JP5542076B2 - 遊星歯車式動力伝達装置 - Google Patents
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Description
この遊星歯車式動力伝達装置において、前記キャリアプレートを、前記遊星歯車のピニオン軸と前記摩擦プレート支持部材への結合部との間の位置にて、前記受圧部が形成されたリテーニングプレート部と、前記ピニオン軸を支持するピニオンキャリア部とに分割すると共に、前記リテーニングプレート部と前記ピニオンキャリア部を、両者の分割部分にてスプライン歯の互いの歯面間で線接触に近い状態にて接触するスプライン結合部により動力伝達可能に結合した。
このように、多板摩擦要素からキャリアプレートを経由して遊星歯車へ伝達されるスリップ発熱の伝熱量を減少させることで、遊星歯車の寿命や耐久信頼性の向上を図ることができる。
また、キャリアプレートは、リテーニングプレート部とピニオンキャリア部を、両者の分割部分にてスプライン歯の互いの歯面間で線接触に近い状態にて接触するスプライン結合部により動力伝達可能に結合した。
このように、リテーニングプレート部とピニオンキャリア部の結合接触面積を限ることで、リテーニングプレート部からピニオンキャリア部へ経由する段階で、リテーニングプレート部からピニオンキャリア部への伝熱量を効果的に減少させることができる。
図1は、実施例1の遊星歯車式動力伝達装置が適用されたベルト式無段変速機を搭載したエンジン車の駆動系を示す。以下、図1に基づき、駆動系全体構成を説明する。
実施例1の遊星歯車式動力伝達装置における作用を、「前後進切り替え作用」、「スリップ発熱の伝熱量減少作用」、「スラスト荷重支持作用」に分けて説明する。
実施例1の遊星歯車式動力伝達装置が適用された前後進切替機構3にて行われる、前進クラッチ31の締結による前進走行と、後退ブレーキ32の締結による後退走行と、の前後進切り替え作用を説明する。
この前進クラッチ31を締結すると、シングルピニオン式遊星歯車30のサンギヤ30aとキャリア30dが、クラッチハブ34→前進クラッチ31→ブレーキ/クラッチドラム33→キャリアプレート36(リテーニングプレート部36a、ピニオンキャリア部36b)→ピニオン軸74を介し、前進クラッチ31の締結力に応じて連結される。
このため、前進クラッチ31を完全締結状態にすると、シングルピニオン式遊星歯車30の3つの回転メンバ(サンギヤ30a、リングギヤ30b、キャリア30d)が一体となって同一回転する。つまり、プライマリプーリ42へ回転駆動力を伝達するリングギヤ30bへの出力回転が、エンジン1からサンギヤ30aへ入力される入力回転と同一方向で同一回転数による正回転とされる。なお、この前進走行時には、エンジン1と前後進切替機構3の間で回転差が発生した場合には、回転差吸収機能を前進クラッチ31のスリップ締結により達成する。
この後退ブレーキ32を締結すると、シングルピニオン式遊星歯車30のキャリア30dが、ピニオン軸74→キャリアプレート36(リテーニングプレート部36a、ピニオンキャリア部36b)→ブレーキ/クラッチドラム33→後退ブレーキ32を介し、後退ブレーキ32の締結力に応じて変速機ケース36に固定される。
このため、後退ブレーキ32を完全締結状態にすると、シングルピニオン式遊星歯車30の3つの回転メンバ(サンギヤ30a、リングギヤ30b、キャリア30d)のうち、キャリア30dを固定することで、サンギヤ30aとリングギヤ30bの回転方向を異ならせる。つまり、プライマリプーリ42へ回転駆動力を伝達するリングギヤ30bへの出力回転が、エンジン1からサンギヤ30aへ入力される入力回転と逆方向で異なる回転数による逆回転とされる。なお、後退走行時、エンジン1と前後進切替機構3の間で回転差が発生した場合には、回転差吸収機能を後退ブレーキ32のスリップ締結により達成する。
上記のように、前進走行時、エンジン1と前後進切替機構3の間での回転差吸収機能を前進クラッチ31のスリップ締結により達成するようにしている。このため、前進クラッチ31のスリップ締結による発熱対策が必要である。以下、これを反映するスリップ発熱の伝熱量減少作用を説明する。
この構成により、前進クラッチ31のスリップ発熱は、リテーニングプレート部36aのみに伝達され、リテーニングプレート部36aが高温になる。この高温となったリテーニングプレート部36aからの熱は、図3の矢印に示すように、一部はブレーキ/クラッチドラム33側へと伝達され、残りはピニオンキャリア部36bへと伝達されるが、スプライン結合部36cを経過する段階で、伝達される伝熱量が減少する。
つまり、前進クラッチ31のスリップ発熱は、リテーニングプレート部36aのみに伝達され、ピニオンキャリア部36bに対しては直接伝達されることがない。そして、リテーニングプレート部36aに伝達されたスリップ発熱は、スプライン結合部36cを経過してピニオンキャリア部36bに伝達される。
したがって、キャリアプレート36を、最小限の分割構造である2分割部品としながら、ピニオンキャリア部36bからピニオン軸74への伝熱量が効果的に減少する。
この構成により、リテーニングプレート部36aとピニオンキャリア部36bとは、スプライン歯の互いの歯面間で線接触に近い状態にて接触することになり、結合接触面積が極めて限られた面積になる。
したがって、リテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへ経由する段階で、リテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへの伝熱量が効果的に減少する。
上記のように、前進走行時には、前進クラッチ31がスリップ締結あるいは完全締結されることに伴いキャリアプレート36に大きなスラスト荷重が作用する。このため、前進クラッチ31で片当たりの無いスリップ締結状態あるいは完全締結状態を確保するように、スラスト荷重を支持することが必要である。以下、これを反映するスラスト荷重支持作用を説明する。
実施例1の遊星歯車式動力伝達装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
前記キャリアプレート36を、前記遊星歯車(シングルピニオン式遊星歯車30)のピニオン軸74と前記摩擦プレート支持部材(ブレーキ/クラッチドラム33)への結合部との間の位置にて、前記受圧部が形成されたリテーニングプレート部36aと、前記ピニオン軸74を支持するピニオンキャリア部36bとに分割すると共に、前記リテーニングプレート部36aと前記ピニオンキャリア部36bの分割部分を動力伝達可能に結合した。
このため、多板摩擦要素(前進クラッチ31)からキャリアプレート36を経由して遊星歯車(シングルピニオン式遊星歯車30)へ伝達されるスリップ発熱の伝熱量を減少させることで、遊星歯車(シングルピニオン式遊星歯車30)の寿命や耐久信頼性の向上を図ることができる。
このため、(1)の効果に加え、前進クラッチ31のスリップ発熱を、リテーニングプレート部36aのみに伝達し、ピニオンキャリア部36bに対して直接伝達しないことで、キャリアプレート36を、最小限の分割構造である2分割部品としながら、ピニオンキャリア部36bからピニオン軸74への伝熱量を効果的に減少させることができる。
このため、(2)の効果に加え、リテーニングプレート部36aとピニオンキャリア部36bの結合接触面積を限ることで、リテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへ経由する段階で、リテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへの伝熱量を効果的に減少させることができる。
前記キャリアプレート36のリテーニングプレート部36aは、プレート上端部を前記摩擦プレート支持部材(ブレーキ/クラッチドラム33)に対して、テーパースナップリング81と前記摩擦プレート支持部材に設けられ係止部により軸方向隙間がないように固定すると共に、プレート下端部を前記ピニオンキャリア部36bに対して、径方向重合部36dにより軸方向移動を規制して支持する。
このため、(2)または(3)の効果に加え、リテーニングプレート部36aを2点支持としてプレート傾倒を防止し、片当たりの無い多板摩擦要素(前進クラッチ31)のスリップ締結状態あるいは完全締結状態を確保することで、前進クラッチ31の摩擦プレート(ドライブプレート31a、ドリブンプレート31b)の寿命を向上させることができる。
図6は、実施例2の遊星歯車式動力伝達装置のシングルピニオン式遊星歯車30とスリップ締結される前進クラッチ31が配置された要部構成を示す。以下、図6に基づき、実施例2の遊星歯車式動力伝達装置のリテーニングプレート部36aとピニオンキャリア部36bの結合構造を説明する。
実施例2でのリテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへの伝熱作用を説明すると、実施例2では、リテーニングプレート部36aとピニオンキャリア部36bを、2分割部分にて櫛歯結合部36eにより動力伝達可能に結合する構成を採用した。
この構成により、リテーニングプレート部36aとピニオンキャリア部36bとは、互いの径方向に対向する櫛歯面間で小さい接触面積にて接触することになり、結合接触面積が限られた面積になるし、大きな駆動力が伝達可能になる。したがって、リテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへ経由する段階で、リテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへの伝熱量を減少させつつ、大きな駆動力の伝達が許容される。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
実施例2の遊星歯車式動力伝達装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
このため、実施例1の(2)の効果に加え、リテーニングプレート部36aからピニオンキャリア部36bへの伝熱量を減少させつつ、大きな駆動力の伝達を許容する結合構造とすることができる。
3 前後進切替機構
4 ベルト式無段変速機構
5 終減速機構
6,6 駆動輪
30 シングルピニオン式遊星歯車(遊星歯車)
30a サンギヤ
30b リングギヤ
30c ピニオン
30d キャリア
31 前進クラッチ(多板摩擦要素)
31a ドライブプレート(摩擦プレート)
31b ドリブンプレート(摩擦プレート)
32 後退ブレーキ
33 ブレーキ/クラッチドラム(摩擦プレート支持部材)
34 クラッチハブ
35 変速機ケース
36 キャリアプレート
36a リテーニングプレート部
36b ピニオンキャリア部
36c スプライン結合部
36d 径方向重合部
36e 櫛歯結合部
36f スプライン結合部
74 ピニオン軸
81 テーパースナップリング(スナップリング)
81’ スナップリング
Claims (3)
- 駆動源からの動力伝達系に遊星歯車とスリップ締結される多板摩擦要素が配置され、前記遊星歯車のピニオンを支持するキャリアを、前記多板摩擦要素の摩擦プレート支持部材に向かって延長し、その延長端部をスナップリングの取り付け位置に結合させたキャリアプレートとし、前記キャリアプレートに、前記多板摩擦要素の締結荷重を受ける受圧部が形成された遊星歯車式動力伝達装置において、
前記キャリアプレートを、前記遊星歯車のピニオン軸と前記摩擦プレート支持部材への結合部との間の位置にて、前記受圧部が形成されたリテーニングプレート部と、前記ピニオン軸を支持するピニオンキャリア部とに分割すると共に、前記リテーニングプレート部と前記ピニオンキャリア部を、両者の分割部分にてスプライン歯の互いの歯面間で線接触に近い状態にて接触するスプライン結合部により動力伝達可能に結合した
ことを特徴とする遊星歯車式動力伝達装置。 - 請求項1に記載された遊星歯車式動力伝達装置において、
前記キャリアプレートは、前記摩擦プレート支持部材に対し周方向に噛み合い結合されたリテーニングプレート部と、前記遊星歯車のピニオン軸に固定されたピニオンキャリア部と、による2分割部品とし、該2分割部品の分割位置を、前記遊星歯車のピニオン軸の外周面位置から前記多板摩擦要素のフェーシング内周位置までの径方向範囲内の位置に設定した
ことを特徴とする遊星歯車式動力伝達装置。 - 請求項1または請求項2に記載された遊星歯車式動力伝達装置において、
前記スナップリングは、テーパースナップリングであり、
前記キャリアプレートのリテーニングプレート部は、プレート上端部を前記摩擦プレート支持部材に対して、テーパースナップリングと前記摩擦プレート支持部材に設けられた係止部により軸方向隙間がないように固定すると共に、プレート下端部を前記ピニオンキャリア部に対して、径方向重合部により軸方向移動を規制して支持する
ことを特徴とする遊星歯車式動力伝達装置。
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