0と最終判別区間CycleNseg3から、開始判別区間/最終判別区間のCycleNseg0/CycleNseg3の比を用いることによって、捨て火を確実に判定することが可能となった。
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、閾値Aが0.90であり、かつ前記閾値Bが1.10とするものである。
誘導放電式において閾値A0.90、閾値B1.10とするのものにあっては、捨て火を確実に判定することができる。
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、センサーレスでありながら始動時などの燃焼が安定して爆発しなかった場合や使用者がスロットルを操作して加速・減速した場合の負荷の急変といった場合であっても4ストロークエンジンの圧縮工程と排気工程とを識別を判断することができ、よって排気工程で発生している捨て火(無駄火)を無くすことが可能となった。
また、捨て火を無くしたことによって、排気系やマフラー内で爆発音を発するアフターバーン等というような不快な現象を防止することができる。
更には、捨て火を無くすことにより、従来と比較して点火プラグへの放電回数は半分となったことによって点火プラグ寿命期間が2倍に延び、かつ誘導放電式では点火制御用に半導体素子の負荷が半分になり発熱が低下し、容量放電式では、従来の1回充電1回放電に対し、2回充電1回放電となるため、放電エネルギーが増加する等の効果も得られる。
単気筒4ストロークエンジンの概略構成を示す概略図である。 本発明で用いる点火コイルの誘導放電式の回路ブロック図である。 本発明で用いる点火コイルの容量放電式の回路ブロック図である。 本発明における容量放電式のタイミングチャートである。 容量放電式における始動時での回転数と点火信号のチャートである。 容量放電式におけるアイドルでの回転数と点火信号のチャートである。 容量放電式の回転検出信号のタイミングチャートである。 容量放電式におけるアイドルから加速したときの回転数と点火信号のチャートである。 本発明における誘導放電式のタイミングチャートである。 誘導放電式の回転検出信号の始動時でのタイミングチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
本発明で用いられる単気筒4ストロークエンジンは、例えば、チェーンソーや草刈り機などのガーデニング用、発電機などの産業用又はレジャー用に用いられるものである。4ストロークエンジンは、圧縮工程→点火工程→爆発工程の工程では、シリンダ内の空気を圧縮するためシリンダトップ(TDC)に近づくにつれピストンの速度が徐々に遅くなり、シリンダトップ付近での点火による爆発後、急激にピストンのスピードが速くなるのに対し、排気工程では排気弁が開いていて、シリンダ内の空気の圧縮が無くほぼ等速でピストンが移動する。本発明はこのことに着目し、シリンダトップ前後のピストンの速度を、点火コイル(イグニッションコイル)に誘起される電圧波形を波形整形して作成した回転検出信号(INT信号)を使って求め、そのINT信号比を前回の圧縮工程と今回の圧縮工程の前後する2回の回転において比較して捨て火判定するようにしたものである。なお、本発明においては電圧波形を使用するにあたり従来の回路構成であり、新たにセンサー等を配置しておらず、かつ追加の回路もない。
詳しくは、本発明では捨て火判定を、圧縮工程での圧縮による減速と、爆発工程での爆発による加速を比率で捉え、排気時のほぼ等速の状態と判別することによって行っている。このため、単純に回転毎の速度変化で判定すること、又は爆発後の速度変化を前回の排気時速度と比較判定することの従来技術に対し、本発明では圧縮による速度減速分を加味している分、誤判定が少なくなる。
シリンダ内のピストンの上下運動は、クランク軸により回転運動に変換される。そして、図1に示されるようにクランク軸に接続されたフライホイールに設けられた磁石により点火コイルには誘起電圧が発生し、それによって高電圧を点火プラグに発生させて点火を行う。なお、点火コイルには容量放電式(CDI)と誘導放電式(TCI)の2種が広く用いられる。
誘導放電式(TCI)は、図2に示されるような回路ブロックを有する。そして、誘導放電式は、1次コイル1と2次コイル2で構成されるコイル部3と、1次コイルの正方向電圧を遮断・開放するパワートランジスタ等の半導体で構成される点火回路部12と、1次コイル1の負方向電圧を波形整形し、回転検出信号としてマイコン(演算部11)に入力する回転検出回路部13とで構成される。マイコン(演算部11)は、回転信号を基に回転速度を求め、点火タイミングを演算し、点火回路部12に点火信号を出力する。点火回路部12では予めパワートランジスタ等の半導体をオンして1次コイル1を遮断し、1次コイル1にエネルギーを溜めておき、上記点火信号によりパワートランジスタ等の半導体をオフして1次コイル1を開放することにより、2次コイル2に高電圧を発生させ、点火プラグに点火する。そのため、点火コイルに誘起された誘起電圧を遮断開放して得られる高電圧を最も効率良く爆発させることができるタイミングで点火プラグに供給する必要があるため、シリンダトップ(TDC)直前に電圧が発生する位置に、点火コイルは設置される。
容量放電式(CDI)は、図3に示されるような回路ブロックを有する。容量放電式のイグニッションコイルは、1次コイル1と2次コイル2で構成されるコイル部3と、点火回路部のコンデンサを充電するエキサイタコイル4とで構成される。エキサイタコイル4は誘起される電圧の正方向の電圧を、点火回路部12の点火用コンデンサに充電し、負方向の電圧は回転検出回路部13で波形整形され、回転信号として、マイコン(演算部11)に入力される。マイコン(演算部11)では回転信号を基に回転速度を求め、点火タイミングを演算し、回転信号を起点としたタイマーを求めて起動し、タイムアップした時、点火回路部12に点火信号を出力する。点火回路部12では点火用コンデンサに接続された、サイリスタ等の半導体を点火信号によりオンさせ、1次コイル1に放電する。これにより2次コイル2に高電圧を誘起させ、点火プラグに点火する。
容量放電式の場合、点火コイル内のエキサイタコイル4(充電用コイル)に接続されたコンデンサに一旦誘起された電圧を充電しておき、これを任意のタイミングで1次コイル1に放電することによって、点火プラグに高圧を発生させる。このため、点火コイルの設置位置は、特に誘導式のように限定はされることはない。なお、容量放電式でも、点火タイミングは点火コイルに誘起される電圧を使い周期計測用の信号を作り、これにより回転スピードを求め、点火タイミングを求めている。点火タイミングは、上記信号を起点としたタイマーを使ってセットされるので、回転速度が変動する中で安定的に点火するためには、タイマー時間はより短く設定することが有利であるため、上記のようなTDC直前の位置に設置されることが多い。
本発明においては、TDC付近のピストン速度の変化を点火コイルに誘起される電圧を使って計測し、それによって制御しようとするものである。そのため、上記容量放電式及び誘導放電式共に点火コイルを設置する位置が重要となり、シリンダトップの位置(TDC)を0°とするとそれよりも前(BTDC;Before TDC、)で点火できる位置に置く必要があり、詳細にはTDCより5°〜30°前の範囲が好ましい。
上述のように本発明においては判定のための速度検出を、点火コイルに誘起される電圧波形を使用して行っており、フライホイールに2極の磁石を備えた容量放電式でのタイミングチャートを図4に示す。この波形を波形整形した矩形波の回転検出信号(INT信号)を開始から順にINT1、INT2、INT3及びINT4とし、一定のパルス間隔であるINT−INT間を判別区間(CycleNseg)と定義した。つまり、INT1から次回INT1間はピストンの1回転分に相当し、これを周期スピードCycleNseg Allとし、そしてINT1−INT2間のパルス間隔をCycleNseg0とし、INT2−INT3間のパルス間隔をCycleNseg1とし、INT3−INT4間のパルス間隔をCycleNseg2及びINT4−次回INT1間のパルス間隔をCycleNseg3とした。点火プラグへの点火信号はシリンダトップ(TDC)の直前である。
容量放電式において、図4に示されるようにTDCはINT4の後になるので、CycleNseg1及びCycleNseg2が圧縮の影響を受け、特に圧縮が進むCycleNseg2の方が圧縮の影響を受け易く、判別区間の最終区間であるCycleNseg3は爆発後の加速の影響を一番受けることが予想される。
そして、本発明での捨て火の判定方法は、
該判別区間の最終区間を最終判別区間(CycleNseg Fi)とし、
今回のピストン回転運動が終了し、次回のピストン回転運動が開始される時のINT信号の次回INT1時に、今回のいずれかの判別区間(CycleNseg X)と今回の最終判別区間(CycleNseg Fi)の今回比(CycleNseg X/CycleNseg Fi)を算出し、
次に、得られた今回比を、前回のピストン回転運動時における前回のいずれかの判別区間と前回の最終判別区間から算出される前回比と比較し、その数値である変化比率A(前回比/今回比)が閾値A以下であり、
且つ、次回のピストン回転運動時が終了し、次々回のピストン回転運動が開始される時の該INT信号の次々回INT1時に、次回のいずれかの判別区間と次回の最終判別区間の次回比を算出し、得られた次回比を、今回ピストン回転運動時に得られる今回比と比較し、その数値である変化比率B(今回比/次回比)が閾値B以上の場合、
次々回のピストン回転運動を捨て火と判定する方法である。
本発明の第1の実施形態において、単気筒4ストロークエンジン(点火コイルは容量放電式)を用いて、始動時における電圧波形を測定した。その際の測定データを表1に示す。
表1中のCycleNseg2/CycleNseg3、CycleNseg1/CycleNseg3、CycleNseg All/CycleNseg3の変化比率は圧縮・排気工程毎に、交互に変化していることが読み取れる。CycleNseg1/CycleNseg3、CycleNseg All/CycleNseg3の変化比率に捨て火判定に結びつく相関関係は見て取れるものの、CycleNseg1/CycleNseg3では数値のバラツキが大きく、CycleNseg All/CycleNseg3では爆発工程と排気工程の数値の差が小さく捨て火判定が難しい。容量放電式においては、判別区間として点火信号が発せられるタイミングの点火判別区間CycleNseg2を用いた、CycleNseg2/CycleNseg3がやはり一番捨て火判定に適していることが判る。
上記CycleNseg2/CycleNseg3による捨て火判定方法を、以下に示す。
(1)CycleNseg2/CycleNseg3の今回比を、次回INT1検出時に算出する。
(2)得られた今回比CycleNseg2/CycleNseg3を、前回のピストン回転運動時に得られた前回比と比較し、その数値である変化比率A(前回比/今回比)を求める。
(3)そして、次回のピストン回転運動時が終了し、次々回のピストン回転運動が開始される次々回INT1検出時に、次回比CycleNseg2/CycleNseg3を、今回比と比較し、その数値である変化比率B(今回比/次回比)を求める。
(4)変化比率Aがある閾値A(パラメータA)以下であり、且つその次回回転での変化比率Bがある閾値B(パラメータB)以上となった時、次々回のピストン回転運動は捨て火になると判定する。
なお、閾値(パラメータ)A及びBはエンジンの圧縮比に応じて調整するものであり、本実施形態において閾値Aは0.95、閾値Bは1.00である。
(5)次々回INT1検出時の時点で次々回のピストン回転運動が捨て火になると判定した場合、捨て火フラグを演算部に設定する。捨て火フラグが有る時、それ以降の排気工程において点火しないように、演算部から点火回路部に信号を送り、失火させる。
(6)失火させた排気工程の後は、圧縮工程であるので点火させることを演算部が記憶し、点火→失火→点火→失火→・・・の順にエンジン停止までシーケンスを継続する。
(7)誤判定対策として捨て火確定後も、毎回捨て火検出は行い、上記の判定も併せて実施する。
(8)利用者によるエンジン停止操作、過回転防止のリミッター作動又はオイルセンサー判定などの安全装置によるエンジン停止信号後もシーケンスは継続して行われ、ピストン回転運動が止まるエンジン停止までシーケンスは継続され続ける。
そして、本発明においては始動から数回転、上記実施形態では始動から10回転目で排気工程での捨て火判定が可能となり、点火→捨て火判定→点火→失火→点火→失火の順に不具合無く継続することが可能であることが判る。このエンジン始動時の回転数(縦軸、rpm)と経過時間(横軸、ms)における、捨て火判定との関係を示す図面を図5として示す。図5において、エンジン始動から10回転目で捨て火判定が確定され、その後の排気工程において点火しない失火となっており、始動時の燃焼が安定して爆発し難い状況下であっても速やかに捨て火判定を行うことが可能である。
上記エンジン始動後の電圧波形の上記測定方法と同様にしてアイドル状態で得られた測定データを表2に示し、この時の測定データに基づく図面を図6に示し、そしてこの時測定データの一部の回転検出信号のタイミングチャートを図7に示す。
表2において、シーケンスは実行され排気工程毎に“失火”である様子が見られる。そして図6においては、アイドル状態では回転数がほぼ一定であっても捨て火シーケンスで点火信号を発しない“失火”を継続していることが判る。
上記エンジン始動後の電圧波形の上記測定方法と同様にしてアイドル状態からの増速状態にて得られた測定データを表3に示し、この時の測定データに基づく図面を図8に示す。図8において、回転数が一定のアイドル状態から回転数が増加していく様子が判る。
表3においては、Revolution
Count 972まではアイドル状態としてシーケンスは実行され排気工程毎に“失火”の信号が発せられされ、回転数が急増したRevolution
Count 974,975の結果から、Revolution Count 976では捨て火判定が行われ、回転数が落ち着いたRevolution Count 982からは、“失火”の信号が発せられシーケンスが継続されていることが判る。
従来技術では、このようにスロットルを操作して加速した場合などの負荷の急変といった場合には誤作動することがあるが、本実施形態においては誤作動することなく確実に捨て火判定を実行することができる。
次に、本発明の第2の実施形態として、点火コイルに誘導放電式を用いた形態を示す。誘導放電式でのタイミングチャートを図9に示す。誘導放電式では、エキサイタコイル(充電用コイル)がないため、点火信号のタイミングが容量放電式とは異なり、それに伴いTDCはINT3−INT4間となっている。
第1の実施形態での点火コイルを誘導放電式に変更した以外は、第1の実施形態と同様にしてエンジン始動時における測定を行った時の測定データを表4に示す。誘導放電式におけるパラメータBは0.90であり、パラメータBは1.10である。
表4において、判別区間が開始される開始判別区間CycleNseg0を用いた開始判別区間/最終判別区間のCycleNseg0/CycleNseg3と、点火信号が発せられるタイミングの点火判別区間CycleNseg1を用いた、CycleNseg1/CycleNseg3の変化比率に捨て火判定に結びつく相関関係は見て取れる。捨て火判定にはCycleNseg1/CycleNseg3に比べ、CycleNseg0/CycleNseg3の方が数値のバラツキが小さいため速やかに捨て火判定を行えることが判る。
そして、CycleNseg0/CycleNseg3の変化比率からは、エンジン始動後わずか4回転目までの変化比率の結果から捨て火判定をし、5回転目において失火させていることが読み取れる。
その際の回転検出信号のタイミングチャートを図10に示す。図10において、上から二番目の1次コイル電流と一番下の点火信号の波形を見ると、エンジン始動から5回転目で点火信号波形が表れていないことから、該工程において点火信号を発しない“失火”を行ったことが判る。
本発明では捨て火判別にピストンの速度変化を使用しているため、点火コイルの点火方式である容量式、誘導式に関係なく実施が可能である。更に、捨て火点火が無くなることにより、
(1)捨て火点火を行わないため点火プラグの寿命が2倍になる、
(2)容量式(CDI)の場合には点火プラグへの充電が今までの2回から1回となるため、放電エネルギーが上がる、
(3)誘導式の場合にはコイルを遮断する半導体が今までの2回から1回の遮断になるため、発熱量が下がる、
といった効果を得ることが可能となる。
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態に特定されるものではない。
例えば、フライホイールに磁石を2極備えたが、4極とする構造であっても構わない。
本発明の単気筒4ストロークエンジンの制御方法は、センサーレスでありながら圧縮工程と排気工程とを識別を判断することができ、よって排気工程で発生している捨て火(無駄火)を無くすことができるため4ストロークエンジンとして広い分野での適用を可能とすることができる。
1 ;1次コイル
2 ;2次コイル
3 ;コイル部
4 ;エキサイタコイル
11 ;演算部
12 ;点火回路部
13 ;回転検出回路部
14 ;電源回路部

Claims (5)

  1. 単気筒4ストロークエンジンにおける圧縮工程と排気工程とを判別する単気筒4ストロークエンジンの制御方法において、
    該単気筒4ストロークエンジンのクランク軸に直結したフライホイールの外周に設けられた磁石によって、ピストン速度を点火コイルに誘起された電圧として検出し、該誘起電圧を波形成形した矩形波の回転検出信号(INT信号)から検出し得る一定のパルス間隔を判別区間(CycleNseg)と定義し、
    該判別区間の最終区間を最終判別区間(CycleNseg Fi)とし、
    今回のピストン回転運動が終了し、次回のピストン回転運動が開始される時の該INT信号の次回INT1時に、今回のいずれかの判別区間(CycleNseg X)と今回の最終判別区間(CycleNseg Fi)の今回比(CycleNseg X/CycleNseg Fi)を算出し、
    次に、得られた今回比を、前回のピストン回転運動時における前回のいずれかの判別区間と前回の最終判別区間から算出される前回比と比較し、その数値である変化比率A(前回比/今回比)が閾値A以下であり、
    且つ、次回のピストン回転運動時が終了し、次々回のピストン回転運動が開始される時の該INT信号の次々回INT1時に、次回のいずれかの判別区間と次回の最終判別区間の次回比を算出し、得られた次回比を、今回ピストン回転運動時に得られる今回比と比較し、その数値である変化比率B(今回比/次回比)が閾値B以上の場合、
    次々回のピストン回転運動は捨て火になると判定する
    ことを特徴とする単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法。
  2. 前記点火コイルが容量放電式の場合、前記いずれかの判別区間(CycleNseg X)は点火信号が発せられるタイミングの点火判別区間CycleNseg2であり、得られる比は点火判別区間/最終判別区間のCycleNseg2/CycleNseg3である請求項1に記載の単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法。
  3. 前記閾値Aが0.95であり、かつ前記閾値Bが1.00である請求項1又は2に記載の単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法。
  4. 前記点火コイルが誘導放電式の場合、前記いずれかの判別区間(CycleNseg X)は開始区間である開始判別区間CycleNseg0であり、得られる比は開始判別区間/最終判別区間のCycleNseg0/CycleNseg3である請求項1に記載の単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法。
  5. 前記閾値Aが0.90であり、かつ前記閾値Bが1.10である請求項1又は4に記載の単気筒4ストロークエンジンの工程判別方法。
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JP2009236036A (ja) * 2008-03-27 2009-10-15 Aisin Seiki Co Ltd 単気筒4サイクルエンジン
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