JP5533689B2 - 過電流保護装置 - Google Patents

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Description

本発明は、IGBT素子を保護する過電流保護装置に関するものである。
従来、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を保護する過電流保護装置に関連する技術として、下記特許文献1に開示される半導体装置が知られている。この半導体装置は、IGBT素子に対する過電流制限回路および過電流保護回路を備えており、負荷短絡の発生時には過電流制限回路が先に動作して短絡電流を制限し、その後一定時間遅れて過電流保護回路が確実に動作して短絡電流を遮断する。これにより、過電流の検出感度が低い過電流保護回路を備えた半導体装置であっても過電流保護回路の動作が不安定になるという問題点を排除している。
また、下記特許文献2に開示されるIGBTインバータの過電流保護回路は、IGBTを主回路スイッチング素子とするブリッジ構成のインバータにおける過電流状態をその負極側(または正極側)直流入力端通過総合電流の増大変化より直ちに検出すると共にIGBTの通電電流を適当な低減値となす所定のゲート電圧の指定信号を過電流検出信号として出力する1組の過電流検出回路と、検出回路の出力信号を受けてから所定の時間後にインバータ主回路の全IGBTに対してゲート遮断信号を出力するゲート遮断制御回路と、を備えている。そして、過電流状態の発生時には、先ず、過電流検出回路の出力信号をインバータの下アーム(または上アーム)の各IGBTのゲートに信号分配回路を介して一斉に与えて上下両アームのIGBTを共に経由して通電するインバータ電流の適当値までの低減を行う。これにより、各IGBTにおける許容動作時間の延長を図り、続いてゲート遮断制御回路により全IGBTに対する所定時間後のゲート遮断を行って各IGBTに対する過電流保護を行っている。
特許3125622号公報 特開平05−003680号公報
ところで、従来の短絡保護では短絡判定後にゲートをオフしてIGBT素子をターンオフすることで十分短絡保護することができた。これは従来のインバータに使用していたIGBT素子が、上記動作により素子にかかる短絡エネルギーに対して、十分な熱容量を持っていたからである。しかしながら、近年のIGBT素子では、低損失化のため素子の薄板化・小型化が進み素子の熱容量が低下したために、過電流遮断開始の前に破壊したり、あるいはIGBT素子が一旦ターンオフしても数百μsec〜数msec後に熱による素子破壊を起こす問題が生じている。
このIGBT素子が一旦ターンオフしても数百μsec〜数msec後に素子破壊する原因は、短絡時の発熱により増加したリーク電流が、素子裏面(IGBT素子におけるコレクタ)をエミッタとするPNPトランジスタのベース電流となることで、裏面P型からのホール注入が増大する現象で、放熱による素子温度の低下(リーク電流の低下)よりも、リーク電流の増加による発熱が多い場合、更にリーク電流が増加して最終的に素子破壊に至るからである。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、IGBT素子の短絡耐量を向上させ得る過電流保護装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の過電流保護装置では、IGBT素子に対する過電流を検出する検出手段を備え、この検出手段により前記過電流が検出されると前記IGBT素子を保護する過電流保護装置であって、前記IGBT素子にゲート電圧を印可する駆動回路に対してオフ信号を出力することで当該ゲート電圧の印可を停止可能な保護回路と、前記IGBT素子により電源電圧がスイッチングされる電源の当該電源電圧を制御可能な電源電圧制御回路と、前記電源に並列接続されて前記電源電圧を平滑化する平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電可能な放電回路と、を備え、前記検出手段により前記過電流が検出されると、前記保護回路により前記ゲート電圧の印可が停止され、前記電源電圧制御回路により前記電源電圧が低減され、前記放電回路により前記平滑コンデンサに蓄積された電荷が放電されることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の過電流保護装置において、前記検出手段により前記過電流が検出されることで前記保護回路により前記ゲート電圧の印可が停止され、前記IGBT素子がターンオフした後に、前記検出手段により当該IGBT素子のリーク電流の増加が検出されると、前記電源電圧制御回路により前記電源電圧が低減され、前記放電回路により前記平滑コンデンサに蓄積された電荷が放電されることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の過電流保護装置において、前記電源は、電池とこの電池の電圧を昇圧する昇圧回路とからなり、前記電源電圧制御回路は、前記昇圧回路による昇圧を停止することで、前記電源電圧を低減することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の過電流保護装置において、前記IGBT素子は、導通損失低減のために素子基板厚さを薄く設計し、空乏層の拡がりを止めるためのフィールドストップ層を有するように構成されることを特徴とする。
請求項1の発明では、IGBT素子にゲート電圧を印可する駆動回路に対してオフ信号を出力することで当該ゲート電圧の印可を停止可能な保護回路と、電源の電源電圧を制御可能な電源電圧制御回路と、電源電圧を平滑化する平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電可能な放電回路と、が設けられている。そして、検出手段により過電流が検出されると、保護回路によりゲート電圧の印可が停止され、電源電圧制御回路により電源電圧が低減され、放電回路により平滑コンデンサに蓄積された電荷が放電される。
これにより、短絡直後に電源電圧、すなわち、保護対象であるIGBT素子のCE間電圧が低減されることとなるので、上述のようなリーク電流の増加が抑制されて、熱暴走の発生が防止される。
したがって、IGBT素子の短絡耐量を向上させることができる。
請求項2の発明では、電源電圧制御回路は、検出手段により過電流が検出されることで保護回路によりゲート電圧の印可が停止され、IGBT素子がターンオフした後に、検出手段によりリーク電流の増加が検出されると、電源電圧を低減する。
IGBT素子の熱容量が高いか放熱性が高く、短絡保護回路の遮断能力がIGBT素子の短絡耐量を上回る場合には、過電流判定後にゲート電圧の印可を停止するのみで、放熱等による素子温度の低下がリーク電流の増加による発熱を上回るため、検出手段により検出される電流が増加することもない。この場合には、IGBT素子を保護するために電源電圧を低減させる必要や放電回路により平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電する必要がないので、不要な電源電圧の低減や平滑コンデンサの放電をなくすことができる。
請求項3の発明では、電源電圧制御回路は、昇圧回路による昇圧を停止することで、電源電圧が低減されるため、容易に電源電圧を低減することができる。また、電源電圧の復帰も容易であるため、インバータのうち正常動作素子による相のみを使用した緊急時の退避走行を可能にできる。
請求項4の発明では、IGBT素子は、空乏層の拡がりを止めるためのフィールドストップ層を有するように構成されている。この場合、シリコンの基板の厚さが例えば昇圧も含め1000V程度の電源を使用した場合150μm以下程度に薄くなるが、厚さが薄いために当該IGBT素子の熱容量が小さくなっても上述のようなリーク電流の増加が抑制されて、熱暴走の発生を防止することができる。
第1実施形態に係る過電流保護装置を採用したインバータの構成を示すブロック図である。 図1の過電流保護装置が作動した状態でのCE間電圧の変化を説明するためのグラフである。 第2実施形態に係る過電流保護装置を採用したインバータの構成を示すブロック図である。 図3の過電流保護装置が作動した状態でのCE間電圧の変化を説明するためのグラフである。 第3実施形態に係る過電流保護装置を採用したインバータの構成を示すブロック図である。 図5の過電流保護装置が作動した状態でのCE間電圧の変化を説明するためのグラフである。 第4実施形態に係る過電流保護装置を採用したインバータの構成を示すブロック図である。 図7の過電流保護装置が作動した状態でのCE間電圧の変化を説明するためのグラフである。
以下、本発明の第1実施形態に係る過電流保護装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る過電流保護装置20を採用したインバータ回路10の構成を示すブロック図である。
図1に示す過電流保護装置20は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)を利用した3相インバータ回路10に対する短絡保護を実現するための装置である。このインバータ回路10は、例えば、電気自動車に搭載されて、当該電気自動車の駆動源である3相のモータM等の負荷に対して、直流電源Eの電源電圧を変換して3相交流電圧を印可する回路として構成されている。ここで、直流電源Eの電源電圧は、当該直流電源Eに並列接続される平滑コンデンサCにより平滑化されて、インバータ回路10に供給されている。
まず、インバータ回路10について説明する。
インバータ回路10は、6つのIGBT11a〜11fを備えており、IGBT11aおよびIGBT11b(U相アーム)が直列接続され、IGBT11cおよびIGBT11d(V相アーム)が直列接続され、IGBT11eおよびIGBT11f(W相アーム)が直列接続されて構成されている。
各IGBT11a〜11fは、空乏層の拡がりを止めるためのフィールドストップ層(FS層)を有するようにそれぞれ構成されている。このため、各IGBT11a〜11fの厚さは、例えば、昇圧も含め1000V程度の電源を使用したインバータ回路の場合150μm以下程度に薄く形成されている。
そして、IGBT11aおよびIGBT11bは、直列接続する接続点がモータMのU相に接続され、IGBT11cおよびIGBT11dは、直列接続する接続点がモータMのV相に接続され、IGBT11eおよびIGBT11fは、直列接続する接続点がモータMのW相に接続されている。
上述のように平滑化された電源電圧は、ゲート駆動回路15から各IGBT11a〜11fのゲートにそれぞれ印可されるゲート電圧Vgのタイミングに応じてこれら各IGBT11a〜11fが所定のタイミングでスイッチング動作することによって、3相交流電圧に変換されてモータMに供給される。これにより、モータMが駆動されることとなる。
次に、過電流保護装置20について説明する。
過電流保護装置20は、インバータ回路10を構成する各IGBT11a〜11f等に対して短絡保護するための装置であって、電流検出部21と、保護回路22と、電源電圧制限回路23と、放電回路24とを備えている。なお、図1では、便宜上、IGBT11bのみに対して過電流保護装置20を図示している。このような過電流保護装置20は、各IGBT11a〜11fに対してそれぞれ設けられるものとする。
電流検出部21は、各IGBT11a〜11fのセンス端子12に接続された抵抗21a,21bの直列回路から構成されている。この電流検出部21の分圧端子21cがトランジスタ25のベースに接続されており、分圧電圧がトランジスタ25の動作電圧を超えると当該トランジスタ25がオン状態となり、対応するIGBTの駆動電圧が定電圧ダイオード26の逆導通電圧で決まる一定電圧に低減される。
保護回路22は、電流検出部21の入力端に接続されており、抵抗21a,21bの直列回路からなる電流検出部21の全電圧降下が、過電流が発生したとみなされる所定の閾値以上となると、短絡等により過電流が流れたと判断して、ゲート駆動回路15に対してオフ信号を出力することで、当該ゲート駆動回路15のゲート電圧Vgをオフ(0V)にするように構成されている。さらに、保護回路22は、電源電圧制限回路23および放電回路24に接続されており、上述のように過電流が流れたと判断されると、電源電圧制限回路23に対して制限信号を出力するとともに、放電回路24に対して放電信号を出力するように構成されている。
電源電圧制限回路23は、直流電源Eからの電源電圧を制限するための回路であって、本実施形態では、保護回路22から入力される制限信号に応じて、直流電源Eからの電力供給を遮断して電源電圧を0Vにするように構成されている。なお、電源電圧制限回路23として、例えば、ヒューズを採用し、このヒューズを遮断することで直流電源Eからの電力供給を遮断してもよい。
放電回路24は、平滑コンデンサCに蓄積された電荷を放電するため回路であって、平滑コンデンサCに並列に接続されるIGBT24aおよび抵抗24bと、IGBT24aにゲート電圧を印可する放電装置駆動回路24cとを備えている。この放電回路24は、保護回路22から入力される放電信号に応じて、放電装置駆動回路24cによりIGBT24aにゲート電圧を印可して、平滑コンデンサCに蓄積された電荷を抵抗24aを介して放電するように構成されている。
このように構成される過電流保護装置20では、電流検出部21によりその全電圧降下が上記所定の閾値以上となり過電流が検出されると、各IGBT11a〜11fの少なくともいずれかにおけるリーク電流の増加を抑制するために、ゲート電圧Vgをオフ(0V)にするとともに、各IGBT11a〜11fの主端子間(コレクタ−エミッタ間)の電圧(以下、CE間電圧Vceともいう)、すなわち、電源電圧を低減する。
この理由について、図2を用いて詳述する。図2は、図1の過電流保護装置20が作動した状態でのCE間電圧Vceの変化を説明するためのグラフである。
短絡時の発熱によりIGBT内にて増加したリーク電流が、素子裏面(IGBTにおけるコレクタ)をエミッタとするPNPトランジスタのベース電流となることで、裏面P型からのホール注入が増大する現象で、放熱による素子温度の低下(リーク電流の低下)よりも、リーク電流の増加による発熱が多い場合、更にリーク電流が増加して最終的に素子破壊に至る場合がある。
そこで、本実施形態では、短絡検出時には、ゲート電圧Vgをオフ(0V)にするとともに、各IGBT11a〜11fのCE間電圧Vceを低減する。具体的には、保護回路22により、ゲート駆動回路15にオフ信号が出力され、電源電圧制限回路23に制限信号が出力され、放電回路24に放電信号が出力される。
これにより、ゲート駆動回路15のゲート電圧Vgがオフ(0V)になり、直流電源Eからの電力供給が遮断されて電源電圧が0Vになり、平滑コンデンサCに蓄積された電荷が放電される。このように、平滑コンデンサCの電荷を放電する理由は、単に直流電源Eの電力供給を遮断しても、平滑コンデンサCに蓄積された電荷に起因するCE間電圧が、電荷が消費されるまでCE間電圧が降下しながらもかかり続けるため、CE間電圧Vceをリーク電流の増加を抑制するために必要な電圧値まで低減することができないからである。
このCE間電圧Vceの変化を図2を用いて説明する。
図2に示すように、ゲート電圧Vgがオフ(0V)になり(図2に示す時刻t1)、図2に示す時刻t2にて直流電源Eからの電力供給が遮断され、放電回路24による放電が開始されると、CE間電圧Vceが減少していく。CE間電圧Vceが半減するのにおよそ10μsecかかり、およそ100μsec後には、13%に低減する。なお、CE間電圧Vceは、0Vまで低減させる必要はなく、リーク電流の増加を抑制するために必要な電圧値まで低減させればよい。
このようなCE間電圧Vceの低減により、上述のようなリーク電流の増加が抑制されて、熱暴走の発生が防止されることとなる。
以上説明したように、本実施形態に係る過電流保護装置20では、各IGBT11a〜11fにゲート電圧Vgを印可するゲート駆動回路15に対してオフ信号を出力することで当該ゲート電圧Vgの印可を停止可能な保護回路22と、直流電源Eの電源電圧を制御可能な電源電圧制限回路23と、電源電圧を平滑化する平滑コンデンサCに蓄積された電荷を放電可能な放電回路24と、が設けられている。そして、電流検出部21により過電流が検出されると、保護回路22によりゲート電圧Vgの印可が停止され、電源電圧制限回路23により電源電圧が低減され、放電回路24により平滑コンデンサCに蓄積された電荷が放電される。
これにより、短絡直後に電源電圧、すなわち、保護対象であるIGBT11a〜11fのCE間電圧Vceが低減されることとなるので、上述のようなリーク電流の増加が抑制されて、熱暴走の発生が防止される。
したがって、熱容量が小さな各IGBT11a〜11fの短絡耐量を有効に使い切ることができ、我々のインバータ装置では、従来の素子のCE間電圧を遮断しない保護回路に比べてインバータとしての短絡耐量を10%向上させることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る過電流保護装置について図3および図4を参照して説明する。図3は、第2実施形態に係る過電流保護装置20aを採用したインバータ10の構成を示すブロック図である。図4は、図3の過電流保護装置20aが作動した状態でのCE間電圧の変化を説明するためのグラフである。
図3に示すように、本第2実施形態では、直流電源Eは、1次電池E1とこの1次電池E1の電圧Veを昇圧する昇圧回路E2とを備えており、本第2実施形態に係る過電流保護装置20aでは、電源電圧制限回路23aが保護回路22から入力される制限信号に応じて、昇圧回路E2による昇圧を停止する点が、上記第1実施形態に係る過電流保護装置と主に異なる。なお、1次電池E1の電圧Veが、リーク電流の増加を抑制するために必要な電圧値よりも小さくなる電圧の範囲でこの発明の効果が得られる。この電圧の範囲は使用する素子の熱容量、短絡保護によるゲートオフまでの時間、平滑コンデンサの蓄積電化の消費速度、インバータの冷却性能によって決まる。
本実施形態では、過電流が検出されると、保護回路22により、ゲート駆動回路15にオフ信号が出力され、電源電圧制限回路23aに制限信号が出力され、放電回路24に放電信号が出力される。これにより、ゲート電圧Vgがオフ(0V)になり、昇圧回路E2による昇圧が停止され、平滑コンデンサの残存蓄積電荷量に応じて時間とともに昇圧前の1次電池E1の電圧Veまで減少する。なお、CE間電圧Vceが電圧Veまで減少するまでにかかる時間は、100μsec未満である。
このようにCE間電圧Vceを低減しても、上述のようなリーク電流の増加が抑制されて、熱暴走の発生が防止されることとなる。
特に、昇圧回路E2による昇圧を停止することで電源電圧が低減されるため、容易に電源電圧を低減することができる。また、容易に昇圧を再開することもできる。
なお、昇圧回路E2は、保護回路22から直接入力される制限信号に応じて、その昇圧を停止するように構成されてもよい。この場合、保護回路22は、電源電圧制限回路としても機能することとなる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る過電流保護装置について図5および図6を参照して説明する。図5は、第3実施形態に係る過電流保護装置20bを採用したインバータ10の構成を示すブロック図である。図6は、図5の過電流保護装置20bが作動した状態でのCE間電圧の変化を説明するためのグラフである。
図5に示すように、本第3実施形態に係る過電流保護装置20bは、リーク電流の増加を判定するためのリーク電流増加判定回路27が新たに採用される点が、上記第1実施形態に係る過電流保護装置と主に異なる。
リーク電流増加判定回路27は、保護回路22に入力される過電流値等に応じて、対象のIGBTのリーク電流を検出し、このリーク電流が増加しているか否かを判定するための回路である。そして、リーク電流が増加していると判定されると、リーク電流増加判定回路27により、電源電圧制限回路23に制限信号が出力され、放電回路24に放電信号が出力される。
本実施形態では、過電流が検出されると、保護回路22により、ゲート駆動回路15にオフ信号が出力されて、ゲート電圧Vgがオフ(0V)になる。そして、対象のIGBTがターンオフした後に、リーク電流の増加がリーク電流増加判定回路27により判定されると(図6に示す時刻t3)、電源電圧制限回路23に制限信号が出力されるとともに、放電回路24に放電信号が出力され、CE間電圧Vceが低減される。なお、CE間電圧Vceが半減するのに更におよそ時刻t3から10μsecかかり、およそ100μsec後には、13%に低減する。
一方、IGBT素子の熱容量が高いか放熱性が高いことからリーク電流が増加しないために、リーク電流の増加がリーク電流増加判定回路27により判定されない場合には、制限信号や放電信号が出力されることもなく、電源電圧は低減されないこととなる。
このように、リーク電流が増加しにくいIGBT素子が保護対象である場合には、短絡直後にゲート電圧Vgの印可を停止すると、放熱等による素子温度の低下がリーク電流の増加による発熱を上回るため、電流検出部21により検出される電流、すなわち、リーク電流が増加することもない。この場合には、IGBT素子を保護するために電源電圧を低減させる必要がないので、不要な電源電圧の低減をなくすことができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る過電流保護装置について図7および図8を参照して説明する。図7は、第4実施形態に係る過電流保護装置20cを採用したインバータ10の構成を示すブロック図である。図8は、図7の過電流保護装置20cが作動した状態でのCE間電圧の変化を説明するためのグラフである。
図7に示すように、本第4実施形態では、直流電源Eは、1次電池E1とこの1次電池E1の電圧Veを昇圧する昇圧回路E3とを備えており、また、E3にはインバータ素子から1次電池の電圧を遮断する機能も備え、電源遮断回路E3としても機能する。本第4実施形態に係る過電流保護装置20cでは、電源電圧制限回路23aが保護回路22から入力される制限信号に応じて、昇圧回路E2による昇圧を停止する点が、上記第3実施形態に係る過電流保護装置と主に異なる。なお、1次電池E1の電圧Veは、リーク電流の増加を抑制するために必要な電圧値よりも小さくなるように設定されている。
本実施形態では、過電流が検出されると、保護回路22により、ゲート駆動回路15にオフ信号が出力されて、ゲート電圧Vgがオフ(0V)になり、電源電圧制限回路23aに制限信号が出力されて昇圧・電源遮断回路E3による昇圧が停止され、放電回路24に放電信号が出力されて放電が開始される。その後、リーク電流の増加がリーク電流増加判定回路27により判定されると、昇圧・電源遮断回路E3が、電源電圧を遮断する。
この場合、図8に示すように、CE間電圧Vceは、昇圧回路E2による昇圧が停止された後(図8に示す時刻t4)から減少を始め、最も低下した場合、昇圧前の1次電池E1の電圧Veまで減少する。その低下までの間に、リーク電流の増加がリーク電流増加判定回路27により判定されると(図8に示す時刻t5)、昇圧・電源遮断回路E3に電源遮断信号が出力され、電源を遮断せず、昇圧のみ停止した場合に比べ高速にCE間電圧Vceが低減される。
一方、IGBT素子の熱容量が高いか放熱性が高いことからリーク電流が増加しないために、リーク電流の増加がリーク電流増加判定回路27により判定されない場合には、昇圧・電源遮断回路E3に電源遮断信号が出力されることもなく、電源遮断をせずに短絡保護が達成できる。
このようにCE間電圧Vceを低減しても、上述のようなリーク電流の増加が抑制されて、熱暴走の発生が防止されることとなる。
特に、昇圧・電源遮断回路E3による昇圧を停止することで電源電圧が低減されるため、容易に電源電圧を低減することができ、たとえば電源遮断にヒューズを使用する場合など、電源遮断によるインバーター機能の回復困難な停止を不要にできる。
なお、昇圧・電源遮断回路E3は、保護回路22から直接入力される制限信号に応じて、その昇圧を停止、または電源を遮断するように構成されてもよい。この場合、保護回路22は、電源電圧制限回路としても機能することとなる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上記第1実施形態および第2実施形態において、保護回路22から出力される制限信号および放電信号は、ゲート駆動回路15に対するオフ信号の出力と同時であってもよいし、所定時間、例えば、1μsec〜60μsec程度遅れて出力されてもよい。また、上記第4実施形態において、保護回路22から出力される制限信号は、ゲート駆動回路15に対するオフ信号の出力と同時であってもよいし、所定時間、例えば、1μsec〜60μsec程度遅れて出力されてもよい。
(2)IGBT11a〜11fは、フィールドストップ層(FS層)を有するIGBT素子に限らず、例えば、縦型のIGBT素子とFWD素子(還流ダイオード素子)とが同一の半導体基板に構成された逆導通型半導体素子(RC−IGBT素子)であってもよい。
10…インバータ回路
11a〜11f…IGBT
15…ゲート駆動回路
20,20a,20b,20c…過電流保護装置
21…電流検出部(検出手段)
22…保護回路
23,23a…電源電圧制限回路
24…放電回路
27…リーク電流増加判定回路
C…平滑コンデンサ
E…直流電源(電源)
E1…1次電池
E2…昇圧回路
E3…昇圧・電源遮断回路
M…モータ
Vce…CE間電圧
Vg…ゲート電圧

Claims (4)

  1. IGBT素子に対する過電流を検出する検出手段を備え、この検出手段により前記過電流が検出されると前記IGBT素子を保護する過電流保護装置であって、
    前記IGBT素子にゲート電圧を印可する駆動回路に対してオフ信号を出力することで当該ゲート電圧の印可を停止可能な保護回路と、
    前記IGBT素子により電源電圧がスイッチングされる電源の当該電源電圧を制御可能な電源電圧制御回路と、
    前記電源に並列接続されて前記電源電圧を平滑化する平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電可能な放電回路と、を備え、
    前記検出手段により前記過電流が検出されると、前記保護回路により前記ゲート電圧の印可が停止され、前記電源電圧制御回路により前記電源電圧が低減され、前記放電回路により前記平滑コンデンサに蓄積された電荷が放電されることを特徴とする過電流保護装置。
  2. 前記検出手段により前記過電流が検出されることで前記保護回路により前記ゲート電圧の印可が停止され、前記IGBT素子がターンオフした後に、前記検出手段により当該IGBT素子のリーク電流の増加が検出されると、前記電源電圧制御回路により前記電源電圧が低減され、前記放電回路により前記平滑コンデンサに蓄積された電荷が放電されることを特徴とする請求項1に記載の過電流保護装置。
  3. 前記電源は、電池とこの電池の電圧を昇圧する昇圧回路とからなり、
    前記電源電圧制御回路は、前記昇圧回路による昇圧を停止することで、前記電源電圧を低減することを特徴とする請求項1または2に記載の過電流保護装置。
  4. 前記IGBT素子は、空乏層の拡がりを止めるためのフィールドストップ層を有するように構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の過電流保護装置。
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