次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2を参照して、基板に電子部品を実装するための部品実装用作業を実行する部品実装用装置としての部品実装装置1の構成を説明する。部品実装装置1は、基板に半導体チップなどの電子部品を実装する機能を有するものである。図2は、図1におけるA−A断面を部分的に示している。
図1において基台1aの中央にはX方向(基板搬送方向)に基板搬送機構2が配設されている。基板搬送機構2は上流側から搬入された基板3を搬送し部品実装作業を実行するために設定された実装ステージに位置決めする。基板搬送機構2の両側方には、部品供給部4が配置されており、それぞれの部品供給部4には複数の部品供給機構5が並設されている。部品供給機構5は、電子部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより、以下に説明する搭載ヘッドの吸着ノズルによる部品吸着位置に電子部品を供給する。
基台1a上面の両端部上にはY軸テーブル6A,6Bが配設されており、Y軸テーブル6A,6B上には2台のX軸テーブル7A、7Bが架設されている。Y軸テーブル6Aを駆動することにより、X軸テーブル7AがY方向に水平移動し、Y軸テーブル6Bを駆動することにより、X軸テーブル7BがY方向に水平移動する。X軸テーブル7A,7Bには、それぞれ搭載ヘッド8および搭載ヘッド8と一体的に移動する基板認識カメラ9が装着されている。
Y軸テーブル6A,X軸テーブル7A,Y軸テーブル6B,X軸テーブル7Bをそれぞれ組み合わせて駆動することにより搭載ヘッド8は水平移動し、それぞれの部品供給部4から電子部品を吸着ノズル8a(図2参照)によってピックアップし、基板搬送機構2に位置決めされた基板3上に実装する。Y軸テーブル6A,X軸テーブル7A,Y軸テーブル6B,X軸テーブル7Bは、搭載ヘッド8を移動させるヘッド移動機構となっている。X軸テーブル7A,7BはいずれもX軸モータ7M(図6参照)を備えたX軸サーボ駆動機構によって駆動され、またY軸テーブル6A,6Bは同様にY軸モータ6M(図6参照)を備えたY軸サーボ駆動機構によって駆動される。
搭載ヘッド8とともに基板3上に移動した基板認識カメラ9は、基板3を撮像して認識する。また部品供給部4から基板搬送機構2に至る経路には、部品認識カメラ10が配設されている。部品供給部4から電子部品を取り出した搭載ヘッド8が実装ステージに位置決めされた基板3へ移動する際に、吸着ノズル8aに保持された電子部品を部品認識カメラ10の上方でX方向に移動させることにより、部品認識カメラ10は吸着ノズル8aに保持された電子部品を撮像する。そして撮像結果を認識装置25(図6参照)によって認識処理することにより、吸着ノズル8aに保持された状態における電子部品の位置が認識されるとともに、電子部品の種類が識別される。ノズル保持部11は、複数種類の吸着ノズル8aを所定姿勢で収納し、搭載ヘッド8がノズル保持部11にアクセスしてノズル交換動作を行うことにより、搭載ヘッド8において対象とする電子部品の種類に応じてノズル交換が行われる。
部品供給部4の構造を説明する。図2に示すように、部品供給部4には複数の部品供給機構5を装着するためのフィーダベース4aが設けられている。ここでは部品供給機構5として電子部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより電子部品を搭載ヘッド8に供給するテープフィーダが用いられており、フィーダ装着用の台車12によって部品供給部4に配置される。台車12には、キャリアテープ15を巻回状態で収納したテープリール14を保持するためのリール保持部13が設けられている。リール保持部13はテープリール14を回転自在に保持するための保持ローラを備えており、部品供給部4に配置されたテープリール14を回転させることにより、キャリアテープ15を引き出すことができるようになっている。
次に、図3を参照して部品供給機構5(テープフィーダ)の構成および機能を説明する。図3に示すように、部品供給機構5はフィーダ本体部5aおよびフィーダ本体部5aの下面から下方に凸設された装着部5bを備えた構成となっている。フィーダ本体部5aの下面をフィーダベース4aに沿わせて部品供給機構5を装着した状態では、装着部5bに設けられたコネクタ部5cがフィーダベース4aに嵌合する。これにより、部品供給機構5は部品供給部4に固定装着されるとともに、部品供給機構5は部品実装装置1の制御装置21と電気的に接続される。
フィーダ本体部5aの内部には、テープリール14から引き出されてフィーダ本体部5a内に取り込まれたキャリアテープ15を導くテープ走行路5dが、フィーダ本体部5aの後端部から先端部まで連続して設けられており、テープ走行路5dの先端部には、キャリアテープ15をピッチ送りするためのスプロケット20が配設されている。スプロケット20には、キャリアテープ15に形成された送り孔15b(図4参照)に嵌合する送りピン(図示省略)が定ピッチで設けられており、これらの送りピンが送り孔15bに嵌合した状態で、スプロケット20を送りモータ19によって回転駆動することにより、キャリアテープ15は下流側(図3において右側)へピッチ送りされる。
スプロケット20の手前側は、部品ポケット15a内の電子部品16を、搭載ヘッド8の吸着ノズル8aによって吸着してピックアップする部品吸着位置となっている。スプロケット20および送りモータ19は、キャリアテープ15をテープ走行路5dに沿ってピッチ送りすることにより、キャリアテープ15に保持された電子部品16を吸着ノズル8aによる部品吸着位置に送るテープ送り機構を構成する。
部品供給機構5は上述のテープ送り機構の動作を制御するためのフィーダ制御部17を内蔵しており、フィーダ制御部17は制御装置21(図6参照)からの制御指令に従って、送りモータ19の動作制御を行う。フィーダ制御部17はサーボモータである送りモータ19を制御するための送りモータドライバ18を備えており、送りモータドライバ18は送りモータ19の駆動用の電力を供給するとともに、送りモータ19に備えられたエンコーダ19Eから出力されるフィードバックパルスを受信する。
次に図4を参照して、搭載ヘッド8に装着された吸着ノズル8aによってキャリアテープ15に保持された電子部品16を取り出す際の位置合わせ精度、すなわち正常に部品のピックアップを行うことができる位置ずれ量の限度を示す位置ずれ許容限度について説明する。部品実装装置1によって実装対象となる電子部品16の形状・サイズは部品種によって種々異なるため、電子部品16を吸着保持するために搭載ヘッド8に装着される吸着ノズル8aも対象部品に応じてサイズの異なった複数種類のものが予め用意され、ノズル保持部11に収納されている。部品実装動作においては、実装対象となる部品種が切り替わる度に、その都度搭載ヘッド8をノズル保持部11にアクセスさせて、吸着ノズル8aを次動作に対応したものと交換するノズル交換が自動的に実行される。
例えば、図4(a)に示すキャリアテープ15Aの部品ポケット15a内に収納された比較的小型の電子部品16Aを対象とする場合には、電子部品16Aの辺サイズd1,d2に応じたノズル径D1のノズルサイズを有する吸着ノズル8a1が用いられる。そして図4(b)に示すキャリアテープ15Bの部品ポケット15a内に収納された比較的大型の電子部品16Bを対象とする場合には、電子部品16Bの辺サイズd3,d4に応じたノズル径D2のノズルサイズを有する吸着ノズル8a2が用いられる。
吸着ノズル8aによる部品ピックアップ動作では、原則として図4(a)(b)の(イ)に示すように、吸着ノズル8aの中心位置を部品ポケット15a内の電子部品16の中心点に合致させるように、個別のピックアップ動作における位置決め目標位置が設定される。しかしながら、部品供給機構5によるキャリアテープ15のピッチ送りにおける停止位置精度や、ヘッド移動機構による吸着ノズル8aの位置決め精度によって、実際のピックアップ動作においては必ずしも吸着ノズル8aの中心位置が電子部品16の中心点に一致するとは限らず、一般には幾分かの位置ずれが生じる。この位置ずれは、吸着ノズル8aの位置ずれ誤差とキャリアテープ15のピッチ送り誤差が重畳することによって生じるものである。
例えば、図4(a)の(ロ)に示す例では、対象となる電子部品16Aの短辺サイズよりもノズル径D1が大きい吸着ノズル8a1を用いている。このときの部品センタ16CLに対するノズルセンタNCLの位置ずれは、X方向、Y方向についてそれぞれ吸着ノズル8a1が電子部品16Aの平面範囲から大きくはみ出さない程度のΔ1x、Δ1yとなっている。すなわち、図4(a)(ロ)に示す程度の位置ずれであれば、吸着ノズル8a1による電子部品16Aのピックアップは正常に行うことができるが、位置ずれ許容限度は小さく特にY方向については位置ずれ量がΔ1yを超えると正常なピックアップ動作が困難となる。すなわち、吸着ノズル8a1によって電子部品16Aをピックアップする組み合わせの場合の位置ずれ許容限度は、特にY方向については高精度に設定される。
これに対し、図4(b)の(ロ)に示す例では、使用される吸着ノズル8a2のノズル径D2は対象となる電子部品16Bのサイズに対して、特にX方向の辺サイズd4に対して余裕がある例を示している。このときの部品センタ16CLに対するノズルセンタNCLの位置ずれは、Y方向についてはあまり位置ずれが許容される余裕はない大きさのΔ2yであるものの、X方向についてはさらに大きな位置ずれが許容される余裕を有する大きさのΔ2xとなっている。すなわち、吸着ノズル8a2によって電子部品16Bをピックアップする組み合わせの場合の位置ずれ許容限度は、Y方向については高精度に設定する必要があるものの、X方向についてはラフに設定することが可能であり、同一動作についても移動方向に応じて異なる位置ずれ許容限度を設定することができる。
本実施の形態においては、このようにして定められた位置ずれ許容限度に基づいて、ヘッド移動機構による搭載ヘッド8の位置決めおよび部品供給機構5によるキャリアテープ15のピッチ送りにおける位置決め完了幅、すなわちサーボ駆動制御系において停止目標位置と現在位置との偏差を監視することによって位置決め完了の判定を行う際の基準数値となるパルス幅(図7参照)を決定する。さらに、この位置決め完了幅を固定的に設定する従来方法に替えて、駆動対象となる作業動作(ここでは、吸着ノズル8aと電子部品16との組み合わせ)に応じて位置決め完了幅を自動的に導出し、導出された位置決め完了幅に基づいて適正な位置決め完了の判定を行うようにしている。
ここで上述の位置ずれ許容限度と吸着ノズル8a、電子部品16との関係および位置ずれ許容限度に対応して導出される位置決め完了幅について、図5を参照して説明する。まず、取り出し対象の電子部品16が特定されると、当該部品を対象とする部品実装作業に用いられる吸着ノズル8aが選定される。これにより、この吸着ノズル8aを当該電子部品16に当接させて吸着する際の位置ずれ許容限度が、正常な吸着保持を確保する上で必要とされる吸着ノズル8aと電子部品16との幾何学的な重なり状態を考察することにより決定される。この必要とされる重なり状態は、単純に幾何学的な面積重なり率が規定値以上であるという定量的な判定基準や、実際に当該部品を吸着保持させた場合の部品保持の安定状態を試行的に確認した結果に基づく定性的な判定基準など、各種の仮定や経験則に基づく判定基準を用いることができる。
いずれの方法においても、位置ずれ許容限度の設定は、対象とする吸着ノズル8aのノズルサイズと電子部品16の部品サイズの組み合わせによって一意的に決定可能であると考えてよい。本実施の形態においては、図5(a)に示すように、吸着ノズル8aのノズルサイズ(n1,n2,n3・・)と電子部品16の部品サイズ(p1,p2,p3・・)の組み合わせに対応して、それぞれ適正と考えられる位置ずれ許容限度Lijを、X方向,Y方向についてそれぞれデータテーブルの形で準備し、パラメータ演算データ27gとして記憶装置27(図6参照)に記憶させるようにしている。すなわち吸着ノズル8aのノズルサイズとキャリアテープ15の部品サイズが与えられることにより、対応する位置ずれ許容限度Lijが求められる。
そしてこのようにして設定された位置ずれ許容限度Lに基づいて、当該作業動作における位置決め完了幅Aが決定される。ここで、多様な品種の部品を対象とする部品実装装置においては、部品の形状特性などによって位置ずれ許容限度Lと位置決め完了幅Aとの数値的な対応関係は必ずしも一意的に定まるとは限らない。例えば、単にサイズでは特定できない特性を有する部品を対象とする場合や、部品実装精度の関係から吸着保持姿勢が重視されるような場合などには、位置ずれ許容限度Lと位置決め完了幅Aとの適正な関係は異なったものとなる。
このため、本実施の形態においては、あらかじめ複数種類の対応関係を設定しておき、この対応関係を示す数式を複数種類準備する。たとえば位置ずれ許容限度Lと位置決め完了幅Aとの数値的な対応関係が、近似的に一次式で表されるような場合には、図5(b)に示すように、複数の相関直線(例えばRL1〜RL4)で示される計算式が準備される。そして部品種類が特定されることにより、これらの計算式のうちのどれを用いて位置決め完了幅を演算するかが指定される。これらの計算式も同様にパラメータ演算データ27gとして記憶装置27に記憶される。上述の位置決め完了幅の導出処理は、以下に説明するパラメータ導出部24によって実行される。なお、位置決め完了幅の導出は、ここで示すようにあらかじめ準備された計算式に基づいて算出する方法以外にも、予め準備された複数のデータテーブルから目的とする位置決め完了幅を自動的に検索する方法によって導出するようにしてもよい。
次に図6を参照して、制御系の構成を説明する。制御装置21はCPU機能を備えた処理演算装置であり、以下に説明する各要素を制御することにより、部品実装装置1による作業動作を実行させる。また制御装置21は、内部制御機能としての位置決め監視部22、位置決め制御部23およびパラメータ導出部24を有しており、後述するように、これらは可動作業ユニットであるヘッド移動機構、部品供給機構5における位置決め動作を制御するために必要な処理を実行する機能を有している。
制御装置21は、Y軸テーブル6A,X軸テーブル7A,Y軸テーブル6B,X軸テーブル7Bより成るヘッド移動機構、部品供給機構5の動作制御を行う。ここで、ヘッド移動機構は、それぞれサーボモータであるX軸モータ7M、エンコーダ7E、X軸ドライバ7Dより成るX軸サーボ駆動機構、Y軸モータ6M、エンコーダ6E、Y軸ドライバ6Dより成るY軸サーボ駆動機構を有しており、制御装置21からの動作指令がX軸ドライバ7D、Y軸ドライバ6Dに対して出力されることにより、X軸ドライバ7D、Y軸ドライバ6Dは動作指令に応じた動作パターンでX軸モータ7M、Y軸モータ6Mを駆動する。そしてX軸モータ7M、Y軸モータ6Mの動作に伴い、エンコーダ7E、エンコーダ6EはX軸モータ7M、Y軸モータ6Mの回転駆動量をフィードバックパルス(位置フィードバック情報)としてX軸ドライバ7D、Y軸ドライバ6Dに対して出力する。X軸ドライバ7D、Y軸ドライバ6Dは、この位置フィードバック情報に基づいてX軸モータ7M,Y軸モータ6Mの動作を制御する。
また部品供給機構5は、サーボモータである送りモータ19、エンコーダ19E、送りモータドライバ18より成るテープ送り軸サーボ駆動機構を有しており、制御装置21からの動作指令が送りモータドライバ18に対して出力されることにより、送りモータドライバ18は動作指令に応じた動作パターンで送りモータ19を駆動する。そして送りモータ19の動作に伴い、エンコーダ19Eは送りモータ19の回転駆動量をフィードバックパルスとして送りモータドライバ18に対して出力する。送りモータドライバ18は、この位置フィードバック情報に基づいて送りモータ19の動作を制御する。
これにより、ヘッド移動機構において作業を実行する可動部である搭載ヘッド8、部品供給機構5において作業を実行する可動部であるスプロケット20の現在位置(より正確にはキャリアテープ15の部品ポケット15aをピッチ送りするための送りピンの個別位置)を示す位置フィードバック情報が常に制御装置21に伝達され、制御装置21はこれらの位置フィードバック情報に基づいて、ヘッド移動機構における搭載ヘッド8、部品供給機構5における部品ポケット15aの現在位置を常に知ることができる。したがって、エンコーダ7E、6E、19Eは、可動作業ユニットにおいて作業を実行する可動部の現在位置を示す位置フィードバック情報を取得する現在位置取得部となっている。
本実施の形態に示す位置決め制御方法においては、位置フィードバック情報として出力されるフィードバックパルスと位置決め目標位置に対応するパルス値との偏差を常に監視することにより、位置決め完了を判断するようにしている。すなわち、作業動作の実行に際して位置決め監視部22はヘッド移動機構による搭載ヘッド8の移動目標位置と現在位置との差を示す偏差とともに、部品供給機構5におけるスプロケット20による移動目標位置(電子部品16を保持したキャリアテープ15においてピックアップ対象となる部品ポケット15aの送り位置)と現在位置との差を示す偏差を監視して、当該作業動作における所要位置決め精度に基づいて設定される位置決め完了幅(図7説明参照)以内にそれぞれの偏差が収束したことを示す位置決め完了信号を出力する。そしてこの位置決め完了信号が出力されたならば、作業動作の制御シーケンスによって規定される次の制御ステップに移行する。
制御装置21は、認識装置25、入出力装置26、記憶装置27と接続されており、認識装置25は搭載ヘッド8と一体的に移動する基板認識カメラ9によって基板3を撮像した画像を認識処理する。これにより、基板3や基板3に設定された実装点が認識され、基板3へ電子部品16を実装する部品実装作業では、この認識結果に基づいて部品搭載時の位置補正が行われる。
入出力装置26はタッチパネルスイッチが設けられた表示パネルやキーボードなど、各種の画面表示や操作指令の入力を行うための操作パネルである。入出力装置26を操作することにより、以下に説明する制御パラメータなどの各種データ入力が行われる。記憶装置27は、制御装置21による制御処理に必要な各種のプログラムやデータのほか、ヘッド移動機構、部品供給機構5における位置決め制御に用いられる制御データとしての、X軸制御パラメータ27a、Y軸制御パラメータ27b、送りモータ制御パラメータ27c、ノズル位置データ27d、ノズルサイズデータ27e、部品サイズデータ27fを記憶する。
ここでは、X軸制御パラメータ27a、Y軸制御パラメータ27b、送りモータ制御パラメータ27cとして、サーボ駆動系において位置決めが完了したことを残留パルスによって判断するために予め設定されるパルス幅、すなわち位置決め完了幅についてのデータが記憶されている。そして本実施の形態においては、個々のサーボ駆動系に固有のデフォルト値としての位置決め完了幅についてのデータに加えて、個々の位置決め動作を効率よく実行するために、所要位置決め精度が異なる複数種類の作業動作についてその都度個別に導出された位置決め完了幅についてのデータを併せて記憶するようにしている。
そして作業動作実行に際しては、位置決め制御部23は当該作業動作に対応して導出された位置決め完了幅を、当該作業動作を実行する動作機構(ヘッド移動機構、部品供給機構5)においてサーボモータ(X軸モータ7M、Y軸モータ6M、送りモータ19)を制御するドライバ(X軸ドライバ7D、Y軸ドライバ6D、送りモータドライバ18)に指示する。そして位置決め監視部22による位置決め監視は、その都度指示された位置決め完了幅を参照して実行される。
ノズル位置データ27dは、吸着ノズル8aによって電子部品16をピックアップする際の吸着ノズル8aと電子部品16との相対位置を規定するデータであり、通状は電子部品16の中心に吸着ノズル8aが一致するように設定される。ノズルサイズデータ27eは部品実装作業に使用される吸着ノズル8aのサイズ(ノズル径)に関するデータである。また部品サイズデータ27fは、実装対象となり、キャリアテープ15から取り出される電子部品16のサイズ(矩形辺寸法)に関するデータである。これらノズル位置データ27d、ノズルサイズデータ27e、部品サイズデータ27fは、図4、図5にて説明したように、X軸制御パラメータ27a、Y軸制御パラメータ27b、送りモータ制御パラメータ27cにおける位置決め完了幅を導出する際の基礎データとして用いられる。
ここで図7を参照して、上述の位置決め完了幅と位置決め所要時間との関係について説明する。図7は、サーボ駆動系の軸動作制御において、軸位置を停止目標位置SPで停止させるために位置指令をドライバに対して指令するとともに、動作を停止するために速度指令値を零値にセットした後の軸位置の経時的な変動をグラフで示している。すなわち位置指令に基づき、駆動軸は停止目標位置SPに向かって移動するが、軸動作の慣性により速度指令値が零値となったタイミングt0においても軸位置は停止目標位置SPに完全には収束せず、停止目標位置SPを振幅中心とする減衰振動の後に停止に至る。そしてこの減衰振動は、各サーボモータに備えられたエンコーダから出力されるフィードバックパルスによって検出され、位置決め監視部22によって各時点におけるパルス値と停止目標位置SPとの差を示す偏差が監視される。そしてこの偏差が予め設定された位置決め完了幅以内に収束することにより、位置決め完了と判定される。
このとき、設定される位置決め完了幅の大小により、位置決め精度および位置決め完了までに要する時間が規定される。すなわち図7に示すように、位置決め完了幅をA1に設定すると、偏差が位置決め完了幅A1以下となるタイミング、すなわちタイミングt0から位置決め所要時間T1だけ経過したタイミングにて位置決めが完了する。これに対し位置決め完了幅をA1よりも大きいA2に設定すると、偏差が位置決め完了幅A2以下となるタイミング、すなわちタイミングt0から、位置決め所要時間T1よりも短い位置決め所要時間T2だけ経過したタイミングにて位置決めが完了する。このように、サーボ駆動系において動作時間を短縮するために位置決め所要時間を極力短くしようとすれば、位置決め完了幅を当該作業動作において作業特性上必要とされる所要位置決め精度に基づいて適切に設定することが望ましい。
このため、本実施の形態においては、ヘッド移動機構、部品供給機構5における位置決め制御に用いられる制御データであるX軸制御パラメータ27a、Y軸制御パラメータ27b、送りモータ制御パラメータ27cとして、予めデフォルト値として各サーボ駆動系に固有に設定される固定パラメータとともに、個別の作業動作における軸制御に用いられる変動パラメータとしての位置決め完了幅Aを、図5にて示す位置ずれ許容限度Lとの対応関係にしたがってパラメータ導出部24によって導出する。すなわちパラメータ導出部24は、位置決め完了幅Aを当該作業動作における所要位置決め精度(ここでは位置ずれ許容限度Lとして規定される)に応じて導出する。作業動作実行に際しては、このようにして導出された位置決め完了幅Aは、制御装置21によって各サーボ駆動制御系のドライバに指示される。そして位置決め監視部22は、可動作業ユニット(ヘッド移動機構、部品供給機構5)における可動部(吸着ノズル8aおよびスプロケット20)の移動目標位置と現在位置との差を示す偏差を監視して、当該作業動作における所要位置決め精度に基づいて設定される位置決め完了幅A以内に偏差が収束したことを示す位置決め完了信号を出力する機能を有している。
次に図8を参照して、部品実装装置1における位置決め制御方法について説明する。まず設備が起動される(ST1)。これにより、部品実装装置1を稼働状態にして、部品供給部4の部品供給機構5から取り出した電子部品を基板3に移送搭載する部品実装動作が開始される。この動作開始に際しては、図6に示す各サーボ駆動制御系において、モータ制御パラメータの設定が行われる。すなわち、記憶装置27に記憶されたX軸制御パラメータ27a、Y軸制御パラメータ27b、送りモータ制御パラメータ27cのデフォルト値が、それぞれのサーボ駆動系のドライバに送信される(ST2)。
この後、実行する作業内容に応じた生産プログラムの設定が行われ(ST3)、生産が開始される(ST4)。そして当該生産の作業動作に必要なパラメータの導出が実行される(ST5)。すなわち、パラメータ導出部24が記憶装置27に記憶されたパラメータ導出用のデータ(ノズル位置データ27d、ノズルサイズデータ27e、部品サイズデータ27f)およびパラメータ演算データ27gに基づき、当該作業動作における位置決め制御に用いられる位置決め完了幅を導出する。そして新たに導出された制御パラメータ(位置決め完了幅)を、現時点においてドライバに設定されている既存の制御パラメータと比較することにより、次回軸制御で、パラメータ変更が必要となるか否かを判断する(ST6)。
ここで、次回軸制御における所要位置決め精度が異なるため、パラメータ変更が必要であると判断されたならば、パラメータ更新のための処理を位置決め制御部23によって実行(ST7)した後、移動を指令する(ST8)。なお(ST6)にてパラメータ更新が不要と判断された場合には、既設定の制御パラメータを用いて移動を指令する。次いで当該動作によって対象となる生産作業が終了し、生産プログラムを終了すべきか否かが判断される(ST9)。
ここで生産プログラムがまだ完了していなければ、(ST5)に戻って次の作業動作に用いられる制御パラメータの導出のための処理を行い、(ST6)移行の処理が反復実行される。そして(ST9)において生産プログラムが終了したことが確認されることにより、部品実装装置1による生産作業を終了する(ST10)。そして(ST8)に示す移動動作での位置決め制御においては、常に軸制御において必要な所要位置決め精度に応じて導出された適正な位置決め完了幅が適用される。
すなわち上述の位置決め制御方法は、基板に電子部品を実装するための部品実装用作業を実行する部品実装用装置において、可動作業ユニットの位置決め制御を行う部品実装用装置における位置決め制御方法であって、位置決め完了幅を当該作業動作における所要位置決め精度に応じてパラメータ導出部24によって導出し、作業動作実行に際して当該作業動作に対応して導出された位置決め完了幅を位置決め制御部23によって各ドライバに指示するようにしている。これにより、所要位置決め精度に応じた適切な精度範囲で位置決めを完了させることができ、作業動作の特性からみて不必要に高精度な位置決め動作が排除される。したがって同一のドライバによって駆動されるサーボモータについて作業動作の種類に関わらず位置決め完了幅を一定値に設定していた従来技術と比較して、位置決め制御時間を短縮して生産性を向上させることができる。
なお上記実施の形態においては、基板に電子部品を実装するための部品実装用作業を実行する部品実装用装置として、基板3に電子部品16を実装する部品実装装置1の例を示したが、本発明の適用はこのような構成の部品実装装置1に限定されるものではなく、サーボモータによって駆動されて部品実装用作業のための作業動作を行う可動作業ユニットを備えたものであれば、本発明を適用することができる。
また図6に示す構成では、制御装置21に位置決め監視部22の機能を備えるようにしているが、各サーボ駆動系を構成するドライバ(X軸ドライバ7D、Y軸ドライバ6D、送りモータドライバ18)に位置決め監視機能が内蔵されている場合には、各ドライバによって位置決め監視を実行させるようにしてもよい。