JP3557014B2 - 自動変速機の油圧式ブレーキ構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の油圧式ブレーキ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動変速機の油圧式ブレーキ構造としては、特開昭55−40365号公報に示されるものがある。すなわち、これに示されるものは、スプリングによって常時後退方向に付勢されているピストンに押圧されることにより、圧着してケースに固定される多板ブレーキが、ドラムよりも外径側であるとともに、多板ブレーキの軸方向一端側にしかピストンを配置することができない位置に配置され、ケースにスプライン嵌合されているものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の自動変速機の油圧式ブレーキ構造では、多板ブレーキが、ドラムよりも外径側に位置しているため、自動変速機の径方向寸法が大きくなってしまうという問題がある。
さらには、ドラム回転係止用サーボや回転センサなどがドラムの外径側に搭載される機種や、4WD出力部がある機種などは、ピストンや油圧室の配置位置や形状を変えた別仕様のものを製造する必要があり、コストが高くなるという問題がある。
本発明は、このような課題を解決するためのものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の発明は、スプリング(20、22)によって常時後退方向に付勢されているピストン(16、18)が前進することにより、ケース(10)にスプライン嵌合された多板ブレーキ(24)を圧着してケース(10)に固定可能である自動変速機の油圧式ブレーキ構造において、
前記多板ブレーキ(24)は、互いの開口端部(26a、28a)が対向して配置される2つのドラム(26、28)の開口端部(26a、28a)間に配置されており、
前記多板ブレーキ(24)の軸方向両端側で、且つ前記2つのドラム(26、28)外周面と前記ケース(10)内周面との間には、前記ピストン(16、18)を配置可能な空間部(40、42)がそれぞれ設けられており、
機種の仕様に応じて、前記ピストン(16、18)の配置位置として、多板ブレーキ(24)の軸方向両端側の2つの空間部(40、42)のうちの一方側を選択するようにした、
ことを特徴とするものである。
【0005】
このように、多板ブレーキを互いの開口端部が対向して配置される2つのドラムの開口端部間に配置するため、ドラムと多板ブレーキの径方向位置があまりずれないので、自動変速機の径方向寸法を小さくすることができる。
また、ピストンを、多板クラッチの軸方向左右どちら側にでも配置可能としたことにより、機種の仕様に応じて、ピストンや油圧室の配置位置や形状などを変更する必要がなく、ピストンの配置位置として、多板クラッチの軸方向両端側の2つの空間部のうちの一方側を選択すればよいため、コストが安くなる。
【0006】
また、本発明のうちで請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ケース(10)の前記多板ブレーキ(24)の軸方向両端部付近には、スナップリング(32、34)が設けられていることを特徴としたものである。
【0007】
このように、多板ブレーキの軸方向両端部付近にそれぞれスナップリングを設けたことにより、多板ブレーキの軸方向両端部のうちどちら側からピストンで押圧されても多板ブレーキの移動を規制することができる。
【0008】
また、本発明のうちで請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記スナップリング(32、34)は、前記多板ブレーキ(24)の移動を規制するディッシュストッパと、前記スプリング(20、22)の一端を支持するスプリングリテーナ(30)の移動を規制するストッパを兼用可能であることを特徴としたものである。
【0009】
このように、スナップリングをディッシュストッパとスプリングリテーナのストッパを兼用可能としたことにより、油圧室の近傍にスプリングを設けた構造のピストンでも、多板ブレーキの近傍にスプリングを設けた構造のピストンでも配置することができる。
なお、上記かっこ内の符号は、後述する実施の形態の対応する部材を示す。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の実施の形態を示す。
第1油圧室12又は第2油圧室14に軸方向に摺動可能にそれぞれはめ合わされているとともに、第1スプリング(スプリング)20又は第2スプリング(スプリング)22によって常時後退方向に付勢されている第1ピストン(ピストン)16又は第2ピストン(ピストン)18が前進することにより、ケース10にスプライン嵌合された多板ブレーキ24を圧着してケース10に固定可能であるものであって、多板ブレーキ24は、互いの開口端部26a及び28aが対向して配置される2つの第1ドラム(ドラム)26及び第2ドラム(ドラム)28の開口端部26a及び28a間に配置されている。
【0011】
第1ドラム26及び第2ドラム28の外径側には、第1ピストン16を配置可能な第1空間部(空間部)40及び第2スプリング22を配置可能な第2空間部(空間部)42がそれぞれ構成されており、機種の仕様に応じて、第1ピストン16を配置する場合は、ケース10の多板ブレーキ24よりも図1中左側部分に第1油圧室12を形成して第1ピストン16を配置することができ、第2ピストン18を配置する場合は、ケース10の多板ブレーキ24よりも図1中右側部分に第2油圧室14を取付けて、第2ピストン18を配置することができる。
【0012】
第1スプリング20は、第1油圧室12の近傍に配置されており、第1スプリング20の一端は、第1ピストン16に形成されたスプリングガイド部16bに支持されているとともに、第1スプリング20の他端は、ケース10に支持されている。
【0013】
第2スプリング22は、第2ピストン18の多板ブレーキ24の近傍に配置されており、第2スプリング22の一端は、第2ピストン18に形成されたスプリングガイド部18bに支持されているとともに、第2スプリング22の他端は、ケース10に取付けられたスプリングリテーナ30に支持されている。
【0014】
多板ブレーキ24の軸方向両端部付近のケース10には、第1スナップリング(スナップリング)32及び第2スナップリング(スナップリング)34がそれぞれ設けられており、第1スナップリング32は、第2ピストン18によって多板ブレーキ24が押圧されたときに多板ブレーキ24の移動を規制するディッシュストッパの役割を果たしている。また、第2スナップリング34は、スプリングリテーナ30に隣接して配置されており、第1ピストン16によって多板ブレーキ24が押圧されたときに多板ブレーキ24の移動を規制するディッシュストッパの役割と、第2スプリング22の弾性力によるスプリングリテーナ30の移動を規制するストッパの役割を果たしている。
【0015】
このように、多板ブレーキ24を互いの開口端部26a及び28aが対向して配置される第1ドラム26及び第2ドラム28の開口端部26a及び28a間に配置するため、第1ドラム26及び第2ドラム28の外径部と多板ブレーキ24の外径部の径方向位置があまりずれないので、自動変速機50の径方向寸法を小さくすることができる。
【0016】
また、使用中にケース10から第1スナップリング32及び第2スナップリング34が外れても、第1ドラム26及び第2ドラム28の開口端部26a及び28aが、多板ブレーキ24を挟んで対向して配置されているので、開口端部26a及び28aが、それぞれ第1スナップリング32及び第2スナップリング34の役割を果たすことができる。
【0017】
また、多板クラッチ24の軸方向両端側に、第1ピストン16及び第2ピストン18を配置可能な構成としたことにより、機種の仕様に応じて、ピストンや油圧室の配置位置や形状などを変更する必要がなく、第1空間部40及び第2空間部42のうちのどちらか一方を選択して、第1油圧室12又は第2油圧室14を構成するとともに、第1ピストン16又は第2ピストン18を配置するだけでよいので、コストが安くなる。
【0018】
また、多板ブレーキ24の軸方向両端部付近にそれぞれ第1スナップリング32及び第2スナップリング34を設けたことにより、多板クラッチ24の軸方向両端部のうちどちら側から第1ピストン16又は第2ピストン18で押圧されても多板ブレーキ24の移動を規制することができる。
【0019】
また、第2スナップリング34をディッシュストッパとスプリングリテーナのストッパを兼用可能としたことにより、多板ブレーキ24の近傍に第2スプリング22を設けた第2ピストン18を配置することができる。
【0020】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、多板ブレーキを互いの開口端部が対向して配置される2つのドラムの開口端部間に配置するため、ドラムと多板ブレーキの径方向位置があまりずれないので、自動変速機の径方向寸法を小さくすることができる。
また、ピストンを、多板クラッチの軸方向左右どちら側にでも配置可能としたことにより、機種の仕様に応じて、ピストンや油圧室の配置位置や形状などを変更する必要がなく、ピストンの配置位置として、多板クラッチの軸方向両端側の2つの空間部のうちの一方側を選択すればよいため、コストが安くなる。
【0021】
また、請求項2記載の本発明によれば、多板ブレーキの軸方向両端部付近にそれぞれスナップリングを設けたことにより、多板ブレーキの軸方向両端部のうちどちら側からピストンで押圧されても多板ブレーキの移動を規制することができる。
【0022】
また、請求項3記載の本発明によれば、スナップリングをディッシュストッパとスプリングリテーナのストッパを兼用可能としたことにより、油圧室の近傍にスプリングを設けた構造のピストンでも、多板ブレーキの近傍にスプリングを設けた構造のピストンでも配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ケース
16 第1ピストン(ピストン)
18 第2ピストン(ピストン)
20 第1スプリング(スプリング)
22 第2スプリング(スプリング)
24 多板ブレーキ
26 第1ドラム(ドラム)
28 第2ドラム(ドラム)
26a、28a 開口端部
30 スプリングリテーナ
32 第1スナップリング(スナップリング)
34 第2スナップリング(スナップリング)
40 第1空間部(空間部)
42 第2空間部(空間部)
Claims (3)
- スプリング(20、22)によって常時後退方向に付勢されているピストン(16、18)が前進することにより、ケース(10)にスプライン嵌合された多板ブレーキ(24)を圧着してケース(10)に固定可能である自動変速機の油圧式ブレーキ構造において、
前記多板ブレーキ(24)は、互いの開口端部(26a、28a)が対向して配置される2つのドラム(26、28)の開口端部(26a、28a)間に配置されており、
前記多板ブレーキ(24)の軸方向両端側で、且つ前記2つのドラム(26、28)外周面と前記ケース(10)内周面との間には、前記ピストン(16、18)を配置可能な空間部(40、42)がそれぞれ設けられており、
機種の仕様に応じて、前記ピストン(16、18)の配置位置として、多板ブレーキ(24)の軸方向両端側の2つの空間部(40、42)のうちの一方側を選択するようにした、
ことを特徴とする自動変速機の油圧式ブレーキ構造。 - 前記ケース(10)の前記多板ブレーキ(24)の軸方向両端部付近には、スナップリング(32、34)が設けられている、請求項1記載の自動変速機の油圧式ブレーキ構造。
- 前記スナップリング(32、34)は、前記多板ブレーキ(24)の移動を規制するディッシュストッパと、前記スプリング(20、22)の一端を支持するスプリングリテーナ(30)の移動を規制するストッパを兼用可能である、請求項2記載の自動変速機の油圧式ブレーキ構造。
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