JP5547371B2 - 高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料 - Google Patents

高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料 Download PDF

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Description

本発明は、高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料に関し、更に詳しくは、豚糞、牛糞、鶏糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物等を含有し、しかも水分を多量に含む高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を効果的に除去するとともに、含水率を低減しかつ有機物の分解率を20質量%以下に抑制可能な高含水率有機廃棄物の燃料化方法、及び高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去するとともに、含水率を低減しかつ有機物の分解率を20質量%以下に抑制したバイオマス燃料に関するものである。
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物は、そのままの状態もしくは発酵させた状態で肥料として利用するのが一般的であるが、焼却炉等を用いて焼却することで減容化し、得られた焼却灰を肥料として利用することもある。
特に、近年、家畜排泄物の管理に関する適正化法が施行されたことにもより、畜糞尿を含む家畜排泄物の多くが肥料化されることが予想される一方、農地の減少傾向により使用される肥料の総量も減少傾向にある。そこで、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するために、肥料以外の用途の多角化が急務になっており、エネルギーとしての利用もその一つである。
一般に、家畜排泄物は35質量%以下の低含水率状態では高位の発熱量を有するものであるが、低含水率状態とするためには、長時間の自然乾燥や化石燃料を用いた加熱乾燥を必要とするために、エネルギーとしての利用はごく一部では行われているものの総体的には進んでいない。
現在行われている家畜排泄物のエネルギー利用としては、鶏糞を発電や廃棄物ボイラーの燃料として用いたり、牛や豚の糞尿をメタン発酵させてメタンガスを主成分とするバイオガスを生成させ、このバイオガスを燃料として用いる等がある。
このような家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されており、例えば、次のような提案がなされている。
(1)鶏糞、家畜糞等の含水廃棄処理物を、蒸気管と燃焼室を備えた熱風炉と多段式の乾燥炭化炉との間に発生蒸気の循環系統を配設して密閉系内で熱源を循環させながら炭化物及び灰化物を生成する方法(特許文献1)。
この方法では、乾燥炭化炉から炭化物を、熱風炉から灰化物を、それぞれ回収することで、二次利用可能な炭化物及び灰化物を同時に資源回収するとともに、省資源化と無公害化の推進を図っている。
(2)畜糞を乾燥させる乾燥機と、乾燥された畜糞を小粒と大粒に分離する分離機と、分離された小粒の乾燥畜糞を焼却処理する焼却炉と、乾燥未完了の畜糞を破砕して金属類の混入異物を露出するとともに、この混入異物を磁石を介して除去する磁石付振動式篩とを有する畜糞乾燥焼却装置(特許文献2)。
この装置では、畜糞原料に混入している石、金属などの金属類異物を簡単容易に撤去することで、金属類異物に起因する機械のトラブルを未然に回避するとともに、この畜糞を焼却処理することにより発生する熱を有効利用している。
特開2004−330092号公報 特開2005−156085号公報
ところで、上述したように、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されているが、これらの方法や装置においても、次のような問題点があった。
鶏糞をエネルギー源として利用しようとした場合、鶏糞のエネルギー利用を阻んでいる主たる点は、塩素含有量が高いという点である。鶏糞の塩素含有量が高いと、この塩素成分のために燃焼装置が腐食したり、あるいは低融点塩素化合物が発生して配管等の様々な箇所で閉塞等の様々なトラブルが発生する虞があるという問題点があった。
また、この鶏糞を、例えば、セメント焼成設備に燃料として投入した場合、それに含まれる塩素成分がセメントクリンカに混入してセメントの品質を低下させる虞がある。また、塩素成分がセメント焼成設備を腐食させる等のトラブルが発生する虞があるために、セメントの操業に悪影響を及ぼす虞がある。
また、牛や豚の糞尿がエネルギー利用され難いのは、鶏糞と同様に塩素含有量が高いことと、含水率が80%前後と高いために、燃料として用いた場合、燃焼時に発生する熱エネルギーが糞尿に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまい、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが難しいからである。
このように、様々な理由から、家畜排泄物や食品廃棄物等を含む有機廃棄物のエネルギー源としての有効利用ははかばかしくないのが現状である。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、豚糞、牛糞、鶏糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物等を含有し、しかも水分を多量に含む高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を効果的に除去するとともに、含水率を低減しかつ有機物の分解率を20質量%以下に抑制することができる高含水率有機廃棄物の燃料化方法、及び高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去するとともに、含水率を低減しかつ有機物の分解率を20質量%以下に抑制したバイオマス燃料を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に脱水処理を施せば、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して塩素濃度が3000ppm以下と極めて低い脱塩素有機廃棄物を得ることができ、さらに、この脱塩素有機廃棄物に、自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか一方による乾燥または加熱乾燥、及び前記自然エネルギー、前記発酵熱エネルギーのいずれか他方による乾燥または加熱乾燥、を順次施せば、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、有機物の分解率が20質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物を得ることができ、バイオマス燃料等のエネルギー源として、さらにはセメント焼成設備のバイオマス燃料として有効利用することができ、しかもセメント焼成設備の操業やセメント品質に悪影響を及ぼす虞が無いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法は、家畜排泄物を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、前記高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物に、自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか一方による乾燥または加熱乾燥、及び前記自然エネルギー、前記発酵熱エネルギーのいずれか他方による乾燥または加熱乾燥、を順次施すことにより、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、有機物の分解率が20質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする工程を有し、前記高含水率有機廃棄物は、畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリーであることを特徴とする。
この高含水率有機廃棄物の燃料化方法では、高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して塩素濃度が3000ppm以下の脱塩素有機廃棄物とする。
次いで、この脱塩素有機廃棄物に、自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか一方による乾燥または加熱乾燥、及び前記自然エネルギー、前記発酵熱エネルギーのいずれか他方による乾燥または加熱乾燥、を順次施すことにより、この脱塩素有機廃棄物に加わる自然エネルギー及び発酵熱エネルギーの双方のエネルギー量を調整して含水率を35質量%以下に調整するとともに、この脱塩素有機廃棄物に含まれる有機物の分解率を20質量%以下に抑え、バイオマス燃料としての十分な発熱量を確保する。
このように、自然エネルギー及び発酵熱エネルギーの双方のエネルギー量を調整することにより、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、有機物の分解率が20質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物を得ることが可能になる。
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、塩素濃度及び含水率が極めて低くかつ高位の発熱量を有しており、燃焼効率が高いバイオマス燃料として有効利用することが可能である。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
前記高含水率有機廃棄物の含水率は60質量%以上であることが好ましい。
この高含水率有機廃棄物の含水率を60質量%以上とすることにより、高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物が水に溶解することで効果的に除去され、よって、塩素濃度が3000ppm以下と極めて低い脱塩素有機廃棄物を容易かつ安価に得ることが可能になる。
前記乾燥脱塩素有機廃棄物に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことが好ましい。
乾燥脱塩素有機廃棄物は、乾燥処理の後では、通常、球状、塊状(ブロック状)、板状等、比較的大きな形状を有している。そこで、乾燥処理した乾燥脱塩素有機廃棄物に対して、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより、燃焼効率の高い所望の形状の粉粒体とすることが可能になる。
本発明のバイオマス燃料は、家畜排泄物を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去し、乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であって、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下かつ有機物の分解率が20質量%以下であり、前記高含水率有機廃棄物は、畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリーであることを特徴とする。
このバイオマス燃料では、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を35質量%以下としたことにより、燃料として用いた場合においても、燃焼時に発生する熱エネルギーがバイオマス燃料に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまう虞が無くなり、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが可能になる。
また、有機物の分解率を20質量%以下としたことにより、バイオマス燃料としての十分な発熱量が確保される。
また、塩素濃度が3000ppm以下と極めて低いので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法によれば、高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物に、自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか一方による乾燥または加熱乾燥、及び前記自然エネルギー、前記発酵熱エネルギーのいずれか他方による乾燥または加熱乾燥、を順次施すことにより、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、有機物の分解率が20質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とするので、塩素濃度及び含水率が極めて低くかつ高位の発熱量を有する乾燥脱塩素有機廃棄物を得ることができる。したがって、燃焼効率が高いバイオマス燃料を提供することができる。
また、乾燥または加熱乾燥に、太陽熱等の自然エネルギーや有機廃棄物の発酵熱エネルギーを用い、化石燃料を用いないので、省エネルギー効果が大きく、しかも環境負荷が小さい。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質への悪影響を防止することができる。
本発明のバイオマス燃料によれば、塩素濃度を3000ppm以下、含水率を35質量%以下かつ有機物の分解率を20質量%以下としたので、燃焼効率が高く、省エネルギー効果が大きく、しかも環境負荷が小さいバイオマス燃料を提供することができる。
また、このバイオマス燃料を燃焼する燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルを防止することができ、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入した場合においても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料の最良の形態について、図面に基づき説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
「高含水率有機廃棄物の燃料化設備」
図1は、本発明の一実施形態の高含水率有機廃棄物の燃料化方法に用いられる燃料化設備を示す模式図である。
図において、1は高含水率有機廃棄物を排出する排出源、2は高含水率有機廃棄物の脱塩設備、3は燃料化設備である。
ここで、高含水率有機廃棄物とは、含水率が60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の有機廃棄物のことであり、例えば、豚舎、牛舎、鶏舎等の畜舎を水洗により洗浄した際に排出される豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿と多量の洗浄水とを含む排泄物含有処理水、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリー、使用済みの弁当容器や食品用容器を水洗により洗浄する際に排出される食品と多量の水とを含む食品廃棄物含有処理水、等が挙げられる。これらは、その用途や必要に応じて、1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
排出源1は、上記の高含水率有機廃棄物を排出する源であり、例えば、豚の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する豚舎、牛の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する牛舎、鶏のケージ等を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する鶏舎等の畜舎、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリーの貯留槽、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物やその容器等を水洗により洗浄した食品廃棄物含有処理水を排出する食品廃棄処理施設等が挙げられる。
これらの各施設から排出される高含水率有機廃棄物は、その用途によっては、2種類以上を混合してもよい。
脱塩設備2は、排出源1から排出される高含水率有機廃棄物を塩素濃度が3000ppm以下になるように脱塩処理するための設備であり、高含水率有機廃棄物を貯留する1次槽11と、この高含水率有機廃棄物を固液分離するスクリーン等からなる1次固液分離器12と、固液分離により生じた1次スラリー(水溶液)を貯留し流量を調整する調整槽13と、この1次スラリーを1次曝気処理する1次曝気槽14と、1次曝気処理されたスラリーを固液分離するスクリーン等からなる2次固液分離器15と、この固液分離により生じた2次スラリー(水溶液)を2次曝気処理する2次曝気槽16と、この2次曝気処理されたスラリーを膜浸漬処理により汚泥と処理水とに分離する膜浸漬槽17と、この汚泥を脱水処理して含水率が85質量%以下の脱塩素有機廃棄物と処理水とに分離する脱水処理装置18と、膜浸漬槽17及び脱水処理装置18から排出される処理水を一旦貯留し放流する処理水受槽19とにより構成されている。
燃料化設備3は、脱塩設備2から送り出される塩素濃度が3000ppm以下の脱塩素有機廃棄物を燃料化するための設備であり、自然エネルギーを用いて乾燥または加熱乾燥する天日乾燥設備21A、21Bと、有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱を用いて乾燥または加熱乾燥を施す発酵設備22A、22Bと、発酵設備22Aあるいは天日乾燥設備21Bから取り出された固形状の乾燥脱塩素有機廃棄物に対して、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより直径10mm以下の粒子状とする分級機能を有する粉砕機23と、発酵設備22A、天日乾燥設備21B及び粉砕機23のうち1種以上の装置から排出される乾燥脱塩素有機廃棄物を仕様別や品種別に選別し保管する保管庫24とにより構成されている。
この天日乾燥設備21Aと発酵設備22Aは、天日乾燥設備21A側が前段(前工程)となるように直列に配置され、一方、発酵設備22Bと天日乾燥設備21Bは、発酵設備22B側が前段(前工程)となるように直列に配置されている。
ここで、自然エネルギーを用いた乾燥とは、風力による乾燥等であり、また、自然エネルギーを用いた加熱乾燥とは、太陽熱による加熱乾燥、太陽熱及び風力を併用した加熱乾燥等である。
天日乾燥設備21A、21Bは、脱塩素有機廃棄物の種類や量に応じて太陽熱単独、あるいは太陽熱及び自然の風力を用いて天日乾燥を行う設備であり、太陽熱及び風力を用いた天日乾燥器等が好適に用いられる。
発酵設備22A、22Bは、脱塩素有機廃棄物を発酵させる際に生じる発酵熱を用いて、この脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥させる設備であり、例えば、縦型密閉式発酵槽、横型開放式発酵槽、横型開放式堆肥舎等が好適に用いられる。
粉砕機23としては、分級機能を備えた自動乳鉢、スタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
「高含水率有機廃棄物の燃料化方法」
本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法は、図1に示す高含水率有機廃棄物の燃料化設備を用いて、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であり、この高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物に、自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか一方による乾燥または加熱乾燥、及び自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか他方による乾燥または加熱乾燥、を順次施すことにより、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、有機物の分解率が20質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする方法である。
この高含水率有機廃棄物の燃料化方法について図1に基づき詳細に説明する。
排出源1から排出される上述した排泄物含有処理水、食品廃棄物含有処理水等の高含水率有機廃棄物を脱塩設備2の1次槽11に一旦貯留し、送液ポンプ(図示略)等を用いて1次固液分離器12に投入し、この高含水率有機廃棄物をケーキ(固形分)と1次スラリー(水溶液)に固液分離する。次いで、この固液分離により生じた1次スラリーを調整槽13に投入して貯留し、この1次スラリーを調整槽13の計量槽等の定量供給装置を介して1次曝気槽14に導入し、この1次スラリーに1次曝気処理を施す。
次いで、この1次曝気処理が施されたスラリーを、送液ポンプ(図示略)等を用いて2次固液分離器15に投入し、このスラリーをケーキ(固形分)と2次スラリー(水溶液)に分離し、この固液分離により生じた2次スラリーを2次曝気槽16に投入し、2次曝気処理を施す。次いで、この2次曝気処理されたスラリーを膜浸漬槽17に投入して膜浸漬処理を施し、汚泥と処理水とに分離する。次いで、この汚泥を脱水処理装置18に導入し、脱水処理を施す。
これにより、高含水率有機廃棄物は、2段階の固液分離により効果的に脱塩処理が施され、塩素濃度が3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下であり、かつ含水率が90質量%以下、好ましくは80質量%以下のケーキ状の脱塩素有機廃棄物となる。
この膜浸漬槽17及び脱水処理装置18から排出される処理水は、処理水受槽19に一旦貯留された後、放流される。
一方、1次固液分離器12及び2次固液分離器15各々から取り出されたケーキは、さらに塩素濃度の低い脱水汚泥と混合して用いることができる。
また、塩素濃度が3000ppmを超えるものについては、再度、別途据え付けられた脱塩設備等を用いて脱塩処理を施した上で、上記のケーキ状の脱塩素有機廃棄物と混合して用いることができる。
次いで、この脱塩素有機廃棄物を燃料化設備3に搬送し、燃料化する。
この脱塩素有機廃棄物を燃料化する方法としては、次の(1)、(2)のいずれかの方法がある。
(1)脱塩素有機廃棄物を天日乾燥設備21Aに搬入し、太陽熱や風力等の自然エネルギーを用いて乾燥または加熱乾燥し、得られた脱塩素有機廃棄物の乾燥物を発酵設備22Aに搬入し、この乾燥物の発酵過程にて発生する発酵熱を用いて乾燥または加熱乾燥し、乾燥脱塩素有機廃棄物とする。
(2)脱塩素有機廃棄物を発酵設備22Bに搬入し、この脱塩素有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱を用いて乾燥または加熱乾燥し、得られた脱塩素有機廃棄物の乾燥物を天日乾燥設備21Bに搬入し、太陽熱や風力等の自然エネルギーを用いて乾燥または加熱乾燥し、乾燥脱塩素有機廃棄物とする。
この脱塩素有機廃棄物は、通常、4000〜4500kcal/kg程度の発熱量を有しているので、加熱乾燥工程で脱塩素有機廃棄物に含まれる有機物の分解率が20質量%を超えると、これに対応して発熱量が20質量%以上低下し、燃料としての価値を著しく損なうこととなる。
また、この脱塩素有機廃棄物を発酵熱のみで乾燥または加熱乾燥した場合においても、脱塩素有機廃棄物に含まれる有機物の分解率が20質量%を超えることとなり、同様に燃料としての価値を著しく損なうこととなる。
一方、脱塩素有機廃棄物を太陽熱や風力等の自然エネルギーのみで乾燥または加熱乾燥した場合、冬季や寒冷地での乾燥が困難である。
上記の(1)、(2)の方法では、太陽熱や風力等の自然エネルギーと、脱塩素有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱の双方を併用し、さらに、太陽熱や風力等の自然エネルギー量と、脱塩素有機廃棄物の発酵過程にて発生する熱量を調整することにより、得られた乾燥脱塩素有機廃棄物の含水率を35質量%以下に調整するとともに、脱塩素有機廃棄物に含まれる有機物の分解率を20質量%以下に抑え、燃料としての発熱量を十分に確保する。これにより、安定的に有用な発熱量を有するバイオマス燃料を作製することが可能である。
この乾燥脱塩素有機廃棄物は、単に乾燥または加熱乾燥しただけでは、球状、塊状、板状等、比較的大きな形状をしていることが多い。用途によってはこのままの形状でもよいが、セメント焼成設備等にて用いる場合等では、燃焼効率を向上させるために、粉砕機23を用いて分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、直径10mm以下の粒子状とする。
発酵設備22A、天日乾燥設備21B及び粉砕機23のうち1種以上の装置から取り出される乾燥脱塩素有機廃棄物は、保管庫24に搬入され、仕様別や品種別に選別され、保管される。
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、塩素濃度が3000ppm以下と極めて低く、含水率も35質量%以下と低く、有機物の分解率も20質量%以下に抑えられているので、高位の発熱量を有する乾燥脱塩素有機廃棄物を容易かつ安価に得ることができる。したがって、この乾燥脱塩素有機廃棄物を燃焼効率が高いバイオマス燃料として有効利用することができる。
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、高位の発熱量を有しているので、セメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部等に投入することによりセメント焼成用燃料として有効利用することができ、セメントの操業や品質への悪影響も無い。
「バイオマス燃料」
本実施形態のバイオマス燃料は、上記の高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去し、乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であって、その塩素濃度は3000ppm以下が好ましく、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下である。
また、含水率は35質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
また、有機物の分解率は20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
このバイオマス燃料は、上記の高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物に、自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか一方による乾燥または加熱乾燥、及び自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか他方による乾燥または加熱乾燥、を順次施すことにより、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、有機物の分解率が20質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とすることで、得ることができる。
なお、この乾燥脱塩素有機廃棄物を、例えば、ニーダー、ロールミル等の解砕手段を用いて直径10mm以下の粒子状に解砕すれば、燃焼効率が向上するので好ましい。
以上説明したように、本実施形態の燃料化方法によれば、塩素濃度及び含水率が極めて低くかつ高位の発熱量を有する乾燥脱塩素有機廃棄物を容易かつ安価に得ることができる。したがって、この乾燥脱塩素有機廃棄物を燃焼効率が高いバイオマス燃料として有効利用することができる。
また、乾燥または加熱乾燥に、太陽熱等の自然エネルギーや有機廃棄物の発酵熱エネルギーを用い、化石燃料を用いないので、省エネルギー効果が大きく、しかも環境負荷が小さい。
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、高位の発熱量を有しているので、セメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部等に投入することによりセメント焼成用燃料として有効利用することができ、セメントの操業や品質への悪影響も無い。
本実施形態のバイオマス燃料によれば、塩素濃度を3000ppm以下、含水率を35質量%以下、有機物の分解率を20質量%以下としたので、バイオマス燃料としての十分な発熱量を確保することができ、高位の発熱量を有する(燃焼効率が高い)燃料として有効利用することができる。
また、塩素濃度が3000ppm以下と極めて低いので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
このバイオマス燃料は、セメント焼成設備の燃料としての他、廃棄物発電用、廃棄物ボイラー用等、広範囲の燃料として利用が可能である。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
含水率90質量%、塩素濃度8000ppm、発熱量4500kcal/kgの豚糞100kg及び脱塩処理を施した上水道水100Lを含む高含水率有機廃棄物を、脱水機を用いて脱水し、含水率70質量%、塩素濃度980ppmのケーキ33kgを得た。
次いで、このケーキを天日乾燥設備に搬入し、太陽熱及び風力を用いて天日乾燥を行い、含水率55質量%、塩素濃度980ppm、発熱量4500kcal/kgの乾燥脱塩素豚糞を得た。
次いで、この乾燥脱塩素豚糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ、含水率25質量%、塩素濃度1120ppm、発熱量3830kcal/kgの乾燥脱塩素豚糞12kgを得た。なお、発酵熱による有機物の分解率は15質量%であった。
また、この乾燥脱塩素豚糞をセメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部に燃料として投入したところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントの操業や品質に影響は無かった。
(比較例1)
含水率90質量%、塩素濃度8000ppm、発熱量4500kcal/kgの豚糞100kg及び脱塩処理を施した上水道水100Lを含む高含水率有機廃棄物を、脱水機を用いて脱水し、含水率70質量%、塩素濃度980ppmのケーキ33kgを得た。
次いで、このケーキを横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ、乾燥脱塩素豚糞7kgを得た。
この乾燥脱塩素豚糞は、含水率が25質量%、塩素濃度が1790ppm、発熱量が2480kcal/kg、発酵熱による有機物の分解率が45質量%であった。
また、この乾燥脱塩素豚糞をセメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部に燃料として投入したところ、セメントキルンの燃焼効率が低下し、セメントの操業に大きな影響があった。
(実施例2)
含水率90質量%、塩素濃度9000ppm、発熱量4200kcal/kgの牛糞100kg及び脱塩処理を施した上水道水100Lを含む高含水率有機廃棄物を、脱水機を用いて脱水し、含水率70質量%、塩素濃度1110ppmのケーキ33kgを得た。
次いで、このケーキを天日乾燥設備に搬入し、太陽熱及び風力を用いて天日乾燥を行い、含水率50質量%、塩素濃度1110ppm、発熱量4200kcal/kgの乾燥脱塩素牛糞を得た。
次いで、この乾燥脱塩素牛糞を縦型密閉式発酵槽に投入し、発酵熱及び風力を用いて加熱乾燥させ、含水率25質量%、塩素濃度1260ppm、発熱量3570kcal/kgの乾燥脱塩素牛糞を得た。なお、発酵熱による有機物の分解率は15質量%であった。
また、この乾燥脱塩素牛糞をセメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部に燃料として投入したところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントの操業や品質に影響は無かった。
(比較例2)
含水率90質量%、塩素濃度9000ppm、発熱量4200kcal/kgの牛糞100kg及び脱塩処理を施した上水道水100Lを含む高含水率有機廃棄物を、脱水機を用いて脱水し、含水率70質量%、塩素濃度980ppmのケーキ33kgを得た。
次いで、このケーキに太陽熱による天日乾燥を300日間行い、乾燥脱塩素牛糞を得た。
この乾燥脱塩素牛糞は、含水率が40質量%と非常に多く、セメント焼成用燃料として用いることができないものであった。
本発明の一実施形態の高含水率有機廃棄物の燃料化方法に用いられる燃料化設備を示す模式図である。
符号の説明
1 排出源
2 脱塩設備
3 燃料化設備
11 1次槽
12 1次固液分離器
13 調整槽
14 1次曝気槽
15 2次固液分離器
16 2次曝気槽
17 膜浸漬槽
18 脱水処理装置
19 処理水受槽
21A、21B 天日乾燥設備
22A、22B 発酵設備
23 粉砕機
24 保管庫

Claims (4)

  1. 家畜排泄物を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、
    前記高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、
    次いで、この脱塩素有機廃棄物に、自然エネルギー、発酵熱エネルギーのいずれか一方による乾燥または加熱乾燥、及び前記自然エネルギー、前記発酵熱エネルギーのいずれか他方による乾燥または加熱乾燥、を順次施すことにより、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、有機物の分解率が20質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする工程を有し、
    前記高含水率有機廃棄物は、畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリーであることを特徴とする高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
  2. 前記高含水率有機廃棄物の含水率は60質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
  3. 前記乾燥脱塩素有機廃棄物に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことを特徴とする請求項1または2記載の高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
  4. 家畜排泄物を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去し、乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であって、
    塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下かつ有機物の分解率が20質量%以下であり、
    前記高含水率有機廃棄物は、畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリーであることを特徴とするバイオマス燃料。
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