JP5546499B2 - スラグ水砕水の循環方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スラグ水砕水の循環方法に関し、さらに詳しくは、溶錬炉で生成されたスラグを水砕した水砕水から重金属を含む水砕水をブリードオフし、重金属を除去した後の処理水を放流することなく再び水砕水として循環使用するスラグ水砕水の循環方法に関する。
銅製錬工程において溶錬炉から分離排出される銅スラグは、酸化鉄、二酸化ケイ素、酸化カルシウムなどが主成分であり、水砕ピットにおいて高圧水によって粉砕することによって水砕スラグとされる。そして、水砕スラグは、例えば、セメントの原料やサンドブラスト材などとして利用されている。スラグを水砕するための水砕水は、一般に安価な工業用水や海水が使用されており、水砕後の水砕水は水砕水中に含まれる固形成分を取り除いた後排水として放流するか、あるいは循環させることにより繰り返して使用される。
例えば、銅スラグの水砕プロセスにおいて、水砕水を何度も循環させる場合には、水砕水中にAs、Cd等の重金属が溶出して濃縮する。このような状態で水砕を継続した場合、生成される水砕スラグの品質(不純物溶出率)に悪影響を与えることから、pH調整を行うことによってAs、Cd等の重金属の溶出を抑制すると共に、水砕水量の1〜10%を循環系から抜き出し(ブリードオフ)、新たな工業用水や海水を補給水として補給して重金属の濃縮を抑えることが行われている(特許文献1)。尚、水砕水はブリードオフ以外にも水砕時に蒸発したり、水砕スラグに付着した状態で搬送されることによっても水量が減少するので、その分の水を新たに補給水として補給する必要がある。
また、特許文献2には、銅製錬におけるカラミ(スラグ)を水砕し、粒状化する工程において、循環する水砕水に無機凝集剤及び有機凝集剤を添加し、pHを5〜10に調整後、沈降槽において、浮遊物を除去後、水砕水として再使用することにより、ヒ素の溶出性の少ないカラミ粒を得る銅製錬カラミの処理方法、或いは、pHを8〜10に調整後、沈降槽において、浮遊物を除去後、水砕水として再使用することにより、ヒ素及び又はカドミウムの溶出性の少ないカラミ粒を得る銅製錬カラミの処理方法が開示されている。
特許第4059864号特許公報 特許第4373965号特許公報
しかしながら、従来技術は水砕水を循環させて繰り返し使用することにより水砕に使用する水砕水の量を節約することができるものの、ブリードオフ水は系外設備で処理された後、排出されていたため、完全なクローズドシステムとして成立していなかった。
また、従来技術では、系外へ排出された水は処理後に再利用されることなく放流されていたことから所定量の水を新たに補給水として給水する必要があるが、補給水として海水や安価な工業用水が確保できない場合には、高価な水道水を使用しなければならず高コストとなるという問題があった。
さらに、ブリードオフ水を処理した処理水は一般に塩類濃度が高く、これを水砕水として循環設備において繰り返した場合には配管内に堆積するスケーリングが発生してしまい処理水の循環が阻害されて安定した操業を継続できないという問題があった。
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、スラグ水砕設備において水砕時に溶出したAs、Cd、Pb等の重金属を含む水砕水をブリードオフし、As、Cd、Pb等の重金属を除去した後の処理水を放流することなくスケーリング発生要因物質を除去してスケーリングの発生を防止しつつ補給水として再利用することにより水砕水の循環系を完全にクローズド化することを可能としたスラグ水砕水の循環方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、溶錬炉で生成されたスラグを冷水槽に貯えられた水砕水によって水砕したスラグ水砕水を循環使用するスラグ水砕水の循環方法において、スラグ水砕水の一部をブリードオフし、凝集剤と水酸化カルシウムを含む中和剤を添加して重金属を沈降物として除去すると共に、それ以外のスラグ水砕水を冷水槽に戻すステップと、沈降物を除去した後の処理水を反応槽に移送して硫酸を添加することによりスケール発生要因物質を結晶化させて除去する際の種晶となるべき物質を生成するステップと、硫酸が添加された処理水を沈殿槽に移送してスケーリングの発生要因となる物質を結晶化させて除去するステップと、沈殿槽で生成された過飽和のスケール要因物質を含む濃縮水の一部を反応槽に返送し、晶析反応を促すステップと、沈殿槽においてスケーリングの発生要因となる物質が除去された処理水を水砕水の補給水として水砕水が貯えられた冷水槽に戻すことにより水砕水の循環設備内におけるスケールの発生を防止してブリードオフ水を系外に排出することなく補給水として循環使用するステップとを備えていることを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1記載のスラグ水砕水の循環方法において、重金属の沈降物としての除去は、pHを8.0〜11.0に調整することにより行うことを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のスラグ水砕水の循環方法において、水砕水をpH6.0〜7.0で、且つ、水温が30〜70℃となるようにして循環させることを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のスラグ水砕水の循環方法において、ブリードオフしたスラグ水砕水以外のスラグ水砕水は、浮遊物を除去した後、水温を30〜40℃に冷却して冷却槽へ戻すことを特徴とする。
本発明に係るスラグ水砕水の循環方法によれば、スラグ水砕設備において水砕水の一部をブリードオフし、水砕時にスラグから溶出して濃縮されたAsやCd等の重金属を除去した処理水からさらにスケールの発生要因となる物質を除去することによって水砕水の循環設備内におけるスケールの発生を防止することとしたので、ブリードオフ水を系外に排出することなく補給水として再利用することができ、水砕水の循環系を完全にクローズド化することが可能となった。これにより、ブリードオフした水砕水を排水として系外に排出する必要がなくなるという効果がある。
また、本発明に係るスラグ水砕水の循環方法によれば、海水や安価な工業用水を使用できない環境にあっても高価な水道水を使用する量を最小限に抑えることができスラグ水砕作業において大幅なコストダウンを図ることができるという効果がある。
本発明に係るスラグ水砕水の循環方法を実施するための設備の一実施形態の概要を示すブロック図である。 排水処理部及びスケール発生要因物質除去部の詳細を示すブロック図である。 本発明に係るスラグ水砕水の循環方法の一実施形態のフローチャートである。
[スラグ水砕水の循環設の構成]
以下、本発明に係るスラグ水砕水の循環方法について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るスラグ水砕水の循環方法を実施するための設備の一実施形態の概要を示すブロック図である。
図示されたスラグ水砕水の循環設備1は、概略として、水砕水を貯えるための冷水槽5と、冷水槽5から供給される水砕水によってスラグを水砕する水砕ピット7と、水砕ピット7から抜き出された水砕水を貯えて浮遊物を除去すると共に、水砕水の一部をブリードオフする沈降ピット8と、沈降ピット8からブリードオフした水砕水に中和剤と凝集剤を添加することによって重金属を沈降物として除去する排水処理部10と、沈降物が除去された処理水からスケールの発生要因となる物質を除去するスケール発生要因物質除去部20と、スケールの発生要因となる物質が除去された処理水を補給水として冷水槽5に供給する補給水供給部30を備えて構成されている。
冷水槽5は、水砕水を貯えるための水槽であり、水温が30〜40℃でpHが6.0〜7.0、好ましくは6.5に調整された水砕水が貯えられている。pHを6.0〜7.0、好ましくは6.5とするのは、後述するようにAsやCd等の重金属の溶出を抑制すると共にスケールの発生を防止して水砕水を循環使用するためである。また、水温を30〜40℃とするのは高温のスラグを効率よく冷却して水砕するためである。冷水槽5に貯えられている水砕水は水砕樋6を通って水砕ピット7に流入されるように形成されている。そして、溶錬炉から排出されたスラグが図示しないスラグ樋を介して水砕樋6に流入されると、冷水槽5から送られて水砕樋6を流下してきた水砕水によって水砕され、水砕スラグとして水砕ピット7内に落下する。尚、水砕水の一部は循環の途中で蒸発したり、水砕スラグや除去すべき沈殿物などに付着して系外へ排出されるのでこの分の水砕水を補給するための補給水40が冷水槽5に供給されるようになっている。
水砕ピット7は、高温のスラグを水砕水によって細かく水砕した水砕スラグと水砕水を貯える槽である。水砕ピット7には図示しないバケットエレベータが設けられており、水砕水によって水砕された水砕スラグをすくい上げて水砕ピット7内から搬送されるようになっている。一方、水砕ピット7の底部には水砕ピット7内に溜まった水砕水を抜き出すための図示しない抜出口が設けられており、水砕ピット7の底部から抜き出された水砕水は沈降ピット8に送られるようになっている。また、水砕ピット7からオーバーフローした水砕水も同様に沈降ピット8に送られるようになっている。
沈降ピット8は、水砕ピット7から抜き出された水砕水を貯える槽である。水砕水を循環させて使用するとスラグに含まれる硫黄酸化物が水砕時に水砕水へ溶解してくるので水砕水のpHが6.5から約5.5と次第に低下してくる。pHが低下するとスラグに含まれるAs、Cd、Pbなどの重金属類が水砕水に溶出しやすくなるので水砕水の一部をブリードオフして後述する排水処理部10に送り、重金属の除去が行われる。一方、水砕水の大半は、循環利用のためのブリードオフ系統とは別の、もう1つの循環系統にポンプ8aによって送液されて冷水槽5に戻されることになるが、スラグを水砕した水砕水の温度は約70℃となっているので水砕水に含まれている浮遊物を湿式サイクロン9aによって除去し、さらに、プレートクーラー9bによって水温30〜40℃に冷却した後、冷水槽5に戻される。そして、冷水槽5に貯えられている水砕水にアルカリ剤、例えば、NaOHを添加することによってpHを再び6.0〜7.0、好ましくは6.5となるように調整する。これにより、重金属の水砕水への溶出が抑制されてスラグの品質が保持されることになり、再び水砕水として循環使用される。
排水処理部10は、沈降ピット8からブリードオフした水砕水から重金属の除去処理を行う。排水処理部10は、図2に示すように、凝集剤を添加する凝集剤添加槽11と、中和剤を添加する中和槽12と、重金属を沈殿させる沈殿槽13を備えている。凝集剤は、例えば、ポリ硫酸第二鉄であり、中和剤は、例えば水酸化カルシウムであり、必要に応じて水酸化ナトリウム等を中和剤として加えることもできる。そして、処理水のpHを8.0〜11.0、好ましくは10.0〜10.5とすることによって重金属を沈殿物とする。沈殿槽13内に生成された沈殿物は適宜沈殿槽13から取り出してフィルタープレス14によって脱水し、脱水ケーキとして回収する。重金属を除去した後の処理水は、さらに後述するスケール発生要因物質除去部20に送られる。また、凝集剤としては、別の連続する槽を設けて高分子凝集剤、好ましくはアニオン性凝集剤(例えば、クリファーム:PA823(栗田工業株式会社製))をさらに添加して用いることができる。ここで、排水処理部10の構成はこれに限るものではなく適宜の構成を採用することはいうまでもない。
スケール発生要因物質除去部20は、処理水を循環使用するに際して、配管内等にカルシウム等が付着することによって処理水の循環が阻害されることを防止するために、カルシウム等のスケール発生要因物質の除去を行う。本実施形態では、スケール発生要因物質除去部20は、いわゆる「種晶法」によってスケール発生要因物質、例えば、カルシウム等の除去を行うように形成されている。すなわち、スケール発生要因物質除去部20は、排水処理部10において重金属が除去された処理水を貯えると共に、スケール発生の要因となるカルシウム等を結晶化させて除去する際の種晶となるべき物質(例えば、硫酸カルシウム)を生成する反応槽21と、それらのスケール発生要因物質を除去するための沈殿槽22を備えている。ここで、沈殿槽22で生成された過飽和の濃縮水の一部を再び反応槽21に返送することによって、この濃縮水中に含まれる過飽和のスケール発生要因物質(カルシウム)が種晶となって晶析反応が起こる。重金属を沈殿除去した後の処理水から種晶法によって析出させたスケール発生要因物質は沈殿槽22から取り出され、上述した沈殿槽13から取り出された沈殿物と同様にフィルタープレス14によって脱水され、脱水ケーキとして回収される。ここで、本実施形態では、排水処理部10において中和剤として水酸化カルシウムが添加されており、反応槽21に硫酸を添加することにより反応槽21内でカルシウムと硫酸と反応して硫酸カルシウムとなり、沈殿槽22内で沈殿物となる。ここで、排水処理部10において重金属が除去された処理水はpHが8.0〜11.0であるのでこれに硫酸が添加されることによってpHが7.0〜9.0となり、スケールの発生要因となる物質が除去された処理水は、補給水供給部であるポンプ30によって冷水槽5に戻されて再び水砕に使用される。そして、冷水槽5では上述したように、沈降ピット8から湿式サイクロン9a、プレートクーラー9bを経由して冷水槽5へと循環利用される水砕水と合流することになるが、この系統における水砕後の循環水のpHは約5.5であるところブリードオフした水砕水よりはるかに多い水量であるのでこの系統からの循環水のpHにあまり影響を与えないことから水酸化ナトリウムを添加することによって水砕水のpHを最終的に6.0〜7.0、好ましくは6.5に調整する。尚、スケール発生要因物質除去部20は、このような構成のものに限定されるものではなく、例えば、イオン交換樹脂によってカルシウム等のスケール発生要因物質を除去する構成とすることも可能である。
ここで、スラグ水砕水におけるスケール発生要因物質として代表的な物質は硫酸カルシウムであり、この場合にはランゲリア指数によって水中のカルシウムの析出傾向を知ることができる。ランゲリア指数は、水のpHと理論的pH(pHs:水中のカルシウムが溶解も析出もしない平衡状態にあるときのpH)の差から求める(数1参照)。ランゲリア指数が小さいほどカルシウムは溶解しやすく、腐食性が強い。
(数1)
ランゲリア指数(LI)=pH−pHs
=pH−8.313+log[Ca++]+log[A]−S
pH:水の実際のpH値
pHs:平衡状態にあるときのpH値
log[Ca++]:カルシウムイオン濃度の対数
log[A]:総アルカリ度の対数
S:補正値
LI>0・・・スケール発生
LI<0・・・腐食進行
LI=0・・・腐食、スケールいずれも進行せず
処理水の水質が、pH10.5,電気伝導率119mS/m,Ca硬度362.5mg/L,Mアルカリ度40mg/Lの場合、上記ランゲリア指数によれば、水温40℃ではpHが7.5以上、水温70℃ではpHが7.0以上でスケール傾向になることから、水砕水が水温30〜70℃である場合にはpHを6.0〜7.0、好ましくは6.5で循環使用すればスケールは発生しないことになる。さらに、pH6.0〜7.0、好ましくは6.5で循環使用すれば重金属の溶出も抑制することができる。
次に、本発明に係るスラグ水砕水の循環方法について上述した設備に基づいて説明する。図3は本発明に係るスラグ水砕水の循環方法の一実施形態を示すフローチャートである。
溶錬炉から排出されたスラグは、図示しないスラグ樋を介して水砕樋6に流入されて冷水槽5から供給されて水砕樋6を流下してきた水砕水によって水砕され(ステップS1)、水砕スラグとして水砕ピット7内に落下する。水砕スラグは、水砕ピット7内に設けられた図示しないバケットエレベータによりすくい上げられて順次移送される。
水砕ピット7内に溜まった水砕水は、水砕ピット7の底部から抜き出されて沈降ピット8に送られると共に、水砕水の一部は水砕ピット7からオーバーフローして、同じく沈降ピット8に送られて沈降ピット8に貯留される(ステップS2)。水砕時にはスラグに含まれる硫黄酸化物が水砕水へ溶解してくるので水砕水のpHは6.5から約5.5へと次第に低下してくる。水砕水のpHが低下するとAs、Cd、Pbなどの重金属が溶出しやすくなるので、後述するように、水砕水の一部、全量の1〜10%をブリードオフして(ステップS11)、排水処理部10において重金属の除去を行う(ステップS12)。一方、沈降ピット8の水砕水はポンプ8aによって湿式サイクロン9aに送り、浮遊物を湿式サイクロン9aによって除去(ステップS3)した後、プレートクーラー9bにて水温を30〜40℃に冷却(ステップS4)して再び冷却槽5へ戻される(ステップS5)。
一方、沈降ピット8からブリードオフされた水砕水は、排水処理部10に送られて凝集剤添加槽11にてポリ硫酸第二鉄が添加され、さらに、中和槽12にて中和剤(水酸化カルシウム、必要に応じて水酸化ナトリウム等)が添加され、さらには高分子凝集剤(ここではクリファームPA823(栗田工業株式会社製))が添加されてpHを8.0〜11.0、好ましくは10.0〜10.5に調整して沈殿槽13内にて重金属を沈殿させて除去する(S12)。そして、沈殿物は適宜沈殿槽13から取り出されてフィルタープレス14によって脱水され、脱水ケーキとして回収される(図2参照)。
そして、排水処理部10によって重金属が沈殿物として除去された後の処理水は、スケール発生要因物質除去部20に送られてスケール要因物質の除去が行われる(ステップS13)。本実施形態では、種晶法によってスケール発生要因物質である、例えば、カルシウム等の除去を行うように形成されている。すなわち、排水処理部10において重金属が除去された処理水には中和剤として水酸化カルシウムが添加されており、これに硫酸を加えることによって反応槽21において種晶となるべき物質である硫酸カルシウムを生成させる。晶析されたスケール発生要因物質(カルシウム)は、沈殿槽22から取り出されてフィルタープレス14によって脱水され、脱水ケーキとして回収される。そして、沈殿槽22内の濃縮水の一部は再び反応槽21に返送され、濃縮水に含まれるカルシウムを硫酸カルシウムとして結晶化させることによって析出させる。尚、本実施形態ではスケール発生要因物質の除去は種晶法によって行っているが、これに限定されるものではなく、例えば、イオン交換樹脂によってカルシウムを除去することによって行うことも可能である。
一方、排水処理部10において重金属が除去された後の処理水のpHは8.0〜11.0であるが、スケール発生要因物質除去部20において添加される硫酸によって処理水のpHを7.0〜9.0に調整した後、スケールの発生要因となる物質が除去された処理水を水槽に供給するための補給水供給部であるポンプ30によって冷水槽5に戻されて(ステップS5)再び水砕の使用に供されることになる。沈降ピット8から冷水槽5に戻される水砕水のpHは約5.5であり、沈降ピット8からブリードオフされて排水処理部10及びスケール発生要因物質除去部20によって処理された後の処理水のpHは7.0〜9.0であるが、沈降ピット8から戻される循環水の水量はブリードオフした水砕水よりもはるかに多いので沈降ピット8から戻される循環水のpH(約5.5)にあまり影響を与えないことからアルカリ剤、例えば、水酸化ナトリウムを添加することによって水砕水のpHを最終的に6.0〜7.0、好ましくは6.5に調整する(ステップS6)。尚、蒸発や水砕スラグなどに付着して循環系外に排出される分の水砕水を補給するため必要な量の水を補給水40として冷水槽5に補給する。そして、冷水槽5に貯えられている水砕水は再び水砕に循環使用される。これにより、重金属の溶出を抑制すると共にスケールの発生を防止して水砕水の一部を系外から排出することなく循環使用することが可能となる。
[実施形態の効果]
本実施形態に係るスラグ水砕水の循環方法によれば、補給水として必要な水量を100%とすると、その内の約70%を排水処理部10及びスケール発生要因物質除去部20によって処理した処理水で賄うことができ、大幅なコストダウンを図ることができる。
また、本実施形態に係るスラグ水砕水の循環方法によれば、水砕プロセスの必要補給水量及び水域への排出水量を減少させることが可能となるので環境負荷を軽減できる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
1 スラグ水砕水の循環設備
5 冷水槽
6 水砕樋
7 水砕ピット
8 沈降ピット
9a 湿式サイクロン
9b、9c プレートクーラー
10 排水処理部
11 凝集剤添加槽
12 中和槽
13 沈殿槽
14 フィルタープレス
20 スケール要因物質除去部
21 反応槽
22 沈殿槽
30 ポンプ
40 補給水

Claims (4)

  1. 溶錬炉で生成されたスラグを冷水槽に貯えられた水砕水によって水砕したスラグ水砕水を循環使用するスラグ水砕水の循環方法において、
    前記スラグ水砕水の一部をブリードオフし、凝集剤と水酸化カルシウムを含む中和剤を添加して前記重金属を沈降物として除去すると共に、それ以外のスラグ水砕水を前記冷水槽に戻すステップと、
    前記沈降物を除去した後の処理水を反応槽に移送して硫酸を添加することによりスケール発生要因物質を結晶化させて除去する際の種晶となるべき物質を生成するステップと、
    硫酸が添加された処理水を沈殿槽に移送してスケーリングの発生要因となる物質を結晶化させて除去するステップと、
    前記沈殿槽で生成された過飽和のスケール要因物質を含む濃縮水の一部を反応槽に返送し、晶析反応を促すステップと、
    前記沈殿槽においてスケーリングの発生要因となる物質が除去された処理水を水砕水の補給水として水砕水が貯えられた冷水槽に戻すことにより水砕水の循環設備内におけるスケールの発生を防止して前記ブリードオフ水を系外に排出することなく補給水として循環使用するステップと、
    を備えていることを特徴とするスラグ水砕水の循環方法。
  2. 請求項1記載のスラグ水砕水の循環方法において、
    前記重金属の沈降物としての除去は、pHを8.0〜11.0に調整することにより行うことを特徴とするスラグ水砕水の循環方法。
  3. 請求項1又は2に記載のスラグ水砕水の循環方法において、
    前記水砕水をpH6.0〜7.0で、且つ、水温が30〜70℃となるようにして循環させることを特徴とするスラグ水砕水の循環方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のスラグ水砕水の循環方法において、
    ブリードオフしたスラグ水砕水以外のスラグ水砕水は、浮遊物を除去した後、水温を30〜40℃に冷却して冷却槽へ戻すことを特徴とするスラグ水砕水の循環方法。
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