JP2008309038A - 単気筒エンジンの行程判別方法および行程判別装置 - Google Patents

単気筒エンジンの行程判別方法および行程判別装置 Download PDF

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Abstract

【課題】安価な装置であっても、4ストロークサイクル単気筒エンジンの始動時に素早く行程判別し、無駄な燃料噴射や無駄火を低減できること。
【解決手段】本発明の単気筒エンジンの行程判別方法では、一つの磁気センサでAC発電機の回転子に設けたパルス歯なる突起を検出するので、装置が安価である。そして一サイクル二回転のうちで位相がどちらに属するか、排気行程に属する判定領域Aと圧縮行程に属する判定領域Bとで歯間時間を比較して、いずれがいずれかを判定する。条件が良ければ1回転半程度で行程の表裏を判別することができ、極めて早期に位相角を定位して無駄火などを防ぎ、速やかな始動を可能にする。
【選択図】図3

Description

本発明は、4ストロークサイクル単気筒エンジンの技術分野に属し、より詳しくは同エンジンの行程判別技術ないし始動技術の分野に属する。
単車(自動二輪車や原動機付自転車)などには、4ストロークサイクルの単気筒エンジンが搭載されていることが多い。このタイプのエンジンでは、カムセンサを廃止してコストダウンを図ったものが近年の主流となっており、多くの場合にはAC発電機(オルタネータ)のロータがクランク軸に直結されている。そして、カムセンサなしにエンジンの行程を判別して着火タイミングなどを適正に設定する技術も確立されており、その一例が特許文献1に開示されている。
すなわち、同文献のエンジン行程判別装置(従来技術1とする)では、エンジンのクランク軸にスタータモータ(始動後は発電機を兼用)が直結されており、そのロータのスリーブ端外周には環状のセンサマグネットが嵌められている。このセンサマグネットは二本の着磁帯が並べられたものであり、両着磁帯のうち一方は所定角度毎に極性を反転させた角度検出用着磁帯(前者)であるが、他方は全周のうち一箇所だけ他と異なる極性に着磁された基準位置検出用着磁帯(後者)である。そして、このスタータモータのステータ側には、前者に対向して配置された三つの第一磁気センサ(クランク角センサ)と、後者に対向して配置された第二磁気センサ(点火パルサ)とが固定されている。
クランク軸が回転すると、ピストンが上死点付近に来る毎に点火パルサがパルス信号を出力するので、このパルス信号を基準にしてECUが点火栓の着火タイミングを設定する。しかし、このパルス信号だけで圧縮上死点にあるのか排気上死点にあるのかを即座に判定するのは困難であるから、その判定にはクランク角センサの出力信号を援用することを要する。すなわち、クランク角センサの出力信号に基づいて四つの行程に相当する各区間にかかった時間を測定することができるから、それぞれ直前の区間にかかった時間と比較することによって、当該上死点が圧縮上死点と排気上死点とのうちいずれであるかを判定することができる。具体的には、点火パルサの検出信号が出力される度に直前の四つの測定区間でかかった時間を比較し、その増減符号の並びが(−,+,+,+)となっている場合に、その判別時の点火パルサをもって正しい着火パルスであると判定するようにしている。
その結果、カムセンサを備えていなくても、いったんエンジンが始動してしまえば行程を判別できるようになり、排気上死点付近で無用に点火プラグを発火させること(「捨て火」または「無駄火」という)を控えることができる。
なお、同文献のうち従来技術の項には、クランク角の一定角度毎にパルス信号を出力するクランクセンサを設け、そのパルス信号の間隔を判別して行程を認識する行程判別方法(従来技術2とする)がある旨の記載がある。そして続く課題の項には、そのクランクセンサは、上死点を検出するために一定区間でパルス信号が検出されない構造になっており、このパルス信号に基づいて点火タイミングを決定するので、その一定区間を変更することはできないとの記載がある。さらに、このような構成では、クランク軸の一回転中を通してクランクセンサの出力を検出し、その検出結果で行程を判別するというようにセンサをレイアウトすることができないとの旨までが記載されている。
特開2004−124879号公報
しかしながら、前述した特許文献1の技術(従来技術1)では、カムセンサを省略してもエンジンを運転することができるとはいうものの、前述のように四つの磁気センサを必要としており、そのうえロータ側には二本の着磁帯をもつセンサマグネットを装着しなくてはならない。それゆえ同技術を採用したエンジンには、まだコストダウンの余地があるものと考えられる。
そればかりではなく、エンジン始動時に限れば、クランク軸が少なくとも二回転するまでは、点火パルサの出力信号が検出されても、それが圧縮上死点付近でのものか排気上死点付近でのものであるかを正しく判定することができない。なぜならば、前述のように四つの区間時間の増減符号の並びが(−,+,+,+)であるかどうかを見るためには、その増減符号が四つとも点火パルサ信号の前に出そろっていなくてはならないからである。それには少なくとも4ストロークサイクル(即ち二回転)が必要であり、おそらく始動前のクランク軸の初期位置によっては四回転が必要になることもあろう。
したがって同技術では、始動時にクランク軸が少なくとも二回転するまでは排気上死点を圧縮上死点と取り違えることがあり、排気上死点で点火プラグを発火して無駄火としてしまったり無駄に燃料噴射をしてしまったりしても仕方がなかった。また、それ故に適正なタイミングでの混合気点火や燃料噴射が遅れて、エンジンの始動がクランク軸の何回転分かだけ遅れてしまう可能性もあった。さらに、無駄火があれば電力が無駄に消費されるうえに、無駄な燃料噴射があれば燃料の浪費になるばかりではなく、生ガスの排気による排気浄化装置の劣化や大気汚染にもつながるという不都合もあった。
そして、このように始動時に無駄火が多いという不都合は、従来技術1でばかりでなく構成が簡素な従来技術2でも生じており、むしろ従来技術1でよりも従来技術2での方が無駄火が多く生じている可能性が高い。
そこで本発明は、従来技術1よりも4ストロークサイクル単気筒エンジンを低廉化できながら、始動時に無駄火が生じることをなるべくなくし、速やかに同エンジンを始動することができる技術を提供することを解決すべき課題とする。
前記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明した。そこで、本項では各手段の構成について説明し、併せてその構成がもたらす作用効果についても簡潔に説明する。なお、以下の各手段に付せられた順序数は、本願出願時に特許請求の範囲に記載された請求項の番号にそれぞれ対応している。
[方法発明]
(第1手段)
本発明の第1手段は、4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸に直結した回転子と、同エンジンに対して固定されたセンサとを用いる行程判別方法である。
すなわち本手段では、一箇所の例外部分を除いてこの回転子の一周を等分する複数箇所にそれぞれ配設されたマーカが、この回転子の回転に伴って通過するのをこのセンサで検知する。そして、このセンサから得られた信号に基づいて、このクランク軸の回転角度を計測するとともに、同エンジンの状態が排気行程、吸気行程、圧縮行程および膨張行程の四行程うちどの行程にあるかを判別する行程判別が行われる。
この行程判別が正しく行われてこそ、このクランク軸の一サイクル二回転中での位相角を求めることができる。そこで先ず、これらマーカのうち所定マーカと他の所定マーカとの間にある前記回転角度の区間をもって判定領域と定義すれば、前記位相角が一回転分だけ異なる表裏一対の判定領域(両判定領域と呼ぶ)ができる。それゆえ、これら両判定領域の間での回転所要時間の比較と、これら両判定領域の間でのパルス間隔変動量の比較とのうち、少なくとも一方を行うことによって前記行程判別が行われる。
ここで、回転所要時間は、各判定領域にあたる所定の区間をクランク軸が回転するのに要した時間であるから、クランク軸の回転角速度に反比例する量であり、実質的に当該区間での平均角速度を求めていることに等しい。それゆえ、表裏一対の判定領域の間で互いに回転所要時間を比較するということは、両判定領域の間で平均角速度を互いに比較することと、論理的には等価である。
一方、パルス間隔変動量は、前述のように角速度に逆比例する量の変動量であるから、実質的には区間平均の角加速度の逆数のようなものである。それゆえ、表裏一対の判定領域の間で互いにパルス間隔変動量を比較することは、両判定領域の間で区間平均の角加速度を比較することと、論理的には等価であると言える。
本手段の単気筒エンジンの行程判別方法は以上のような特徴をもっているので、エンジンを始動する際に、角度位置が少なくとも判定領域を二回通過したことが判定できるだけクランク軸が回転すれば、行程判別を行うことができる。それゆえ、従来技術1とは異なって、本手段ではクランク軸が少なくとも二回転しなければ位相角が360°異なっている表裏二つの位相角のうちいずれであるかを判定できないといったことはなく、早期に行程判別を行って正しい位相角を求めることができる。
以上をまとめると、本手段によれば、従来技術1よりも早期に行程判別を行い正しい位相角を把握することができる。それゆえ、圧縮上死点付近の正しい位相角で点火プラグを発火させたり、逆に排気上死点付近では点火プラグの発火をさせずに無駄火を防いだりすることができる。燃料噴射についても同様であって、早期に圧縮上死点付近でだけ燃料噴射を行い、排気上死点付近での噴射による燃料の無駄遣いを止めることができるようになる。その結果、速やかにエンジンを始動することができながら、燃料を節約して生ガスの排気を低減することができるので、排気浄化装置の損傷や大気汚染をも低減することができるようになる。
しかも、本手段の行程判別方法を実施するための装置構成では、前述のようにセンサを一つしか必要としていない。さらに、そのセンサにも例えば安価な磁気センサを採用し、磁気センサの検知対象たるマーカには、回転子から打ち出し加工によって形成された突起をもってこれに充てるなどすれば、極めて安価に本手段を実施するための装置を構成することができる。
したがって本手段によれば、従来技術1よりも4ストロークサイクル単気筒エンジンの価格を低廉化することができながら、始動時に無駄火の発生をより少なくし、速やかに同エンジンを始動することができるという効果がある。
(第2手段)
本発明の第2手段は、前述の第1手段において、前記両判定領域のうち一方は前記排気行程の少なくとも一部を含んでおり、他方は前記圧縮行程の少なくとも一部を含んでいることを特徴とする単気筒エンジンの行程判別方法である。
一般に4ストロークサイクル単気筒エンジンでは、圧縮上死点付近で混合気に着火しているかいないかに関わらず、膨張行程では正の角加速度が得られるから、膨張行程の終了時にあたる排気下死点付近において角速度は最大になる。ほぼその状態から排気行程は始まり、機械的な抵抗や排気の流路抵抗により角速度は徐々に落ちていく。そして吸気行程でも機械的摩擦や吸気負圧が作用するから、同様に角速度は徐々に低下していく。一方、圧縮行程では、機械的摩擦に加えて強い圧縮抵抗が作用するから、角速度はさらに急激に低下して、圧縮上死点付近で最低にまで落ちる。
それゆえ、膨張行程の後で角速度が最大値に達した直後の排気行程と、その排気行程と続く吸気行程と角速度が落ちたうえに気筒内に生じる圧縮抵抗によって角速度がさらに急激に落ちる圧縮行程とでは、クランク軸の角速度に大きな違いがある。すなわち、排気行程での角速度の方が、圧縮行程での角速度よりもずっと大きい。
また、排気行程と圧縮行程とでは機械的摩擦は同程度であっても、吸気バルブが開いている状態で気筒内に生じる吸気負圧と、全てのバルブが閉じて密閉された状態で気筒内の気体を圧縮していくのとでは、後者の方がずっと大きな抵抗が生じる。その結果、排気行程および圧縮行程の両方で負の角加速度が生じるが、その絶対値は圧縮行程での方がずっと大きい。特に、角加速度で比較するのであれば、エンジンスタータによる駆動トルクがかかっていたとしても、その駆動トルクがほぼ一定であればその影響は比較の際に相殺されるから、スタータの作用による影響を受けにくくて好都合である。
したがって、本手段のように、排気行程を含む判定領域と圧縮行程を含む判定領域との間で実質的に角速度または角加速度を比較すれば、両者の間には明らかな違いがあるから、前述の第1手段の効果が発揮される。
(第3手段)
本発明の第3手段は、前述の第1手段において、前記両判定領域のうち一方は前記吸気行程の少なくとも一部を含んでおり、他方は前記膨張行程の少なくとも一部を含んでいることを特徴とする単気筒エンジンの行程判別方法である。
本手段では、抵抗を受けて角速度が落ちていく吸気行程と、気筒内圧力により加速されて急激に角速度が増大する膨張行程との間で、実質的に角加速度を比較するようにするのであれば、両者の間には明らかな違いが認められる。すなわち、膨張行程では大きな正の角加速度が生じ、それは特に圧縮された混合気に着火して燃焼圧が得られれば極めて大きなものになる。一方、吸気行程では逆に負の加速度が生じている。それゆえ、両者の間で角加速度を比較すれば、たとえスタータによる駆動トルクがかかっていたとしても比較の際に相殺されるから、吸気行程に属する判定領域と膨張行程に属する判定領域とを判別することは極めて容易である。
一方、実質的に区間平均の角速度を比較しても、行程判別を行うことができる。すなわち、まだ角速度が落ちきっていない吸気行程の初期段階と、角速度が底を打って加速を始めたばかりの膨張行程の初期段階とでは、前者の方が角速度は大きいからである。逆に、すでにだいぶ角速度が落ちてきている吸気行程の終期段階と、一サイクル中で角速度が最高に達っする膨張行程の終期段階とでは、後者の方が角速度が大きいから、やはり行程判別を行うことができる。
したがって、本手段によっても前述の第1手段の効果が発揮されるが、特に角加速度を比較するのであれば、極めて高い信頼性をもって行程判別を行うことができるという効果がある。
(第4手段)
本発明の第4手段は、前述の第1手段〜第3手段のうちいずれかにおいて、前記判定領域が前記例外部分に隣接して設定されているか、あるいは前記判定領域が前記例外部分を跨いで設定されているか、いずれかである単気筒エンジンの行程判別方法である。
本手段では、判定領域が例外部分の直後に隣接して設定されていれば、例外部分を検出してすぐに判定領域でのマーカ検知を行うことができる。逆に、判定領域が例外部分の直前に隣接して設定されていれば、しばらく例外部分が検出されなかった場合に、その間に検知されたマーカの信号をメモリ等に記憶しておけば、後で例外部分が検出されたときに例外部分の前に遡って信号を呼び出して行程判別に利用することができる。あるいは、判定領域が例外部分を跨いで設定されていれば、例外部分よりも前にあるマーカ検知信号はメモリ等に記憶しておき、これらを例外部分が検知されてから例外部分に対して位置づけし、例外部分以後に検出された信号と併せて行程判別に利用することができる。
したがって本手段によれば、判定領域が例外部分に近接しているか重なっているかであるから、クランク軸の回転に伴い例外部分を基準に判定領域を二度目に検知したならば、遅滞なく行程判別を行うことができるという効果がある。
(第5手段)
本発明の第5手段は、4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸が、一サイクル二回転中でどこの位相角にあるかを求める行程判別方法である。本手段の特徴は、位相角を求めるにあたって、この位相角が一回転分だけ異なる表裏一対の判定領域の間で、互いに回転所要時間および平均角加速度のうち一方の大小を比較することにより、この比較時点でこの位相角が四行程のうちいずれに属しているかを判別することである。
本手段では、表裏一対の判定領域の間で比較されるのは、実質的に区間平均の角加速度または角速度である。そして、角加速度と角速度とのうちその角度位置で適当な方を比較すれば、クランク軸の位相角が比較時点で表裏一対の判定領域のうちいずれに属するかを判定することは容易である。
したがって本手段によっても、前述の第1手段とほぼ同様の効果が得られる。
(第6手段)
本発明の第6手段も、4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸が、一サイクル二回転中でどちらの位相角にあるかを求める行程判別方法である。本手段の特徴は、次の二点である。すなわち第一に、位相角を求めるにあたって、このクランク軸の角度位置が上死点を通過した際に、この上死点通過の前後でクランク軸の角加速度を計測し、両者の差を算出してこの角加速度の増加分を求めておくことである。第二に、前回の上死点通過前後での前記増加分と今回の上死点通過前後での前記増加分とを比較することにより、この増加分が大きかった方をもって圧縮上死点と判別することである。あるいは逆に、この増加分が小さかった方をもって排気上死点と判別しても同じことである。
すなわち本手段では、上死点を二回通過するうちに、各上死点の前後で角加速度がどの程度変化するかを計測して、角加速度の増加が大きかった方の上死点をもって圧縮上死点とし、逆に小さかった方をもって排気上死点と判別する。圧縮上死点では、たとえ混合気の燃焼がなかった場合であっても、その前後で角加速度の変化が極めて大きいから、排気上死点とは明瞭に判別がつく。
そのうえ、角速度の差異ではなく角加速度の差異に注目して判定するから、エンジン始動時にスタータによる駆動トルクがクランク軸にかかっている状態であっても、スタータによる加速度の増加分は比較の際に相殺されてしまう。その結果、スタータの駆動トルクがほぼ一定であれば、その影響はほとんどなくなってしまい、誤判定が生じる可能性は極めて小さくなる。
したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、判定の信頼性が極めて高くなるという効果がある。
[装置発明]
(第7手段)
本発明の第7手段は、4ストロークサイクル単気筒エンジンに付設される回転電機と、この回転電機に装備されたセンサからの出力に基づき、所定のプログラムを実行して同エンジンの行程判別を行うECUとを有する単気筒エンジンの行程判別装置である。
この回転電機は、同エンジンのエンジンブロックに対して固定される固定子と、同エンジンのクランク軸に直結される回転子と、この回転子の回転を検出するセンサとをもつ。そして、この回転子からは、一箇所の欠け歯部を除いて一周を等分する複数箇所には、このセンサに検知されるべきマーカとして、それぞれ配設されたクランクパルス歯が突出して形成されている。一方、このセンサは、この固定子に取り付けられており、各該クランクパルス歯の通過を検知する磁気センサである。また、このECUは、この磁気センサから出力されるパルス信号に基づき、所定のプログラムを実行して同エンジンの行程判別を行う電子装置である。
本手段の特徴は、前記プログラムは第1手段〜第6手段のうちいずれかの行程判別方法を実施するものであることである。
本手段では、前述のように、そのプログラムがどの解決手段を実施するものであるかによって作用が少しずつ異なるが、該当する解決手段の作用効果が得られる。
本発明の「単気筒エンジンの行程判別方法および行程判別装置」がもつ実施形態については、当業者が本発明を実施することができるだけの理解が得られるように、以下の記載で明確かつ十分に説明する。なお、本発明の出願時点では、以下の実施形態のうちいずれかが最良の形態に相当する可能性があるものと発明者は考えている。
実施形態1
(装置構成)
先ず、この明細書でいう行程判別とは、4ストロークサイクルエンジンのクランク軸が一サイクル二回転のうちどこにあるかを示す位相角を計測するために、クランク軸の回転角度が同じでも位相角が一回転分だけ異なる表裏の行程を判別することである。あるいは、行程を判別して位相角(0°〜720°)を正しく求めることまでを含めてもよい。行程判別が正しく為されて位相角が求まれば、それに基づいて点火プラグの発火タイミングや燃料噴射装置の作動タイミングなどを適正に制御することが可能になる。
本発明の実施形態1における単気筒エンジンの行程判別装置1は、燃料直噴型で点火プラグをもつタイプの4ストロークサイクル単気筒エンジン(図略)に付設されるものであり、ECUを除くその要部構成を図1に示す。すなわち行程判別装置1は、同エンジン(図略)の補機(アクセサリ)であるAC発電機2と、AC発電機2に付設された磁気センサ3と、図示しないECUとを有する。
AC発電機2の固定子(図略)は、同エンジンのエンジンブロック(図略)に対して固定されており、回転子4は、同エンジンのクランク軸9に直結されて回転駆動される。
そして、回転子4の外周面には、一箇所の欠け歯部6を除いて一周を12等分する11箇所に、クランクパルス歯5が30°毎に突出して形成されている。これらのパルス歯5は、磁気センサ3で検知すべきマーカとして配設されているものであり、回転子4を形成する鋼板から打ち出し加工によって形成されている。ここで、11個のパルス歯5は、磁気センサ3からのパルス信号が立ち上がるところが上死点および下死点から30°の整数倍の角度位置にくるように配設されている。
すなわち、図2に示すように、もし欠け歯部6にパルス歯5と同様の突起があったと仮定すれば、下死点でパルス信号の立ち上がりが検出されるであろう角度位置に、欠け歯部6が来るように、これらのパルス歯5は配設されている。各パルス歯5によって生じるパルス信号には、同図の下部に横並びで示すように番号付けされており、これらの番号は、前述の図1に示す各パルス歯5および欠け歯部6の番号に対応している。また、同図の上部には、排気下死点および吸入下死点と、排気行程、吸気行程、圧縮行程および膨張行程の四つの行程とが記載されている。さらに、同図のグラフは、クランク軸9が所定角度回転するのに要するパルス間時間、すなわちクランク軸9の角速度の逆数が変化する様子を定性的に示したものである。
一方、磁気センサ3は、再び図1に示すように、各クランクパルス歯5が近傍を通過していくのを検知するセンサであり、クランク角センサやクランクパルスセンサといった名称で呼ばれることもある。磁気センサ3は、AC発電機2の固定子(図略)に取り付けられており、磁気センサ3で得られたパルス信号は、前述のECU(図略)に送られる。
このECUは、磁気センサ3(図1参照)から出力されるパルス信号に基づき、所定のプログラムを実行して同エンジンの行程判別を行い、前述のように点火プラグの発火タイミングと燃料噴射装置の作動タイミングを適正に制御する。そして、このプログラムは、以下の行程判別方法を実施して行程判別を行うようコーディングされたものである。
(方法構成および作用)
本発明の実施形態1における行程判別方法は、同じく図1に示すように、4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸9に直結した回転子4と、同エンジンに対して固定された磁気センサ3とを用いる行程判別方法である。
本方法では、一箇所の例外部分としての欠け歯部6を除いて回転子4の一周を30°毎に12等分する11箇所に、それぞれ配設されたマーカとしてのパルス歯5が、回転子4の回転に伴って通過するのを磁気センサ3で検知する。そして、磁気センサ3から得られたパルス信号に基づいて、クランク軸9の回転角度を計測するとともに、同エンジンの状態が排気行程、吸気行程、圧縮行程および膨張行程の四行程うちどの行程にあるかを判別する行程判別を行う。そして、この行程判別をもって、クランク軸9の一サイクル二回転中での位相角を求める。
この行程判別に際し、図3(a)に示すように、これら11個のパルス歯5のうち所定のパルス歯5(図1中のNo.1)と他の所定のパルス歯5(No.6)との間にある150°に及ぶ回転角度の区間をもって判定領域Aと定義する。すなわち判定領域Aは、NパルスNUM1の立ち上がりからパルスNNUM6の立ち上がりまでの区間であり、この区間でのクランク軸回転角は150°である。
一方、この判定領域Aとは位相角が一回転分だけ異なる判定領域Bが、図3(b)に示すように、パルス歯5(No.13)と他のパルス歯5(No.18)との間に、やはり回転角150°の区間として定義される。すなわち判定領域Bは、パルスNNUM13の立ち上がりからパルスNNUM18の立ち上がりまでの区間である。
そして、これら表裏一対の判定領域A,Bを両判定領域A,Bと呼ぶことにする。両判定領域A,Bは、欠け歯部6の直後に、欠け歯部6に隣接して設定されている。
ところで、再び図1に示すように、No.1のパルス歯5とNo.13のパルス歯5とは同一であって、クランク軸9の回転に伴って欠け歯部6の後に最初に出現する。同様に、No.6のパルス歯5とNo.18のパルス歯5とも互いに同一であって、いずれも欠け歯部6の後に6番目に出現するパルス歯5のことである。したがって、両判定領域A,Bは互いに同一の回転角度の区間(下死点から30°の位置から始まり上死点で終わる区間)であるから、そのままではいずれがいずれであるのか、判定をつけるのは難しい。
すなわち、両判定領域A,Bのうち一方は排気行程の少なくとも一部を含んでおり、他方は圧縮行程の少なくとも一部を含んでいる。つまり、図3(c)に示すように、排気行程に属している方の区間を判定領域Aとし、圧縮行程に属している区間を判定領域Bとしているのであるが、単に欠け歯部6からパルス信号の数を数えているだけでは、いずれがいずれであるのか判定することができない。
そこで、本実施形態の行程判別方法では、両判定領域A,Bの間での回転所要時間の比較を行うことによって、いずれがいずれであるかの判定を行う。すなわち、欠け歯部6の後に出現する1番目のパルス信号の立ち上がりから6番目のパルス信号の立ち上がりまでの5ピッチ分150°の区間を回転するのに要した時間を計り、一回目の時間と二回目の時間とを比較することによって両判定領域A,Bの判別を行う。もちろん、区間時間が短かった方が排気行程に属する判定領域Aであり、逆に区間時間が長かった方が圧縮行程に属する判定領域Bであると判定される。なぜならば、回転角速度は、膨張行程でだけ大きく増し、その他の排気行程、吸気行程および圧縮行程のうち大半で減っていく傾向にあるからである。
以上を簡潔にまとめると、4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸9が一サイクル二回転中でどこの位相角にあるかを求めるにあたって、本実施形態の行程判別方法は次のようにする。すなわち、この位相角が一回転分だけ異なる表裏一対の判定領域A,Bの間で、互いに回転所要時間の大小を比較することにより、この比較時点でこの位相角が四行程のうちいずれに属しているかを判別する。本実施形態では、以上のようにして行程判別がなされ、もって位相角をも求めることができる。
(処理手順)
前述のように、本実施形態の行程判別装置1が有するECU(図略)は、以上の行程判別方法を実施して行程判別を行うようコーディングされたプログラムをもち、このプログラムの処理手順は、図4に示すフローチャートに従って行われる。
すなわち、先ずエンジン始動の操作がなされると、このプログラムは走り始める。そして、ステップS1でパルス信号の検知を確認し、ステップS2で欠け歯部6が検出されたことを認識する。
すると、ステップS3〜ステップS5で、そのパルス信号が欠け歯部6から何番目のものであるか仮の番号付けが行われ、歯間時間の積算がされる。すなわち、初めに検知された欠け歯部を仮に図2下段のパルス欠落部(0)としておき、No.18のパルス信号までの歯間時間のうち、パルスNo.1〜No.6の歯間時間が積算されて仮に判定領域Aにかかった時間(A=TN0+TN1+・・・+TN5)とされる。また、次に検知された欠け歯部を仮にパルス欠落部(12)としておき、続いて検出されるパルスNo.13〜No.18の歯間時間が積算されて仮に判定領域Bにかかった時間(B=TN11+TN12+・・・+TN16)とされる。
そして、ステップS6で両者A,Bの大小が比較されて行程判別がなされ、その結果、後者Bの方が長ければそのままであるが、そうでなければステップS7で一周分だけパルス信号の番号が交換され、両判定領域A,Bも交換される。しかる後、ステップS8〜ステップS9で終了判定がなされる。
このようにして適正に行程判別がなされ、位相角が正しく求まれば、燃料噴射タイミングや点火タイミングを適正に設定できるようになり、無駄な燃料噴射や無駄火を控えることができる。
(効果)
本実施形態の行程判別装置および行程判別方法は、以上のように作用するので、次のような効果が得られる。
すなわちエンジン始動時には、クランク軸9の回転角度が、初めにパルス信号の欠落で欠け歯部6が検出されてから1回転に加えて150°強に達すれば、行程判別を終えて位相角を一サイクル二回転のうちで定めることができる。これはつまり、クランク軸9が1回転半(540°)程度を回転する間に、行程判別を終えることができるということである。そして、始動前のクランク軸9の初期位置が仮に本実施形態の行程判別に最も回転角度のかかる位置にあったとしても、回転角度が2回転を少し超えた程度に達するまでに位相角を定位することができる。
ここで、本実施形態では、前述のようにセンサは安価な磁気センサ3(図1参照)一つだけで済み、そのマーカとして設けられる11箇所のパルス歯5なる突起部も容易に打ち出し加工できるから、装置価格は従来技術1によるものよりも安価で済む。したがって本実施形態によれば、従来技術1よりも4ストロークサイクル単気筒エンジンを低廉化できながら、始動時に無駄な燃料噴射や無駄火が生じることはほとんどなくなり、より速やかに同エンジンを始動することができるようになるという効果がある。
(変形態様1)
本実施形態では、欠け歯部6の位置は、再び図2および図3(c)に示すように、仮にパルス歯5がそこにあればパルス信号の立ち上がりが下死点にほぼ一致するように配設されていた。換言すれば、そのようになるように11個のパルス歯5が配設されていた。
しかし、本実施形態の変形態様1として、欠け歯部6の位置をある程度の範囲で前後に移動させて設定しても、判定領域A,Bの間で明瞭なパルス間時間の差違が生じるから、ほぼ同様の効果を得ることができる。なお、その範囲はおおむね下死点の前後60°程度までである。
実施形態2
(構成および作用)
本発明の実施形態2における単気筒エンジンの行程判別装置は、前述の実施形態1(図1参照)とほぼ同様の外見をしているが、その構成は次の三点で実施形態1と異なっている。
第一に、図5(c)に示すように、欠け歯部6(図1参照)が上死点付近にあることである。より正確には、もし欠け歯部6にパルス歯5があると仮定すれば、そのパルス信号の立ち上がりが来るであろうはずの角度位置が、上死点にあることである。
第二に、これに伴って、図5(b)に示すように、判定領域Aは吸気行程の一部を含んでおり、判定領域Bは膨張行程の一部を含んでいる。ただし、図5(a)に示すように、両判定領域A,Bはいずれも欠け歯部6の直後に隣接して設定されており、30°毎に配設された欠け歯部6の5ピッチ分(すなわち150°)の範囲であることは、前述の実施形態1と同様である。
第三に、センサ信号を処理して行程判別を行うECU(図略)に内蔵されたプログラムが、実施形態1のものとは異なっていることである。
すなわち、実施形態1のように両判定領域A,Bで回転に要した所要時間を比べるのではなく、本実施形態では、両判定領域A,Bの間でパルス間隔変動量を比較して行程判別を行う。換言すれば、本実施形態では、両判定領域A,Bで各歯間時間の短縮分を積算したものを比較して行程判別を行っている。これは、両判定領域A,Bの間に(すなわち吸気行程の150°区間と膨張行程の150°との間に)生じる角速度の差異を比較することで、実質的に区間平均の角加速度の大小を比較することにほかならない。そして実質的に、平均角加速度を両判定領域A,Bの間で大小比較することによって、この比較時点で位相角が四行程のうちいずれに属しているかを判別している。
このプログラムで行う処理手順を図6のフローチャート示すが、このフローチャートは実施形態1のフローチャート(図4参照)とは、ステップS4AおよびステップS6Aだけが異なっている。
すなわち、ステップS3では、欠け歯部の直後に検出されたパルス信号を仮にいったんNo.1として、番号付けを始める。そして、ステップS4Aでは、先ず判定領域Aの区間で歯間時間の差を積算してDTAとし、次に判定領域Bの区間で歯間時間の差を積算してDTBとする。ここで、DTAの計算式とDTBの計算式とでは、それぞれの右辺で、S4Aを一回実行するにつき一項ずつ加算されてくようになっている。しかる後、ステップS6Aで両者の大小を比較し、歯間時間の短縮量が判定領域Aでよりも判定領域Bで大きければ、そのままステップS8に進んで行程判別を完了する。しかし逆に、歯間時間の短縮量が判定領域Aでよりも判定領域Bで小さければ、仮に定めた両判定領域A,Bは逆であったと判定し、ステップS7Aに進んでこれを改める。
(効果)
本実施形態では、前述の構成の単気筒エンジンの行程判別装置および行程判別方法が、以上のように作用するので、実施形態1の効果と同様の効果が得られる。
そればかりではなく、膨張行程では大きな正の角加速度が生じるのに比べ、吸気行程で生じる角加速度はずっと小さいから、本実施形態のように両判定領域A,Bで実質的に角加速度を比較するのであれば、その違いは明瞭である。ここで、膨張行程で混合気が燃焼していれば、正の角加速度は極めて大きなものになるが、混合気に着火していなくてもそれなりに大きな正の加速度が生じる。
ところで、スタータ(図略)によっておおむね一定の駆動トルクがクランク軸9に加えられているものと仮定すれば、クランク軸9の回転にはその分の角加速度が上乗せされる。しかし、本実施形態のように、両判定領域A,Bの間で比較される対象が実質的に角加速度であれば、両者の間でスタータによる角加速度は相殺され、行程判別にはほとんどスタータの影響が及ばない。
したがって、本実施形態では行程判別の信頼性が極めて高く、その点で前述の実施形態1よりも大きな効果が得られる。
実施形態3
(構成および作用)
本発明の実施形態3では、単気筒エンジンの行程判別装置1のハードウェアは前述の実施形態2と同様であり、欠け歯部6が上死点にくるように30°毎の11箇所にパルス歯5(図1参照)が配設されている。本実施形態が前述の実施形態2と異なる点は、磁気センサ3のパルス信号に基づいて行程判別を行うECU(図略)のプログラムにあり、つまりこのプログラムで実行される行程判別方法にある。
図7に示すように、本実施形態の行程判別方法では、両判定領域A,Bが上死点にあたる欠け歯部を跨いで設定されている。すなわち、判定領域Aは、排気行程の後半部から欠け歯部を跨いで吸気行程の前半部までに設定されており、判定領域Bは、圧縮行程の後半部からやはり欠け歯部を跨いで膨張行程の前半部までに設定されている。
ここで、図8を参照して、パルス信号の取り込みについて判定領域Aを例に取り上げて説明する。
すなわち、最初にパルス信号の立ち上がりを四つ分だけ経過した後に検出された欠け歯部を挟む区間を、取りあえず仮に判定領域Aとしておく。そして、欠け歯部直前に検出された4パルス分の区間にあたる判定領域A1と、欠け歯部直後に検出されたやはり4パルス分の区間にあたる判定領域A2とに分けて、パルス信号の立ち上がりや立ち下がりのタイミングが、ECUに取り込まれる。
そして、クランク軸9(図1参照)の角度位置が上死点を通過する際に、この上死点通過の前後で4パルス分の歯間時間を計測しておき、前後それぞれに積算して両者を比較する。そして、上死点を挟んで所定区間の歯間時間が短縮されていれば、その上死点は圧縮上死点であったものと判定し、逆に短縮されていなければその上死点は排気上死点であったものと判定する。
(処理手順)
本実施形態のプログラムがもつ作用の要点は以上であるが、ここでは図9のフローチャートを参照して、このプログラムで行われる処理手順の詳細を具体的に説明する。
すなわち、先ずエンジン始動手順がスタートすると、このプログラムはステップS0から始まり、ブロックB0(ステップS1〜S3)で、各パラメータや各フラッグが初期化される。次にブロックB1(ステップS4,S5)で、パルス信号の検出の有無と欠け歯部の検出の有無とが判定される。
そして、ステップS5で欠け歯部が検出されなければ、処理手順はブロックB2(ブロックB21,B22およびステップS27,28)に進み、欠け歯部検出前の歯間時間BTNiを4ピッチ分だけ求めておく。すなわち、ブロックB21(ステップS21〜S24)で新たに検出した歯間時間を取り込んでおき、ブロックB22(ステップS25,S26)で欠け歯部検出直前の歯間時間の4ピッチ分(BTN0〜BTN3)に更新して、メモリ(図略)に記憶しておく。
一方、ブロックB2の冒頭(ステップS21)で、欠け歯部が検出されて以後のパルス信号であると判定されていれば、処理手順はそのままブロックB3(ステップS31〜S39)へ移行する。そしてブロックB3に入ると、先ずステップS31〜S33で、欠け歯部直後のパルス信号の歯間時間を4ピッチ分(TN0〜TN3)、メモリに記憶しておく。しかる後、ステップS34で、以前にブロックB2で求めておいた欠け歯部検出直前の4ピッチ分の歯間時間(BTN0〜BTN3)を積算して、この値を「BTN0〜3」とする。また、続くステップS35では、欠け歯部検出直後の4ピッチ分の歯間時間(TN0〜TN3)を積算してこの値を「TN0〜3」とする。
こうしておいて、続くステップS36で「BTN0〜3」(前者)と「TN0〜3」(後者)との大小を比較して、もし前者が大きければ上死点以降で歯間時間が短縮されている。それゆえ、この上死点の前後で角加速度は加速に転じているわけなので、処理手順はステップS37に進んで、この上死点は裏位相(すなわち圧縮上死点)であると判定され、この上死点は判定領域B(図7参照)に属していたことが明らかになる。逆に、ステップS36で前者の方が後者よりも大きいのでなければ、この上死点では角速度が増えてはいないから、処理手順はステップS38に進んで、この上死点は表位相(すなわち排気上死点)であると判定される。
以上のようにして、位相角がパルス信号にして4ピッチ分の助走をしてから一つの上死点を通過すれば、それだけで行程判別は完了し、ステップS39およびステップS8の終了処理を経て、行程判別のプログラムは完了する。
(効果)
本実施形態では、以上のように一つの上死点の前後でそれぞれ4ピッチ分の歯間時間を計測することができれば、適正に行程判別を行うことができる。すなわち、パルス歯5のピッチが30°として、欠け歯部以前の4ピッチ分と、欠け歯部での2ピッチ分と、欠け歯部以後の4ピッチ分とで、合計10ピッチ(300°)があれば、行程判別できる。もしもクランク軸9の初期位置が最も不都合な位置にあっても、最大でもクランク軸9が一回転強だけ回転すれば、必ず行程判別を行うことができる。
したがって、本実施形態によれば、前述の実施形態1の効果に加えて、なおいっそう早期に行程判別を行うことができるという効果がある。
実施形態4
(構成および作用)
本実施形態の行程判別装置は、プログラムの違いを除いて前述の実施形態3の行程判別装置と同じ構成をしている。一方、本実施形態の行程判別方法は、次のようにして上死点を見分け、もって行程判別を行う方法である。
先ず、最初にパルス信号の立ち上がり四つを経過した後に検出された欠け歯部を挟む区間を、仮に判定領域Aとしておく。そして、欠け歯部直前に検出された4パルス分の区間にあたる判定領域A1と、欠け歯部直後に検出されたやはり4パルス分の区間にあたる判定領域A2とに分けて、パルス信号の立ち上がりタイミングがECUに取り込まれる。次に、同様にして次の欠け歯部を挟む所定の区間を仮に判定領域Bとしておき、判定領域Bについても前後の区間B1,B2に分けてパルス信号を取り込んでおく。
そして、クランク軸9(図1参照)の角度位置が上死点を通過した際に、この上死点通過の前後でこのクランク軸9の角加速度を計測し、両者の差を算出してこの角加速度の増加分を求める。そして、前回の上死点通過前後での角加速度の増加分と、今回の上死点通過前後での角加速度の増加分とを比較することにより、この増加分が大きかった方をもって圧縮上死点と判別する。一方、逆にこの増加分が小さかった方は、排気下死点と判定される。
(効果)
本実施形態では、上死点前後での角加速度の変化に着目して排気上死点と圧縮上死点との判別をしている。両者の間で角加速度の変化には明瞭な差異があるうえに、スタータの駆動トルクによって角加速度が上乗せされていても、それは二つの上死点の間で相殺されてしまう。
したがって、本実施形態の行程判別方法によれば、前述の実施形態1と同様の効果が得られるばかりではなく、行程判別の信頼性がいっそう向上するという効果もある。
実施形態1としての行程判別装置の要部構成を示す正面図 実施形態1でのパルス信号列および角速度を示すタイミングチャート 実施形態1としての行程判別方法の要点を示す組図 (a)一回目の欠け歯部通過後のパルス信号列を示すチャート (b)二回目の欠け歯部通過後のパルス信号列を示すチャート (c)四行程に占める両判定領域および欠け歯部の位相角を示すチャート 実施形態1での行程判別手順を示すフローチャート 実施形態2としての行程判別方法の要点を示す組図 (a)一回目の欠け歯部通過後のパルス信号列を示すチャート (b)二回目の欠け歯部通過後のパルス信号列を示すチャート (c)四行程に占める両判定領域および欠け歯部の位相角を示すチャート 実施形態2での行程判別手順を示すフローチャート 実施形態3の行程判別方法の要点を示すタイミングチャート 実施形態3での欠け歯部前後の判定領域を示すタイミングチャート 実施形態3での行程判別手順を示すフローチャート
符号の説明
1:行程判別装置
2:AC発電機(回転電機として)
3:磁気センサ(センサとして)
4:回転子
5:クランクパルス歯またはパルス歯(マーカとしての突起)
6:欠け歯部(例外部分として)
9:クランク軸
B:フローチャート中のブロック S:ステップ

Claims (7)

  1. 4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸に直結した回転子と、同エンジンに対して固定されたセンサとを用いる行程判別方法において、
    一箇所の例外部分を除いてこの回転子の一周を等分する複数箇所に、それぞれ配設されたマーカが、この回転子の回転に伴って通過するのをこのセンサで検知し、
    このセンサから得られた信号に基づいて、このクランク軸の回転角度を計測するとともに、同エンジンの状態が排気行程、吸気行程、圧縮行程および膨張行程の四行程うちどの行程にあるかを判別する行程判別を行い、
    もってこのクランク軸の一サイクル二回転中での位相角を求めるに際し、
    これらマーカのうち所定マーカと他の所定マーカとの間にある前記回転角度の区間をもって判定領域と定義すれば、前記位相角が一回転分だけ異なる表裏一対の判定領域(両判定領域と呼ぶ)ができるので、
    これら両判定領域の間での回転所要時間の比較と、これら両判定領域の間でのパルス間隔変動量の比較とのうち、少なくとも一方を行うことによって前記行程判別を行うことを特徴とする、
    単気筒エンジンの行程判別方法。
  2. 前記両判定領域のうち一方は、前記排気行程の少なくとも一部を含んでおり、
    前記両判定領域のうち他方は、前記圧縮行程の少なくとも一部を含んでいる、
    請求項1に記載された単気筒エンジンの行程判別方法。
  3. 前記両判定領域のうち一方は、前記吸気行程の少なくとも一部を含んでおり、
    前記両判定領域のうち他方は、前記膨張行程の少なくとも一部を含んでいる、
    請求項1に記載された単気筒エンジンの行程判別方法。
  4. 前記判定領域が前記例外部分に隣接して設定されていることと、
    前記判定領域が前記例外部分を跨いで設定されていることとのうち一方である、
    請求項1〜請求項3のうちいずれかに記載の単気筒エンジンの行程判別方法。
  5. 4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸が、一サイクル二回転中でどこの位相角にあるかを求めるにあたって、
    この位相角が一回転分だけ異なる表裏一対の判定領域の間で、互いに回転所要時間および平均角加速度のうち一方の大小を比較することにより、この比較時点でこの位相角が四行程のうちいずれに属しているかを判別することを特徴とする、
    単気筒エンジンの行程判別方法。
  6. 4ストロークサイクル単気筒エンジンのクランク軸が、一サイクル二回転中でどちらの位相角にあるかを求めるにあたって、
    このクランク軸の角度位置が上死点を通過した際に、この上死点通過の前後でこのクランク軸の角加速度を計測し、両者の差を算出してこの角加速度の増加分を求め、
    前回の上死点通過前後での前記増加分と、今回の上死点通過前後での前記増加分とを比較することにより、この増加分が大きかった方をもって圧縮上死点と判別することを特徴とする、
    単気筒エンジンの行程判別方法。
  7. 4ストロークサイクル単気筒エンジンに対して固定される固定子と、同エンジンのクランク軸に直結される回転子と、この回転子から突出して形成され一箇所の欠け歯部を除いて一周を等分する複数箇所にマーカとしてそれぞれ配設されたクランクパルス歯と、この固定子に取り付けられ各該クランクパルス歯の通過を検知する磁気センサとをもつ回転電機と、
    この磁気センサから出力されるパルス信号に基づき、所定のプログラムを実行して同エンジンの行程判別を行うECUと、
    を有する単気筒エンジンの行程判別装置において、
    前記プログラムは、請求項1〜請求項6のうちいずれかの行程判別方法を実施するものであることを特徴とする、
    単気筒エンジンの行程判別装置。
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