まず、以下の各実施形態に係る中継装置を用いる通信システムの基本構成について説明する。下記実施形態の通信システムは、図2に示すように、2線式の伝送路2に接続される伝送ユニット3を備えた通信システムである。
この通信システムは、伝送路2に接続され伝送ユニット3と通信する複数台(図示例では2台)の第1通信端末4と、伝送路2に接続され互いに直接通信する複数台(図示例では2台)の第2通信端末5とを備えている。この通信システムでは、伝送路2を伝送される第1通信信号(第1プロトコルの信号)と、第1通信信号に重畳される第2通信信号(第2プロトコルの信号)とを用いて通信が行われる。第2通信信号は、第1通信信号より周波数が高い。なお、伝送ユニット3と伝送路2との間には、インピーダンスを調整するインピーダンス整合モジュール6(図1(a)参照)が挿入されている。インピーダンス整合モジュール6は、第1通信端末4の各々と伝送路2との間にも設けられていてもよい。
複数台の第1通信端末4は、伝送ユニット3に対して伝送路2を介して並列接続されている。伝送ユニット3および第1通信端末4は、伝送ユニット3から第1通信端末4へのデータ伝送と第1通信端末4から伝送ユニット3へのデータ伝送とが時分割で行われる時分割多重伝送システム(以下、「基本システム」という)を構築する。
基本システムにおいて、第1通信端末4は、スイッチやセンサなど(図示せず)を付設した監視端末器と、負荷(図示せず)を付設した制御端末器との2種類に分類される。これにより、監視端末器に付設したスイッチやセンサなどからの監視入力に応じて、制御端末器に付設した負荷を制御することが可能となる。ここで、第1通信端末4は予め割り当てられた自己のアドレスをそれぞれ記憶部(図示せず)に記憶している。
監視端末器は、監視入力を受けると伝送ユニット3に対して監視入力に対応した制御情報を伝送する。伝送ユニット3は、制御情報を受け取るとアドレスによって上記監視端末器と対応付けられている制御端末器に向けて制御情報を伝送する。制御端末器は、制御情報を受け取ると上記制御情報に従って負荷を制御する。制御情報はスイッチ等の監視入力を反映しているから、結局、スイッチ等の監視入力が負荷の制御に反映されることになる。
伝送ユニット3は、伝送路2に対して図3に示すような形式の電圧波形からなる第1通信信号(以下、「伝送信号」という)を送信する。すなわち、伝送信号は、予備割込期間31と、予備期間32と、送信期間33と、返送期間34と、割込期間35と、短絡検出期間36と、休止期間37とからなる複極(±24V)の時分割多重信号である。予備割込期間31は2次割込を検出するための期間、予備期間32は割込期間35および短絡検出期間36に合わせて設定された期間であり、送信期間33は第1通信端末4にデータを伝送するための期間である。返送期間34は第1通信端末4からの返送信号を受信するタイムスロットであり、割込期間35は後述の割込信号を検出するための期間であり、短絡検出期間36は短絡を検出するための期間である。休止期間37は処理が間に合わないときのための期間である。伝送信号は、パルス列からなるキャリアをパルス幅変調することによってデータを伝送する信号である。
続いて、基本システムの動作について説明する。
各第1通信端末4では、伝送路2を介して受信した伝送信号の送信期間33に含まれるアドレスデータが各々の記憶部(図示せず)に記憶されているアドレスに一致すると、伝送信号から負荷を制御するための制御情報を取り込む。さらに、第1通信端末4は、伝送信号の返送期間34に同期して制御情報を電流モードの信号(適当な低インピーダンスを介して伝送路2を短絡することにより送出される信号)として返送する。なお、第1通信端末4の内部回路の電源は、伝送路2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される。
伝送ユニット3は、常時は伝送信号に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて第1通信端末4に順次アクセスする常時ポーリングを行う。常時ポーリングの際には、伝送信号に含まれるアドレスデータが自己のアドレスに一致した第1通信端末4は、伝送信号に制御情報が含まれていれば制御情報を取り込んで動作し、自己の動作状態を伝送ユニット3に返送する。
また、伝送ユニット3は、いずれかの監視端末器(第1通信端末4)においてスイッチ等の監視入力に対応して発生する割込信号が受信すると、割込信号を発生した第1通信端末4を検索し、その第1通信端末4にアクセスして割込ポーリングも行う。
すなわち、伝送ユニット3は、常時はモードデータを通常モードとした伝送信号を送出し、監視端末器(第1通信端末4)で発生した割込信号を伝送信号の割込期間35に同期して検出すると、モードデータを割込ポーリングモードとした伝送信号を送出する。
割込信号を発生した第1通信端末4は、割込ポーリングモードの伝送信号のアドレスデータの上位ビットが自己のアドレスの上位ビットに一致していれば、その伝送信号の返送期間34に同期して自己のアドレスの下位ビットを返送データとして返送する。これにより伝送ユニット3では割込信号を発生した第1通信端末4のアドレスを取得できる。
割込信号を発生した第1通信端末4のアドレスが伝送ユニット3で取得されると、伝送ユニット3は当該第1通信端末4に対して制御情報の返送を要求する伝送信号を送出し、第1通信端末4はスイッチ等の監視入力に対応した制御情報を伝送ユニット3に返送する。伝送ユニット3は制御情報を受け取ると、該当する第1通信端末4の監視入力をクリアするように指示を与え、当該第1通信端末4では監視入力のクリアを返送する。
制御情報を受け取った伝送ユニット3は、当該制御情報の発信元の第1通信端末(監視端末器)4とアドレスの対応関係によって対応付けられている第1通信端末(制御端末器)4へ送信する制御情報を生成する。伝送ユニット3は、この制御情報を含む伝送信号を伝送路2に送出して、第1通信端末(制御端末器)4に付設した負荷を制御する。
上述したように、基本システムでは、ポーリング・セレクティング方式のプロトコル(第1プロトコル)に従い、伝送ユニット3を介して第1通信端末(監視端末器、制御端末器)4同士が通信を行うこととなる。
ところで、上記通信システムでは、複数台の第2通信端末5が、上記基本システムと伝送路2を共用しつつ、第1プロトコルの伝送信号に重畳される第2通信信号(以下、「重畳信号」という)を用いて互いに通信を行う。一部の第2通信端末5には、第2通信端末5間で伝送される監視情報を出力する被監視機器8が接続され、他の第2通信端末5には、上記監視情報を第2通信端末5から取得する監視装置9が接続されている。被監視機器8や監視装置9は、定期的に通信を行うことによって第2通信端末5とデータの授受を行う。
すなわち、伝送路2を介した通信(データ伝送)を行うのは第2通信端末5であるが、伝送するデータ(監視情報)を生成するのは被監視機器8であって、受信したデータを処理するのは監視装置9である。ここに、第2通信端末5は、各々に接続された被監視機器8あるいは監視装置9からのデータを変換し伝送路2上に送出することで通信を行うアダプタとして機能する。なお、被監視機器8の一例としては基本システムで制御される照明器具の消費電力を計量する電力計測器があり、監視装置9の一例としては電力計測器で計量された消費電力を表示する検針装置がある。
第2通信端末5は、上述した第1プロトコルとは異なるプロトコル(第2プロトコル)に従って、伝送ユニット3を経由することなくピア・ツー・ピア(P2P)で伝送データ(監視情報)を他の第2通信端末5に直接伝送する。具体的には、第2通信端末5は、他の第2通信端末5に伝送すべきデータを含んだパケットを第2プロトコルに従って伝送路2に送出し、且つ他の第2通信端末5が送信した第2プロトコルのパケットを受信する。第2プロトコルのパケットは、伝送ユニット3から送出されている伝送信号に重畳される。要するに、第1プロトコルによる第1通信端末4同士の通信は伝送ユニット3を経由して行われるのに対し、第2プロトコルによる第2通信端末5同士の通信は伝送ユニット3を経由せず通信端末間で直接行われる。そのため、第2プロトコルによる通信は、第1プロトコルによる通信に比べて通信速度を高速化でき、たとえばアナログ値(電力量の計量値等)のように比較的データ量の多い情報の伝送に用いられる。
また、第2通信端末5は、基本システムの伝送ユニット3と第1通信端末4との間で伝送される第1プロトコルの伝送信号を監視し、この伝送信号から第1プロトコルのデータ伝送状況(以下、「ステート」という)を解析する。さらに、第2通信端末5は、ステートが第2プロトコルのパケットの伝送に適した状況にあるか否かを判定し、伝送に適していると判断したタイミングでパケットを送信する機能を具備している。
ここで、伝送信号は図3に示すような信号フォーマットを採用している。予備割込期間31や予備期間32や休止期間37は、重畳信号が重畳されても第1プロトコルの通信に影響がなく、重畳信号も伝送信号の影響を受けにくいので、重畳信号を重畳可能な期間(以下、「重畳可能期間」という)となる。
その他の期間(送信期間33と返送期間34と割込期間35と短絡検出期間36)は、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が相対的に短く、重畳信号が重畳されると第1プロトコルの通信に影響を与えやすい。また上記他の期間に重畳信号が重畳されると、重畳信号も伝送ユニット3と第1通信端末4との間で授受される信号(割込信号や返送データ)の影響を受けやすい。そのため、上記他の期間は、重畳信号の重畳には使用されない期間(以下、「重畳不可期間」という)となる。
また、伝送信号の立ち上がりおよび立ち下がりの期間も、高調波ノイズの影響や信号の電圧反転に伴う過渡応答の影響などにより、重畳信号を重畳するのに適していない。したがって、伝送信号は、予備割込期間31と予備期間32と休止期間37の中でも、期間の切り替わり(立ち上がりまたは立ち下がり)後の所定時間(たとえば300μs)については、重畳不可期間となる。
そこで、第2通信端末5は伝送信号のステートを解析し、その解析結果(伝送信号のステート)に基づいて重畳可能期間か重畳不可期間かの判定を行い、重畳可能期間と判断したときに限って重畳信号を送出するように構成されている。第2通信端末5は、このように伝送信号に同期させるように伝送信号の重畳可能期間にのみ重畳信号を重畳させることにより、共通の伝送路2を使用する第1プロトコルの通信と第2プロトコルの通信との干渉を回避する。
ここで、第2通信端末5は、送信データのデータ量が多く一度の重畳可能期間内で送信しきれなかった場合には、当該重畳可能期間の終了に合わせて通信を中断し、次回の重畳可能期間に残りのデータを送信する。
なお、第2通信端末5の各部への電源供給は、基本システムの第1通信端末4と同様に伝送ユニット3から伝送路2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される方式(集中給電方式)によって為される。ただし、この構成に限らず、第2通信端末5の各部への電源供給は、商用電源を整流し安定化することによって供給される方式(ローカル給電方式)で為されてもよい。
(実施形態1)
本実施形態の中継装置1は、図1(a)に示すように、上記構成の通信システムにおいて、伝送ユニット3が接続された第1伝送路21に対して第2伝送路22が付加された場合に、第1伝送路21と第2伝送路22との間に挿入される。以下では、第1伝送路21と第2伝送路22とを区別しないときにはこれらをまとめて伝送路2と呼ぶ。
図1(a)の例では、第1通信端末41および第2通信端末51が第1伝送路21に接続され、第1通信端末42および第2通信端末52が第2伝送路22に接続されている。以下では、各第1通信端末41,42を区別しないときにはこれらをまとめて第1通信端末4と呼び、各第2通信端末51,52を区別しないときにはこれらをまとめて第2通信端末5と呼ぶ。なお、各第2通信端末5にはそれぞれ被監視機器8あるいは監視装置9が接続されているが、図1(a)では被監視機器、監視装置の図示を省略している。
本実施形態においては、第2通信端末5のうち、監視装置9に接続された第2通信端末51が親機として機能し、被監視機器8に接続された第2通信端末52が子機として機能する。伝送路2には、第2通信端末52以外にも被監視機器8に接続された子機としての第2通信端末(図示せず)が接続されていてもよい。親機としての第2通信端末51は、子機としての第2通信端末52に対してポーリング方式によって重畳信号(第2通信信号)を定期的に送信し、これにより、監視装置9ではポーリングに対する応答として被監視機器8から監視情報を定期的に収集できる。
ここで、第1伝送路21と第2伝送路22との間には、第1プロトコルの伝送信号(第1通信信号)を中継するための中継器7が挿入されており、本実施形態の中継装置1は中継器7と並列に接続される。中継器7は、伝送信号を増幅するアンプ(図示せず)および伝送信号を抽出するフィルタ(図示せず)を具備し、一方の伝送路2から入力される伝送信号に減衰や反射による波形の歪みが生じていても、伝送信号を整形して他方の伝送路2に中継する。中継器7は、伝送路長を延長する場合や伝送路2に接続される通信端末の台数が増加して伝送ユニット3の給電能力が不足する場合などに用いられる。なお、中継器7は、伝送信号の下流側となる伝送路(図1(a)では第2伝送路22)に対しては伝送ユニット3と同様に伝送信号を出力するので、伝送信号の下流側となる伝送路との間にはインピーダンス整合モジュール6が挿入されている。
ただし、中継器7は第1プロトコルの伝送信号のみを通過させ、第2プロトコルの重畳信号(第2通信信号)は中継器7を通過することはない。そこで、第1伝送路21と第2伝送路22との間で重畳信号を中継するためには、本実施形態の中継装置1が必要となる。
中継装置1は、図1(b)に示すように、一方の伝送路2を伝送される信号から重畳信号を抽出する抽出部11と、抽出された重畳信号の波形を整形する整形部12と、波形整形後の重畳信号を他方の伝送路2に送出する重畳部13とを備えている。中継装置1は、第1伝送路21が接続される第1端子101と、第2伝送路22が接続される第2端子102とを具備している。
さらに、中継装置1は、第1伝送路21と第2伝送路22との間を電気的に絶縁するフォトカプラ14を備えている。フォトカプラ14は整形部12と重畳部13との間に挿入されている。以下の説明においては、中継装置1のうちフォトカプラ14よりも第1伝送路21側をフォトカプラ14の「一次側」、フォトカプラ14よりも第2伝送路22側をフォトカプラ14の「二次側」という。
ここで、整形部12は、信号を増幅するアンプ(図示せず)や所定周波数の信号を通過させるフィルタ(図示せず)を具備し、伝送路長が長くなることで信号が減衰した場合や、反射によって信号の波形が歪んだ場合などに、信号波形の整形を行う。なお、整形部12にはシュミット回路を設け、シュミット回路によりさらに波形整形を行うことが望ましい。
重畳部13は、整形部12で整形された重畳信号を、重畳信号の送出先(以下、「中継先」という)となる伝送路2上の伝送信号に重畳させて中継先の伝送路2に送出する。そのため、中継装置1は、中継先となる伝送路2上の伝送信号を監視する機能を有し、中継先の伝送路2における第1プロトコルのデータ伝送状況(ステート)を解析する解析部19をさらに備えている。重畳部13は、解析したステートが重畳信号の伝送に適した状況にあるか否かを判定し、重畳信号の伝送に適していると判断したタイミングで、中継先の伝送路2に重畳信号を送信する。重畳部13が中継先の伝送路2に重畳信号を送出するタイミングは、中継先の伝送路2上の伝送信号における所定の重畳可能期間に重畳信号が重畳されるように決定される。
ここにおいて、本実施形態の中継装置1は第1伝送路21と第2伝送路22とのいずれを重畳信号の抽出元(以下、「中継元」という)とする場合でも、抽出した重畳信号を中継先の伝送路2に中継することができるように、以下の構成を採用している。
要するに、抽出部11は、第1端子101に接続され第1伝送路21を伝送される信号から重畳信号を抽出する第1抽出部111と、第2端子102に接続され第2伝送路22を伝送される信号から重畳信号を抽出する第2抽出部112とに分かれている。また、整形部12は、第1抽出部111で抽出された重畳信号の波形整形を行う第1整形部121と、第2抽出部112で抽出された重畳信号の波形整形を行う第2整形部122とに分かれている。重畳部13は、第2端子102に接続され第1整形部121で整形後の重畳信号を第2伝送路22に送出する第2重畳部132と、第1端子101に接続され第2整形部122で整形後の重畳信号を第1伝送路21に送出する第1重畳部131とに分かれている。解析部19に関しても、第1伝送路21上の伝送信号のステートを解析する第1解析部191と、第2伝送路22上の伝送信号のステートを解析する第2解析部192とに分割されている。さらに、フォトカプラ14は、第1整形部121−第2重畳部132間に挿入された第1フォトカプラ141と、第2整形部122−第1重畳部131間に挿入された第2フォトカプラ142とに分かれている。
言い換えれば、第1抽出部111と第1整形部121と第1重畳部131とはフォトカプラ14の一次側に設けられ、第2抽出部112と第2整形部122と第2重畳部132とはフォトカプラ14の二次側に設けられている。第1伝送路21が中継元で第2伝送路22が中継先であるときには、重畳信号は、第1抽出部111にて第1伝送路21から抽出され第1整形部121で整形されて、第1フォトカプラ141を介して第2重畳部132から第2伝送路22に送出される。一方、第2伝送路22が中継元で第1伝送路21が中継先であるときには、重畳信号は、第2抽出部112にて第2伝送路22から抽出され第2整形部122で整形されて、第2フォトカプラ142を介して第1重畳部131から第1伝送路21に送出される。結果的に、中継装置1は、重畳信号に関して第1伝送路21から第2伝送路22への中継と、第2伝送路22から第1伝送路21への中継との双方向の中継が可能となる。
ところで、伝送信号には中継器7を通過する際に、重畳信号には中継装置1を通過する際にそれぞれ遅延時間が発生するが、伝送信号と重畳信号とでは、たとえば周波数の差に起因して遅延時間にずれが生じることがある。そのため、仮に重畳部13が重畳信号を整形部12から受け取ってすぐに中継先の伝送路2に送出すると、中継先においては伝送信号と重畳信号との間で時間軸方向にずれが生じ、同期がとれずに通信エラーを生じる可能性がある。
そこで、本実施形態では、伝送信号が上述したように周期的に繰り返され、且つ1周期ごとに重畳信号を重畳するのに適した重畳可能期間が複数回ずつ設定されている点に着眼し、重畳信号の送出タイミングを以下のように決定する。
すなわち、重畳部13は、中継元の伝送信号のうち抽出部11が重畳信号を抽出した重畳可能期間と同一のタイミングになる重畳可能期間を、中継先の伝送信号の中から選択する。重畳部13は、選択した重畳可能期間に上記重畳信号を送出するように重畳信号の送出タイミングを決定する。
一例として、中継元の伝送路2において伝送信号の予備割込期間31と予備期間32と休止期間37とに分かれて重畳信号が重畳されている場合について説明する。この場合、重畳部13は、重畳信号が中継先の伝送路2においても中継元と同様に伝送信号の予備割込期間31と予備期間32と休止期間37とに分かれて重畳されるように、重畳信号の送出タイミングを決定する。なお、中継元の伝送信号のうち抽出部11が重畳信号を抽出した重畳可能期間は、解析部19にて中継元の伝送信号のステートを解析することにより検出可能となる。
ところで、本実施形態の中継装置1は、図1(b)に示すように第1抽出部111と第2重畳部132との間に挿入された第1スイッチ151と、第2抽出部112と第1重畳部131との間に挿入された第2スイッチ152とをさらに備えている。第1スイッチ151は、第1抽出部111−第2重畳部132間の接続を開閉し、第1伝送路21から第1抽出部111で抽出された重畳信号を第2伝送路22へ中継するか否かの切り替えを行う。第2スイッチ152は、第2抽出部112−第1重畳部131間の接続を開閉し、第2伝送路221から第21抽出部112で抽出された重畳信号を第1伝送路21へ中継するか否かの切り替えを行う。
具体的には、第1スイッチ151は第1整形部121と第1フォトカプラ141との間に設けられ、オフ時には、第1整形部121−第1フォトカプラ141間で重畳信号の経路を遮断する。第2スイッチ152は第2整形部122と第2フォトカプラ142との間に設けられ、オフ時には、第2整形部122−第2フォトカプラ142間で重畳信号の経路を遮断する。
ここにおいて、第1スイッチ151は、第2伝送路22から第1伝送路21への重畳信号の中継時、つまり第2伝送路22が中継元で第1伝送路21が中継先であるときにオフするように、後述の第1制御信号を受けてオンオフ制御される。一方、第2スイッチ152は、第1伝送路21から第2伝送路22への重畳信号の中継時、つまり第1伝送路21が中継元で第2伝送路22が中継先であるときにオフするように、後述の第2制御信号を受けてオンオフ制御される。
これにより、第1伝送路21が中継元で第2伝送路22が中継先であるときには、第2抽出部112−第1重畳部131間で重畳信号が遮断され、中継先である第2伝送路22から中継元である第1伝送路21への重畳信号の中継は禁止される。一方、第2伝送路22が中継元で第1伝送路21が中継先であるときには、第1抽出部111−第2重畳部132間で重畳信号が遮断され、中継先である第1伝送路21から中継元である第2伝送路22への重畳信号の中継は禁止される。したがって、上記中継装置1を用いれば、重畳信号が中継先の伝送路2から中継元の伝送路2に帰還されることを防止することができる。
上記構成を採用した中継装置1の動作について、第1伝送路21に接続されている第2通信端末51が図4(a)に示すような矩形波状の重畳信号を送信した場合を例に説明する。この場合、第1スイッチ151および第2スイッチ152がない中継装置では、重畳信号が中継先の第2伝送路22から中継元の第1伝送路21に帰還されるため、第1伝送路21上に生じる重畳信号は図4(c)に示すような波形になる。つまり、重畳信号は波形がぶつかり合う(重なり合う)ことにより波形が乱れ、重畳信号による正常な通信ができなくなる。
これに対して、第1スイッチ151および第2スイッチ152を備えた本実施形態の中継装置1では、重畳信号が中継先の伝送路2から中継元の伝送路2に帰還されることが防止されるので、第1伝送路21上に生じる重畳信号は図4(b)に示す波形となる。そのため、重畳信号は波形がぶつかり合うことによる波形の乱れが生じにくく、重畳信号による正常な通信が可能になる。
第1制御信号、第2制御信号は、中継装置1の外部から入力される2値(「H」、「L」)の信号であって、それぞれの「H」・「L」の別によって第1スイッチ151、第2スイッチ152のオン・オフを切り替える。本実施形態では、第1スイッチ151は第1制御信号が「H」の期間にオフとなり、第2スイッチ152は第2制御信号が「H」の期間にオフとなる。ここで、第1制御信号、第2制御信号は、上述のように第2伝送路22から第1伝送路21への重畳信号の中継時には第1スイッチ151をオフさせ、第1伝送路21から第2伝送路22への重畳信号の中継時には第2スイッチ152をオフさせるように生成される。つまり、第1制御信号、第2制御信号は、中継装置1が重畳信号を中継する向きに応じて生成される。
本実施形態では、第1伝送路21に接続されている第2通信端末(親機)51は、第2伝送路22に接続された第2通信端末(子機)52に対しポーリング方式で重畳信号を定期的に送信し、その応答として第2通信端末52から重畳信号を受信する。つまり、中継装置1が重畳信号を第1伝送路21から第2伝送路22に中継するのか、第2伝送路22から第1伝送路21に中継するのかは、第2通信端末51のポーリングのタイミングから予測することができる。そこで、第1制御信号、第2制御信号を生成する他装置(図示せず)は、たとえば第2通信端末51のポーリングのタイミングに基づいて第1制御信号、第2制御信号を生成する。
以上説明した本実施形態の中継装置1によれば、第2伝送路22から第1伝送路21への重畳信号(第2通信信号)の中継時には、第1抽出部111−第2重畳部132間の第1スイッチ151がオフする。したがって、中継装置1において、第2伝送路22から第1伝送路21へ中継された重畳信号がさらに第2伝送路22へ回り込むというループ現象の発生を防止することができる。同様に、第1伝送路21から第2伝送路22への重畳信号の中継時には、第2抽出部112−第1重畳部131間の第2スイッチ152がオフする。したがって、中継装置1において、第1伝送路21から第2伝送路22へ中継された重畳信号がさらに第1伝送路21へ回り込むというループ現象の発生を防止することができる。
すなわち、上記中継装置1によれば、重畳信号が中継先の伝送路2から中継元の伝送路2に帰還されることはなく、一次側と二次側とのそれぞれにおいて重畳信号の波形がぶつかり合う(重なり合う)ことを回避できる。結果的に、本実施形態の中継装置1は、波形を乱すことなく第2通信信号である重畳信号を中継可能になるという利点がある。
また、図1(a)の例では、第1伝送路21と第2伝送路22とが中継器7、中継装置1を介して接続されている通信システムを例示したが、複数台の中継器7、中継装置1を用いればさらに通信システムの規模を拡大することも可能である。つまり、複数台の中継器7、中継装置1を用いれば伝送路2が3区画以上に拡張された通信システム、たとえば第2伝送路22に対してさらに第3伝送路(図示せず)が接続された通信システムも実現可能である。この場合、第1伝送路21と第2伝送路22との間に接続された中継装置1が、第1伝送路21−第2伝送路22間で重畳信号を中継し、第2伝送路22と第3伝送路との間に接続された中継装置1は、第2伝送路22−第3伝送路間で重畳信号を中継する。
なお、本実施形態では親機としての第2通信端末5がポーリング方式で子機として第2通信端末5と通信する通信システムを例示したが、この例に限らず、中継装置1は、たとえばイベントドリブン方式の通信システムに用いられてもよい。
(実施形態2)
本実施形態の中継装置1は、第1制御信号および第2制御信号が内部で生成されるようにした点が実施形態1の中継装置1と相違する。以下、実施形態1と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態では、図5に示すように、中継装置1は、第2スイッチ152をオンオフ制御するための第2制御信号を生成する第1制御部161と、第1スイッチ151をオンオフ制御するための第1制御信号を生成する第2制御部162とを備えている。第1制御部161は、第1抽出部111で抽出された重畳信号(第2通信信号)に基づいて第2制御信号を生成し、第2制御部162は、第2抽出部112で抽出された重畳信号に基づいて第1制御信号を生成する。
ここで、第1制御部161と第2スイッチ152との間、および第2制御部162と第1スイッチ151との間には、それぞれフォトカプラ14が挿入され、一次側(第1伝送路21側)と二次側(第2伝送路22側)とが電気的に絶縁されている。第1制御部161は第3フォトカプラ143の一次側に接続され、第2制御部162は第4フォトカプラ144の二次側に接続されている。つまり、第1制御部161が生成した第2制御信号は、第3フォトカプラ143経由で第2スイッチ152に出力され、第2制御部162が生成した第1制御信号は、第4フォトカプラ144経由で第1スイッチ151に出力される。
本実施形態においては、第1制御部161は、第1整形部121の出力に接続されており、第1整形部121で整形された重畳信号の変化(立ち上がりまたは立ち下がり)をトリガにして、第2制御信号を「H」にする。つまり、第1制御部161は、第1伝送路21から第2伝送路22への重畳信号の中継時には、第2制御信号を「H」にして第2スイッチ152をオフさせる。一方、第2制御部162は、第2整形部122の出力に接続されており、第2整形部122で整形された重畳信号の変化(立ち上がりまたは立ち下がり)をトリガにして、第1制御信号を「H」にする。つまり、第2制御部162は、第2伝送路22から第1伝送路21への重畳信号の中継時には、第1制御信号を「H」にして第1スイッチ151をオフさせる。
上記構成を採用した中継装置1の動作について、第1伝送路21に接続されている第2通信端末51が図6(a)に示すような矩形波状の重畳信号を送信した場合を例に説明する。図6では、(b)が第1伝送路21に生じる重畳信号、(c)が第1抽出部111の出力、(d)が第1整形部121の出力、(e)が第2制御信号をそれぞれ表している。なお、この例では抽出部111にて重畳信号の正負が逆転しているが、正負は逆転しなくてもよい。
この場合、第1制御部161には、第2通信端末51からの重畳信号(図6(a))に対して所定の時間遅れを持った重畳信号(図6(d))が第1整形部121から入力される。第1制御部161は、第1整形部121から入力される重畳信号を監視し、この重畳信号の立ち上がりをトリガにして、第2制御信号(図6(e))を「L」から「H」に切り替える。ここでは、第1制御部161は、重畳信号の立ち上がりから所定の時間遅れを持って第2制御信号を「H」に切り替え、その後、第1整形部121から入力される重畳信号に変化がない状態が一定時間続けば、第2制御信号を「L」に切り替える。
なお、第2制御部162についても同様に、第2整形部122から入力される重畳信号の立ち上がりをトリガにして、第1制御信号を「L」から「H」に切り替える。
また、本実施形態の中継装置1は、第1伝送路21上から伝送信号(第1通信信号)を抽出して重畳可能期間か否かを判定する第1判定部171と、第2伝送路22上から伝送信号を抽出して重畳可能期間か否かを判定する第2判定部172とをさらに備えている。なお、伝送信号のステートの解析自体は第1解析部191および第2解析部192にて行い、第1判定部171および第2判定部172は、第1解析部191および第2解析部192から解析結果を受け取って重畳可能期間か否かの判定のみを行ってもよい。
第1制御部161は、第1判定部171にて重畳可能期間と判定されている期間にのみ、第1抽出部111で抽出された重畳信号に基づいて第2制御信号を「H」にし第2スイッチ152をオフにする。つまり、第1制御部161は、第1整形部121からの重畳信号と、第1判定部171が重畳可能期間と判定している間に発生する一次側許可信号とを入力し、これら2つの信号に応じて第2制御信号を生成する。そのため、第1判定部171にて重畳不可期間と判定されている期間においては、第1制御部161は重畳信号の状態に関わらず第2制御信号を「L」に維持し、第2スイッチ152をオン状態に維持することになる。
第2制御部162は、第2判定部172にて重畳可能期間と判定されている期間にのみ、第2抽出部112で抽出された重畳信号に基づいて第1制御信号を「H」にし第1スイッチ151をオフにする。つまり、第2制御部162は、第2整形部122からの重畳信号と、第2判定部172が重畳可能期間と判定している間に発生する二次側許可信号とを入力し、これら2つの信号に応じて第1制御信号を生成する。そのため、第2判定部172にて重畳不可期間と判定されている期間においては、第2制御部162は、重畳信号の状態に関わらず第1制御信号を「L」に維持し、第1スイッチ151をオン状態に維持することになる。
上記構成を採用した中継装置1の動作について、第1伝送路21に接続されている第2通信端末51が図7(a)に示すような重畳信号を送信した場合を例に説明する。図7では、(b)が第1伝送路21に生じる重畳信号、(c)が第1抽出部111の出力、(d)が第1伝送路21上の伝送信号をそれぞれ表している。なお、図7(d)と図3とでは伝送信号の正負が反転しているが、これは信号の計測方法の違いに起因しており、伝送信号の信号形式自体は同じである。
この場合、第1制御部161は、第1判定部171からの一次側許可信号があり、且つ第1抽出部111の出力する重畳信号(図7(c))の変化が検出されたときに、第2制御信号を「L」から「H」に切り替える。すなわち、第1伝送路21上の伝送信号(図7(d))が重畳可能期間(予備割込期間31、予備期間32、休止期間37)にあるときにのみ、第1制御部161は、第1整形部121から入力される重畳信号の変化をトリガにして第2制御信号を「H」に切り替える。
なお、第2制御部162についても同様に、第2伝送路22上の伝送信号が重畳可能期間にあるときにのみ、第2整形部122から入力される重畳信号の変化をトリガにして、第1制御信号を「L」から「H」に切り替える。
上記構成によれば、第1制御部161および第2制御部162は、中継元の伝送信号が重畳可能期間にあるときのみ、第1スイッチ151または第2スイッチ152をオフするので、抽出部11が拾ったノイズでこれらのスイッチがオフされることを防止できる。すなわち、図7(c)のように抽出部11の出力する重畳信号にノイズが生じていても、このノイズをトリガとして第1スイッチ151または第2スイッチ152がオフされてしまうことを防止できる。
ところで、本実施形態では、第1伝送路21に接続されている第2通信端末(親機)51は、第2伝送路22に接続された第2通信端末(子機)52に対しポーリング方式で重畳信号を定期的に送信し、その応答として第2通信端末52から重畳信号を受信する。つまり、第1伝送路21側の第2通信端末51と、第2伝送路22側の第2通信端末52とは、交互に重畳信号による通信を行うのであって、両者が同時に重畳信号を送出することはない。このことを利用して、本実施形態では、第1制御部161は、第1スイッチ151がオンされている期間にのみ第2スイッチ152をオフし、第2制御部162は、第2スイッチ152がオンされている期間にのみ第1スイッチ151をオフする。
具体的には、第1制御部161は、第1制御信号が「L」の期間にのみ、第1抽出部111で抽出された重畳信号に基づいて第2制御信号を「H」にし第2スイッチ152をオフにする。つまり、第1制御部161は、第2制御部162から出力される第1制御信号を第4フォトカプラ144を介して入力し、第1整形部121からの重畳信号と一次側許可信号と第1制御信号とに基づいて第2制御信号を生成する。そのため、第1制御信号が「H」の期間においては、第1制御部161は重畳信号の状態に関わらず第2制御信号を「L」に維持し、第2スイッチ152をオン状態に維持することになる。
第2制御部162は、第2制御信号が「L」の期間にのみ、第2抽出部112で抽出された重畳信号に基づいて第1制御信号を「H」にし第1スイッチ151をオフにする。つまり、第2制御部162は、第1制御部161から出力される第2制御信号を第3フォトカプラ143を介して入力し、第2整形部122からの重畳信号と一次側許可信号と第1制御信号とに基づいて第1制御信号を生成する。そのため、第2制御信号が「H」の期間においては、第2制御部162は重畳信号の状態に関わらず第1制御信号を「L」に維持し、第1スイッチ151をオン状態に維持することになる。
上記構成を採用した中継装置1の動作について、第1伝送路21に接続されている第2通信端末51が図8(a)、図9(a)に示すような重畳信号を送信した場合を例に説明する。図8および図9では、(b)が第1伝送路21上の重畳信号、(c)が第1整形部121の出力、(d)が第2制御信号、(e)が第2伝送路22上の重畳信号、(f)が第2整形部122の出力、(g)が第1制御信号をそれぞれ表している。
この場合、第1制御部161への第1制御信号の入力、第2制御部162への第2制御信号の入力がない中継装置では、第2スイッチ152と第1スイッチ151との両方が同時にオフすることにより、重畳信号が中継されなくなる可能性がある(図8の例)。つまり、第1制御部161が第1整形部121の出力(図8(c))をトリガに第2制御信号(図8(d))にて第2スイッチ152をオフした後、第1スイッチ151を通して一次側から二次側に中継された重畳信号(図8(e))が第2伝送路22上に現れる。これにより、第2制御部162が第2整形部122の出力(図8(f))をトリガに第1制御信号(図8(g))にて第1スイッチ151をオフすることがある。要するに、一次側と二次側との双方から第1スイッチ151、第2スイッチ152をオフする信号が出力されることとなり、一次側と二次側との間で双方向について重畳信号の中継が遮断される。したがって、図8(e)のように、重畳信号は、第1伝送路21から第2伝送路22へ最初の数ビット(図では2ビット)程度は中継されるものの、それ以降は中継が遮断されることになる。
これに対して、第1制御部161への第1制御信号の入力、第2制御部162への第2制御信号の入力がある本実施形態の中継装置1では、第2スイッチ152と第1スイッチ151との両方が同時にオフすることはない(図9の例)。つまり、第2スイッチ152がオフ状態にあれば、第1スイッチ151を通して一次側から二次側に中継された重畳信号(図9(e))が第2伝送路22上に現れても、第2制御部162は、第1制御信号(図9(g))にて第1スイッチ151をオフすることはない。要するに、中継元である一次側から中継先である二次側への重畳信号の経路は遮断されることなく、二次側から一次側への重畳信号の経路のみが遮断されることになる。したがって、図9(e)のように、重畳信号は、第1伝送路21から第2伝送路22へ中継されながらも、さらに第1伝送路21へ回り込むというループ現象の発生が防止される。
なお、第2伝送路22から第1伝送路21への重畳信号の中経時にも同様に、中継元である中継先への重畳信号の経路は遮断されることなく、中継先から中継元への重畳信号の経路のみが遮断されることになる。
上記構成によれば、中継装置1は、中継元の伝送路2から中継先の伝送路2への重畳信号の中継を行いつつ、中継先から中継元へ重畳信号が帰還されることを防止して、結果的に、波形を乱すことなく第2通信信号である重畳信号を中継可能になるという利点がある。
以上説明した本実施形態の中継装置1によれば、第2制御信号を生成する第1制御部161と、第1制御信号を生成する第2制御部162とが設けられているので、外部からの信号を用いることなく、重畳信号が中継先から中継元に帰還されることを防止できる。すなわち、第1制御部161は第1抽出部111で抽出した重畳信号に基づき第2制御信号を生成し、第2制御部162は第2抽出部112で抽出した重畳信号に基づき第1制御信号を生成するので、外部信号によらずに第1制御信号、第2制御信号を生成できる。
また、本実施形態の他の例として、図10に示すように第1抽出部111と第1制御部161との間に重畳信号を整形する第1前処理部181が設けられ、第2抽出部112と第2制御部162との間に重畳信号を整形する第2前処理部182が設けられてもよい。ここでは、整形部12は時間幅を補正する機能のみを有しており、第1前処理部181は第1整形部121の前段に設けられ、第2前処理部182は第2整形部122の前段に設けられている。第1前処理部181および第2前処理部182は、整形部12に入力される前に増幅器やコンパレータによって、重畳信号を十分な振幅の信号に波形整形する。
この構成では、第1制御部161および第2制御部162は、第1前処理部181、第2前処理部182にて整形された後の重畳信号に基づいて、第2制御信号、第1制御信号を生成するので、これらの制御信号を正しく生成することができる。つまり、第1制御部161、第2制御部162に入力される重畳信号の振幅不足、波形の歪み等によって、第1スイッチ151や第2スイッチ152が誤ってオフ(あるいはオン)されることを防止できる。
しかも、第1前処理部181および第2前処理部182の各々は、重畳信号を受けてパルス幅が固定のパルス信号を発生するパルス発生装置(図示せず)を有している。具体的には、第1前処理部181および第2前処理部182は、それぞれワンショットタイマにより波形補正を行っており、入力された重畳信号の変化(立ち上がりまたは立ち下がり)をトリガにして、パルス幅が固定のパルス信号を出力する。
たとえば図11(a)に示すような重畳信号が第1伝送路21上に生じている場合には、第1前処理部181では図11(b)に示すように重畳信号が増幅器やコンパレータによって波形整形された信号が出力される。この信号の立ち下がりをトリガにした図11(c)に示すような固定パルス幅のパルス信号がワンショットタイマにて生成され、第1整形部121からは1ビット分だけ遅れて整形された重畳信号が出力される。その結果、中継先となる第2伝送路22上に図11(d)のような重畳信号が生じる。なお、この例では第1前処理部181、第1整形部121のそれぞれにおいて重畳信号の正負が逆転しているが、正負は逆転しなくてもよい。
この構成によれば、中継装置1で中継された重畳信号の遅延時間を、殆ど重畳信号の1ビット分のみの遅れに揃えることができる。たとえば1ビットが6.4μsであれば、中継装置1を介した重畳信号の遅延時間は、フォトカプラ14や重畳部13で生じる遅延を無視すれば、理論上6.4μsのみとなる。したがって、中継装置1は、比較的短い遅延時間で重畳信号を整形して、当該重畳信号に基づいた第1制御信号および第2制御信号を生成することができる。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。