JP5540586B2 - 信号処理回路、agc回路、および記録再生装置 - Google Patents
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Description
しかし他方で、デジタル処理により遅延(ディレイ)が増大してしまう傾向がある。
この増大は信号が一方向に流れてゆく分には余り問題ではないが、AGCやPLLといったループ処理では系が不安定になり易い。
制御理論では、このディレイを“無駄時間”と呼び、ローパスフィルタ等で発生する“遅れ時間”と区別する。
その原点となるのが特許文献1に開示されたスミス(Smith)の方法である。また、同様の方法が特許文献2に開示されている。また、類似の方法は、非特許文献1に開示されている。
なお、図1において、加算器6に入力するdは外乱入力を示し、本来的には系の外乱応答特性を解析するために用意されている。
すると、“制御信号生成部の特性を修正する”というよりは、“理想フィードバック系の出力を無駄時間分遅らせたものと、実応答との差分を入力にフィードバックする”、と解釈できる。
ブロック構成的には、図3のような無駄時間系を考察する必要がある。
フィードバック系は、無駄時間を含まない伝達特性、測定系M(s)、補償系K(s)、制御信号生成系C(s)と、それぞれのブロックの無駄時間により形成されている。
この系ではA(s)、M(s)、C(s)および各ブロックの無駄時間はシステムとして所与のもので、唯一の設計自由度であるK(s)で、全体の伝達特性y/rを調整する。
しかしながらK(s)だけでは、一巡伝達関数に対し無視できない無駄時間がある場合には、十分な応答特性が得られない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(信号処理回路の基本構成)
2.第2の実施形態(信号処理回路の好適な構成)
3.第3の実施形態(AGC回路の構成例)
4.第4の実施形態(記録再生装置の構成例)
図4は、本発明の第1の実施形態に係る信号処理回路の構成例を示す図である。
信号処理回路100は、メインパス110と負帰還パス120によりフィードバックループLFDB1が形成されている。
信号処理回路100は、信号のメインパス110のメインパスブロック111ならびに負帰還パス120の負帰還ブロック121を有し、ループ内に無駄時間を持つ負帰還型信号処理系として形成されている。
レプリカブロック122は、処理信号(擬似実信号)ypを信号遅延ブロック123および減算器124の(−)側端子に出力する。
減算器124は、(+)側端子に加算器125の出力信号rpが入力される。
加算器125は、一方の(+)端子にメインパスブロック111から出力される無駄時間を含む処理信号である実信号yが入力され、他方の(+)端子に信号遅延ブロック123の無駄時間を含む信号が入力される。
さらに、負帰還パス120において、負帰還ブロック121、レプリカブロック122、および減算器124により、無駄時間のない理想系である第2のローカル負帰還系ループ127が形成されている。
図6は、本第1の実施形態の信号処理回路の構成過程を説明するための第2図である。
なお、図5および図6は、理解を容易にするために簡略して示してある。
実出力信号yのタイミングはL1分早く出てしまうが、ループ特性を考える上では無視して良い。
レプリカブロック122の出力信号ypを無駄時間分遅らせて、極性を考えてフィードバック経路に注入すると図4の構成を得る。
これが無駄時間を補償する信号処理系の基本構成となる。
そして、合成信号rpが無駄時間のないローカル負帰還系ループ127に入力される。 ローカル負帰還系ループ127には、減算器124を通して実信号の推定誤差rpと無駄時間のない擬似信号ypとの差分が含まれ、それを含む制御信号uがメインパス110の減算器112に入力される。
これにより、閉ループ特性の分母から無駄時間因子が無くなり、無駄時間のループ特性に対する影響を応答性良く補償することができる。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る信号処理回路の構成例を示す図である。
第2の実施形態に係る信号処理回路100Aは、信号検出器の伝達特性を表現するため、遅延ブロックに伝達特性を含めている。
またその無駄時間Lには、一巡無駄時間を全て足し込んでおく。
設計パラメータとして選択の余地があるのは、帰還ブロック121AのK(s)、レプリカブロック122AのA´(s)、信号遅延ブロック123AのN(s)である。
補償条件を要求すると閉ループ伝達関数は、次のようになる。
右辺第一因子第二項を、次のように置く。
もしK(s)が完全積分1/sなら残留誤差条件は、A(0)、M(0)が存在するとして、次のようになる。
閉ループ特性は、K(s)が主要極を決める状況下では1次系に近い応答になる。後で具体例を示すが、経験した範囲では、この特解で十分である。
なお離散系の場合の残留誤差条件はz変換を用いて、次のように表される。
図8は、本発明の第3の実施形態に係るAGC回路の構成例を示す図である。
負帰還パス220には、振幅検出器(Amplitude detector)221、制御ブロック(Controller)222、およびデジタルアナログ変換器(DAC)223が配置されている。
フィードバックループLFDB2において、ADC212の出力からDAC223の入力までの経路においてはデジタル信号処理が行われる。
そして、AGC回路200において、制御ブロック222が無駄時間補償系の第1のローカル負帰還系ループおよび第2のローカル負帰還系ループを含んで構成される。
ADC212でデジタル化された信号は等化器213を通って、後段の信号処理部に送られる。
実信号yはまた、振幅検出器221にも送られ、振幅情報が検出される。
この振幅情報と目標振幅(target amplitude)aから制御ブロック222が適切な制御信号uを生成し、DAC223経由でVCA211が制御される。
振幅検出の応答速度がAGCの応答速度限界を決めるため、その設計は重要である。
振幅検出手段として、ピーク検出器や平均値検出器があるが、ここではいずれの回路であっても良く、特に限定しないが高速応答なものが望まれる。
図9は、AGCの非線形性について説明する単純モデルを示す図である。
このAGCモデルでは、振幅検出器221の実出力信号yの振幅と目標振幅aとの差分が減算器224で得られ、その差分が積分器225で完全積分され、制御信号uとなる。
VCA211は入力信号rと制御信号uの掛算器である。非線形性はこの掛算器により生じる。
AGCは広い引込み幅(多くの場合±6dB以上)が要求されるため、局所的な線形化ではうまく近似できない。
たとえば、入力が大きい方向からの整定と、小さい方向からの整定では、整定時間に大きな差が観測される。
ここで、折線関数の原理について説明する。
図11は、所定の入力範囲に対応する直線を組み合わせた折線関数の原理特性のグラフを示す図である。
以下、折線関数の対象とする関数を対数型関数とするが、対数型関数に限定することなく一般の曲線を表す関数であっても良い。
上述したように、目標振幅をa、検出された実出力信号yの振幅をa+Δaとすると、図に示すように、対数化振幅誤差として積分器に入力される値は、
ここで用いる関数log(対数型関数)は、説明を簡単にするため以下自然対数として説明する。自然対数は常用対数に対してゲイン調整するだけの違いであるから、本質的には同じである。
たとえば、折線関数f(x)を次式に定義する。
図11に示すように、変数xが−0.5から+1.0の範囲において、折線関数f(x)は関数log(1+x)を十分近似している。
また、数12で表される折線関数f(x)は傾きが2、1と1/2と2のべき乗であるため、特にデジタル演算処理においては入力値の変数xを掛算器を用いずにビットのシフトと条件判定だけで実現することができる。
すなわち、この条件に基づく折線関数はlog(ログ)テーブルを用いる装置(メモリ等とその制御回路)に比べると、大幅に簡素化することができる。
なお、上述した折線関数f(x)は一つの実施例に過ぎず、種々の変形が可能であり、AGCループはサーボ系を構成しているので、折線関数において横軸(変数x)の多少違う位置で線を折り曲げても、AGC特性はそれ程変わらない。
この問題を解決するために、折線アンプ(折線関数発生器)をΔa/aに対してではなく、Δaを入力とする構成と方法がある。
このような折線アンプ(折線関数発生器)の特性は目標振幅aによって変ってくるが、あまり大きく変らない限りは設定範囲の中央値に対して設計しておけば、実用上十分であり問題は生じない。
すなわち、目標振幅aに対する誤差(偏移)をΔaと設定してa+Δaを代入した折線関数の演算結果が、相対的に1+Δa/aに対応する折線関数の値に成ればよい。
AGC回路200Cにおいては、折線アンプ(g(x))はゲイン1のアンプとして、省略した。ここではデジタルで実装を反映してz変換形式で図示した。
ここでは、理解を容易にするために、図7と同一符号をもって表している。
さらに、無駄時間補償系230は、負帰還ブロック121、レプリカブロック122、および減算器124により、無駄時間のない理想系である第2のローカル負帰還系ループ127が形成されている。
ただし、ループ特性を見る場合、dB換算しないと線形にならないが、デジタル表記のLSBで見る方が分かり易い。
dBリニアなVCAがK0 dB/LSBのゲイン感度があるとする。これは制御コードが1LSB変ると出力振幅が、
ここでの計算が、dBとLSBとの単位変換に相当する。その他のパラメータ例を図13に示す。
図14は、Matlabによる方式シミュレーションの結果である。図14において、横軸はクロック数を、縦軸は振幅誤差で任意スケールをそれぞれ表している。
図14に示すように、Kiの設定にかかわらず、ほぼ1次の系で収束している様子が分かる。Kiが小さいうちは、時定数がKiにほぼ反比例しているが、Kiが大きくなると振幅検出器の時定数により高速化が制限されている。
この場合、Ki>1/512では振動的になってしまう。
実質的に無駄時間により応答特性が制限され、図14の応答特性に及ばない。無駄時間が大きくなるほど、両者の差も開いてしまう。
図16は、N(z)=1とした場合の応答特性を示す図である。
Kiを大きくすると、さすがに振動的になるが、無駄時間補償をしなかった場合よりは応答速度を改善でき、またアンダーシュートも小さい。同じKiならアンダーシュートがある分整定が早いということもあり、性能限界を追求しないのであれば、これで十分と言える。
残渣条件はできるだけ厳密に守るべきだが、補償条件は応答特性を見ながら緩和して行く柔軟性が望ましい。
違う視点から見ると、このような大きな理論値からのずれを許容できることから、実設計においては避けられないレプリカと実体のバラツキも、十分許容範囲にあることが期待できる。
AGC回路の場合に詳細に説明したが、これに限らないことは明らかである。もうひとつ例を上げるとすれば、オフセットをキャンセルするような用途にも適用できる。
[記録再生装置の構成]
図17は、本発明の実施形態に係るAGC回路を適用した記録再生装置のブロック構成を示す図である。
なお、AGC回路330は、第3の実施形態で説明したAGC回路と同様の構成および機能を有する。したがって、ここではその詳細な説明は省略する。
また、不図示の信号処理回路では、入力された高周波信号がデ・インターリーブや誤り訂正された後信号処理されて映像信号や音声信号が再生される。一方、記録動作の場合は、上述の動作とほぼ逆の動作が行われ、フォーカス制御、トラッキング制御の動作を伴いながら映像情報、画像情報、音声情報等が変調されてレーザダイオードを介してディスクに書き込まれる。
Claims (6)
- 入力信号を伝播し実信号を出力するメインパスと、
上記実信号を上記メインパスの入力段に帰還させる負帰還ブロックを含む負帰還パスと、を有し、
上記メインパスは、
入力信号を受けて実信号を出力するメインパスブロックを、含み、
上記メインパスの上記メインパスブロックならびに上記負帰還パスの上記負帰還ブロックを含んで形成される負帰還ループ内に、制御理論での無駄時間を含む負帰還型信号処理系として形成される信号処理回路であって、
上記負帰還パスは、
制御信号を生成して上記メインパスの入力信号の入力部に供給する上記負帰還ブロックと、
上記負帰還ブロックの制御信号が供給され擬似実信号を出力する、上記メインパスブロックを模擬するレプリカブロックと、
上記レプリカブロックの擬似実信号をループの無駄時間分遅延させる信号遅延ブロックと、を含み、
上記負帰還ブロックと、上記レプリカブロックと、上記信号遅延ブロックとを含んで無駄時間を含む第1のローカル負帰還系ループが形成され、
上記負帰還ブロックおよび上記レプリカブロックにより無駄時間のない第2のローカル負帰還系ループが形成され、
上記第1のローカル負帰還系ループにおいて、上記信号遅延ブロックの出力信号と上記実信号とを合成し、合成信号を出力する合成部と、
上記合成信号から上記第2のローカル負帰還系ループにおける上記レプリカブロックの擬似実信号を減算し、当該減算後の信号を上記負帰還ブロックに入力させる減算器と、を含む
信号処理回路。 - 入力信号の振幅を調整し実信号を出力するメインパスと、
上記実信号の振幅情報を上記メインパスの振幅調整段に帰還させる負帰還ブロックを含む負帰還パスと、を有し、
上記メインパスは、
入力信号の振幅を制御信号に応じて可変する可変利得部を含み、入力信号を受けて実信号を出力するメインパスブロックを、含み、
信号処理回路は、上記メインパスの上記メインパスブロックならびに上記負帰還パスの上記負帰還ブロックを含んで形成される負帰還ループ内に、制御理論での無駄時間を含む負帰還型信号処理系として形成され、
上記負帰還パスは、
上記メインパスから出力される実信号の振幅を検出する振幅検出器と、
上記振幅検出器による振幅情報と目標振幅から上記制御信号を生成し、上記可変利得部に出力する制御ブロックと、を含み、
上記制御ブロックは、
制御信号を生成して上記メインパスの入力信号の入力部に供給する上記負帰還ブロックと、
上記負帰還ブロックの制御信号が供給され擬似振幅信号を出力する、上記メインパスブロックを模擬するレプリカブロックと、
上記レプリカブロックの擬似振幅信号をループの無駄時間分遅延させる信号遅延ブロックと、を含み、
上記負帰還ブロックと、上記レプリカブロックと、上記信号遅延ブロックとを含んで無駄時間を含む第1のローカル負帰還系ループが形成され、
上記負帰還ブロックおよび上記レプリカブロックにより無駄時間のない第2のローカル負帰還系ループが形成され、
上記目標振幅から上記振幅検出器の検出振幅を減算する第1の減算器と、
上記第1のローカル負帰還系ループにおいて、上記信号遅延ブロックの出力信号と上記第1の減算器の出力信号とを合成し、合成信号を出力する合成部と、
上記合成信号から上記第2のローカル負帰還系ループにおける上記レプリカブロックの擬似実信号を減算し、当該減算後の信号を上記負帰還ブロックに入力させる第2の減算器と、を含む
AGC回路。 - 上記可変利得部は、
入力信号と上記制御信号を掛け算する掛算器を含み、
上記制御ブロックは、
上記掛算器の非線形性を補償する機能を有する
請求項3または4記載のAGC回路。 - 記録媒体の情報をピックアップするピックアップ素子と、
上記ピックアップ素子でピックアップされた信号レベルを調整するAGC回路と、を有し、
上記AGC回路は、
入力信号の振幅を調整し実信号を出力するメインパスと、
上記実信号の振幅情報を上記メインパスの振幅調整段に帰還させる負帰還ブロックを含む負帰還パスと、を有し、
上記メインパスは、
入力信号の振幅を制御信号に応じて可変する可変利得部を含み、入力信号を受けて実信号を出力するメインパスブロックを、含み、
信号処理回路は、上記メインパスの上記メインパスブロックならびに上記負帰還パスの上記負帰還ブロックを含んで形成される負帰還ループ内に、制御理論での無駄時間を含む負帰還型信号処理系として形成され、
上記負帰還パスは、
上記メインパスから出力される実信号の振幅を検出する振幅検出器と、
上記振幅検出器による振幅情報と目標振幅から上記制御信号を生成し、上記可変利得部に出力する制御ブロックと、を含み、
上記制御ブロックは、
制御信号を生成して上記メインパスの入力信号の入力部に供給する上記負帰還ブロックと、
上記負帰還ブロックの制御信号が供給され擬似振幅信号を出力する、上記メインパスブロックを模擬するレプリカブロックと、
上記レプリカブロックの擬似振幅信号をループの無駄時間分遅延させる信号遅延ブロックと、を含み、
上記負帰還ブロックと、上記レプリカブロックと、上記信号遅延ブロックとを含んで無駄時間を含む第1のローカル負帰還系ループが形成され、
上記負帰還ブロックおよび上記レプリカブロックにより無駄時間のない第2のローカル負帰還系ループが形成され、
上記目標振幅から上記振幅検出器の検出振幅を減算する第1の減算器と、
上記第1のローカル負帰還系ループにおいて、上記信号遅延ブロックの出力信号と上記第1の減算器の出力信号とを合成し、合成信号を出力する合成部と、
上記合成信号から上記第2のローカル負帰還系ループにおける上記レプリカブロックの擬似実信号を減算し、当該減算後の信号を上記負帰還ブロックに入力させる第2の減算器と、を含む
記録再生装置。
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