JP5539843B2 - トレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ - Google Patents

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本発明は、スタッドレスタイヤに用いるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いたトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
スパイクタイヤによる粉塵公害を防止するために、スパイクタイヤの使用を禁止することが法制化され、寒冷地では、スパイクタイヤに代わってスタッドレスタイヤが使用されるようになった。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べて路面凹凸が大きい氷雪路面で使用されるため、材料面及び設計面での工夫がなされており、例えば、低温特性に優れたジエン系ゴムを配合したゴム組成物が提案されている。
近年では、氷雪上性能(氷雪上でのグリップ性能)の更なる改善が要求されている。氷雪上性能を改善する手法としては、例えば、ミネラルオイル等の軟化剤を多量に配合する方法が知られている。しかしながら、この場合、耐摩耗性が悪化する傾向があり、氷雪上性能及び耐摩耗性を両立させることは困難であった。また、トラック、バス等の重荷重車に使用されるスタッドレスタイヤにおいて、氷雪上性能及び耐摩耗性を両立させることは特に困難であった。
特許文献1〜3には、変性ブタジエンゴム、変性スチレンブタジエンゴムなどの変性ゴムを用いて省燃費性などを改善することが提案されている。しかし、これらのゴム組成物では、氷雪上性能及び耐摩耗性を両立する点について、未だ改善する余地がある。
特開2001−114939号公報 特開2005−126604号公報 特開2005−325206号公報
本発明は、前記課題を解決し、氷雪上性能(特に氷上性能)及び耐摩耗性をバランス良く改善できるスタッドレスタイヤのトレッド用ゴム組成物、及びそれをトレッドに用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であり、かつ下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムの含有量が10質量%以上であるゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含有し、上記ゴム成分100質量部に対して、上記シリカの含有量が5〜150質量部、上記カーボンブラックの含有量が3〜55質量部であり、スタッドレスタイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物に関する。
Figure 0005539843
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
上記ゴム組成物は、硫黄及び下記式(2)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有し、上記ゴム成分100質量部に対して、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が0.25〜6質量部、上記硫黄及び上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物に含まれる硫黄の合計含有量が0.3〜2質量部であることが好ましい。
Figure 0005539843
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いたトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
本発明によれば、特定化合物により変性されたブタジエンゴムと、シリカと、カーボンブラックとをそれぞれ所定量含有し、かつ天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が一定の範囲内であるゴム組成物であるので、氷雪上性能(特に氷上性能)及び耐摩耗性がバランス良く得られる。従って、該ゴム組成物をトレッドに使用することにより、氷雪上性能(特に氷上性能)及び耐摩耗性がバランス良く改善されたスタッドレスタイヤを提供できる。
本発明のゴム組成物は、上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム(以下、「変性BR」ともいう)と、シリカと、カーボンブラックとをそれぞれ所定量含有し、かつ天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が一定の範囲内である。これらの成分を含有することにより、氷雪上性能(特に氷上性能)及び耐摩耗性をバランス良く改善することができる。
上記式(1)で表される化合物において、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などの炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)などが挙げられ、メトキシ基であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基などの炭素数5〜8のシクロアルコキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基などの炭素数6〜8のアリールオキシ基など)も含まれる。
上記シリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基など)などが挙げられる。
上記アセタール基としては、例えば、−C(RR′)−OR″、−O−C(RR′)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基などが挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基などを挙げることができる。R、R及びRとしては、アルコキシ基が好ましい。これにより、氷雪上性能及び耐摩耗性を好適に両立できる。
及びRとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1〜2)が好ましい。これにより、氷雪上性能及び耐摩耗性を好適に両立できる。R及びRのアルキル基としては、例えば、上記アルキル基と同様の基を挙げることができる。なかでも、エチル基が好ましい。
及びRの環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基、オキセパン基、オキソカン基、オキソナン基、オキセカン基、オキセト基、オキソール基等のエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ジオキセパン基、ジオキセカン基等のエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基等のエーテル結合を3つ有する環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数3〜5の環状エーテル基がより好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。
n(整数)としては、2〜5が好ましい。これにより、氷雪上性能及び耐摩耗性を好適に両立できる。更には、nは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。nが1以下であると変性反応が阻害される場合があり、nが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、下記式(3)〜(10)で表される化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、氷雪上性能及び耐摩耗性の改善効果が高いという点から、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005539843
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ブタジエンゴムと変性剤とを接触させればよく、ブタジエンゴムを重合し、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加する方法、ブタジエンゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法などが挙げられる。
変性されるブタジエンゴム(BR)としては特に限定されず、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなどを使用できる。また、特表2003−514078号公報などに記載されているランタン系列希土類含有化合物を含む触媒を用いて重合して得られたBRも使用できる。
変性BRのビニル含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。ビニル含量が35質量%を超えると、天然ゴム及びイソプレンゴムとの相溶性が悪化し、変性BRを配合した効果が充分に得られないおそれがある。ビニル含量の下限は特に限定されない。
なお、本発明において、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
ゴム成分100質量%中の変性BRの含有量は、10質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、低温時の耐摩耗性及びグリップ性能が悪化する傾向がある。該変性BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。70質量%を超えると、機械的強度が低下し、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
ゴム組成物に使用される変性BR以外のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、未変性BR、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルニトリル(NBR)、イソモノオレフィンとパラアルキルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などを使用できる。なかでも、低温時の耐摩耗性及びグリップ性能を改善できるという点から、変性BRとともに、NRを使用することが好ましい。
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。20質量%未満であると、機械的強度が低下し、耐摩耗性が悪化する傾向がある。該NRの含有量は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。75質量%を超えると、低温時のグリップ性能が悪化する傾向がある。
ゴム成分100質量%中のNR及びBR(上記変性BR及び他のBR(他の変性BR、未変性BRなど)の合計)の合計含有量は、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。80質量%未満であると、低温時の耐摩耗性及びグリップ性能が悪化する傾向がある。
該合計含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。シリカと上記変性BRとを併用することにより、良好な氷雪上性能が得られる。シリカとしては、湿式法シリカ(含水シリカ)、乾式法シリカ(無水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは90m/g以上、更に好ましくは110m/g以上である。70m/g未満であると、ゴムに必要な強度が得られず、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。250m/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、加工性が悪化するおそれがある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5〜150質量部である。5質量部未満であると、シリカを配合した効果が充分に得られないおそれがあり、150質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、加工性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物を乗用車用のスタッドレスタイヤに使用する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。シリカの含有量が上記範囲内であれば、良好な硬度を確保することができ、氷雪上性能及び耐摩耗性の改善効果を高めることができる。
本発明のゴム組成物を重荷重車用のスタッドレスタイヤに使用する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは7質量部以上、より好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。シリカの含有量が上記範囲内であれば、良好な硬度を確保することができ、氷雪上性能及び耐摩耗性の改善効果を高めることができる。
上記ゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、シリカが凝集してしまい、シリカを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックの配合により、耐摩耗性をより改善することができる。カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなどが挙げられる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましい。50m/g未満であると、ゴムに必要な強度が得られず、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、220m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。220m/gを超えると、ゴムの硬度が高くなり過ぎて、氷雪上性能が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3〜55質量部である。3質量部未満であると、カーボンブラックを配合した効果が充分に得られないおそれがあり、55質量部を超えると、硬度が高くなり過ぎて、氷雪上性能が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物を乗用車用のスタッドレスタイヤに使用する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは45質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。カーボンブラックの含有量が上記範囲内であれば、良好な硬度を確保することができ、氷雪上性能及び耐摩耗性の改善効果を高めることができる。
本発明のゴム組成物を重荷重車用のスタッドレスタイヤに使用する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、また、好ましくは52質量部以下である。カーボンブラックの含有量が上記範囲内であれば、良好な硬度を確保することができ、氷雪上性能及び耐摩耗性の改善効果を高めることができる。
本発明において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。15質量部未満であると、ゴムに必要な強度が得られず、耐摩耗性が悪化する傾向がある。該合計含有量は、好ましくは95質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。95質量部を超えると、ゴムの硬度が高くなり過ぎて、氷雪上性能が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、上記式(2)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有することが好ましい。これにより、架橋密度を高め、耐摩耗性をより改善することができる。
mは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、0〜10の整数であり、1〜9の整数が好ましい。x及びyは、所望の硬度が効率良く発現できる(リバージョン抑制)点から、2〜4の整数であり、ともに2が好ましい。R〜Rは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、炭素数5〜12のアルキル基であり、炭素数6〜9のアルキル基が好ましい。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は、公知の方法で調製することができ、特に制限されないが、例えば、アルキルフェノールと塩化硫黄とを、モル比1:0.9〜1.25などで反応させる方法などが挙げられる。
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の具体例として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(下記式(11))などが挙げられる。
Figure 0005539843
(式中、mは0〜10の整数を表す。)
なお、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の硫黄含有率は、燃焼炉で800〜1000℃に加熱し、SOガス又はSOガスに変換後、ガス発生量から光学的に定量し、求めた割合をいう。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.25質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。0.25質量部未満であると、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を配合した効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。6質量部を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて、氷雪上性能が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、硫黄を含有することが好ましい。上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物と硫黄を併用することにより、架橋密度をより高くすることができ、耐摩耗性の改善効果を高めることができる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。0.3質量部未満では、硫黄を配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下、更に好ましくは1.6質量部以下である。2.0質量部を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて、氷雪上性能が悪化する傾向がある。
なお、硫黄の含有量とは、純硫黄量であり、不溶性硫黄を使用する場合はオイル分を除いた純硫黄量を意味する。
硫黄及びアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物に含まれる硫黄の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。0.3質量部未満であると、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物及び硫黄を配合した効果が充分に得られないおそれがある。該合計含有量は、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。2質量部を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて、氷雪上性能が悪化する傾向がある。
なお、硫黄の合計含有量とは、純硫黄としての合計量である。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、ステアリン酸、酸化防止剤、老化防止剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ワックス、軟化剤などを必要に応じて配合してもよい。
本発明のゴム組成物を重荷重車用のスタッドレスタイヤに使用する場合、軟化剤(オイルなど)の含有量は、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0質量部(含有しない)である。軟化剤の含有量が上記範囲内であれば、耐摩耗性の改善効果を高めることができる。
本発明のゴム組成物を用い、通常の方法でスタッドレスタイヤを製造することができる。すなわち、前記ゴム組成物を用いてトレッドを作製し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成型機上にて加熱加圧することにより製造できる。
本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車、トラック、バス、(自動)二輪車などに使用でき、なかでも、乗用車、トラック、バスに好適に使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
未変性BR:宇部興産(株)製のBR150B
変性BR:住友化学(株)製の変性BR(ビニル含量:15質量%、R、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(NSA:114m/g)
シリカ:デグッサ社製のULTRASIL VN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPA−32
老化防止剤:バイエル社製のブルカノックス4020
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛3号
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS
V200:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200((式(11)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、m:0〜10、x及びy:2、R〜R:C17(オクチル基)、硫黄含有率:24質量%)
実施例1〜8及び比較例1〜2
表1及び2に示す配合処方に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤及びV200以外の薬品を混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及びV200を練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃の条件下で30分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と貼り合せ、150℃で30分間加硫することにより、試験用スタッドレスタイヤ(1)(タイヤサイズ:195/65R15(乗用車用)、実施例1〜4、比較例1)及び試験用スタッドレスタイヤ(2)(タイヤサイズ:11.00R22.5(重荷重車用)、実施例5〜8、比較例2)を作製した。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴムシート、試験用スタッドレスタイヤ(1)及び(2)を用いて以下の評価を行った。結果を表1及び2に示す。
(ムーニー粘度)
上記未加硫ゴム組成物を用いて、JIS K6300「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件で小ローターを回転させ、4分間経過した時点での未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4/130℃)を測定した。ムーニー粘度が小さいほど、加工性に優れることを示す。
(スコーチタイム)
JIS K6300「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じて、130℃にて、上記未加硫ゴム組成物の粘度が10ポイント上昇する時間(スコーチタイム(分))を測定した。スコーチタイムが長いほど、早期加硫を抑制できることを示す。
(T95及び最大トルク値(MH))
JIS K6300に準じて、振動式加硫試験機(キュラストメーター)を用い、測定温度160℃で上記未加硫ゴム組成物の加硫試験を行って、時間及びトルクをプロットした加硫速度曲線を得た。そして、加硫速度曲線のトルクの最小値をML、最大値をMH、その差(MH−ML)をMEとしたとき、ML+0.95MEに到達する時間T95(分)を読み取った。
(引張試験)
上記加硫ゴムシートの破断強度(引張強さ)及び破断伸び(切断時伸び)をJIS K6251−1993に準拠して測定した。数値が大きいほど良好である。
(硬度)
JIS K6253の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」に準じて、タイプAデュロメーターにより、0℃における上記加硫ゴムシートの硬度を測定した。硬度が小さいほど、雪氷上性能に優れることを示す。
(氷上制動性能指数(1))
上記試験用スタッドレスタイヤ(1)を国産のFR車(2000cc)に装着し、ならし走行を100km実施してから、氷板上で時速30km/hからの制動停止距離を測定した。そして、比較例1の制動停止距離を100として、下記式から氷上制動指数を計算した。数値が大きいほど、氷上制動性能に優れることを示す。
(氷上制動指数(1))=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
(氷上制動性能指数(2))
上記試験用スタッドレスタイヤ(2)を国産の大型トラック(20t)に装着し、ならし走行を100km実施してから、氷板上で時速30km/hからの制動停止距離を測定した。そして、比較例2の制動停止距離を100として、下記式から氷上制動指数を計算した。数値が大きいほど、氷上制動性能に優れることを示す。
(氷上制動指数(2))=(比較例2の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
(ランボーン摩耗指数)
JIS K6264−2「加硫ゴムの摩耗試験方法」に準じて、(株)岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用いて、表面回転速度40m/min、スリップ率20%、付加荷重15N、打粉剤落下量20g/minの条件下で、上記加硫ゴムシートから切り出した試験片(厚さ5mm)のランボーン摩耗量を測定した。そして、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、基準配合の容積損失量を100とし、下記計算式により、各配合の容積損失量を指数表示した。ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性能に優れることを示す。なお、基準配合は、実施例1〜4及び比較例1においては比較例1とし、実施例5〜8及び比較例2においては比較例2とした。
(ランボーン摩耗指数)=(基準配合の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
Figure 0005539843
Figure 0005539843
表1及び2より、変性BR、シリカ及びカーボンブラックをそれぞれ所定量含有する実施例は、硬度を維持したまま、氷上制動性能及び耐摩耗性がバランス良く改善された。特に、V200を含有する実施例1及び2と、実施例5及び6とは、各性能の改善効果が高かった。一方、これらの成分を所定量含有していない比較例は、氷上制動性能及び耐摩耗性を高次元で両立させることができなかった。

Claims (2)

  1. 天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であり、かつ下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムの含有量が10質量%以上であるゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、硫黄と、下記式(2)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とを含有し、
    前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が5〜150質量部、前記カーボンブラックの含有量が3〜55質量部、前記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が0.25〜6質量部、前記硫黄及び前記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物に含まれる硫黄の合計含有量が0.3〜2質量部である
    スタッドレスタイヤに使用されるトレッド用ゴム組成物。
    Figure 0005539843
    (式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
    Figure 0005539843
    (式中、R 、R 及びR は、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
  2. 請求項1記載のゴム組成物を用いたトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
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