JP5546489B2 - 偏光板、及びそれを有する液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、湿度に依存した特性変化が軽減された偏光板、及びそれを有する液晶表示装置に関する。
液晶表示装置(LCD)の表示特性は近年ますます高まっており、特に大型テレビ用のLCDとして、VAモード液晶表示装置が有力である。VAモードLCDでは、液晶セルの表示面側及びバックライト側に2枚の偏光板を、それぞれの吸収軸を互いに直交させて配置し、さらにそれぞれの偏光板と液晶セルとの間に、光学的に2軸性の位相差フィルムを配置することで、より広い視野角が実現できること、即ち表示特性を向上できることが知られている。
また、近年LCDの需要拡大とともに様々な国や地域で使用されるため、様々な温度/湿度環境下に晒される。また、大型テレビ用LCDについては、屋内での使用頻度が高いので、エアコンの普及に伴い使用環境における温度差は大きくないが、季節などにより湿度差が顕著になる場合がある。
そのような様々な環境下で表示特性を保つためには、LCDを構成する部材の湿度依存性を少なくする必要がある。特に、視野角補償用に利用されている位相差フィルムのレターデーションが、環境湿度に依存して変化すると、表示特性を顕著に悪化させることになるので、位相差フィルムの湿度依存性の軽減は重要である。従来、セルロースアシレートフィルムは、LCD中に、位相差フィルムや偏光板の保護フィルム等の種々の用途の部材として用いられている。特許文献4には、所定の添加剤を添加することによって湿度安定性が改善されたセルロースエステルフィルムが提案されている。
しかし、LCD中、各部材は他の部材と貼合されているので、各部材の湿熱収縮率などの違いから、位相差フィルムに応力がかかり、レターデーションが変動し、その結果光漏れが生じ、表示特性を低下させることが知られている。
特許文献1では、粘着剤層にレターデーションを相殺させることで、光漏れを抑制する方法を提案している。
非特許文献1では、収縮応力を緩和する粘着剤を設計することで、位相差変化を低減し、光漏れを抑制する方法を提案している。
特許文献2では、フィルムの光弾性を低下させることで、レターデーション発生を抑え、光漏れを抑える方法を提案している。
特許文献3では、フィルムの光弾性と湿度環境試験後の寸法変化率を調整することで、光漏れを抑える方法を提案している。
特許文献4では、可塑剤を添加することでフィルムの弾性率を低減する方法を提案している。
特許第4000297号公報 特許第3926072号公報 特許第4407304号公報 特開2006−342227号公報
日東電工技報 90号(Vol.47) 2009年
本発明は、前記諸問題に鑑みなされたものであり、セルロースアシレートフィルムを有する偏光板の湿度依存性を軽減することを課題とし、具体的には、湿度に依存した光学特性の変動が少なく、高い湿度安定性を有する偏光板、及び該偏光板を有する液晶表示装置を提供することを課題とする。
従来技術では、応力起因のレターデーション変化のみに着目し、これを軽減するものであり、位相差フィルムのそのものが持つ湿度依存性は考慮されていない。上記課題解決のためには、即ち湿度環境下で光学特性を安定に維持するためには、偏光膜と貼合されていることによって生じる応力起因のレターデーション変化を抑制するとともに、位相差フィルムの湿度依存性を抑制することが重要である。さらに、位相差フィルム中に発生する応力は均一ではなく、製膜方向であるMD方向と、それに直交するTD方向とでは相違する。本発明者らは、これらの知見に基づき検討を重ね、セルロースアシレートフィルムの湿度依存性によって発生するレターデーション変化を抑制することに加えて、セルロースアシレートフィルム中に応力起因で発生するレターデーションが、考慮された特性値αに着目し、MD方向及びTD方向において求められたこの特性値αの差が小さいほど、偏光板形態での湿度安定性が改善できることを見出し、この知見に基づきさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記(A)〜(C)
(A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する、
(B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下、
(C)芳香環構造の総数が1以上3以下;
を満たす水素結合性化合物、及び
多価アルコールエステル系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤の中から選ばれる少なくとも一つの可塑剤、
を含むセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有する偏光板であって、
前記セルロースアシレートフィルムが、少なくとも相対湿度H1が30%及び80%において下記式(1)
(1)|(αTD−αMD)×d|≦2nm
(但し、αTD及びαMDはそれぞれ、セルロースアシレートフィルムのTD方向及びMD方向について、α=C×E’×Δεで算出される値を意味し、Cはセルロースアシレートフィルムの光弾性係数[Pa-1](温度25℃・相対湿度60%);E’は25℃・相対湿度H1%環境下でのセルロースアシレートフィルムのその方向における緩和弾性率[Pa];Δεは25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下の偏光板の寸法変化と、25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下のセルロースアシレートフィルムの寸法変化との差[%];並びにdはセルロースアシレートフィルムの膜厚[μm]をそれぞれ示す)
を満足することを特徴とする偏光板。
[2] 前記セルロースアシレートフィルムが、シアノ基を含む繰り返し単位、及びメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の少なくとも一方を有するポリマーもしくはオリゴマーをさらに含有することを特徴とする[1]の偏光板。
[3] 前記セルロースアシレートフィルムが、互いに同一又は異なる類から選択される2種以上の可塑剤を含有することを特徴とする[1]又は[2]の偏光板。
[4] 前記セルロースアシレートフィルムが、リン酸系エステル、及びカルボン酸エステルから選択される少なくとも1種の可塑剤をさらに含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの偏光板。
[5] 前記セルロースアシレートフィルムが、延伸処理された延伸フィルムであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの偏光板。
[6] [1]〜[5]のいずれかの偏光板を少なくとも有する液晶表示装置。
本発明によれば、セルロースアシレートフィルムを有する偏光板の湿度依存性を軽減することができ、具体的には、湿度に依存した光学特性の変動が少なく、高い湿度安定性を有する偏光板、及び該偏光板を有する液晶表示装置を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。以下、本発明の実施の形態を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書中、「MD方向」は、偏光板の送り出し方向、及び「TD方向」はそれに直交する方向を意味し、長尺状の偏光板では、「MD方向」は長手方向と一致し、「TD方向」は幅方向と一致する。実際に使用される矩形状に切断された形態の偏光板では、「MD方向」及び「TD方向」が特定困難な場合もあるが、その場合は吸収軸の分かっている偏光板を切断された偏光板面に対して平行に配置し、回転させ、最も暗くなる方向をTD、最も明るくなる方向をMDとし、αMD及びαTDを算出するものとする。また、切断された偏光板に偏光変化もしくは解消する層が付与されている場合、それを取り除いて回転を行い、判断する。
本発明は、水素結合性化合物、及び多価アルコールエステル系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤の中から選ばれる少なくとも一つの可塑剤を含むセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有する偏光板に関する。前記偏光板が有するセルロースアシレートフィルムは、少なくとも相対湿度H1が30%及び80%において下記式(1)を満足する。
(1)|(αTD−αMD)×d|≦2nm
αTD及びαMDはそれぞれ、セルロースアシレートフィルムのTD方向及びMD方向について、α=C×E’×Δεで算出される値を意味する。Cはセルロースアシレートフィルムの光弾性係数[Pa-1](温度25℃・相対湿度60%);E’は25℃・相対湿度H1%環境下でのセルロースアシレートフィルムのその方向における緩和弾性率[Pa];Δεは25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下の偏光板の寸法変化と、25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下のセルロースアシレートフィルムの寸法変化との差[%];並びにdはセルロースアシレートフィルムの膜厚[μm]をそれぞれ示す。
特性値αを算出するのに用いられるファクターには、セルロースアシレートフィルムの固有の特性値である光弾性係数C及び緩和弾性率E’のみならず、偏光板形態及びセルロースアシレートフィルムの湿度変化による寸法変化の差Δεが含まれている。寸法変化の差Δεは、セルロースアシレートフィルム単独の状態と、偏光膜と貼合され偏光板形態となった状態との寸法変化の差であり、偏光膜と貼合されていることによって生じる応力起因のレターデーション変化の程度を示す指標になる。この値が大きいほど、セルロースアシレートフィルムは、偏光膜と貼合されていることによって応力を受け、それに起因するレターデーションの変化が大きくなる。セルロースアシレートフィルム単独のレターデーションの湿度依存性の指標になる光弾性係数C及び緩和弾性率E‘とともに、寸法変化の差Δεをファクターとする前記特性値αは、実際の偏光板の形態における湿度依存性の程度を示すのに有用である。
本発明者が鋭意検討した結果、MD方向及びTD方向の上記特性値、αMD及びαTD、の差が小さいほど、環境湿度に依存して不均一に発生するレターデーションを軽減でき、湿度安定性の高い偏光板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。一方で、MD方向とTD方向とでは、フィルム中の分子の配向状態が異なっていることがほとんどであり、完全に等しくすることは困難である。本発明者らはさらに検討を重ね、αMD及びαTDが、上記式(1)を満足する範囲であれば、色味変化及び輝度変化を人間の眼が認識できない範囲まで軽減できるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
セルロースアシレートフィルムの光弾性係数Cは、主成分として含有するセルロースアシレートのアシル基の種類、そのアシル置換度、及び結晶化度、並びに添加剤の種類やその添加量等、種々の要因で変動するが、一般的には、温度25℃・相対湿度60%で、
10×10-12〜20×10-12Pa-1となるのが一般的である。また、MD方向とTD方向とで光弾性係数が大きく相違することはない。上記式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムを得るために、MD方向及びTD方向の光弾性係数Cを小さくしたい場合は、固有複屈折が負のポリマーを添加し、必要があれば延伸することによって達成することができる。一方、MD方向及びTD方向の光弾性係数Cを大きくしたい場合も他のファクターとの関係であり得、その場合は、固有複屈折が正のポリマーを添加し、必要があれば延伸することによって達成することができる。
なお、光弾性係数は、M−220(日本分光製)により測定することができる。
また、セルロースアシレートフィルムの25℃・相対湿度H1%環境下での緩和弾性率E’についても、成分として含有するセルロースアシレートのアシル基の種類、そのアシル置換度、及び結晶化度、並びに添加剤の種類やその添加量等、種々の要因で変動する。さらに、延伸処理されている場合は、延伸処理の方向や延伸倍率にも影響される。一般的には、セルロースアシレートの25℃・相対湿度H1%環境下での緩和弾性率E’は、1.0〜4.0GPa程度になる。上記式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムを得るために、MD方向及びTD方向の緩和弾性率E’を小さくしたい場合は、可塑剤を添加するによって達成することができる。
なお、緩和弾性率は、小型卓上試験機EZ Test/CE(島津製作所製)により測定することができる。
また、Δεは25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下の偏光板の寸法変化と、25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下のセルロースアシレートフィルムの寸法変化との差である。偏光膜が汎用されているPVA偏光膜である場合は、偏光膜の寸法変化が顕著であるので、偏光板形態での寸法変化には、偏光膜の寸法変化が支配的になり、一般的には−0.5〜0.5[%]になる。一方、セルロースアシレートフィルム単独の寸法変化は、主成分として含有するセルロースアシレートのアシル基の種類、そのアシル置換度、及び結晶化度、並びに添加剤の種類やその添加量等、種々の要因で変動する。さらに、延伸処理されている場合は、延伸処理の方向や延伸倍率にも影響される。上記式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムを得るために、MD方向及びTD方向のΔεの差を小さくしたい場合は、延伸温度を上げることによって達成することができる。一方、MD方向及びTD方向のΔεの差を大きくしたい場合も他のファクターとの関係であり得、その場合は、延伸温度を下げることで達成することができる。
なお、Δεは、自動ピンゲージ(新東科学製)により測定できる。詳細は実施例に記載する。
前記式(1)中、dは、前記セルロースアシレートフィルムの厚みを意味する。前記セルロースアシレートフィルムが視野角補償等に寄与するレターデーションを示すためには、ある程度の厚みが必要であり、また前記セルロースアシレートフィルムが、偏光膜の保護フィルムとして機能するためにもある程度の厚みが必要である。これらの観点から、前記セルロースアシレートフィルムの厚みdは、一般的には、30〜100μmである。
以下、本発明の偏光板を構成するセルロースアシレートフィルム等について詳細に説明する。
セルロースアシレートフィルム:
本発明に係わるセルロースアシレートフィルムは、所定の水素結合性化合物、及び多価アルコールエステル系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤の中から選ばれる少なくとも一つの可塑剤を含有する。所定の水素結合性化合物は、セルロースアシレートフィルムの湿度安定性を改善する作用がある。前記所定の可塑剤は、セルロースアシレートフィルムを柔軟にし、MD及びTD方向における、緩和弾性率を低減するのに寄与する。
1.水素結合性化合物
本発明において使用する水素結合性化合物は、下記(A)〜(C)を満足する。
(A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する、
(B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下、
(C)芳香環構造の総数が1以上3以下。
前記水素結合性化合物は、セルロースアシレートフィルムの湿度安定性を改善する作用がある。セルロースアシレートフィルムの位相差値の湿度依存性はセルロースアシレート樹脂のアシル置換基に存在するカルボニル基に水分子が配位することにより、セルロースアシレート樹脂の複屈折性が変化することで生じていると推測される。本発明に用いられる前記水素結合性化合物は、水素結合性基を有するので、セルロースアシレート樹脂のカルボニル基または水酸基に効果的に相互作用し、高湿状態での水分子のセルロースアシレート樹脂への接近を阻害することができる。
まず(A)の要件について説明する。
本発明に用いられる前記水素結合性化合物において水素結合性ドナー部および水素結合性アクセプター部として働く官能基の例は例えば、Jeffrey, George A.著、Oxford UP刊のIntroduction to Hydrogen Bondingの15ページのTable 2に記載されており、本明細書ではこの表に記載の官能基の数の前記水素結合性化合物における合計を、水素結合性ドナー数および水素結合性アクセプター数の合計として用いる。
本発明に用いられる前記水素結合性化合物は1分子内に水素結合性ドナー部と水素結合性アクセプター部の双方を有することにより、水と強い水素結合を形成し、水がセルロースアシレート中のカルボニル基に配位するのを抑制する。水素結合性ドナー部と水素結合性アクセプター部を結ぶ結合の数は0個以上3個以下が、前記水との水素結合形成の点で好ましく、1個および2個がさらに好ましい。
次に(B)の要件について説明する。
分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が大きすぎると、セルロースアシレートに水素結合性化合物が接近しにくくなり、環境変化にともなうレターデーション変化の改良効果が小さくなってしまう。一方、分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が小さすぎると水素結合性化合物同士の相互作用が強くなりすぎて、溶媒への溶解性、セルロースアシレートとの相溶性が不足するため好ましくない。(B)を満足する水素結合性化合物にはこれらの弊害がない。本発明に用いられる前記水素結合性化合物の分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値は、35以上60以下であるのがさらに好ましい。
次に(C)の要件について説明する。
本発明に用いられる水素結合性化合物中の芳香環構造の数は1以上3以下である。ここで、芳香環構造とは、芳香族炭化水素環の他、複素芳香環も含む。また、芳香環構造の数は、芳香環が縮合している縮合環の場合は1つと数え、芳香環どうしが連結基を介して連結しているときに複数個と数える。例えば、ナフタレン由来の炭素数10の芳香環は、芳香環構造1つと数える。芳香環構造の数が4以上になると水素結合性化合物の分子サイズが大きくなりすぎて、セルロースアシレート中のカルボニル基に接近しにくくなり、環境湿度による光学特性変化に対する抑制効果が小さくなってしまう。
また、本発明に用いられる水素結合性化合物は少なくとも一つの複素芳香環を含むことが好ましい。複素芳香環を含むことにより複素芳香環中のヘテロ原子と水素結合性化合物中の他の水素結合性アクセプターあるいは水素結合性ドナーが水と環状水素結合を形成しやすくなり好ましい。
(水素結合性化合物の親疎水性)
本発明に用いられる水素結合性化合物の親疎水性は特定範囲に制御されていることが好ましい。すなわち、添加剤が疎水的過ぎるとセルロースアシレートとの相溶性が不足し、セルロースアシレートに近傍に存在しうる添加剤の割合が少なくなってしまう。一方、添加剤が親水的過ぎると、ドープ溶剤への溶解性が不足してしまう。
−ClogP値−
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984))などを用いることが知られている。本発明では、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))を用いる。
ClogP値とは、1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。ClogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知の物を用いることができるが、本発明ではDaylight Chemical Information Systems社のシステム:PCModelsに組み込まれたCLOGPプログラムを用いた。
また、ある化合物のlogPの値が、測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することとなる。
水素結合性化合物の親疎水性は、オクタノール−水分配係数(以下logPと称することがある)により表すことができる。本発明に用いられる水素結合性化合物の親疎水性が、オクタノール−水分配係数の中でも前記ClogP値として0〜5.5の範囲になるように制御されていることを特徴とする。本発明に用いられる水素結合性化合物のClogP値は、さらに好ましくは1.0〜5.0であり、最も好ましくは2.0〜4.5である。
本発明に用いられる水素結合性化合物は以下に示す一般式(A−1)〜(H−1)であらわされる化合物が好ましい。以下に各々の構造について詳しく説明する。
(A)一般式(A−1)で表される水素結合性化合物
まず、一般式(A−1)で表される化合物について説明する。なお、本明細書中において、アルキル基などの炭化水素基は、本発明の趣旨に反さない場合、直鎖であっても、分枝であってもよい。
Figure 0005546489
式(A−1)中、Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。X1、X2、X3およびX4はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。
前記Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表し、アルキル基またはアリール基であることが好ましい。
前記Raがアルキル基である場合、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアルケニル基である場合、炭素数2〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアルキニル基である場合、炭素数2〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアリール基である場合、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましい。
前記Raが複素環基である場合、炭素数5〜23であることが好ましく、炭素数5〜17であることがより好ましい。
前記Raはさらに置換基を有していても、有していなくともよいが、さらに置換基を有していないことが、湿度依存性改良の観点から好ましい。
前記Raが有していてもよい置換基としては、以下の置換基Tを挙げることができる。前記置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
前記X1、X2、X3およびX4はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、それぞれ独立に単結合であることがより好ましく、全て単結合であることが特に好ましい。
前記X1、X2、X3およびX4がそれぞれ独立に表していてもよい前記2価の連結基としては、例えば、下記一般式(P)で表される2価の連結基、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数2)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは、炭素数6〜10)などを挙げることができる。その中でも下記一般式(P)で表される2価の連結基であることが好ましく、カルボニル基であることがより好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(P)中、*側が前記一般式(A−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
前記R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基であることが好ましく、水素原子、アルキル基またはアシル基であることが特に好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより特に好ましい。また、前記R1またはR2の少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、前記R3またはR4の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
前記R1、R2、R3およびR4がアルキル基である場合、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましい。前記R1がアルキル基かつX1が−C(=O)−、前記R2がアルキル基かつX2が−C(=O)−、前記R3がアルキル基かつX3が−C(=O)−、前記R4がアルキル基かつX4が−C(=O)−である場合、湿度依存性改良の観点から好ましいR1、R2、R3およびR4の範囲は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基または複素環基であり、より好ましくは置換または無置換のアリール基である。該アリール基が有する好ましい置換基は、後述する一般式(A−4)におけるのR31〜R34の範囲と同様であり、すなわちハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基である。
前記R1、R2、R3およびR4がアルケニル基である場合、炭素数2〜12であることが好ましく、炭素数2〜6であることがより好ましく、炭素数2〜4であることが特に好ましい。
前記R1、R2、R3およびR4がアルキニル基である場合、炭素数2〜12であることが好ましく、炭素数2〜6であることがより好ましく、炭素数2〜4であることが特に好ましい。
前記R1、R2、R3およびR4がアリール基である場合、炭素数6〜18であることが好ましく、炭素数6〜12であることがより好ましく、炭素数6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。
前記R1、R2、R3およびR4はさらに置換基を有していても、有していなくともよく、該置換基としては前記置換基Tを挙げることができる。
前記一般式(A−1)で表される化合物は、下記一般式(A−2)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
前記Ra2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は、前記Raの好ましい範囲と同様である。
前記R21およびR24はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、好ましい範囲は前記R1、R2、R3およびR4の好ましい範囲と同様である。
前記一般式(A−1)で表される化合物は、下記一般式(A−3)で表されることがより特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(A−3)中、Ra3はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。)
前記Ra3はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は、前記Raの好ましい範囲と同様である。
さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Ra3がアルキル基であることが、Rthを下降させつつ、レターデーションの湿度依存性を改良する場合に好ましく、その場合はさらに前記Ra3が無置換のアルキル基であるときがより好ましい。
前記一般式(A−1)で表される化合物は、下記一般式(A−4)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(A−4)中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)前記Ra4はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は、前記Raの好ましい範囲と同様である。
(B)一般式(B−1)で表される水素結合性化合物
次に、一般式(B−1)で表される化合物について説明する。
Figure 0005546489
(一般式(B−1)中、RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。X5およびX6はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
前記RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表し、好ましい範囲は前記Raの好ましい範囲と同様である。
5およびX6はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、好ましい範囲は前記X1、X2、X3およびX4の好ましい範囲と同様である。
前記R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、好ましい範囲は前記R1、R2、R3およびR4の好ましい範囲と同様である。
前記一般式(B−1)で表される化合物は、下記一般式(B−2)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
前記Rb2およびRc2はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は前記Raの好ましい範囲と同様である。
前記R25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、好ましい範囲は前記R21およびR24の好ましい範囲と同様である。
前記一般式(B−3)で表される化合物は、下記一般式(B−3)で表されることがより特に好ましい。
Figure 0005546489
前記Rb3およびRc3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は前記Raの好ましい範囲と同様である。
前記一般式(B−1)で表される化合物は、下記一般式(B−4)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
前記Rb4およびRc4はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。
さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Rb3およびRc3が共にアルキル基であることが、Rthを下降させつつ、レターデーションの湿度依存性を改良する場合に好ましく、その場合はさらに前記Rb3およびRc3が共に無置換のアルキル基であるときがより好ましい。同様に前記Rb4およびRc4が共にアルキル基であることが好ましい。
以下に前記一般式(A−1)〜(B−1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例によって限定されるものではない。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
(一般式(A−1)または一般式(B−1)で表される化合物の製造方法)
前記一般式(A−1)または一般式(B−1)で表される化合物の製造方法は、特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。本発明において好ましく用いられる製造方法としては、例えば米国特許第3,478,026公報やChem. Eur. J. 2005, 11, 6616−6628に記載されているようにジシアノジアミドとニトリル化合物とを水酸化カリウム等の無機塩基存在下にてアルコール中で加熱することでトリアジン環を形成する方法や、Tetrahedron 2000,56,9705−9711に記載されているように塩化シアヌルを原料としてグリニャール化合物とアミン化合物を段階的に置換反応させていく方法や、有機合成化学協会誌 1967,第25巻第11号,1048−1051に記載されているようにイミドイルグアニジンとカルボン酸クロリドまたはエステルの反応によりモノアミノ−ジ置換−s−トリアジン類を合成する方法を用いることができる。
また、一般式(A−1)または一般式(B−1)で表される化合物は商業的に入手してもよい。
(C)一般式(C−1)で表される化合物
次に一般式(C−1)で表される化合物について詳しく説明する。
Figure 0005546489
(一般式(C−1)中、Ra11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb11、Rc11、Rd11およびRe11はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q1は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Raと連結して環を形成してもよい。X11、X12、およびX13は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X14は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
前記一般式(C−1)で表される化合物は、下記一般式(C−2)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(C−2)中、Ra12はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb12およびRd12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q2は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra12と連結して環を形成してもよい。X11、X12、およびX13は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X14は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
前記一般式(C−1)で表される化合物は、下記一般式(C−3)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(C−3)中、Ra13はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q3は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra13と連結して環を形成してもよい。)
前記一般式(C−1)で表される化合物は、下記一般式(C−4)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(C−4)中、R41、R42、R43およびR44は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。Ra14はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q4は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra14と連結して環を形成してもよい。)
(D)一般式(D−1)で表される化合物
次に一般式(D−1)で表される化合物について詳しく説明する。
Figure 0005546489
(一般式(D−1)中、Ra21、Rg21はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd21、およびRe21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q11は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra21と連結して環を形成してもよい。Q12は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg21と連結して環を形成してもよい。X23は単結合または2価の連結基を表す。X24は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
前記一般式(D−1)で表される化合物は、下記一般式(D−2)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(D−2)中、Ra22、Rg22はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd22は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q13は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra22と連結して環を形成してもよい。Q14は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg22と連結して環を形成してもよい。X25は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
前記一般式(D−1)で表される化合物は、下記一般式(D−3)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(D−3)中、Ra23、Rg23はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q15は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra23と連結して環を形成してもよい。Q16は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg23と連結して環を形成してもよい。)
前記一般式(D−1)で表される化合物は、下記一般式(D−4)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(D−4)中、R51およびR52は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。Ra24、Rg24はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q17は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra24と連結して環を形成してもよい。Q18は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg24と連結して環を形成してもよい。)
一般式(C−1)または一般式(D−1)で表される化合物の好ましい化合物例を以下に示す。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
(E)一般式(E−1)で表される化合物
次に一般式(E−1)で表される化合物について詳しく説明する。
Figure 0005546489
(一般式(E−1)中、Y1はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra31はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb31、Rc31、Rd31およびRe31はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q21は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra31と連結して環を形成してもよい。X31、X32、およびX33は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X34は、下記一般式(Q)
一般式(Q)
Figure 0005546489
(一般式(Q)中、*側が前記一般式(E−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−2)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(E−2)中、Y2はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra32はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb32、Rc32、Rd32はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q22は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra32と連結して環を形成してもよい。X35は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X36は、前記一般式(Q)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−3)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(E−3)中、Y3はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra33はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q23は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra33と連結して環を形成してもよい。)
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−4)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(E−4)中、Y4はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra34はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q24は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra34と連結して環を形成してもよい。R61、R62、R63およびR64は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−5)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(E−5)中、R65、R66、R67およびR68は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。Ra35はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q25は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra35と連結して環を形成してもよい。)
(F)一般式(F−1)で表される化合物
Figure 0005546489
(一般式(F−1)中、Y11はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra41、Rg41はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd41、およびRe41はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q31は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra41と連結して環を形成してもよい。Q32は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg41と連結して環を形成してもよい。X43は単結合または2価の連結基を表す。X44は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。但し、前記一般式(P)中、*側が前記一般式(F−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−2)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(F−2)中、Y12はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra42、Rg42はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd42は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q33は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra42と連結して環を形成してもよい。Q34は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg42と連結して環を形成してもよい。X43は単結合または2価の連結基を表す。X45は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。但し、前記一般式(P)中、*側が前記一般式(F−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−3)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(F−3)中、Y13はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra43、Rg43はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q35は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra43と連結して環を形成してもよい。Q36は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg43と連結して環を形成してもよい。)
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−4)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(F−4)中、Y14はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra44およびRg44はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q37は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra44と連結して環を形成してもよい。Q38は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg44と連結して環を形成してもよい。R71およびR72は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−5)で表されることが特に好ましい。
Figure 0005546489
(一般式(F−5)中、Ra45およびRg45はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q39は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra45と連結して環を形成してもよい。Q40は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg45と連結して環を形成してもよい。R73およびR74は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)
一般式(E−1)または一般式(F−1)で表される化合物の好ましい例を以下に示す。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
前記一般式(E−1)の化合物は、例えば、下記スキーム1の方法で合成することができる。すなわち、一般式(E−1a)の化合物と一般式(E−1b)の化合物を有機溶剤中にて塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(E−1a)、および一般式(E−1b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコールおよびアミドが好ましく、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドンおよびN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドンおよびN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。
塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム)と有機塩基(例、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)のいずれも使用できる。有機塩基が好ましく、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(E−1b)で表される化合物に対して0.5乃至10当量の範囲であることが好ましく、1乃至3当量の範囲であることが特に好ましい。
反応温度は、通常−20℃から用いる溶媒の沸点までであり、室温から溶媒の沸点が好ましい。反応時間は、通常10分〜3日間であり、好ましくは1時間から1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。特に脱離基Zがアルコキシ基、アリール基の場合は減圧下で行うことも好ましい。
スキーム1
Figure 0005546489
スキーム1中、Zは脱離基を表し、好ましくはハロゲン基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。
本発明に用いられる前記一般式(E−2)の化合物は、例えば、下記スキーム2の方法で合成することができる。すなわち、一般式(E−2a)の化合物と一般式(E−2b)、一般式(E−2c)の化合物を有機溶剤中にて塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(E−2a)、一般式(E−2b)および一般式(E−2c)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。用いる有機溶媒の好適な例は前記と同様である。用いる塩基の好適な例は前記と同様であるが、用いる塩基の使用量は、一般式(E−2b)で表される化合物と一般式(E−2c)で表される化合物の総量に対して0.5乃至10当量の範囲であることが好ましく、1乃至3当量の範囲であることが特に好ましい。用いる反応温度、反応時間の好適な例は前記に同じである。
スキーム2
Figure 0005546489
次に一般式(G−1)で表される化合物について詳しく説明する。
Figure 0005546489
前記一般式(G−1)中、L1は単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、ヘテロ原子を含む2価の連結基であることが好ましい。前記L1が表す前記ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、連結に関与する2本の結合手を同一原子が有する連結基であることが好ましい。このような連結基としては、−O−、−N(R82)−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)2−、およびそれらの組合せからなる連結基などを挙げることができる。なお、前記R82の範囲は前記R3の範囲と同様であり、前記R82の好ましい範囲は、水素原子または炭素数1〜15のアルキル基(より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜5、より特に好ましくはメチル基)である。
これらの中でも、−O−、−NH−および−N(CH3)−、−C(=O)−、およびそれらの組合せからなる連結基が好ましく、−O−、−NH−C(=O)−および−N(CH3)−がより好ましい。
前記一般式(G−1)中、前記R81は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数5〜20のヘテロアリール基または炭素数6〜20のアリール基を表す。
前記R81がアルキル基である場合、炭素数1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
前記R1およびR2がそれぞれ独立にアルケニル基である場合、炭素数12〜15であることが好ましく、12〜10であることがより好ましく、12〜5であることが特に好ましい。
前記R81がアルキニル基である場合、炭素数2〜15であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜5であることが特に好ましい。
前記R81がアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である場合、環状、直鎖または分岐のいずれであってもよいが、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
前記R81がヘテロアリール基である場合、炭素数5〜18であることが好ましく、5〜12であることがより好ましい。
前記R81がアリール基である場合、炭素数6〜18であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
前記R81がアリールアルキル基である場合、炭素数7〜18であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。
また、前記R81はさらに置換基を有していても、無置換であってもよい。該置換基としては、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数5〜20のヘテロアリール基または炭素数6〜20のアリール基などが好ましい。その中でも炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、特に前記R81が置換基を有するアルキル基である場合は、該置換基はフェニル基であることが好ましい。
前記L1と前記R81の好ましい組み合わせは以下のとおりである。
前記L1が−O−である場合、前記R81は 炭素数1〜15のアルキル基またはアリールアルキル基であることが好ましく、アリールアルキル基であることがより好ましい。
前記L1が−NH−である場合、前記R81は 炭素数1〜15のアルキル基、アリールアルキル基であることが好ましく、アリールアルキル基であることがより好ましい。
前記L1が−NH−C(=O)−である場合、前記R81は 炭素数1〜15のアルキル基、アリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
前記L1が−N(CH3)−である場合、前記R81は 炭素数1〜15のアルキル基またはアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
前記R81は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であることが、環境湿度に対するレターデーション変化抑制の観点からより好ましい。
本発明に用いられる水素結合性化合物は、前記一般式(G−1)で表される化合物の中でも、置換基を除くプリン塩基骨格中のアミノ基の数が0または1である化合物が好ましい。
本発明に用いられる水素結合性化合物は、前記一般式(G−1)で表される化合物において、前記R1が水素原子ではないことが好ましい。すなわち、本発明に用いられる水素結合性化合物は、前記核酸塩基骨格を含有する化合物が、下記一般式(G−2)で表されることがより好ましい。
Figure 0005546489
一般式(G−2)中、L2は単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R82は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。
前記一般式(G−2)中、L2の好ましい範囲は、前記一般式(G−1)におけるL1の好ましい範囲と同様である。
前記R82は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、各基の好ましい炭素数の範囲は一般式(G−1)におけるR81における各基の好ましい炭素数の範囲と同様である。
前記R82はメチル基、フェニル基またはベンジル基であることがより好ましく、メチル基、フェニル基またはベンジル基であることが特に好ましい。
前記一般式(G−2)中、L2とR82の好ましい組み合わせは、一般式(G−1)におけるL1とR81の好ましい組み合わせと同様の傾向である。
前記水素結合性化合物は、セルロースアシレートフィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトあるいは揮散したりしないように、前記核酸塩基骨格を含有する化合物とセルロースアシレートの相互作用を制御することが好ましい。
前記核酸塩基骨格を含有する化合物が有していることが好ましい水素結合等によってセルロースアシレートと相互作用可能である部分構造としては、プリン塩基骨格、エーテル結合構造、エステル結合構造、アミド結合構造、−NH−連結基構造などを挙げることができる。
(核酸塩基骨格を含有する一般式(G−1)で表される化合物の具体例)
前記核酸塩基骨格を含有する一般式(G−1)で表される化合物の具体例としては、以下のものを挙げることができる。ただし、前記水素結合性化合物として用いることができる前記核酸塩基骨格を含有する一般式(G−1)で表される化合物は、これらに限定されるものではない。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
(H) 一般式(H−1)で表される化合物
つぎに一般式(H−1)で表される化合物について詳しく説明する。
Figure 0005546489
(一般式(H−1)中、L3は単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R85は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。)R83、R84はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。X53、X54はそれぞれ独立に、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。但し、前記一般式(P)中、*側が前記一般式(H−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
以下に一般式(H−1)で表される化合物の好ましい例を示す。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
前記一般式(A−1)〜(H−1)で表される化合物は、分子量が100〜1000であることが好ましく、150〜700であることがより好ましく、150以上450以下であることが最も好ましい。
前記一般式(A−1)〜(H−1)で表される化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して、30質量%以下とすることが好ましく、1〜30質量%とすることがより好ましく、2〜20質量%とすることが特に好ましく、3〜15質量%とすることがさらに好ましい。
また、本発明のフィルムは、前記セルロースアシレート樹脂に対する、前記水素結合性化合物の合計含有量が35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記水素結合性化合物は前記一般式(A−1)〜(H−1)で表される化合物に限定されない。
2.可塑剤
前記セルロースアシレートフィルムは、多価アルコールエステル系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤の中から選ばれる少なくとも一つの可塑剤を含有する。前記所定の可塑剤は、セルロースアシレートフィルムを柔軟にし、MD及びTD方向における、緩和弾性率の低減に寄与する。また、これらの可塑剤は、水分子との親和性を低減させる疎水化剤としても作用するので、フィルム単体としての湿度依存性を軽減するのに寄与する。
(多価アルコールエステル系可塑剤)
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(4)で表される。
一般式(4) R1−(OH)n
(但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい前記多価アルコール系可塑剤の例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
中でも前記多価アルコール系可塑剤としては、炭素数5以上の多価アルコールを用いた多価アルコールエステルが好ましい。特に好ましくは炭素数5〜20である。
前記多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましい前記多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
前記脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい前記脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい前記脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい前記芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来るが、特に安息香酸が好ましい。
前記多価アルコール系可塑剤の分子量は特に制限はないが、300〜3000であることが好ましく、350〜1500であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では小さい方が好ましい。
前記多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、前記多価アルコール中のヒドロキシル基は、全てエステル化してもよいし、一部をヒドロキシル基のままで残してもよい。
以下に、前記多価アルコールエステルの具体的化合物を示す。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
(重縮合エステル系可塑剤)
前記重縮合エステル系可塑剤は、ポリエステル系可塑剤であるのが好ましく、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られるポリエステル系可塑剤が特に好ましい。また、芳香族ジカルボン酸と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物、と少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られることも好ましい。
前記ジカルボン酸残基の平均炭素数の計算は、ジカルボン酸残基とジオール残基で個別に行う。
前記ジカルボン酸残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値を平均炭素数とする。例えば、アジピン酸残基とフタル酸残基が50モル%ずつから構成される場合は、平均炭素数7.0となる。
また、前記ジオール残基の場合も同様で、ジオール残基の平均炭素数は、ジオール残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値とする。例えばエチレングリコール残基50モル%と1,2−プロパンジオール残基50モル%から構成される場合は平均炭素数2.5となる。
前記重縮合エステルの数平均分子量は500〜2000であることが好ましく、600〜1500がより好ましく、700〜1200がさらに好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースエステルフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染を生じにくくなる。また、2000以下であればセルロースエステルとの相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
前記重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、重量あたりのヒドロキシル基の量(以下、水酸基価とも言う)により算出することもできる。本発明において、水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物をジカルボン酸成分として用いる場合は、ジカルボン酸成分の炭素数の平均が5.5〜10.0のジカルボン酸であることが好ましく、より好ましくは5.6〜8である。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースエステルへの相溶性が優れ、セルロースエステルフィルムの製膜過程でブリードアウトの発生を抑制することができる。
ジオールと、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、芳香族ジカルボン酸残基が含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明に用いる重縮合エステルの芳香族ジカルボン酸残基比率は40mol%以上であることが好ましく、40mol%〜95mol%であることがより好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
本発明に用いることができる重縮合エステル系可塑剤の形成に用いることができる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。その中でもフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
前記重縮合エステルには、混合に用いた芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
すなわち、前記芳香族ジカルボン酸残基は、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸残基、テレフタル酸残基の少なくとも1種を含み、さらに好ましくはテレフタル酸残基を含む。
前記重縮合エステルの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースエステルフィルムとすることができる。また、前記芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステルを軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
前記重縮合エステルのジカルボン酸残基中における、テレフタル酸残基の含有量は40mol%〜100mol%であることが好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られる。
ジオールと、脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、脂肪族ジカルボン酸残基が含まれる。
本発明で好ましく用いることができる重縮合エステル系可塑剤を形成することができる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステルには、混合に用いた脂肪族ジカルボン酸に由来する脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数が5.5〜10.0であることが好ましく、5.5〜8.0であることがより好ましく、5.5〜7.0であることがさらに好ましい。脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が10.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が5.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
前記脂肪族ジカルボン酸残基は、具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸を1種用いても、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。重縮合エステルの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸を1種用いる場合は、コハク酸を用いることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数を所望の値に調整することができ、セルロースエステルとの相溶性の点で好ましい。
本発明において、重縮合エステルの形成における混合には、ジカルボン酸を2種又は3種を用いることが好ましい。2種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを1種ずつ用いることが好ましく、3種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸を1種と芳香族ジカルボン酸を2種又は脂肪族ジカルボン酸を2種と芳香族ジカルボン酸を1種用いることができる。ジカルボン酸残基の平均炭素数の値を調整しやすく、かつ芳香族ジカルボン酸残基の含有量を好ましい範囲とすることができ、偏光子の耐久性を向上し得るためである。
ジオールとジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、ジオール残基が含まれる。
本明細書中では、ジオールHO−R−OHより形成されるジオール残基は−O−R−O−である。
重縮合エステルを形成するジオールとしては、芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、本発明に用いられる前記可塑剤に用いられる重縮合エステルは少なくとも脂肪族ジオールから形成されることが好ましい。
前記重縮合エステルは、平均炭素数が2.5〜7.0の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましく、より好ましくは平均炭素数が2.5〜4.0の脂肪族ジオール残基を含む。前記脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0より小さいとセルロースエステルとの相溶性が改善され、ブリードアウトが生じにくくなり、また、化合物の加熱減量が増大しにくくなり、セルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生し難くなる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.5以上であれば合成が容易である。
本発明に用いることができる重縮合エステル系可塑剤を形成することができる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を好ましい例として挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が好ましい。これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
より好ましい前記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。前記脂肪族ジオールを2種用いて前記重縮合エステルを形成する場合は、エチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。1,2−プロパンジオール、又は1,3−プロパンジオールを用いることにより重縮合エステルの結晶化を防止することができる。
前記重縮合エステルには、混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
すなわち、前記重縮合エステルは、ジオール残基としてエチレングリコール残基、1,2−プロパンジオール残基、及び1,3−プロパンジオール残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコール残基又は1,2−プロパンジオール残基であることがより好ましい。
前記重縮合エステルに含まれる脂肪族ジオール残基には、エチレングリコール残基が10mol%〜100mol%含まれることが好ましく、20mol%〜100mol%含まれることがより好ましい。
前記重縮合エステルの末端は、封止せずにジオールあるいはカルボン酸のままとしてもよく、さらにモノカルボン酸類又はモノアルコール類を反応させていわゆる末端の封止を実施してもよい。
封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸等が好ましい。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が7以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
前記重縮合エステルの末端は、封止せずにジオール残基のままであることか、酢酸またはプロピオン酸又は安息香酸によって封止されていることがさらに好ましい。
前記重縮合エステルの両末端は、それぞれ、封止の実施の有無が同一であることを問わない。
縮合体の両末端が未封止の場合、重縮合エステルはポリエステルポリオールであることが好ましい。
前記重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5〜8.0であり、重縮合エステルの両末端は未封止である重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合エステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。本明細書中では、モノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。重縮合エステルの両末端がモノカルボン酸で封止されている場合、前記モノカルボン酸は脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、モノカルボン酸残基が炭素数22以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがさらに好ましい。また、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
前記重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5より大きく7.0以下であり、重縮合エステルの両末端がモノカルボン酸残基で封止されている重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端を封止しているモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、重縮合エステルの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することが可能である。
すなわち、封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましく、モノカルボン酸が炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
前記重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止が好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基(アセチル残基と称する場合がある)となることが最も好ましい。
前記重縮合エステルの両末端を封止した場合は、常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
下記表5に前記重縮合エステルの具体例J−1〜J−38を記すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005546489
上記表5中の略称は、それぞれ以下の化合物を表す。PA:フタル酸、TPA:テレフタル酸、AA:アジピン酸、SA:コハク酸、2,6−NPA:2,6−ナフタレンジカルボン酸。
前記重縮合エステルの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、前記重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
(炭水化物誘導体系可塑剤)
前記可塑剤としては、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体(以下、炭水化物誘導体系可塑剤という)が好ましい。中でも糖エステル系可塑剤が好ましい。
前記炭水化物誘導体系可塑剤を好ましく構成する単糖または多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)が置換されていることを特徴とする。置換されて形成される構造の例としては、アルキル基、アリール基、アシル基などを挙げることができる。また、によって置換されて形成されるエーテル構造、水酸基をアシル基によって置換されて形成されるエステル構造、アミノ基によって置換されて形成されるアミド構造やイミド構造などを挙げることができる。
前記単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
また、前記炭水化物誘導体系可塑剤の置換基の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基、ナフタル基など)を挙げることができる。また、アミノ基によって置換されて形成される好ましい構造として、アミド構造(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド、アセトアミドなど)、イミド構造(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のイミド、例えば、スクシイミド、フタルイミドなど)を挙げることができる。
これらの中で、さらに好ましいものはアルキル基、アリール基またはアシル基であり、特に好ましくはアシル基である。
前記炭水化物誘導体系可塑剤の好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。ただし、本発明で用いることができる炭水化物誘導体系可塑剤は、これらに限定されるものではない。
キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラブチレート、グルコースペンタブチレート、フルクトースペンタブチレート、マンノースペンタブチレート、ガラクトースペンタブチレート、マルトースオクタブチレート、セロビオースオクタブチレート、スクロースオクタブチレート、キシリトールペンタブチレート、ソルビトールヘキサブチレート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどが好ましい。キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどがさらに好ましい。マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどが特に好ましい。
前記炭水化物誘導体系可塑剤はピラノース構造あるいはフラノース構造を有することが好ましく、中でもピラノース構造を有することが特に好ましい。
本発明に用いられる炭水化物誘導体としては以下に示す化合物が特に好ましい。ただし、本発明で用いることができる炭水化物誘導体は、これらに限定されるものではない。なお、以下の構造式中、Rはそれぞれ独立に任意の置換基を表し、複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
(入手方法)
前記炭水化物誘導体の入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
前記炭水化物誘導体系可塑剤の入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
これらの可塑剤の添加量は、セルロースアシレートに対して1〜20質量%であることが好ましい。1質量%以上であれば、偏光子耐久性改良効果が得られやすく、また20質量%以下であれば、ブリードアウトも発生しにくい。さらに好ましい添加量は2〜15質量%であり、特に好ましくは5〜15質量%である。
また、互いに同一又は異なる可塑剤類から選択される2種以上を添加してもよい。その場合は、2種以上の可塑剤の合計量が前記範囲であるのが好ましい。
本発明に係わるセルロースアシレートフィルムは、上記可塑剤とともに、それ以外の可塑剤を1種以上含有していてもよい。他の可塑剤の例には、従来セルロースアシレートの可塑剤として知られる種々の可塑剤が含まれる。他の可塑剤の例には、リン酸エステル及びカルボン酸エステルが含まれる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
本発明に係わるセルロースアシレートフィルムは、可塑剤として、多価アルコール系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤から選ばれるいずれかを含有しているのが好ましい。また、2種類以上含有する場合、少なくとも1種は、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤から選ばれるのが好ましい。
また、本発明に係わるセルロースアシレートフィルムは、可塑剤として、多価アルコール系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤から選ばれる少なくとも1種と、リン酸系エステル系可塑剤及びカルボン酸エステル系可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含有しているのも好ましい。これらの可塑剤はセルロースアシレートとの組合せが広く知られており、諸物性の制御や製造適性の観点で好ましく使うことができる。
3.その他の添加剤:
本発明に係わるセルロースアシレートフィルムは、上記所定の水素結合性化合物、及び所定の可塑剤とともに、他の添加剤を含んでいてもよい。
(ポリマー又はオリゴマー)
本発明に係わるセルロースアシレートフィルムは、主成分であるセルロースアシレートともに、他のポリマー又はオリゴマーを含有していてもよい。セルロースアシレートと比較して疎水性のポリマー又はオリゴマーを添加することで、フィルムを疎水化することができ、フィルムの湿度安定性を改善できる場合がある。また、ポリマー又はオリゴマーの中には、フィルムの光弾性係数を低下させる作用があるものもある。かかる特性のポリマー又はオリゴマーの例としては、シアノ基を含む繰り返し単位、及びメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の少なくとも一方を有するポリマーもしくはオリゴマーが挙げられる。なお、前記ポリマー又はオリゴマーは粒子や粉末の形態で添加されてもよい。
・シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマー
本発明に使用可能なシアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーは、分子内にシアノ基を部分構造として有するエチレン性不飽和モノマーを重合または共重合させて得ることができる。
前記シアノ基を含む繰り返し単位は、分子内にシアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーを重合して得られる繰り返し単位であっても、分子内にシアノ基を有していないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られる繰り返し単位に置換基としてシアノ基を導入して得られるものであってもよい。中でも、分子内にシアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーを重合して得られる繰り返し単位であることが好ましい。
前記分子内にシアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーは、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、シアン化ビニル基、2−シアノアクリルオキシ基、1,2−エポキシ基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基等のエチレン性重合性基を有する。好ましくは、シアン化ビニル基である。また、前記分子内にシアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーは、分子内にシアノ基を1つ有していても、複数有していてもよい。また、シアノ基は、前記エチレン性不飽和モノマーが重合体になったときに主鎖に直接連結している置換基であってもよく、連結基を介して主鎖に連結している置換基であってもよい。中でも、前記分子内にシアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーは、分子内にシアノ基を1つ有し、かつ、重合体になったときに主鎖に直接連結しているシアノ基を有する繰り返し単位を誘導するモノマーであるのが好ましい。コンパクトで分極率の大きい、シアノ基を含む側鎖を有するポリマー又はオリゴマーは、光弾性係数を低減することができる。
また、前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーは、1種または2種以上のシアノ基を含む繰り返し単位のみからなるポリマーまたはオリゴマーであっても、1種または2種以上のシアノ基を含む繰り返し単位とシアノ基を含まない繰り返し単位とを含むポリマーまたはオリゴマーであってもよい。1種または2種以上のシアノ基を含む繰り返し単位のみからなるポリマーまたはオリゴマーは、光弾性係数の低減の観点から好ましい。一方、1種または2種以上のシアノ基を含む繰り返し単位とシアノ基を含まない繰り返し単位とを含むポリマーまたはオリゴマーは、セルロースアシレートとの相溶性確保の観点から好ましい。
前記シアノ基を含む繰り返し単位を誘導するモノマーの一例は、下記一般式(1)で表されるモノマーである。
Figure 0005546489
式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、−NH−COOH、炭素数1〜6のアシルアミノ基またはカルバモイル基を表す。
1は水素原子、メチル基、エチル基、塩素原子またはシアノ基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
2は水素原子、メチル基またはシアノ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
式(1)の例としては、メタクリロニトリルが特に好ましい。
さらに、前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーは、前記一般式(1)で表される構造以外のその他の骨格を有するエチレン性不飽和モノマー由来の繰り返し単位を、前記シアノ基を含む繰り返し単位として有していないことがより好ましい。
なお、前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーにおける前記シアノ基を含む繰り返し単位が、前記一般式(1)で表される構造以外のその他の骨格を有するエチレン性不飽和モノマー由来の繰り返し単位を含む場合、該その他の骨格を有するエチレン性不飽和モノマーとしては後述する一般式(2)におけるR3やR4、後述する一般式(4)におけるR7、R8、及びR9がシアノ基を含む置換基であるエチレン性不飽和モノマーなどを用いることができる。
前記分子内にシアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーは市販品として入手または公知の文献を参照して合成することができる。
前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーは、シアノ基を有さないその他のエチレン性不飽和モノマー(以下、その他のエチレン性不飽和モノマーとも言う)を重合して得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。前記分子内にシアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーとの共重合に用いられる、前記その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、以下のモノマーが挙げられる。以下のモノマーを1種又は2種以上用いることができる。
(1)アクリレートモノマー
前記その他のエチレン性不飽和モノマーとしてはアクリレートモノマーが好ましい。アクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル類、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、クロルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アセト酢酸エチルエメタクリレート等が挙げられる。又、特に好ましいものとしては、メチル(メタ)アクリレートモノマー、アセト酢酸エチルエメタクリレートを挙げることができる。
(2)下記一般式(2)で表されるモノマー
また、下記一般式(2)で表されるモノマーも前記その他のエチレン性不飽和モノマーとして好ましい。
一般式(2)
Figure 0005546489
一般式(2)の式中、R3は、水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、または置換基を有していてもよい複素環基を表し、mは0〜8の整数を表し、mが2〜8のときR3は同じでも、異なっていてもよい。R4は、エチレン性不飽和結合を部分構造として有する基を表し、X1は、酸素原子または硫黄原子を表す。
3で表される基としては、特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
4はエチレン性不飽和結合を有するが、具体例としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、1,2−エポキシ基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基などが挙げられるが、好ましくは、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基である。
以下に本発明で用いられる前記分子内に前記一般式(2)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーの好ましい具体例を例示するが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
前記一般式(2)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーとして特に好ましくはN−メタクリロイルモルホリンまたはN−アクリロイルモルホリンであり、より特に好ましくはN−アクリロイルモルホリンである。
(3)βケトエステルモノマー
また、下記一般式(3)で表されるモノマーも前記その他のエチレン性不飽和モノマーとして好ましい。
一般式(3)
Figure 0005546489
一般式(3)中、R5は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基および複素環基は置換基を有していてもよい。Lは、単結合、あるいは、2価の脂肪族基、2価の芳香族基、2価の複素環基、−C(=O)−、−O−、−N(R6)−またはそれらの組合せを表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および2価の複素環基は置換基を有していてもよい。R6は水素原子またはアルキル基を表す。
前記一般式(3)におけるR5は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基および複素環基は置換基を有していてもよい。
前記R5における脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基などを挙げることができ、その中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
前記R5における芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を挙げることができ、その中でもフェニル基が好ましい。
前記における複素環基としては、ピリジル基、ピロリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、ピロリル基、モルホリノ基、チアモルホリノ基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリドニル基、ピペリドニル基を挙げることができ、その中でもモルホリノ基、ピリジル基が好ましい。
前記脂肪族基、芳香族基または複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基)、炭素原子数2〜6のアルケニル基(例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、炭素原子数2〜6のアルキニル基(例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アミノ基(例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基)、アシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェニルオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基。)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えばメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば(フェニルオキシカルボニルアミノ基)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基)、スルファモイル基(例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基)、カルバモイル基(例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基)、スルホニル基(例えばメシル基、トシル基)、スルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基)、ウレイド基(例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基)、リン酸アミド基(例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基)などを挙げることができる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。その中でもメチル基、フルオロ基が好ましい。
前記一般式(3)におけるR5は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましく、メチル基であることがより特に好ましい。
前記一般式(3)におけるLは単結合、2価の脂肪族基、2価の芳香族基、2価の複素環基、−C(=O)−、−O−、−N(R6)−またはそれらの組合せを表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および2価の複素環基は置換基を有していてもよい。
前記Lは、2価の脂肪族基、2価の芳香族基、−C(=O)−、または−L1−L2−であることが好ましい(但し、L1およびL2の一方が、−C(=O)−、−O−、−N(R2)−またはそれらの組合せを表し、他方が2価の脂肪族基、2価の芳香族基、2価の複素環基を表す。前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および2価の複素環基は置換基を有していてもよい。R2は水素原子またはアルキル基を表す。)。ここで、前記−L1−L2−はL1が主鎖に連結する。
前記Lは−L1−L2−であることがより好ましい。
前記Lは、L1が−C(=O)−、−O−、−N(R2)−またはそれらの組合せであり、かつ、L2が2価の脂肪族基、2価の芳香族基、2価の複素環基であることが特に好ましい。
前記Lにおける2価の脂肪族基としては、アルキレン基、アルキニル基であることが好ましく、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることがより特に好ましい。
前記Lにおける2価の芳香族基としては、炭素数6〜12の芳香族基が好ましく、フェニレン基、ナフチレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基であることがより好ましく、無置換のフェニレン基であることが特に好ましい。
前記Lにおける2価の複素環基としては、ピリジレン基、ピロリジレン基、ピペリジレン基、ピペラジレン基、ピロリレン基、モルホリニレン基、チアモルホリレニン基、イミダゾリレン基、ピラゾリレン基、ピロリドニレン基、ピペリドニレン基を挙げることができ、その中でもモルホリニレン基が好ましい。
前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および2価の複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン基を挙げることができ、その中でもアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
前記L1は、−C(=O)−、−O−、−N(R2)−またはそれらの組合せであることが好ましく、前記−C(=O)−、−O−、−N(R2)−またはこれらの組合せとしては、−C(=O)−、−O−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−N(R2)−C(=O)−、−C(=O)−N(R2)−、−N(R2)−C(=O)−N(R2)−が好ましい。さらに前記L1は、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R2)−であることがより好ましく、−C(=O)−O−であることが特に好ましい。
前記L2は2価の脂肪族基、2価の芳香族基、2価の複素環基であることが好ましく、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基、フェニレン基、
であることがより好ましく、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基またはフェニレン基であることが特に好ましく、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基であることがより特に好ましく、エチレン基であることがさらにより特に好ましい。
なお、前記L1およびL2における前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および2価の複素環基の好ましい範囲は、前記Lにおける前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および2価の複素環基の好ましい範囲と同じである。
前記一般式(3)におけるR5およびLの好ましい組み合わせは、前記一般式(3)におけるR5が水素原子またはメチル基であり、Lが2価の脂肪族基、2価の芳香族基、−C(=O)−、または−L1−L2−である態様である。
より好ましくは、前記一般式(3)におけるR5が水素原子またはメチル基であり、LがL1−L2−である態様である。
特に好ましくは、R5が水素原子またはメチル基であり、L1が−C(=O)−O−であり、L2が炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基である態様である。
より特に好ましくは、R5が水素原子またはメチル基であり、L1が−C(=O)−O−であり、L2がエチレン基である態様である。すなわち、前記一般式(3)で表されるエチレン性不飽和モノマーがアセト酢酸エチルメタクリレートまたはアセト酢酸エチルアクリレートである態様がより好ましい。
さらに、前記一般式(3)におけるR5がメチル基である態様がさらにより特に好ましく、すなわち、前記一般式(3)で表されるエチレン性不飽和モノマーがアセト酢酸エチルメタクリレートであることがさらにより特に好ましい。
前記R6は水素原子またはアルキル基を表す。
前記R6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
(4)下記一般式(4)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマー
また、下記一般式(4)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーも前記その他のエチレン性不飽和モノマーとして好ましい。
一般式(4)
Figure 0005546489
一般式(4)の式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、及び置換基を有していてもよい複素環基を表す。またR7、R8、及びR9の何れか二つが互いに結合してそれらが結合している窒素原子、あるいは窒素原子及び炭素原子と一緒になって、環状構造を形成していてもよい。R7、R8、及びR9で表される置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、及び置換基を有していてもよい複素環基としては、特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
本発明においては、R7、R8、及びR9の何れか二つが互いに結合してそれらが結合している窒素原子、或いは窒素原子及び炭素原子と一緒になって、5〜7員の環状構造を形成することが好ましいが、その場合の環としては、環中に更に窒素原子、硫黄原子または酸素原子を有していても良く、飽和または不飽和の単環、多環または縮合環式のものが挙げられる。具体例としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロール環、モルホリン環、チアモルホリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピロリドン環、ピペリドン等の複素環が挙げられ、これらの環は更に、前記R7、R8、及びR9で表される基が有しても良い置換基によってさらに置換されていてもよい。
本発明において、分子内に前記一般式(1)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーは分子内にエチレン性不飽和結合を有するが、前記R7、R8、及びR9で表される基の少なくとも一つがエチレン性不飽和結合を有する基としてアルケニル基を表すか、或いは前記R7、R8、及びR9で表される基の少なくとも一つが部分構造としてエチレン性不飽和結合を有することを意味する。エチレン性不飽和結合の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、1,2−エポキシ基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基などが挙げられるが、好ましくは、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基である。
以下に前記分子内に前記一般式(4)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーの好ましい具体例を例示するが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
前記分子内に前記一般式(4)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーは1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、特に好ましくはN−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルホリン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタムまたはこれらの混合物である。
本発明に用いられる前記分子内に前記一般式(4)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーは市販品として入手または公知の文献を参照して合成することができる。
前記分子内にシアノ基を部分構造として有するエチレン性不飽和モノマーと前記その他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合比率については特に制限はない。前記共重合比(モル比)は前記分子内にシアノ基を部分構造として有するエチレン性不飽和モノマー/前記その他のエチレン性不飽和モノマー=5/95〜100/0であることが好ましく、50/50〜100/0であることがより好ましく、100/0であること(すなわち前記分子内にシアノ基を部分構造として有するエチレン性不飽和モノマーの単独重合体であること)が、フィルムの光弾性率および含水率を低減させる観点から好ましい。
前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーの重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましい。さらに好ましくは1000〜50000であり、最も好ましくは、1000〜10000である。
前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーの前記セルロースアシレートに対する含有率は1.5〜49質量%である。さらに好ましくは5質量〜20質量%であり、特に好ましくは10〜15質量%である。
・メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマー
メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有する、好ましくはメチルメタクリレート由来の繰り返し単位のみを有する、ポリマー又はオリゴマーも、前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーと同様の作用がある。当該ポリマー又はオリゴマーについては、特開2009−249394号等に記載があり、本発明に適用することができる。また、添加量の好ましい範囲についても、前記シアノ基を含む繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーと同様である。
(疎水化剤)
セルロースアシレートのアシル置換度を低くすると、フィルムの含水率が大きくなり、環境湿度によるフィルム物性変化、レターデーション変化が大きくなる問題が生じる。この問題を改良する方法として、基層にオクタノール/水分配係数が7.0以上で分子量2000以下の疎水化剤を含有することが好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムにはオクタノール/水分配係数(以下logPと称する)が7.0以上20.0以下の疎水化剤を含有することがより好ましい。さらに好ましくは8.0以上16.0以下である。logPは化合物の親疎水性を示す指標であり、logPが大きい方が化合物の疎水性が高くなる。logPが低すぎると疎水性が不足し、環境湿度によるフィルム物性変化、レターデーション変化に対して十分な低減効果が得られにくい。一方、logPが大きすぎるとセルロースアシレートとの相溶性が不足し、フィルムの内部で相分離をおこしてフィルムの透明度が低下する問題を生じやすい。
疎水化剤の分子量は2000以下であることが好ましく、より好ましくは1500以下である。疎水化剤の分子量を2000以下とすることでセルロースアシレートに対する相溶性が高くなり好ましい。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260-107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール-水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。
疎水化剤は、logPが前記範囲を満たす各種添加化合物(例えば、上記所定の可塑剤や上記ポリマー又はオリゴマー等)に、疎水化剤としての機能も持たせることも可能である。
(その他の添加剤)
前記セルロースアシレートフィルム中には、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);紫外線吸収剤;酸化防止剤;マット剤などの添加剤を加えることもできる。
前記水素結合性化合物、前記所定の可塑剤、及び前記その他の添加剤は、製膜される時点で、セルロースアシレートに添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、溶液製膜においては、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
4.セルロースアシレート
前記セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートの少なくとも1種を主成分として含有する。本発明において、「セルロースアシレート」とは、例えば、セルロースを基本構造とする化合物であって、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を含むものをいう。本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いてもよい。
セルロースアシレートは、セルロース骨格中の水酸基の水素原子が、アシル基で置換されたセルロース誘導体であり、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられる。
セルロースアシレートの原料として用いられるセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤・宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7〜8頁)に記載されており、本発明に対しては特に限定されるものではない。
本発明おけるセルロースアシレートのアシル基は、特に制限はない。例えば、アセチル基、プロピオニル基またはブチリル基またはベンゾイル基などが好ましいが、これらに限定されるものではない。全アシル基の置換度は2.0〜3.0が好ましく、2.2〜2.95がさらに好ましい。アシル基は、アセチル基であることが最も好ましく、アシル基がアセチル基であるセルロースアセテートを用いる場合には、アシル化度(アシル基の全置換度)が2.00〜2.98であることが好ましく、2.10〜2.97がさらに好ましい。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部を、アシル基によってエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合を意味し、全ての水素原子が置換されていると置換度は3になる。
本発明では、以下の条件を満足する第1及び第2の例のセルロースアシレートを主成分として用いるのが好ましい。
第1の例:
セルロース骨格のヒドロキシ基の水素原子が実質的にアセチル基のみによって置換されたセルロースアシレートであり、その全置換度が2.00〜3.00(より好ましくは全置換度が2.10〜2.97)であるセルロースアシレート。
第1の例は、さらに、全置換度が2.50〜3.00(より好ましくは2.70〜3.00)のセルロースアシレートと、全置換度が2.00〜2.50未満(より好ましくは2.20〜2.50)のセルロースアシレートの例に分類される。
第2の例:
セルロース骨格のヒドロキシ基の水素原子が、実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基からなる群から選ばれる少なくとも2種類で置換されたセルロースアシレートであり、その全置換度が2.00〜3.00(より好ましくは全置換度が2.20〜2.95)であるセルロースアシレート。
なお、ここでいう「実質的」にとは、該置換基以外の種類の置換度が0.01以下であることを意味する。
なお、置換度の低いセルロースアシレートを用いる場合は、製膜性に劣る場合があるので、後述する溶液製膜法では、高置換度のセルロースアシレートのドープとともに、該高置換度のセルロースアシレートのドープで上下挟んで、低置換度のセルロースアシレートのドープを流延する、即ち共流延するのが好ましい。
本発明に用いるセルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがより
前記セルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法としては、以下の通りである。綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースを、アセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化し、目的のセルロースアシレートを合成することができる。また、前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
5.セルロースアシレートフィルムの製造方法
本発明に係わる前記セルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法及び溶融製膜種々の方法で製造することができる。溶液製膜法(ソルベントキャスト法)で製造するのが好ましい。溶液製膜法については種々の文献に記載があり、いずれも採用することができる。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルロースアシレート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
前記セルロースアシレートフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
前記セルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
また、前記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS 316)であることがより好ましい。
前記セルロースアシレートフィルムの製造方法は、前記ドープ膜を前記金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。前記セルロースアシレートフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法を用いた場合に剥離性を改善することができる。
さらに、製膜後に、光学特性の調整等のために、延伸処理を行ってもよい。延伸方向はフィルム搬送方向(MD方向)と搬送方向に直交する方向(TD方向)のいずれでも好ましいが、フィルム搬送方向に直交する方向(TD方向)であることが、後に続く該フィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
横方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。横方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
前記セルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸と前記セルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状の前記セルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
横方向の延伸は5〜100%の延伸が好ましく、より好ましくは5〜80%、特に好ましくは5〜40%延伸を行う。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
製膜後にTD方向に延伸すると、分子はTD方向に配向する。TD方向に分子が配向したセルロースアシレートフィルムでは、低湿度(30%)におけるTD方向の収縮(寸法変化)は、偏光板形態とセルロースアシレートフィルム単独では顕著に相違し、一方でMD方向の寸法変化の差はほとんどない傾向がある。また、同セルロースアシレートフィルムは、高湿度(80%)におけるMD方向の伸張(寸法変化)は、偏光板形態とセルロースアシレートフィルム単独では顕著に相違し、一方でTD方向の寸法変化の差はほとんどない傾向がある。したがって、従来、TD方向に延伸されたセルロースアシレートフィルムを有する偏光板では、特に、湿度依存性が高くなる傾向があり、本発明は、特にTD方向に延伸されたセルロースアシレートフィルムを有する偏光板の態様に適する。
6.偏光板、液晶表示装置
本発明の偏光板の一例は、偏光膜の一方の表面上に、前記所定のセルロースアシレートフィルムを有し、他方の表面上に保護フィルムを有する。本発明の偏光板は、前記式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムを一枚有していればよく、よって他の保護フィルムは上記式(1)を満足する必要はなく、またセルロースアシレートフィルムでなくてもよい。勿論、他の保護フィルムとして、上記式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムを用いることもできる。
他の保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルムの他、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーが含まれる。 また、前記ポリマーフィルムの主成分ポリマーとして、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等が挙げられる。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
また、本発明の偏光板は、他の部材を含んでいてもよく、前記セルロースアシレートフィルムと偏光膜との間に、それらを貼合するための接着剤層や易接着層等が配置されていてもよい。また、最表層に反射防止層等の機能層が形成されていてもよいし、液晶組成物からなる光学異方性層を有していてもよい。
本発明は、本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込む場合は、前記式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムを、液晶セル側にして配置するのが好ましい。
本発明の偏光板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)等、いずれの表示モードの液晶表示装置にも利用することができる。
なお、本明細書では、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005546489
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
なお、屈折率の測定波長は、特に断らない限り、可視光域のλ=550nmでの値であり、Re及びRthの測定波長については、特に断らない限り、550nmとする。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
1.セルロースアシレートフィルムの作製
下記の組成物をそれぞれミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、各溶液を調製した。
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
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これらの溶液を用いて、下記表に記載の組成のセルロースアシレートフィルムをそれぞれ溶液製膜法で製膜して製造した。いくつかについては下記表に示す条件で延伸処理を行った。また、表中に「共流延」の記載あるフィルムについては、外層用のセルロースアシレート溶液を別途調製し、外層用セルロースアシレート溶液で上下を挟んで、セルロース溶液を共流延して製膜したフィルムである。
作製したフィルムについて、
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
Figure 0005546489
2.偏光板の作製
作製した各セルロースアシレートフィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、各セルロースアシレートフィルムについて表面の鹸化処理を行った。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
鹸化処理した上記各セルロースアシレートフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)に同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、各セルロースアシレートフィルムを貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に鹸化処理後のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と作製した各セルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして各偏光板を作製した。
3.セルロースアシレートフィルム及び偏光板の評価
作製した各セルロースアシレートフィルム及び各偏光板について、MD及びTD方向における
温度25℃・相対湿度60%の光弾性係数C[Pa-1]、
25℃・相対湿度30%及び25℃・相対湿度80%の緩和弾性率E’[Pa]、及び
25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度30%の環境下の偏光板の寸法変化と、25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度30%の環境下のセルロースアシレートフィルムの寸法変化との差Δε[%]、
25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度80%の環境下の偏光板の寸法変化と、25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度80%の環境下のセルロースアシレートフィルムの寸法変化との差Δε[%]、並びに
厚みd[μm]、
をそれぞれ測定した。
なお、これらの測定については、各測定環境下に2週間放置した後、測定した。また、Δεについては、偏光板/フィルムについて以下の測定を各々行い、その差とした。試料30mm×120mmを25℃60%RH環境下で2週間経時させ、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mm間隔に開けて、間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。さらに25℃30%RH、80%RH環境下で2週間経時させ、パンチ間隔の寸法(L2)を測定。そして、寸法変化率を{(L1−L2)/L1}×100により求めた。
測定した各値を、下記式
α=C×E’×Δε
に代入して、αTD及びαMDをそれぞれ求め、下記式(1)
(1) |(αTD−αMD)×d|≦2nm
を満足しているか否かを確認した。結果を下記表に示す。
各偏光板を、2枚ずつ用意し、下記表に記載の各モードの液晶セルの上下に貼合し、液晶パネルをそれぞれ作製した。各液晶パネルについて、斜め方向の色味変化、及び輝度変化をそれぞれ測定し、評価した。
評価は、環境湿度30%と60%、及び環境湿度80%と60%において、各液晶パネルの黒表示における斜め方向(極角60度)の色味と輝度の最大変化量が、人間の識別不可能であればよいとした。
人間の識別可能な変化として、色味変化はΔu’v’で0.02以下、輝度変化は1%以下であることが知られている(例えば、色彩工学(太田登著 東京電気大出版局)参照)。
結果を下記表に示す。
Figure 0005546489
Figure 0005546489

Claims (5)

  1. 下記(A)〜(C)
    (A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する、
    (B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下、
    (C)芳香環構造の総数が1以上3以下;
    を満たす水素結合性化合物、及び
    多価アルコールエステル系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤及び炭水化物誘導体系可塑剤の中から選ばれる少なくとも一つの可塑剤、
    を含むセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有する偏光板であって、
    前記前記セルロースアシレートフィルムが、少なくとも相対湿度H1が30%及び80%において下記式(1)
    (1)|(αTD−αMD)×d|≦2nm
    (但し、αTD及びαMDはそれぞれ、セルロースアシレートフィルムのTD方向及びMD方向について、α=C×E'×Δεで算出される値を意味し、Cはセルロースアシレートフィルムの光弾性係数[Pa-1](温度25℃・相対湿度60%);E'は25℃・相対湿度H1%環境下でのセルロースアシレートフィルムのその方向における緩和弾性率[Pa];Δεは25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下の偏光板の寸法変化と、25℃・相対湿度60%の環境下及び25℃・相対湿度H1%の環境下のセルロースアシレートフィルムの寸法変化との差[%];並びにdはセルロースアシレートフィルムの膜厚[μm]をそれぞれ示す)
    を満足することを特徴とする偏光板。
  2. 前記セルロースアシレートフィルムが、シアノ基を含む繰り返し単位、及びメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の少なくとも一方を有するポリマーもしくはオリゴマーをさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記セルロースアシレートフィルムが、1種の可塑剤、もしくは、互いに同一又は異なる類から選択される2種以上の可塑剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
  4. 前記セルロースアシレートフィルムが、延伸処理された延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも有する液晶表示装置。
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