JP5542718B2 - 樹脂成形方法および金型装置 - Google Patents

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Description

本発明は、意匠面を有する樹脂外装部品等の樹脂成形品を得る樹脂成形方法に関し、特に、意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない高品位メタリック調の外観を得るための樹脂成形方法およびその樹脂成形方法に用いられる金型装置に関するものである。
アルミニウム、マイカ、ガラスフレークなど、メタリック調コンパウンドを含有する光輝成形材料にて意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない高品位メタリック調外観を得る従来の方法として、例えば、特許文献1に提案された樹脂成形方法がある。この樹脂成形方法では、金型間に形成されたキャビティ内へ射出された溶融樹脂が、意匠面に影響を及ぼす形状部へ先行して流動することを制限して、意匠面への樹脂の流動を妨げることなく、キャビティ内に溶融樹脂が充填される手法を採用している。
図12Aは特許文献1において発明として記載された樹脂成形品の意匠裏面を示す正面図、図12Bは図12AのA−A線矢視断面図である。また、図13Aは特許文献1において従来製品として記載されている樹脂成形品の意匠裏面を示す正面図、図13Bは図13AのB−B線矢視断面図である。
図13A、図13Bに示すように、従来の樹脂成形品100では、樹脂成形品100の幅方向に延びるリブ102や樹脂成形品100の長手方向に延びるリブ103が、意匠面101の裏面から直接突出している。したがって、この従来の樹脂成形品100を製造する金型に形成されたキャビティに、樹脂流動口であるゲート104から溶融樹脂が射出された際に、溶融樹脂がリブ102やリブ103から意匠面101に流動し、この結果、意匠面101に、樹脂の流動模様である配向ラインなどが発生して、意匠面101に悪影響を及ぼしていた。
これに対して、図12A、図12Bに示す、特許文献1において発明として記載された樹脂成形品110では、意匠面111の裏面から突出するように形成された、樹脂成形品110の幅方向に延びるリブ112a、112b,112c,112dを介して、樹脂成形品100の長手方向に大きく延びるリブ113が連接され、リブ113と意匠面111とはリブ112a,112b、112c,112d以外では分離された構成としている。その結果、この樹脂成形品110では、金型において樹脂流動口であるゲート114からキャビティに溶融樹脂が射出されると、まず、リブ112aを介して意匠面111に溶融樹脂が充填された後、リブ112aを介してリブ113にも溶融樹脂が充填される。ここで、リブ112aから充填される溶融樹脂はリブ113を形成するが、その過程で通過するリブ112b、112c,112dが細く、且つ流動方向に対して逆らう向きに立っており、また厚みも薄いので、リブ113の方向から意匠面111である方向には溶融樹脂は流動することができない。そのため、意匠面111に溶融樹脂が充填される過程において、意匠面111への樹脂の流動が阻害される(すなわち、他の箇所から合流する樹脂の流動がない)ことになる。この作用によって、意匠面111に、ウエルドや、樹脂の流動模様である配向ラインの出ないように図られている。
ここで、図14に示すように、成形樹脂141中のコンパウンド142は、成形時の樹脂の流れ143,144により、一定の方向に並ぶことが多い。金型内部の樹脂成形空間で、流れ方向が異なる流動樹脂同士がぶつかると、その合流した界面145では、樹脂の流れる方向が急激に変わる。この急激な流れの方向の変化に沿ってコンパウンド142の流れも変わる。この合流した界面のコンパウンド142の配列の変化が、配向ラインである。この配向ラインは、樹脂成形品の表面に金属光沢を出す為に、メタリック調コンパウンド(アルミ、マイカ、ガラスフレーク)を含有した樹脂材料を成形した樹脂成形品の概観に、発生することが多い。
また、アルミ、マイカ、ガラスフレークなど、メタリック調コンパウンドを含有する光輝成形材料にて意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない高品位メタリック調外観を得る他の方法として、例えば特許文献2、3に提案された樹脂成形方法がある。これらの樹脂成形方法では、金型のキャビティ内へ溶融樹脂が射出される際に流動する経路において、樹脂が分流したり、樹脂の流れを妨げたりする要因となる凹凸形状部分を金型のキャビティからなくす方法を用いている。そして、このような方法によって、意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインを発生させないように図っている。
ここで、図15は、特許文献2に記載された樹脂成形方法を示すものである。この樹脂成形方法は、製品(樹脂成形品)では凸形状部であって金型では凹形状部であるボス形状部を形成するものである。図15に示すように、ボス形状部を形成するために、一方の金型(下金型)121に可動ピン122を摺動自在に配設し、また、可動ピン122を上方に付勢する弾性手段124を可動ピン122の下面部に付加している。なお、図15における123は他方の金型(上金型)であり、金型121、123によって、樹脂が導入される空間であるキャビティ125が形成されている。上記構成において、溶融樹脂が、最終的にはボス形状部となる箇所を通過する時点では、金型121におけるキャビティ125に臨む箇所には凹形状部が存在していない。そして、キャビティ125内に溶融樹脂が充填された後に溶融樹脂の圧力によって可動ピン122が弾性手段124に抗して、金型121において凹形状となる方向に摺動することで、ボス形状部を製品(樹脂成形品)に形成している。
この樹脂成形方法によれば、例えば、キャビティ125における他方の金型(上金型)123に臨む箇所に意匠面が設けられる場合でも、溶融樹脂が意匠面に沿って流動する過程において、金型121におけるキャビティ125に臨む箇所に凹形状部が存在しないので、樹脂流動乱れが発生しないことになる。それらの作用によって意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない製品形状が実現される。
図16は、特許文献3に記載された樹脂成形方法を示すものである。この樹脂成形方法も、製品では凸形状部であって金型では凹形状部であるボス形状部を形成するものである。但し、この樹脂成形方法では、図16に示すように、ボス形状部を形成するために、一方の金型(下金型)131より突出可能な可動ピン132を摺動自在に配設するとともに、この可動ピン132を、金型131からキャビティ133内に突出させる駆動手段134を可動ピン132の下方に配設している。なお、図16における135は、成形時に金型(下金型)131と協働してキャビティ133を形成する他方の金型(上金型)である。
この構成において、溶融樹脂が、最終的にはボス形状部となる箇所を通過する時点では、可動ピン132をキャビティ133内に突出させない一方で、キャビティ133内に樹脂が充填された後には、駆動手段134により可動ピン132がキャビティ133内に突出させることで樹脂成形品に凹部形状部を形成するものである。そのため、キャビティ133における他方の金型(上金型)135に臨む箇所に意匠面が設けられる場合でも、意匠面を溶融樹脂が流動するその過程において樹脂流動乱れが発生し難くなることになる。それらによって意匠面にウエルドや樹脂流動模様である配向ラインのない製品形状が実現される。
特開2008−49652号公報(第5頁−第8頁、図2、図3、図7) 特開平8−72067号公報(第2頁−第3頁、図1−図4) 特開2000−301583号公報(第2頁−第3頁、図3等)
前記特許文献1に記載された樹脂成形方法(従来の樹脂成形方法)は、光輝成形材料にて製品(樹脂成形品)の意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない高品位メタリック調の外観を得るために、溶融樹脂がキャビティ内で流動する過程において、樹脂流動口であるゲート114から意匠面111に沿う溶融樹脂の流動に対して、意匠面111以外から流動して意匠面111へ流動して合流することを制限することで、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの発生を防ぐものである。したがって、この樹脂成形方法によれば、意匠面111を溶融樹脂が流動するキャビティ内の経路において、樹脂の分流や流動の妨げの要因となるような凹形状部や凸形状部(凹凸形状部と称す)がキャビティ内に存在した場合には、その樹脂の流動乱れを改善し、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインをなくすことができないという課題が生じる。
具体的には、例えば製品の意匠面111に丸穴形状部等の抜き穴が存在する場合、金型のキャビティ内の意匠面を流動する溶融樹脂は抜き穴形状部に対応する凸形状部にて2方向に分流されて前記凸形状部の周囲を通って合流し、この合流部分でウエルドや樹脂の流動模様である配向が生じてしまう。また、抜き穴形状部でなくても、樹脂流動を妨げるような製品の凹形状部、金型では凸形状部がある場合は、樹脂の流動が妨げられ、その結果、意匠面111にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発生することになる。
前記特許文献2,3による従来の樹脂成形方法は、溶融樹脂がキャビティ125、133内に射出されて流動する際の流動経路において、樹脂の分流や流動の妨げの要因となるキャビティ125、133内の凹凸形状部分をなくすことによって、樹脂流動中の乱れによるウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインを意匠面に発生させない方法である。
しかしながら、この特許文献2,3による従来の樹脂成形方法においても、同様に、製品の意匠面に丸穴形状等の抜き穴が存在する場合、金型121、123、131、135のキャビティ125、133内の意匠面を流動する溶融樹脂は抜き穴形状部に対応する凸形状部にて2方向に分流されて前記凸形状部の周囲を通り合流し、この合流部分でウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが生じてしまう。
また、特許文献3による従来の樹脂成形方法は、キャビティ133内に樹脂が充填された後、駆動装置134によって可動ピン132をキャビティ133内に突出させることで製品に凹形状部を成形するものである。この時、可動ピン132をキャビティ133の厚みと等しい位置まで移動させることで、溶融樹脂がキャビティ133内を流動している際にはキャビティ133に抜き穴形状部に対応する凸形状部がないため、分流されることなく、樹脂の流動乱れも発生せずに、最終的に製品に抜き穴形状部が得られる。しかしながら、この場合に、抜き穴形状部での抜き面積が大きいと、可動ピン132を移動させる駆動装置133に極めて大きな力が必要となり、この力が不十分であった場合には、抜き穴形状部に相当する溶融樹脂を完全に押し切ることができずに、抜き穴形状部が不良状態になるおそれがある。さらに溶融樹脂の充填後、金型内において、抜き穴形状部をそのまま打ち抜きで形成する手法も考えられるが、後処理等に多くの手間や時間がかかったり、形成状態が良好でなくなるおそれがあったりして、合理的ではない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、溶融樹脂が流動するキャビティ内の経路において、樹脂の分流や流動の妨げの要因となるような金型の凸形状部などがキャビティ内に存在した場合でも、意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない高品位の外観を得ることができる樹脂成形方法および金型装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の樹脂成形方法は、溶融された樹脂を、互いに対向して配置された金型間に形成されたキャビティ内に射出して樹脂成形品を形成する樹脂成形方法であって、前記金型における少なくともキャビティに臨む表面部を樹脂のガラス転移温度以上に昇温させる昇温工程と、樹脂の流動を制限する流動堰を前記キャビティに対して出退自在に配設させ、前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて前記キャビティにおける所定の制限領域への樹脂の流入を制限した状態で、溶融させた樹脂を前記キャビティ内に射出する射出工程と、前記射出工程での射出開始後に、前記キャビティから退出して流動堰を樹脂の流動を制限しない位置に移動させる制限解除工程と、キャビティ内に充填された樹脂を冷却させて固化させる固化工程と、前記固化した樹脂を金型より取り出して樹脂成形品を得る取出工程とを有し、前記制限領域は、前記キャビティにおける、樹脂の分流や流動の妨げの要因となる凹凸形状の部分が含まれている凹凸形状形成用領域であることを特徴とする。
この方法によれば、前記キャビティ内に樹脂が流入された際に、樹脂の合流部でウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発生した場合でも、その後、流動堰がキャビティから退出されて、合流部の樹脂が制限領域へ流入することで、制限領域以外の箇所でのウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの発生を防止することができる。したがって、樹脂成形部品に凹凸形状部が設けられて、これに対応するように金型のキャビティ内に凸形状部分や凹形状部分がある場合でも、樹脂成形部品の凹凸形状部が設けられる箇所だけにウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが生じ、樹脂成形部品の意匠面などには、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの発生を防止できる。また、キャビティ内に樹脂が流入される際には、金型における少なくともキャビティに臨む表面部が樹脂のガラス転移温度以上に昇温されるので、樹脂流動の合流部に発生するウエルドについても防止することができる。
また、本発明の樹脂成形方法は、溶融された樹脂を、互いに対向して配置された金型間に形成されたキャビティ内に射出して樹脂成形品を形成する樹脂成形方法であって、前記金型における少なくともキャビティに臨む表面部を樹脂のガラス転移温度以上に昇温させる昇温工程と、樹脂の流動を制限する流動堰を前記キャビティに対して出退自在に配設させ、前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて前記キャビティにおける所定の制限領域への樹脂の流入を制限した状態で、溶融させた樹脂を前記キャビティ内に射出する射出工程と、前記射出工程での射出開始後に、前記キャビティから退出して流動堰を樹脂の流動を制限しない位置に移動させる制限解除工程と、キャビティ内に充填された樹脂を冷却させて固化させる固化工程と、前記固化した樹脂を金型より取り出して樹脂成形品を得る取出工程とを有し、流動堰が複数のゾーンに分割されて複数設けられ、前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて樹脂の制限領域への流動を制限した状態から、制限領域への流動を許容するようにキャビティから後退させるに際し、流動制限状態で樹脂が合流した箇所の近くのゾーンから順番に、前記流動堰を後退させることを特徴とする。
この方法によれば、流動堰をキャビティ内への突出状態から後退させるに際し、流動制限状態で樹脂が合流した箇所の近くのゾーンから順番に、流動堰を後退させるので、樹脂が制限領域へ流入するにあたって、流動圧力の樹脂流動圧力の少ない部分からの流動となり、合流部近傍の流動末端ゾーンから流動したあとは、周囲から均等に樹脂が前記制限領域へ流入するため、前記制限領域以外の箇所に意匠面が設けられる場合に、前記意匠面にはウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発生しない。
また、本発明の樹脂成形方法は、溶融された樹脂を、互いに対向して配置された金型間に形成されたキャビティ内に射出して樹脂成形品を形成する樹脂成形方法であって、前記金型における少なくともキャビティに臨む表面部を樹脂のガラス転移温度以上に昇温させる昇温工程と、樹脂の流動を制限する流動堰を前記キャビティに対して出退自在に配設させ、前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて前記キャビティにおける所定の制限領域への樹脂の流入を制限した状態で、溶融させた樹脂を前記キャビティ内に射出する射出工程と、前記射出工程での射出開始後に、前記キャビティから退出して流動堰を樹脂の流動を制限しない位置に移動させる制限解除工程と、キャビティ内に充填された樹脂を冷却させて固化させる固化工程と、前記固化した樹脂を金型より取り出して樹脂成形品を得る取出工程とを有し、樹脂が合流する箇所に、キャビティに対して出退自在の合流堰が設けられており、前記合流堰により合流面を設定させて合流させることを特徴とする。
この方法によれば、キャビティ内へ樹脂が流入して合流する際の合流面を設定させることができるので、合流部にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが残らないような合流面を設定できる。
また、本発明の金型装置は、互いに対向して着脱自在に配設され、対となった金型を有し、これらの金型間に、溶融された樹脂が充填されるキャビティが形成された金型装置であって、前記キャビティに対して出退自在の流動堰が設けられ、前記流動堰は、前記キャビティ内に樹脂を射出開始する際には、キャビティ内に突出して所定の制限領域への樹脂の流入を阻止し、前記制限領域以外の領域に流入した樹脂が合流した際に前記キャビティから退出して前記制限領域への樹脂の流入を許容させ、前記キャビティに対して出退自在の合流堰が設けられ、前記合流堰は、前記制限領域以外の領域に流入した樹脂が合流しようとする際にキャビティに突出されて樹脂の合流面を設定させることを特徴とする。
この金型装置の構成によれば、前記樹脂成形方法を良好に行うことができる。
以上のように、本発明の樹脂成形方法によれば、外装部品の意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない高品位メタリック調外観を塗装などの後処理を施すことなく得ることができる。
本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法に用いる金型装置の正面断面図 同実施の形態1に係る樹脂成形方法に用いる金型装置(可動側金型)の平面図 同実施の形態1に係る樹脂成形方法の概略的な工程を示す正面縦断図 本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法により製造した樹脂成形品を示す斜視図 従来の樹脂成形品を示す斜視図 同実施の形態1に係る樹脂成形方法の工程をそれぞれ示す可動側金型の平面図 同実施の形態1に係る樹脂成形方法の工程をそれぞれ示す可動側金型の平面図 同実施の形態1、2に係る樹脂成形方法の工程を示す可動側金型の平面図 配向ラインの発現メカニズムを示す断面図 本発明の実施の形態2に係る樹脂成形方法に用いる金型装置の正面断面図 同実施の形態2に係る樹脂成形方法に用いる金型装置の平面図 同実施の形態2に係る樹脂成形方法の工程を示す可動側金型の平面図 同実施の形態2に係る樹脂成形方法の工程を示す可動側金型の平面図 従来の樹脂成形品の意匠裏面を示す正面図 図12AのA−A線矢視断面図 他の従来の樹脂成形品の意匠裏面を示す正面図 図13AのB−B線矢視断面図 配向ラインが発生する状況を説明する図 さらに他の従来の金型の要部断面図 同他の従来の金型の断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法に用いる金型装置の正面断面図および可動側金型の平面図、図3は同実施の形態1に係る樹脂成形方法の概略的な工程を示す正面断面図、図4は本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法により製造した樹脂成形品を示す斜視図、図5は従来の樹脂成形品を示す斜視図、図6A、図6B、および図7は同実施の形態1に係る樹脂成形方法の工程をそれぞれ示す可動側金型の平面図である。
まず、図4を参照しながら、本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法により製造する樹脂成形品について説明する。
図4における20は本発明の実施の形態に係る樹脂成形方法により製造される樹脂成形品である。この樹脂成形品20は意匠面22を有しており、この意匠面22により、アルミ、マイカ、ガラスフレークなど、メタリック調コンパウンドを含有する光輝成形材料にて高品位のメタリック調外観を得るよう図られている。また、樹脂成形品20における意匠面22ではない箇所、この実施の形態では、段差部23(段差部の厚みt)を介して浅く窪んだ部分に、他の部品を組付けるためなどの凹凸形状部21が複数形成されている制限領域としての凹凸形状部領域24が設けられている。この凹凸形状部領域24には、凹凸形状部21である、リブ形状部21A、ボス形状部21B、21C、樹脂成形時の逃がしとなる抜き穴形状部21Dや窪み(凹み)21E、後述するカバー30を取り付けるための穴抜き形状部21Fなどが形成されている。なお、樹脂成形品20の凹凸形状部領域24は、外側となる面が意匠面とされたカバー30で覆われるよう構成されている。カバー30の裏面には、樹脂成形品20に装着するための、爪部31が複数形成されており、爪部31の先端が、樹脂成形品20の凹凸形状部領域24に形成されたカバー取付用の穴抜き形状部21Fに係止されるよう構成されている。
次に、図1および図2により、本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法に用いる金型装置について説明する。
図1および図2に示すように、金型装置は、第1の金型としての固定側金型1を備えた固定側金型装置3と、第2の金型としての可動側金型2を備えた可動側金型装置4とから構成されている。固定側金型1と可動側金型2とは対向して配設され、固定側金型1は固定されている一方、可動側金型2は、固定側金型1に対して、密着姿勢と離間姿勢とにわたって移動可能に構成されている。また、固定側金型1と可動側金型2との間には、互いに密着された際に溶融樹脂が充填される空間であるキャビティ9が形成されている。固定側金型1におけるキャビティ9に臨む表面部1aには、樹脂成形品20の意匠面22を形成する意匠形成面が設けられている。なお、本実施の形態では図1などにおいて、第1の金型としての固定側金型1を備えた固定側金型装置3が上側に配設され、第2の金型としての可動側金型2を備えた可動側金型装置4が下側に配設されている場合を図示しているが、これに限るものではなく、上下位置が逆に配置させたり、或いは左右など横方向に対向させて配置させたりしていてもよい。
固定側金型装置3には、溶融された樹脂を射出する射出成形機のノズル10が接合(装着)される。また、図示しないが、固定側金型1には、固定側金型1のキャビティ9に臨む表面部1aを、樹脂のガラス転移点温度(Tg点)以上に加熱する加熱装置が備えられている。また、可動側金型2には、可動側金型2のキャビティ9に臨む表面部2aを、樹脂のガラス転移点温度(Tg点)以上に加熱する加熱装置が備えられている。
固定側金型1や可動側金型2には、溶融した樹脂をキャビティ9に送り込むためのスプル11、ランナ12、ゲート13が形成されている。また、固定側金型1や可動側金型2におけるキャビティ9に臨む箇所には、樹脂成形品20の凹凸形状部領域24に形成される複数の凹凸形状部21を形成するための凹状部7A、7Bや凸状部8A、8B、8C、8Dが形成されている。すなわち、リブ形状部21Aを形成するための凹状部7A、ボス形状部21Bの穴部を形成するための凸状部8A、ボス形状部21Cを形成するための凹状部7B、抜き穴形状部21Dを形成するための凸状部8C、逃がしとなる窪み21Eを形成するための凸状部8B、穴抜き形状21Fを形成するための凸状部8Dが、固定側金型1や可動側金型2におけるキャビティ9に臨む箇所に配設されている。
さらに上記構成に加えて、可動側金型2には、キャビティ9内での樹脂の流動を妨げる複数のインサートブロックからなる流動堰5がキャビティ9に対して出退自在に配設されている。ここで、流動堰5は、キャビティ9における、樹脂成形品20の意匠面22と凹凸形状部領域24との境界部(段差部23が形成されている箇所)と合致するように、キャビティ9の凹凸形状部領域24に対応する箇所(凹凸形状形成用領域9aと称す)の周囲を囲むように出退自在に配設されている。これらによって、溶融樹脂がキャビティ9内に流入した際に、キャビティ9における凹凸形状形成用領域9a以外の領域(意匠面等形成用領域9bと称す)から凹凸形状形成用領域9a内へ溶融樹脂が直接流入することを阻止する役割を果たす。また、流動堰5は、樹脂の流入方向に沿って複数のゾーンZ1〜Z6(図2参照)に区分されており、キャビティ9に対する出退動作を各Z1〜Z6の流動堰5がそれぞれ個別に制御可能に構成されている。
次に、本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法を概略的に説明する。
本発明の実施の形態に係る樹脂成形方法は、第1の金型としての固定側金型1と第2の金型としての可動側金型2とを昇温するとともに型締めする昇温工程(図3の上部分および中央部分を参照:型締め昇温工程)と、可動側金型2からキャビティ9内に出退自在に配設された流動堰5を、樹脂流動経路を制限する制限状態(制限領域としての凹凸形状形成用領域9a内への溶融樹脂の流入を制限する制限状態)にして、溶融させた樹脂をキャビティ9内に射出する射出工程と、射出工程での射出開始後(キャビティ9内に樹脂が流入して流動する樹脂が合流したタイミング)に、流動堰5を樹脂の流動を妨げない(制限しない)位置に移動させる制限解除工程と、キャビティ9内に充填された樹脂を冷却固化させる固化工程と、前記固化した樹脂を固定側金型1および可動側金型2より取り出して所望の樹脂成形品55(樹脂成形品20)を得る取出工程(図3の下部分を参照)とを有している。
前記昇温工程では、固定側金型1と可動側金型2とを射出成形機の射出動作に対応させて前もって密着させるが、この際に、固定側金型1および可動側金型2の少なくとも表面部(キャビティ9に臨む面)1a、2aは、樹脂のガラス転移点(Tg点)以上の温度に昇温されて保持された状態で密着される。
前記制限状態では、可動側金型2の表面部2aから出退する樹脂流動堰5を、キャビティ厚みの高さhに達するまで、すなわち、固定側金型1の表面部1aに達するまで突出させて、キャビティ9内に樹脂が充填された際に、樹脂が、その流動を乱す要因となる凹凸形状形成用領域9aを避けて流動するよう予め設定される。
前記射出工程では、射出成形機の射出シリンダ(図示せず)にて溶融された樹脂が、射出成形機のノズル10より、スプル11、ランナ12、ゲート13を介して、固定側金型1と可動側金型2との間のキャビティ9内に射出される。
前記制限解除工程では、樹脂流動状態に沿って最適な流動となるべく、流動堰5を、ゾーン毎に制御しながら、樹脂の流動に沿ったタイミング(キャビティ9内に樹脂が流入して流動する樹脂が合流したタイミング)で可動側金型2の表面部2aまで順次後退させ、樹脂の流動経路を妨げている流動堰5をなくし、樹脂が凹凸形状形成用領域9a内に流入するようにコントロールする。
前記固化工程では、溶融された樹脂が凹凸形状形成用領域9aを含めてキャビティ9内に充填された後、固定側金型1と可動側金型2とが溶融樹脂のガラス転移点温度(Tg点)以下になるまで所定の時間にて冷却して樹脂を固化させる。
前記成形品取出工程では、可動側金型2を移動させて、固定側金型1から可動側金型2を分離させ、前記固化した樹脂を取り出して所望の樹脂成形品55を得る。なお、樹脂成形品55の不要部分が除かれるなどして、製品としての樹脂成形品20が得られる。
この樹脂成形方法により、製造された樹脂成形品20において、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインからなる不良品位部29が発生した場合でも、この不良品位部29が、カバー30で覆われる凹凸形状部領域24だけに発生するようにしている。これにより、カバー30で覆われた樹脂成形品20の高品位メタリック調の外観が良好に維持できるようになっている。
以下に、本発明の実施の形態1に係る樹脂成形方法や樹脂成形品20について、さらに詳しく説明する。
まず、本発明の樹脂成形方法により製造した樹脂成形品20と、従来の一般的な樹脂成形品60との差異などについて説明する。図5は、従来の一般的な樹脂成形品60を示し、本実施の形態に係る樹脂成形品20と同様に、外観表面に意匠面22が設けられるとともに、他部品との組み合わせるための凹凸形状部21(リブ形状部21A、ボス形状部21B、ボス形状部21C、抜き穴形状部21D、窪み(凹み)21Eなど)が設けられている。しかし、従来の樹脂成形品60では、本実施の形態に係る樹脂成形品20と異なって、凹凸形状部21が、樹脂成形品60における意匠面22の裏面に、直接設けられている。このように、他部品との組み合わせるための凹凸形状部21が必要である場合、成形時において凹凸形状部21の影響により意匠面22にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインからなる不良品位部29が発生し、この不良品位部29により意匠面22の品位が低下する。
そのため本実施の形態に係る樹脂成形品20では、その外観表面に設けられた意匠面22に対して、図4に示すように、他部品の組み込みのための複数の凹凸形状部21(リブ形状部21A、ボス形状部21B、ボス形状部21C、抜き穴形状部21D、窪み(凹み)21E、穴抜き形状部21Fなど)を有するエリアである凹凸形状部領域24のみに、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインからなる不良品位部29を発現させている。そして、所定の意匠面22である外観を確保するため、凹凸形状部領域24と意匠面22との境界部に段差部23を形成し、凹凸形状部領域24の上面に、意匠面となる別部品のカバー30をはめ込むことで、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインなどの不良品位部29が発現している凹凸形状部領域24を隠蔽している。この結果、外観表面の全体にわたって意匠面(樹脂成形品20の意匠面22とカバー30の意匠面)にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインなどの不良品位部29のないメタリック調外観を得ている。
ただし、一般的にこのような樹脂成形品20において、アルミ、マイカ、ガラスフレークなど、メタリック調コンパウンドを含有する光輝成形材料にて意匠面を成形する場合、溶融樹脂は複数の凹凸形状部21が設けられるキャビティ9の凹凸形状形成用領域9a(樹脂成形品20の凹凸形状部領域24に対応する領域)を必ず流動してから、凹凸形状形成用領域9a以外の外観表面領域である意匠面等形成用領域9bを流動する。この時、凹凸形状形成用領域9aでの樹脂の分流や流動の妨げにより、意匠面等形成用領域9bにおいてもウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインからなる不良品位部29が発生し、例え、凹凸形状形成用領域9aに対応する凹凸形状部領域24の上面に隠蔽用の別部品のカバー30を取り付けたとしても外観表面の全体にわたって意匠面に所定の外観を得ることにはならない。
これに対処すべく、本発明の実施の形態では、上記の樹脂成形方法を用いて、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインからなる不良品位部29を、凹凸形状形成用領域9aに対応する凹凸形状部領域24内だけに発現させている。この樹脂成形方法の、より詳しい実施の形態は、以下の通りとなる。
上記したが、図1に示すように、まず、複数のインサートブロックからなる流動堰5を、固定側金型1に対向する可動側金型2に、キャビティ9の厚さの高さh(固定側金型1の表面部1aの位置)まで突出した状態から、可動側金型2の表面部2aの位置に退出した状態まで、個別に出退自在に配設している。
また、図4などに示すように、樹脂成形品20における外装表面全体の意匠面22に対して他部品の組み込みのための複数の凹凸形状部を有する凹凸形状部領域24に凹部となる段差t(段差部23)をつけ、この凹凸形状部領域24の上面に、意匠面となる別部品のカバー30をはめ込む構成としている。しかし、可動側金型2に配設された複数の個別に出退(摺動)可能な流動堰5は、キャビティ9の凹凸形状形成用領域9a(樹脂成形品20における凹凸形状部領域24に相当する部分)と意匠面等形成用領域9bとの境界部分と合致するように配設されている。これらによって、溶融樹脂がキャビティ9を流動するにあたって、凹凸形状形成用領域9a内へ溶融樹脂が直接流入することを阻止する。
また、図2に示すように、溶融樹脂の射出口であるゲート13から、樹脂が流動する経路に沿って個別に出退可能な複数の流動堰5を複数のゾーンZ1〜Z6(本実施の形態では6つのゾーン)毎に出退可能に設定している。ゲート13から射出された溶融樹脂は流動堰5によってその流れが分けられてキャビティ9の意匠面等形成用領域9b内を2方向に流動する。2方向に分流された溶融樹脂は流動部の末端で再び合流し、図6Aに示すように、合流部27が発生する。合流部27にはウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン28が一時的にできる。この合流部27は分流後のそれぞれのキャビティ9の容積に左右され、容積の小さいほうが早く充填されていき合流部27が決定される。合流部27は流動解析等によって予測可能であるため、合流部27を含む範囲にある流動堰5を流動末端のゾーンZ6の流動堰5として設定する。
流動末端のゾーンZ6の流動堰5に関しては、樹脂の合流部27に対して、図6Aに示すように、流動末端のゾーンZ6の流動堰5が非対称となるように配置構成を行う。非対称に配置する設定方法としては、先に合流部27に到達した側の溶融樹脂の流れを流動末端のゾーンZ6の流動堰5が多く受けるように合流部27から流動末端のゾーンZ6の流動堰5の中心部がずれるように設定する。
図6Aなどにより、流動堰5のゾーン毎の振り分け方を示す。また合わせて図6Bにより、溶融樹脂の流動経過を示す。流動堰5の出退タイミングは、溶融樹脂の射出口であるゲート13直後のゾーンZ1と、流動途中のゾーンZ2〜Z5と、流動末端側のゾーンZ6との各流動堰5において、溶融樹脂の射出開始時には、流動堰5を出退させる駆動装置(図示せず)により、キャビティ9の厚みの高さhまで(固定側金型1の表面部1aに当接するまで)突出させておき、溶融樹脂が意匠面等形成用領域9bのみを流れ、流動堰5を越えて溶融樹脂が凹凸形状形成用領域9a側に充填されることがないようにコントロールする。
溶融樹脂の射出口であるゲート13から溶融樹脂が射出された後、流動堰5によって溶融樹脂は分流されて、流動堰5によって予め設定された意匠面等形成用領域9b内を流動する。分流された溶融樹脂が合流する部分の末端側のゾーンZ6の近傍で溶融樹脂が合流した後、直ちに流動末端部のゾーンZ6の流動堰5だけを移動させて可動側金型2の表面部2a位置まで退出させる(すなわち、キャビティ9内に突出しない状態とする)ことで、前記流動堰5を越えて溶融樹脂を流動末端のゾーンZ6からキャビティ9における凹凸形状形成用領域9aに充填させる。この時、溶融樹脂の合流部27に対して、左右非対称にゾーンZ6の流動堰5が配置されているため以下の作用が発生する。流動堰5がキャビティ9から退出することで、キャビティ9の凹凸形状形成用領域9a内へ溶融樹脂が流動する。この時、合流部27においては分流された溶融樹脂が合流することでウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン26が発生する。その部分には上記したように一旦、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン26が発現するが、一旦発現したウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン26の箇所にもキャビティ9の凹凸形状形成用領域9a内に流動しようとする樹脂が流れ込むことでそれらのウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン26は緩和される。この緩和作用は、凹凸形状形成用領域9a内への流動は、合流部27に対して、流動末端ゾーンZ6にある流動堰5はその中心がずれるように非対称に設定しているため、その結果、凹凸形状形成用領域9a内に溶融樹脂が流動する際に、図6Bに示すように、合流部27のラインに対してP1方向の角度をもった流動作用が働くためである。さらに分流された溶融樹脂がそのキャビティ容量の多い方に対して、それに対応する流動堰5のゾーンZ6で流入口が小さくなる位置で非対称になるように配置することで、合流部27においてはP2方向よりもP1方向の流動作用のほうが大きく働き、確実にウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン26が緩和される。また、凹凸形状形成用領域9aに溶融樹脂が流動するにあたって、流動末端のゾーンZ6にある流動堰5のみを先に後退させるので、流動末端ゾーンZ6からだけ先に樹脂が流動し、この結果、確実にP1方向やP2方向の流動作用が発生する。
この後、流動末端ゾーンZ6からの溶融樹脂の流動によって、凹凸形状形成用領域9aに溶融樹脂が充填完了する前に、流動末端ゾーンZ6の流動堰5から、流動末端側に近いゾーンZ5、Z4、Z3、Z2、Z1の流動堰5を順番に後退させ、キャビティ9の凹凸形状形成用領域9aを囲んでいた流動堰5をなくす。これにより、凹凸形状形成用領域9aの周囲からも溶融樹脂を凹凸形状形成用領域9a内全体に充填させて、凹凸形状形成用領域9a内への充填動作を完了させる。この時、キャビティ9の凹凸形状形成用領域9a内には、溶融樹脂の流動を妨げ、分流させる凸形状部7A、7Bや凹形状部8A〜8Dが複数あるため、この領域にはウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン26(不良品位部29)が発生する。また、図7に示すように、樹脂が、キャビティ9における凹凸形状形成用領域9aと意匠面等形成用領域9bとの境界部から凹凸形状形成用領域9aへ流入するにあたって、流動末端側のゾーンZ6からこのゾーンZ6に近いゾーンZ5〜Z1にわたって順番に溶融樹脂が流入されるため、流動圧力の樹脂流動圧力の少ない部分からの流動となり、流動末端ゾーンZ6から流動したあとは、周囲から均等に樹脂が凹凸形状形成用領域9aへ流入するため、意匠面である意匠面等形成用領域9bに樹脂が流入合流することなく、意匠面等形成用領域9bには配向や樹脂の流動模様である配向ラインが発生しない。なお、図7におけるPは、キャビティ9における凹凸形状形成用領域9aと意匠面等形成用領域9bとの境界部から凹凸形状形成用領域9aへ流入する樹脂の流入方向を示す。
ここで、各ゾーンZ1〜Z6での流動堰5のキャビティ9からの退出タイミングは、充填時間を含めて射出成形条件が決定した後に概略的に設定し、試作した樹脂成形品20のウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの緩和状態を確認のうえ、合わせ込みを行うことでウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの発生がない所定の樹脂成形品20を得ることが可能である。また流動堰5は複数の摺動可能なインサートブロックにて構成されているため、自由に各ゾーンの組み合わせも変更でき、最適な状態の合わせ込みができる。
次に、図8により、合流部の樹脂の流動模様である配向ラインの発生メカニズムを示す。図8に示すように、合流部では、メタリック調コンパウンド46が流動方向に対して直角に入り込んだ状態となるため、光の反射が流動部分と異なって見え、その結果、配向ラインとして見える。この時、合流部に対して、別の方向から樹脂を流動させる力を作用させて樹脂を流動させたとしても、金型の表面部に直接接する部分であるスキン層47では表面固化層が形成されて樹脂の流動模様である配向ラインが存在し、また表面固化層は流動しないため、前記配向ラインを改善することはできない。ところが、本発明の実施の形態のように、金型1、2の表面部1a、2aを樹脂のガラス転移温度(Tg点)以上に昇温させることで、合流部で発生する樹脂の流動模様である配向ラインも、表面固化層の形成が遅延して流動させることが可能となる。このため、流動末端部に発生する樹脂合流部における前記配向ラインについても、本実施の形態によって完全に解消することが可能となる。
なお、流動堰5を構成する複数のインサートブロックの間には多少の隙間があっても問題はない。隙間の大きさは溶融樹脂が隙間から凹凸形状形成用領域9a内に流入しても再び他の隙間から意匠面等形成用領域9b側に流出して合流することがなければ問題はない。
外観をなす意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの発生がない高品位のメタリック調外観を得るためには、樹脂が流動する部分において樹脂流動を妨げる凸状部や凹状部がない状態にして流動させればよく、その目的を達成するための手段として、実施の形態1による方法は極めて適した方法である。また合流部27においても樹脂流動させる力を作用させることで、合流部27に発生する樹脂流動模様である配向ラインを無くすことが可能である。さらに、製品となった樹脂成形品20において、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインからなる不良品位部29が発生する凹凸形状形成用領域9aを隠蔽させるためのカバー30については、その形状には抜き穴を必要としないので、先行技術文献1〜3等の技術を用いればウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインのない良好な意匠面を容易に実現でき、本発明を実現する上での支障はない。
以上のように、本実施の形態1によれば、外観をなす部分に抜き穴などの流動を妨げる凹凸形状部21が存在しても、意匠面22にウエルドや樹脂の流動模様である配向ライン(不良品位部29)の発生がない高光沢のメタリック調外観を得ることが可能であり、その結果、複雑な形状の樹脂成形品であっても同様な方法で、塗装処理が不要のメタリック樹脂成形品を実現できる。
なお、実施の形態1では、樹脂成形品に対し、ゲート13が1箇所である場合を説明したが、これに限るものではなく、ゲート13が複数箇所に設けられる場合でも同様の考え方で、樹脂の流動合流部が生じる箇所において、前記流動末端ゾーンZ6の流動堰5と同様の構成ならびに樹脂成形方法で流動堰5をそれぞれに配設して駆動制御すればよい。
また、上記実施の形態1では可動側金型2に流動堰5を組み込む説明をしたが、意匠面形成面であるメタリック調外観面が可動側金型2に設けられる場合には、前記流動堰5を固定側金型1に組み込むことで同様の構成および方法で実施することができる。また、意匠面が固定側金型1と可動側金型2との何れにあっても、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発現する箇所を特定させ、同様の構成および方法でその部分について表面に意匠面を有する別部品を組み込むことで、流動堰5は固定側金型1、可動側金型2の何れに配置してもよく、問題を生じることがない。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る樹脂成形方法や樹脂成形品を図9〜図11Bおよび図4、図7などにより説明する。なお、上記実施の形態1と同様の機能の構成要素には同符号を付してその説明は省略する。
図9および図10は本発明の実施の形態2に係る樹脂成形方法に用いる金型装置を示す正面断面図および可動側金型の平面図、図11A、図11Bは同実施の形態2に係る樹脂成形方法の工程をそれぞれ示す可動側金型(可動側金型のキャビティ)の平面図である。
図9、図10、図11A、図11Bに示すように、この実施の形態2に係る樹脂成形方法に用いる金型装置でも、上記実施の形態1に係る樹脂成形方法に用いる金型装置と同様に、流動堰5が出退自在に配設されているが、さらに、流動堰5により溶融樹脂がキャビティ9における凹凸形状形成用領域9aに流入することを制限されて、意匠面等形成用領域9bを通って合流する合流部28に対応する箇所に、可動側金型2の表面部2aから固定側金型1の表面部1aまで(すなわち、キャビティ9厚みの高さhまで)突出する合流堰6が可動側金型2に出退自在に配設されている。そして、この合流堰6により分流された溶融樹脂のお互いの合流面28が合流堰6に沿って形成された状態で合流堰6を後退させることで、合流堰6により合流面28を任意に設定させて合流させるようになっている。
ここで、合流堰6は、溶融樹脂が分流されて合流する流動末端位置のゾーンZ6の流動堰5に対して、角度をつけて配設されている。この実施の形態では、流動末端位置のゾーンZ6の流動堰5と、合流堰6とが可動側金型2の表面部2aの位置まで後退した際に、容量の多い溶融樹脂の流れN1、P3が、容量の少ない溶融樹脂の流れN2、P4の外側から、流動堰5側に押し付けるように巻き込んで、凹凸形状形成用領域9aに流入するように傾斜させて配設されている。
上記構成において、ゲート13から射出された溶融樹脂は、流動堰5によって予め設定された意匠面等形成用領域9b内を2方向に分かれて流動する。分流された溶融樹脂は、合流する部分の末端側のゾーンZ6の近傍で合流する。
ところが、合流部28には合流堰6が突出されているので、図11Aに示すように、分流された溶融樹脂の流れが、合流堰6に沿ったものとなる。そして、分流された溶融樹脂の流れが合流堰6に達した段階で、合流堰6を可動側金型2の表面部2aの位置まで退出させる。これにより、溶融樹脂は、合流堰6により設定した合流形状で合流し、ウエルドや配向ラインが発生する。その後、直ちに流動末端部ゾーンZ6の複数の流動堰5を可動側金型2の表面部2aまで退出させることで、流動堰5を越えて溶融樹脂が凹凸形状形成用領域9aに充填される。この時、合流堰6による合流部28が流動堰5に対して、角度をつけて配設されているため以下の作用が発生する。
この点について詳しく説明する。上記したように、流動堰5がキャビティ9より退出することで、キャビティ9の凹凸形状形成用領域9a内へ溶融樹脂が流動する。この時、合流部28においては分流された溶融樹脂同士が接することでウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発生する。その部分には上記したように一旦ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発現するが、一旦発現したウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインにもキャビティ9の凹凸形状形成用領域9a内に流動しようとする樹脂が流れ込むことで、それらのウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインは緩和される。それは凹凸形状形成用領域9aへの樹脂の流動が合流堰6により角度を持つように設定されているために、凹凸形状形成用領域9a内に溶融樹脂が流動するに際に、合流ラインに対して図11Bに示すように、角度をもったP3方向の流動作用が働く。さらに、流動末端ゾーンZ6にある流動堰5が可動側金型2の表面部2aまで後退された際に、分流された溶融樹脂におけるそのキャビティ容量の多い流れが凹凸形状形成用領域9a内に流入する際に合流ラインを前記流動末端ゾーンZ6にある流動堰5の方向に動かす作用がさらに働き、確実にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが緩和される。また、キャビティ9において溶融樹脂が流動するにあたって、流動堰5における流動末端のゾーンZ6の流動堰5のみを先に後退させるので、流動末端ゾーン6Zからだけ先に樹脂が流動して確実にP3方向への流動作用を発生させることができる。
この後、流動末端ゾーンZ6からの溶融樹脂の流動によって、凹凸形状形成用領域9aに溶融樹脂が充填完了する前に、流動末端ゾーンZ6の流動堰5から、流動末端側に近いゾーンZ5、Z4、Z3、Z2、Z1の流動堰5を順番に後退させ、キャビティ9の凹凸形状形成用領域9aを囲んでいた流動堰5をなくす。これにより、図7に示すように、凹凸形状形成用領域9aの周囲からも溶融樹脂を凹凸形状形成用領域9a内全体に充填させて、凹凸形状形成用領域9a内への充填動作を完了させる。この時、キャビティ9の凹凸形状形成用領域9a内には、溶融樹脂の流動を妨げ、分流させる凸形状部7A、7Bや凹形状部8A〜8Dが複数あるため、この領域にはウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発生する。また、図7に示すように、樹脂が、キャビティ9における凹凸形状形成用領域9aと意匠面等形成用領域9bとの境界部から凹凸形状形成用領域9aへ流入するにあたって、流動末端側のゾーンZ6からこのゾーンZ6に近いゾーンZ5〜Z1にわたって順番に溶融樹脂が流入されるため、流動圧力の樹脂流動圧力の少ない部分からの流動となり、流動末端ゾーンZ6から流動したあとは、周囲から均等に樹脂が凹凸形状形成用領域9aへ流入するため、意匠面である意匠面等形成用領域9bに樹脂が流入合流することなく、意匠面等形成用領域9bにはウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発生しない。
なお、合流部の樹脂の流動模様である配向ラインの発生メカニズムや、樹脂の合流部の樹脂の流動模様である配向ラインを完全に解消するための作用などについては実施の形態1で説明した内容と同様なので省略する。
また、外観をなす意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの発生がない高品位のメタリック調外観を得るためには、樹脂が流動する部分において樹脂の流動を妨げる凸状部や凹状部がない状態にして流動させればよく、その目的を達成するための手段として、実施の形態2による方法も極めて適した方法である。
以上のように、本実施の形態によれば、外観形状部に抜き穴などの流動を妨げる凹凸形状部21が存在しても、意匠面22にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインの発生がない高光沢のメタリック調外観を得ることが可能であり、その結果、複雑な形状の樹脂成形品であっても同様な方法で、塗装処理が不要のメタリック樹脂成型品を実現できる。
なお、実施の形態2でも、樹脂成形品に対し、ゲート13が1箇所である場合を説明したが、これに限るものではなく、ゲート13が複数箇所に設けられる場合でも同様の考え方で、樹脂の流動合流部が生じる箇所において、前記流動末端ゾーンZ6の流動堰5と同様の構成ならびに方法で流動堰5をそれぞれに配設して駆動制御すればよい。
また、上記実施の形態2でも可動側金型2に流動堰5を組み込む説明をしたが、意匠面形成面であるメタリック調外観面が可動側金型2に設けられる場合には、前記流動堰5を固定側金型1に組み込むことで同様の構成および方法で実施することができる。また、意匠面が固定側金型1と可動側金型2との何れにあっても、ウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインが発現する箇所を特定させ、同様の構成および方法でその部分について表面に意匠面を有する別部品を組み込むことで、流動堰5は固定側金型1、可動側金型2の何れに配置してもよく、問題を生じることがない。
本発明による樹脂成形方法および金型装置および樹脂成形品によれば、各種外観部品や外板等の意匠面にウエルドや樹脂の流動模様である配向ラインがないメタリック調外観を得ることができ、塗装処理が不要のメタリック調成形部品などに広く利用できる。
1 固定側金型
2 可動側金型
3 可動側金型装置
4 可動側金型装置
5 流動堰
6 合流堰
7A、7B 凹状部
8A、8B、8C、8D 凸状部
9 キャビティ
9a 凹凸形状形成用領域
9b 意匠面等形成用領域
20 樹脂成形品
21 凹凸形状部
22 意匠面
23 段差部
24 凹凸形状部領域
26 ウエルドや配向ライン
27、28 合流部
29 不良品位部
30 カバー
46 メタリック調コンパウンド

Claims (4)

  1. 溶融された樹脂を、互いに対向して配置された金型間に形成されたキャビティ内に射出して樹脂成形品を形成する樹脂成形方法であって、
    前記金型における少なくともキャビティに臨む表面部を樹脂のガラス転移温度以上に昇温させる昇温工程と、
    樹脂の流動を制限する流動堰を前記キャビティに対して出退自在に配設させ、前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて前記キャビティにおける所定の制限領域への樹脂の流入を制限した状態で、溶融させた樹脂を前記キャビティ内に射出する射出工程と、
    前記射出工程での射出開始後に、前記キャビティから退出して流動堰を樹脂の流動を制限しない位置に移動させる制限解除工程と、
    キャビティ内に充填された樹脂を冷却させて固化させる固化工程と、
    前記固化した樹脂を金型より取り出して樹脂成形品を得る取出工程と
    を有し、
    前記制限領域は、前記キャビティにおける、樹脂の分流や流動の妨げの要因となる凹凸形状の部分が含まれている凹凸形状形成用領域であることを特徴とする樹脂成形方法。
  2. 溶融された樹脂を、互いに対向して配置された金型間に形成されたキャビティ内に射出して樹脂成形品を形成する樹脂成形方法であって、
    前記金型における少なくともキャビティに臨む表面部を樹脂のガラス転移温度以上に昇温させる昇温工程と、
    樹脂の流動を制限する流動堰を前記キャビティに対して出退自在に配設させ、前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて前記キャビティにおける所定の制限領域への樹脂の流入を制限した状態で、溶融させた樹脂を前記キャビティ内に射出する射出工程と、
    前記射出工程での射出開始後に、前記キャビティから退出して流動堰を樹脂の流動を制限しない位置に移動させる制限解除工程と、
    キャビティ内に充填された樹脂を冷却させて固化させる固化工程と、
    前記固化した樹脂を金型より取り出して樹脂成形品を得る取出工程と
    を有し、
    流動堰が複数のゾーンに分割されて複数設けられ、
    前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて樹脂の制限領域への流動を制限した状態から、制限領域への流動を許容するようにキャビティから後退させるに際し、流動制限状態で樹脂が合流した箇所の近くのゾーンから順番に、前記流動堰を後退させることを特徴とする樹脂成形方法。
  3. 溶融された樹脂を、互いに対向して配置された金型間に形成されたキャビティ内に射出して樹脂成形品を形成する樹脂成形方法であって、
    前記金型における少なくともキャビティに臨む表面部を樹脂のガラス転移温度以上に昇温させる昇温工程と、
    樹脂の流動を制限する流動堰を前記キャビティに対して出退自在に配設させ、前記流動堰を前記キャビティ内に突出させて前記キャビティにおける所定の制限領域への樹脂の流入を制限した状態で、溶融させた樹脂を前記キャビティ内に射出する射出工程と、
    前記射出工程での射出開始後に、前記キャビティから退出して流動堰を樹脂の流動を制限しない位置に移動させる制限解除工程と、
    キャビティ内に充填された樹脂を冷却させて固化させる固化工程と、
    前記固化した樹脂を金型より取り出して樹脂成形品を得る取出工程と
    を有し、
    樹脂が合流する箇所に、キャビティに対して出退自在の合流堰が設けられており、前記合流堰により合流面を設定させて合流させることを特徴とする樹脂成形方法。
  4. 互いに対向して着脱自在に配設され、対となった金型を有し、これらの金型間に、溶融された樹脂が充填されるキャビティが形成された金型装置であって、
    前記キャビティに対して出退自在の流動堰が設けられ、
    前記流動堰は、前記キャビティ内に樹脂を射出開始する際には、キャビティ内に突出して所定の制限領域への樹脂の流入を阻止し、前記制限領域以外の領域に流入した樹脂が合流した際に前記キャビティから退出して前記制限領域への樹脂の流入を許容させ
    前記キャビティに対して出退自在の合流堰が設けられ、
    前記合流堰は、前記制限領域以外の領域に流入した樹脂が合流しようとする際にキャビティに突出されて樹脂の合流面を設定させる
    ことを特徴とする金型装置。
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