ここで、ドアへの側面衝突時にその反動で乗員の胸部側面付近等がドアトリムに二次衝突した場合に乗員側はクリップ取付座及びドアライニングの立壁部側から衝突反力を受けることになるが、この衝突反力の低減については改善の余地がある。
本発明は、上記事実を考慮して、側面衝突時に乗員がドアトリムに衝突した場合の乗員側への衝突反力を抑えることができるドアトリム取付構造及びドアトリムを得ることが目的である。
請求項1に記載する本発明のドアトリム取付構造は、トリム本体部の一般面からドア厚さ方向外側に立ち上がる立壁部が形成されたドアトリムに設けられて前記トリム本体部と前記立壁部とに亘って配置されるクリップ取付座と、前記ドアトリムよりもドア厚さ方向外側に配置されて前記クリップ取付座の取付相手となるドアパネルと、前記クリップ取付座と前記ドアパネルとを連結するクリップと、を含んで構成されたドアトリム取付構造であって、前記クリップ取付座は、前記トリム本体部の一般面と略平行に配置されて前記クリップの取り付け用とされ、一端側が前記立壁部に接続されて支持されると共に、前記立壁部側の一端部には、前記立壁部側の一端部を除く部位に比べて板厚が薄い薄板部が形成されたクリップ着座部と、前記クリップ着座部の他端側から前記トリム本体部の一般面側に曲げられて前記立壁部に対向して配置され、前記トリム本体部に接続されて支持されると共に前記クリップ着座部と前記トリム本体部の一般面とを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された状態では変形により前記立壁部側へ傾倒可能な脚部と、前記脚部に設けられて前記トリム本体部に接続され、前記脚部においてドア厚さ方向視で前記立壁部との対向方向に直交する方向の両端に剛性差を付与する剛性差付与手段と、を備えている。
請求項1に記載する本発明のドアトリム取付構造によれば、ドアトリムのトリム本体部と立壁部とに亘って配置されるクリップ取付座にはクリップが取り付けられており、ドアトリムのクリップ取付座は、このクリップを介してドアパネルに取り付けられている。このため、ドアへの側面衝突時にその反動で乗員がドアトリムに二次衝突した場合には、乗員はトリム本体部の当接部位を介してクリップ取付座及び立壁部側から衝突反力を受ける。
ここで、クリップ取付座は、クリップ着座部がトリム本体部の一般面と略平行に配置されてクリップの取り付け用とされると共にクリップ着座部の一端側が立壁部に支持されており、このクリップ着座部の他端側からトリム本体部の一般面側に曲げられた脚部が立壁部に対向して配置されてかつトリム本体部に支持されている。また、脚部は、クリップ着座部とトリム本体部の一般面とを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された状態では変形により立壁部側へ傾倒可能となっており、脚部に設けられた剛性差付与手段が脚部においてドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の両端に剛性差を付与している。
このため、ドアへの側面衝突時にその反動で乗員がドアトリムに二次衝突した場合、脚部においてドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の一方の端部側である低剛性側の部位に応力が集中するので、まずこの部位が変形して立壁部側へ傾倒する。これによって、脚部の低剛性側の部位からクリップ着座部を介して荷重を受けた立壁部の対応部位が傾倒するように変形する。
また、この状態でクリップ取付座は、脚部の低剛性側の部位が立壁部側へ傾倒しているのに対して、脚部の高剛性側の部位は立壁部側へ傾倒していないため、全体としては捩れ状態となる。この状態になると脚部における高剛性側の部位に応力が集中しやすくなる。その後、脚部の高剛性側の部位が低剛性側の部位に引き続いて変形して立壁部側へ傾倒すると、脚部の高剛性側の部位からクリップ着座部を介して荷重を受けた立壁部の対応部位が傾倒するように変形する。これにより、立壁部の位置がずらされ、クリップ取付座及び立壁部による乗員側への衝突反力が抑えられる。
請求項2に記載する本発明のドアトリム取付構造は、請求項1記載の構成において、前記剛性差付与手段は、前記脚部においてドア厚さ方向視で前記立壁部との対向方向に直交する方向の一方の端部側に比べて剛性を高く設定する他方の端部側に設けられたリブを含んで構成され、前記リブが前記クリップ着座部と前記トリム本体部とを繋いでいる。
請求項2に記載する本発明のドアトリム取付構造によれば、剛性差付与手段は、脚部においてドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の一方の端部側に比べて剛性を高く設定する他方の端部側に設けられたリブを含んで構成され、当該リブがクリップ着座部とトリム本体部とを繋いでいる。このため、脚部において剛性を高く設定する他方の端部側が、クリップ着座部とトリム本体部とを繋ぐリブによって補強されるので、他方の端部側は捩れ剛性が高くなる。これにより、一方の端部側に、効果的に応力が集中するので、一方の端部側が先に安定的に変形して立壁部側へ傾倒する。
請求項3に記載する本発明のドアトリム取付構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記脚部は、前記脚部においてドア厚さ方向視で前記立壁部との対向方向に直交する方向の一方の端部側に設けられた第一脚部と、前記剛性差付与手段により前記一方の端部側に比べて剛性が高く設定される他方の端部側において前記第一脚部と間隔を置いて設けられた第二脚部と、で構成されている。
請求項3に記載する本発明のドアトリム取付構造によれば、脚部は、第一脚部と第二脚部とで構成されており、ドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の一方の端部側に第一脚部が設けられ、剛性差付与手段により一方の端部側に比べて剛性が高く設定される他方の端部側には第二脚部が第一脚部と間隔を置いて設けられている。このため、側面衝突時に乗員がドアトリムに衝突した場合には脚部に対して荷重が入力される範囲がより限定されるので、応力がより一層集中しやすくなる。よって、第一脚部、第二脚部の順に安定的に変形して立壁部側へ傾倒する。
請求項4に記載する本発明のドアトリムは、トリム本体部と、前記トリム本体部の一般面からドア厚さ方向外側に立ち上がる立壁部と、前記トリム本体部と前記立壁部とに亘って配置され、前記トリム本体部よりもドア厚さ方向外側に配置されるドアパネルとクリップによって連結されるクリップ取付座と、を含んで構成されたドアトリムであって、前記クリップ取付座は、前記トリム本体部の一般面と略平行に配置されて前記クリップの取り付け用とされ、一端側が前記立壁部に接続されて支持されると共に、前記立壁部側の一端部には、前記立壁部側の一端部を除く部位に比べて板厚が薄い薄板部が形成されたクリップ着座部と、前記クリップ着座部の他端側から前記トリム本体部の一般面側に曲げられて前記立壁部に対向して配置され、前記トリム本体部に接続されて支持されると共に前記クリップ着座部と前記トリム本体部の一般面とを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された状態では変形により前記立壁部側へ傾倒可能な脚部と、前記脚部に設けられて前記トリム本体部に接続され、前記脚部においてドア厚さ方向視で前記立壁部との対向方向に直交する方向の両端に剛性差を付与する剛性差付与手段と、を備えている。
請求項4に記載する本発明のドアトリムによれば、トリム本体部と立壁部とに亘って配置されるクリップ取付座は、クリップによってドアパネルと連結される。このため、ドアへの側面衝突時にその反動で乗員がドアトリムに二次衝突した場合には、乗員はトリム本体部の当接部位を介してクリップ取付座及び立壁部側から衝突反力を受ける。
ここで、クリップ取付座は、クリップ着座部がトリム本体部の一般面と略平行に配置されてクリップの取り付け用とされると共にクリップ着座部の一端側が立壁部に支持されており、このクリップ着座部の他端側からトリム本体部の一般面側に曲げられた脚部が立壁部に対向して配置されてかつトリム本体部に支持されている。また、脚部は、クリップ着座部とトリム本体部の一般面とを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された状態では変形により立壁部側へ傾倒可能となっており、脚部に設けられた剛性差付与手段が脚部においてドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の両端に剛性差を付与している。
これにより、既存のドアパネルやクリップをそのまま用いてもドアトリムを上記構成にすることで、ドアへの側面衝突時にその反動で乗員がドアトリムに二次衝突した場合には、脚部においてドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の一方の端部側である低剛性側の部位に応力が集中するので、まずこの部位が変形して立壁部側へ傾倒する。これによって、脚部の低剛性側の部位からクリップ着座部を介して荷重を受けた立壁部の対応部位が傾倒するように変形する。
また、この状態でクリップ取付座は、脚部の低剛性側の部位が立壁部側へ傾倒しているのに対して、脚部の高剛性側の部位は立壁部側へ傾倒していないため、全体としては捩れ状態となる。この状態になると脚部における高剛性側の部位に応力が集中しやすくなる。その後、脚部の高剛性側の部位が低剛性側の部位に引き続いて変形して立壁部側へ傾倒すると、脚部の高剛性側の部位からクリップ着座部を介して荷重を受けた立壁部の対応部位が傾倒するように変形する。これにより、立壁部の位置がずらされ、クリップ取付座及び立壁部による乗員側への衝突反力が抑えられる。しかも、本発明の場合、ドアトリムを上記構成にすれば前記衝突反力を低減することができるので、既存のドアパネルやクリップを利用することができると共に、前記衝突反力の設定を容易にすることができる。
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のドアトリム取付構造によれば、側面衝突時に乗員がドアトリムに衝突した場合の乗員側への衝突反力を抑えることができるという優れた効果を有する。
請求項2に記載のドアトリム取付構造によれば、クリップ着座部とトリム本体部とを繋ぐリブで脚部の一部を補強することで、側面衝突時に乗員がドアトリムに衝突した場合のドアトリムの変形モードをより安定化させることができるという優れた効果を有する。
請求項3に記載のドアトリム取付構造によれば、脚部に対して荷重が入力される範囲がより限定されることで、側面衝突時に乗員がドアトリムに衝突した場合のドアトリムの変形モードをより安定化させることができるという優れた効果を有する。
請求項4に記載のドアトリムによれば、側面衝突時に乗員がドアトリムに衝突した場合の乗員側への衝突反力を抑えることができるという優れた効果を有する。
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係るドアトリム取付構造及びドアトリムについて図1〜図9を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはドア前方側を示しており、矢印UPはドア上方側を示しており、矢印INはドア厚さ方向内側を示している。また、本実施形態では、ドア上下方向は車両上下方向と一致しており、ドア厚さ方向内側はドアを閉じた状態での車幅方向内側と一致しており、ドア前後方向はドアを閉じた状態での車両前後方向と一致している。
図1には、本実施形態に係るドアトリム取付構造及びドアトリム30が適用された乗用自動車等の車両10のサイドドア20を含む部分が車室内側から見た側面図にて示されている。また、図2には、サイドドア20からドアトリム30を外した分解状態がドア厚さ方向内側から見た状態の分解側面図にて示されている。なお、これらの図に示されるサイドドア20は、車両10(図1参照)のフロントサイドドアとして構成されており、図1に示されるように、フロントピラー(Aピラー)12とセンタピラー(Bピラー)14との間に配設されている。
図2に示されるように、サイドドア20は、ドア厚さ方向外側に配置されてドア外板部を構成するドアアウタパネル22を備えている。なお、図2では、後述するドアインナパネル26の一部を切り欠いてドアアウタパネル22を示している。ドアアウタパネル22は、金属製で略矩形平板状に形成されている。また、ドアアウタパネル22のドア上方側には、枠状体のドアウインドフレーム24が設けられ、ドアウインドフレーム24内には、ウインドガラス(サイドガラス)25が昇降可能に配設されている。
ドアアウタパネル22のドア厚さ方向内側には、ドア内板部を構成するドアパネルとしてのドアインナパネル26が配置されている。ドアインナパネル26は、金属製で略矩形平板状に形成されており、ドア前後方向の前後両端縁部及びドア上下方向の下端縁部がドアアウタパネル22とヘミング加工によって結合されて一体化されている。また、ドアインナパネル26は、詳細後述するドアトリム30のクリップ取付座40の取付相手となっており、クリップ28を挿通係止するためのクリップ係止孔26Aが貫通形成されている。クリップ係止孔26Aは、ドアトリム30の取り付け(建て付け)を良好にするために、ドアインナパネル26の側面視における四隅、すなわち、ドア上端側のドア前後端及びドア下端側のドア前後端に設けられている。
図3及び図4に示されるように、クリップ28は、取付基部側の外周に挟持用の一対のフランジ部28A、28Bが形成されて詳細後述するドアトリム30のクリップ取付座40に取り付けられている。図4に示されるように、クリップ28は、その頭部となる装着部28Cがドアインナパネル26のクリップ係止孔26Aに挿通された状態で係止されることで装着されている。これにより、クリップ28は、クリップ取付座40とドアインナパネル26とを連結している。
クリップ取付座40を備えたドアトリム30は、サイドドア20(図1参照)の車室内側に装着され、ドアインナパネル26よりもドア厚さ方向内側に配置されている。図2に示されるように、ドアトリム30は、車室内側から見た側面視で略矩形状に形成されており、樹脂材料によって構成されている。
また、図1に示されるように、ドアトリム30は、乗員を模擬したダミー16がシート(図示省略)に着座した状態では、ダミー16の車幅方向外側を含む位置にあり、ダミー16の胸部の中心Pがドアトリム30の上部後端側に対応して位置している。なお、図1及び図2においては、ドアトリム上部とドアトリム下部とが一体の上下一体タイプのドアトリム30が図示されているが、ドアトリム30は、ドアトリム上部とドアトリム下部とが別体の上下分割タイプであってもよい。また、ドアトリム30には、略ドア前後方向に沿って延在するアームレスト30Aやポケット30B等が適宜配設されている。
図2及び図3に示されるように、ドアトリム30は、主として意匠面を構成するトリム本体部32を備えている。図3に示されるように、トリム本体部32は、その外周端寄りにオーナメント部34を備えており、オーナメント部34は、トリム本体部32の外周端に沿う方向を長手方向として配置されている。また、オーナメント部34は、ドア厚さ方向外側へ凸となるU字形状に曲げられて形成されることで、ドア厚さ方向の荷重に対する強度(剛性)が比較的高くなっており、そのドア厚さ方向内側には表皮層が配設されている。なお、図3では、ドア後端側及びドア上端側のオーナメント部34のみを図示している。
トリム本体部32のドア前後方向の前後端部には、トリム本体部32の一般面32Aからドア厚さ方向外側に曲げられて立ち上がる立壁部36(縦壁部)がトリム本体部32に一体に形成されている。立壁部36は、略ドア上下方向に延在し、トリム本体部32の一般面32Aに対して壁面が略直交するように垂直に配置されている。なお、図3では、後端側の立壁部36のみを図示している。
ドアトリム30に設けられたクリップ取付座40は、トリム本体部32のオーナメント部34と立壁部36とに亘って両者を架け渡すように配置されており、トリム本体部32及び立壁部36に一体に形成されている。クリップ取付座40は、クリップ28の取り付け用とされるクリップ着座部42を備えている。クリップ着座部42は、平板状とされてトリム本体部32の一般面32Aと略平行に配置され、ドア前後方向の後端側(一端側)がドアトリム後端の立壁部36に支持されている。
クリップ着座部42において立壁部36側の一端部には、クリップ着座部42の一般部42Bに比べて低剛性で板厚が薄い薄板部42Cが略ドア上下方向に延在して形成されている。薄板部42Cのドア厚さ方向外側の面は、一般部42Bのドア厚さ方向外側の面よりもドア厚さ方向内側に一段下がった位置に設定されている。すなわち、一般部42Bと薄板部42Cとで段差構造が形成されている。
図5に示されるように、クリップ着座部42には、ドア前方側から切り欠かれて開口した鍵穴状のクリップ取付孔42Aが形成されている。このクリップ取付孔42Aのドア前方側の開口からクリップ28の取付基部側が差し込まれて図4に示されるように、クリップ着座部42を一対のフランジ部28A、28Bが挟持することでクリップ28がクリップ着座部42に取り付けられるようになっている。
また、図3に示されるように、クリップ取付座40は、クリップ着座部42の立壁部36側とは反対側(他端側)からトリム本体部32の一般面32A側に鈍角状に屈曲された(曲げられた)脚部44を備えており、脚部44は、トリム本体部32のオーナメント部34に連続して(着地して)当該オーナメント部34に支持されている。前述したようにオーナメント部34は比較的剛性が高いため、比較的剛性の低い脚部44との間に剛性差が生じる構成になっている。
図5に示されるように、脚部44は、立壁部36に略車両前後方向に対向して配置され、ドア厚さ方向視で立壁部36との対向方向に直交する略ドア上下方向の一方の端部側(ドア下方側)に設けられた第一脚部46と、ドア厚さ方向視で立壁部36との対向方向に直交する略ドア上下方向の他方の端部側(ドア上方側)に設けられた第二脚部48とで構成されており、第二脚部48は、第一脚部46と略ドア上下方向に間隔を置いて設けられている。これにより、図5の矢印6方向から見た状態で示す図6に示されるように、第一脚部46、第二脚部48、クリップ着座部42及びオーナメント部34によって略ドア前後方向に貫通する開口部38が形成されている。
図7(A)には第一脚部46を含んで略水平方向に切断した断面図(図1の7A−7A線に沿った拡大断面図)が示され、図7(B)には第二脚部48を含んで略水平方向に切断した断面図(図1の7B−7B線に沿った拡大断面図)が示されている。図7に示される第一脚部46及び第二脚部48は、クリップ着座部42の立壁部36側とは反対側(他端側)からトリム本体部32の一般面32A側に鈍角状に屈曲されることで、クリップ着座部42とトリム本体部32の一般面32Aとを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された状態では変形により立壁部36側へ傾倒可能とされている(図9参照)。換言すれば、このようなクリップ取付座40の構造は、側面衝突に伴って乗員がドアトリム30側に二次衝突した場合にクリップ取付座40に連続する立壁部36を車両後方側へ逃がしやすい構造になっている。
図5に示されるように、脚部44の立壁部36との対向面側には、剛性差付与手段としての補強部50が脚部44と一体に形成されて(設けられて)いる。補強部50は、オーナメント部34に一体に形成され、第二脚部48のドア上下方向の上端位置から第一脚部46のドア上下方向の中間位置までの範囲に配置されている。つまり、補強部50は、第一脚部46と重なる略ドア上下方向の長さaに比べて第二脚部48と重なるドア上下方向の長さbが長く(a<bの関係に)設定されている。
補強部50は、第二脚部48側に配設されたリブ52を備えている。リブ52は、略ドア上下方向を板厚方向とした板状に形成され、第二脚部48とドア上下方向の高さ位置が一部重なる位置に設定されると共に、第二脚部48側から立壁部36側に向かって突出している。また、図3及び図6に示されるように、リブ52は、ドア厚さ方向に延在し、ドア厚さ方向外側の部位がクリップ着座部42まで至り、ドア厚さ方向内側の部位がオーナメント部34の基端側(一般面32A側)まで至っており、クリップ着座部42とトリム本体部32とを架け渡すように繋いでいる。
また、補強部50は、リブ52のドア厚さ方向の中間部から第一脚部46と第二脚部48との配列方向に沿って略ドア上下方向に延設された上下一対のリブ延設部54A、54B(リブ延設部54Aは図6参照)を備えている。リブ延設部54A、54Bは、略ドア前後方向を板厚方向とした薄板状に形成され、オーナメント部34の頂部34A側からクリップ着座部42側に向かって突出している。リブ延設部54A、54Bのドア厚さ方向外側の端部位置は、第一脚部46及び第二脚部48のドア厚さ方向中間部の位置に対応して設定されている。
換言すれば、図5の矢印6方向から見た状態を示す図6に示されるように、リブ延設部54A、54Bとクリップ着座部42との間には、隙間56A、56Bが形成されている。また、リブ52よりもドア下方側(図中左側)に形成された隙間56Bは、第一脚部46、第二脚部48、クリップ着座部42及びオーナメント部34によって形成された開口部38と連通されている。
図5に示されるように、第二脚部48側のリブ延設部54Aは、そのドア上下方向の上端位置が第二脚部48のドア上下方向の上端位置に揃えられて設定され、第二脚部48と一体に形成されている。また、第一脚部46側のリブ延設部54Bは、ドア上下方向の下端位置が第一脚部46のドア上下方向の中間位置に対応して設定され、第一脚部46と一体に形成されている。
このような構造により、図3及び図6に示されるように、補強部50とクリップ着座部42と脚部44とで略ドア前後方向に貫通する貫通孔58が形成されている。このような貫通孔58が形成されることでクリップ着座部42とトリム本体部32の一般面32Aとを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された状態での荷重伝達経路(荷重が伝達される範囲)が限定された構成になっている。
図3に示されるように、リブ延設部54Bのドア上下方向の下端側は、オーナメント部34の頂部34Aとの間にドア厚さ方向の段差を形成しており、リブ延設部54Bの下端面とオーナメント部34の頂部34Aとの境界部に立上がりの起点60が形成されている。この起点60よりもドア上下方向の下方側は、第一脚部46が補強されていない非補強部62となっている。第一脚部46の非補強部62におけるオーナメント部34への接続部位(着地点)は、脚部44において側面衝突時に最初に座屈させたい部位(応力を集中させたい部位)となっている。
これらにより、補強部50は、図5に示される脚部44においてドア厚さ方向視で立壁部36との対向方向に直交する略ドア上下方向の両端に剛性差(強度差)を付与している。すなわち、補強部50は、脚部44における略ドア上下方向の下方側(一方)の端部側となる第一脚部46側に比べて、脚部44における略ドア上下方向の上方側(他方)の端部側となる第二脚部48側の剛性(ドア厚さ方向の荷重に対する強度)を高く設定している。このため、ドア厚さ方向の入力荷重に対して第一脚部46側がより座屈しやすい構造になっている。
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
図4に示されるように、ドアトリム30のトリム本体部32と立壁部36とに亘って配置されるクリップ取付座40にはクリップ28が取り付けられており、ドアトリム30のクリップ取付座40は、このクリップ28を介してドアインナパネル26に取り付けられている。このため、図1に示されるサイドドア20への側面衝突時にその反動でダミー16(乗員)がドアトリム30に二次衝突した場合には、ダミー16はトリム本体部32の当接部位を介してクリップ取付座40及び立壁部36側から衝突反力を受ける。
ここで、図3に示されるように、クリップ取付座40は、クリップ着座部42がトリム本体部32の一般面32Aと略平行に配置されてクリップ28の取り付け用とされると共にクリップ着座部42の一端側が立壁部36に支持されており、このクリップ着座部42の他端側から曲げられた脚部44が立壁部36に対向して配置されかつトリム本体部32に支持されている。また、脚部44は、クリップ着座部42とトリム本体部32の一般面32Aとを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された状態(換言すれば、二次衝突荷重が入力された状態)では変形により立壁部36側へ傾倒可能となっており、脚部44に設けられた補強部50がドア厚さ方向視で脚部44における立壁部36との対向方向に直交する略ドア上下方向の両端に剛性差を付与している。
すなわち、補強部50は、略ドア上下方向(ドア厚さ方向視で脚部44における立壁部36との対向方向に直交する方向)の上方(他方)の端部側に設けられたリブ52を含んで構成され、当該リブ52がクリップ着座部42とトリム本体部32とを繋いでおり、脚部44のドア下方側(一方)の端部側となる第一脚部46側に比べて脚部44のドア上方側(他方)の端部側となる第二脚部48(図5参照)側の剛性を高く設定している。図6に示されるように、第二脚部48側はクリップ着座部42とトリム本体部32とを繋ぐリブ52によって補強されるので、第二脚部48側は捩れ剛性が高くなる。
このため、図1に示されるサイドドア20への側面衝突時にその反動でダミー16がドアトリム30に二次衝突した場合、二次衝突荷重が作用し、図5に示される脚部44のうち低剛性側である第一脚部46側に応力が集中するので、図8(A)に示されるように、第一脚部46が変形して立壁部36側へ傾倒する。これによって、第一脚部46側からクリップ着座部42を介して荷重を受けた立壁部36の対応部位がドア後方側へ傾倒するように変形する。つまり、図8(A)に示されるように、第一脚部46を含んで略水平方向に切断した断面視においては、トリム本体部32、クリップ取付座40及び立壁部36で形成する閉断面形状部分が菱形変形する。
また、この状態でクリップ取付座40は、第一脚部46が立壁部36側へ傾倒しているのに対して、図8(B)に示される高剛性側である第二脚部48は立壁部36側へ傾倒していないため、全体としては捩れ状態となる(第一変形モード)。この状態になると第二脚部48に応力が集中しやすくなり、第二脚部48の変形が誘発される。
これによって、図9に示されるように、図9(A)に示される低剛性側の第一脚部46の変形に引き続いて図9(B)に示される高剛性側の第二脚部48が変形して立壁部36側へ傾倒すると、第二脚部48からクリップ着座部42を介して荷重を受けた立壁部36の対応部位が車両後方側へ傾倒するように変形する。これにより、立壁部36の位置が車両後方側(ドア後方側)にずらされ、図9に示されるように、トリム本体部32、クリップ取付座40及び立壁部36で形成する閉断面形状部分は、第一脚部46側及び第二脚部48側のいずれもが菱形変形する(第二変形モード)。その結果、クリップ取付座40及び立壁部36によるダミー16(図1参照)側への衝突反力が抑えられる。
補足すると、図1に示されるドアトリム30のようにトリム本体部32の後端側に立壁部36がトリム本体部32の一般面32Aに対して略直交して配置されているようなドアトリムでは、一般的には、二次衝突時に後端側に配置された立壁部(36)からダミー(16)の胸部側面に入力される衝突反力が大きく(支配的に)なる可能性が考えられる。しかしながら、本実施形態では、この衝突反力を低減することにより、ダミー16の胸部側面への入力荷重を抑制することができる。
また、本実施形態に係るドアトリム取付構造及びドアトリム30では、図5に示されるように、脚部44は、第一脚部46が略ドア上下方向の一方の端部側に設けられると共に、第二脚部48が略ドア上下方向の他方の端部側に第一脚部46と間隔を置いて設けられている。このため、側面衝突時にダミー16(図1参照)がドアトリム30に衝突した場合には、脚部44において荷重が入力される範囲(領域)がより限定されるので、応力がより一層集中しやすい。よって、第一脚部46、第二脚部48の順に安定的に変形して立壁部36側へ傾倒する(変形モードの安定的なコントロール)。
以上説明したように、本実施形態に係るドアトリム取付構造及び図1に示されるドアトリム30によれば、側面衝突時に乗員(ダミー16)がドアトリム30に衝突した場合の乗員(ダミー16)側への衝突反力を抑えることができる。
ちなみに、本実施形態に係るドアトリム取付構造及びドアトリム30では、図2に示されるドアトリム30のドアインナパネル26への取り付け時、すなわち、図4に示されるクリップ着座部42に取り付けられたクリップ28がドアインナパネル26のクリップ係止孔26Aに挿通係止される際には、図3に示されるドアトリム30において(第一脚部46の対応部位側でなく)主として第二脚部48(図5参照)及びリブ52の対応する部位側(トリム本体部32の一部)をドアインナパネル26(図2参照)側に押圧することで、クリップ取付座40を座屈させることなくクリップ28を図2に示されるドアインナパネル26のクリップ係止孔26Aへ挿通係止させることができる。
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態の変形例として、上記実施形態にて図3等に示される補強部50に代えて、図10に示される剛性差付与手段としての補強部64を設けてもよい。すなわち、上記実施形態における図6に相当する図10に示されるように、補強部64は、上記実施形態の図6に示されるリブ52を取り除いてリブ延設部54A、54Bを繋げたような構造とされており、図10に示される補強部64によって、脚部44においてドア厚さ方向視で立壁部(図示省略、図3の立壁部36参照)との対向方向に直交する略車両上下方向の両端に剛性差を付与してもよい。
また、上記実施形態では、図5等に示される脚部44にリブ52を含む剛性差付与手段としての補強部50が形成されているが、剛性差付与手段は、例えば、脚部においてドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の一方の端部側に比べて他方の端部側の剛性を高く設定するために前記一方の端部側の脚部の板厚に比べて前記他方の端部側の脚部の板厚を厚く設定した差厚構造等のような他の剛性差付与手段であってもよい。
また、上記実施形態では、脚部44は、第一脚部46と第二脚部48とで構成され、図6に示されるように、補強部50とクリップ着座部42と脚部44とで略ドア前後方向に貫通する貫通孔58が形成されているが、脚部は、前記差厚構造等が適用された一本の脚部で構成されてもよく、上記実施形態の貫通孔58に相当する孔が形成されていない構成であってもよい。
また、上記実施形態では、リブ52を含む剛性差付与手段としての補強部50が脚部44に一体に形成されているが、剛性差付与手段は、例えば、脚部とは別体で脚部に取り付けられるリブ状部材等のような他の剛性差付与手段であってもよく、このような他の剛性差付与手段が、脚部においてドア厚さ方向視で立壁部との対向方向に直交する方向の両端に剛性差を付与するような構成としてもよい。
さらに、上記実施形態では、図3等に示されるクリップ取付座40の脚部44がクリップ着座部42の立壁部36側とは反対側(他端側)からトリム本体部32の一般面32A側に鈍角状に屈曲されているが、クリップ取付座の脚部は、例えば、クリップ着座部の立壁部側とは反対側からトリム本体部の一般面側に略鈍角状に湾曲されてもよい。また、クリップ着座部42とトリム本体部32の一般面32Aとを接近させる方向の所定値以上の荷重が入力された場合に変形により立壁部36側へ脚部44を傾倒させる観点からはやや不利になるが、クリップ取付座の脚部は、クリップ着座部の立壁部側とは反対側からトリム本体部の一般面側に略直角等に曲げられてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、上記実施形態では、脚部44は、立壁部36に対して略ドア前後方向に対向して配置されているが、例えば、トリム本体部のドア上下方向の上下端部でトリム本体部の一般面からドア厚さ方向外側に曲げられて立ち上がる立壁部が略ドア前後方向に延在する構造において脚部が当該立壁部に対して略ドア上下方向に対向して配置されてもよい。この場合、脚部に設けられる剛性差付与手段は、脚部における略ドア前後方向の両端(脚部においてドア厚さ方向視で前記立壁部との対向方向に直交する方向の両端)に剛性差を付与することになり、例えば、略ドア前後方向の一方の端部側に比べて剛性を高く設定する他方の端部側にリブが設けられて当該リブがクリップ着座部とトリム本体部とを繋ぐ構成とされてもよい。また、この場合、脚部は、略ドア前後方向の一方の端部側に設けられた第一脚部と、略ドア前後方向の他方の端部側に前記第一脚部と間隔を置いて設けられた第二脚部とで構成されているものであってもよい。
なお、請求項1及び請求項4の「トリム本体部の一般面と略平行に配置され」の概念には、上記実施形態のように、トリム本体部32の一般面32Aと平行に配置されている場合の他、トリム本体部の一般面と完全に平行に設定されて配置されているとはいえないが、トリム本体部の一般面と平行に配置した場合と実質的に同様の作用及び効果が得られて実質的にトリム本体部の一般面と平行に配置されていると認められるような場合も含まれる。
また、請求項1及び請求項4の「立壁部との対向方向に直交する方向」の概念には、上記実施形態のように、立壁部36との対向方向に完全に直交する方向の他、立壁部との対向方向に完全に直交する方向とはいえないが、立壁部との対向方向に完全に直交する方向とした場合と実質的に同様の作用及び効果が得られて実質的に立壁部との対向方向に直交する方向と認められるような方向も含まれる。