JP2004044401A - 内燃機関の失火検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の失火検出装置において、半失火の誤検出を低減し、以って失火検出の精度を高めることを課題とする。
【解決手段】内燃機関の失火検出装置において、ある気筒の爆発行程においてクランクシャフトの角速度が上昇したか否かを判断し、クランクシャフトの角速度が上昇した場合は当該気筒において失火が発生していないと認定することを特徴とする内燃機関の失火検出装置である。
このように、爆発行程中はクランクシャフトの角速度が上昇するという半失火の特徴を的確に把握することにより、失火と半失火を適切に区別して把握することができ、失火検出精度の向上が図ることができる。
【選択図】 図4
【解決手段】内燃機関の失火検出装置において、ある気筒の爆発行程においてクランクシャフトの角速度が上昇したか否かを判断し、クランクシャフトの角速度が上昇した場合は当該気筒において失火が発生していないと認定することを特徴とする内燃機関の失火検出装置である。
このように、爆発行程中はクランクシャフトの角速度が上昇するという半失火の特徴を的確に把握することにより、失火と半失火を適切に区別して把握することができ、失火検出精度の向上が図ることができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は内燃機関の失火検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内燃機関の燃焼室に供給された燃料が燃焼しない状態(以下、失火という)を種々の方法で検出し、失火が頻繁に生じる状況であれば、使用者にその検出結果について了知せしめ、内燃機関の調整・修理を促していた。
なぜなら、失火が生じると内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるHC、COの成分が増加することになるが、斯かる失火が頻繁に生じる状態を放置しておくのは環境保護の観点から好ましくないためである。
【0003】
多気筒内燃機関のある気筒において失火が生じると、その気筒では燃焼による爆発力が得られず、ピストンを下方に付勢する力が働かないことになる。また、クランクシャフトはピストンの下降力を受けて回転するため、当該爆発行程中に回転力を受けることができない。したがって、クランクシャフトが一定のクランク角度(CA)を回転するのに要する時間が正常燃焼の場合に比べて相対的に長くなる。即ち、クランクシャフトの角速度が低下し、その爆発行程における機関回転数が低下する。
この失火による機関回転数の変動に着目した失火検出方法(又は装置)、即ち、ある気筒の爆発行程中においてクランクシャフトの角速度が他の気筒に比べて相対的に低下した場合には当該気筒において失火が生じたと判断する失火検出方法(又は装置)が公知である(特開平06−307284号)。
【0004】
また、検出された失火の情報を使用者に知らせる方法としては、例えば、点火数に対する失火の検出数の割合が所定レベル以上の場合に警告灯を点灯させるものが知られている。
【0005】
しかし、上記のような技術には、次のような問題があった。冷間時などの内燃機関が始動し難い状態においては、燻り等のような所望の爆発力を生じない燃焼(以下、半失火)が起きることがある。このような半失火であっても、燃焼自体は行われているため、排出されるHC、COは正常燃焼時と同程度となる。したがって、半失火が生じることによって特に排気ガスに悪影響を及ぼすことがないため、半失火を失火として検出する必要性はそれほど高いとはいえない。
【0006】
しかし、半失火の場合は所望の爆発力が得られないため、ピストンを下方へ押す力が弱まり、クランクシャフトの角速度の低下を招くことになる。その結果、爆発行程中のクランクシャフトの角速度が気筒間で相対的に変動するため、上記のような従来の失火検出方法(又は装置)では、半失火を失火として検出してしまう場合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、斯かる問題に鑑みて、内燃機関の失火検出装置において、半失火の誤検出を低減し、以って失火検出の精度を高めることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決する手段として、請求項1に係る発明は、内燃機関の失火検出装置において、ある気筒の爆発行程においてクランクシャフトの角速度が上昇した場合は当該気筒において失火が発生していないと認定することを特徴とする内燃機関の失火検出装置である。
【0009】
また、おなじ課題を解決する手段として、請求項2に係る発明は、 内燃機関の失火検出装置において、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角検出手段と、前記クランク角検出手段からクランクシャフトが所定角度回転する毎に出力される信号からクランクシャフトの角速度を算出する角速度算出手段と、前記クランク角検出手段から爆発行程の経過時間を算出する経過時間算出手段と、該経過時間算出手段から算出された経過時間の偏差を算出する偏差算出手段と、該偏差算出手段から得られた偏差が予め設定された失火判定定数を越えるか否かを判定する第1の判定手段と、爆発行程中に前記角速度算出手段において得られた前記角速度の一時的上昇の有無を判定する第2の判定手段と、を具備し、前記第1の判定手段において前記偏差が前記失火判定定数を越えた場合に前記第2の判定手段において前記角速度の一時的上昇が無いと判定された場合は失火が生じたことを検出する失火検出装置である。
【0010】
【発明の実施形態】
図1は内燃機関1の概略図である。内燃機関1は1番気筒#1気筒、2番気筒#2気筒、3番気筒#3気筒、4番気筒#4気筒からなる4つの気筒を具備し、それぞれの気筒は一方向に並設されている。この内燃機関1の点火順序は#1気筒、#3気筒、#4気筒、#2気筒の順に行なわれる。各気筒内には気筒内を往復運動可能なピストン2が挿入されている。このピストン2にはコンロッド3が連結され、そのコンロッド3にはクランクシャフト4が連結される。そして、ピストン2の往復運動がコンロッド3とクランクシャフト4によって回転運動に変換される。
【0011】
クランクシャフト4の近傍にはクランク角センサ(NEセンサ)5が取付けられている。このNEセンサ5はクランクシャフト4の回転角を検出するためのセンサであり、請求項2に記載のクランク角検出手段に相当する。クランクシャフト4が所定CA回転する毎にパルス(NE信号)を出力する。例えば、このようなNEセンサには、クランクシャフト4に同期して回転し、外周に等間隔に形成された凸形状を有しているロータ(欠歯があってもよい)に対し、その近傍に位置するようにクランクケースに設置され、前記凸形状がNEセンサ近傍を通過する際に、NE信号を発するピックアップ式のものがある。本実施形態においては、クランクシャフト4が30°CA回転する毎にNE信号を発する。
【0012】
内燃機関には図示しない気筒判別センサ(Gセンサ)が取付けられている。このGセンサはNEセンサ5を代用してもよいし、従来から知られているカムシャフト近傍に取付けるものを用いてもよい。カムシャフト近傍に取付けるタイプのGセンサは、クランクシャフト4が2回転(720°CA)するごとにパルス(G信号)を出力するものである。本実施例におけるGセンサは、#1気筒の爆発行程上死点に達する毎にG信号を出力する。NEセンサ5とGセンサはともに内燃機関を制御するECUに接続される。
【0013】
NE信号がECUに入力されると、ECU内におけるクランクカウンタ(以下、CAカウンタ)がインクリメントされる。即ち、クランクシャフト4が30°CA回転する毎にCAカウンタが1つインクリメントされる。そして、CAカウンタはG信号の入力により0にリセットされる(図2、図3、図4)。
よって、本実施例のようにGセンサが#1気筒の爆発行程上死点でG信号を発するように設定しておけば、CAカウンタが0となる瞬間は#1気筒が爆発行程上死点(#3気筒が爆発行程下死点)にあり、CAカウンタが6となる瞬間は#3気筒が爆発行程上死点(#4気筒が爆発行程下死点)にあり、CAカウンタが12となる瞬間は#4気筒が爆発行程上死点(#2気筒が爆発行程下死点)にあり、CAカウンタが18となる瞬間は#2気筒が爆発行程上死点(#1気筒が爆発行程下死点)にあることが識別できる(図2、図3、図4)。
【0014】
図2、図3、図4に示されたtは、各気筒の爆発行程上死点から爆発行程下死点まで、クランクシャフト4が30°CA回転するのに要した(NE信号の出力間隔)時間t(i)(以下、CA所要時間という)をプロットしたものである。即ち、CAカウンタがインクリメントされて次にCAカウンタがインクリメントされるまでの時間を示している。iはCAカウンタに相当する値であり、例えば、CAカウンタが8を示している間の時間がCA所要時間t(8)となる。このCA所要時間tは後述する半失火の判定に用いられる情報であるためECUに記憶される。
なお、CA所要時間tの逆数は、クランクシャフトの角速度に相当するため、失火や半失火の判定に用いられる情報として、CA所要時間tを用いてもよいし、クランクシャフトの角速度を用いてもよい。クランクシャフトの角速度はECU内において30°CA/CA所要時間tとして求められる。したがって、ECUは請求項2に記載のクランクシャフトの角速度算出手段に相当する。
【0015】
図2は、正常燃焼の場合を示すグラフである。この場合のCA所要時間tは爆発行程上死点から徐々に減少し、爆発行程上死点と爆発行程下死点の間ででCA所要時間tが最小の値をとり、そこから再び爆発行程下死点に向けてCA所要時間tが増加していく。
このグラフのようにCA所要時間tが爆発行程中に一旦減少するということは、爆発行程中にクランクシャフトの角速度が一旦上昇することを示している。
【0016】
図3は#3気筒で失火が生じた場合のグラフを示す。この場合、#3気筒の爆発行程において、ピストン2は下降力を得ることができないため、クランクシャフト4も回転力を得ることができず、クランクシャフト4の角速度が低下していく。したがって、失火が生じた#3気筒においては、爆発行程上死点から爆発行程下死点までCA所要時間tが単調に増加することになる。
そして、次の点火順序にあたる#4気筒において正常な燃焼が行なわれることによって、再びクランクシャフト4の角速度が上昇し、CA所要時間tが徐々に短くなる。その後の点火順序に当たる#2気筒、#1気筒において正常燃焼が行われると、再びグラフの形状は#1気筒区間のグラフ形状に近づいていく。
【0017】
次に、図4に#3気筒において半失火が生じた場合のグラフを示す。半失火の場合には、所望の爆発力は得られないものの、燃焼自体は行なわれているため幾分かの爆発力を発生させる。したがって、ピストン2に対しても燃焼状態に応じた下降力が付勢されることになる。よって、当該下降力を受けクランクシャフト4は一旦角速度が上昇する。すなわち、#3気筒の爆発行程の間にCA所要時間tが一旦減少する。その後CA所要時間tは徐々に増加していく。
したがって、半失火の場合も正常燃焼と同様に(失火の場合とは異なり)爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が一旦上昇することになる。
【0018】
次に、各気筒における爆発行程に掛かる時間T(以下、爆発行程経過時間)を見る。この爆発行程経過時間Tは各気筒の爆発行程期間におけるCA所要時間tを加算していったものである。したがって、図2のように、各気筒において正常燃焼が行われた場合には、各気筒間での爆発行程経過時間Tの大きな変動は見られない。
一方、失火(図3)や半失火(図4)における爆発行程経過時間Tを見ると、失火が生じた気筒や、その次の点火順序に当たる気筒においてCA所要時間tが長くなる。そのため、当該気筒における爆発行程経過時間Tの値も大きくなる。したがって、気筒間での爆発行程経過時間Tの変動が生じる。
本実施例では、失火や半失火が生じた#3気筒で爆発行程経過時間Tが急に長くなり、次の#4気筒では、#3気筒の爆発行程においてクランクシャフトの角速度が急低下した影響を受けるため、更に爆発行程経過時間Tが長くなる。#2気筒においても定常状態に比べると比較的長い。
そして、図2、図3を比較すると、失火と半失火の場合では爆発行程経過時間Tの変化の様子が酷似している。そのため前述した通り、従来技術のように爆発行程経過時間Tから半失火と失火との区別を付けるのは困難である。
【0019】
以上、各燃焼状態が起きたときの特徴をまとめると次の通りになる。
(イ)正常燃焼の場合、爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が一旦上昇し、かつ爆発行程経過時間の各気筒間での変動は小さい。
(ロ)失火の場合、爆発行程中にクランクシャフト4の角速度は単調に減少し、かつ爆発行程経過時間の各気筒間での変動が大きい。
(ハ)半失火の場合、爆発行程中のクランクシャフト4の角速度が一旦上昇し、かつ爆発行程経過時間の各気筒間での変動が大きい。
【0020】
このような爆発行程中のCA所要時間tの変化の態様や、各気筒間での爆発行程経過時間Tの変化の態様に着目して、燃焼室における正常燃焼、失火、半失火の区別をすることができる。
すなわち、まず、爆発行程経過時間Tの各気筒間で所定値以上の変動が発生発生しているか否かの判定をし、正常燃焼と失火、又は半失火を区別する(この区別の方法は後に詳述する)。そして、爆発行程経過時間Tの気筒間での変化があった状態のうち、爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が上昇するか否かを判断することによって、失火と半失火を区別する。これにより、正常燃焼、失火、半失火の3態様の燃焼状態を区別することができ、失火検出の精度を向上させることができる。なお、先にクランクシャフト4の角速度の上昇の有無を判定し、その後爆発行程経過時間Tの各気筒間での変動の有無を判定して、失火検出の精度を向上させることもできる。
また、爆発行程経過時間Tの変動を用いずに、爆発行程中の一の時点から他の時点までの所要時間を用いてもよい。また、これらの逆数から得られる一定期間のクランクシャフトの角速度平均値を用いることもできる。
【0021】
次に爆発行程経過時間Tの変動が発生しているか否かの判定方法について詳細に説明する。ある気筒における爆発行程経過時間をT(n)とする。また、当該気筒の点火順序が1つ前の気筒の爆発行程経過時間はT(n−1)、当該気筒より直後の点火順序にあたる気筒の爆発行程経過時間はT(n+1)となる。
次に、爆発行程経過時間の偏差ΔT(n)を算出する。ΔT(n)はT(n)から点火順序が2つ前の気筒におけるT(n−2)を減算して得られる(ΔT(n)=T(n)−T(n−2))。
しかし、この偏差ΔT(n)は車両の加減速によっても生じることがあるため、このまま失火・半失火による偏差として考えることは適当でない。そこで、次のように車両の加減速を考慮した補正偏差ΔT’(n)を算出する。
加減速によって発生する爆発行程経過時間Tの偏差分は、失火、又は半失火が生じる前の点火順序に当たる気筒及びその前の点火順序に当たる気筒の偏差の和を2で割った値から得られる。例えば、#3気筒で失火が生じている場合には、偏差ΔT(2)が急激に上昇するが、その前のΔT(1)及びもう1つ前のΔT(4)は失火又は半失火の影響を受けていない偏差、即ち車両の加減速よる偏差と考えることができる。この場合の加減速分の経過時間の偏差αは2α=T(1)+T(4)と考えて算出する。
そして、このαを偏差ΔT(n)から減算して補正偏差ΔT’(n)を算出する。そして、この補正偏差ΔT’(n)が失火判定定数K1より大きければ、爆発行程経過時間の各気筒間での変動を肯定する。
【0022】
しかし、失火判定定数K1と補正偏差ΔT’(n)の関係から爆発行程経過時間の各気筒間での変動は肯定できても、斯かる関係から失火又は半失火の有無を確認すると、図2、3からも明らかなように、ΔT’(3)についても失火判定定数K1より大きくなることがあるため、#4気筒において失火(又は半失火)が生じていると誤判定する虞がある。そのため、更に次の要件を付加して失火、又は半失火が生じている気筒の確定を行う。
失火及び半失火が発生した#3気筒のtのグラフ(図3、図4)に着目すると、爆発行程の最初の30°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間t(6)より爆発行程の最後の30°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間t(11)が大きくなるという特徴を有している。したがって、t(11)−t(6)>=K2の関係が当該気筒における失火又は半失火の発生を判断する第2の要件として付加される。ここでK2はK1とは別に定められる失火判定定数を示す。
そしてこれら2つの条件が成立って始めて失火又は半失火が生じたとものと見なすことができる。
【0023】
ある気筒において失火又は半失火の発生を判断するための要件をまとめると、次の(イ)(ロ)の要件を満足することである。
(イ)補正偏差ΔT’(n)>=K1
(ロ)t(k+h)−t(k)>=K2
ここで、t(k)は爆発行程の最初のA°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間を示し、t(k+h)は爆発行程の最後のA°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間を示す。また、k=(n−1)・(h+1)、n=1、2、3、4の関係があり、h=180°CA/A°CA−1の関係がある。ここで、NEセンサはクランクシャフトがA°CA毎にNE信号を発するものとする。したがって、本実施例では、A=30、h=5、k=0、6、12、18となる。
【0024】
次に、爆発行程経過時間の各気筒間での変動が認められた場合、その偏差が失火によるものか、半失火によるものかを判断する必要がある。本発明では、失火又は半失火が推定された気筒での爆発行程中にクランクシャフトの角速度が上昇するか否かにより失火と半失火の区別を判断する。クランクシャフトの角速度が上昇しない条件は、当該気筒においてCA所要時間t(i)が単調増加することである。したがって、t(k)<t(k+1)<…<t(k+h−1)<t(k+h)が成立しているかどうかにより失火と半失火の区別を行えばよい。
また、ある気筒で半失火が生じた場合に、クランクシャフトの角速度が上昇するのは爆発行程の初期段階においてである。そのため、爆発行程の初期段階においてCA所要時間t(i)が単調減少するか否かによって判断することもできる。
なお、CA所要時間tの単調増加ではなく、クランクシャフトの角速度の単調減少の検討を以って半失火の発生を判断してもよい。
【0025】
次に本発明の実施形態における失火検出ルーチンのフローチャートについて説明する。本ルーチンは、各気筒が爆発行程下死点に達したとき、即ち、CAカウンタが1、7、13、19を示すときに実施される。即ち、CAカウンタが7であれば#1気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチン、CAカウンタが13であれば#3気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチン、CAカウンタが19であれば#4気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチン、CAカウンタが1であれば#2気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチンとなる。ルーチンが開始されるとステップ101においてルーチン実施カウンタmがインクリメントされる。
【0026】
その後、ステップ103へ進み、前回のルーチン開始時刻TimeをTime’とし、今回のルーチン開始時刻Timeを記憶する。そしてステップ105へ進み、今回の時刻Timeから前回の時刻Time’を差し引いて本ルーチンが始まる直前の爆発行程経過時間T(m)を算出する。この爆発行程経過時間算出には、ECUに記憶されているCA所要時間tを加算して求めることもできる。このステップ105は請求項2に記載の経過時間算出手段に相当する。
【0027】
ステップ107では、爆発行程経過時間偏差(以下、偏差)ΔT(m)を計算する。偏差ΔT(m)はステップ105で計算したT(m)から点火順序が2つ前の気筒におけるT(m−2)を減算して得られる(ΔT(m)=T(m)−T(m−2))。この偏差ΔTを求めるのは、爆発行程経過時間Tの偏差の有無を判定するためである。ステップ107は請求項2に記載の偏差算出手段に相当する。なお、ステップ103からステップ107までを請求項2に記載の偏差算出手段と考えても問題ない。
【0028】
次に、ステップ109において偏差ΔT(m)を補正偏差ΔT’(m)に補正し直す。この補正は上述したとおり、車両の加減速による偏差分を偏差ΔT(m)から取り除くものである。
【0029】
ステップ111では、補正偏差ΔT’(m)と失火判定定数K1の大小関係を比較する。補正偏差ΔT’(m)が失火判定定数K1以上であれば、当該気筒において失火又は半失火の発生が推定される。そしてステップ113に進む。一方、補正偏差ΔT’(m)が失火判定定数K1未満であれば、爆発行程経過時間Tに変動が生じていないと見なされる。そして、警告手段作動ルーチンへ進む。このステップ111は請求項2に記載の第1の判定手段に相当する。
【0030】
ステップ113では、ステップ111における爆発行程経過時間Tの変動の推定を確定できるか否かの判定を行う。具体的には、当該気筒における爆発行程の最初のCA所要時間t(k)と、当該爆発行程の最後のCA所要時間t(k+h)から、t(k+h)−t(k)>=K2が満たされるか否かを判断する。
本実施例の場合はh=5であって、本ルーチンがCAカウンタが1を示したときに実施された場合、k=0、CAカウンタが7を示したときに実施された場合、k=6、CAカウンタが13を示したときに実施された場合、k=12、CAカウンタが19を示したときに実施された場合、k=18となる。
この関係が満足されていれば、当該気筒において失火、または半失火が生じたものと判断される。そして、ステップ115に進む。一方、前記関係ば満足されていないと判断された場合には、前ステップでの爆発行程経過時間Tの変動の推定が否定される。そして警告手段作動ルーチンへ進むことになる。
【0031】
次に、ステップ115において、ステップ113で確認された爆発行程経過時間Tの変動が失火によるものか、半失火によるものかの判定をする。この判定は、前述した通り、ステップ113で失火、または半失火の発生が肯定された気筒の爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が上昇したか否かで判断する。
例えば、#3気筒で爆発行程経過時間Tの変動が認められた場合、ECUに記憶されているCA所要時間t(i)(i=6〜11)を読み、t(6)<t(7)<t(8)<t(9)<t(10)<t(11)を満たせば、爆発行程経過時間Tの変動は失火によるものであり、この条件を満たさなければ半失火によるものと判定される。
失火によるものと判定された場合、ステップ117に進み失火カウンタがインクリメントされる。一方半失火によるものと判定された場合、警告手段作動ルーチンへ進む。このステップ115は請求項2に記載の第2の判定手段に相当する。
【0032】
警告手段作動ルーチンにおいては、ステップ200において前記ルーチン実施カウンタが所定回数N以上カウントされているか否かを判断する。前記所定回数Nとは、例えば、内燃機関1が1000回転するのに必要となる点火回数などが考えられる。この場合、本実施例のように4気筒の内燃機関1では、クランクシャフト4が720度回転する間に点火が4回行なわれるため、内燃機関1が1000回転するのに必要となる点火回数Nは2000回となる。ステップ200において、ルーチン実施カウンタが所定回数カウントされていると判定された場合には、ステップ202に進む。一方、ステップ200において、ルーチン実施カウンタが所定回数カウントされていると判定されなかった場合には、警告手段作動ルーチンは終了する。
【0033】
ステップ202においては、前記失火カウンタが所定回数以上カウントされているか否かの判定を行う。ステップ202において、失火カウンタが所定回数以上と判定された場合には、失火が生じ易い状況に内燃機関1であると推定でき、即ち、排気ガス中にHC、CO成分が増加している状況にあると推定できるため、ステップ204に進み、ステップ204において、警告手段の作動を指示する。その後、ステップ206に進み、ルーチン実施カウンタ及び失火検出カウンタをリセットして、ルーチンを終了させる。
【0034】
ステップ202において、失火カウンタが所定回数以上と判定されなかった場合には、内燃機関1では正常な燃焼が行なわれていると推定でき、ステップ204を飛び越え、ステップ206に進む。そして、ステップ206において、ルーチン実施カウンタ及び失火検出カウンタをリセットして、ルーチンを終了させる。
【0035】
【発明の効果】
請求項1又は請求項2に係る発明によれば、半失火の特徴を的確に把握することができるため、失火と半失火を適切に区別して把握することができ、失火検出精度の向上が図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の概略図を示す。
【図2】正常燃焼時のCAカウンタ、CA所要時間、経過時間のタイムチャートを示す。
【図3】失火時のCAカウンタ、CA所要時間、経過時間のタイムチャートを示す。
【図4】半失火時のCAカウンタ、CA所要時間、経過時間のタイムチャートを示す。
【図5】経過時間とその偏差のタイムチャートを示す。
【図6】失火検出ルーチンのフローチャートを示す。
【図7】警告手段作動ルーチンのフローチャートを示す。
【符号の説明】
1…内燃機関
2…ピストン
3…コンロッド
4…クランクシャフト
5…NEセンサ
【産業上の利用分野】
本発明は内燃機関の失火検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内燃機関の燃焼室に供給された燃料が燃焼しない状態(以下、失火という)を種々の方法で検出し、失火が頻繁に生じる状況であれば、使用者にその検出結果について了知せしめ、内燃機関の調整・修理を促していた。
なぜなら、失火が生じると内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるHC、COの成分が増加することになるが、斯かる失火が頻繁に生じる状態を放置しておくのは環境保護の観点から好ましくないためである。
【0003】
多気筒内燃機関のある気筒において失火が生じると、その気筒では燃焼による爆発力が得られず、ピストンを下方に付勢する力が働かないことになる。また、クランクシャフトはピストンの下降力を受けて回転するため、当該爆発行程中に回転力を受けることができない。したがって、クランクシャフトが一定のクランク角度(CA)を回転するのに要する時間が正常燃焼の場合に比べて相対的に長くなる。即ち、クランクシャフトの角速度が低下し、その爆発行程における機関回転数が低下する。
この失火による機関回転数の変動に着目した失火検出方法(又は装置)、即ち、ある気筒の爆発行程中においてクランクシャフトの角速度が他の気筒に比べて相対的に低下した場合には当該気筒において失火が生じたと判断する失火検出方法(又は装置)が公知である(特開平06−307284号)。
【0004】
また、検出された失火の情報を使用者に知らせる方法としては、例えば、点火数に対する失火の検出数の割合が所定レベル以上の場合に警告灯を点灯させるものが知られている。
【0005】
しかし、上記のような技術には、次のような問題があった。冷間時などの内燃機関が始動し難い状態においては、燻り等のような所望の爆発力を生じない燃焼(以下、半失火)が起きることがある。このような半失火であっても、燃焼自体は行われているため、排出されるHC、COは正常燃焼時と同程度となる。したがって、半失火が生じることによって特に排気ガスに悪影響を及ぼすことがないため、半失火を失火として検出する必要性はそれほど高いとはいえない。
【0006】
しかし、半失火の場合は所望の爆発力が得られないため、ピストンを下方へ押す力が弱まり、クランクシャフトの角速度の低下を招くことになる。その結果、爆発行程中のクランクシャフトの角速度が気筒間で相対的に変動するため、上記のような従来の失火検出方法(又は装置)では、半失火を失火として検出してしまう場合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、斯かる問題に鑑みて、内燃機関の失火検出装置において、半失火の誤検出を低減し、以って失火検出の精度を高めることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決する手段として、請求項1に係る発明は、内燃機関の失火検出装置において、ある気筒の爆発行程においてクランクシャフトの角速度が上昇した場合は当該気筒において失火が発生していないと認定することを特徴とする内燃機関の失火検出装置である。
【0009】
また、おなじ課題を解決する手段として、請求項2に係る発明は、 内燃機関の失火検出装置において、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角検出手段と、前記クランク角検出手段からクランクシャフトが所定角度回転する毎に出力される信号からクランクシャフトの角速度を算出する角速度算出手段と、前記クランク角検出手段から爆発行程の経過時間を算出する経過時間算出手段と、該経過時間算出手段から算出された経過時間の偏差を算出する偏差算出手段と、該偏差算出手段から得られた偏差が予め設定された失火判定定数を越えるか否かを判定する第1の判定手段と、爆発行程中に前記角速度算出手段において得られた前記角速度の一時的上昇の有無を判定する第2の判定手段と、を具備し、前記第1の判定手段において前記偏差が前記失火判定定数を越えた場合に前記第2の判定手段において前記角速度の一時的上昇が無いと判定された場合は失火が生じたことを検出する失火検出装置である。
【0010】
【発明の実施形態】
図1は内燃機関1の概略図である。内燃機関1は1番気筒#1気筒、2番気筒#2気筒、3番気筒#3気筒、4番気筒#4気筒からなる4つの気筒を具備し、それぞれの気筒は一方向に並設されている。この内燃機関1の点火順序は#1気筒、#3気筒、#4気筒、#2気筒の順に行なわれる。各気筒内には気筒内を往復運動可能なピストン2が挿入されている。このピストン2にはコンロッド3が連結され、そのコンロッド3にはクランクシャフト4が連結される。そして、ピストン2の往復運動がコンロッド3とクランクシャフト4によって回転運動に変換される。
【0011】
クランクシャフト4の近傍にはクランク角センサ(NEセンサ)5が取付けられている。このNEセンサ5はクランクシャフト4の回転角を検出するためのセンサであり、請求項2に記載のクランク角検出手段に相当する。クランクシャフト4が所定CA回転する毎にパルス(NE信号)を出力する。例えば、このようなNEセンサには、クランクシャフト4に同期して回転し、外周に等間隔に形成された凸形状を有しているロータ(欠歯があってもよい)に対し、その近傍に位置するようにクランクケースに設置され、前記凸形状がNEセンサ近傍を通過する際に、NE信号を発するピックアップ式のものがある。本実施形態においては、クランクシャフト4が30°CA回転する毎にNE信号を発する。
【0012】
内燃機関には図示しない気筒判別センサ(Gセンサ)が取付けられている。このGセンサはNEセンサ5を代用してもよいし、従来から知られているカムシャフト近傍に取付けるものを用いてもよい。カムシャフト近傍に取付けるタイプのGセンサは、クランクシャフト4が2回転(720°CA)するごとにパルス(G信号)を出力するものである。本実施例におけるGセンサは、#1気筒の爆発行程上死点に達する毎にG信号を出力する。NEセンサ5とGセンサはともに内燃機関を制御するECUに接続される。
【0013】
NE信号がECUに入力されると、ECU内におけるクランクカウンタ(以下、CAカウンタ)がインクリメントされる。即ち、クランクシャフト4が30°CA回転する毎にCAカウンタが1つインクリメントされる。そして、CAカウンタはG信号の入力により0にリセットされる(図2、図3、図4)。
よって、本実施例のようにGセンサが#1気筒の爆発行程上死点でG信号を発するように設定しておけば、CAカウンタが0となる瞬間は#1気筒が爆発行程上死点(#3気筒が爆発行程下死点)にあり、CAカウンタが6となる瞬間は#3気筒が爆発行程上死点(#4気筒が爆発行程下死点)にあり、CAカウンタが12となる瞬間は#4気筒が爆発行程上死点(#2気筒が爆発行程下死点)にあり、CAカウンタが18となる瞬間は#2気筒が爆発行程上死点(#1気筒が爆発行程下死点)にあることが識別できる(図2、図3、図4)。
【0014】
図2、図3、図4に示されたtは、各気筒の爆発行程上死点から爆発行程下死点まで、クランクシャフト4が30°CA回転するのに要した(NE信号の出力間隔)時間t(i)(以下、CA所要時間という)をプロットしたものである。即ち、CAカウンタがインクリメントされて次にCAカウンタがインクリメントされるまでの時間を示している。iはCAカウンタに相当する値であり、例えば、CAカウンタが8を示している間の時間がCA所要時間t(8)となる。このCA所要時間tは後述する半失火の判定に用いられる情報であるためECUに記憶される。
なお、CA所要時間tの逆数は、クランクシャフトの角速度に相当するため、失火や半失火の判定に用いられる情報として、CA所要時間tを用いてもよいし、クランクシャフトの角速度を用いてもよい。クランクシャフトの角速度はECU内において30°CA/CA所要時間tとして求められる。したがって、ECUは請求項2に記載のクランクシャフトの角速度算出手段に相当する。
【0015】
図2は、正常燃焼の場合を示すグラフである。この場合のCA所要時間tは爆発行程上死点から徐々に減少し、爆発行程上死点と爆発行程下死点の間ででCA所要時間tが最小の値をとり、そこから再び爆発行程下死点に向けてCA所要時間tが増加していく。
このグラフのようにCA所要時間tが爆発行程中に一旦減少するということは、爆発行程中にクランクシャフトの角速度が一旦上昇することを示している。
【0016】
図3は#3気筒で失火が生じた場合のグラフを示す。この場合、#3気筒の爆発行程において、ピストン2は下降力を得ることができないため、クランクシャフト4も回転力を得ることができず、クランクシャフト4の角速度が低下していく。したがって、失火が生じた#3気筒においては、爆発行程上死点から爆発行程下死点までCA所要時間tが単調に増加することになる。
そして、次の点火順序にあたる#4気筒において正常な燃焼が行なわれることによって、再びクランクシャフト4の角速度が上昇し、CA所要時間tが徐々に短くなる。その後の点火順序に当たる#2気筒、#1気筒において正常燃焼が行われると、再びグラフの形状は#1気筒区間のグラフ形状に近づいていく。
【0017】
次に、図4に#3気筒において半失火が生じた場合のグラフを示す。半失火の場合には、所望の爆発力は得られないものの、燃焼自体は行なわれているため幾分かの爆発力を発生させる。したがって、ピストン2に対しても燃焼状態に応じた下降力が付勢されることになる。よって、当該下降力を受けクランクシャフト4は一旦角速度が上昇する。すなわち、#3気筒の爆発行程の間にCA所要時間tが一旦減少する。その後CA所要時間tは徐々に増加していく。
したがって、半失火の場合も正常燃焼と同様に(失火の場合とは異なり)爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が一旦上昇することになる。
【0018】
次に、各気筒における爆発行程に掛かる時間T(以下、爆発行程経過時間)を見る。この爆発行程経過時間Tは各気筒の爆発行程期間におけるCA所要時間tを加算していったものである。したがって、図2のように、各気筒において正常燃焼が行われた場合には、各気筒間での爆発行程経過時間Tの大きな変動は見られない。
一方、失火(図3)や半失火(図4)における爆発行程経過時間Tを見ると、失火が生じた気筒や、その次の点火順序に当たる気筒においてCA所要時間tが長くなる。そのため、当該気筒における爆発行程経過時間Tの値も大きくなる。したがって、気筒間での爆発行程経過時間Tの変動が生じる。
本実施例では、失火や半失火が生じた#3気筒で爆発行程経過時間Tが急に長くなり、次の#4気筒では、#3気筒の爆発行程においてクランクシャフトの角速度が急低下した影響を受けるため、更に爆発行程経過時間Tが長くなる。#2気筒においても定常状態に比べると比較的長い。
そして、図2、図3を比較すると、失火と半失火の場合では爆発行程経過時間Tの変化の様子が酷似している。そのため前述した通り、従来技術のように爆発行程経過時間Tから半失火と失火との区別を付けるのは困難である。
【0019】
以上、各燃焼状態が起きたときの特徴をまとめると次の通りになる。
(イ)正常燃焼の場合、爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が一旦上昇し、かつ爆発行程経過時間の各気筒間での変動は小さい。
(ロ)失火の場合、爆発行程中にクランクシャフト4の角速度は単調に減少し、かつ爆発行程経過時間の各気筒間での変動が大きい。
(ハ)半失火の場合、爆発行程中のクランクシャフト4の角速度が一旦上昇し、かつ爆発行程経過時間の各気筒間での変動が大きい。
【0020】
このような爆発行程中のCA所要時間tの変化の態様や、各気筒間での爆発行程経過時間Tの変化の態様に着目して、燃焼室における正常燃焼、失火、半失火の区別をすることができる。
すなわち、まず、爆発行程経過時間Tの各気筒間で所定値以上の変動が発生発生しているか否かの判定をし、正常燃焼と失火、又は半失火を区別する(この区別の方法は後に詳述する)。そして、爆発行程経過時間Tの気筒間での変化があった状態のうち、爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が上昇するか否かを判断することによって、失火と半失火を区別する。これにより、正常燃焼、失火、半失火の3態様の燃焼状態を区別することができ、失火検出の精度を向上させることができる。なお、先にクランクシャフト4の角速度の上昇の有無を判定し、その後爆発行程経過時間Tの各気筒間での変動の有無を判定して、失火検出の精度を向上させることもできる。
また、爆発行程経過時間Tの変動を用いずに、爆発行程中の一の時点から他の時点までの所要時間を用いてもよい。また、これらの逆数から得られる一定期間のクランクシャフトの角速度平均値を用いることもできる。
【0021】
次に爆発行程経過時間Tの変動が発生しているか否かの判定方法について詳細に説明する。ある気筒における爆発行程経過時間をT(n)とする。また、当該気筒の点火順序が1つ前の気筒の爆発行程経過時間はT(n−1)、当該気筒より直後の点火順序にあたる気筒の爆発行程経過時間はT(n+1)となる。
次に、爆発行程経過時間の偏差ΔT(n)を算出する。ΔT(n)はT(n)から点火順序が2つ前の気筒におけるT(n−2)を減算して得られる(ΔT(n)=T(n)−T(n−2))。
しかし、この偏差ΔT(n)は車両の加減速によっても生じることがあるため、このまま失火・半失火による偏差として考えることは適当でない。そこで、次のように車両の加減速を考慮した補正偏差ΔT’(n)を算出する。
加減速によって発生する爆発行程経過時間Tの偏差分は、失火、又は半失火が生じる前の点火順序に当たる気筒及びその前の点火順序に当たる気筒の偏差の和を2で割った値から得られる。例えば、#3気筒で失火が生じている場合には、偏差ΔT(2)が急激に上昇するが、その前のΔT(1)及びもう1つ前のΔT(4)は失火又は半失火の影響を受けていない偏差、即ち車両の加減速よる偏差と考えることができる。この場合の加減速分の経過時間の偏差αは2α=T(1)+T(4)と考えて算出する。
そして、このαを偏差ΔT(n)から減算して補正偏差ΔT’(n)を算出する。そして、この補正偏差ΔT’(n)が失火判定定数K1より大きければ、爆発行程経過時間の各気筒間での変動を肯定する。
【0022】
しかし、失火判定定数K1と補正偏差ΔT’(n)の関係から爆発行程経過時間の各気筒間での変動は肯定できても、斯かる関係から失火又は半失火の有無を確認すると、図2、3からも明らかなように、ΔT’(3)についても失火判定定数K1より大きくなることがあるため、#4気筒において失火(又は半失火)が生じていると誤判定する虞がある。そのため、更に次の要件を付加して失火、又は半失火が生じている気筒の確定を行う。
失火及び半失火が発生した#3気筒のtのグラフ(図3、図4)に着目すると、爆発行程の最初の30°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間t(6)より爆発行程の最後の30°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間t(11)が大きくなるという特徴を有している。したがって、t(11)−t(6)>=K2の関係が当該気筒における失火又は半失火の発生を判断する第2の要件として付加される。ここでK2はK1とは別に定められる失火判定定数を示す。
そしてこれら2つの条件が成立って始めて失火又は半失火が生じたとものと見なすことができる。
【0023】
ある気筒において失火又は半失火の発生を判断するための要件をまとめると、次の(イ)(ロ)の要件を満足することである。
(イ)補正偏差ΔT’(n)>=K1
(ロ)t(k+h)−t(k)>=K2
ここで、t(k)は爆発行程の最初のA°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間を示し、t(k+h)は爆発行程の最後のA°CAをクランクシャフトが回転するのに要する時間を示す。また、k=(n−1)・(h+1)、n=1、2、3、4の関係があり、h=180°CA/A°CA−1の関係がある。ここで、NEセンサはクランクシャフトがA°CA毎にNE信号を発するものとする。したがって、本実施例では、A=30、h=5、k=0、6、12、18となる。
【0024】
次に、爆発行程経過時間の各気筒間での変動が認められた場合、その偏差が失火によるものか、半失火によるものかを判断する必要がある。本発明では、失火又は半失火が推定された気筒での爆発行程中にクランクシャフトの角速度が上昇するか否かにより失火と半失火の区別を判断する。クランクシャフトの角速度が上昇しない条件は、当該気筒においてCA所要時間t(i)が単調増加することである。したがって、t(k)<t(k+1)<…<t(k+h−1)<t(k+h)が成立しているかどうかにより失火と半失火の区別を行えばよい。
また、ある気筒で半失火が生じた場合に、クランクシャフトの角速度が上昇するのは爆発行程の初期段階においてである。そのため、爆発行程の初期段階においてCA所要時間t(i)が単調減少するか否かによって判断することもできる。
なお、CA所要時間tの単調増加ではなく、クランクシャフトの角速度の単調減少の検討を以って半失火の発生を判断してもよい。
【0025】
次に本発明の実施形態における失火検出ルーチンのフローチャートについて説明する。本ルーチンは、各気筒が爆発行程下死点に達したとき、即ち、CAカウンタが1、7、13、19を示すときに実施される。即ち、CAカウンタが7であれば#1気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチン、CAカウンタが13であれば#3気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチン、CAカウンタが19であれば#4気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチン、CAカウンタが1であれば#2気筒の爆発行程終了後に実行されるルーチンとなる。ルーチンが開始されるとステップ101においてルーチン実施カウンタmがインクリメントされる。
【0026】
その後、ステップ103へ進み、前回のルーチン開始時刻TimeをTime’とし、今回のルーチン開始時刻Timeを記憶する。そしてステップ105へ進み、今回の時刻Timeから前回の時刻Time’を差し引いて本ルーチンが始まる直前の爆発行程経過時間T(m)を算出する。この爆発行程経過時間算出には、ECUに記憶されているCA所要時間tを加算して求めることもできる。このステップ105は請求項2に記載の経過時間算出手段に相当する。
【0027】
ステップ107では、爆発行程経過時間偏差(以下、偏差)ΔT(m)を計算する。偏差ΔT(m)はステップ105で計算したT(m)から点火順序が2つ前の気筒におけるT(m−2)を減算して得られる(ΔT(m)=T(m)−T(m−2))。この偏差ΔTを求めるのは、爆発行程経過時間Tの偏差の有無を判定するためである。ステップ107は請求項2に記載の偏差算出手段に相当する。なお、ステップ103からステップ107までを請求項2に記載の偏差算出手段と考えても問題ない。
【0028】
次に、ステップ109において偏差ΔT(m)を補正偏差ΔT’(m)に補正し直す。この補正は上述したとおり、車両の加減速による偏差分を偏差ΔT(m)から取り除くものである。
【0029】
ステップ111では、補正偏差ΔT’(m)と失火判定定数K1の大小関係を比較する。補正偏差ΔT’(m)が失火判定定数K1以上であれば、当該気筒において失火又は半失火の発生が推定される。そしてステップ113に進む。一方、補正偏差ΔT’(m)が失火判定定数K1未満であれば、爆発行程経過時間Tに変動が生じていないと見なされる。そして、警告手段作動ルーチンへ進む。このステップ111は請求項2に記載の第1の判定手段に相当する。
【0030】
ステップ113では、ステップ111における爆発行程経過時間Tの変動の推定を確定できるか否かの判定を行う。具体的には、当該気筒における爆発行程の最初のCA所要時間t(k)と、当該爆発行程の最後のCA所要時間t(k+h)から、t(k+h)−t(k)>=K2が満たされるか否かを判断する。
本実施例の場合はh=5であって、本ルーチンがCAカウンタが1を示したときに実施された場合、k=0、CAカウンタが7を示したときに実施された場合、k=6、CAカウンタが13を示したときに実施された場合、k=12、CAカウンタが19を示したときに実施された場合、k=18となる。
この関係が満足されていれば、当該気筒において失火、または半失火が生じたものと判断される。そして、ステップ115に進む。一方、前記関係ば満足されていないと判断された場合には、前ステップでの爆発行程経過時間Tの変動の推定が否定される。そして警告手段作動ルーチンへ進むことになる。
【0031】
次に、ステップ115において、ステップ113で確認された爆発行程経過時間Tの変動が失火によるものか、半失火によるものかの判定をする。この判定は、前述した通り、ステップ113で失火、または半失火の発生が肯定された気筒の爆発行程中にクランクシャフト4の角速度が上昇したか否かで判断する。
例えば、#3気筒で爆発行程経過時間Tの変動が認められた場合、ECUに記憶されているCA所要時間t(i)(i=6〜11)を読み、t(6)<t(7)<t(8)<t(9)<t(10)<t(11)を満たせば、爆発行程経過時間Tの変動は失火によるものであり、この条件を満たさなければ半失火によるものと判定される。
失火によるものと判定された場合、ステップ117に進み失火カウンタがインクリメントされる。一方半失火によるものと判定された場合、警告手段作動ルーチンへ進む。このステップ115は請求項2に記載の第2の判定手段に相当する。
【0032】
警告手段作動ルーチンにおいては、ステップ200において前記ルーチン実施カウンタが所定回数N以上カウントされているか否かを判断する。前記所定回数Nとは、例えば、内燃機関1が1000回転するのに必要となる点火回数などが考えられる。この場合、本実施例のように4気筒の内燃機関1では、クランクシャフト4が720度回転する間に点火が4回行なわれるため、内燃機関1が1000回転するのに必要となる点火回数Nは2000回となる。ステップ200において、ルーチン実施カウンタが所定回数カウントされていると判定された場合には、ステップ202に進む。一方、ステップ200において、ルーチン実施カウンタが所定回数カウントされていると判定されなかった場合には、警告手段作動ルーチンは終了する。
【0033】
ステップ202においては、前記失火カウンタが所定回数以上カウントされているか否かの判定を行う。ステップ202において、失火カウンタが所定回数以上と判定された場合には、失火が生じ易い状況に内燃機関1であると推定でき、即ち、排気ガス中にHC、CO成分が増加している状況にあると推定できるため、ステップ204に進み、ステップ204において、警告手段の作動を指示する。その後、ステップ206に進み、ルーチン実施カウンタ及び失火検出カウンタをリセットして、ルーチンを終了させる。
【0034】
ステップ202において、失火カウンタが所定回数以上と判定されなかった場合には、内燃機関1では正常な燃焼が行なわれていると推定でき、ステップ204を飛び越え、ステップ206に進む。そして、ステップ206において、ルーチン実施カウンタ及び失火検出カウンタをリセットして、ルーチンを終了させる。
【0035】
【発明の効果】
請求項1又は請求項2に係る発明によれば、半失火の特徴を的確に把握することができるため、失火と半失火を適切に区別して把握することができ、失火検出精度の向上が図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の概略図を示す。
【図2】正常燃焼時のCAカウンタ、CA所要時間、経過時間のタイムチャートを示す。
【図3】失火時のCAカウンタ、CA所要時間、経過時間のタイムチャートを示す。
【図4】半失火時のCAカウンタ、CA所要時間、経過時間のタイムチャートを示す。
【図5】経過時間とその偏差のタイムチャートを示す。
【図6】失火検出ルーチンのフローチャートを示す。
【図7】警告手段作動ルーチンのフローチャートを示す。
【符号の説明】
1…内燃機関
2…ピストン
3…コンロッド
4…クランクシャフト
5…NEセンサ
Claims (2)
- 内燃機関の失火検出装置において、ある気筒の爆発行程においてクランクシャフトの角速度が一旦上昇した場合には当該気筒において失火が発生していないと認定することを特徴とする内燃機関の失火検出装置。
- 内燃機関の失火検出装置において、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角検出手段と、前記クランク角検出手段からクランクシャフトが所定角度回転する毎に出力される信号からクランクシャフトの角速度を算出する角速度算出手段と、ある気筒の爆発行程の経過時間を算出する経過時間算出手段と、該経過時間算出手段から算出された爆発行程経過時間の偏差を算出する偏差算出手段と、該偏差算出手段から得られた偏差が予め設定された失火判定定数を越えるか否かを判定する第1の判定手段と、ある気筒の爆発行程中に前記角速度算出手段において得られた前記角速度の一時的上昇の有無を判定する第2の判定手段と、を具備し、前記第1の判定手段において前記偏差が前記失火判定定数を越えたと判定されて、前記第2の判定手段において前記角速度の一時的上昇が無いと判定された場合に、前記ある気筒で失火が生じたことを検出する内燃機関の失火検出装置。
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Legal Events
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