以下に添付図面を参照して、本発明にかかる画像形成装置および記録媒体の搬送制御方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる画像形成装置を示す概略構成図である。本実施形態にかかる画像形成装置は、4色フルカラーの画像を形成するものであり、特に多数枚の記録媒体を連続的に搬送して高速で印刷を行うプロダクション用途に適した画像形成装置である。この画像形成装置は、図1に示すように、転写ベルト10の走行方向(図中矢印B方向)に沿って配置された4つの画像形成ユニット1a,1b,1c,1dを備える。
画像形成ユニット1aは、像担持体としての感光ドラム2aと、ドラム帯電器3aと、露光装置4aと、現像器5aと、転写器6aと、クリーニング装置7aとを備えて構成されている。画像形成ユニット1b〜1dも、画像形成ユニット1aと同様に、感光ドラム2b〜2d、ドラム帯電器3b〜3d、露光装置4b〜4d、現像器5b〜5d、転写器6b〜6d、クリーニング装置7b〜7dを備えて構成されている。画像形成ユニット1a〜1dは、例えば、画像形成ユニット1aがイエロー、画像形成ユニット1bがマゼンダ、画像形成ユニット1cがシアン、画像形成ユニット1dがブラック、とそれぞれ異なる色の画像を形成する。
感光ドラム2aは、画像形成時に図中矢印A方向に回転を始め、画像形成動作が終了するまで回転を続ける。感光ドラム2aが回転を開始すると、ドラム帯電器3aに高電圧が印加され、感光ドラム2aの表面に負の電荷が均一に帯電される。その後、帯電された感光ドラム2aの表面に、露光装置4aから画像データに応じてレーザ光が照射され、感光ドラム2aに画像データに応じた静電潜像が形成される。そして、感光ドラム2aの回転により静電潜像が形成された部分が現像器5aと対向する位置に到達すると、現像器5aから負電荷に帯電したトナーが静電潜像へと引き付けられ、静電潜像がトナーにより現像されて感光ドラム2a上にトナー像が形成される。
感光ドラム2a上に形成されたトナー像は、転写ベルト10を挟んで転写器6aと対向する位置に到達すると、転写器6aに印加された高電圧の作用によって転写ベルト10側に引きつけられ、図中矢印B方向に移動している転写ベルト10上に転写(一次転写)される。なお、転写ベルト10に転写されずに感光ドラム2a上に残留したトナーは、クリーニング装置7aにより清掃される。
画像形成ユニット1aに続いて画像形成ユニット1bでも同様に画像形成動作が行われ、感光ドラム2b上に形成されたトナー像が、転写器6bに印加された高電圧の作用により転写ベルト10上に転写(一次転写)される。このとき、感光ドラム2b上に形成されたトナー像が転写器6bと対向する位置に到達するタイミングが、感光ドラム2aから転写ベルト10上に転写されたトナー像が転写ベルト10の移動により転写器6bの位置に到達するタイミングに合うように制御されることで、感光ドラム2aから転写されたトナー像と感光ドラム2bから転写されたトナー像とが転写ベルト10上で重ね合わされる。
同様に、画像形成ユニット1cの感光ドラム2c上に形成されたトナー像と、画像形成ユニット1dの感光ドラム2d上に形成されたトナー像が順次転写ベルト10上に転写されることにより、転写ベルト10上にはフルカラーのトナー像が形成されることになる。
一方、本実施形態にかかる画像形成装置において、記録媒体Pの搬送経路には、記録媒体Pを給紙する給紙部11と、レジスト部12と、用紙転写器13と、搬送ベルト14と、定着装置15とが設けられている。
給紙部11から給紙された記録媒体Pは図中矢印H方向に搬送され、レジスト部12にて一旦待機する。そして、転写ベルト10上に形成されたフルカラーのトナー像が転写ベルト10の移動により用紙転写器13と対向する位置に到達するタイミングで、レジスト部12にて一旦待機した記録媒体Pが用紙転写器13の位置に送り出されることにより、用紙転写器13に印加された高電圧の作用によって転写ベルト10上に形成されたフルカラーのトナー像が記録媒体P上に転写(二次転写)される。なお、記録媒体Pに転写されずに転写ベルト10上に残留したトナーは、ベルト清掃機構8によって清掃される。
フルカラーのトナー像が転写された記録媒体Pは、搬送ベルト14により定着装置15へと搬送される。そして、定着装置15によって、記録媒体P上に転写されたフルカラーのトナー像が記録媒体Pに定着される。なお、本実施形態にかかる画像形成装置には、レジスト部12の前段および給紙部11にそれぞれ記録媒体温度センサ16a,16bが設けられており、定着装置15へと搬送される記録媒体Pの温度がこれら記録媒体温度センサ16a,16bにより検知されるようになっている。
トナー像が定着された記録媒体Pは、図中矢印L1で示す経路を通って、図示しない排紙トレイ上に排出される。また、反転排紙や両面印刷を行う場合には、トナー像が形成された記録媒体Pが図中矢印L2で示す経路を通って反転ローラ17に一旦引き込まれ、反転ローラ17が逆転することによって、反転した状態で送り出される。そして、反転排紙の場合には、反転した記録媒体Pが図中矢印L3で示す経路を通って図示しない排紙トレイ上に排出される。また、両面印刷の場合には、反転した記録媒体Pが図中矢印L4で示す経路を通ってレジスト部12に戻され、裏面への二次転写および定着が行われる。
図2は、定着装置15の詳細を示す構成図である。この定着装置15は、定着部材として定着ベルト21を用いたベルト定着方式の定着装置であり、定着ベルト21のほか、加熱ローラ22、定着ローラ23、テンションローラ24、加圧ローラ25等を備えている。
ここで、定着部材としての定着ベルト21は、樹脂材料からなるベース層上に、弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端ベルトである。定着ベルト21の弾性層は、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト21の離型層は、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等で形成されている。定着ベルト21の表層に離型層を設けることにより、トナー像Iに対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ベルト21は、2つのローラ部材(加熱ローラ22、定着ローラ23)に張架・支持されている。テンションローラ24は、2つのローラ部材に張架された定着ベルト21に一定のテンションを与える役割を持つ。
加熱ローラ22は、金属材料からなる薄肉の円筒体であって、その円筒体の内部にはヒータ26(熱源)が固定して設けられている。ヒータ26は、ハロゲンヒータやカーボンヒータであって、その両端部が定着装置15の側板に固定されている。また、加熱ローラ22は、その両端軸部が定着装置15の側板に軸受を介して回転自在に取り付けられている。ヒータ26は、電源部(交流電源)から出力制御された電力が供給されることで発熱する。このヒータ26からの輻射熱によって加熱ローラ22が加熱されて、さらに加熱ローラ22によって加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Iに熱が加えられる。ヒータ26の出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーモパイル等の定着ベルト温度センサ27によるベルト表面温度の検知結果に基づいて行われる。なお、定着ベルト温度センサ27によって温度検知が行われている定着ベルト21上の位置は、位置検知センサ28によって検知できるようになっている。
定着ローラ23は、ステンレススチール(例えば、SUS304)等からなる芯金23a上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層23bが形成されたローラ部材である。定着ローラ23は、その両端部が定着装置15の側板に軸受を介して回転自在に取り付けられており、図示しない定着ローラ駆動部によって時計回り(図中矢印C方向)に回転駆動され、これにより、定着ベルト21が図中矢印D方向に走行する。
加圧ローラ25は、定着ローラ23とほぼ同じ構成であり、ステンレススチール(例えば、SUS304)等からなる芯金25a上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層25bが形成されたローラ部材である。
定着装置15では、加圧ローラ25が定着ベルト21を介して定着ローラ23に圧接してニップ部を形成している。定着装置15は、安定したニップ部を形成させるために、定着ローラ23の弾性層23bを、加圧ローラ25の弾性層25bよりも厚くしている。例として、加圧ローラ25の弾性層25bは3mmであるのに対して、定着ローラ23の弾性層23bは15mmである。
定着装置15のニップ部にトナー像Iが転写された記録媒体Pが搬送されると、記録媒体Pはニップ部に挟み込まれ、定着ローラ23の回転によって下流側へと送り出される。このとき、定着ベルト21の熱が記録媒体Pに伝熱され、この定着ベルト21からの熱によりトナー像Iが加熱溶融されるとともに、加圧ローラ25によって加圧されることで、トナー像Iが記録媒体Pに定着する。
ここで、定着ベルト21の記録媒体Pが接触する部分は、記録媒体Pに熱が奪われるため温度が低下する。定着ベルト21の温度が低下した部分は、定着ベルト21の周回によって加熱ローラ22に近づくとその輻射熱により温度上昇するが、記録媒体Pによって奪われた熱量が大きい場合には元の温度に完全には戻らず、定着ベルト21の周回方向に温度ムラが発生する。そして、この定着ベルト21の温度が低下した部分に繰り返し記録媒体Pが接触すると、定着ベルト21の他の部分との温度差が大きくなり、定着性能に悪影響を及ぼすことになる。
そこで、本実施形態にかかる画像形成装置では、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを解消するように、トナー像Iが転写された記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを制御することで、定着装置15が安定した定着性能を発揮できるようにしている。具体的には、先に搬送される記録媒体Pがニップ部に到達してから次に搬送される記録媒体Pがニップ部に到達するまでの期間である記録媒体搬送周期が、定着ベルト21が1周する期間である定着ベルト周回周期のN倍(ただし、Nは任意の自然数)と略一致する場合に、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させることで、定着ベルト21の周回方向における同じ位置に記録媒体Pが繰り返し接触することを防止し、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを解消させるようにしている。
以下、本実施形態にかかる画像形成装置において特徴的な記録媒体Pの搬送制御について、さらに詳しく説明する。なお、以下では、説明の簡単のために、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期と略一致する場合(N=1の場合)を例として説明するが、Nが2以上の自然数の場合においても同様に考えることができる。
図3は、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期と略一致する場合に生じる定着ベルト21の周回方向における温度ムラを説明する図である。記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達する前の定着ベルト周回周期に相当する期間C1においては、定着ベルト21の周回方向における温度は均一であり、この温度がトナー像Iの定着に適した適正温度範囲の上限温度Tmaxと下限温度Tminの間に収まるように、加熱ローラ22内部のヒータ26の作動が制御されている。
先に搬送される記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達してからの定着ベルト周回周期に相当する期間C2においては、定着ベルト21の記録媒体Pが接触した部分のみ熱量が奪われて、温度が低下する。ここで、記録媒体Pの熱容量が大きく、定着ベルト21から記録媒体Pに伝熱される熱量が大きいと、定着ベルト21の温度低下した部分と他の部分との温度差が大きくなる。
その後、次に搬送される記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達してからの定着ベルト周回周期に相当する期間C3においては、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期と略一致するために、定着ベルト21の期間C2において記録媒体Pが接触した部分と同じ部分に記録媒体Pが接触し、その部分の温度がさらに低下する。その結果、図3(a)のように、定着ベルト21の周回方向において、記録媒体Pが繰り返し接触する部分の温度が適正温度範囲の下限温度Tminを下回ってしまう場合がある。
ここで、定着ベルト21の記録媒体Pが繰り返し接触する部分の温度を上昇させるためにヒータ26の発熱量を大きくすると、記録媒体Pが繰り返し接触する部分の温度を適正温度範囲内にすることができる。しかしながら、記録媒体Pが繰り返し接触する部分と他の部分との温度差が大きい状態で記録媒体Pが繰り返し接触する部分の温度を適正温度範囲内にしようとすると、図3(b)のように、他の部分の温度が適正温度範囲の上限温度Tmaxを超えてしまう場合がある。
以上のように、定着ベルト21の周回方向における同じ位置に記録媒体Pが繰り返し接触することで、定着ベルト21の周回方向に温度差の大きい温度ムラが生じると、ヒータ26の作動制御では定着ベルト21の温度を適正温度範囲に維持することが難しく、定着不良を発生させる要因となる。そこで、本実施形態にかかる画像形成装置では、定着ベルト21の周回方向における同じ位置に記録媒体Pが繰り返し接触することが想定される場合に、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させることにより、定着ベルト21の記録媒体Pが接触する位置を周回方向に分散させるようにしている。
次に、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングの遅延量の好適な一例について説明する。ここでは、時間の概念で捉えられる記録媒体搬送周期や定着ベルト周回周期を距離に置き換えて考える。定着ベルト周回周期は、定着ベルト21の周長に置き換えることができる。また、記録媒体搬送周期は、記録媒体Pの搬送方向における長さと紙間距離の和に置き換えることができる。なお、紙間距離とは、先に搬送される記録媒体Pの搬送方向後端部と次に搬送される記録媒体Pの搬送方向前端部との間の距離である。以下、定着ベルト21の周長をL1、記録媒体Pの搬送方向における長さをL2、紙間距離をL3とする。
図4(a)は、L2(=L3)=1/2×L1となる関係で連続印刷が行われた場合の概念図である。この場合、紙間距離L3がL3+L2となるように、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させる。これにより、図4(b)に示すように、定着ベルト21の周回方向における全域に平均的に記録媒体Pを接触させることができ、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを効果的に解消することができる。
図5(a)は、L2<1/2×L1となる関係で連続印刷が行われた場合の概念図である。この場合、上記の例と同様に、紙間距離L3がL3+L2となるように、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させる。これにより、図5(b)に示すように、定着ベルト21の周回方向における全域に平均的に記録媒体Pを接触させることができ、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを効果的に解消することができる。
図6(a)は、L2>1/2×L1となる関係で連続印刷が行われた場合の概念図である。この場合は、L1に対するL2の割合が大きいため、紙間距離L3がL3+L2となるように遅延量を決定すると、生産性の低下が大きくなる。そこで、この場合には、L3がL3+d(ただし、dはL2の約数)となるように、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させる。これにより、図6(b)に示すように、定着ベルト21の周回方向において記録媒体Pが連続して接触する部分を周期的にずらしていくことができ、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを効果的に解消することができる。
以上を整理すると、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2≦1/2×L1(Nが2以上の自然数の場合は、L2≦1/2×N×L1)であれば、紙間距離L3がL3+L2となるように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させることが望ましい。また、L2>1/2×L1(Nが2以上の自然数の場合は、L2>1/2×N×L1)であれば、紙間距離L3がL3+d(ただし、dはL2の約数)となるように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させることが望ましい。これにより、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを効果的に解消することが可能となる。
記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させる具体的方法としては、例えば、レジスト部12にて一旦待機している記録媒体Pをレジスト部12から送り出すタイミングを遅延させることが考えられる。また、給紙部11から記録媒体Pを給紙するタイミングを遅延させるようにしてもよい。ただし、レジスト部12から記録媒体Pを送り出すタイミングを遅延させる場合も、給紙部11から記録媒体Pを給紙するタイミングを遅延させる場合も、それに合わせて、転写ベルト10上に形成されたトナー像が用紙転写器13と対向する位置に到達するタイミング、つまり、トナー像形成のタイミングを遅延させる必要がある。
また、例えば図7に示すように、記録媒体Pの搬送経路における用紙転写器13の下流側にレジスト部12と同様の機構を有する第2のレジスト部18を設け、用紙転写器13によりトナー像が転写された記録媒体Pをこの第2のレジスト部18で一旦待機させた後に定着装置15へと搬送することで、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させるようにしてもよい。この場合には、トナー像形成のタイミングを遅延させる必要がなく、制御が簡便となる。
図8は、以上のような記録媒体Pの搬送制御を実行する制御部100の機能構成を示すブロック図である。制御部100は、例えば、CPUやROM、RAM、入出力インターフェース等を備えたマイクロプロセッサより構成され、CPUがRAMをワークエリアとして利用してROMに格納された制御プログラムを実行することで、図8に示すように、制御実行切り換え部101、周期比較部102、遅延制御部103の各機能構成を実現する。
制御実行切り換え部101は、定着装置15に搬送される記録媒体Pの熱容量が大きく、定着ベルト21から記録媒体Pへと移動する熱量が大きい場合にのみ、上述した記録媒体Pの搬送制御が実行されるように、制御を実行するか否かを切り換える。記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させる制御は、このような制御を実行しない場合と比べて多少なりとも生産性の低下を招くことになるので、本実施形態では、定着装置15に搬送される記録媒体Pの熱容量が大きく、定着ベルト21から記録媒体Pへと移動する熱量が大きい場合にのみ、制御が実行されるようにしている。
ここで、定着装置15に搬送される記録媒体Pの熱容量は、記録媒体Pの紙種によって判断できる。例えば印刷ジョブにより指定されている記録媒体Pの紙種が基準値以上の紙厚を有するものである場合に、記録媒体Pの熱容量は大きいと判断できる。一方、例えば印刷ジョブにより指定されている記録媒体Pの紙厚が基準値未満であれば、記録媒体Pの熱容量は小さいと判断できる。そのほか、記録媒体Pの材質などによっても熱容量を判断することができる。制御実行切り換え部101は、このように、定着装置15に搬送される記録媒体Pの紙種から記録媒体Pの熱容量を判断し、記録媒体Pの熱容量が大きい場合に上述した記録媒体Pの搬送制御が実行されるように、制御を実行するか否かを切り換える。
また、定着装置15に搬送される記録媒体Pの熱容量は、記録媒体Pの温度によっても判断できる。定着装置15に搬送される記録媒体Pの温度は、上述した記録媒体温度センサ16a,16bによって検知することができる。制御実行切り換え部101は、上述した記録媒体Pの搬送制御をレジスト部12や第2のレジスト部18の動作制御により実施する場合には、レジスト部12の前段に設けられた記録媒体温度センサ16aによって検知された記録媒体Pの温度を読み込み、記録媒体Pの温度が所定の閾値以下で記録媒体Pの熱容量が大きいと判断される場合に上述した記録媒体Pの搬送制御が実行されるように、制御を実行するか否かを切り換えるようにしてもよい。例えば、両面印刷が行われる場合には、裏面の印刷時には記録媒体Pが高温の状態で定着装置15に搬送され、記録媒体Pの熱容量が小さくなっているので、このような場合には上述した記録媒体Pの搬送制御を実行しないように制御を切り換えることができる。また、制御実行切り換え部101は、上述した記録媒体Pの搬送制御を給紙部11からの給紙タイミングの制御により実施する場合には、給紙部11に設けられた記録媒体温度センサ16bによって検知された記録媒体Pの温度を読み込み、記録媒体Pの温度が所定の閾値以下で記録媒体Pの熱容量が大きいと判断される場合に上述した記録媒体Pの搬送制御が実行されるように、制御を実行するか否かを切り換えるようにしてもよい。
周期比較部102は、制御実行切り換え部101によって記録媒体Pの搬送制御を実行すると決定された場合に、印刷ジョブの内容から記録媒体搬送周期を算出し、算出した記録媒体搬送周期と定着ベルト周回周期とを比較する。記録媒体搬送周期は、記録媒体Pの搬送方向における長さL2および紙間距離L3と記録媒体Pの搬送速度とから算出できる。ここで、記録媒体Pの搬送方向における長さL2は、印刷ジョブによって指定される。また、紙間距離L3の初期値は、連続印刷を適切に行える最小紙間距離として予め設定されている。また、記録媒体Pの搬送速度は、画像形成装置に固有の速度(印刷速度)として予め設定されている。したがって、印刷ジョブによって指定される記録媒体Pの搬送方向における長さL2が分かれば、記録媒体搬送周期を算出することができる。
また、定着ベルト周回周期は、定着ベルト21の周長L1と定着ベルト21の周回速度とにより求まり、定着ベルト21の周長L1は固定値、定着ベルト21の周回速度は、記録媒体Pの搬送速度と同じ速度(画像形成装置に固有の印刷速度)である。したがって、定着ベルト周回周期は固定値として予め求めておくことができる。
周期比較部102は、上記のように算出される記録媒体搬送周期を定着ベルト周回周期と比較し、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致するか否かを判定する。そして、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致すると判定した場合に、遅延制御部103に対して遅延制御の実行を指令する。
遅延制御部103は、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係から、上述したように記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングの遅延量を決定する。具体的には、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係がL2≦1/2×N×L1であれば、紙間距離L3がL3+L2となるように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングの遅延量を決定する。また、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係がL2>1/2×N×L1であれば、紙間距離L3がL3+d(ただし、dはL2の約数)となるように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングの遅延量を決定する。そして、遅延制御部103は、決定した遅延量で記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させるように、上述したレジスト部12、給紙部11、第2のレジスト部18のいずれかの動作を制御する。
図9は、制御部100により実行される記録媒体Pの搬送制御の一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図9のフローチャートで示す一連の処理は、本実施形態にかかる画像形成装置に対して印刷ジョブが入力されるたびに実行される。
図9のフローチャートで示す処理が開始されると、制御部100は、まず印刷ジョブの内容を確認し(ステップS101)、印刷に使用される記録媒体Pの熱容量が大きいか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、例えば記録媒体Pの紙厚が基準値以上の場合に記録媒体Pの熱容量が大きいと判定する。なお、記録媒体Pの熱容量の判定には記録媒体Pの紙厚のほか、上述したように、記録媒体Pの材質や温度(記録媒体温度センサ16a,16bにより検知される値)などの情報を用いることができるが、以下では、記録媒体Pの紙厚により熱容量を判定するものとして説明する。この判定の結果、記録媒体Pの熱容量が小さいと判定した場合には(ステップS102:No)、そのまま処理を終了する。一方、記録媒体Pの熱容量が大きいと判定した場合には(ステップS102:Yes)、ステップS101で確認した印刷ジョブの内容から、記録媒体搬送周期を算出する(ステップS103)。
次に、制御部100は、ステップS103で算出した記録媒体搬送周期と定着ベルト周回周期とを比較し、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致するか否かを判定する(ステップS104)。この判定の結果、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致しない場合には(ステップS104:No)、そのまま処理を終了する。一方、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致する場合には(ステップS104:Yes)、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2≦1/2×N×L1となっているか否かを判定する(ステップS105)。
そして、制御部100は、L1とL2との関係が、L2≦1/2×N×L1となっていると判定した場合には(ステップS105:Yes)、紙間距離L3がL3+L2となるように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングの遅延量を決定する(ステップS106)。一方、L1とL2との関係が、L2>1/2×N×L1となっていると判定した場合には(ステップS105:No)、紙間距離L3がL3+d(ただし、dはL2の約数)となるように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングの遅延量を決定する(ステップS107)。そして、制御部100は、ステップS106またはステップS107で決定した遅延量で記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させるように、レジスト部12、給紙部11、第2のレジスト部18のいずれかの動作を制御する(ステップS108)。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる画像形成装置は、記録媒体搬送周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致する場合に、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを遅延させるようにしているので、定着ベルト21の周回方向における同じ位置に記録媒体Pが繰り返し接触することを有効に防止することができ、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを解消して定着装置15の定着性能の安定化を図ることができる。
特に、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係から、L2≦1/2×N×L1であれば紙間距離L3がL3+L2となるように記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させ、L2>1/2×N×L1であれば紙間距離L3がL3+d(ただし、dはL2の約数)となるように記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させることで、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを効果的に解消することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる画像形成装置について説明する。本実施形態は、複数ページからなる印刷物を複数部数印刷する印刷ジョブの実行時に、先に印刷される印刷物の1ページ目となる記録媒体Pがニップ部に到達してから次に印刷される印刷物の1ページ目となる記録媒体Pがニップ部に到達するまでの期間である印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致し、且つ、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2>1/2×L1の条件を満たす場合に、印刷物の1ページ目となる記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させるようにしたものである。なお、画像形成装置の基本的な構成は第1の実施形態と共通しているため、以下では、第1の実施形態と共通の部分については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
図10は、2ページからなる印刷物を複数部数連続して印刷する印刷ジョブの実行時に、印刷周期が定着ベルト周回周期の3倍と略一致し、且つ、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2>1/2×L1の条件を満たす場合の概念図である。図中Paが印刷物の1ページ目の記録媒体を示し、Pbが印刷物の2ページ目の記録媒体を示している。また、図中のCpの期間が印刷周期に相当する。
複数ページからなる印刷物を複数部数印刷する印刷ジョブの実行時に、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致し、且つ、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2>1/2×L1の条件を満たす場合には、図10(a)に示すように、1つの印刷物となる複数ページの記録媒体P(Pa,Pb)が定着ベルト21の一部に繰り返し接触することになる。そして、この記録媒体Pが繰り返し接触する部分が次の印刷物においても定着ベルト21の同じ位置となり、これが繰り返されることで定着ベルト21の一部に局所的に大きく温度低下した部分が生じる懸念がある。
そこで、本実施形態では、複数ページからなる印刷物を複数部数印刷する印刷ジョブの実行時に、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致し、且つ、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2>1/2×L1の条件を満たす場合に、図10(b)に示すように、印刷物の1ページ目となる記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させることで、定着ベルト21の記録媒体Pが繰り返し接触する部分を周回方向に分散させるようにしている。なお、本実施形態では、定着ベルト21の記録媒体Pが繰り返し接触する部分を周回方向に分散させることができればよいので、遅延量は任意である。ただし、定着ベルト21の繰り返し接触する部分の大きさ(2×L2−L1)に相当する遅延量とすることで、定着ベルト21の繰り返し接触する部分を効率よく分散させることが可能となる。
図11は、本実施形態にかかる画像形成装置において以上のような記録媒体Pの搬送制御を実行する制御部200の機能構成を示すブロック図である。制御部200は、例えば、CPUやROM、RAM、入出力インターフェース等を備えたマイクロプロセッサより構成され、CPUがRAMをワークエリアとして利用してROMに格納された制御プログラムを実行することで、図11に示すように、制御実行切り換え部201、第1の周期比較部202、第1の遅延制御部203、第2の周期比較部204、第2の遅延制御部205の各機能構成を実現する。
制御実行切り換え部201は、第1の実施形態における制御実行切り換え部101と同じ機能構成である。また、第1の周期比較部202は、第1の実施形態における周期比較部102と同じ機能構成である。また、第1の遅延制御部203は、第1の実施形態における遅延制御部103と同じ機能構成である。
第2の周期比較部204は、制御実行切り換え部201によって記録媒体Pの搬送制御を実行すると決定され、且つ、印刷ジョブの内容が、複数ページからなる印刷物を複数部数印刷するものである場合に、印刷ジョブの内容から印刷周期を算出し、算出した印刷周期と定着ベルト周回周期とを比較して、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致するか否かを判定する。また、第2の周期比較部204は、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2>1/2×L1の条件を満たすか否かを判定する。そして、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致し、且つ、L2>1/2×L1の条件を満たすと判定した場合に、第2の遅延制御部205に対して遅延制御の実行を指令する。
第2の遅延制御部205は、第2の周期比較部204によって印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致し、且つ、L2>1/2×L1の条件を満たすと判定されて、遅延制御の実行が指令されると、例えば2×L2−L1に相当する遅延量で印刷物の1ページ目となる記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させるように、上述したレジスト部12、給紙部11、第2のレジスト部18のいずれかの動作を制御する。
図12は、制御部200により実行される記録媒体Pの搬送制御の一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図12のフローチャートで示す一連の処理は、本実施形態にかかる画像形成装置に対して印刷ジョブが入力されるたびに実行される。なお、図12のフローチャートにおいて、ステップS201〜ステップS208の処理は、第1の実施形態で説明した図9のフローチャートにおけるステップS101〜ステップS108までの処理と同様であるので、これらの処理については説明を省略する。
図12のフローチャートにおけるステップS209では、制御部200は、ステップS201で確認した印刷ジョブの内容が、複数ページからなる印刷物を複数部数印刷することを指定した印刷ジョブであるか否かを判定する。そして、ステップS201で確認した印刷ジョブの内容が、複数ページからなる印刷物を複数部数印刷することを指定した印刷ジョブである場合には(ステップS209:Yes)、制御部200は、ステップS201で確認した印刷ジョブの内容から、印刷周期を算出する(ステップS210)。
次に、制御部200は、ステップS210で算出した印刷周期と定着ベルト周回周期とを比較し、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致するか否かを判定する(ステップS211)。この判定の結果、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致しない場合には(ステップS211:No)、そのまま処理を終了する。一方、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致する場合には(ステップS211:Yes)、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2>1/2×L1となっているか否かを判定する(ステップS212)。
そして、制御部200は、L1とL2との関係が、L2>1/2×L1となっていないと判定した場合には(ステップS212:No)、そのまま処理を終了する。一方、L1とL2との関係が、L2>1/2×L1となっていると判定した場合には(ステップS212:Yes)、例えば2×L2−L1に相当する遅延量で印刷物の1ページ目となる記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させるように、レジスト部12、給紙部11、第2のレジスト部18のいずれかの動作を制御する(ステップS213)。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる画像形成装置は、複数ページからなる印刷物を複数部数印刷する印刷ジョブの実行時に、印刷周期が定着ベルト周回周期のN倍と略一致し、且つ、定着ベルト21の周長L1と記録媒体Pの搬送方向における長さL2との関係が、L2>1/2×L1の条件を満たす場合に、印刷物の1ページ目となる記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを遅延させるようにしているので、定着ベルト21の記録媒体Pが繰り返し接触する部分を分散させて局部的な温度低下を抑制することができ、定着装置15の定着性能の安定化を図ることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態にかかる画像形成装置について説明する。本実施形態は、定着ベルト21を周回方向に複数の領域に分割し、各領域における平均温度を求めて、平均温度が高い領域に優先的に記録媒体Pが接触するように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを制御するようにしたものである。なお、画像形成装置の基本的な構成は第1および第2の実施形態と共通しているため、以下では、第1および第2の実施形態と共通の部分については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
定着ベルト21の表面温度は、上述したように、定着ベルト21に対向配置されたサーモパイル等の定着ベルト温度センサ27によって検知される。また、定着ベルト温度センサ27によって温度検知が行われている定着ベルト21上の位置は、位置検知センサ28によって検知される。本実施形態では、これら定着ベルト温度センサ27により得られる温度情報と、位置検知センサ28により得られる位置情報とに基づいて、定着ベルト21の周回方向に分割した複数の領域ごとにその平均温度を求めて、平均温度が高い領域に優先的に記録媒体Pが接触するように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを制御するようにしている。
図13は、本実施形態にかかる画像形成装置において以上のような記録媒体Pの搬送制御を実行する制御部300の機能構成を示すブロック図である。制御部300は、例えば、CPUやROM、RAM、入出力インターフェース等を備えたマイクロプロセッサより構成され、CPUがRAMをワークエリアとして利用してROMに格納された制御プログラムを実行することで、図13に示すように、制御実行切り換え部301、領域分割部302、平均温度算出部303、搬送制御部304の各機能構成を実現する。
制御実行切り換え部301は、第1の実施形態における制御実行切り換え部101、第2の実施形態における制御実行切り換え部201と同じ機能構成であり、定着装置15に搬送される記録媒体Pの熱容量が大きく、定着ベルト21から記録媒体Pへと移動する熱量が大きい場合にのみ、上述した記録媒体Pの搬送制御が実行されるように、制御を実行するか否かを切り換える。
領域分割部302は、定着ベルト21を周回方向に複数の領域に分割する。分割した各領域は、定着ベルト21上の任意の基準位置に対する相対位置である始点の位置情報と、この始点からの距離情報とにより識別する。
図14は、領域分割部302による領域分割の具体的な一例を、定着ベルト21を基準位置P1にて分離して展開した状態で示す模式図である。この図14に示す例では、定着ベルト21を周回方向に3等分して3つの領域R1,R2,R3に分割している。領域R1は、定着ベルト21の基準位置P1を始点とし、1/3×L1(定着ベルト21の周長)の距離を持つ領域として識別される。また、領域R2は、定着ベルト21の基準位置P1から1/3×L1離れた位置P2を始点とし、1/3×L1の距離を持つ領域として識別される。また、領域R3は、基準位置P1から2/3×L1離れた位置P3を始点とし、1/3×L1の距離を持つ領域として識別される。
図15は、領域分割部302による領域分割の他の例を、定着ベルト21を基準位置P11にて分離して展開した状態で示す模式図である。この図15に示す例では、隣り合う領域の一部が重複するようにして、定着ベルト21を周回方向に4つの領域R11,R12,R13,R14に分割している。領域R11は、定着ベルト21の基準位置P11を始点とし、1/2×L1の距離を持つ領域として識別される。また、領域R12は、定着ベルト21の基準位置P11から1/4×L1離れた位置P12を始点とし、1/2×L1の距離を持つ領域として識別される。また、領域R13は、基準位置P11から1/2×L1離れた位置P13を始点とし、1/2×L1の距離を持つ領域として識別される。また、領域R14は、基準位置P11から3/4×L1離れた位置P14を始点とし、1/2×L1の距離を持つ領域として識別される。この図15の例のように、隣り合う領域の一部が重複するように、定着ベルト21を周回方向に複数の領域に分割するようにした場合には、図14に示した領域分割の例と比べて、各領域のサイズを大きく設定しながら、領域の数を増加させることができる。
平均温度算出部303は、定着ベルト温度センサ27により得られる温度情報と、位置検知センサ28により得られる位置情報とに基づいて、領域分割部302により分割された各領域の平均温度を算出する。この平均温度算出部303による各領域の平均温度の算出は、定着ベルト21が所定回数周回するごとに繰り返し行われ、最新の平均温度の情報がRAMなどのメモリに保持される。
搬送制御部304は、平均温度算出部303により算出された平均温度が高い領域に優先的に記録媒体Pが接触するように、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを制御する。記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングの制御は、上述したように、レジスト部12から記録媒体Pを送り出すタイミングや、給紙部11から記録媒体Pを給紙するタイミングを制御することで実現できる。また、図7に示したように、記録媒体Pの搬送経路における用紙転写器13の下流側に第2のレジスト部18が設けられている場合には、この第2のレジスト部18から記録媒体Pを送り出すタイミングを制御することで、記録媒体Pがニップ部に到達するタイミングを制御することができる。一方、定着ベルト21の平均温度が高い領域の始点がニップ部に到達するタイミングは、位置検知センサ28により得られる位置情報に基づいて、平均温度が高い領域の始点の位置を監視することで認識できる。搬送制御部304は、定着ベルト21の平均温度が高い領域の始点がニップ部に到達するタイミングに同期して記録媒体Pがニップ部に到達するように、上述したレジスト部12、給紙部11、第2のレジスト部18のいずれかの動作を制御する。
図16は、制御部300により実行される記録媒体Pの搬送制御の一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図16のフローチャートで示す一連の処理は、本実施形態にかかる画像形成装置に対して印刷ジョブが入力されるたびに実行される。
図16のフローチャートで示す処理が開始されると、制御部300は、まず印刷ジョブの内容を確認し(ステップS301)、印刷に使用される記録媒体Pの熱容量が大きいか否かを判定する(ステップS302)。具体的には、例えば記録媒体Pの紙厚が基準値以上の場合に記録媒体Pの熱容量が大きいと判定する。この判定の結果、記録媒体Pの熱容量が小さいと判定した場合には(ステップS302:No)、そのまま処理を終了する。一方、記録媒体Pの熱容量が大きいと判定した場合には(ステップS302:Yes)、定着ベルト21を周回方向に複数の領域に分割する(ステップS303)。
次に、制御部300は、定着ベルト21を周回させながら、定着ベルト温度センサ27により得られる定着ベルト21の1周分の温度情報と、位置検知センサ28により得られる位置情報とを入力し(ステップS304)、ステップS303で分割した各領域の平均温度を算出する(ステップS305)。
次に、制御部300は、ステップS303で分割した各領域のうち、ステップS305で算出した平均温度が最も高い領域の平均温度が、トナー像Iの定着に適した適正温度範囲の下限温度Tmin以上となっているか否かを判定する(ステップS306)。この判定の結果、平均温度が最も高い領域の平均温度が適正温度範囲の下限値Tmin未満であれば(ステップS306:No)、ステップS304に戻って以降の処理を繰り返す。この場合、定着ベルト温度センサ27の検知結果に基づいて加熱ローラ22内部のヒータ26がオンされているため、定着ベルト21の温度は上昇していく。
一方、平均温度が最も高い領域の平均温度が適正温度範囲の下限値Tmin以上となっている場合には(ステップS306:Yes)、制御部300は、この平均温度が最も高い領域の始点がニップ部に到達するタイミングと同期して記録媒体Pがニップ部に到達するように、レジスト部12、給紙部11、第2のレジスト部18のいずれかの動作を制御する(ステップS307)。
次に、制御部300は、印刷ジョブが終了したか否かを判定し(ステップS308)、印刷ジョブが終了した場合には(ステップS308:Yes)、そのまま処理を終了する。一方、印刷ジョブが終了していない場合には(ステップS308:No)、制御部300は、温度検知後の定着ベルト21の周回回数が予め設定した所定回数に達したか否かを判定する(ステップS309)。この判定の結果、温度検知後の定着ベルト21の周回回数が所定回数に達していなければ(ステップS309:No)、ステップS307に戻って記録媒体Pの搬送制御を繰り返す。一方、温度検知後の定着ベルト21の周回回数が所定回数に達した場合には(ステップS309:Yes)、平均温度が最も高い領域が変化している可能性があるため、ステップS304に戻って、新たに温度情報および位置情報の入力を行う。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる画像形成装置は、定着ベルト21を周回方向に複数の領域に分割し、各領域における平均温度を求めて、平均温度が高い領域に優先的に記録媒体Pが接触するように、記録媒体Pが定着装置15のニップ部に到達するタイミングを制御するようにしているので、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを解消して定着装置15の定着性能の安定化を図ることができる。
特に、定着ベルト21を周回方向に複数の領域に分割する際に、隣り合う領域の一部が重複するように分割すれば、各領域のサイズを大きく設定しながら、領域の数を増加させることができるので、記録媒体Pの搬送制御を精度よく行って、定着ベルト21の周回方向における温度ムラをより効果的に解消することができる。
また、本実施形態にかかる画像形成装置では、定着ベルト21の高温となっている領域に記録媒体Pを接触させるように搬送制御を行っているので、その領域の温度がトナー像Iの定着に適した適正温度範囲の下限温度Tmin以上となっていれば、他の領域の温度が下限温度Tmin未満であっても定着装置15による定着を開始させることができ、定着ベルト21の温度を上昇させるための待機時間を低減することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態にかかる画像形成装置について説明する。本実施形態は、記録媒体Pの搬送が開始される前の待機時において、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを解消する制御を加えたものである。すなわち、上述した記録媒体Pの搬送制御により定着ベルト21の周回方向における温度ムラを解消させるようにしても、例えば記録媒体Pの熱容量が極めて大きく、定着ベルト21から記録媒体Pに伝熱される熱量が極めて大きい場合には、印刷ジョブが終了した段階で定着ベルト21の周回方向における温度ムラが生じている場合がある。そこで、本実施形態では、記録媒体Pの搬送が開始される前の待機時にこのような温度ムラを解消する制御を加えることで、定着装置15の定着性能をさらに安定化させるようにしている。なお、画像形成装置の基本的な構成は第1乃至第3の実施形態と共通しているため、以下では、第1乃至第3の実施形態と共通の部分については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
図17は、本実施形態にかかる画像形成装置において、記録媒体Pの搬送が開始される前の待機時における定着装置15の動作を制御する待機時動作制御部400の機能構成を示すブロック図である。待機時動作制御部400は、例えば、CPUやROM、RAM、入出力インターフェース等を備えたマイクロプロセッサより構成され、CPUがRAMをワークエリアとして利用してROMに格納された制御プログラムを実行することで、図17に示すように、温度判定部401、定着ベルト駆動制御部402、ヒータ駆動制御部403の各機能構成を実現する。
温度判定部401は、定着ベルト温度センサ27から得られる温度情報を入力し、定着ベルト温度センサ27が検知している定着ベルト21の表面温度が、トナー像Iの定着に適した適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっているか、あるいは適正温度の上限温度Tmaxを超えているかを判定する。
定着ベルト駆動制御部402は、待機時における定着ベルト21の周回動作を制御する。具体的には、定着ベルト駆動制御部402は、待機時に定着ベルト21を定期的に通常速度で周回させ、温度判定部401によって定着ベルト21に適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっている低温部分が検知された場合には、その低温部分が加熱ローラ22と接触している間、定着ベルト21を通常速度よりも遅い低速で周回させる。
図18は、定着ベルト21の周回速度を通常速度から低速に切り換えるタイミングを説明するための図である。定着ベルト21上で定着ベルト温度センサ27によって温度が検知された位置F1が、定着ベルト21の周回によって加熱ローラ22との接触開始位置F2に移動するのに要する時間t1は、定着ベルト21の周長L1と、加熱ローラ22の半径rと、位置F1と位置F2とがなす角φ1と、定着ベルト21の周回速度(通常速度)Vとから、下記式(1)にて算出することができる。
t1=(L1−2r×φ1/360)/V ・・・(1)
また、加熱ローラ22との接触開始位置F2から接触終了位置F3に移動するのに要する時間t2は、加熱ローラ22の半径rと、位置F2と位置F3とがなす角φ2と、定着ベルト21の周回速度(通常速度)Vとから、下記式(2)にて算出することができる。
t2=(2r×φ2/360)/V ・・・(2)
定着ベルト駆動制御部402は、定着ベルト温度センサ27の検知温度が適正温度範囲の下限温度Tmin以下で、温度判定部401によって定着ベルト21に低温部分があると判定されてから、時間t1が経過した時点で定着ベルト21の速度を通常速度から低速に切り換える。そして、その後、時間t2が経過するまでの間、定着ベルト21を低速で周回させる。なお、時間t2が経過する前であっても、低温部分の温度が適正温度範囲の下限温度Tmin以上となったら、定着ベルト21の速度を低速から通常速度に切り換えるようにしてもよい。また、定着ベルト駆動制御部402は、温度判定部401によって定着ベルト21に適正温度範囲の上限温度Tmaxを超えている高温部分が検知された場合には、予め定められた所定時間、定着ベルト21を通常速度よりも速い高速で周回させる制御も行う。
ヒータ駆動制御部403は、待機時におけるヒータ26の周回動作を制御する。具体的には、ヒータ駆動制御部403は、温度判定部401によって定着ベルト21に適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっている低温部分が検知された場合に、ヒータ26をオンする。また、ヒータ駆動制御部403は、その後、上記の低温部分の温度が適正温度範囲の下限温度Tmin以上となったら、ヒータ26をオフする。
図19は、待機時動作制御部400により実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図19のフローチャートで示す一連の処理は、記録媒体Pの搬送が開始される前の待機時において、所定周期で繰り返し実行される。
図19のフローチャートで示す処理が開始されると、待機時動作制御部400は、まず定着ベルト21の周回を通常速度で開始させる(ステップS401)。そして、定着ベルト21が通常速度で周回している状態で定着ベルト温度センサ27により得られる温度情報を随時入力し、定着ベルト21の周回方向において、トナー像Iの定着に適した適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっている低温部分があるか否かを判定する(ステップS402)。
ここで、適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっている低温部分が検知されなければ(ステップS402:No)、待機時動作制御部400は、次に、定着ベルト21が1周したかどうかを判定する(ステップS403)。そして、定着ベルト21が1周していなければ(ステップS403:No)、ステップS402に戻って低温部分があるか否かの判定を繰り返す。一方、低温部分が検知されずに定着ベルト21が1周した場合には(ステップS403:Yes)、定着ベルト21の周回を停止させて(ステップS411)、一連の処理を終了する。
また、待機時動作制御部400は、定着ベルト21に適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっている低温部分が検知された場合には(ステップS402:Yes)、次に、加熱ローラ22に内蔵されているヒータ26をオンする(ステップS404)。そして、適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっている低温部分が加熱ローラ22と接触している間、定着ベルト21を通常速度よりも遅い低速で周回させる(ステップS405)。
その後、待機時動作制御部400は、定着ベルト温度センサ27により得られる温度情報に基づいて、ステップS402で適正温度範囲の下限温度Tmin未満となっていると判定された低温部分の温度が、適正温度範囲の下限温度Tmin以上となったか否かを判定する(ステップS406)。そして、低温部分の温度が適正温度範囲の下限温度Tmin未満のままであれば(ステップS406:No)、ステップS405の処理を繰り返す。
一方、低温部分の温度が適正温度範囲の下限温度Tmin以上となった場合には(ステップS406:Yes)、待機時動作制御部400は、加熱ローラ22に内蔵されているヒータ26をオフする(ステップS407)。そして、定着ベルト温度センサ27により得られる温度情報を随時入力し、定着ベルト21の周回方向において、適正温度範囲の上限温度Tmaxを上回る高温部分があるか否かを判定する(ステップS408)。
ここで、適正温度範囲の上限温度Tmaxを上回る高温部分が検知されなければ(ステップS408:No)、待機時動作制御部400は、次に、定着ベルト21が1周したかどうかを判定する(ステップS409)。そして、定着ベルト21が1周していなければ(ステップS409:No)、ステップS408に戻って高温部分があるか否かの判定を繰り返す。一方、高温部分が検知されずに定着ベルト21が1周した場合には(ステップS409:Yes)、定着ベルト21の周回を停止させて(ステップS411)、一連の処理を終了する。
また、待機時動作制御部400は、定着ベルト21に適正温度範囲の上限温度Tmaxを上回る高温部分が検知された場合には(ステップS408:Yes)、定着ベルト21の速度を通常速度よりも速い高速に切り換えて、所定時間、定着ベルト21を高速で周回させる(ステップS410)。その後、待機時動作制御部400は、定着ベルト21の周回を停止させて(ステップS411)、一連の処理を終了する。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる画像形成装置は、記録媒体Pの搬送が開始される前の待機時に、定着ベルト21の周回方向において適正温度範囲の下限温度Tmin未満の低温部分が検知された場合に、加熱ローラ22が内蔵するヒータ26をオンした状態で定着ベルト21を周回させ、その低温部分が加熱ローラ22と接触している間、定着ベルト21を低速で周回させるようにしている。したがって、定着ベルト21の低温部分を効率よく加熱して、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを待機時において効果的に解消することができ、定着装置15の定着性能をさらに安定化させることができる。
また、本実施形態にかかる画像形成装置は、記録媒体Pの搬送が開始される前の待機時に、定着ベルト21の周回方向において適正温度範囲の上限温度Tmaxを上回る高温部分が検知された場合には、ヒータ26をオフした状態で定着ベルト21を高速で所定時間周回させるようにしているので、高温部分の熱を効率よく放熱して、定着ベルト21の周回方向における温度ムラを待機時において効果的に解消することができ、定着装置15の定着性能をさらに安定化させることができる。
以上、本発明の具体的な実施形態として第1乃至第4の実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。例えば、上記の実施形態は、本発明を4色フルカラーの画像を形成するタンデム方式の画像形成装置に適用した例であるが、本発明は、記録媒体上のトナー像を加熱溶融して記録媒体に定着させる定着装置を備えたあらゆる画像形成装置に対して有効に適用可能である。また、上記の実施形態では、ベルト定着方式の定着装置15を備える画像形成装置を例示したが、ローラ定着方式等、他の方式の定着装置を備える画像形成装置に対しても本発明は有効に適用可能である。