以下に、図面に基づき、本発明に係るいくつかの実施形態を説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る梱包体を分解した状態を示す模式的斜視図である。図2は、図1に示す中央支持材の模式的斜視図であり、(a)は、中央支持材の分解斜視断面図、(b)は、(a)の組立図、(c)は、(b)に示す底面受け材の端部に荷重が作用したときの底面受け材の挙動を説明するための図、(d)は、(b)に示す沈み込み凹部近傍の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る梱包材1Aは、製品である被梱包物60を梱包するものであり、被梱包物60の底面61の四隅には、4つのキャスタ64が取り付けられている。梱包材1Aは、ダンボール等からなる下側の下部筐体(以下収容筐体という)10と、収容筐体10を上方から被梱包物60と共に覆うダンボール等からなる上部筐体15とを備えている。
さらに、収容筐体10の4つの側壁11A〜11Dの下縁部11bは、側壁の上縁部11aを外側に倒して上縁部11aが回動するように、収容筐体10の底部12に枢支されている。この側壁11A〜11Dの上縁部11aの回動(側壁11A〜11Dの枢動)により、収容筐体10は開いた状態になる。側壁11A〜11Dと底部12との枢支構造は、側壁11A〜11Dと底部12とを含む形状のプレートをこれらの境界線に沿って折り曲げた一体構造であってもよく、これらを個別に作製して、粘着テープ等を介して枢動可能に連結してもよい。
このような構造にすることにより、側壁11A〜11Dを収容筐体10に対して外側に開くように枢動させて、後述する緩衝材30のうち下部包装材32,32…を収容筐体10から容易に取り除くことができる。
梱包材1Aは、緩衝材30をさらに備えている。緩衝材30は、収容筐体10および上部筐体15の内部に収容された被梱包物60を保護するための複数の部材である。具体的には、緩衝材30は、被梱包物60の上面および上部側面を覆うことによりこれを包装する上部包装材31,31と、被梱包物60の下部側面を覆うことによりこれを包装する4つの下部包装材32,32,…と、被梱包物60の下部中央に配置される中央支持材40とから構成されている。
また、下部包装材32,32,…は、開梱時に、収容筐体10から容易に取り外しすることができるよう、被梱包物60の底面に対して非接触にすることにより被梱包物60の荷重を受けない構造となっている。
緩衝材30を構成するこれら部材の材質としては、熱可塑性樹脂の発泡成形体であることが好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、またはポリ乳酸系樹脂)、またはポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、単一の樹脂や複数の樹脂を複合したものを使用できる。
以下に本発明の特徴部分である中央支持材について説明する。図1に示すように、中央支持材40は、被梱包物60の底面61の中央を支持する部材であり、梱包状態で、収容筐体10の底部12の中央に配置されるものである。本実施形態では、中央支持材40は、収容筐体10の底部12に非接着で配置されているが、後述する開梱時に被梱包物60の移動に伴って収容筐体10が移動する場合には、中央支持材40は、収容筐体10の底部12に接着されていてもよい。
また、中央支持材40は、被梱包物60を載置したときに、キャスタ64が収容筐体10の底部12に接触しない高さとなっている。これにより、被梱包物60の荷重を中央支持材40でのみ受け、キャスタ64の車輪64aと収容筐体10の底部12との間には、上下方向に一定に隙間が形成され、梱包状態で、キャスタ64の車輪64aを非接触状態にすることができる(例えば図3(a)参照)。
また、図2(a),(b)に示すように、中央支持材40は、上述した樹脂材料からなる支持本体41と、木材または樹脂等からなる一対の底面受け材42,42とを備えている。底面受け材42は、長尺状のプレート部材である。底面受け材42の支持表面42bが被梱包物60の底面61に接触して、この底面61を受けるように、一対の底面受け材42,42が並設されている。底面受け材42の材料に木材を用いた場合には、被梱包物60の底面61との滑動性を高めるべく、底面受け材42の木材の繊維方向は、取出し方向P(収容方向Q)に一致するようになっている。
支持本体41は、一対の底面受け材42,42を収納し、底面受け材42を介して被梱包物60を支持する部材である。より具体的には、図2(a)に示すように、支持本体41の上面には、底面受け材42を収納する2つの収納凹部44が取出し方向Pに沿って形成されている。また、収納凹部44には、底面受け材42を支持する支持底面44aが形成されている。底面受け材42を収納凹部44に収納した状態で、底面受け材42の上部が、収納凹部44の開口部(開口縁部)44bから突出している。
また、支持底面44aの一端(取出し方向P側)には、沈み込み凹部45が形成されている。被梱包物60と底面受け材42とを相対的に移動させたときに、図2(c)に示すように、底面受け材42の端部42a(取出し方向P側の端部)に荷重が作用したときに、沈み込み凹部45は、底面受け材42の端部42aが沈み込み凹部45内に沈み込むような深さとなっている。
また、底面受け材42の端部42aが沈み込み凹部45内に沈み込み易くするために、図2(d)に示すように、底面受け材42を収納したときに、底面受け材42の端部42aと収納凹部44の開口部44b(の縁部)との間には、隙間S1が形成されている。
さらに、支持本体41の縁部うち、沈み込み凹部45側の縁部には、傾斜面46が形成されている。この傾斜面46を設けることにより、被梱包物60による縁部の削れ等を抑制することができる。
このような梱包材1Aを用いて、被梱包物60は、梱包体に梱包され、その後開梱される。以下に、梱包体の開梱作業を説明する。図3は、図1に示す梱包体の開梱作業を説明するための模式的側面図であり、(a)〜(d)は、一連の開梱時の被梱包物の状態を示した図である。なお、図3の(a)〜(d)では、説明の便宜上、収容筐体10を省略している。
まず、梱包体から上部筐体15を上部包装材31,31共に上方に引き抜き、下部包装材32,32,…を取り除く(図1参照)。図3(a)に示すように、被梱包物60を梱包した状態において、被梱包物60の底面61の中央は中央支持材40で支持されているので、キャスタ64の車輪64aは非接触状態である。また、支持本体41が、被梱包物60の底面61との間に間隙を形成するので、底面受け材42を収納凹部44に収納したときに、底面受け材42の上部が、収納凹部44の開口部44bから突出した状態である。
続いて、図3(b)に示すように、中央支持材40に対して被梱包物60を沈み込み凹部45が形成された側、すなわち取出し方向Pにスライドさせる。この段階では、被梱包物60の重心位置は、中央支持材40上にある。
さらに、図3(c)に示すように、中央支持材40に対して被梱包物60をさらにスライドさせ、被梱包物60を取出し方向Pに移動させると、地面Fに対して被梱包物60(の底面61)が傾いて、被梱包物60の底面61に取り付けられた取出し方向P側(沈み込み凹部45が形成された側)のキャスタ64の車輪64aが、地面Fに接触する。このときに、被梱包物60の重心が、地面Fに移動する(被梱包物60の荷重の一部が地面にシフトする)と共に、被梱包物60の底面61が、中央支持材40を構成する底面受け材42の端部42aに接触し、収納凹部44に収納された底面受け材42の端部42aが、沈み込み凹部45に沈み込む。
さらに、図3(d)に示すように、すべてのキャスタ64が地面Fに移動するまで、被梱包物60を取出し方向Pに沿って移動させる。このような一連の作業を経て、梱包体の開梱を完了させる。
このように、底面受け材42の端部42aを沈み込み凹部45に逃がし、底面受け材42の端部42aが被梱包物60の底面61を疵つけることなく、被梱包物60を簡単に開梱することができる。ここでは、図3(a)〜(d)に示すようにして、梱包体の開梱作業を行ったが、被梱包物60の梱包作業は、この逆の手順を行えばよい。
図4は、図1に示す中央支持材の変形例を示した模式的斜視図であり、(a)〜(c)は、第1〜第3の変形例を示した斜視図である。なお、同じ機能を有する部分は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
上述した中央支持材40の支持本体41に形成された沈み込み凹部45は、支持底面44aの一方側にのみ形成されていたが(図2(a)参照)、図4(a)に示すように、中央支持材40Aの支持本体41に形成された沈み込み凹部45を、支持底面44aの両側に形成してもよい。このように、沈み込み凹部45を両側に形成することにより、被梱包物60の取出す方向を、選択することができる。
また、上述した中央支持材40は、一対の底面受け材42を併設していたが(図2(a)参照)、図4(b)に示すように、中央支持材40Bの底面受け材42Bは1つであってもよく、この底面受け材42Bの形状に応じた収納凹部44Bおよび沈み込み凹部45Bを、支持本体41Bに形成してもよい。
さらに、上述した中央支持材40は、一対の底面受け材42を取出し方向Pに沿って併設していたが(図2(a)参照)、図4(c)に示すように、中央支持材40Cの一対の底面受け材42C、42Dを、取出し方向の前後に設けてもよい。そして、支持本体41Cに、図4(b)に示す形状と同じ形状の収納凹部44Cおよび沈み込み凹部45Cを形成してもよい。
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態に係る梱包体を分解した状態を示す模式的斜視図である。図6は、図5に示すキャスタ受け材の機能を説明するための模式図であり、(a)開梱状態におけるキャスタ受け材を挿入する前の斜視図、(b)は、(a)の上面図、(c)開梱状態におけるキャスタ受け材を挿入した後の斜視図、(d)は、(c)の上面図である。図7は、図5に示す梱包体の開梱作業を説明するための模式的側面図であり、(a)〜(d)は、一連の開梱時の被梱包物の状態を示した図である。
ここで、第2実施形形態に係る梱包材が、図1に示す第1実施形態に係る梱包材と相違する点は、新たにキャスタ受け材を設けた点である。したがって、以下にこの点を説明し、第1実施形態と同じ部材に関しては、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図5に示すように、梱包材1Bは、並設された一対のキャスタ受け材52,52を備えており、一対のキャスタ受け材52,52は、ダンボールなどのボード材51に貼着されている。これにより、一対のキャスタ受け材52,52は、ボード材51を介して連結される。
キャスタ受け材52は、キャスタ64を挿入時に傷つけることなく、キャスタ64を介して、被梱包物60の荷重を受けることができる材質からなればよく、その材質としては、木材、樹脂材料などを挙げることができる。
キャスタ受け材52,52同士の間隔は、キャスタ64同士の間隔と略同じであり、後述するキャスタ64の下方に挿入する際に、中央支持材40に機械的な干渉が生じない間隔である。そして、ボード材51と共にキャスタ受け材は、図5に示すように、梱包時には、被梱包物60の上面62に載置され、被梱包物60と共に収納される。
ここで、上述したように、梱包状態において、被梱包物60の荷重を中央支持材40のみで受け、キャスタ64の車輪64aと収容筐体10の底部とは非接触状態である。すなわち、梱包状態では、キャスタ64の車輪64aと収容筐体10の底部12との間には、上下方向に一定に隙間が形成される。
そして、図6(a)および(b)に示すように、開梱時には、下部包装材32,32,…を取り除いた状態で、キャスタ受け材52は、中央支持材40に載置された被梱包物60のキャスタ64の下方に挿入することにより、中央支持材40に支持された被梱包物60の複数のキャスタ64,64のうち、被梱包物60の底面の中央から取出し方向P側(沈み込み凹部側)に位置するキャスタのみを受けるようになっている。すなわち、キャスタ受け材52の厚みは、キャスタ64の車輪64aと収容筐体10の底部12との間の、上下方向の隙間と略同じとなっている。
このような梱包材1Bを用いて、図5に示すようにして、被梱包物60を梱包体に梱包する。被梱包物60の梱包状態では、被梱包物60の荷重を中央支持材40でのみ受け、被梱包物60の各キャスタ64の車輪64aは、非接触の状態であるので、被梱包物(製品)60の荷重がキャスタ64に直接的に作用しない。これにより、図6(b)に示すように、各キャスタ64は、仮想線Lに沿って、キャスタ64の支持軸Xの周りに回転可能な状態となる。
このように、キャスタ64は、梱包時には回転可能な状態にあるので、キャスタ64の車輪64aは運搬時に回転することがある。これにより、被梱包物60を開梱する際には、キャスタ64の車輪64aは取出し方向Pに整列しておらず、取出し方向Pに沿って車輪64aを回転させて容易に被梱包物を取り出すことができない。
そこで、本実施形態では、開梱時には、ボード材51と共に一対のキャスタ受け材52,52を、キャスタ64の下方に挿入し(図6(a)参照)、キャスタ64の車輪64a(具体的には、取出し方向P側のキャスタ64の車輪のみ)に、キャスタ受け材52を接触させる(図6(c)参照)。
上述したように、キャスタ受け材52の厚みを、上述したキャスタ64の車輪64aと底部12との間に形成された上下方向の隙間と略同等にしたので、キャスタ受け材52には、キャスタ64を介して、被梱包物60の荷重が作用することはほとんどない。したがって、キャスタ64をキャスタ受け材52の表面に容易に接触させながら、キャスタ受け材52をキャスタ64の下方に挿入することができる(図6(c)参照)。
この際に、キャスタ受け材52とキャスタ64の相対的な移動方向は、被梱包物60を取出すときのキャスタ64とキャスタ受け材52の相対的な移動方向と一致するので、キャスタ受け材52の収容方向Q(逆方向)への移動に伴い、各キャスタ64が支持軸Xの周りを回動し、キャスタ64の車輪64aが取出し方向Pに整列する(図6(d),図7(a)参照)。なお、このときには、収容方向Q側のキャスタ64の車輪64aは、キャスタ受け材52と接触していないので、整列していない。
このような状態で、図7(b)に示すように、中央支持材40(具体的には、底面受け材42)に対して、被梱包物60を取出し方向Pに沿って移動させると、収容方向Q側に位置するキャスタ(残りのキャスタ)が、キャスタ受け材52の端部52aに接触する。この接触により、残りのキャスタも、取出し方向Pに整列する。
さらに、図7(c)に示すように、キャスタ64の車輪64aをキャスタ受け材52上で転がしながら、被梱包物60の底面61を中央支持材40に対してスライドさせる。このときに、上述したように、被梱包物60の底面61が、中央支持材40を構成する底面受け材42の端部42aに接触し、収納凹部44に収納された底面受け材42の端部42aが、沈み込み凹部45に沈み込む。
さらに、図7(d)に示すように、すべてのキャスタ64に作用する荷重が地面Fにシフトするまで、被梱包物60を取出し方向Pに沿って移動させる。このような一連の作業を経て、梱包体の開梱を完了させる。
このようにして、キャスタ受け材52を用いて、被梱包物60を取出し方向Pに沿って容易に移動させることができる。ここでは、図7(a)〜(d)に示すようにして、梱包体の開梱作業を行ったが、被梱包物60の梱包作業は、この逆の手順を行えばよい。
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態に係る梱包体を分解した状態を示す模式的斜視図である。図9は、図1に示す中央支持材の模式的斜視図であり、(a)は、中央支持材の分解斜視断面図、(b)は、(a)の組立図、(c)は、(b)に示す沈み込み凹部近傍の断面図である。図10は、図8に示すキャスタ受け材およびスロープ材の機能を説明するための模式図であり、(a)開梱状態におけるキャスタ受け材を挿入する前の模式的斜視図、(b)開梱状態におけるキャスタ受け材を挿入した後の模式的斜視図である。
第3実施形形態に係る梱包材が、図4に示す第2実施形態に係る梱包材と相違する点は、新たにスロープ材および基台を設けた点、収容筐体の側壁を変更した点、および中央支持材の底面受け材の形状を変更したである。したがって、以下にこの点を説明し、第2実施形態と同じ部材に関しては、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態では、梱包材1Cは、一対のスロープ材55,55をさらに備えている。一対のスロープ材55,55は、ボード材51を介して連結されていると共に、第2実施形態で示した一対のキャスタ受け材52,52にも、ボード材51を介して枢動可能に接続されている。
また、キャスタ受け材52,52と同様に、一対のスロープ材55,55の間隔は、キャスタ64同士の間隔と略同じである。さらに、開梱時において、キャスタ64の下方に挿入した際に、スロープ材55,55は、収容筐体10Aの底部12から地面まで傾斜するように配置することにより、収容筐体10Aの底部12と地面Fとの間で移動するキャスタ64を受けるようになっている。
一対のスロープ材55,55は、キャスタ64を挿入時に傷つけることなく、キャスタ64を介して、被梱包物60の荷重を受けることができる材質からなればよく、その材質としては、木材、樹脂材料などを挙げることができる。
そして、ボード材51を介して、一対のキャスタ受け材52,52および一対のスロープ材55,55が枢動可能となっているので、図8に示すように、梱包時には、一対のキャスタ受け材52,52は、被梱包物60の上面62に載置され、一対のスロープ材55,55は、被梱包物60の側面63に沿って配置される。また、取出し方向P側の下部包装材32A,32Aの内側面には、スロープ材を収容する収容溝36が形成されている。このようにして、ボード材51により枢動可能に連結された、キャスタ受け材52,52およびスロープ材55,55は、被梱包物60と共に、梱包材1Cと共に収納される。
さらに、図9(a)〜(c)に示すように、中央支持材40Eの収納凹部44に底面受け材42Eを収納した状態で、収納凹部44の開口部44bから突出した底面受け材42の上部の端部42a(上縁部)には、傾斜面42cが形成されている。この傾斜面42cは、後述するように、梱包時において被梱包物60の下側縁部と接触することにより、端部42aを沈み込ませるための傾斜面であり、傾斜面42cの下縁は、収納凹部44の開口部44bと同じ位置、または、開口部44bよりも沈み込み凹部45側の位置にあることがより好ましい。また、上述した作用を期待することができるのであれば、傾斜面42cは、平面、凸曲面、または凹曲面いずれの形状であってもよい。
図8に戻り、収容筐体10Aのさらに下方には、パレット等の基台50がさらに配置されている。収容筐体10Aの側壁11Eは、被梱包物60を内部から取り出す際の取出し方向Pに位置する側壁である。上述したように、収容筐体10Aの側壁11Eの下縁部は、収容筐体10Aの底面に枢支されており、側壁11Eの上縁部11aから下縁部11bまでの長さは、他の側壁11B〜11Dのもの比べて、長くなっている。
さらに、図10(a)に示すように、側壁11Eは、上縁部11aが内包されるように、上縁部11aに沿って、側壁11Eの一部を筒状に折り曲げることより筒状体11cを形成し、筒状体11cで一対のスロープ材を地面との間で支持するようになっている。
そして、図10(b)に示すように、開梱時には、ボード材51と共に一対のキャスタ受け材52,52を、キャスタ64の下方に挿入し、キャスタ64の車輪64aに、キャスタ受け材52を接触させる。これにより、上述したように(図6(c),(d)参照)、取出し方向P側のキャスタ64が支持軸Xの周りを回動し、キャスタ64の車輪64aが取出し方向Pに整列する。
ここで、上述したように、ボード材51は、キャスタ受け材52とスロープ材55を枢動可能に接続しており、収容筐体10Aの底部12には、基台50が配置されている。これにより、キャスタ受け材52をキャスタ64の下方に挿入したときに、キャスタ受け材52に対してスロープ材55を、収容筐体10Aの底部12から地面Fまで傾斜するように配置することができる。このようにして、スロープ材55,55は、収容筐体10Aに収容された被梱包物60に対して降坂面となる。そして、開梱時には、一対のスロープ材55,55は、収容筐体10Aの底部12と地面Fとの間において、移動する被梱包物60のキャスタ64の車輪64aを受けることができる。
なお、地面Fに対するスロープ材55の傾斜角度は、梱包および開梱時において、被梱包物60に衝撃なくスムーズに搬送することができる程度の角度であることが望ましい。傾斜角度は、スロープ材の長さと、基台50の高さ(基台50を用いない場合には、地面Fから、梱包体を配置した箇所における収容筐体10Aの底部12までの高さ)を選定することにより決定される。
以下に、図10(b)で述べたように、キャスタ受け材52をキャスタ64の下方に挿入した後の開梱作業を説明する。図11は、図8に示す梱包体の開梱作業を説明するための模式的側面図であり、(a)〜(d)は、一連の開梱時の被梱包物の状態を示した図である。また、図12は、図8に示す梱包体の梱包作業を説明するための模式的側面図であり、(a),(c),(e)は、一連の梱包時の被梱包物の状態を示した図であり、(b)は、(a)のA部拡大図、(d)は、(c)のB部拡大図である。
図11(a)は、図10(b)の側面図である。この状態から、取出し方向Pに被梱包物60を移動させる。既に、取出し方向P側のキャスタ64は旋回軸の周りを回動し、車輪64aが取出し方向Pに整列しているので、被梱包物60の底面61は、底面受け材42Eの表面を、容易にスライドする。
次に、図11(b)に示すように、中央支持材40E(具体的には、底面受け材42E)に対して、被梱包物60を取出し方向Pに沿って移動させると、収容方向Q側に位置するキャスタ(残りのキャスタ)が、キャスタ受け材52の端部52aに接触する。この接触により、残りのキャスタも、取出し方向Pに整列する。
さらに、図11(c)に示すように、キャスタ64の車輪64aをキャスタ受け材52上で転がしながら、被梱包物60の底面61を中央支持材40Eに対してスライドさせる。このときに、被梱包物60の重心がスロープ材55にシフトすると共に、被梱包物60の底面61が、中央支持材40Eを構成する底面受け材42の端部42aに接触し、収納凹部44に収納された底面受け材42の端部42aが、沈み込み凹部45に沈み込む。このシフトした被梱包物60の荷重の一部は、スロープ材55を介して筒状体11cで支持される。
さらに、図11(d)に示すように、すべてのキャスタ64に被梱包物60の荷重が作用するまで、被梱包物60を取出し方向Pに沿って移動させる。このような一連の作業を経て、梱包体の開梱を完了させる。このようにして、キャスタ受け材52およびスロープ材55を用いて、被梱包物60を取出し方向Pに沿って容易に移動させることができる。
次に、被梱包物60の梱包作業は、この逆の手順を行えばよい。まず、図12(a)に示すように、キャスタ64(の車輪)をスロープ材55上に沿って転がして、収容方向Qに被梱包物60を移動する。このときに、図12(b)に示すように、被梱包物60の下側縁部60a(収容方向Q前方の下側縁部)が、底面受け材42Eの傾斜面42cに接触する。
続いて、図12(c)に示すように、被梱包物60を収容方向Q側にさらに移動させると、被梱包物60の収容方向Qの移動に伴い、底面受け材42Eの傾斜面42cに作用する力の一部が、傾斜面42cにより、底面受け材42Eの端部42aを下側方向に押し下げる力となる。この押し下げる力により、底面受け材42Eの端部42aは、沈み込み凹部45に沈み込むので、スムーズに抵抗なく、被梱包物60を中央支持材40Eに乗り移らせることができる。
さらに、図12(e)に示すように、被梱包物60の重心を中央支持材40Eに移動させる。さらに、被梱包物60の底面61の中央に、中央支持材40Eが位置するまで、被梱包物を移動させる。その後、キャスタ受け材をキャスタの下方から抜き取り、図8に示すように梱包すれば、梱包作業が完了する。
図13は、図8に示す梱包材の収容筐体の変形例を説明するための断面図であり、図8の収容筐体と相違する点は、取出し方向P側の側壁の構成である。したがって同じ部材に関しては、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
上述した実施形態(例えば、図10(a)参照)では、側壁の一部を筒状に折り曲げることより筒状体を形成し、筒状体で一対のスロープ材を地面との間で支持するようにしたたが、この変形例では、図13に示すように、収容筐体10Bの取出し方向P側の側壁11Fの外側壁11fに、支持部材18が貼着されている。支持部材18の材質は、上述した緩衝材と同様の材質を挙げることができ、例えば、発泡樹脂成形体などがより好ましい。支持部材18は、梱包状態では、側壁11Fを内側に変形させることにより、上部筐体15の内部に収納される。一方、開梱時には、図13の破線で示すように上部筐体15Aを上方に抜き取き、側壁Fを開くように地面Fに向って、回動させる。
これにより、支持部材18は、一対のスロープ材55を地面Fとの間で支持する部材として作用する。そして、図10、図11に示した一連の作業を行う。このようにして、収容筐体10Bの側壁11Fの外側面11fに支持部材18を設けることにより、一対のスロープ材55,55を地面Fとの間において支持することができ、スロープ材55により被梱包物60のキャスタ64を安定して受けることができる。
図14は、図8に示す梱包材のスロープ材の変形例を示した図であり、(a)は、取出し方向に沿った先端を傾斜させたスロープ材を示した図、(b)は、チャンネル状のスロープ材を示した図、(c)は、ガイド溝が形成されたスロープ材を示した図である。
上述した実施形態に係るスロープ材55は、平板状のスロープ材であったが、図14(a)に示すように、スロープ材55Aは、取出し方向Pに沿った先端が傾斜面55aとなっている。このような傾斜面55aを設けることにより、梱包および開梱時において地面とスロープ材55Aとの間のキャスタ64の移動時に生じる被梱包物60への衝撃を抑制することができる。
また、図14(b)に示すように、スロープ材55Bは、チャンネル状のスロープ材であり、取出し方向Pに沿って回転するキャスタを案内するためのリブ(ガイド)55bを、取出し方向Pに沿った表面55cの両側に形成してもよい。
また、図14(c)に示すように、スロープ材55Cの表面に取出し方向Pに沿って回転するキャスタを案内するためのガイド溝(ガイド)55dを形成してもよい。
このようなスロープ材55B,55Cを用いることにより、キャスタの車輪を取出し方向Pに沿って案内することができるので、キャスタの車輪の脱輪をより確実に防止し、容易かつ安全に被梱包物を移動させることができる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
第1実施形態では、1つまたは1対の底面受け材を例示したが、底面支持材が、底面受け材を3つ以上備えていてもよく、さらに、第2、第3実施形態で、図4に示す底面受け材を用いてもよい。
第2実施形態では、キャスタ受け材は、取出し方向側に配置された一対のキャスタの車輪のみを受けるような長さとなっていたが、キャスタ受け材を梱包時に梱包材に収容することができるのであれば、一対のキャスタ受け材は、収容方向側も含めたキャスタの車輪を受けるようにしてもよい。また、キャスタ受け材を案内するガイド溝等を下部包装材にさらに設けてもよい。
第3実施形態では、収容筐体の底部の下に基台を配置したが、梱包および開梱作業時に、収容筐体の底面を地面よりも高い位置に配置し、側壁の内面を所定の傾斜角度で傾斜させることができるのであれば、基台は、梱包材の一部に含まれなくてもよい。
第1〜第3実施形態では、被梱包物の底面には、特に何も被覆していないが、開梱および梱包時に、中央支持材に対して被梱包物のスライド性を高めるために、たとえば、被梱包物の底面のうち少なくとも底面受け材と接触する面に、ポリプロピレン系樹脂などからなる粘着テープ(スライド材)などを被覆してもよい。
第2及び第3実施形態では、キャスタ受け材は、挿入時に、取出し方向側のキャスタのみに接触するような長さとしたが、収容方向側のキャスタを含め全てのキャスタを受けるような長さとしてもよい。