図1は,本実施の形態に関連する受信装置の機能ブロック図である。受信装置1は,アンテナ11と,アンテナ11を介して受信した受信信号をダウンコンバートし直交復調などをするRF処理部12と,RF処理が施された信号をA/D変換して受信信号Rとして出力するA/D部13と,受信信号Rに含まれる不要波の発生期間を検出し,この検出された発生期間では,検出信号FLGを不要波消去部15に出力する不要波発生期間検出部14と,検出信号FLGに応答して不要波を受信信号Rから消去する不要波消去部15と,不要波消去部15から入力される信号(不要波が消去された受信信号)を復号する復号部16とを有する。なお,OFDM形式の送信信号を受信する場合には,不要波消去部15の後段にGI除去処理,FFT処理,伝搬路推定/補償処理などを実行する機能ブロックを設ける。
不要波発生期間を検出する方法を図2〜図7を用いて説明する。
この検出方法の一例としては,受信信号の電力値を時間平均し,時間平均した値が所定の閾値以上になった期間を不要波の発生期間として検出する方法(以下,平均電力法と略記する)がある。
図2は,平均電力法を実行する不要波発生期間検出部14の機能ブロック図である。不要波発生期間検出部14は,受信信号Rの電力を算出する電力算出部21と,時間方向における受信信号Rの平均電力(積分電力)を算出する平均部22と,算出した平均電力が閾値Tha以上か否かを判定する閾値判定部23とを有する。不要波発生期間検出部14は,平均部22が算出した平均電力が閾値Tha以上の期間を不要波の発生期間として検出する。
図3は,平均電力法の問題点を説明する第1の図である。横軸は時間,縦軸は信号の電力を示し,符号Dは受信信号の希望波を示し,符号Uは不要波を示す。ここでは,受信装置1が,OFDM方式,CDMA方式のようなピーク対平均電力比(PAPR:Peak to Average Power Ratio)が高い無線方式で送信された信号を受信するとする。このように,ピーク対平均電力比が高い信号の場合,図3に示すように,希望波Dのピークに不要波Uが埋もれることがある。このような場合,受信信号Rの電力値を時間平均しても,希望波Dが閾値Tha以上の期間を不要波Uの発生期間として誤検出することがある。
そこで,時間平均する際の時間を長くとり,受信信号の電力をより平均化するとする。しかし,このように平均時間を長くしても(積分時間を長くしても),不要波Uの発生期間を高精度に検出することができなくなることがある。その理由を図4を用いて説明する。
図4は,平均電力法の問題点を説明する第2の図である。図4(A)は,平均時間を長くする前の希望波D,不要波Uを示し,図4(B)は,平均時間を長くした後の希望波D’,不要波U’を示す。図4(A)に示すように,希望波Dの最大ピークD1が,閾値Tha以上の場合,不要波発生期間検出部14は,閾値Tha以上の電力に対応する希望波の期間W1を不要波の発生期間として誤検出する。
そこで,平均時間を長くすると,希望波Dの最大ピークD1が平均化され,最大ピークD1の電力が低下する。その結果,図4(B)に示すように,希望波D’の最大ピークD1’が閾値Tha未満になり,先に述べた誤検出を防ぐことができる。しかし,平均時間を長くすることにより,パルス状の不要波Uがなまり,図4(B)に示すような不要波U’となる。その結果,平均時間を長くする前の不要波Uの発生期間W2よりも平均時間を長くした後の不要波U’の発生期間W3が長くなり,高精度に不要波の発生期間を検出することができなくなる。
図4(A)に説明した平均時間からさらに平均時間を短くすると,図4(A)の希望波Dの最大ピークD1がより大きくなることがある。この場合,閾値Tha以上の電力に対応する希望波の期間W1が長くなる。
不要波発生期間を検出する方法の他の例について,図5を用いて説明する。
図5は,ガードバンド電力による不要波の発生期間を検出する方法(以下,ガードバンド電力法と略記する)を説明する図で,横軸は周波数,縦軸は信号の電力を示す。このような周波数領域に対する信号の関係を示すグラフは,図3,図4に示した時間領域に対するOFDM方式の信号をFFT処理することにより得ることができる。無線通信において,隣接無線方式,隣接チャネルに対する影響や,隣接無線方式,隣接チャネルからの影響をなくすため,データが送信されない周波数帯(ガードバンドとも言う)が設定されている。このガードバンド領域においては,データが送信されない。図5では,データが送信される周波数領域,すなわち希望波Dの周波数領域の両端に,ガードバンド領域GB1,GB2が設けられている。ガードバンド電力法を実行するためには,ガードバンド領域GB1,GB2に対応する周波数領域W4,W5を通過帯域とするバンドパスフィルタBPF1,BPF2を設ける。そして,BPF1,BPF2が通過させた周波数領域に対応する信号の電力が閾値Thbの期間(時間)を不要波Uの発生期間として検出する。
図6は,ガードバンド電力法を実行する不要波発生期間検出部14の機能ブロック図である。不要波発生期間検出部14は,ガードバンド領域GB1,GB2の周波数を通過帯域とするバンドパスフィルタ61と,バンドパスフィルタを通過した受信信号の電力を算出する電力算出部62と,算出した平均電力が閾値Thb以上か否かを判定する閾値判定部63とを有する。不要波発生期間検出部14は,バンドパスフィルタ61を通過した受信信号の電力が閾値Thb以上の期間を不要波の発生期間として検出する。なお,ガードバンド領域GB1,GB2の何れか一方にのみバンドパスフィルタを設けてもよい。また,電力算出部62の後段に,バンドパスフィルタ61を通過した受信信号の電力を時間平均する機能ブロックを設けてもよい。
図7は,ガードバンド電力法の問題点を説明する図である。符号Lは,希望波Dの漏洩電力を示す。漏洩電力Lは,送信装置の送信信号用増幅器(パワーアンプ)の歪みにより,希望波Dの電力成分がガードバンド領域GB1,GB2に漏洩するものである。この歪みは,パワーアンプの入力信号に対して出力信号が線形的に増幅(変化)しないこと,いわゆる入力に対する出力の飽和に起因して生じるものである。他にも,受信装置が移動している場合,ドップラー効果により,受信信号強度が変化し受信信号の位相がずれる,いわゆるフェージング現象が発生する。その結果,サブキャリアの周波数がずれることがある。このサブキャリアの周波数のずれにより,あるサブキャリアの電力成分が隣接するサブキャリアの電力成分に影響を与える。これが原因で,ガードバンド領域GB1,GB2に希望波Dの電力が漏れることがある。
ガードバンド領域GB1において,不要波Uの電力が閾値Thb未満,かつ,漏洩電力Lが閾値Thb以上の場合,不要波発生期間検出部14は,バンドパスフィルタ61(BPF1)を通過した希望波Dの漏洩電力Lが閾値Thb以上の期間を不要波の発生期間として誤検出する。その結果,不要波の発生期間を高精度に検出することができなくなる。また,図7の不要波Uのように,ある周波数領域における電力が一定でない場合,すなわち不要波Uに周波数特性がある場合も同様に,不要波Uの発生期間を高精度に検出することができなくなることがある。
以上に説明したように,平均電力法,ガードバンド電力法を用いて単純に不要波の発生期間を検出すると誤検出することがある。
<第1実施形態>
図8は,第1実施形態の受信装置の機能ブロック図である。受信装置2は,第1のアンテナ81を介して送信信号を受信し第1の受信信号を出力するRF処理部82(第1の受信部)と,第2のアンテナ91を介して送信信号を受信し第2の受信信号を出力するRF処理部92(第2の受信部)と,第1の受信信号および第2の受信信号に基づき,第2の受信信号を第1の受信信号の逆相にし,逆相にした信号と第1の受信信号との合成信号SPを生成する合成部101と,合成信号SPのレベル(電力)が第1の閾値以上の期間を不要波の発生期間として検出する不要波発生期間検出部(第1の検出部)102と,検出された発生期間では,第1の受信信号に含まれる不要波を消去する第1の不要波消去部84と,検出された発生期間では,第2の受信信号に含まれる不要波を消去する第2の不要波消去部94とを有する。
RF処理部82,A/D部83,復号部85,さらに,RF処理部92,A/D部93,復号部95は,図1で説明したRF処理部12,A/D部13,復号部15と同機能の機能ブロックであり,その説明を省略する。
以下の説明では,A/D部83のデジタル出力信号を第1の受信信号R1,A/D部93のデジタル出力信号を第2の受信信号R2として説明する。
図9は,合成部101の処理内容を詳細に説明する図である。図9(A)は合成部101の機能ブロック図を示す。合成部101は,第1の受信信号R1に含まれる希望波を消去(減衰)する機能を有する。この機能を実現するために,合成部101は,第2の受信信号R2を第1の受信信号R1と同相にした同相信号FOを生成するFIRフィルタ101aと,同相信号FOに“−”マイナスを乗算して逆相信号(第2の受信信号R2を第1の受信信号R1の逆相にした信号)とし,この逆相信号と第1の受信信号R1とを合成した合成信号SPを出力する合成器101bとを有する。合成部101は,さらに,合成信号SPと第2の受信信号R2との相関値を算出することによりFIRフィルタ101aのタップ係数ReImを演算する係数演算部101cを有する。なお,FIRフィルタは,有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)フィルタとも呼ばれる。
図9(B)は第1の受信信号R1に含まれる希望波D1,不要波U1のコンスタレーションを示し,図9(C)は第2の受信信号R2に含まれる希望波D2,不要波U2のコンスタレーションを示し,図9(D)はFIRフィルタ101aが出力した同相信号FOに含まれる希望波D2’,同不要波U2’のコンスタレーションを示す。図9(E)は受信信号R1と,同相信号FOの逆相信号とが合成された状態のコンスタレーションを示し,図9(F)は合成器101bが出力した合成信号SPのコンスタレーションを示す。
前述したように,例えば受信装置を自動車に搭載した場合,ワイパーのモータなどの不要波の発生源と受信装置のアンテナとの位置関係は固定である。従って,第1の受信信号R1に含まれる希望波D1と第2の受信信号R2に含まれる希望波D2の位相差,振幅差はほとんど変化しない。同様に,第1の受信信号R1に含まれる不要波U1と第2の受信信号R2に含まれる不要波U2の位相差,振幅差はほとんど変化しない。この性質を利用し,第1の受信信号に含まれる希望波D1を消去する。
この消去方法について具体的に説明する。以下の説明では,不要波U1,U2は,希望波D1,D2に比べて電力レベルが低いものとして説明する。FIRフィルタ101aは,後述する係数演算部101cが出力したタップ係数ReImに基づき,図9(C)に示した希望波D2と不要波U2の合成波(第2の受信信号R2)を,図9(B)に示した希望波D1と不要波U1の合成波(第1の受信信号R1)と同相にする。図9(D)は,この同相にした信号FOに含まれる希望波D2’,不要波U2’を示している。
次いで,合成器101bは,同相信号FOに“−”マイナスを乗算して逆相にする。この逆相にした信号の希望波,不要波が,図9(E)に示した希望波D2”,不要波U2”である。そして,合成器101bは,図9(E)に示したように,この逆相信号と,受信信号R1とを合成する。前述したように,受信信号に含まれる不要波は,希望波に比べて電力レベルが低いので,希望波と不要波との合成波(受信信号)に対する不要波の影響は低い。そのため,図9(E)に示したように,希望波D2”が希望波D1の逆相になる。そして,図9(F)に示したように,合成信号SPにおいて,希望波D1,D2が消去され,不要波U1と不要波U2”との合成波(U1+U2”)が生成される。このようにすることにより,受信信号R1の希望波D1が消去され,不要波U1と不要波U2”との合成波(U1+U2”)が抽出される。
係数演算部101cは,合成信号SPと第2の受信信号R2に基づき,FIRフィルタ101aのタップ係数を演算する。このタップ係数は,FIRフィルタ101aが希望波D2を希望波D1の同相にする際に必要な係数である。なお,詳細については,図12で説明する。
図10は,合成部101が受信信号に含まれる希望波を減衰した後の不要波Uと希望波Dを示した第1の図,図11は,同第2の図である。図10は,図3に対応し,図11は図7に対応する。このように,合成信号SPにおいて,不要波Uの電力よりも希望波Dの電力が十分に小さくなり,希望波Dに不要波Uが埋もれなくなる。その結果,不要波発生期間検出部102は,不要波Uの発生期間を高精度に検出することができる。特に,図11においては,希望波Dの漏洩電力Lも消去されているので,ガードバンド領域GB1,GB2における不要波Uの周波数成分のみがBPF1,BPF2により通過する。その結果,不要波Uの発生期間を高精度に検出することができる。
図9の説明に戻る。係数演算部101cによるタップ係数の演算は,(式1)に示すように,一般的に,受信信号R2のIQ成分と合成信号SPを複素共役にしたIQ成分との相関値を算出することにより行われる。
R2×Sp*(Sp*はSpの共役複素数)
=(R2i+jR2q)×(Spi-jSpq)
=R2i×Spi+R2q×Spq+j(-R2i×Spq+R2q×Spi)…(式1)
図12は,係数演算部101cの回路図である。係数演算部101cは,(式1)に示すように,受信信号R2のIQ成分と合成信号SPの共役複素のIQ成分との相関値を算出する。そして算出した相関値を積分器により積分することによりタップ係数((Re1,Im1),(Re2,Im2)…)を算出する。このタップ係数は,FIRフィルタ101aの出力信号FOが第1の受信信号R1に対して同相になるように,すなわち合成信号SPの積分電力が最少になるように算出される。
具体的には,乗算器M1がR2IchとSPIchとを乗算し,乗算器M2がR2QchとSPQchとを乗算し,加算器A1が乗算器M1の乗算結果と乗算器M2の乗算結果とを加算する。そして,積分器I1がこの加算結果を積分(平均)して(式1)の実数部である“R2i×Spi+R2q×Spq”(Re1)を得る。また,乗算器M3がSPQchと“−1”とを乗算し,乗算器M4がこの乗算結果とR2Ichとを乗算し,乗算器M5がR2QchとSPIchとを乗算し,加算器A2が乗算器M4の乗算結果と乗算器M5の乗算結果とを加算する。そして,積分器I2がこの加算結果を積分して(式1)の虚数部である“-R2i×Spq+R2q×Spi”(Im1)を得る。
以降,遅延部T1によりR2Ich,R2Qchを所定時間遅延させ,遅延後のR2Ich,R2QchとSPIch,SpQchとに基づき,(式1)の計算を行い,Re2,Im2を得る。この遅延部T1による遅延について説明する。同じ送信信号を第1のアンテナ81と第2のアンテナ91を受信する場合,この送信信号の受信タイミングに遅延が生じることがある。この受信タイミングの遅延に対応するように,遅延部T1が設けられている。そのため,受信タイミングの遅延が短い場合,遅延部T1が不要になり,それに伴い,Re2…,Im2…を演算する乗算器,加算器,積分器も不要になる。
図13は,係数演算部101cの積分器の回路図である。この積分器は,いわゆる無限インパルス応答型(IIR:Infinite Impulse Response)の積分器であり,αは平均の重み付け係数,すなわち時定数である。時定数αが小さいほど長時間,出力値が遅延する(出力値がなまる)。
図14は,FIRフィルタ101aの回路図である。FIRフィルタ101aは,R2Ichと係数演算部101cが演算した(式1)の実数成分(Re1…)との乗算結果と,R2Qchと係数演算部101cが演算した(式1)の虚数成分(Im1…)との乗算結果とを加算し,同相信号FOのI相成分(FOIch)を生成する。また,R2Ichと係数演算部101cが演算した(式1)の虚数成分(Im1…)との乗算結果とR2Qchと係数演算部101cが演算した(式1)の実数成分(Re1…)との乗算結果とを加算し,同相信号FOのQ相成分(FOQch)を生成する。
具体的には,乗算器M11がR2IchとRe1とを乗算し,乗算器M12が遅延部T11により遅延されたR2IchとRe2とを乗算する。そして,加算器A11が乗算器M11の乗算結果と乗算器M12の乗算結果とを加算する。なお,この遅延部T11は図12で説明した遅延部T1に対応して設けられている。また,乗算器M13がR2IchとIm1とを乗算し,乗算器M14が遅延部T11により遅延されたR2IchとIm2とを乗算する。そして,加算器A12が乗算器M13の乗算結果と乗算器M14の乗算結果とを加算する。また,乗算器M15がR2QchとIm1とを乗算し,乗算器M16が遅延部T11により遅延されたR2QchとIm2とを乗算する。そして,加算器A13が乗算器M15の乗算結果と乗算器M16の乗算結果とを加算する。また,乗算器M17がR2QchとRe1とを乗算し,乗算器M18が遅延部T11により遅延されたR2QchとRe2とを乗算する。そして,加算器A14が乗算器M17の乗算結果と乗算器M18の乗算結果とを加算する。
最後に,加算器A15が加算器A11の加算結果と加算器A13の加算結果とを加算し,FIR後の同相信号FOのI相成分として出力する。また,加算器A16が加算器A12の加算結果と加算器A14の加算結果とを加算し,FIR後の同相信号FOのQ相成分として出力する。なお,タップ係数として,Re2,Im2以降の係数がある場合には,その係数に応じて,遅延部,乗算回路を設ける。以上説明したように,合成部101は,受信信号R1から希望波を消去し,不要波U1と不要波U2”との合成波(U1+U2”)を抽出する。
図8の説明に戻る。合成部101は,不要波U1と不要波U2”との合成波を含む合成信号SPを不要波発生期間検出部102に出力する。この合成信号SPは,図10,図11で説明したように,希望波が十分に減衰(消去)されているので,不要波が希望波に埋もれることはない。その結果,不要波発生期間検出部102は,不要波の発生期間を高精度に検出することができる。
不要波発生期間検出部102は,平均電力法,または,ガードバンド電力法により,入力された合成信号SPから不要波発生期間を検出する。平均電力法により不要波発生期間を検出する場合,図2で説明したように,検出部102は,合成信号SPの電力を算出する電力算出部と,時間方向における合成信号SPの平均電力を算出する平均部と,算出した平均電力が閾値Tha(第3の閾値)以上か否かを判定する閾値判定部を設ける。そして,検出部102は,平均部が算出した平均電力が第3の閾値以上の期間を不要波の発生期間として検出する。
ガードバンド電力法により不要波発生期間を検出する場合,検出部102は,データが送信される周波数領域の両端に設けられたデータが送信されないガードバンド領域の周波数を通過帯域とするバンドパスフィルタを設け,このバンドパスフィルタを通過した合成信号SPの電力が閾値Thb(第4の閾値)以上の期間を不要波の発生期間として検出する。なお,詳細については,図6で説明したので省略する。
不要波発生期間検出部102は,上記のようにして不要波の発生期間を検出した間,検出信号FLG1を,第1の不要波消去部84,第2の不要波消去部94に出力する。
第1の不要波消去部84は,検出信号FLG1に応答して,検出された不要波発生期間では,第1の受信信号R1に含まれる不要波を消去する。同じく,第2の不要波消去部94は,検出信号FLG1に応答して,検出された不要波発生期間では,第2の受信信号R2に含まれる不要波を消去する。不要波を消去する方法としては様々あるが,受信信号そのものを減衰して,例えば0値に置換する方法がある。
図15は,0値置換方法を実行する第1の不要波消去部84の機能ブロック図である。第1の不要波消去部84の0値置換部84aは,検出信号FLG1が入力される間,すなわち不要波発生期間では,不要波の発生期間の受信信号(電力)を,0値で置き換える。不要波の電力が大きい場合,例えば伝搬路補償精度が劣化するので,受信信号を減衰して0値にする。一方,検出信号FLG1が入力されない間,すなわち,不要波が検出されない期間では,0値置換は実行せず,入力信号をそのまま復号部85に出力する。なお,第2の不要波消去部94も同じ0値置換部を有する。
図16は,0値置換を実行後の受信信号を示した図である。図16に示したように,不要波の発生期間の間,受信信号の電力を0にする。その結果,点線で示すように不要波が消去される。不要波の発生期間は,極めて短いので,受信信号を0値に置換しても後段の復号部の誤り訂正により訂正される。その結果,0値置換しない場合に比べて,受信品質を向上させることができる。
第1実施形態で説明した受信装置によれば,不要波が希望波に埋もれる場合でも,不要波の発生期間を高精度に検出することができる。その結果,不要波の発生期間では不要波を正確に消去することができ,不要波が発生している期間において,不要波の消去処理を実行しない,また,不要波が発生していない期間において,不要波の消去処理を実行することによる受信信号の特性劣化を防止し,受信品質を向上させることができる。
<第2実施形態>
ところで,不要波の電力が希望波の電力に比べて非常に大きい場合,合成部101が,受信信号R1の不要波を消去することがある。その結果,不要波発生期間検出部102に出力する合成信号SPにおいて不要波が消去されてしまうので,不要波発生期間検出部102が高精度に不要波の発生区間を検出することができなくなる。
以下にその理由について説明する。図9の受信信号R1に含まれる不要波U1が希望波D1よりも非常に大きい場合を想定する。この場合,不要波の発生源とアンテナ81,91との位置関係は固定であるので,受信信号R2に含まれる不要波U2も希望波D2よりも非常に大きくなる。また,前述したように,合成部101の係数演算部101cは,希望波D2と不要波U2との合成波を希望波D1と不要波U1との合成波の同相にするタップ係数を演算する。このように希望波よりも不要波が大きくなると,希望波と不要波との合成波に対する不要波の影響が強くなり,合成部101は,希望波D2を希望波D1の逆相にするのではなく,不要波U2を不要波U1の逆相にして,希望波ではなく不要波を消去してしまう。そのため,不要波発生期間検出部102における不要波の検出精度が劣化し,不要波を高精度に消去することができなくなる。
図17は,この問題を解決した第2実施形態の受信装置の機能ブロック図である。図17からも明らかなように,受信装置3の合成部101の前段に不要波発生期間検出部(第2の検出部)103をさらに設けた。なお,図8と同機能の機能ブロックについては同一符号を付してその説明を省略する。
不要波発生期間検出部103は,第1の受信信号R1または第2の受信信号R2のレベル(電力)が第2の閾値以上の期間を不要波の発生期間として検出する。この第1の受信信号R1,第2の受信信号R2に含まれる不要波の電力は,希望波の電力に比べて大きいので,不要波が希望波に埋もれることがない。従って,不要波発生期間検出部103は,高精度に不要波の発生区間を検出することができる。不要波の発生期間の検出方法としては,前述したように,平均電力法,ガードバンド電力法を利用すればよい。この場合,第2の閾値を,不要波発生期間検出部102の第1の閾値よりも大きくすることが好ましい。
検出部103は,不要波の発生期間を検出した間,検出信号FLG2を合成部101の係数演算部101cに出力する。係数演算部101cは,検出信号FLG2が入力される間,すなわち,検出部103により不要波が検出された期間では,係数演算処理を一時停止する。この時,合成部101のFIRフィルタ101aは,一時停止前に係数演算部101cから入力されたタップ係数を利用して演算を行う。そして,不要波発生期間検出部103が不要波発生期間を検出しなくなり検出信号FLG2の出力を停止すると,係数演算部101cは,一時停止していた係数演算処理を再開する。
このようにすることで,希望波に対して大きい不要波が発生している期間では,合成部101は,第1の受信信号R1に含まれている不要波を消去しなくなる。また,合成部101は,不要波が発生していない期間では,係数演算部101cがタップ係数の演算を実行するので,第1の受信信号R1に含まれる希望波を消去することができる。そのため,不要波発生区間検出部102は,希望波に対して大きい不要波を含む合成信号SPに対して不要波の発生区間検出処理を実行するので,高精度に不要波の発生区間を検出することができる。
次に,第1の不要波消去部84,第2の不要波消去部94の他の例について説明する。図15では,0値置換法による不要波の消去方法について説明したが,ここでは,位相/振幅探索法による不要波の消去方法について説明する。
図18は,位相/振幅探索法を実行する第1の不要波消去部84の機能ブロック図である。合成部101が出力した合成信号SPに含まれる不要波は,図9で説明したように,第1の受信信号R1に含まれる不要波U1と,第2の受信信号R2に含まれる不要波U2の位相を回転した後の不要波U2”とを合成したものである。それ故,合成信号SPに含まれる不要波(不要波U1+不要波U2”)の位相を適切に回転し,振幅を調整することにより,この不要波(不要波U1+不要波U2”)を第1の受信信号R1に含まれる不要波U1と殆ど同じものにすることができる。位相/振幅探索法による不要波の消去方法は,この性質を利用し不要波を受信信号から消去する。第1の不要波消去部84は,第1の不要波発生期間検出部102が検出した不要波の発生期間では,合成信号SPに含まれる不要波(不要波U1+不要波U2”)を第1の受信信号R1に含まれる不要波U1と逆相かつ同振幅に調整した調整信号を生成し,調整信号と第1の受信信号R1とを合成することにより,第1の受信信号R1から不要波U1を除去して希望波D1を得る。
図19,図20は位相/振幅探索法の処理の流れを説明するフロー図である。以下,図18〜図20を参照しながら,位相/振幅探索法を説明する。
まず,図19のフロー図を用いて位相探索について説明する。タイミング制御部181は,不要波発生期間検出部102から検出信号FLG1が入力されると,この入力に応答して,タイミング信号T1を受信信号用メモリ182,不要波用メモリ183に出力する。入力されたタイミング信号T1に応答して,受信信号用メモリ182は,受信信号R1を記憶し,不要波用メモリ183は合成信号SPを記憶する(ステップS1)。
ステップS1の記憶が終了すると,タイミング制御部181はタイミング信号T2を積分器184,最小積分電力判定部185に出力する。また,タイミング制御部181は,受信信号用メモリ182,不要波用メモリ183に記憶されている信号をそれぞれ読み取る。そして,タイミング制御部181は,位相可変器186を利用して,不要波用メモリ183に記憶されている合成信号SPに含まれる不要波の位相をある角度回転する(ステップS2)。そして,合成器187を利用して,受信信号用メモリ182に記憶されている受信信号R1から位相回転後の合成信号SPを減算する(ステップS3)。この角度回転処理,減算処理は,信号Ctrに基づき実行される。ステップS2で説明したある角度は初回減算時には予め定められた角度が適用される。なお,振幅は1に固定している。
電力算出部188は,合成器187が減算(合成)した合成信号の電力を算出する。積分器184は,電力算出部188が算出した電力を積分(平均)し,最小積分電力判定部185を介して,積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶する(ステップS4)。
最小積分電力判定部185は,ステップS4において記憶した積分電力と,この記憶前に積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶した積分電力(前回の積分電力)とを比較し(ステップS5),比較値が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS6)。最小積分電力判定部185は,比較値が所定の閾値以上の場合(ステップS6/YES),2等分割法などを用いて,より小さな積分電力が得られる,次の位相回転角度を算出し積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶して(ステップS7),ステップS2に戻る。この決定した位相回転角度が,ステップS2で説明したある角度になる。比較値が所定の閾値未満の場合(ステップS6/NO),最小積分電力判定部185は,前回,ステップS7で算出した位相回転角度を探索後位相回転角度として積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶する(ステップS8)。
なお,希望波は所定変換形式により送信装置により生成された信号成分であるのに対して,不要波は雑音成分(ノイズ)であるので,希望波と不要波との間には相関関係は殆どない。従って,合成信号SPの不要波の位相が受信信号R1の希望波の位相に一致することはない。
次に,図20のフロー図を用いて振幅探索について説明する。ここでは,図19のステップS8の処理が終了した後から開始するものとして説明するがこれに限定されるものではなく,例えば,振幅探索を先に実行してもよい。なお,既に,受信信号R1が受信信号用メモリ182に記憶され,希望波が消去された合成信号SPが不要波用メモリ183に記憶されている。
タイミング制御部181はタイミング信号T2を積分器184,最小積分電力判定部185に出力する。また,タイミング制御部181は,受信信号用メモリ182,不要波用メモリ183に記憶されている信号をそれぞれ読み取る。そして,タイミング制御部181は,不要波用メモリ183に記憶されている合成信号SPに含まれる不要波の位相角度を位相可変器186を利用して図19のステップS8で記憶した探索後位相角度に調整した後,振幅可変器190を利用して,振幅をある振幅量調整する(ステップS11)。そして,合成器187を利用して,受信信号用メモリ182に記憶されている受信信号R1から振幅量調整後の合成信号SPを減算する(ステップS12)。この振幅調整処理,減算処理は,信号Ctrに基づき実行される。ステップS11で説明したしたある振幅調整量は初回減算時には予め定められた振幅量が適用される。以後,不要波の位相角度は,探索後位相角度に設定されたままである。
電力算出部188は,合成器187が減算(合成)した合成信号の電力を算出する。積分器184は,電力算出部188が算出した電力を積分し,最小積分電力判定部185を介して,積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶する(ステップS13)。
最小積分電力判定部185は,ステップS13において記憶した積分電力と,この記憶前に積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶した積分電力(前回の積分電力)とを比較し(ステップS14),比較値が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS15)。最小積分電力判定部185は,比較値が所定の閾値以上の場合(ステップS15/YES),2等分割法などを用いて,より小さな積分電力が得られる,次の振幅調整量を算出し積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶して(ステップS16),ステップS11に戻る。この決定した振幅調整量が,ステップS11で説明したしたある振幅調整量になる。比較値が所定の閾値未満の場合(ステップS15/NO),最小積分電力判定部185は,前回,ステップS16で算出した振幅調整量を探索後振幅調整量として積分電力/位相/振幅メモリ189に記憶する(ステップS17)。
図18に戻る。図19,図20で説明した処理が終了すると,タイミング制御部181は,信号Ctrを位相可変器186に出力し,不要波用メモリ183に記憶されている合成信号SPの不要波の位相を図19のステップS8で記憶した探索後の位相回転角度分回転させる。さらに,信号Ctrを振幅可変器190に出力し,位相回転後の合成信号SPの不要波の振幅を図20のステップS17で記憶した探索後の振幅調整量分調整させる。この位相回転および振幅調整がされた信号SOに含まれる不要波の位相角度,振幅量は,受信信号R1に含まれる不要波の位相角度,振幅量と同じ,すなわち同相である。
タイミング制御部181は,信号SOが生成されると,タイミング信号T3を合成器191に出力する。合成器191は,タイミング信号T3に応答して,信号SOに“−”を乗算し,第1の受信信号R1に含まれる不要波と逆相かつ同振幅に調整した調整信号を生成する。そして,合成器191は,遅延部192により所定時間遅延された受信信号R1と調整信号を合成する。この遅延時間は,図19のステップS1からステップS8までの所要時間と,図20のステップS11からステップS17までの所要時間の合計時間に相当するものである。この合成器191の合成処理によって,第1の受信信号R1に含まれる不要波が消去される。
検出信号FLG1が入力されない間,すなわち,不要波が発生していない期間では,遅延部192により所定時間遅延された信号が,そのまま復号部85に出力されることになる。
図21は,位相/振幅探索法による不要波消去処理を実行後の受信信号を示した図である。この不要波消去処理により,点線で示すように不要波が消去される。
第2の不要波消去部94も図18で説明した同じ機能ブロックを有する。この場合,第2の不要波消去部94の受信信号用メモリ182には第2の受信信号R2が入力される。
第2実施形態で説明した受信装置によれば,不要波の電力が希望波の電力に対して大きい場合であっても,不要波の発生期間を検出する前に不要波を消去することがなくなる。その結果,不要波の発生期間を高精度に検出することができる。
なお,不要波発生期間検出部102が,不要波消去部94,不要波消去部95に不要波発生期間の検出信号FLG1を出力しているが,その代わりに,不要波発生期間検出部103が検出信号FLG2を出力してもよい。
0値置換法による不要波の消去方法を第2実施形態の第1の不要波消去部84,第2の不要波消去部94で実行してもよい。この場合,合成部101からの合成信号SPの入力は不要になる。また,位相/振幅探索法による不要波の消去方法を第1実施形態の第1の不要波消去部84,第2の不要波消去部94で実行してもよい。この場合,合成部101からの合成信号SPを第1の不要波消去部84,第2の不要波消去部94に入力する必要がある。
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
(付記1)
第1のアンテナを介して送信信号を受信し第1の受信信号を出力する第1の受信部と,
第2のアンテナを介して前記送信信号を受信し第2の受信信号を出力する第2の受信部と,
前記第1の受信信号および前記第2の受信信号に基づき,前記第2の受信信号を前記第1の受信信号の逆相にし,前記逆相にした信号と前記第1の受信信号との合成信号を生成する合成部と,
前記合成信号のレベルが第1の閾値以上の期間を不要波の発生期間として検出する第1の検出部と,
前記検出された発生期間では,前記第1の受信信号に含まれる不要波を消去する第1の不要波消去部と,
前記検出された発生期間では,前記第2の受信信号に含まれる不要波を消去する第2の不要波消去部とを有する受信装置。
(付記2)
付記1において,
前記合成部は,前記第2の受信信号を前記第1の受信信号と同相にした同相信号を生成するFIRフィルタと,前記同相信号の逆相信号と前記第1の受信信号とを合成した合成信号を出力する合成器とを有する受信装置。
(付記3)
付記2において,
前記合成部は,さらに,前記合成信号と前記第2の受信信号との相関値を算出することにより前記FIRフィルタのタップ係数を演算する係数演算部を有する受信装置。
(付記4)
付記3において,
さらに,前記第1の受信信号または前記第2の受信信号のレベルが第2の閾値以上の期間を不要波の発生期間として検出する第2の検出部を有し,
前記係数演算部は,前記第2の検出部が検出した不要波の発生期間では,係数演算を停止し,前記FIRフィルタは,前記係数演算部が係数演算を停止する前のタップ係数に基づき前記同相信号の生成を行う受信装置。
(付記5)
付記4において,
前記第1の不要波消去部は,前記第1の検出部または前記第2の検出部が検出した不要波の発生期間では,前記第1の受信信号に含まれる不要波を消去し,
前記第2の不要波消去部は,前記第1の検出部または前記第2の検出部が検出した不要波の発生期間では,前記第2の受信信号に含まれる不要波を消去する受信装置。
(付記6)
付記1から5の何れかにおいて,
前記第1の不要波消去部は,前記不要波の発生期間では,前記第1の受信信号を減衰し,
前記第2の不要波消去部は,前記不要波の発生期間では,前記第2の受信信号を減衰する受信装置。
(付記7)
付記1から5の何れかにおいて,
前記第1の不要波消去部は,前記不要波の発生期間では,前記合成信号を前記第1の受信信号に含まれる不要波と逆相かつ同振幅に調整した調整信号を生成し,前記調整信号と前記第1の受信信号とを合成し,
前記第2の不要波消去部は,前記不要波の発生期間では,前記合成信号を前記第2の受信信号に含まれる不要波と逆相かつ同振幅に調整した調整信号を生成し,前記調整信号と前記第2の受信信号とを合成する受信装置。
(付記8)
付記1から7の何れかにおいて,
前記第1の検出部は,前記合成信号の時間方向における平均電力を算出し,前記算出した平均電力が第3の閾値以上の期間を不要波の発生期間として検出する受信装置。
(付記9)
付記1から7の何れかにおいて,
前記第1の検出部は,データが送信される周波数領域の両端に設けられた前記データが送信されないガードバンド領域の周波数を通過帯域とするバンドパスフィルタを有し,前記バンドパスフィルタを通過した前記合成信号の電力が第4の閾値以上の期間を不要波の発生期間として検出する受信装置。