(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る、印刷装置11について、図1から図17を参照しながら説明する。なお、印刷装置11は、プリンター10とコンピューター130とから構成されている。
<レンズシートについて>
最初に、印刷媒体であるレンズシートLSについて説明する。図1に示すように、レンズシートLSは、表面に位置するレンチキュラーレンズLS1と、このレンチキュラーレンズLS1の裏面と接するインク吸収層LS2と、該レンズシートLSの裏面に位置するインク透過層LS3とを具備している。これらのうち、レンチキュラーレンズLS1は、一方向を長手とする複数のシリンドリカル凸レンズ(凸レンズLS11;レンズに対応)が、一定のピッチで並列配置された構成となっている。レンチキュラーレンズLS1においては、それぞれの凸レンズLS11を進行する光の焦点が、レンチキュラーレンズLS1の裏面に位置するように、凸レンズLS11の曲率が形成されるのが好ましい。
また、インク透過層LS3は、不図示のノズルから噴射されたインク滴が最初に付着する部分であり、該付着したインクが透過していく部分である。このインク透過層LS3は、たとえば酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)等の微粒子、硫酸バリウム、ガラスファイバー、プラスチックファイバー等を材質として形成されている。また、インク吸収層LS2は、インク透過層LS3を透過したインクを吸収および/または固着させる部位である。このインク吸収層LS2は、たとえばPVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子等を材質として形成されている。また、レンチキュラーレンズLS1は、PET、PETG、APET、PP、PS、PVC、アクリル、UV樹脂等を材質として形成されている。
なお、インク吸収層LS2は透明であると共に、インク透過層LS3は、白色である。しかしながら、インク吸収層LS2が白色であっても良く、またインク透過層LS3が透明であっても良く、さらにインク透過層LS3とインク吸収層LS2の両方が透明であっても良い。また、本実施形態では、インク透過層LS3が存在することにより、印刷後であっても、レンズシートLSを直ぐに触ることが可能となっている。しかしながら、レンズシートLSは、インク透過層LS3を具備しない構成を採用しても良い。
また、図1に示すように、本実施形態におけるレンズシートLSは、その外観が矩形状を為していると共に、該矩形状の外観を構成するレンズシートLSの縁部が、凸レンズLS11の長手方向と平行となっている。
<プリンター10の全体構成について>
図2は、プリンター10の概略の構成を示す概略構成図であり、プリンター10を後方から見た斜視図である。なお、図2において、印刷媒体としてのレンズシートLSが進行する方向である矢印Xの方向を前方(前側)とし、この反対方向を後方(後側)とする。また、後方から前方に向かって右手方向となる矢印Yの方向を右方(右側)とし、この反対方向である左手方向を左方(左側)とする。そして、矢印Zの方向を上方(上側)とし、この反対方向を下方(下側)として、以下の説明を行うこととする。
プリンター10は、外装体である筐体20と、レンズシートLSを下側から支持するシートガイド30と、シートガイド30上に載置されたレンズシートLSを後方から前方に向けて搬送する給紙ローラー40および排紙ローラー41と、レンズシートLSをシートガイド30に向けて押圧するシート押さえローラー42と、レンズシートLSに対して記録を行う印刷ヘッド51等を有する。
筐体20の後側の一側面には、レンズシートLSを筐体20内に供給するための給紙開口部21が形成され、また、前側の一側面には、給紙開口部21の側から供給されたレンズシートLSを排出する排紙開口部22が形成されている。給紙開口部21からプリンター10に供給されたレンズシートLSは、給紙ローラー40および排紙ローラー41により前方に向かって搬送されると共に、印刷ヘッド51により記録が行われた後、排紙開口部22からプリンター10の外部に排出される。
シートガイド30は、給紙ローラー40、排紙ローラー41およびシート押さえローラー42の下方に配設され、全体として矩形の板状体を呈している。このシートガイド30は、前後方向が、給紙開口部21の後方に突出した位置から排紙開口部22と排紙ローラー41との間の位置に亘って備えられている。また、左右の幅方向については、載置されるレンズシートLSの全幅に亘って支持できる幅となっている。シートガイド30は、筐体20、または内部のフレーム等の構造体に対して図示を省略する構成により取り付けられている。
シートガイド30は、基板31と係合部32とを備えている。基板31は、樹脂等から形成される板状体の部位であり、その上面31Aに、レンチキュラーレンズLS1と同一部材が貼付される。そして、この貼付により、係合部32が形成される。係合部32は、本実施形態では、レンズシートLSのレンチキュラーレンズLS1と同一形状に形成されている。すなわち、レンチキュラーレンズLS1を形成する各凸レンズLS11と同一形状の凸条33が、レンチキュラーレンズLS1の配設ピッチと同一ピッチ、かつレンズシートLSの幅よりも広い幅に亘って並設されている。また、凸条33の長手方向は、レンズシートLSの所定の搬送方向、すなわち給紙ローラー40および排紙ローラー41に直交する方向に沿って形成されている。
なお、係合部32は、レンチキュラーレンズLS1と同一部材により形成しているが、基板31を樹脂成形により作成する場合には、成形金型に予め係合部32に対応する型面を形成して、係合部32を基板31と一体に成形するようにしても良い。また、基板31に係合部32を一体に樹脂成形する場合には、基板31を形成する樹脂材をフッ素樹脂等の低摩擦の樹脂材とすることで、レンズシートLSと係合部32との摩擦を小さくすることができ、レンズシートLSの搬送をスムーズに行うことができる。また、基板31を金属板により形成してもよい。この場合には、金属板を切削加工することにより係合部32を形成することができる。
印刷ヘッド51の前後には、給紙ローラー40と排紙ローラー41が配設されている。給紙ローラー40と排紙ローラー41は、それぞれ給紙用モーター43と排紙用モーター44により回転駆動され、シートガイド30の上に載置されているレンズシートLSを後方から前方に向けて搬送する。これら給紙ローラー40および排紙ローラー41は、レンズシートLSの幅よりも長く設けられていて、レンズシートLSを広い範囲に亘り均一に係合部32に押圧可能となっており、レンチキュラーレンズLS1と係合部32との係合状態をより確実化させることができる。
なお、給紙ローラー40および排紙ローラー41は、その周囲を、弾性を有する肉厚のゴム材により被覆するようにしても良い。このように構成する場合、給紙ローラー40および排紙ローラー41の表面が弾性変形可能となる。また、給紙ローラー40とシートガイド30との間の間隔および排紙ローラー41とシートガイド30との間の間隔を、レンズシートLSの厚さより狭く構成することで、給紙ローラー40および排紙ローラー41がレンズシートLSをシートガイド30に押圧する状態とする。
また、給紙ローラー40よりも上流側(後方側)の部位には、シート押さえローラー42が配置されている。シート押さえローラー42は、たとえば、ステンレスや真鍮等の金属で形成され、レンズシートLSの左右方向の幅よりも長く設けられている。また、シート押さえローラー42の左右の端面には、シート押さえローラー42のうちレンズシートLSに接触する部分よりも小径の軸部42aが設けられている。
シート押さえローラー42の両端側には、軸受部45が配置されている。この軸受部45には、軸受孔45aが形成されている。この軸受孔45aは、上下方向に長い長円形状に設けられている。この軸受孔45aに対して、上述の軸部42aが挿入される。つまり、シート押さえローラー42は、軸受部45に対して上下方向に変位可能に支持されている。
ここで、シート押さえローラー42とシートガイド30との間にレンズシートLSを差し込むと、シート押さえローラー42は、レンズシートLSの存在により、上方に持ち上げられる状態となる。すなわち、シート押さえローラー42の軸部42aが軸受孔45aの下端部に支持されている状態では、シートガイド30とシート押さえローラー42との間の間隔が、シートガイド30に載置されているレンズシートLSの上面(裏面;インク透過層LS3側の面)と凸条33の頂部との間の距離より狭くなるように設定されている。それにより、シートガイド30上を搬送されるレンズシートLSは、シート押さえローラー42により、シートガイド30に押圧される。
なお、レンズシートLSが搬送される際には、このレンズシートLSの搬送に追従して、シート押さえローラー42が軸部42aを支点として自転する。また、給紙ローラー40とシートガイド30との間隔、および排紙ローラー41とシートガイド30との間隔も、これらのローラーからレンズシートLSに対して適度な押圧力を作用させることができる間隔となっている。
印刷ヘッド51は、キャリッジ50の下面に取り付けられ、本実施形態では、インクを噴射するインクジェット型の記録ヘッドとして構成されているが、それ以外の方式(ジェルジェット、熱転写方式等)を用いるようにしても良い。キャリッジ50は、左右方向に延設されるキャリッジ軸52に移動可能に支持され、また、キャリッジ用モーター53により駆動されるタイミングベルト54に取り付けられている。このため、キャリッジ用モーター53によりタイミングベルト54を左右方向に回転駆動すると、印刷ヘッド51は、キャリッジ軸52に沿って左右方向に移動する。また、キャリッジ50には、インクカートリッジ55(図3参照)が着脱可能に搭載されている。
以上の構成により、レンズシートLSに対して記録を行う場合には、レンチキュラーレンズLS1の側をシートガイド30の係合部32に対向させる状態で、レンズシートLSをシートガイド30に載置させる。それにより、レンズシートLSの凸レンズLS11と凸条33とが互いに噛み合い、レンズシートLSは係合部32により左右方向(主走査方向)の位置決めが行われる。また、凸条33の長手方向がレンズシートLSの搬送方向(副走査方向)に沿うように形成されている。したがって、レンズシートLSが搬送される際には、当該レンズシートLSは、係合部32により副走査方向にガイドされる。このように、搬送方向が一定に維持された状態でレンズシートLSは搬送される。
<制御部の構成>
図3および図4に示すように、制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)104、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)105、通信I/F107、ヘッドドライバー108、モータードライバー109等を備えていて、これらがたとえばバス等の伝送路106(図4参照)を介して相互にデータを送受信可能に接続されている。
これらのうち、CPU101は、ROM102やEEPROM104に格納されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、プリンター10の各部を制御する部分である。ROM102には、プリンター10を制御するための制御プログラムおよび処理に必要なデータ等が記憶されている。RAM103は、CPU101が実行途中のプログラムあるいは、演算途中のデータ等を一時的に格納するメモリである。また、EEPROM104は、プリンター10の電源を切った後も、保持しておくことが必要な各種データを記憶するためのメモリである。なお、ROM102やEEPROM104にも、後述するプリンタードライバープログラム142と同様のプログラムが存在する。
ASIC105は、不図示の各種のセンサーからの信号に基づいて、印刷ヘッド51および各種モーターを駆動させるための専用のICである。また、通信I/F107は、不図示のコネクターを介してコンピューター130と接続され、通信を行う。それにより、プリンター10がコンピューター130側から印刷信号PSを受け取ると、その印刷信号PSに基づいて、プリンター10で印刷のための処理が開始される。
また、ヘッドドライバー108は、ASIC105からの指令に応じて所定の電圧を生成し、その電圧を印刷ヘッド51内のピエゾ素子に印加する。モータードライバー109は、ASIC105からの指令に応じて所定の電圧を生成し、その電圧を各モーター43,44,53に印加する。
<コンピューターの概略構成>
図5に示すように、プリンター10は、通信I/F107を介して、コンピューター130に接続されている。このコンピューター130は、CPU131、ROM132、RAM133、HDD(Hard Disk Drive)134、ビデオ回路135、インターフェース136、表示装置137等を具備している。このうち、HDD134には、画像処理プログラム140、ビデオドライバープログラム141、プリンタードライバープログラム142等が記憶されている。
これらのうち、画像処理プログラム140は、所定のオペレーティングシステム(OS)の下で動作し、HDD134等の記憶部位から所望の画像データを選択し、立体画像または変化画像を生成するためのGUI(Graphical User Interface)を表示するとともに、選択された複数の画像データの相関性を計算するためのプログラムである。
ビデオドライバープログラム141は、所定のオペレーティングシステム(OS)の下で動作し、ビデオ回路135を駆動するためのプログラムであり、たとえば、画像処理プログラム140から供給された画像データに対してガンマ処理やホワイトバランスの調整等を行った後、映像信号を生成して表示装置137に供給して表示させる際に実行される。
プリンタードライバープログラム142は、所定のオペレーティングシステム(OS)の下で動作し、画像処理プログラム140で作成された画像データに対して、解像度変換処理を行い、RGB表色系の合成画像データを作成等し、CMYK(Cyan、Magenta、Yellow、Black)表色系の印刷データに変換する色変換処理、さらにCMYK表色系によって表されている印刷データに対するハーフトーン処理、およびラスタライズ処理の各処理を行い、プリンター10側に印刷信号PSを出力する。
ここで、図6に示すように、プリンタードライバープログラム142は、解像度変換モジュール142a、画像合成モジュール142b、色変換モジュール142c、ハーフトーンモジュール142d、視差ドット数計算モジュール142e、白挿入モジュール142f、インク設定変更モジュール142g、印刷データ生成モジュール142h、送信モジュール142i、インク増量LUT142j、記録率テーブル142kを有している。
これらのうち、解像度変換モジュール142aは、画像データの解像度を、プリンター10の印刷解像度(たとえば、720dpi)等に応じて適宜変換するモジュールである。
画像合成モジュール142bは、複数の画像データのそれぞれを短冊状に細分化して細分化画像を生成する。その後、画像合成モジュール142bは、細分化された短冊状の画像データを、一定の順序で並べて合成する処理を実行する。
色変換モジュール142cは、後述するようなインク増量LUT142jを参照し、RGB(Red Green Blue)表色系によって表現された画像データを、たとえば、CMYK(Cyan Magenta Yellow Black)表色系の画像データに変換する処理を実行するモジュールである。
ハーフトーンモジュール142dは、たとえばディザ処理により、CMYK表色系によってたとえば1画素が256階調によって表現される画像データを、記録率テーブル142kを参照して、大ドット、中ドット、小ドットの3種類のドットサイズの組み合わせからなるビットマップデータに変換する処理を実行するモジュールである。なお、このハーフトーン処理により、集約ドット列が形成される。
視差ドット数計算モジュール142eは、レンズピッチとプリントピッチのずれを考慮し、視差位置に応じて各レンズ内のドット数を決定するための視差ドット数テーブルを生成する処理を実行するモジュールである。なお、視差ドット数テーブル作成処理の詳細は後述する。
白挿入モジュール142fは、ハーフトーン処理によって形成された集約ドット列の間に、白ドット列を挿入し、それぞれの視差の画像データに誤差が拡散して本来視覚するべきでない画素を視覚してしまう、いわゆるクロストークの影響を低減させるための処理を実行するモジュールである。ここで、1つの凸レンズLS11における1視差当たりのドット数をDmax、集約ドット列の幅方向におけるドット数をDとすると、1つの凸レンズLS11の幅方向におけるブランクドット数Sは、以下の(式1)によって求められる。
S=Dmax−D …(式1)
インク設定変更モジュール142gは、視差ドット数に応じて噴射するインクサイズを変更するための処理を実行するモジュールである。インク設定変更モジュール142gは、たとえば、後述する視差ドット数テーブルに記憶されている視差ドット数が調整された所定のレンズ内のドットすべてのインクサイズを変更する。具体的には、ある階調値に対応するドットが記録率テーブル142kを参照すると大ドットとなる場合には、中ドットまたは小ドットのインクサイズへ変更する。
印刷データ生成モジュール142hは、インク設定変更モジュール142gから出力されたビットマップデータから、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含む印刷データを生成する処理を実行するモジュールである。送信モジュール142iは、印刷データ生成モジュール142hによって生成された印刷データを、プリンター10に対して送信する処理を実行するモジュールである。
インク増量LUT(Look Up Table)142jは、たとえばRGB表色系の入力画像データと、CMYK表色系の出力画像データの対応関係を示す情報を格納したテーブルである。ここで、通常のLUT(以下、標準LUTとする。)では、RGB表色系の入力画像データから得られる、CMYK表色系の出力画像データの階調値が、図7の上に示す通りであるとすると、インク増量LUT142jでは、図7の下に示す通りとなっている。すなわち、インク増量LUT142jでは、標準LUTにおけるCMYKの階調値を3倍している。これは、白挿入モジュール142fで白ドット列を挿入したことによって印刷画像の色合いが全体的に白くなるのを防止する役目を果たしている。なお、階調値の上限が255であるため、3倍した値が255を超えても、上限値である255としている。
記録率テーブル142kは、たとえば、0〜255階調のそれぞれの場合における小、中、大のドットの記録率を示す情報を格納したテーブルである。この記録率テーブル142kを参照することにより、インクを噴射するときのドット径が階調値に応じて小ドット、中ドット、大ドットのいずれかに決定される。
<集約ドット列における幅方向のドット数の決定について>
以上のような構成を有する印刷装置11において、集約ドット列における幅方向のドット数(集約ドット数D)を決定する処理について、図8のフローに基づいて説明する。
まず、最小印刷幅L1を測定する(S01)。この最小印刷幅L1は、たとえばインク1滴をレンズシートLSに付着させた場合に、にじみを考慮した直径に対応する。続いて、ある幅を持った凸レンズLS11の焦線幅Fが、最小印刷幅L1よりも小さいか否かを判定する(S02)。この判定において、焦線幅Fが最小印刷幅L1よりも小さいと判定される場合(Yesの場合)、集約ドット数Dを1に決定する(S03)。また、S02の判定において、焦線幅Fが、最小印刷幅L1以上であると判定される場合(Noの場合)、集約ドット数Dは、以下の(式2)により求められる。
D=int(F/L1) …(式2)
ここで、集約ドット数Dは、除算の結果の小数点以下を切り捨てて、整数のみを求めるint関数を用いて算出されている。なお、S03、S04が終了すると、このフローを終了する。また、(式2)においては、集約ドット数Dは、除算の結果の小数点以下を切り捨てて、整数のみを求めているが、当該集約ドット数Dは、四捨五入または切り上げによって得られる整数値となるように決定しても良い。また、S02の判定においては、焦線幅Fが、最小印刷幅L1よりも小さいか否かにつき判定しているが、焦線幅Fが最小印刷幅L1以下であるか否かにつき判定するようにしても良い。
以上のような、最小印刷幅L1および焦線幅Fは、予め既知であるため、プリンター10を製作する過程において、設定値として、たとえばROM102またはEEPROM104等の記憶部位に記憶させられる。
<視差数の決定について>
続いて、レンズシートLSへの印刷時に最適となる視差数Pを決定するための処理について、図9のフローに基づいて説明する。
まず、最大インク重なり率Mを設定する(S11)。この最大インク重なり率Mは、インク滴がレンズシートLSに付着した場合に、どの程度重なっているのかを示す値である。続いて、最小線幅L2を算出する(S12)。最小線幅L2は、図8のフローにて求められた最小印刷幅L1のうち、重なり部分を除外した線幅であり、以下の(式3)によって求められる。
L2=L1×(100−M)/100 …(式3)
続いて、最大・最小視差数を算出する(S13)。ここで、凸レンズLS11のレンズ幅をKとすると、最大視差数Pmaxは、以下の(式4)によって求められ、最小視差数Pminは、以下の(式5)によって求められる。
Pmax=Round(K/L1) …(式4)
Pmin=Trunc(K/L2) …(式5)
ここで、最大視差数Pmaxは、除算の結果の小数点以下を四捨五入する、Round関数を用いて算出されている。また、最小視差数Pminは、除算の結果の小数点以下を切り捨てる、Trunc関数を用いて算出されている。なお、このS13を経ることにより、最大視差数と最小視差数とが求められるため、その間の数が視差数Pの候補となる。
次に、視差数Pの候補のパターン分を実際に印刷し、目視によって実際の絵柄の見え方に基づき評価する(S14)。そして、実際の見え方を評価することにより、視差数Pが決定される。なお、目視による評価とはせずに、たとえばスキャナーやカメラによって、レンズシートLSに印刷した絵柄を取り込み、所定のプログラムによって絵柄の見え方を評価するようにしても良い。
以上のようにして算出される視差数Pは、最小印刷幅L1と、レンズ幅Kとから求められる。そのため、プリンター10を製作する過程においては、レンズ幅Kを入力すれば、自動的に求められるように、たとえばROM102またはEEPROM104等の記憶部位にテーブルまたは所定の計算式が記憶させられる。
<プリンタードライバープログラムで実行される処理について>
続いて、上述のような構成を有する印刷装置11において、プリンタードライバープログラム142で実行される処理について、図10の処理フローに基づいて説明する。
まず、プリンタードライバープログラム142は、印刷設定値の読み込みを行う(S110)。印刷設定値としては、レンズシートLSのレンズピッチ、印刷される際のサイズ(印刷データのサイズ)、印刷解像度、視差数P、および集約ドット数D等である。
印刷設定値の読み込みが終了すると、続いて、解像度変換モジュール142aにより、入力画像データの解像度変換を行う(S120)。この解像度変換の処理においては、複数枚の画像データが合成された後の合成画像データの元となる、それぞれの入力画像データにつき、印刷に対応させたサイズの計算が行われる。たとえば、レンズピッチが60lpi、印刷サイズの幅方向が6インチ、長手方向が4インチ、印刷解像度が720dpi、視差数Pが4、集約ドット数Dが1である場合、解像度変換後の画像データは、幅方向Wが360ドット(=6インチ×60lpi;レンズ本数に対応)、長手方向Hが2880ドット(=720dpi×4インチ)となる。
次に、画像合成モジュール142bにより、合成画像データが作成される(S130)。この合成画像データを作成するのにあたっては、解像度変換後の画像データを、凸レンズLS11の1つずつに配置されるように短冊状に細分化し、1視差分の細長い画像データ(細分化画像データ)を形成する。なお、他の画像データについても同様に処理する。さらに、1つの凸レンズLS11内で画像が変化する順(視認角度順)に、細分化された画像データを並べて配置する。それにより、1つの凸レンズLS11内に配置される、視差順かつ短冊状の画像データ(視差ドット列;図12参照)が作成され、それを全ての凸レンズLS11に対して行う。それにより、合成画像データが作成される。たとえば、解像度変換後の画像データの幅方向Wが360ドット、長手方向Hが2880ドットであり、視差数Pが4である場合、合成画像データの幅方向Wが1440ドット、長手方向Hが2880ドットとなる。
続いて、色変換モジュール142cおよびインク増量LUT142jにより、色変換処理を行う(S140)。色変換処理では、合成画像データのRGB表色系で表現される色成分が、プリンター10で印刷/表現可能なCMYK表色系の色成分に変換される。ここで、本実施形態では、図7に示すように、インク増量LUT142jに基づいて色変換処理が為されるため、標準LUTに基づいて色変換処理を行う場合よりも、CMYKの階調値が、たとえば3倍等のように高められている。そのため、集約ドット列の各集約ドットにおけるインク濃度(インクの階調値)は、標準LUTを用いる場合と比較して、たとえば3倍等のように、はるかに高い濃度(インクの階調値)となるように、色変換処理が為されている。
なお、本実施形態では、インク増量LUT142jは、標準LUTを用いる場合と比較して、たとえば3倍程度、インクの階調値が高まるものとしている。しかしながら、インク増量LUT142jは、標準LUTを用いる場合と比較して、インクの階調値が3倍程度高まる場合には限られず、その他の倍率としても良い。特に、インク増量LUT142jを用いる場合に、標準LUTを用いる場合と比較して、たとえば3.1倍〜3.2倍等のように、3倍よりもプラスαだけ若干高い値とする場合には、画質が良好なものとなる。たとえば、合成画像データの幅方向Wが1440ドット、長手方向Hが2880ドットである場合、CMYKのそれぞれにつき、同じ解像度の色変換処理後のデータが得られる(ハーフトーン処理でも同様)。
この後に、ハーフトーンモジュール142dにより、色変換が為された合成画像データに対して、ハーフトーン処理が行われる(S150)。ここで、ハーフトーン処理とは、原画像データの階調値(本実施形態では256階調)をプリンター10が画素毎に表現可能な階調値に減色する処理をいう。本実施形態では、記録率テーブル142kを参照して、たとえば、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、および「大ドットの形成」の4階調への減色を行う。
なお、かかるハーフトーン処理においては、たとえば図11に示すようなディザマトリクスD1を用いて、ハーフトーン処理が実行される。しかしながら、これとは異なるディザマトリクスを用いてハーフトーン処理を行っても良く、またディザ法ではなく、誤差拡散法を用いて、ハーフトーン処理を行うようにしても良い。
S150の後に、ハーフトーン処理が終了した画像データに対して、視差ドット数の計算が行われる(S155)。この視差ドット数の計算では、凸レンズLS11の累積レンズ幅と各ドットの累積印字幅との差分に基づいて各レンズ内のドット数を算出し、視差ドット数テーブルとして生成する。なお、この視差ドット数の計算処理の詳細は後述する。
S155の後に、白挿入モジュール142fにより、白挿入処理が行われる(S160)。この白挿入処理においては、1つの凸レンズLS11に配置される、ハーフトーン処理が為された1視差分の細長い画像データに、ブランクドット列を隣接させて、幅方向におけるドット数が後述する(式6)により求められる1視差ドット数Dmaxとなるようにする。ここで、ブランクドット列とは、ブランクドットが長手方向に細長く列状に連なったものを指し、ブランクドットとは、CMYKの階調値がいずれも0である画素(いずれの色または種類のインク滴をも噴射させない値の階調値を有する画素)を指す。
ここで、1視差ドット数Dmaxは、以下の(式6)により求められる。
Dmax=(印刷解像度/レンズピッチ)/視差数P …(式6)
たとえば、レンズピッチが60lpi、印刷解像度が720dpi、視差数Pが4とすると、1視差ドット数Dmax=3と求められる。そのため、ハーフトーン処理後の画像データの幅方向Wが1440ドット、長手方向Hが2880ドットである場合、白挿入処理後の画像データは、幅方向Wが4320ドット(=1440×Dmax)、長手方向Hが2880ドットとなる。
この白挿入処理が終了すると、図12に示すような、視差ドット列とブランクドット列とで構成される視差順かつ短冊状の画像データが生成される。そして、この画像データに対して視差ドット数に基づいた噴射インクサイズを変更する(S165)。具体的には、レンズ内の視差ドット数が他のレンズの視差ドット数より少ないレンズ(たとえば、図14ではL20の視差ドット数は11ドットであり、他のL0〜L19、L21、L22の視差ドット数は12ドットであるため、他のレンズよりも少ない)についてのインクサイズを変更する。なお、視差ドット数が少ないレンズを把握する方法は、図13におけるS560の閾値Nの判定において、NOと判定されたときのiの値からレンズ番号を特定している。そして、当該レンズ番号に対応したレンズ内のドットが「大ドットの形成」とされていた場合には、「中ドットの形成」または「小ドットの形成」とする。なお、「中ドットの形成」とされていた場合には、「小ドットの形成」としてもよい。
印刷データ生成モジュール142hにより、白挿入処理およびインクサイズ変更処理が為された画像データから、印刷データを生成する処理が実行される(S170)。ここで、印刷データとは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含むデータであり、不図示の分散テーブルの分散データを参照して作成される。次に、送信モジュール142iは、生成された印刷データを、プリンター10に対して出力する(S180)。
以上のようにして、コンピューター130側での処理が終了し、プリンター10が印刷データを受信すると、制御部100のCPU101は、制御指令を発し、この制御指令に基づいて、キャリッジ用モーター53および印刷ヘッド51が駆動される。それにより、キャリッジ50は、主走査方向に移動しながら、不図示のノズルよりインク滴をレンズシートLSに噴射させて、印刷が実行される。
<視差ドット数の計算について>
続いて、各視差あたりのドット数を決定するための計算処理(図10のS155)について、図13のフローに基づいて説明する。図13は、図10に示す処理フローにおける視差ドット数決定処理(S155)の詳細を示す図である。
まず、計算データを入力する(S510)。この計算データは視差ドット数P、レンズ解像度(レンズピッチ;lpi)、印字解像度(プリントピッチ;dpi)、閾値Nである。ここで、閾値Nは、レンズ内ドット数を調整するか否かを判定するための値である。なお、閾値Nは、1ドットあたりの印字幅の半分を超える場合には当該レンズ内のドットとみなすため、以下の計算式により求められる。
N=25.4/dpi/2 …(式6)
続いて、視差位置に応じたレンズ内ドットの分配処理を行う(S520)。具体的には、1レンズ内に完全に含まれている視差画素数を算出するLensDot、1視差あたりに割り当てられるドット数を算出するPdot、1レンズ内の視差ドット数から各視差あたりドット数を減算した場合の端数を算出するoddDotに基づいて分配処理を行う。なお、LensDot、Pdot、oddDotは以下の計算式により求められる。
LensDot=int(dpi/lpi) …(式7)
Pdot=LensDot/P …(式8)
oddDot=LensDot−(Pdot*P) …(式9)
たとえば、dpi=720、lpi=60.12の場合には、
LensDot=11、Pdot=2、oddDot=3となる。そして、分配処理により、たとえば視差P1〜P4のドット数は、P1=3、P2=3、P2=3、P4=2と決定される。
続いて、全レンズに対して分配処理を完了しているか否かを確認するために、分配終了判定を行う(S530)。具体的には、処理レンズ数i(iの初期値は0)が全レンズ数(たとえば360)より小さいか否かにより判定を行う。処理レンズ数iが全レンズ数より小さい場合(S530でYES)には以降のS540〜S580の処理を行い、全レンズ数より小さくない場合(S530でNO)には処理を終了する(END)。
S530でYESの場合には、累積レンズ長LenLを算出する(S540)。そして、累積印字幅LenPを算出する(S550)。なお、累積レンズ長LenLおよび累積印字幅LenPは、所定の基準位置からの長さであり、以下の計算式により求められる。
LenL=(25.4/lpi)*(i+1) …(式10)
LenP=(25.4/dpi)*{LensDot*(i+1)+AddDot} …(式11)
なお、AddDotは、LensDotが整数値のみを抽出して計算しており、印字幅の計算をする際には小数点部分も切り上げた整数値を用いて計算する必要があるため、初期値は12−LensDot(11)=1ドットとなる。
以上の(式10)および(式11)において、i=0の場合、LenL=0.422、LenP=0.388となる。
続いて、閾値Nを用いて、特定視差ドットを挿入するか否か判定を行う(S560)。なお、当該判定は以下の判定式により求められる。
(LenL−LenP)≧N …(式12)
たとえば、i=0の場合、LenL−LenP=0.034となるため、閾値N(=0.017)より大きいため、S570の処理へ移行する。
S560において式12が成り立つ場合(YES)、ピッチ調整として、該当する視差のレンズ番号に分配された最終視差(請求項の特定視差画素列の画素数)へ1ドット追加する(S570)。具体的には、レンズL0〜L19までの各視差P1〜P4のドット数には1ドット加算して3とする。なお、i=20となるレンズL20では、閾値Nより小さくなるため、視差P4のドット数が加算されることはない(S560においてNO)。S570の処理により1ドットが追加されると、累積ピッチ調整ドット数AddDotを更新する(S580)。なお、S580まで処理が完了した場合と、式12が成り立たない場合(NO)は、S530の判定処理に戻る。
以上のようにして算出される視差ドット数は、たとえば図14のような視差P1〜P4とレンズL0〜Lnまでのそれぞれの視差ドット数が視差ドットテーブルとして作成される。
<本実施形態における効果>
以上のような画像処理方法により、図14に示したような視差ドット数表テーブルが得られる。そして、この視差ドット数表テーブルに記憶されている各凸レンズLS11内に印刷されるべき視差画像ドット数に応じてインクサイズ変更が行われ、レンズシートLSに噴射するインクのドットサイズが決定される。すなわち、一方向を長手とする凸レンズLS11が複数配置されるレンズシートLSに、複数の元画像データに基づいて視差画像を形成するための印刷用画像データを作成する画像処理方法であって、凸レンズLS11内に印刷されるべき視差画像ドット数に基づいてレンズシートLSに噴射するインクのドットサイズを変更するインク設定変更処理を行うものである。これにより、たとえばレンズピッチlpiがプリントピッチdpiの整数倍でないことに起因するモアレが発生すると予測される箇所のドットサイズを周囲のドットサイズあるいは他のドットサイズと比較して相対的に小さく設定する、または当該箇所に噴射されるインク量を周囲のドットのインク噴射量あるいは他のドットのインク噴射量と比較して相対的に少なく設定することが可能となる。そのため、レンズシートLSにおける印刷の結果物においては、当該箇所となり得る凸レンズLS11と凸レンズLS11の溝付近のドットサイズおよび/またはインク量が適切に調整されたものとなる。したがって、この画像処理方法は、レンズピッチlpiがプリントピッチdpiの整数倍でないことに起因して発生するモアレを防止することができる。
また、本実施形態の画像処理方法では、所定の基準位置からのレンズLS11本数と凸レンズLS11の幅寸法に応じた累積レンズ幅LenLと、所定の基準位置からのレンズ内視差画素の幅を累積して加算した累積印字幅LenPとに応じて、凸レンズLS11それぞれのレンズ内視差画素数LensDotが決定されると共に、このレンズ内視差画素数LensDotに基づいてレンズシートLSに噴射するインクのドットサイズおよび/またはインクの量を変更するインク設定変更処理を行うようにしている。これにより、上述の効果に加えて、累積レンズ幅LPIと累積印字幅DPIに応じて最終的なレンズ内視差画素数が決定されるため、たとえば視差画像間のインクの重なりが周期的に縮まってモアレが発生する箇所におけるインクのドットサイズおよび/またはインクの量を設定変更することができる。
さらに、本実施形態の画像処理方法では、レンズ内視差画素数の決定は、累積レンズ幅と累積印字幅との差分を算出し、その差分が所定の閾値を超えるか否かに応じて決定されると共に、この決定によってレンズ内視差画素数を調整するにあたっては、レンズの所定位置に存在する特定視差画素列の画素数を調整することにより行うようにしている。これにより、上述の効果に加えて、累積レンズ幅と累積印字幅との差分が所定の閾値を超える場合に、モアレが発生すると予測されるレンズのドット数を調整することが可能となる。
また、本実施形態の画像処理方法では、インク設定変更処理は、特定視差画素列の画素数が他の視差画素列の画素数より少ないときに、他の視差画素列の画素に設定されるインクサイズよりも小さくする、および/またはインクの量を少なくすることにより行うようにしている。これにより、視差画像間のインクの重なりが周期的に縮まる箇所と予測された特定視差画素列内の各画素に対してだけ、インクサイズ(ドット径)を小さくするおよび/またはインクの量を相対的に少なくすることで全体的な画像品質を維持しつつ、レンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレの発生を防止することができる。
また、本実施形態の画像処理方法では、印刷用画像データは、集約ドット列とブランクドット列とを有し、ブランクドット列の各ドットの階調値は、いずれの色または種類のインク滴をも噴射させない値に設定されていて、集約ドット列の各画素の階調値は、ブランクドット列の各画素を形成する前の元画素の階調値を反映させる分だけ、当該集約ドット列の各画素に対応する元画素の階調値よりも大きくしている。これにより、印刷用画像データは、集約ドット列とブランクドット列とを有する状態となる。そして、ブランクドット列の各画素の階調値は、いずれの色または種類のインク滴を噴射させない値に設定されている。そのため、レンズシートへの印刷を実行して得られる結果物は、列状にインク滴が付着する部位と、インクが付着しない部位とが存在する。そのため、上述の効果に加えて、レンズシートにおける印刷の結果物においては、印刷画像を形成する位置が適切でない場合、本来視覚するべきでない画素を視覚してしまうという、いわゆるクロストークの影響を低減可能となる。加えて、集約ドット列の各画素の階調値は、ブランクドット列の各画素を形成する前の元画素の階調値を反映させる分だけ、当該集約ドット列の各画素に対応する元画素の階調値よりも大きくしているため、レンズシートにおける印刷の結果物においては、印刷画像の色合いが白くなることを防止可能となる。
また、本実施形態の印刷装置11は、上述の画像処理方法に係る発明に基づいてレンズシートLSに対してインク滴を噴射させ、レンズシートLSへの印刷を実行している。これにより、上述した画像処理方法の各効果を奏する装置とすることができる。
なお、本実施形態では、図8に示す処理フローを実行して、集約ドット数Dを決定している。すなわち、インク滴のにじみを考慮した直径に対応する最小印刷幅L1を測定し、凸レンズLS11の焦線幅Fが最小印刷幅L1よりも小さいか否かを判定し、凸レンズLS11の焦線幅Fが最小印刷幅L1よりも小さいと判定される場合には、集約ドット数Dを1と決定し、凸レンズLS11の焦線幅Fが最小印刷幅L1以上であると判定される場合には、集約ドット数Dを、レンズの焦線幅Fを最小印刷幅L1での除算後、小数点以下を切り捨てて得られる整数値となるように決定している。そのため、集約ドット数Dを、クロストークが生じるのを抑えながら良好に決定可能となる。
さらに、本実施形態では、図10におけるS140の色変換処理では、集約ドット列の各集約ドットの階調値を、ブランクドットを形成する前の元画素の階調値を反映させる分だけ、インク増量LUT142jを用いて色変換処理を行っている。このため、レンズシートLSに形成される印刷画像の色合いが白くなるのを良好に防止可能となる。
また、本実施形態では、S150のハーフトーン処理を行った後に、S160のように、隣り合う集約ドット列の間に所定数のブランクドット列を挿入する白挿入処理を行っている。かかるS160の処理を行うことにより、レンズシートLSへ印刷画像を形成しても、上述したモアレの発生の防止と共にクロストークの影響を良好に低減可能となる。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る、印刷装置11Aについて、図15を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、上述の第1の実施形態で述べたものと同一の部材については、同一の符号を用いて説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態のプリンタードライバープログラム142Aは、上述の第1の実施形態と同じ解像度変換モジュール142a、画像合成モジュール142b、色変換モジュール142c、ハーフトーンモジュール142d、白挿入モジュール142f、印刷データ生成モジュール142h、送信モジュール142i、インク増量LUT142j、記録率テーブル142kを有している。また、プリンタードライバープログラム142Aは、上述の各モジュールに加えて色再調整モジュール142e1を有している。しかしながら、プリンタードライバープログラム142Aは、視差ドット数計算モジュール142e、インク設定変更モジュール142gは有していない。
本実施形態では、図16に示す処理フローが実行される。この図16に示す処理フローは、図10に示す処理フローと同様の、S110、S120、S130、S140、S150、S170、S180およびS190が実行される。しかしながら、S155およびS165の処理は、本実施形態では実行されない。以下、S145について説明する。
本実施形態の色再調整モジュール142e1は、上述の第1の実施形態における視差ドット数計算モジュール142eが行う視差ドット計算処理に加えて、図16に示す色再調整処理も行っている(S145)。
図17は、図16に示す処理フローにおける色再調整処理(S145)の詳細を示している。まず、視差ドット数計算を行う(S146)。このS146の処理により各視差におけるドット数を求めて視差ドット数テーブルが作成される。なお、S146の視差ドット数計算は、図13に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
続いて、視差ドット数の最も出現する値(最頻値D_most)を取得する(S147)。たとえば、図14に示す視差ドット数テーブルを参照して、最も出現する値である「3」を取得する。そして、画像データの各画素値に対して新画素値の計算を行う(S148)。なお、新画素値の計算は、以下の(式13)で求めた値と乗算する。
(視差ドット数D_P_L)/D_most …(式13)
たとえば、図14のL20に属する視差P1〜P4の各ドットの階調値に対して上記の(式13)で求められた値を乗算する。すなわち、視差P1〜P3の各ドットの階調値に対しては3/3(1)を乗算するが、視差P4の各ドットの階調値に対しては2/3を乗算する。これにより、視差画素列のドット数が相対的に少ない画素列(図12では視差P4)の各ドットの階調値が相対的に低くなり、レンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因して発生するモアレを防止することができる。
<本実施形態における効果>
以上のような画像処理方法により、所定の基準位置からのレンズ本数とレンズの幅寸法に応じた累積レンズ幅と、所定の基準位置からのレンズ内視差画素の幅を累積して加算した累積印字幅とに応じて、レンズ内視差画素数を決定し、レンズ内ドット数に基づいて、それぞれのレンズにおけるドットの階調値を算出する階調値算出処理を行っている。これにより、たとえばレンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレが発生すると予測される箇所のドットの階調値を相対的に低く設定することが可能となる。その結果、たとえば当該箇所となり得るレンズとレンズの溝付近のドットの階調値が周囲の階調値より相対的に低く調整された印刷物が生成される。すなわち、この画像処理方法は、レンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレの発生を防止することができる。
また、本実施形態の画像処理方法の印刷用画像データは、解像度変換処理と、画像合成処理と、色変換処理と、ハーフトーン処理とを順次行うことによって作成されると共に、色変換処理後、ハーフトーン処理を行うのに先立って、レンズ内視差画素数を決定する処理を行っている。これにより、上述した効果に加えて、ハーフトーン処理前にレンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレが発生すると予測される箇所のドットの階調値を相対的に低く設定した階調値とすることができる。
また、本実施形態の画像処理方法では、階調値算出処理を行うに先立って、それぞれの視差画像に存在するドット数のうち最も出現頻度が高い頻出ドット数を求める処理を行い、階調値算出処理では、算出されたレンズ内ドット数を、頻出ドット数で除算した除算値を算出する処理を行い、この除算値をそれぞれのレンズにおけるドットの階調値に乗算する処理を行っている。これにより、上述した効果に加えて、レンズ内ドット数が相対的に少ないドット数が設定されている特定の視差ドットの階調値のみを相対的に低く設定することができる。
また、本実施形態の画像処理方法では、印刷用画像データは、集約ドット列とブランクドット列とを有し、ブランクドット列の各ドットの階調値は、いずれの色または種類のインク滴をも噴射させない値に設定されていて、集約ドット列の各画素の階調値は、ブランクドット列の各画素を形成する前の元画素の階調値を反映させる分だけ、当該集約ドット列の各画素に対応する元画素の階調値よりも大きくしている。これにより、印刷用画像データは、集約ドット列とブランクドット列とを有する状態となる。そして、ブランクドット列の各画素の階調値は、いずれの色または種類のインク滴を噴射させない値に設定されている。そのため、レンズシートへの印刷を実行して得られる結果物は、列状にインク滴が付着する部位と、インクが付着しない部位とが存在する。そのため、上述の効果に加えて、レンズシートにおける印刷の結果物においては、印刷画像を形成する位置が適切でない場合、本来視覚するべきでない画素を視覚してしまうという、いわゆるクロストークの影響を低減可能となる。加えて、集約ドット列の各画素の階調値は、ブランクドット列の各画素を形成する前の元画素の階調値を反映させる分だけ、当該集約ドット列の各画素に対応する元画素の階調値よりも大きくしているため、レンズシートにおける印刷の結果物においては、印刷画像の色合いが白くなることを防止可能となる。
また、本実施形態の印刷装置11Aは、上述の画像処理方法に係る発明に基づいてレンズシートLSに対してインク滴を噴射させ、レンズシートLSへの印刷を実行している。これにより、たとえばレンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレが発生すると予測される箇所のドットの階調値を相対的に低く設定することが可能となる。その結果、たとえば当該箇所となり得るレンズとレンズの溝付近のドットの階調値が周囲の階調値より相対的に低く調整された印刷物が生成される。すなわち、この印刷装置11Aは、レンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレの発生を防止することができる。
<変形例>
以上、本発明の第1〜第2の実施形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
上述の第1の実施形態において、インク設定変更モジュール142gにより視差ドット数の調整を行ったレンズ内の各ドットのインクサイズを変更したが、インク量を変更するようにしてもよい。このようにしてもレンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレが発生すると予測される箇所のインク量を周囲と比較して相対的に少なく設定することが可能となり、その結果、レンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレの発生を防止することができる。
上述の第2の実施形態において、CMYK表色系における色の再調整を行ったが、CMYK表色系ではなくRGB表色系における色の再調整を行うようにしてもよい。このようにしても、レンズピッチがプリントピッチの整数倍でないことに起因するモアレが発生すると予測される箇所のドットの階調値を相対的に低く設定することが可能となる。
上述の各実施形態において、画像データに、その中の一部の部位(被写体等)の距離に関する情報が埋め込まれている場合(たとえばEXif情報中に、被写体に関する情報がある場合)、その情報を参考に、一部の部位のみに本発明を適用して、ハーフトーン処理の結果物を得られるようにしても良く、それとは逆に一部の部位を除いた部位のみに本発明を適用して、ハーフトーン処理の結果物を得られるようにしても良い。
また、図10および図16におけるS160の処理に代えて、次の動作を行うようにしても良い。たとえば、キャリッジ用モーター53によるキャリッジ50の送り速度は変えずに、印刷ヘッド51から噴射されるインクの噴射タイミングを、従来よりも遅らせる(たとえば3倍またはプラスα程度噴射タイミングの間隔が伸びるようにする)ようにしても良い。また、たとえば、キャリッジ用モーター53によるキャリッジ50の送り速度を、従来よりも速くし(たとえば3倍またはプラスα程度速くし)、かつ印刷ヘッド51から噴射されるインクの噴射タイミングを従来と同じとしても良い。
このようにしても、図10および図16におけるS160の処理と同様の処理結果を得ることが可能となり、モアレの発生を防止すると共に、クロストークの影響を低減可能となる。
また、上述の実施の形態では、プリンター10は、キャリッジ50が主走査方向に移動するタイプのプリンターとなっている。しかしながら、プリンターとしては、キャリッジが、主走査方向のみならず、副走査方向にも移動可能なプリンター(XYプリンター)としても良い。また、キャリッジ50が主走査方向に移動しない、ラインヘッドを有するタイプのプリンターに本発明を適用するようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、印刷装置11につき、プリンター10とコンピューター130とから構成される場合について説明しているが、プリンター10のみで印刷装置を構成するようにしても良い。