以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係るドラムパッドの模式的な斜視図である。このドラムパッド10は、例えば、電子ドラム用のパッドや、打撃データを入力して発音用のデータを得る打撃入力装置に適用され、スティック11等で打撃される。しかし、これらに限らず、単に、単独で卓上等に置いて打撃の練習を行うのに用いるものであってもよい。サイズの一例として、例えば、ドラムパッド10の直径φは260mmで、厚みtは20mmであり、用途としては、10インチまたは12インチのスネアやタムが想定される。ただし、これらに限られるものではない。
図1(b)は、ドラムパッド10の構成を模式的に示す断面図である。図1(b)に示すように、ドラムパッド10は、上側からパッド部15、裏側複合層30M2及びベース部40が積層されてなる。パッド部15は、本体部14の上面14aに、第1層部21及び第2層部22M2でなる表側複合層20M2が形成されてなる。本ドラムパッド10は、演奏時の向きが限定されるものではないが、説明上、図1(b)に示した状態において上下方向を呼称する。上側が表側で、下側が裏側である。また、各構成要素の厚みについては誇張してあり、縮尺は実際とは異なるものもある。
表側複合層20M2の表面20Maは、ドラムパッド10の上面、すなわち、打撃面10aである。表側複合層20M2の裏面20Mbは、本体部14の上面14aに接合状態とされている。表側複合層20M2における第1層部21と第2層部22M2とは境界部23で上下に分かれている。第2層部22M2は、表側複合層20M2における第1層部21以外の残りの全領域を占める。表側複合層20M2の表面20Ma及び裏面20Mbは平坦であるが、境界部23は平坦とは限らず、平坦でもよいし平坦でなくてもよい。
裏側複合層30M2は、裏側布状材32M2と、裏側布状材32M2の裏面32bに施された粘着剤31とからなる。裏側布状材32M2の表面32aは、本体部14の下面14bに接合状態となっている。
また、裏側複合層30M2の下側に、ベース部40が設けられる。ベース部40は、表側の第1金属板41と裏側の第2金属板42との間に樹脂層43が介在してなる3層構造となっている。裏側布状材32M2の裏面32bに、第1金属板41の上面であるベース部40の上面40aが対向しており、粘着剤31によって、裏面32bに上面40aが接着状態となっている。
第2金属板42の下面であるベース部40の下面40bにおいて、ほぼ中心位置に、打撃センサ19が固着されている。打撃センサ19は、圧電素子等を有してなり、ベース部40の振動を電気信号に変換し、その信号を打撃の有無や強さとして検出するものである。ただし、振動により打撃を検出するものであればよく、構成や配設位置は問わない。打撃面10aが打撃されるとベース部40が振動し、それが打撃センサ19により検出される。その検出信号に基づいてトリガを検出し、図示しない楽音発生部によってドラム音を発生させることができる。
図2(a)、(b)は、樹脂材12、表側布状材20の断面図である。図2(c)は、表側複合層20M2の前段階の状態である暫定複合層の断面図である。
パッド部15は、素材段階でいえば、樹脂材12、表側布状材20、及び、成形材料であるゴム材13(図3(a)参照)から構成される。ゴム材13が、成形前の本体部14に相当する。樹脂材12及び表側布状材20は、いずれも本体部14に対して十分に薄く、樹脂材12は、表側布状材20よりも薄い。
表側布状材20(図2(b)参照)としては、2次元のあらゆる方向に伸縮性のある(2wayストレッチ)素材であって、好適なものとしてニット材が採用されるが、不織布であってもよい。これらであれば、スティック11の跳ね返り方向がアコースティックと同様となる。
ここで、ニットとは、糸を湾曲させた形状のループを横方向又は縦方向に連絡させた布地をいい、メリヤス生地等である。不織布とは、織ったり編んだりすることなく、繊維同士を結合させた布地を言う。繊維の種類は問わず、天然繊維、合成繊維で作られる不織布でもよい。
樹脂材12(図2(a)参照)としては、表側布状材20に対して熱融着が可能な伸縮性のあるフィルム状の樹脂材、例えば、ポリオレフィンが採用される。このほか、ポリウレタン系の樹脂でもよく、ポリウレタンとポリエステルの混合、あるいはポリウレタンとナイロンの混合であってもよい。
ゴム材13(図3(a)参照)としては、シロキサン結合を持つシリコーンゴム、例えば、発泡性のシリコーンRTVゴムが好適である。
後述するように、ゴム材13が成形されて本体部14となるのに伴い、図2(c)に示す暫定複合層20M1における暫定第2層部22M1にゴム材13が含浸したものが、図1(b)に示す表側複合層20M2における第2層部22M2となる。
図2(d)は、離型紙付き複合層の断面図である。この離型紙付き複合層35は、暫定複合層30M1と離型紙33とでなる。暫定複合層30M1は、暫定裏側布状材32M1の下面に粘着剤31が塗布等によって付加されてなり、粘着剤31の裏側から離型紙33が貼着されている。後述するように、ゴム材13が成形されて本体部14となるのに伴い、図2(d)に示す暫定複合層30M1における暫定裏側布状材32M1にゴム材13が含浸したものが、図1(b)に示す裏側複合層30M2における裏側布状材32M2となる。
暫定裏側布状材32M1の素材は、表側布状材20(図2(b)参照)と同じであり、ニット材が採用されるが、不織布でもよい。なお、表側布状材20がニットで暫定裏側布状材32M1が不織布という組み合わせでもよいし、その逆の組み合わせでも問題ない。なお、暫定裏側布状材32M1については、伸縮性は必須でないので、ニットや不織布以外の布でもよく、フェルト等であってもよい。
粘着剤31は、例えば、アクリル系が好適であるが、第1金属板41で採用される材質に合わせて、ゴム系、シリコーン系、ホットメルト等、第1金属板41に対して接着性がよいものを採用すればよい。
図2(e)は、ベース部40の断面図である。第1金属板41と第2金属板42は共に厚みがt1で、同一構成である。金属板41、42は、アルミニウム、ステンレス、鉄等の材料でなる一般的な鋼板である。中板となる樹脂層43の厚みはt2である。樹脂層43として採用可能な樹脂は、例えば、塩化ビニル、アクリル樹脂等であるが、これらに限られない。第1金属板41と樹脂層43との貼り付け、第2金属板42と樹脂層43との貼り付けは、例えば、シート状に形成した樹脂層43を金属板41、42に対して両面粘着テープ等で接着することでなされる。
ここで、ベース部40は、樹脂層43を挟んだ3層構造によって、制振効果、特に高周波のダンピング効果が高められた制振鋼板となっている。このような制振効果を必要十分に発揮すると共に、コストを低く抑える上で、金属板41、42の厚みt1は、0.3〜2.3mmの範囲(例えば、0.8mm)であり、樹脂層43の厚みt2は、0.1〜0.5mmの範囲(例えば、0.5mm)で設定されている。
すなわち、金属板41、42の厚みt1については、打撃面10aの打撃により適切に振動する範囲として、上記範囲が選定される。また、樹脂層43の厚みt2については、厚みt2が0.1mmより薄いと制振効果が小さくなるし、薄すぎて樹脂層43の製造が困難になる。一方、厚みt2が、0.5mmより厚くても効果はあまり変わらず、厚すぎると樹脂の材料費が無駄となることから、上記範囲が選定される。もちろん、0.5mmより厚くても制振機能は果たすので、0.5mm以下に限定する必要はない。
樹脂の無駄を少なくしてコストを抑える観点からは、樹脂層43の厚みt2は、金属板41、42のうち薄い方の厚みt1よりも薄くするのが好ましい。なお、金属板41、42は、上記範囲内であればよく、同厚にする必要はない。
次に、ドラムパッド10の製法を説明する。
図3(a)は、ベース部40を除くドラムパッド10の金型による成形の様子を示す断面図である。
まず、樹脂材12、表側布状材20及び離型紙付き複合層35を所定の形状(例えば円形)で所定の厚みに形成したものを用意する(図2(a)、(b)、(d)参照)。樹脂材12の厚みは0.1mm程度、表側布状材20の厚みは0.2mm程度である。なお、樹脂材12、表側布状材20及び離型紙付き複合層35の平面視における元の形状は統一することなく、本体部14の成形後に本体部14といっしょに円形に切り出してもよい。
そして、表側布状材20の表面20aの側に樹脂材12の裏面12b(図2(a)参照)の側を熱融着する。これは、例えば、樹脂材12と表側布状材20とを重ね合わせたものを2つの熱したローラ間を通すことでなされる。
ここで、樹脂材12の融点は表側布状材20のそれよりも低いとする。しかも、樹脂材12は表側布状材20よりも薄い。従って、樹脂材12が溶融する温度で融着処理すると、図2(c)に示すように、表側布状材20の表面20aを含む側の領域に、溶融した樹脂材12が入り込んでいく。その領域は、表面20aから、樹脂材12の厚みに相当する境界部23までの領域である。そして、この状態で冷却されると、樹脂材12が入り込んだ領域において、樹脂材12と表側布状材20の上半部とが一体に固化してなる第1層部21が形成される。一方、表側布状材20の、第1層部21以外の領域(境界部23から表側布状材20の裏面20bまでの領域)が、ニット材のみでなる暫定第2層部22M1となる。
こうしてできた暫定複合層20M1において、表側布状材20の表面20aであった面が、樹脂材12が入り込んだ第1層部21の表面でもある表面20Maとなる。一方、表側布状材20の裏面20bは、そのまま暫定複合層20M1の裏面20Mbとなる。
次に、図3(a)に示すように、金型24内において、離型紙付き複合層35を、暫定裏側布状材32M1が上側となるように金型24の底部に敷くと共に、暫定複合層20M1を、暫定第2層部22M1が下側となるように金型24の天井側に設置する。そして、離型紙付き複合層35と暫定複合層20M1との間にゴム材13を注型し、反応させて本体部14を成形する。
具体的には、まず、二液型RTVゴムとなる液状のA剤とB剤を、秤量し、よく混合する。次に、金型24内に、上記混合したA剤及びB剤を注入し、金型24を閉じ室温で発泡固化させる。金型24内における、暫定複合層20M1の裏面20Mb側に当初生じている空間S1は、ゴム材13が発泡することでやがて充填状態となる。
ゴム材13が発泡する段階で、ゴム材13が、暫定複合層30M1の暫定裏側布状材32M1に、上側から含浸していく。含浸は粘着剤31との境界で止まる。ゴム材13が発泡して天井まで達すると、今度は、ゴム材13が、暫定複合層20M1の裏面20Mbから暫定第2層部22M1の領域に含浸していく。ただし、第1層部21には、樹脂材12が入り込んでいるためゴム材13が含浸せず、含浸は境界部23で止まる。この意味で、第1層部21は、暫定複合層20M1の表面20Maの側にゴム材13の成分が露出しないようにするためのストッパの役割を果たす。その後、アニールする。
これにより、本体部14の上側においては、暫定第2層部22M1は、ゴム材13が含浸した第2層部22M2となり、図1(b)に示すように、第2層部22M2と第1層部21とで表側複合層20M2が形成される。また、発泡固化したゴム材13でなる本体部14の上面14aに、表側複合層20M2の裏面20Mbが接合された状態となって、パッド部15が形成される。
一方、本体部14の下側においては、暫定裏側布状材32M1は、ゴム材13が含浸した裏側布状材32M2となり、裏側布状材32M2と粘着剤31とで裏側複合層30M2が形成される。また、発泡固化したゴム材13でなる本体部14の下面14b(図1(b)参照)に、裏側布状材32M2の表面32aが接合された状態となる。
ここで、ゴム材13が含浸した部分(第2層部22M2、裏側布状材32M2)と本体部14とは連接しており、ニットや不織布が両層を貫いて繋がっているため、接合強度が高い。しかも、接合のための接着剤等が不要であるので、製造工程が簡単で済む。なお、金型24の構成や向きは、例示したものに限られない。
図3(b)は、表側複合層20M2の模式図である。第1層部21と第2層部22M2とに、表側布状材20の繊維20cが入り込んで、アンカーのように食い込んでいるため、2つの層を結びつけるブリッジとして機能し、補強を図っている。これにより、第1層部21が第2層部22M2から剥がれにくくなるだけでなく、両層を繊維化して強化する機能も果たすので、打撃時に破れたりちぎれたりしにくくなる。これらは、表側布状材20がニットであっても不織布であっても同様である。
こうして、本体部14の表側、裏側に、表側複合層20M2、裏側複合層30M2が接合状態となったものを金型から取り出した後、別途作製しておいたベース部40を取り付ける。すなわち、裏側複合層30M2に貼り付いている離型紙33を剥がし、粘着剤31を露出させ、そこにベース部40の上面40a(第1金属板41の上面)を貼着乃至接着する。これにより、裏側布状材32M2の裏面32bにベース部40が固着状態となって、ドラムパッド10が完成する。
打撃面10aを打撃する際には、樹脂材12自体の伸縮性に加えて、表側布状材20の2wayストレッチ特性によって、大きな伸縮性が得られる。これにより、打撃箇所が局所的に変形し、且つ復元力も強いため、硬すぎる打撃感触にならず、スティック11が良く弾むようになる。
ところで、本実施の形態におけるベース部40は、3層構造で制振効果を高めているが、その制振効果を、3層構造でないものと比較する。この3層構造のものを「拘束型」と称する。比較対象として、第1金属板41の裏側に樹脂層43を設けただけのもの、すなわち、ベース部40から第2金属板42を除いたものを「非拘束型」と称する。また、第1金属板41のみのもの、すなわち、ベース部40から樹脂層43及び第2金属板42を除いて制振機能をなくしたものを「制振なし型」と称する。
図4(a)、(b)、(c)は、「制振なし型」、「非拘束型」、「拘束型」の、打撃時の実測に基づくベース部40の振動の加速度の減衰時間を示す図である。横軸に経過時間(s)、縦軸に振動の加速度(m/sec2)をとる。図5(a)、(b)、(c)は、「制振なし型」、「非拘束型」、「拘束型」の、打撃時の実測に基づくベース部40の振動の振幅を周波数ごとに示す図である。縦軸に振動の振幅(dB)、横軸に振動の周波数(Hz)をとる。
実測時において、加速度ピックアップをベース部40(型によって1層、2層または3層のいずれかである)の裏面の中心位置に配置し、打撃面10aの中心を一定荷重で打撃した。第1金属板41として電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)を採用し、樹脂層43として塩化ビニルを採用した。
この場合の実測した加速度は、ベース部40の上下方向の変位の程度を示し、振動の強さ乃至エネルギを示す尺度となる。図4(a)〜(c)からわかるように、振動は、「制振なし型」ではなかなか減衰せず、0.2s以降も振動が継続している。「非拘束型」では少し速くなり、0.2s付近でほぼ減衰する。「拘束型」では速やかに減衰し、0.02s付近でほぼゼロとなる。ノイズ成分の少ないダンピング効果が大きい良好な振動を実現する上で、ベース部40の振動が0.1s以内にほぼゼロに収束するのが好ましいとされるが、「拘束型」では、それを十分に満たしている。
また、好ましい制振効果を発揮するためには、高周波、特に周波数が80〜350Hzの範囲でのダンピング効果が重要である。図5(a)に示すように、「制振なし型」では100Hz付近での共振の山が非常に尖っており、200〜350Hzにおいても山がある。図5(b)に示す「非拘束型」でも同様の傾向であるが、山の尖りが少し小さくなった。これらに対し、図5(c)に示す「非拘束型」では、打撃音の発音に影響のない80Hzより低い領域に小さな山があるが、高周波の領域には共振の山がなくなっており、優れたダンピング効果が認められる。
本実施の形態によれば、表側布状材20に樹脂材12を熱融着して暫定複合層20M1を作成し、さらに、離型紙付き複合層35と暫定複合層20M1との間でゴム材13を発泡固化させて本体部14を成形した。
これにより、ベース部40が接着される前段階のドラムパッド10において、ニット材でなる裏側布状材32M2にはゴム材13が含浸していると共に、裏側布状材32M2の表面32aに本体部14が接合状態となっていて、裏側布状材32M2の裏面32bには粘着剤31が施されている。
従って、ゴム材13でなる本体部14には直接に付かない粘着剤31であっても、裏側布状材32M2を介して本体部14に付いた状態にすることができる。特殊でない粘着剤31を用いて金属が固着できるようになる結果、金属面を被接着面とするベース部40を、ゴム製のパッド部15の裏面(本体部14の下面14b)に対して強固に接着することを可能にすることができる。しかも、本体部14は、シリコーンゴムであるゴム材13でなるので、反発係数が大きく、打撃感触が良好となる。
また、樹脂材12が入り込んだ第1層部21と、ゴム材13が含浸した第2層部22M2とで、表側複合層20M2が形成され、しかも、表側複合層20M2は、ニット材等を基本としてなる。従って、スティック11の跳ね返り方向が、アコースティックドラムのものと同様となり、自然な打撃感触が実現される。さらに、樹脂材12が入り込んで固化した第1層部21が打撃面10aを提供するので、打撃時の静粛性向上や、打撃に対する強度向上が図られるだけでなく、ニット材が樹脂材12によって保護されることで、汚れ防止効果が高い。よって、打撃面10aの汚れ防止及び耐久性の維持を図ると共に、自然で良好な打撃感触を実現することができる。
また、1回の成形工程で、ゴム材13を、暫定裏側布状材32M1と暫定第2層部22M1とに含浸させることができるので、表、裏の両側を並行処理可能にして、製造工程を簡略化することができる。なお、ゴム材13を2段階で発泡させて、暫定裏側布状材32M1と暫定第2層部22M1とでゴム材13を含浸させる工程を分けてもよい。
また、ゴム材13として、シロキサン結合を持つシリコーンゴムを採用することで、液状ゴムとして注型しやすいだけでなく、反発性、耐候性に優れたドラムパッドを作るのに有効である。また、ゴム材13として、発泡ゴムを採用することで、やわらかく弾む打面を作るのに有効である。
本実施の形態によればまた、パッド部15の裏側(本体部14の下面14b)に配設され、打撃センサ19が配設されるベース部40が、第1金属板41と第2金属板42との間に樹脂層43が介在してなる3層構造であるので、メカニカルな打撃音を抑制すると共に、打撃による高周波のダンピング効果を大きくして、打撃検出に基づいて発音する場合における誤発音を防止することができる。また、雑音が少なく均一である。
また、金属板41、42の厚みt1を、0.3〜2.3mm、樹脂層43の厚みt2を0.1〜0.5mmに設定したので、コストを抑えつつ高周波のダンピング効果を適切に確保することができる。
また、金属板41、42は同一構成としたので、部品点数を削減して構成を簡単にすることができる。
ところで、本実施の形態では、裏側布状材32M2の裏面32b(暫定裏側布状材32M1の下面)に設けるものは、粘着剤31でなる固着層であったが、これに限られず、接着剤でなる固着層であってもよい。その場合、例えば、ホットメルトタイプの接着フィルムを暫定裏側布状材32M1の下半分の領域に染みこませて融着し、本体部14の成形の前または後に、ベース部40に対して融着する。あるいは、液状接着剤をベース部40に塗布し、その塗布した面に暫定裏側布状材32M1を置き、暫定裏側布状材32M1の下半分の領域に液状接着剤が染みこんだ状態で硬化させ、一体化させる。その後、本体部14の成形によりゴム材13を暫定裏側布状材32M1に染み込ませて一体化させる。
ところで、本実施の形態では、本体部14は、打撃感触を高めると共に耐候性を高めるために、ゴム材13を採用したが、一般に、シリコーン系のゴムには、ウレタン系フィルムや金属を接着するのが困難である。ところが、本実施の形態では、ニット材等の表側布状材20や裏側布状材32M2を介して本体部14との接合を実現したので、シリコーン系のゴムの採用が容易となった。
特に、ベース部40は、金属板41、42を有して重いため、従来であれば、固着が困難なシリコーン系のゴムを採用できなかったが、ゴム材13の含浸を用いた固着手法によって、ベース部40のような複数層構造の制振鋼板とシリコーン系のパッド部という組み合わせが実現容易になった。
さらに、ゴム材13が表側布状材20に含浸する際、含浸速度が場所によってばらつくことが考えられる。ところが、本実施の形態では、第1層部21が、ゴム材13の含浸を境界部23で止める機能を有するので、含浸領域にばらつきが生じるおそれがない。これにより、打撃面10aを、滑らかで特性が均一な状態にすることができる。
ところで、ドラムパッド10の金型による成形方法は、上記例示したものに限られず、図6に示すような工程を採用してもよい。
例えば、図6(a)に例示するように、成形に際し、離型紙付き複合層35と暫定複合層20M1との金型24内での設置位置を上下逆にしてもよい。
あるいは、上記した図3(a)で示した成形工程においては、離型紙付き複合層35を、金型24の底部にセットしたが、図6(b)に示すように、暫定複合層30M1にベース部40を予め接着したものをセットしてもよい。すなわち、離型紙付き複合層35から離型紙33を剥がし、ベース部40を接着したものを金型24の底部にセットしてから、上記と同様に成形する。
なお、ゴム材13の素材としても各種の変形例が考えられる。上記実施の形態では、ゴム材13として、発泡ゴムを採用したが、無発泡ゴムを採用してもよい。例えば、液状のシリコーンを発泡させずに硬化させて作る無発泡シリコーンゴム、あるいは、液状のウレタン樹脂を発泡させずに硬化させて作る無発泡ウレタンゴムを採用することができる。
例えば、図6(a)の成形工程を採用し、金型24には蓋型(図示せず)を設けておく。暫定複合層20M1の上に、無発泡樹脂であるゴム材13を注型し、離型紙付き複合層35と共に蓋型を被せて、加圧、加熱硬化させると、蓋型により全体の形が規定されて本体部14が成形される。ゴム材13の一部は、下側の金型と蓋型との隙間からはみ出す。
また、ゴム材13として液状樹脂ではなく、未加硫のゴムコンパウンドを採用してもよい。例えば、ゴム材13の素材としてNR(天然ラバー)及びBR(ブタジエンラバー)を主とするゴム素材を採用することができる。当該ゴム素材の配合率は、重量部で、NRが40部、BRが60部に対して、加える副資材として、酸化亜鉛が3部、ステアリン酸が1部、硫黄が6部、炭酸カルシウムが15部、カーボンが10部である。これらを、ロールにて混練してコンパウンドであるゴム材13を作製する。
例えば、図6(a)の成形工程を採用し、金型24には蓋型(図示せず)を設けておく。暫定複合層20M1の上に、無発泡で未加硫のゴムコンパウンドである上記ゴム材13を置く。そして、離型紙付き複合層35と共に蓋型を被せて、160°Cで10分間、加圧、加熱する。すると、ゴム材13がまず軟化し、暫定裏側布状材32M1と暫定第2層部22M1とに含浸して、裏側布状材32M2、第2層部22M2となる。ゴム材13の一部は、下側の金型と蓋型との隙間からはみ出す。また、加硫が進んで、弾力のあるゴムである本体部14となる。
ゴム材13として未加硫のゴムコンパウンドを採用する例として、さらに発泡剤(例えば、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(分解温度160°C))を4部加えたものを採用してもよい。これらを、ロールにて混練してコンパウンドであるゴム材13を作製する。
例えば、図6(a)の成形工程を採用し、金型24には蓋型(図示せず)を設けておく。暫定複合層20M1の上に、無発泡、未加硫のゴムコンパウンドである上記ゴム材13を置く。そして、離型紙付き複合層35と共に蓋型を被せて、160°Cで10分間、加圧、加熱する。すると、ゴム材13がまず軟化し、暫定裏側布状材32M1と暫定第2層部22M1とに含浸して、裏側布状材32M2、第2層部22M2となる。ゴム材13は、軟化ゴム材となり、その一部は、下側の金型と蓋型との隙間からはみ出す。その後、軟化ゴム材が発泡し始めると同時に、加硫も始まるため、金型の圧力を徐々に下げていく。すると、発泡圧によって、軟化ゴム材が膨らみ、金型内の空間を発泡充填して、本体部14となる。
これら、ゴム材13の材料を変える場合においても、離型紙付き複合層35と暫定複合層20M1との金型24内での設置位置の上下は問わず、また、成形の前に、暫定複合層30M1にベース部40を接着しておいてもよい。
上記実施の形態で説明したように、本体部14に採用する素材は、発泡性シリコーンゴムに限定されず、非シリコーンのゴムや無発泡性ゴムであってもよい。例えば、発泡性では、ウレタンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム等が採用可能である。無発泡性では、シリコーンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム等が採用可能である。
ところで、ベース部40は、3層構造としたが、金属板を一番上として、金属板と樹脂層を交互に積層する4層以上の構造としてもよい。例えば、上側から第1金属板41、樹脂層43、第2金属板42、樹脂層43、第1金属板41という順番で積層された5層構造でもよい。なお、ベース部40において、金属板に代えてアクリル板等を採用してもよい。
なお、打撃センサ19は、必ずしもベース部40の下面40bに配設される必要はない。例えば、ベース部40における下面40b以外の部位、本体部14の内部、あるいは本体部14とベース部40との間に配設してもよい。