JP5545951B2 - 紡績用エプロンバンド - Google Patents

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Description

紡績工業において、ギル、ボビナ、練条、粗紡、精紡等の工程で繊維束を牽伸するドラフト装置のエプロンバンドに関する。
このドラフト装置は、図4に示すように、バックトップローラ41とバックボトムローラ42、トップエプロンバンド43とボトムエプロンバンド44およびフロントトップローラ45とフロントボトムローラ46がそれぞれ対をなして構成されている。
バックトップローラ41は内部にベアリングを含む従動ローラである。バックボトムローラ42は駆動源と連結した駆動ローラである。
ゴム製のトップエプロンバンド43は、ミドルトップローラ47及びテンサーバー49を覆っている。同様に、ゴム製のボトムエプロンバンド44はミドルボトムローラ48及びテンサーバー50を覆っている。
フロントトップローラ45は、バックトップローラ41と同様のゴム製の従動ローラである。そして、フロントボトムローラ46は、駆動源と連結した駆動ローラである。
これらローラ対及びエプロン対は繊維束51の進行方向に回転している。各ローラ及びエプロン間を通過する繊維束51は、これらの把持力によって牽伸され、所期の太さの細い繊維束に引き伸ばされる。
従来、この種のエプロンバンドとしては、特公昭60−32725(特許文献1)で開示するものが知られている。図5にその構成を示す。エプロンバンド100は、補強糸103を2層のゴム層(上層101,下層102)で挟み接合したものである。上下ゴム層の断面やや上辺りすなわち外周面寄りに、補強糸103を周方向に螺旋状に埋設させている。
この種のエプロンバンドは、一般的に、総厚み1mm前後のバンドである。
その他のエプロンバンドとしては、実開昭49−22230号公報(特許文献2)で開示するものが知られている。図6にその構成を示す。内周面に補強糸113を円周方向に間隔をあけて半分埋設した状態で接着してある。
特公昭60−32725号公報 実開昭49−22230号公報
ドラフト装置の性能如何によって、最終的に生成される繊維束の品質が決定される。ドラフト装置における繊維束の品質に影響を及ぼす要因は種々存在する。その中でもエプロンバンド43,44の先端とフロントローラ45,46のニップ点との間の距離が大きく影響する。ここで上記間の距離はフリーゲージFGと称される。エプロンバンドから送り出される繊維束は、フロントローラニップ点において把持されるまでのフリーゲージで、一時的に把持されない浮遊状態が生じる。この結果、ドラフトむらが発生し、繊維束の品質にむらが生じる原因となる。
一般的に、フリーゲージを可能な限り短くすることで繊維束の品質は良くなる。
しかしながら、特許文献1に記載のエプロンバンドによれば、図5で示すように、ゴム層が上下2層からなることより、一定以上の大きな厚みにならざるを得ない。このため、ドラフト時にフロントローラ45,46への接触を避けるため、フリーゲージFGを比較的大きく取らざるを得ない。
また、エプロンバンド100がテンサーバーで折り曲げられる時に、屈曲の中心は補強糸103となる。ゴム層の厚みが上層102より下層101の方が比較的に厚いため、折り曲げ時に下層が邪魔をして、鋭角に曲げることができない。その結果、折り曲げ半径が大きくならざるを得ない。この点もフリーゲージFGを短くできない要因となっていた。
また、特許文献2に記載のエプロンバンドによれば、図6で示すように、補強糸113がエプロンバンドの内周表面に露出している。補強糸113に耐摩耗性の高い糸を用いても、ドラフト時に補強糸の損傷やほつれが起こるという問題がある。
そこで、この発明の目的は、フリーゲージを短くすることにより、均一で高品質な繊維束を製造することができ、かつ補強糸の損傷やほつれも発生しない、紡績用エプロンバンドを提供しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明による紡績用エプロンバンドは、ゴム状弾性体からなる無端バンドであって、単一のゴム状弾性体層と、ゴム状弾性体層の内周の表面近傍に埋設された補強布と、補強布の内側に近接して周方向に螺旋状に埋設された糸状芯体とからなり、ゴム状弾性体層は補強布の内周表面まで含浸し、補強布が編布であり、編布の厚さが0.3mm以下である。
好ましくは、ゴム状弾性体層がアクリロニトリルブタジエンゴム、又はアクリロニトリルブタジエンゴム及びポリ塩化ビニルのブレンドである。
ましくは、補強布がナイロン編布からなる。
また、前記糸状芯体が天然繊維又は合成繊維からなる直径0.1〜0.5mmの糸であるのが好ましい。
好ましくは、糸状芯体が綿糸からなる。
また、糸状芯体がピッチ0.3〜1.0mmで幅方向に並んでいるのが好ましい。
エプロンバンドの厚みが0.3〜0.7mmであるのが好ましい。
この発明による紡績用エプロンバンドは、単一のゴム状弾性体層からなるので、エプロンバンドの厚みを薄くできる。
そして、屈曲の支点となる糸状芯体を内周の表面近くに配置しているので、鋭角に曲げることができ、折り曲げ半径をより小さくすることができる。その結果、フリーゲージを短くすることができ、ドラフトむらの発生が抑制され、均一で高品質な繊維束を製造することができる。
また、内周表面に補強布を埋設しているので、補強布とゴムとの複合層を形成することにより、エプロンバンド内周表面の耐摩耗性が向上し、なおかつ補強糸も保護することができる。その結果、補強糸の損傷やほつれを防止できる。
この発明の一実施の形態に係る紡績用エプロンバンドの断面図である。 この発明による紡績用エプロンバンドを用いたドラフト装置の要部拡大図である。 従来のエプロンバンドを用いたドラフト装置の要部拡大図である。 ドラフト装置の概略を示した図である。 従来のエプロンバンドを示す断面図である。 従来のエプロンバンドを示す断面図である。
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施形態に係る紡績用エプロンバンド10を幅方向に切断した断面図である。
図1を参照して、この発明によるエプロンバンド10は、無端状であり、単一のゴム状弾性体層11からなる。ゴム状弾性体層11の内周の表面近傍に、補強布12が埋設されている。さらに、補強布12の内側に接して糸状芯体13が円周方向に螺旋状に埋設されている。
また、糸状芯体13は補強布12から若干離れていてもよい。
ゴム状弾性体層11は補強布12の内周表面まで含浸している。これにより、内周表面は、補強布12とゴム状弾性体層11との複合層が形成されている。その結果、エプロンバンド10に適度な強度、及び適度な摩擦係数を付与できる。
なお、補強布12とゴム状弾性体層11とが強固に接合しているのであれば、補強布12が表面に露出している状態であっても構わない。
この実施形態に係るエプロンバンド10は、以上のように、糸状芯体13を内表面近くに配置できる。このことにより、エプロンバンドを鋭角に曲げることができ、その結果、フリーゲージを小さくすることができる。
また、糸状芯体13は補強布12によって保護されているため、糸状芯体13の損傷やほつれを防止できる。
次に、このエプロンバンド10の構成材料について説明する。
エプロンバンドを構成するゴム状弾性体の組成物は、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリウレタン、ブチルゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)などを用いることができる。その中でも、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、又はアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)とポリ塩化ビニル(PVC)とのブレンドの何れかが好ましい。
また、補強布12は、編布であるのが好ましい。特に、ナイロンからなるシームレス編布を用いるのが好ましい。かかる編布は容易に伸び、エプロンバンドに適度な伸張性を付与できる。補強布の厚みは、0.3mm以下であるのが好ましい。
また、糸状芯体13は、木綿、麻、絹等の天然繊維、又はナイロン、テトロン等の合成繊維の糸を使用することができる。その中でも、綿糸を用いるのが好ましい。かかる糸は周方向の伸びを防止できる。
ここで、糸状芯体13の直径は0.1〜0.5mmであるのが好ましい。
糸状芯体13はピッチ0.3〜1.0mmで幅方向に並んでいるのが好ましい。より好ましくは、糸状芯体13のピッチ0.3〜0.6mmである。糸を密に巻くことにより、エプロンの内径が安定する。一方、糸状芯体13を密に巻きすぎた場合は補強布までゴム状弾性体を含浸させにくくなる。
また、エプロンバンド10の厚みは0.3〜0.7mmであるのが好ましい。より好ましくは、エプロン厚み0.3〜0.5mmである。エプロンバンドの厚みが薄すぎると、糸状芯体の太さによっては、糸状芯体が表面に露出したり、表面に凹凸ができてしまう恐れがあるため、好ましくない。エプロンバンドの厚みが厚すぎると、折り曲げ半径を小さくしづらくなる。
次に、この発明によるエプロンバンドの製造方法について説明する。
まず、ステンレス鋼製の円柱状の芯金を用意した。この芯金の外周面に、ナイロンのシームレス編布(補強布)を被せた。その上に、直径0.2mmの綿糸(糸状芯体)を0.37mmのピッチで螺旋状に巻き付けた。
次いで、この糸状芯体の上から、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)をMEKよりなる溶剤に溶解したゴム糊を共糊として塗布した。
次いで、これを乾燥した後、これに予め成形されたNBRを押出成型したゴムチューブを被せた。
そして、その上からラッピング用フィルムを巻いて締め付けた状態で加硫缶に入れて加硫し、エプロンバンド用チューブ素材を得た。この素材は補強布の内周表面までNBRが含浸していた。
加硫後のこの素材を研磨機によって表面研磨した後、芯金を抜き取った。
次いで、この素材を幅31.8mmにカットして、厚さ0.4mmのエプロンバンド用ベルト素材を得た。このベルト素材の表面に化学処理を行い、洗浄後乾燥してゴム硬度55°のエプロンバンドを得た。
次に、実機稼動時におけるこの発明によるエプロンバンドと、図5で示す従来品とのテンサーバー部での屈曲について説明する。
図2はこの発明によるエプロンバンドを用いたドラフト装置の要部拡大図であり、図3は従来のエプロンバンドを用いたドラフト装置の要部拡大図である。
この発明のエプロンバンド10は、図2で示すように糸状芯体13を屈曲の支点とし、テンサーバー49で折り曲げられる。図3で示すように従来のエプロンバンド100も、糸状芯体103を屈曲の支点とし、テンサーバー49で折り曲げられる。
この発明のエプロンバンド10の場合は、厚みが薄く、かつ糸状芯体13を内周面側に配置しているため、エプロンバンド10を鋭角に曲げることができ、折り曲げ半径をより小さくすることができる。そして、フロントローラ45に近づけることができる。その結果、フリーゲージFG1を短くすることができ、ドラフトむらの発生が抑制され、均一で高品質な繊維束を製造することができる。
従来のエプロンバンド100の場合は、二層のゴム層(上層101,下層102)からなるために厚みが大きく、かつ、折り曲げ時にゴム下層102が邪魔をして、鋭角に曲げることができない。その結果、折り曲げ半径が大きくなり、フロントローラ45への接触を避けるため、フリーゲージFG2を大きく取らざるを得ない。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明による紡績用エプロンバンドによれば、フリーゲージを短くすることができるためドラフトむらの発生が抑制され、均一で高品質な繊維束を製造することができる。
10 エプロンバンド、11 ゴム状弾性体層、12 補強布、13 糸状芯体。

Claims (7)

  1. ゴム状弾性体からなる無端バンド(10)であって、単一のゴム状弾性体層(11)と、前記ゴム状弾性体層の内周の表面近傍に埋設された補強布(12)と、前記補強布の内側に近接して周方向に螺旋状に埋設された糸状芯体(13)とからなり、前記ゴム状弾性体層(11)は前記補強布(12)の内周表面まで含浸し、前記補強布が編布であり、前記編布の厚さが0.3mm以下であることを特徴とする、紡績用エプロンバンド。
  2. 前記ゴム状弾性体層がアクリロニトリルブタジエンゴム、又はアクリロニトリルブタジエンゴム及びポリ塩化ビニルのブレンドであることを特徴とする、請求項1記載の紡績用エプロンバンド。
  3. 前記補強布がナイロン編布からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の紡績用エプロンバンド。
  4. 前記糸状芯体が天然繊維又は合成繊維からなる直径0.1〜0.5mmの糸であることを特徴とする、請求項1〜請求項のうちの何れかの一項記載の紡績用エプロン
    バンド。
  5. 前記糸状芯体が綿糸からなることを特徴とする、請求項1〜請求項のうちの何れかの一項記載の紡績用エプロンバンド。
  6. 前記糸状芯体がピッチ0.3〜1.0mmで幅方向に並んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項のうちの何れかの一項記載の紡績用エプロンバンド。
  7. エプロンバンドの厚みが0.3〜0.7mmであることを特徴とする、請求項1〜請求項のうちの何れかの一項記載の紡績用エプロンバンド。
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