以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[樹脂フィルム]
本実施形態に係る樹脂フィルムは、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで少なくともいずれか一方の表面を測定したマルテンス硬さ(HMT 115)が、165〜350MPaであって、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで少なくともいずれか一方の表面を測定した緩和弾性率(Eit)が、3800〜6000MPaであることを特徴とするものである。
本発明者は、上述するように、温湿度変化による寸法変化が小さい等の、耐候性に優れた樹脂フィルムを得るために、樹脂フィルムの、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで測定した表面のマルテンス硬さ及び緩和弾性率に着目した。
そして、樹脂フィルムの表面の硬さ等を調整する方法としては、一般的に、樹脂フィルムを構成する樹脂の極性を高める方法、前記樹脂を高分子量化する方法、樹脂分子の配向をそろえる方法、及び樹脂フィルムに架橋剤を含有させる方法等の樹脂フィルムの表面を硬くする方法等が考えられるが、上述したような欠点がある。つまり、樹脂フィルムの、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで測定した表面のマルテンス硬さ及び緩和弾性率が、上記範囲内の値となることは、積極的に調整しなければ困難であった。
そこで、本実施形態に係る樹脂フィルムは、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで少なくともいずれか一方の表面を測定したマルテンス硬さ及び緩和弾性率が、それぞれ上記範囲内にすることによって、温湿度変化による寸法変化が小さい等の、耐候性に優れた樹脂フィルムを提供することができる。また、この樹脂フィルムは、表面のマルテンス硬さ及び緩和弾性率が、それぞれ上記範囲内であるので、機械的強度にも優れる。
ナノインデンテーション法は、超微小硬度計を用いて、先端形状が正三角錐状(バーコビッチ型)のダイヤモンドチップからなる圧子を平坦な試料表面(ここでは、樹脂フィルム)に押し込み負荷/除荷試験を行い、そのときの負荷/除荷応答から弾性率や硬さを測定する方法である。具体的には、前記負荷/除荷試験によって、試験力(荷重)−押し込み深さ曲線を作成し、その曲線から硬度や弾性率を求める方法である。試験力(荷重)−押し込み深さ曲線は、具体的には、以下のような操作を行って、作成する。まず、試料に対して、前記圧子を試料表面から所定の押し込み深さになるまで一定の速度で荷重を増加させて押し込む。そして、所定の押し込み深さまで前記圧子を押し込んだ後、所定の時間、一定の荷重で保持する。その際、徐々に圧子は、試料内に沈んでいく。そして、前記保持終了後、一定の速度で荷重が減少するように圧子を試料から引き抜く。その際、圧子を試料に押し込む直前の位置まで戻しても、圧子の押し込みによる変形の分だけ、圧子と試料とが離間してしまう。このような動作を行って、上記試験力(荷重)−押し込み深さ曲線を作成する。また、前記超微小硬度計としては、具体的には、例えば、株式会社島津製作所製の島津ダイナミック超微小硬度計DUH−211S等を用いることができる。
そして、ナノインデンテーション法において測定されるマルテンス硬さ(HMT 115)とは、試験力(荷重)が負荷された状態で測定される硬さである。具体的には、負荷増加時に測定される荷重−押し込み深さ曲線の関係から、荷重Fを、試料の表面から圧子の侵入した表面積Asで除することによって算出される。より具体的には、稜間角(対稜角)が115°の正三角錐状の圧子を用いた場合、下記式(1)から算出される。
HM=F/As=F/(26.43×h2) (1)
なお、前記式(1)中、HMは、マルテンス硬さ(MPa)を示し、Fは、荷重(N)を示し、Asは、表面積(mm2)を示し、hは、押し込み深さ(mm)を示す。
よって、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで表面を測定したマルテンス硬さとは、押し込み深さhが、1μm(0.001mm)であるときに、上記式(1)から算出される硬さである。なお、前記マルテンス硬さは、変形跡から塑性変形のみを測定しているビッカース硬さよりも薄膜で弾性力の高い試料での硬さを測定することができる。
また、ナノインデンテーション法において測定される緩和弾性率(Eit)とは、負荷/除荷試験によって、作成された試験力(荷重)−押し込み深さ曲線を用いて、下記式(2)から算出される弾性率である。
1/Er=(1−Vs2)/Eit+(1−Vi2)/Ei (2)
なお、前記式(2)中、Erは、押し込み接触による換算弾性率(MPa)を示し、Vsは、試料のポアソン比を示し、Eitは、緩和弾性率(MPa)を示し、Viは、圧子のポアソン比を示し、Eiは、圧子のヤング率(MPa)を示す。そして、Erは、下記式(3)から算出することができる。Vsは、横歪(%)を縦歪(%)で除した値である。例えば、樹脂フィルムを引っ張り試験機で定速で引っ張った場合の歪(伸び率)(横歪(%)及び縦歪(%))を測定し、これらの歪から算出することができる。より具体的には、例えば、ポアソン比測定装置(例えば、オリエンテック社製のテンシロンRTA−100等)によって測定することができる。Viは、0.07である。Eiは、1.14×106MPaである。
S=2×Er×Ap0.5/π0.5 (3)
なお、前記式(3)中、Sは、試験力(荷重)−押し込み深さ曲線における除荷開始時の傾き(近似曲線の傾き(dF/dh))を示し、Erは、押し込み接触による換算弾性率(MPa)を示し、Apは、接触投影面積(mm2)を示す。そして、Apは、下記式(4)から算出される。
Ap=23.96×hc2 (4)
なお、前記式(4)中、Apは、接触投影面積(mm2)を示し、hcは、接触深さ(mm)を示す。そして、hcは、下記式(5)から算出される。
hc=hmax−0.75×(hmax−hr) (5)
なお、前記式(5)中、hcは、接触深さ(mm)を示し、hmaxは、最大試験力Fmax時における押し込み深さ(深さ最大値)(mm)を示し、hrは、試験力(荷重)−押し込み深さ曲線の最大試験力Fmaxにおける除荷曲線の接線が深さ軸と交わる切片(mm)である。
よって、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで表面を測定した緩和弾性率とは、は、最大試験力Fmax時における押し込み深さ(深さ最大値)hmaxが、1μm(0.001mm)であるときに、上記式(2)〜(5)から算出される弾性率である。そして、この緩和弾性率は、上述のように、試験力(荷重)−押し込み深さ曲線における除荷開始時の傾き(近似曲線の傾き(dF/dh))に依存し、試料の塑性変形のしやすさや、弾性回復のしにくさ等を示す指標となる。
前記マルテンス硬さは、少なくともいずれか一方の表面が165〜350MPaであって、前記緩和弾性率は、少なくともいずれか一方の表面が3800〜6000MPaであればよいが、両側表面とも上記範囲内であることが好ましい。
また、前記マルテンス硬さは、少なくともいずれか一方の表面が165〜350MPaであり、180〜350MPaであることが好ましい。また、両側表面それぞれ、上記範囲内であることがより好ましい。前記マルテンス硬さが、小さすぎると、温湿度の変化によって、寸法が変化しやすくなる傾向がある。また、大きすぎると、樹脂フィルムが破断等の損傷を受けやすくなる傾向がある。具体的には、例えば、樹脂フィルムを製造する際、例えば、延伸時等に破断しやすくなったり、樹脂フィルムを偏光素子に貼着させる際に破断しやすくなる傾向がある。すなわち、樹脂フィルムの少なくともいずれか一方の表面のマルテンス硬さが、上記範囲内であると、表面が充分に硬く、温湿度の変化によって、寸法が変化しにくくなり、さらに、製造時や使用時等に上記のような不具合の発生を抑制すると考えられる。
そして、一方の表面を測定したマルテンス硬さと他方の表面を測定したマルテンス硬さとの差の絶対値、例えば、樹脂フィルムのA面とB面とのマルテンス硬さの差の絶対値が、10MPa以下であることが好ましく、5Mpa以下であることがより好ましい。前記差が大きすぎると、樹脂フィルムの搬送や貼り合わせ等の際に発生する応力によって発生する寸法変化の差が、一方の表面と他方の表面とで大きく、樹脂フィルムがそって(カールして)しまう傾向がある。よって、前記マルテンス硬さの差の絶対値が、10MPa以下であることによって、温湿度変化による寸法変化がより小さいものが得られる。
なお、A面及びB面とは、以下の面のことを示す。樹脂フィルムの表面は、後述する延伸装置での延伸工程において、上の面をA面といい、下の面をB面という。また、その延伸工程を、後述する溶液流延製膜法や溶融流延製膜法の中で行う場合、支持体に接していた面(支持体面)がB面となり、支持体に接していなかった面(エア面)がA面となる。
また、前記緩和弾性率は、少なくともいずれか一方の表面が3800〜6000MPaであり、4200〜6000MPaであることが好ましい。また、両側表面それぞれ、上記範囲内であることがより好ましい。前記緩和弾性率が、小さすぎると、塑性変形しにくすぎて、かえって温湿度変化による寸法変化が発生しやすくなる傾向がある。また、前記緩和弾性率が、小さすぎると、軟らかくなる傾向があり、マルテンス硬さを上記範囲内にすることが困難である。また、前記緩和弾性率が、大きすぎると、塑性変形しやすくて、寸法を元に戻そうとする力が働きにくくなる傾向がある。すなわち、樹脂フィルムの少なくともいずれか一方の表面の緩和弾性率が、上記範囲内であると、温湿度変化による微小な寸法変化に対して、樹脂フィルムの弾性回復や塑性変形が好適に働き、温湿度変化による、さらなる寸法変化を抑制しつつ、寸法を元に戻そうとする力が働くと考えられる。温湿度変化によって寸法が少し変化したとても、塑性変形しにくく、温湿度変化による寸法変化を減少させることができると考えられる。
そして、一方の表面を測定した緩和弾性率と他方の表面を測定した緩和弾性率との差の絶対値、例えば、樹脂フィルムのA面とB面との緩和弾性率の差の絶対値が、200MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましい。前記差が大きすぎると、一方の表面と他方の表面とで、温湿度変化による寸法変化の差が大きく、樹脂フィルムがそって(カールして)しまう傾向がある。よって、前記緩和弾性率の差の絶対値が、200MPa以下であることによって、温湿度変化による寸法変化がより小さいものが得られる。
以上より、樹脂フィルムの表面のマルテンス硬さ及び緩和弾性率が、それぞれ上記範囲内であると、樹脂フィルムを構成する樹脂が好適に配向されており、樹脂の極性を高めたり、樹脂を高分子量化することなく、温湿度変化による寸法変化が小さい等の、優れた耐候性を発揮できる表面硬さであると考えられる。そして、樹脂フィルムの表面のマルテンス硬さ及び緩和弾性率が、それぞれ上記範囲内にすることによって、温湿度変化による寸法変化が小さい等の、耐候性に優れた樹脂フィルムを提供することができると考えられる。
また、前記樹脂フィルムの幅は、1000〜4000mmであることが好ましい。このような広幅の樹脂フィルムは、光学フィルムとして使用する際、大型の液晶表示装置への使用、偏光板加工時のフィルムの使用効率、生産効率の点からも好ましい。また、前記樹脂フィルムの膜厚は、液晶表示装置の薄型化、フィルムの生産安定化の観点等の点から、20〜100μmであることが好ましい。ここで膜厚とは、平均膜厚のことであり、株式会社ミツトヨ製の接触式膜厚計により、前記樹脂フィルムの幅方向に20〜200箇所、膜厚を測定し、その測定値の平均値を膜厚として示す。
また、前記樹脂フィルムは、偏光板の透明保護フィルム等の光学フィルムとして使用する場合、樹脂フィルムを構成する樹脂として、透明性樹脂を含有することが好ましい。透明性樹脂としては、溶液流延製膜法や溶融流延製膜法等によって、フィルム状や基板状に成形したときに透明性を有する樹脂であれば、特に制限されないが、溶液流延製膜法や溶融流延製膜法等による製膜が容易であること、ハードコート層等との密着性に優れていること、光学的に等方性であること等が好ましい。なお、ここで透明性とは、可視光の透過率が60%以上であることであり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
前記透明性樹脂としては、具体的には、例えば、セルロース樹脂;セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、及びセルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂等のセルロース樹脂誘導体;ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂等のポリスルホン系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリメチルペンテン樹脂等のビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルケトンイミド樹脂;ポリアミド系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、セルロース樹脂及びセルロース樹脂誘導体が好ましい。すなわち、前記樹脂フィルムは、セルロース樹脂及びセルロース樹脂誘導体の少なくともいずれか一方を含有することが好ましい。そうすることによって、温湿度変化による寸法変化が小さい等の、耐候性に優れ、さらに、透明性の高い樹脂フィルムを提供することができる。さらに、前記透明性樹脂としては、セルロースエステル系樹脂がより好ましく、セルロースエステル系樹脂の中でも、セルロースアセテート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルローストリアセテート樹脂が好ましく、セルローストリアセテート樹脂が特に好ましい。また、前記透明性樹脂は、上記例示した透明性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
次に、前記セルロースエステル系樹脂について説明する。
セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、30000〜200000であることが、樹脂フィルムに成型した場合の機械的強度が強く、かつ、溶液流延製膜法において適度なドープ粘度となる点で好ましい。また、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)が、1に近いほど分子量が均一で好ましく、0.3〜1.0の範囲内であることがより好ましい。
また、セルロースエステル系樹脂等の樹脂の平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。よって、これらを用いて数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
セルロースエステル系樹脂は、炭素数が2〜4のアシル基を置換基として有しているものが好ましい。その置換度としては、例えば、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYとの合計値が2.2以上2.95以下であって、Xが0より大きく2.95以下であることが好ましい。
また、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は、公知の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
前記セルロースエステル系樹脂の原料であるセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することができるが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
[樹脂フィルムの製造方法]
次に、本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法について説明する。
本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法は、前記樹脂フィルムの製造方法であって、長尺状のフィルムの幅方向の両側端部を複数の一対の把持部で把持しながら、前記把持部が、前記フィルムの長手方向に移動するとともに、前記フィルムの幅方向に前記把持部間の距離を徐々に広げる方向に移動する延伸工程を備え、前記延伸工程が、前記フィルムに対する貧溶媒の蒸気の存在下で行うことを特徴とするものである。そして、本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法は、前記延伸工程を備え、前記樹脂フィルムを製造するものであれば、特に限定されず、延伸前のフィルムは、特に限定されない。具体的には、例えば、本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法としては、溶液流延製膜法及び溶融流延製膜法等における延伸工程として、上記のような延伸工程を施すもの等が挙げられ、延伸前のフィルムとしては、溶液流延製膜法及び溶融流延製膜法等における最終製品である樹脂フィルムになる前のフィルム等が挙げられる。また、ここでフィルムとは、延伸前のフィルムや前記延伸工程中でのフィルムを指し、樹脂フィルムとは、前記延伸工程を施した後のフィルムを指す。そして、フィルムの幅方向とは、長尺状のフィルムの長手方向(搬送方向)に直交する方向である。
(延伸工程)
まず、前記延伸工程について説明する。
前記延伸工程は、前述したように、長尺状のフィルムの幅方向の両側端部を複数の一対の把持部で把持しながら、前記把持部が、前記フィルムの長手方向に移動するとともに、前記フィルムの幅方向に前記把持部間の距離を徐々に広げる方向に移動する工程であって、前記フィルムに対する貧溶媒の蒸気の存在下で行うものである。具体的には、例えば、図1に示すような延伸装置によって行われる。また、延伸装置としては、図1に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよい。
図1は、延伸装置11の構成を示す概略図である。前記延伸装置11は、フィルム17を搬送方向と直交する方向(Transverse Direction:TD方向)に延伸させるものであり、第1レール12、第2レール13、複数のクリップ14、第1エアカーテン形成部15、及び第2エアカーテン形成部16等を備える。具体的には、図1に示すように、フィルム17の幅方向の両側端部を把持部であるクリップ14で把持して、対向するクリップ14間の距離を大きくすることによって、TD方向に延伸させるものである。
前記第1レール12は、前記フィルム17の一方の端部に沿って延び、後述するように、前記クリップ14の走行方向を定める。前記第2レール13は、前記フィルム17の他方の端部に沿って延び、後述するように、前記クリップ14の走行方向を定める。前記クリップ14は、複数個あり、各クリップが前記フィルム17の幅方向の両側端部を把持し、前記フィルム17を把持したまま、前記第1レール12及び前記第2レール13上をフィルム17の搬送方向に順次走行する。なお、前記クリップ14は、図1には、省略して記載しており、実際には、前記第1レール12及び前記第2レール13上に所定の間隔を空けて配置されている。前記第1エアカーテン形成部15及び前記第2エアカーテン形成部16は、それぞれエアカーテンを形成する。そして、前記第1エアカーテン形成部15及び前記第2エアカーテン形成部16は、前記第1レール12、前記第2レール13及び前記クリップ14を、フィルム17の搬送方向の前後に挟むように配置されている。
前記第1レール12及び前記第2レール13による前記クリップ14の走行方向は、以下のように定められる。まず、領域A2において、前記クリップ14は、前記第1エアカーテン形成部15によって形成されたエアカーテンを通過した後のフィルム17の幅方向の両側端部を複数のクリップ14で把持しながら、前記フィルム17の両側端部に沿って、前記クリップ14間の距離をほとんど変更しないように走行する。次に、領域A3において、前記クリップ14は、前記フィルム17の幅方向の両側端部を複数のクリップ14で把持しながら、前記フィルム17の長手方向に移動するとともに、前記樹脂フィルム17の幅方向に前記クリップ14間の距離を徐々に広げる方向に移動するように走行する。最後に、領域A4において、前記クリップ14は、フィルム17の幅方向の両側端部を複数のクリップ14で把持しながら、前記フィルム17の両側端部に沿って、前記領域A3での前記クリップ14間の距離をほとんど変更しないように走行する。また、領域A4でのクリップ14は、前記フィルム17の把持を開放して、その後、前記領域A2まで戻す。なお、前記クリップ14の把持から開放された前記フィルム17は、前記第2エアカーテン形成部16の方に搬送され、前記第2エアカーテン形成部16によって形成されたエアカーテンを通過する。
前記フィルム17は、前記クリップ14を上記のように走行させることによって、TD方向に延伸させる。
そして、前記領域A2における前記クリップ14の移動方向と前記領域A3における前記クリップ14の移動方向とがなす角θが、0.01〜5°であることが好ましく、0.1〜3°であることがより好ましい。前記角θが小さすぎると、最終的な延伸率を高めるために、延伸工程を行う領域(延伸ゾーン)を長くする必要があり、経済負荷が大きく、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが困難になる傾向がある。また、前記角θが大きすぎると、樹脂の配向に必要な緩和時間を確保するために生産速度が低下する傾向があり、さらに、前記クリップ14で把持した箇所から、フィルム17が破断するおそれがある。
また、前記フィルム17のTD方向の延伸率は、15〜60%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましい。前記延伸率が低すぎると、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが困難になる傾向がある。また、前記延伸率が高すぎると、前記クリップ14で把持した箇所から、フィルム17が破断するおそれがある。なお、延伸率は、下記式(6)で定義される。
延伸率(%)={(L2−L1)/L1}×100 (6)
ここで、L1は、フィルムの所定の位置の端部間の延伸前の長さを示し、L2は、フィルムの所定の位置の端部間の延伸後の長さを示す。なお、フィルムの幅は、C型JIS1級の鋼製スケールで幅を測定した値である。
また、前記フィルム17を延伸させる際、前記フィルム17に対する貧溶媒の蒸気の存在下で行う。具体的には、前記第1エアカーテン形成部15と前記第2エアカーテン形成部16とに囲まれた領域(延伸ゾーン)A2〜A4に、前記貧溶媒の蒸気を充填させる。そうすることによって、前記貧溶媒の蒸気が凝集し、液体となって、樹脂フィルムに付着し、その付着した溶媒による跡が樹脂フィルム上に形成されることを抑制することができる。
そして、上述したように、フィルムに対する貧溶媒の蒸気の存在下で延伸を行うことによって、乾燥した空気の存在下で延伸するよりも延伸しやすく、高い延伸率で延伸しても破断等の発生を抑制できると考えられる。また、良溶媒の蒸気の存在下で延伸すると、樹脂フィルムが部分的に溶解される等の理由により、樹脂フィルムが部分的に溶解し、その溶解によって、得られる樹脂フィルムの性状を確保することができないと考えられる。さらに、良溶媒の蒸気の存在下で高延伸率で延伸すると、樹脂フィルムの部分的な溶解によって、かえって樹脂フィルムが破断する傾向があると考えられる。
そこで、上記のように、フィルムの貧溶媒の蒸気の存在下で延伸を行うことによって、樹脂フィルムの破断等の発生を抑制しながら、高延伸で延伸することができるので、樹脂フィルムの表面のマルテンス硬さ及び緩和弾性率が、それぞれ上記範囲内となるように延伸することができると考えられる。
そして、樹脂フィルムの表面のマルテンス硬さ及び緩和弾性率が、それぞれ上記範囲内となるように延伸されているので、樹脂フィルムを構成する樹脂が好適に配向されており、樹脂の極性を高めたり、樹脂を高分子量化することなく、温湿度変化による寸法変化が小さい等の、優れた耐候性を発揮できる表面硬さであると考えられる。
以上より、上記のような耐候性及び機械的強度に優れた樹脂フィルムを容易に製造することができる。
また、前記貧溶媒の濃度としては、5〜20体積%であることが好ましく、6〜15体積%であることがより好ましい。前記濃度が低すぎると、貧溶媒の蒸気存在下で延伸を行うことによる前述した効果が低減し、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが困難になる傾向がある。また、前記濃度が高すぎると、均一に延伸されない、樹脂フィルム表面が波打つ、乾燥に時間がかかる、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが困難になるという傾向がある。
なお、ここで貧溶媒とは、下記に示す浸透性試験により得られたフィルムに対する浸透性が10g/(m2・分)以下の溶媒のことである。
<浸透性試験>
浸透性試験とは、フィルムに対する液体の所定時間及び所定面積あたりの浸透性を調べる試験である。
具体的には、まず、ガラス管と、ガラス管の両側端部に、スライドによる着脱が可能なふたとの重量を測定する。そして、浸透性の測定対象である液体1kg(±50g以内)が封入された状態となるように、ガラス管の両側端部に、スライドによる着脱が可能なふたを装着する。その液体を封入したガラス管を直立した状態にし、そのときに上側となるふたを外し、開放された上側端部をフィルムで覆う。
次に、フィルムを覆ったガラス管を上下反転させて、フィルムに前記液体が接触するようにした後、そのとき上側となる、もう一方のふたを外して、フィルムで覆った側とは反対側の端部を開放する。その状態で、所定の測定時間放置する。
前記測定時間が経過したら、上側端部にふたを装着し、ふたを装着したガラス管を上下反転させた後、フィルムを外す。そして、もう一方の端部(フィルムで覆われていた側の端部)にもふたを装着し、そのときの重量を測定する。その質量から、減少した液体の重量を算出する。
そして、減少した液体の重量(g)を、フィルムの液体と接触していた面積(m2)と測定時間(分)とで除した値が、フィルムに対する浸透性(g/(m2・分))として算出される。なお、フィルムの液体と接触していた面積は、ガラス管の内径から算出することができる。
この浸透性試験に用いるガラス管及びふたの材質は、測定対象である液体に影響されないものならば、特に限定されないが、温度等による体積変化の少ないものが好ましい。そして、通常、この浸透性の評価は、サンプルであるフィルムが変形又は破壊されない条件で測定を行う。前記浸透性試験を行った際、測定時間が1分間以内で液体がフィルム溶解させて、穴が開いてしまった場合は、正確な浸透性評価が不可能であり、測定不可能とする。
また、前記貧溶媒としては、透明性樹脂によって異なるが、例えば、透明性樹脂として、セルロースエステル系樹脂を用いた場合、メタノールやエタノール等の炭素原子数が1〜4のアルコール、及び水等が挙げられる。
また、延伸時における前記フィルム17の、貧溶媒含有率は、1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。前記貧溶媒含有率が低すぎると、貧溶媒の蒸気存在下で延伸を行うことによる前述した効果が低減し、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが困難になる傾向がある。また、前記貧溶媒含有率が高すぎると、均一に延伸されない、樹脂フィルム表面が波打つ、乾燥に時間がかかる、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが困難になるという傾向がある。なお、前記貧溶媒含有率は、以下のようにして算出したものである。まず、フィルム17の質量(延伸前質量)を測定する。その後、そのフィルム17を、上記延伸工程を施すときと条件、具体的には、貧溶媒の蒸気の濃度及び温度等を同じにした環境下に、上記延伸工程にかかる時間と同時間放置したのち、そのフィルム17の質量(延伸後質量)を測定する。そして、下記式(7)を用いて、貧溶媒含有率(質量%)を算出する。
貧溶媒含有率=(延伸後質量−延伸前質量)/延伸後質量×100 (7)
また、前記フィルム17を延伸させる際、通常、前記フィルム17を加熱して行う。前記フィルム17の加熱は、特に限定されないが、具体的には、例えば、前記貧溶媒の蒸気を前記フィルム17に吹き付けることによって、前記フィルム17を加熱してもよいし、別途、加熱風を吹き付ける前記フィルム17に吹き付けることによって、前記フィルム17を加熱してもよい。そして、前記フィルム17の温度は、ガラス転移温度(Tg)以下であって、100℃以上であることが好ましく、Tg以下であって、130℃以上であることがより好ましい。
また、前記延伸工程の前後の少なくとも一方に、前記フィルム17を加熱する加熱工程を備えることが好ましい。そうすることによって、耐候性及び機械的強度に優れた樹脂フィルムをより容易に製造することができる。前記加熱工程としては、具体的には、以下のような第1加熱工程及び第2加熱工程等が挙げられる。
前記第1エアカーテン形成部15を通過する前、具体的には、図1に示す領域A1において、前記フィルム17を加熱する第1加熱工程を備えることが好ましい。そして、ここでのフィルム17の温度は、前記延伸工程時のフィルムの温度より高いことが好ましく、具体的には、例えば、Tg以下であって、105℃以上であることが好ましく、Tg以下であって、135℃以上であることがより好ましい。そうすることによって、前記延伸工程前に、フィルムを加熱することができ、前記延伸工程を好適に行うことができる。よって、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが容易となり、耐候性及び機械的強度に優れた樹脂フィルムをより容易に製造することができる。
また、前記第2エアカーテン形成部16を通過した後、具体的には、図1に示す領域A5において、前記フィルム17を加熱する第2加熱工程を備えることが好ましい。そして、ここでのフィルム17の温度は、前記延伸工程時のフィルムの温度より高いことが好ましく、具体的には、例えば、Tg以下であって、105℃以上であることが好ましく、Tg以下であって、135℃以上であることがより好ましい。そうすることによって、前記フィルム17を構成する樹脂の配向性を安定させることができる。よって、表面のマルテンス硬さや緩和弾性率が上記範囲内に調整することが容易となり、耐候性及び機械的強度に優れた樹脂フィルムをより容易に製造することができる。
本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法は、前記延伸工程を備え、前記樹脂フィルムを製造するものであれば、特に限定されず、具体的には、例えば、溶液流延製膜法及び溶融流延製膜法等における延伸工程として、上記のような延伸工程を施すもの等が挙げられ、以下、溶液流延製膜法及び溶融流延製膜法を例に挙げて説明する。
(溶液流延製膜法)
まず、溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法について説明する。
溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法は、前記透明性樹脂を含有する樹脂溶液(ドープ)を、走行する支持体上に流延してフィルムを形成する流延工程と、前記フィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離したフィルムを延伸させる延伸工程と、延伸したフィルムを乾燥させる乾燥工程とを備え、前記延伸工程として、上記のような延伸工程を行うものである。例えば、図2に示すような溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、前記各工程を行うものであれば、図2に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよい。ここでフィルムとは、支持体上に流延されたドープからなる流延膜(ウェブ)が無端ベルト支持体上で乾燥され、無端ベルト支持体から剥離しうる状態となった以後のものを言う。
図2は、溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置21の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置21は、無端ベルト支持体22、流延ダイ23、剥離ローラ24、延伸装置11、乾燥装置25、及び巻取装置26等を備える。前記流延ダイ23は、前記透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)28を前記無端ベルト支持体22の表面上に流延する。前記無端ベルト支持体22は、一対の駆動ローラと従動ローラとによって駆動可能に支持され、前記流延ダイ23から流延された樹脂溶液28からなるウェブを形成し、搬送しながら乾燥させることによってフィルム17とする。そして、前記剥離ローラ24は、フィルム17を前記無端ベルト支持体22から剥離する。前記延伸装置11は、前述の条件下で、フィルム17を延伸させる。前記乾燥装置25は、延伸されたフィルム17を搬送ローラで搬送させながら、乾燥させる。そして、前記巻取装置26は、延伸及び乾燥されたフィルム17を巻き取って、フィルムロールとする。
上記各構成、例えば、前記無端ベルト支持体22、前記流延ダイ23、前記剥離ローラ24、前記乾燥装置25、前記巻取装置26等の各構成及び前記製造装置21の装置動作等は、特開2008−307730号公報や特開2009−73154号公報に記載と同様である。
また、製造時のフィルムの残留溶媒率は、下記式(8)で定義される。
残留溶媒率(質量%)={(M1−M2)/M2}×100 (8)
ここで、M1は、フィルムの任意時点での質量を示し、M2は、M1を測定したフィルムを115℃で1時間乾燥させた後の質量を示す。
(溶融流延製膜法)
次に、溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法について説明する。
溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法は、前記透明性樹脂を溶融させた樹脂溶融液を、走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延工程と、前記流延膜を冷却させてフィルムを形成する冷却工程と、前記フィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離したフィルムを複数の搬送ローラで搬送させる搬送工程と、前記フィルムを延伸させる延伸工程を備え、前記延伸工程として、上記のような延伸工程を行うものである。例えば、図3に示すような溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、前記各工程を行うものであれば、図3に示すものに特に限定されず、他の構成のものであってもよい。また、ここでフィルムとは、支持体上に流延されたドープからなる流延膜(ウェブ)が支持体上で乾燥され、支持体から剥離しうる状態となった以後のものを言う。
図3は、溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置31の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置31は、第1冷却ローラ32、流延ダイ33、タッチローラ34、第2冷却ローラ35、第3冷却ローラ36、剥離ローラ37、搬送ローラ38、延伸装置11、及び巻取装置39等を備える。
前記流延ダイ33は、前記透明性樹脂を溶融させた樹脂溶融液(ドープ)を第1冷却ローラ32の表面上に流延する。前記第1冷却ローラ32は、前記流延ダイ33から流延されたドープからなる流延膜を形成し、搬送させながら冷却させ、前記流延膜を第2冷却ローラ35に搬送する。その際、第1冷却ローラ32に外接されて設けられるタッチローラ34によって、流延膜の厚さの調整、や表面の平滑化がなされる。そして、第2冷却ローラ35は、前記流延膜を搬送させながら冷却させ、前記流延膜を第3冷却ローラ36に搬送する。そうすうことによって、前記流延膜をフィルムとする。前記剥離ローラ37は、フィルムを第3冷却ローラ36から剥離する。前記搬送ローラ38は、剥離されたフィルムを搬送しながら、MD方向に延伸する。前記延伸装置11は、前述の条件下で、フィルム17をTD方向に延伸する。前記巻取装置39は、冷却固化され、延伸されたフィルムを巻き取って、フィルムロールとする。
前記流延ダイ33は、ドープとして、樹脂溶液の代わりに、樹脂溶融液を吐出する以外、前記流延ダイ23と同様の構成である。
前記第1冷却ローラ32、第2冷却ローラ35及び第3冷却ローラ36は、表面が鏡面の金属製のローラである。前記各ローラとしては、流延膜やフィルムの剥離性の点から、例えば、ステンレス鋼等からなるローラが好ましく用いられる。前記流延ダイ33によって流延する流延膜の幅や前記第1冷却ローラ32、第2冷却ローラ35及び第3冷却ローラ36による流延膜の搬送速度等は、上記溶液流延製膜法による場合と同様である。
前記タッチローラ34は、表面が弾性を有し、前記第1冷却ローラ32への押圧力によって、前記第1冷却ローラ32の表面に沿って変形し、前記第1冷却ローラ32との間に、ニップを形成する。前記タッチローラ34としては、溶融流延製膜法で従来から用いられているタッチローラであれば、特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、ステンレス鋼製のものが挙げられる。
前記剥離ローラ37は、第3冷却ローラ36に接しており、加圧することによって、フィルムが剥離される。
前記搬送ローラ38は、複数の搬送ローラからなっており、搬送ローラ毎に異なる回転速度にすることによって、フィルムのMD方向に延伸することができる。
前記延伸装置11は、図1に示す前述する構成であって、フィルム17をウェブの搬送方向と直交する方向(Transverse Direction:TD方向)に延伸させる。
前記巻取装置39は、上記溶液流延製膜法による場合、前記巻取装置26と同様の構成である。
以下、溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法で使用する樹脂溶液(ドープ)の組成について説明する。
前記透明性樹脂は、加熱して溶融することができれば、上記溶液流延製膜法による場合と同様のものを用いることができる。また、その他の組成も、溶媒を用いないこと以外、上記溶液流延製膜法による場合と同様のものを用いることができる。
(偏光板)
本実施形態に係る偏光板は、偏光素子と、前記偏光素子の表面上に配置された透明保護フィルムとを備え、前記透明保護フィルムが、本実施形態に係る樹脂フィルムである。前記偏光素子とは、入射光を偏光に変えて射出する光学素子である。
前記偏光板としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬して延伸することによって作製される偏光素子の少なくとも一方の表面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて、前記樹脂フィルムを貼り合わせたものが好ましい。また、前記偏光素子のもう一方の表面にも、前記樹脂フィルムを積層させてもよいし、別の偏光板用の透明保護フィルムを積層させてもよい。この偏光板用の透明保護フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂フィルムを用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
前記偏光板は、上述のように、偏光素子の少なくとも一方の表面側に積層する保護フィルムとして、前記樹脂フィルムを使用したものである。その際、前記樹脂フィルムが位相差フィルムとして働く場合、樹脂フィルムの遅相軸が偏光素子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
また、前記偏光素子の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものとがある。前記ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。
前記偏光素子は、例えば、以下のようにして得られる。まず、ポリビニルアルコール水溶液を用いて製膜する。得られたポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸させた後染色するか、染色した後一軸延伸する。そして、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を施す。
前記偏光素子の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
該偏光素子の表面上に、セルロ−スエステル系樹脂フィルムを張り合わせる場合、完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせることが好ましい。また、セルロースエステル系樹脂フィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
上述のような偏光板は、偏光素子の透明保護フィルムとして、本実施形態に係る樹脂フィルムを用いることによって、樹脂フィルムが耐候性に優れ、例えば、温湿度変化による寸法変化が小さいものであるので、例えば、液晶表示装置に適用した際に、液晶セル等からの剥離の発生を抑制できる偏光板が得られる。さらに、偏光板の透明保護フィルムとして用いられる樹脂フィルムは、機械的強度が高いので、得られる偏光板は、機械的強度に優れたものとなる。
(液晶表示装置)
本実施形態に係る液晶表示装置は、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された2枚の偏光板とを備え、前記2枚の偏光板のうち少なくとも一方が、前記偏光板である。なお、液晶セルとは、一対の電極間に液晶物質が充填されたものであり、この電極に電圧を印加することで、液晶の配向状態が変化され、透過光量が制御される。このような液晶表示装置は、偏光板用の透明保護フィルムとして、本実施形態に係る樹脂フィルムを用いることによって、樹脂フィルムが耐候性に優れ、例えば、温湿度変化による寸法変化が小さいものであるので、液晶セル等からの剥離の発生を抑制された、製品安定性の高い液晶表示装置を提供することができる。さらに、備えられる偏光板の機械的強度が高い点からも、得られる液晶表示装置は、製品安定性の高いものとなる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に原材料により、必要な延伸条件等は変化する。
[実施例A]
(実施例1〜12、及び比較例1〜16)
まず、メチレンクロライド440質量部及びエタノール40質量部を入れた溶解タンクに、セルローストリアセテート樹脂(数平均分子量Mn:160000、重量平均分子量Mw:310000、Mw/Mn:約1.94)100質量部を添加し、可塑剤として、トリフェニルホスフェート8質量部とエチルフタリルエチルグリコレート2質量部とを添加した。そして、液温が90℃になるまで昇温させた後、2時間攪拌した。そうすることによって、樹脂溶液が得られた。
その後、攪拌を終了し、液温が40℃になるまで放置した。そして、得られた樹脂溶液を、濾紙(安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244)を使用して濾過した。濾過後の樹脂溶液を一晩放置することにより、樹脂溶液中の気泡を脱泡させた。このようにして得られた樹脂溶液を、第1ドープとして使用して、以下のように、樹脂フィルムを製造した。
(第2ドープの調製)
セルローストリアセテート樹脂(数平均分子量Mn:160000、重量平均分子量Mw:310000、Mw/Mn:約1.94)の代わりに、セルローストリアセテート樹脂(数平均分子量Mn:180000、重量平均分子量Mw:300000、Mw/Mn:約1.67)を用いる以外、第1ドープと同様にして製造した。
(第3ドープの調製)
可塑剤として、トリフェニルホスフェート8質量部とエチルフタリルエチルグリコレート2質量部とを添加する代わりに、トリフェニルホスフェート4質量部とエチルフタリルエチルグリコレート1質量部とを添加すること以外、第1ドープと同様にして製造した。
(第4ドープの調製)
セルローストリアセテート樹脂(数平均分子量Mn:160000、重量平均分子量Mw:310000、Mw/Mn:約1.94)の代わりに、セルローストリアセテート樹脂(数平均分子量Mn:200000、重量平均分子量Mw:380000、Mw/Mn:約1.9)を用い、トリフェニルホスフェート8質量部を添加する代わりに、トリフェニルホスフェート2質量部を添加する以外、第1ドープと同様にして製造した。
(第5ドープの調製)
セルローストリアセテート樹脂(数平均分子量Mn:160000、重量平均分子量Mw:310000、Mw/Mn:約1.94)の代わりに、セルローストリアセテート樹脂(数平均分子量Mn:200000、重量平均分子量Mw:380000、Mw/Mn:約1.9)を用いる以外、第1ドープと同様にして製造した。
(樹脂フィルムの製造)
まず、図2に示すような、溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置を用い、流延ダイ(コートハンガーダイ)からステンレス鋼製かつ超鏡面に研磨したエンドレスからなる無端ベルト支持体にドープを流延した。そうすることによって、無端ベルト支持体上にウェブを形成し、乾燥させながら搬送した。そして、無端ベルト支持体からウェブをフィルムとして剥離し、110℃の雰囲気でロール搬送しながら乾燥させ、残留溶媒量が所定量になったとき、フィルムを図1に示すような延伸装置(テンター)を用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら幅手方向に下記の条件で延伸した。その後、裁断装置を用いて、クリップで把持されていた領域を裁断して、樹脂フィルムを得た。
また、前記延伸装置は、延伸ゾーン中に貧溶媒を滴下する装置を備え、延伸ゾーンにおいて、その貧溶媒が揮発して、貧溶媒の蒸気が所定濃度存在するように構成されている。なお、ここでは、延伸ゾーンに滴下する貧溶媒としては、メタノールを用いた。
延伸装置における延伸条件としては、延伸率、延伸ゾーン前(領域A1で)の温度、延伸ゾーン(領域A2〜A4)での温度、延伸開始時(領域A2と領域A3との境界での)のフィルムの貧溶媒含有率(延伸開始時貧溶媒含有率)、延伸ゾーン(領域A2〜A4)での貧溶媒の蒸気の濃度(延伸ゾーン貧溶媒濃度)、延伸ゾーン後(領域A5で)の温度を、それぞれ表1〜表3に示す条件となるように調整した。
なお、延伸率は、上記式(6)から算出される値であり、延伸開始時(領域A2と領域A3との境界での)のフィルムの貧溶媒含有率は、上記式(7)から算出される値である。また、延伸ゾーンでの貧溶媒の蒸気の濃度は、延伸ゾーンに供給される加熱風の風量等で調整し、その濃度は、延伸ゾーンに存在する気体を採取して、ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製のGC−2014)を用い、キャリアガスとして、ヘリウムを使用して測定した。
また、マルテンス硬さ及び緩和弾性率は、株式会社島津製作所製の島津ダイナミック超微小硬度計DUH−211Sを用いて測定された試験力(荷重)−押し込み深さ曲線と、オリエンテック社製のテンシロンRTA−100を用いて測定されたポアソン比から、上記算出方法により算出された。
上記各実施例及び比較例について、以下のような評価を行った。
(偏光板評価)
得られた樹脂フィルムを用いて、下記のようにして偏光板を作製し、その偏光板を評価した。
まず、下記の方法に従って、前記各樹脂フィルムとセルロースエステル系光学補償フィルムであるコニカミノルタオプト株式会社製のKC8UCR5との各々1枚を偏光板保護フィルムとして用いて、偏光板をそれぞれ作製した。
(a)偏光膜の作製
ケン化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムは、平均厚みが40μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。
次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。即ち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、さらに温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚みが15μmであった。
(b)偏光板の作製
次に、下記工程1〜5に従って、偏光膜と、偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて、各比較例に係る各樹脂フィルムに対応する偏光板を作製した。
工程1:光学補償フィルム(コニカミノルタオプト株式会社製のコニカミノルタタック KCUCR−5)と前記樹脂フィルムとを、2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に、温度60℃で、90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。各樹脂フィルムの一方の面には、予め剥離性の保護フィルム(PET製)を貼り付けて保護した。同様にして、前述した光学補償フィルムを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に、温度60℃で、90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。
工程2:前述の偏光膜を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜を、工程1でアルカリ処理した光学補償フィルムと樹脂フィルムとで挟み込んで、積層配置した。
工程4:積層物を、2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意して実施した。
工程5:工程4で作製した試料を、温度80℃の乾燥機中にて2分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
次に、市販の液晶表示パネル(VA型)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに15cm×15cmのサイズで、上記偏光板を貼り付けた。その粘着力は、10〜15N/25cmであれば、どのような粘着剤でもよく、ポリビニルアルコール系のものを用いた。なお、前記粘着力は、株式会社オリエンテック製のRTC−1225Aを用いて、180°剥離、引っ張り速度300mm/分、室温雰囲気(温度25℃、相対湿度55%RH)の条件にて、投錨力(N/25mm)の測定により確認した。
液晶表示パネル(VA型)の最表面に貼り付けた偏光板を、高温高湿(温度60℃、相対湿度95%RH)の条件に、200時間保管した。その後、室温に戻し、前記樹脂フィルムの剥離を目視で確認した。
剥離が確認できなければ、「◎」と評価し、剥離が端部から5mm未満のものであれば、「○」と評価し、剥離が端部から5mm以上であれば、「×」と評価した。
(Tg)
得られた樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)を、DSC(株式会社リガク製のDSC8230)を用い、窒素ガス中で測定した。第1ドープ、第2ドープ、及び第3ドープを用いて得られた樹脂フィルムのTgは、それぞれ、延伸条件にかかわらず、126℃、130℃、及び133℃であった。
上記の評価結果(偏光板評価)を、製造条件とともに、表1〜3に示す。
なお、表中、樹脂フィルムを製造中(延伸時)に破断した場合は、「破断」と表す。また、製造された樹脂フィルムの表面が波打って、マルテンス硬さや緩和弾性率を測定できなかった場合は、「波打ち」と表す。
表1〜3からわかるように、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで少なくともいずれか一方の表面を測定したマルテンス硬さが、165〜350MPaであって、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで少なくともいずれか一方の表面を測定した緩和弾性率が、3800〜6000MPaである場合(実施例1〜12)は、前記マルテンス硬さ及び前記緩和弾性率のいずれもが上記範囲外である場合(比較例1〜16)と比較して、得られた樹脂フィルムを透明保護フィルムとした偏光板から、前記樹脂フィルムが剥離しにくかった。このことから、前記マルテンス硬さ及び前記緩和弾性率が上記範囲内であれば、温湿度変化による寸法変化が小さい等の、耐候性に優れた樹脂フィルムが得られることがわかった。
さらに、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで両側の表面を測定したマルテンス硬さが、それぞれ165〜350Mpaであって、ナノインデンテーション法において測定深さ1μmで両側の表面を測定した緩和弾性率が、それぞれ3800〜6000MPaである場合(実施例5〜12)は、いずれか一方の面のみが上記範囲内である場合(実施例1〜4)と比較して、得られた樹脂フィルムを透明保護フィルムとした偏光板から、前記樹脂フィルムがより剥離しにくかった。このことから、樹脂フィルムの両面ともの前記マルテンス硬さ及び前記緩和弾性率が上記範囲内であることが好ましいことがわかった。
[実施例B]
(実施例13〜45、及び比較例23〜31)
実施例Bは、実施例Aと同様であり、延伸条件として表4〜6に示す条件にしたものである。なお、実施例Bは、延伸率が高い状態での検討結果である。
また、評価方法は、実施例Aと同様である。この評価結果(偏光板評価)を、製造条件とともに、表4〜6に示す。
なお、表中、樹脂フィルムを製造中(延伸時)に破断した場合は、「破断」と表す。また、製造された樹脂フィルムの表面が波打って、マルテンス硬さや緩和弾性率を測定できなかった場合は、「波打ち」と表す。また、前記「波打ち」に加えて、製造された樹脂フィルム表面に貧溶媒に基づく液滴跡が形成されていた場合は、「波打ち、液滴跡」と表す。
表4〜6から、まず、表1〜3と同様、実施例13〜45と実施例17〜25とを比較することによって、樹脂フィルムの両面ともの前記マルテンス硬さ及び前記緩和弾性率が上記範囲内であることが好ましいことがわかった。
そして、延伸率が高い場合、貧溶媒の濃度が高くないと、延伸が困難であることがわかった(比較例18,21,24)。一方、貧溶媒の濃度が高すぎると、樹脂フィルムが波打つことがわかった(比較例17,19,20,22,23,25)。このことは、樹脂フィルムの表面に貧溶媒による液滴跡が形成されていることから、貧溶媒が樹脂フィルムから出ていく際に、乾燥むらが発生することによると考えられる。
[実施例C]
(実施例46〜51、及び比較例26,27)
実施例Cは、実施例Aと同様であり、延伸条件として表7に示す条件にしたものである。そして、延伸ゾーン前の温度及び延伸ゾーン後の温度をともに150℃としたものである。また、延伸ゾーンでは、通常、樹脂フィルムのA面側に吹き付ける加熱風とB面側に吹き付ける加熱風との温度が同じであるが、本実施例では、表7に示す温度としている。
また、評価方法は、実施例Aと同様である。この評価結果(偏光板評価)を、製造条件とともに、表7に示す。
なお、表中、樹脂フィルムを製造中(延伸時)に破断した場合は、「破断」と表す。また、製造された樹脂フィルムの表面が波打って、マルテンス硬さや緩和弾性率を測定できなかった場合は、「波打ち」と表す。
表7からわかるように、一方の表面を測定したマルテンス硬さと他方の表面を測定したマルテンス硬さとの差の絶対値が、10MPa以下である場合(実施例48)は、10MPaを超える場合(実施例46,47)と比較して、得られた樹脂フィルムを透明保護フィルムとした偏光板から、前記樹脂フィルムが剥離しにくかった。このことから、前記絶対値が上記範囲内であることが好ましいことがわかった。
また、一方の表面を測定した緩和弾性率と他方の表面を測定した緩和弾性率との差の絶対値が、200MPa以下である場合(実施例50,51)は、200MPaを超える場合(実施例49)と比較して、得られた樹脂フィルムを透明保護フィルムとした偏光板から、前記樹脂フィルムが剥離しにくかった。このことから、前記絶対値が上記範囲内であることが好ましいことがわかった。
そして、A面側加熱風の温度とB面側加熱風の温度との差が大きいと、A面とB面とのマルテンス硬さ及び緩和弾性率の差が大きくなることがわかった。そして、加熱風の温度差が60℃以上になると、破断することがわかった。
[実施例D]
(実施例52〜63、及び比較例28〜49)
実施例Dは、実施例Aと同様であり、貧溶媒として、メタノールの代わりに水を用いたものである。なお、実施例Dの延伸条件は、表8〜10に示す。
また、評価方法は、実施例Aと同様である。この評価結果(偏光板評価)を、製造条件とともに、表8〜10に示す。
なお、表中、樹脂フィルムを製造中(延伸時)に破断した場合は、「破断」と表す。また、製造された樹脂フィルムの表面が波打って、マルテンス硬さや緩和弾性率を測定できなかった場合は、「波打ち」と表す。
表8〜10からわかるように、貧溶媒として、水を用いた場合(実施例D)であっても、メタノールを用いた場合(実施例A)と同様の結果を示すことがわかった。