しかしながら、こうした従来の防振具は、騒音や振動を弾性部材の変形及び復元で吸収するため、弾性部材の耐久性が結果的に防振具の耐久性に直結するにも関わらず、何らの対策も施されていなかった。
そこで、本願発明者は、防振具の耐久性の向上を図るべく、弾性部材に着目して様々な試験・研究を繰り返した。
その結果、本願発明者は、弾性部材の耐久性が、モータに代表される駆動源から入力される振動や回転トルク、送風用ファンの自重及び遠心力、加えて、風圧、温度等の経時的な環境変化に対しても考慮する必要があり、これらが複雑に関与することから、従来の防振具では、個々の送風系統の構造、構成物の違いに応じて、その都度、対策する必要があることを認識するに至った。
例えば、エアコン室外機のプロペラファンに代表される軸流ファンの場合、運転時の防振具には主に回転トルクや遠心力が作用するが、停止時には送風用ファンの自重による一定方向(自重方向)に負荷がかかるのに加え、温度、湿度、オゾンや紫外線等の環境負荷も加わる。
このような条件下において、プロペラファンの防振具を構成する弾性部材には、回転軸線方向と、鉛直方向(自重に沿った上下方向)とに少なからず永久ひずみ(クリープ変形)が発生する。こうした変形は、僅かな場合には影響が少ないが、その程度によっては、運転の際に、回転軸に対するプロペラファンの偏心、回転軸線方向での振れやアンバランス等を引き起こしてファンの回転精度を悪化させて新たな振動や騒音の発生を誘引することがある。
これに対し、エアコン室内機(例えば天井埋め込みタイプ)のターボファンに代表される遠心ファンの場合、運転時にも回転トルクや遠心力以外にファンの自重による回転軸線方向の負荷が作用するため、回転軸線方向の更なる負荷に耐え得る強度を弾性部材に持たせる必要がある。
即ち、送風用ファンを支持するにあたっては、回転方向(円周方向)に作用するせん断力等の応力と、回転軸線方向に作用するせん断力等の応力とを考慮して弾性部材を選定する必要がある。
そこで、弾性部材に用いる材料に着目した場合、クロロプレンゴム(CR)、二トリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR、EPDM)等の各種加硫ゴム、又は、スチレン系エラストマ(SBS、SEBS)、オレフィン系エラストマ(TPO)を始めとする各種熱可塑性エラストマが好適であり、各材質に応じて、硬度(JIS K6253A)を35°〜65°の範囲で選定する。
しかしながら、防振具としての製造効率やリサイクル性等を上げるため、使用する材料をCR等の加硫ゴムから熱可塑性エラストマに変更した場合、防振性能を維持すべく、加硫ゴムと同等の硬度を選定しようとすると、機械的諸物性について加硫ゴムよりも劣ることがある。こうした場合、開発段階で十分な耐久性の検証と、製造時の品質管理との必要性が一層高まるため、製造コストの増大を免れない。
また、防振性能の向上を目的に、弾性部材の厚みを増して弾性部材の体積増加を図ったり、弾性部材の硬度低下を図ることも考慮されるが、機械的強度特性や熱的特性の低下を招くことがある。こうした機械的強度特性や熱的特性の低下は、結果的に、運転時に伴って生じる諸因子により、弾性部材にクリープ変形を生じさせ、また、繰り返し応力の蓄積により、弾性部材の疲労破断に至ることがあり得る。
即ち、本願発明者は、弾性部材の防振性能と共に耐久性能を向上させようとする場合、両者は相反する特性を有することから、例えば、弾性部材の厚みを増大させても、その両立は困難で、開発上及び製造管理上の支障となることが多いことを見出した。
加えて、例えば空気調和機器の場合、その種類も様々であるところから、機器毎の特性に合せた防振具の選定が必要である。この結果、防振具は、空気調和機器毎に非共通となるため、開発上の負荷や製造上の識別管理の負荷が増大するが、特に、弾性部材の肉厚やその形状を変更する場合には、内筒と外筒の寸法変更を伴うことがあり、その影響は顕著である。
このため、内筒及び外筒を形成するための製造設備(例えば、ダイカスト金型、プレス金型、樹脂射出成形用金型等)も、これに応じて変更する必要があるため、更に、複雑な製造上の品質管理や識別管理が必要となる。即ち、弾性部材の厚さや形状を変更する場合も、結果的には製造コストの増大を免れない。
即ち、防振性能と耐久性能という相反する特性を同時に改善しつつ、コストの上昇が抑制された防振具は未だ提案されていないのが実情であった。
本発明の解決すべき課題は、防振性能と耐久性能とが相反する特性を有するためにその両立が困難であり、それを解決するにあたってはコストの増大を免れ得ないことにあり、 本発明の目的とするところは、こうした課題を解決した送風用ファンの防振具及び、それを備えた送風用ファン構造体を提供することにある。
本発明である送風用ファンの防振具は、回転軸に固定される内筒と、送風用ファンを保持する外筒と、内筒及び外筒を一体に連結する弾性部材とを有する送風用ファンの防振具であって、内筒の外周面に、この内筒から半径方向外側に向かって突出する軸線方向延在部を円周方向に間隔を空けて設ける一方、外筒の内周面に、この外筒から半径方向内側に向かって突出する軸線方向延在部を円周方向に間隔を空けて設け、内筒側の軸線方向延在部の先端に接する接円の直径Dと、外筒側の軸線方向延在部の先端に接する接円の直径dとをD≧dに設定すると共に、内筒と外筒とを、これらの軸線方向延在部が互い違いになるように配置して、内筒と外筒との間に、回転軸の周りに沿って複数の半閉鎖領域を有する連続空間を形成し、この連続空間に、円周方向の応力が発生するとき、この応力が前記軸線方向延在部によって抑制されるように、当該弾性部材を設けたことを特徴とするものである。
この場合、当該軸線方向延在部のそれぞれの先端部をオーバーラップさせることにより、内筒と外筒との間に、前記連続空間を設けることが好ましい。
特に、外筒の軸線方向延在部は、当該外筒の内周面と共にその外周面を半径方向内側に突出させて形成することも可能である。
また、本発明である送風用ファンの防振具は、回転軸に固定される内筒と、送風用ファンを保持する外筒と、内筒及び外筒を一体に連結する弾性部材とを有する送風用ファンの防振具であって、内筒の外周面に、この内筒から半径方向外側に向かって突出する円周方向延在部を設け、若しくは、外筒の内周面に、この外筒から半径方向内側に向かって突出する円周方向延在部を設け、又は、内筒の外周面と外筒の内周面との両方に、前記円周方向延在部を設け、内筒と外筒との間に、軸線方向に沿って少なくとも1つの半閉鎖領域を有する連続空間を形成し、この連続空間に、前記弾性部材の内部で軸線方向の応力が発生するとき、この応力が前記円周方向延在部によって抑制されるように、当該弾性部材を設けたことを特徴とするものである。
この場合、前記円周方向延在部を、内筒の外周面と、外筒の内周面との両方に、回転軸に沿って間隔を空けて設け、
内筒側の円周方向延在部の先端に接する接円の直径Dと、外筒側の円周方向延在部の先端に接する接円の直径dとをD≧dに設定すると共に、内筒と外筒とを、これらの円周方向延在部が互い違いになるように配置することが好ましい。
この場合、前記円周方向延在部を、内筒の外周面と、外筒の内周面とにそれぞれ、軸線方向に沿って間隔を空けて設け、当該円周方向延在部のそれぞれの先端部をオーバーラップさせることにより、前記連続空間を設けることが好ましい。
前記円周方向延在部は、内筒又は外筒の全周に亘って環状に形成することができる。また、前記円周方向延在部は、内筒又は外筒の円周方向に沿って断続的に形成することもできる。
更に、内筒及び外筒の前記円周方向延在部のうちの少なくとも一方の外周縁は、円周方向に沿って形成された凹凸形状とすることができる。また、内筒及び外筒の前記円周方向延在部のうちの少なくとも一方には、軸線方向に貫通する貫通孔を形成してもよい。
更に、本発明である送風用ファンの防振具によれば、これらの構成を組み合わせることが好ましい。
また、本発明である送風用ファン構造体は、上述した構成を具備した防振具と、この防振具の外筒に結合する送風用ファンとを備えることを特徴とするものである。
本発明である送風用ファンの防振具によれば、内筒に設けた軸線方向延在部の先端に接する接円の直径Dと、外筒に設けた軸線方向延在部の先端に接する接円の直径dとをD≧dに設定すると共に、これらを互い違いになるように配置して、内筒と外筒との間に、円周方向に沿って複数の半閉鎖領域を有する連続空間を形成し、この連続空間に、当該弾性部材を設けたことから、弾性部材における、軸線と直交する断面形状は、内筒側の軸線方向延在部と、外筒側の軸線方向延在部とが円周方向に沿って交互に差し込まれた形状となる。
このため、弾性部材の内部に回転軸周り(円周方向)に応力が生じると、この応力は、内筒の外周面との接合面と外筒の内周面との接合面とに加え、内筒側の軸線方向延在部と、外筒側の軸線方向延在部とで受けることになる。従って、本発明に係る防振具を送風用ファンに取付けて回転させると駆動源からの回転力は、防振具の内筒から弾性部材を介して送風用ファンを保持する外筒に伝えられる。
また、かかる構成によれば、回転にあたり、内筒(外筒)側の軸線方向延在部から半閉鎖領域を通って弾性部材の一部が膨出すると、この膨出部分は、内筒(外筒)側の軸線方向延在部と隣り合う外筒(内筒)側の軸線方向延在部に偏るが、この偏りは、内筒(外筒)側の軸線方向延在部と隣り合う外筒(内筒)側の軸線方向延在部で保持される。即ち、円周方向に沿って連続的なせん断力等の応力を生じても、かかる応力は、剛性の高い内筒及び外筒の軸線方向延在部によって確実に保持される。
この結果、弾性部材にて、その円周方向に連続的に作用する応力は軸線方向延在部で分断されることにより抑制され、弾性部材の耐久性、ひいては、防振具の耐久性を容易に向上させることができる。また、互いに隣り合う軸線方向延在部間に形成された領域でも、円周方向に沿って圧縮作用と伸張作用とが働くことで、防振具としての制振効果、特にトルク変動時の回転(円周)方向における制振効果を向上させることができる。
また、弾性部材にて、その半径方向(回転軸線に向かう方向)に応力が加わる場合も、当該弾性部材に係る、内筒の外周面と外筒の内周面との間、内筒の外周面と外筒側の軸線方向延在部との間、外筒の内周面と内筒側の軸線方向延在部との間、並びに、内筒側及び外筒側の軸線方向延在部の間での弾性力によって確実に抑制される。
更に、弾性部材における、軸線と直交する断面形状は、内筒側の軸線方向延在部と、外筒側の軸線方向延在部とが円周方向に沿って交互に差し込まれた形状となることから、弾性部材と内筒との接合面積及び弾性部材と外筒の接合面積が増大するため、内筒及び外筒と弾性部材との接合状態がより強固になると共に、内筒及び外筒と弾性部材との接合面にて生じる応力も軽減される。
このため、従来の課題となっていた弾性部材の耐久性能に影響を及ぼすクリープ変形や疲労破断の要因となる、弾性部材の面積(厚み)増大や、材料の選定による硬度低下があっても、これらを行うことにより、効果的な防振性能を得ることができると共に、耐久性能の向上を図ることができる。つまり、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を図ることができる。
また、クリープ変形などを抑制し耐久性能を高めるにあたり、硬度の高い材料を積極的に採用する必要がないことから、材質や硬度の選定が容易になり、開発時の検証時間の短縮と共に製造時の品質管理や識別管理も容易になる。更に、弾性部材の半径方向肉厚を変更する必要がないから、内筒及び外筒の製造金型や内筒と外筒との間に弾性部材を成形する際の製造金型を流用することで共通化できる。
即ち、内筒側と外筒側とに軸線方向延在部を設け、内筒側接円の直径Dと、外筒側接円の直径dとをD≧dに設定したことで、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立をコストの増大を招くことなく実現することができる。
また、防振性能や耐久性能について、用途等に応じてより広範囲の調整を行うにあたっては、内筒及び外筒に設けた軸線方向延在部の形状、円周方向幅、軸線方向長さ、高さ、又は、軸線方向突出部の個数を適宜変更・組み合わせるだけでよい。このため、本発明によれば、防振性能や耐久性能について、用途等に応じたより広範囲の調整を容易に実現することができる。
特に、前記軸線方向延在部を、内筒の外周面と、外筒の内周面とにそれぞれ、円周方向に沿って間隔を空けて設け、内筒側接円の直径Dと、外筒側接円の直径dとをD>dに設定することで、当該軸線方向延在部それぞれの先端をオーバーラップさせれば、上述した効果が一層顕著なものとなる。
なお、内筒の外周面又は外筒の内周面から突出する軸線方向延在部は、弾性部材を介して受ける回転力や製品自重等による軸方向応力、又は、弾性部材をゴム成形等する時の射出圧力や温度等を受けても変形や破損することなく防振具としての機能を維持するために、これら応力に対して十分耐えうる強度が必要である。
特に、軸線方向延在部を薄肉のリブ形状で形成する場合は、上述の応力に対して変形や破損を受け易く、新たに解決すべき課題となる。
この対策としては、リブ形状の肉厚を増加させる方法があるが、例えば、内筒(外筒)が樹脂成形品である場合は、厚肉部の形成に伴いヒケ(局所的変形)やボイド(気泡)が発生すると共に、使用原材料の増加や成形時間の増加を免れない。
そこで、本発明において、外筒の軸線方向延在部を、例えば射出成形に用いる金型により、当該外筒の内周面と共にその外周面を半径方向内側に突出させて形成すれば、軸線方向延在部の厚みを増して強度向上が図れると共に外周面からの肉盗み形状(凹形状)により、上述した新たな課題も解決することができる。
ところで、防振具の弾性部材内には、その内部に軸線方向の応力も発生する。この応力は、プロペラファンの防振具として用いる場合、プロペラファンは主として回転軸線を地面に対して水平方向に配置して使用されることが多いため、風圧や揚力による作用によって発生し、また、ターボファンの防振具として用いる場合、ターボファンは地面に鉛直方向で使用されることの多いため、ファン自重の作用によって発生する。
そこで、本発明である送風用ファンの防振具に、内筒から半径方向外側に向かって突出する円周方向延在部と、外筒から半径方向内側に向かって突出する円周方向延在部との少なくとも一方を設ければ、本発明に係る防振具に軸線方向の負荷がかかった場合、弾性部材の偏りを軸線方向に対して保持することで、当該弾性部材に発生する軸線方向の応力を抑制できると共に、永久ひずみ(クリープ変形)の抑制も可能となる。
この結果、弾性部材内で、その軸線方向に連続的に作用する応力は円周方向延在部で分断されることにより抑制され、弾性部材の耐久性、ひいては、防振具の耐久性を容易に向上させることができる。また、円周方向延在部により弾性部材の圧縮作用と伸張作用とが軸線方向に沿って働くことで、防振具としての制振効果、特に軸線方向における制振効果を向上させることができる。
更に、内筒と外筒との少なくとも一方に円周方向延在部を設けたことで、弾性部材における、軸線を含む断面形状は、内筒側の円周方向延在部と、外筒側の円周方向延在部との少なくとも一方が円周方向に沿って差し込まれた形状となるから、弾性部材と内筒との接合面積及び弾性部材と外筒の接合面積の少なくとも一方が増大するため、内筒及び外筒の少なくとも一方と弾性部材との接合状態がより強固になると共に、内筒及び外筒の少なくとも一方と弾性部材との接合面にて生じる応力も軽減される。
このため、従来の課題となっていた弾性部材の耐久性能に影響を及ぼすクリープ変形や疲労破断の要因となる、弾性部材の面積(厚み)増大や、材料の選定による硬度低下があっても、これらを行うことにより、効果的な防振性能を得ることができると共に、耐久性能の向上を図ることができる。つまり、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を図ることができる。
また、クリープ変形などを抑制し耐久性能を高めるにあたり、硬度の高い材料を積極的に採用する必要がないから、材質や硬度の選定が容易になり、開発時の検証時間の短縮と共に製造時の品質管理や識別管理も容易になる。更に、弾性部材の半径方向肉厚を変更する必要がないから、内筒及び外筒の製造金型や内筒と外筒との間に弾性部材を成形する際の製造金型を流用することで共通化できる。
即ち、本発明によれば、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立をコストの増大を招くことなく実現することができる。
また、防振性能や耐久性能について、用途等に応じてより広範囲の調整を行うにあたっては、内筒及び外筒に設けた円周方向延在部の形状、円周方向幅、軸線方向長さ、高さ、又は、円周方向延在部の個数を適宜変更・組み合わせるだけでよい。このため、本発明によれば、防振性能や耐久性能について、用途等に応じたより広範囲の調整を容易に実現することができる。
特に、内筒の外周面に設けた円周方向延在部の先端に接する接円の直径Dと、外筒の内周面に設けた円周方向延在部の先端に接する接円の直径dとをD≧dに設定すると共に、これらを互い違いになるように配置して、内筒と外筒との間に、軸線に沿って複数の半閉鎖領域を有する連続空間を形成し、この連続空間に、当該弾性部材を設ければ、弾性部材における、軸線を含む断面形状は、内筒側の円周方向延在部と、外筒側の円周方向延在部とが軸線方向に沿って交互に差し込まれた形状となる。
このため、軸線方向に応力が生じて、内筒(外筒)側の円周方向延在部から半閉鎖領域を通って弾性部材の一部が膨出すると、この膨出部分は、外筒(内筒)側の円周方向延在部と隣り合う内筒(外筒)側の円周方向延在部に偏るが、この偏りは、内筒側の軸線方向延在部と隣り合う外筒側の軸線方向延在部で保持される。即ち、軸線方向に沿って連続的な応力を生じても、かかる応力は、剛性の高い内筒及び外筒の円周方向延在部によって確実に抑制される。
この結果、弾性部材にて、その軸線方向に連続的に作用する応力は円周方向延在部で分断されることにより抑制され、弾性部材の耐久性、ひいては、防振具の耐久性を容易に向上させることができる。また、互いに隣り合う円周方向延在部間に形成された領域でも、軸線方向に沿って圧縮作用と伸張作用とが働くことで、防振具としての制振効果、特に軸線方向における制振効果を更に向上させることができる。
また、弾性部材にて、その半径方向(回転軸に向かう方向)に応力が加わる場合も、当該弾性部材に係る、内筒の外周面と外筒の内周面との間、内筒の外周面と外筒側の円周方向延在部との間、外筒の内周面と内筒側の円周方向延在部との間及び、内筒側並びに外筒側の円周方向延在部での弾性力によって確実に保持される。
加えて、弾性部材の軸線方向に沿った断面形状は、内筒側の円周方向延在部と、外筒側の円周方向延在部とが円周方向に沿って交互に差し込まれた形状となることから、弾性部材と内筒との接合面積及び弾性部材と外筒の接合面積が増大するため、内筒及び外筒と弾性部材との接合状態がより強固になると共に、内筒及び外筒と弾性部材との接合面にて生じる応力も軽減される。
このため、従来の課題となっていた弾性部材の面積(厚み)増大や、材料の選定による硬度低下があっても、これらを行うことにより、効果的な防振性能を得ることができると共に、耐久性能の向上を図ることができる。つまり、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を図ることができる。
また、クリープ変形などを抑制し耐久性能を高めるにあたり、硬度の高い材料を積極的に採用する必要がないことから、材質や硬度の選定が容易になり、開発時の検証時間の短縮と共に製造時の品質管理や識別管理も容易になる。更に、弾性部材の半径方向肉厚を変更する必要がないから、内筒及び外筒の製造金型や内筒と外筒との間に弾性部材を成形する際の製造金型を流用することで共通化できる。
即ち、内筒側と外筒側とに円周方向延在部を設け、内筒側接円の直径Dと、外筒側接円の直径dとをD≧dに設定すれば、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を更なるコストの低下を図りつつ実現することができる。
特に、前記円周方向延在部を、内筒の外周面と、外筒の内周面とにそれぞれ、軸線方向に沿って互い違いに設け、内筒側接円の直径Dと、外筒側接円の直径dとをD>dに設定することで、当該円周方向延在部のそれぞれの先端をオーバーラップさせれば、上述した効果が一層顕著なものとなる。
特に、内筒側及び外筒側の円周方向延在部の少なくとも一方を、円周方向の全周に亘って形成された環状部にすれば、弾性部材を円周方向の全周に亘って保持することができるので、上述した効果が一層顕著なものとなる。
また、内筒側及び外筒側の円周方向延在部の少なくとも一方を、円周方向に沿って断続的に形成しても同様の効果を奏する。また、この場合、内筒側又は外筒側の一方の円周方向延在部と、内筒側又は外筒側の他方の円周方向延在部とを互いに軸線方向から見て干渉しないように円周方向にずらした状態で挿入し、そのまま円周方向に回転させれば、内筒側の円周方向延在部と外筒側の円周方向延在部とを容易に位置決めすることができる。
更に、内筒側及び外筒側の前記円周方向延在部のうちの少なくとも一方の外周縁を、円周方向に沿って形成された凹凸形状とすれば、内筒と弾性部材との相互間に作用する応力(特に、円周方向に対するせん断力)や、外筒と弾性部材との相互間に作用する応力(特に、円周方向に対するせん断力)を有効に受けることができるので、より強固な接合を確保することができる。
また、内筒側及び外筒側の前記円周方向延在部のうちの少なくとも一方に、軸線方向に貫通する貫通孔を形成すれば、円周方向延在部の外周縁を、円周方向に沿って凹凸形状に形成した場合と同様の作用効果を奏する。
更に、上述した発明の夫々の構成を適宜組み合わせれば、円周方向及び軸線方向の両方向に対する防振性能と耐久性能との向上が図れるため、防振性能と耐久性能とのより一層の向上を更なるコストの増大を招くことなく実現することができる。
また、本発明である上記防振具を用いて、防振具と送風用ファンとを有する送風用ファン構造体として一体に成形した場合、振動や騒音の発生が更に抑制された安価な送風用ファン構造体を提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明の形態を詳細に説明する。
図1(a)、(b)はそれぞれ、本発明の一形態である送風用ファン構造体1を示す斜視図及び、これにモータMを取り付けた状態を図1のX−X断面で模式的に示す要部断面図である。また、図2は、同形態に採用した防振具10を風上側(モータ取付側)から示す斜視図である。また、図3は、防振具10を、弾性部材13を省略した状態で風下側(モータ取付側と対向する側)から示す斜視図である。更に、図4,5はそれぞれ、防振具10を、その弾性部材13内で円周方向に加わる応力と共に示す斜視図及び、防振具10を、その自重方向に加わる応力と共に示す斜視図である。
符号11は、モータMの出力軸(以下、「モータ軸」という)MSに固定する嵌合孔11aを有する内筒である。内筒11の外周面11fには、図2等に示すように、内筒11の円周方向θに間隔を空けて、この内筒11からモータ回転軸線(以下、「軸線」という)OM方向に沿って延在する8つの軸線方向延在部11pが一体に設けられている(図2では符号11pを例示的に2箇所に付記)。軸線方向延在部11pは、同図に示すように、軸線OMから放射状に半径方向外側に突出する。
符号12は、その内側に内筒11を配置する外筒である。外筒12は、図1に示すように、送風用ファン1を保持する保持面12aを有し、図3に示すように風下側には、保持面12aよりも外径の大きなフランジ部12bが形成されている。
また、外筒12の内周面12fには、図3に示すように、円周方向θに間隔を空けて、この外筒12から軸線OM方向に沿って延在する8つの軸線方向延在部12pが一体に設けられている(図3では、符号12を例示的に2箇所に付記)。軸線方向延在部12pは、同図に示すように、軸線OMに向かって半径方向内側に突出する。
本形態では、内筒11の最外径、即ち、図2に示すように、軸線OMを中心として内筒11の外周面11fに設けた8つの軸線方向延在部11pの先端e11に接する内筒側接円の直径(以下、「内筒側先端径」という。)を符号Dとする一方、 外筒12の最内径、即ち、図2に示すように、軸線OMを中心として外筒12の内周面12fに設けた8つの軸線方向延在部12pの先端e12に接する外筒側接円の直径(以下、「外筒側先端径」という。)を符号dとすると共に、 内筒側先端径Dと外筒側先端径dとをD>dに設定する。
内筒11と外筒12とは、図2に例示するように、軸線方向延在部11p,12pが互い違いになるように同軸配置して、軸線方向延在部11p,12pそれぞれの先端e11,e12を半径方向でオーバーラップさせる。これにより、その相互間に、円周方向θに沿って16箇所の半閉鎖領域AXを有する連続空間R1を形成している(図では符号e11,e12、AXを例示的に2箇所に付記)。
連続空間R1には、内筒11と外筒12とをインサート部品として、変形及び復元の可能なスチレン系エラストマ(SBS、SEBS)、オレフィン系エラストマ(TPO)を始めとする各種熱可塑性エラストマを用いることで、図2に示すように、弾性部材13が一体に成形される。
なお、弾性部材13を構成する材料としては、各種熱可塑性エラストマ以外に、クロロプレンゴム(CR)、二トリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR、EPDM)等の各種加硫ゴムを用いる等、既存の材料を流用することができる。
本形態に係る防振具10によれば、内筒側先端径Dと、外筒側先端径dとをD>dに設定すると共に、これらを互い違いになるように配置して、内筒11と外筒12との間に、円周方向θ周りに沿って複数の半閉鎖領域AXを有する連続空間R1を形成し、この連続空間R1に、弾性部材13を設けたことから、弾性部材13における、軸線OMに直交する断面形状は、図2に示すように、内筒側の軸線方向延在部11pと、外筒側の軸線方向延在部12pとが円周方向θに沿って交互に差し込まれた形状となる。
このため、弾性部材13の内部にモータ軸OM周り(円周方向θ)に応力σが生じると、この円周方向θに生じる応力は、内筒外周面11fとの接合面と外筒内周面12fとの接合面とに加え、内筒側軸線方向延在部11pと、外筒側軸線方向延在部12pとで受けることになる。従って、防振具10を送風用ファン1に取付けて回転させるとモータMからの回転力は、防振具10の内筒11から弾性部材13を介して送風用ファン1を保持する外筒12に伝えられる。
また、かかる構成によれば、回転にあたり、内筒側軸線方向延在部11p(外筒側軸線方向延在部12p)から半閉鎖領域AXを通って弾性部材13の一部が膨出すると、この膨出部分は、内筒側軸線方向延在部11p(外筒側軸線方向延在部12p)と隣り合う外筒側軸線方向延在部12p(内筒側の軸線方向延在部11p)に偏るが、この偏りは、内筒側軸線方向延在部11p(外筒側軸線方向延在部12p)と隣り合う外筒側軸線方向延在部12p(内筒側の軸線方向延在部11p)で保持される。即ち、円周方向θに沿って連続的なせん断力等の応力σを生じても、かかる応力σは、剛性の高い内筒11及び外筒12の軸線方向延在部11p,12pによって確実に保持される。
この結果、弾性部材13にて、その円周θ方向に連続的に作用する応力σは軸線方向延在部11p,12pで分断されることにより抑制され、弾性部材13の耐久性、ひいては、防振具10の耐久性を容易に向上させることができる。また、互いに隣り合う軸線方向延在部11p,12p間に形成された開放領域Amでも、圧縮作用と伸張作用とが働くことで、防振具としての制振効果、特にトルク変動時の回転(円周)方向θにおける制振効果を向上させることができる。
また、弾性部材13にて、その半径方向(軸線OMに向かう方向)に応力が加わる場合も、図5に示すように、弾性部材13に係る、内筒外周面11fと外筒内周面12fとの間、内筒外周面11fと外筒側軸線方向延在部12pとの間、外筒内周面12fと内筒側軸線方向延在部11pとの間、並びに、内筒側軸線方向延在部11p及び外筒側軸線方向延在部12pの間での弾性力によって確実に抑制される。
更に、弾性部材13における、軸線OMと直交する断面形状は、図2等に示すように、内筒側軸線方向延在部11pと、外筒側軸線方向延在部12pとが円周方向θに沿って交互に差し込まれた形状となることから、弾性部材13と内筒11との接合面積及び弾性部材13と外筒12の接合面積が増大するため、内筒11及び外筒12と弾性部材13との接合状態がより強固になると共に、内筒11及び外筒12と弾性部材13との接合面にて生じる応力も軽減される。
このため、従来の課題となっていた弾性部材13の耐久性能に影響を及ぼすクリープ変形や疲労破断の要因となる、弾性部材13の面積(厚み)増大や、材料の選定による硬度低下があっても、これらを行うことにより、効果的な防振性能を得ることができると共に、耐久性能の向上を図ることができる。つまり、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を図ることができる。
また、クリープ変形などを抑制し耐久性能を高めるにあたり、硬度の高い材料を積極的に採用する必要がないことから、材質や硬度の選定が容易になり、開発時の検証時間の短縮と共に製造時の品質管理や識別管理も容易になる。更に、弾性部材13の半径方向肉厚を変更する必要がないから、内筒11及び外筒12の製造金型や内筒11と外筒12との間に弾性部材13を成形する際の製造金型を流用することで共通化できる。
即ち、防振具10によれば、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立をコストの増大を招くことなく実現することができる。
また、防振性能や耐久性能について、用途等に応じてより広範囲の調整を行うにあたっては、内筒11及び外筒12に設けた軸線方向延在部11p,12pの形状、円周方向θの幅、軸線OM方向の長さ、高さ、又は、軸線方向延在部11p,12pの個数を適宜変更・組み合わせるだけでよい。このため、本形態によれば、防振性能や耐久性能について、用途等に応じたより広範囲の調整を容易に実現することができる。
しかも、軸線方向延在部11p,12pそれぞれをオーバーラップさせたことで、互いに隣り合う軸線方向延在部11p、12pに形成された開放領域Amでは、図4に示す矢印のように、円周方向θの圧縮作用及び伸張作用が、より効率的に発生する。
即ち、円周方向θに沿って連続的な応力σを生じても、円周方向θの圧縮作用及び伸張作用が開放領域Amに効率的に発生することで、かかる応力は、弾性部材13よりも剛性の高い軸線方向延在部11p,12pによって確実に抑制される。
従って、本形態の如く、軸線方向延在部11p,12pを、内筒外周面11fと、外筒内周面12fとにそれぞれ、円周方向に沿って互い違いに設け、内筒先端径Dと、外筒先端径dとをD>dに設定することで、軸線方向延在部11p,12pのそれぞれを半径方向でオーバーラップさせれば、上述した効果が一層顕著なものとなる。
図6は、防振具10の変形例であって、本発明の第二の形態としての防振具を、モータ取付側から示す斜視図である。
図1〜5に記載の形態では、内筒11の軸線方向延在部11pと外筒12の軸線方向延在部12pとの個数が同数で、互い違いであったのに対し、本形態では、内筒11の軸線方向延在部11pが外筒12の軸線方向延在部12pより少なく1つ飛びになるように構成されている。
本形態は、内筒11の軸線方向延在部11pに変更を加えているが、かかる変更は、外筒12の軸線方向延在部12pであってもよい。
図7は、防振具10の更に他の変形例であって、本発明の第三の形態としての防振具を、モータ取付側から示す斜視図である。
本発明において、内筒外周面11f又は外筒内周面12fから突出する軸線方向延在部11p,12pは、弾性部材13を介して受ける回転力や製品自重等による軸線OM方向の応力σ、又は、弾性部材13をゴム成形等する時の射出圧力や温度等を受けても変形や破損することなく防振具としての機能を維持するために、これら応力σに対して十分耐えうる強度が必要である。
特に、軸線方向延在部11p,12pを薄肉のリブ形状で形成する場合は、上述の応力σに対して変形や破損を受け易く、新たに解決すべき課題となる。
この対策としては、リブ形状の肉厚を増加させる方法があるが、例えば、内筒11p(外筒12p)が樹脂成形品である場合は、厚肉部の形成に伴いヒケ(局所的変形)やボイド(気泡)が発生すると共に、使用原材料の増加や成形時間の増加を免れない。
そこで、本形態の如く、外筒側軸線方向延在部12pを、例えば射出成形に用いる金型により、外筒内周面12fと共にその外周面12aを半径方向内側に突出させて形成すれば、軸線方向延在部12pの厚みを増して強度向上が図れると共に外周面からの肉盗み形状(凹形状)により、上述した新たな課題も解決することができる。
図8は、本発明の第四の形態である送風用ファンの防振具20を、モータ取付側から軸線OMを含む断面にて示す斜視断面図である。なお、同図は、防振具20を、弾性部材13を省略した状態で示し、また、先に説明した部分と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
本形態は、内筒11の外周面11fに、この内筒11から円周方向θに沿って延在する円周方向延在部21pが一体に設けられている。円周方向延在部21pは、同図に示すように、軸線OM方向に沿った所定位置(例えば、軸線OM方向の中心位置)で、軸線OMから半径方向外側に向かって突出し、円周θ方向の全周に亘って環状に形成されている。
これにより、内筒11と外筒12との間を弾性部材13で一体に連結するにあたり、内筒11と外筒12との間には、軸線OM方向に沿って1つの半閉鎖領域AYを有する連続空間R2が形成され、この連続空間R2に弾性部材13を設けることができる。
本形態の如く、内筒11に、円周方向延在部21pを設ければ、例えば、送風用ファン1の自重等により、防振具20に軸線OM方向の負荷がかかった場合、弾性部材13の偏りを円周方向延在部21pで軸線OM方向に対して保持することで、当該弾性部材13に発生する軸線OM方向に生じる応力σを抑制できると共に、永久ひずみ(クリープ変形)の抑制も可能となる。
この結果、弾性部材13内で、その軸線OM方向に連続的に作用する応力σは円周方向延在部21pで分断されることにより抑制され、弾性部材13の耐久性、ひいては、防振具20の耐久性を容易に向上させることができる。また、円周方向延在部21pにより弾性部材13の圧縮作用と伸張作用とが軸線OM方向に沿って働くことで、防振具20としての制振効果、特に軸線OM方向における制振効果を向上させることができる。
更に、円周方向延在部21pを設けたことで、弾性部材13における、軸線OMを含む断面形状は、内筒21側の円周方向延在部21pが軸線OMに沿って差し込まれた形状となるから、弾性部材13と内筒11との接合面積が増大するため、内筒11と弾性部材13との接合状態がより強固になると共に、内筒11と弾性部材13との接合面にて生じる応力σも軽減される。
このため、第一〜第三の形態と同様、従来の課題となっていた弾性部材13の耐久性能に影響を及ぼすクリープ変形や疲労破断の要因となる、弾性部材13の面積(厚み)増大や、材料の選定による硬度低下があっても、これらを行うことにより、効果的な防振性能を得ることができると共に、耐久性能の向上を図ることができる。つまり、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を図ることができる。
また、クリープ変形などを抑制し耐久性能を高めるにあたり、硬度の高い材料を積極的に採用する必要がないから、材質や硬度の選定が容易になり、開発時の検証時間の短縮と共に製造時の品質管理や識別管理も容易になる。更に、弾性部材13の半径方向肉厚を変更する必要がないから、内筒11及び外筒12の製造金型や内筒11と外筒12との間に弾性部材13を成形する際の製造金型を流用することで共通化できる。
即ち、本形態によれば、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立をコストの増大を招くことなく実現することができる。
図9は、防振具20の変形例であって、本発明の第五の形態としての防振具を、モータ取付側から軸線OMを含む断面にて示す斜視断面図である。なお、同図も、防振具20を、弾性部材13を省略した状態で示し、また、先に説明した部分と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
本形態は、外筒12の内周面12fに、この外筒12から円周方向θに沿って延在する円周方向延在部22pが一体に設けられている。円周方向延在部22pも、同図に示すように、軸線OM方向に沿った所定位置(例えば、軸線OM方向の中心位置)で、軸線OMに向かって半径方向内側に突出し、円周方向θの全周に亘って環状に形成されている。
これにより、内筒11と外筒12との間を弾性部材13で一体に連結するにあたり、内筒11と外筒12との間にも、軸線OM方向に沿って1つの半閉鎖領域AYを有する連続空間R2が形成され、この連続空間R2に弾性部材13を設けることができる。
本形態の如く、外筒12に、円周方向延在部22pを設けても、弾性部材13に発生する軸線OM方向に生じる応力σを抑制できると共に、永久ひずみ(クリープ変形)の抑制も可能となる。
この場合も、弾性部材13内で、その軸線OM方向に連続的に作用する応力σは円周方向延在部22pで分断されることにより抑制され、弾性部材13の耐久性、ひいては、防振具20の耐久性を容易に向上させることができる。また、円周方向延在部22pによっても弾性部材13の圧縮作用と伸張作用とが軸線方向OMに沿って働くことで、防振具20としての制振効果、特に軸線OM方向における制振効果を向上させることができる。
更に、円周方向突出部22pを設けたことで、弾性部材13における、軸線OMを含む断面形状は、外筒22側の円周方向延在部22pが軸線OMに沿って差し込まれた形状となるから、弾性部材13と外筒12との接合面積が増大するため、外筒12と弾性部材13との接合状態がより強固になると共に、外筒12と弾性部材13との接合面にて生じる応力σも軽減される。
このため、第四の形態と同様、従来の課題となっていた弾性部材13の耐久性能に影響を及ぼすクリープ変形や疲労破断の要因となる、弾性部材13の面積(厚み)増大や、材料の選定による硬度低下であっても、これらを行うことにより、効果的な防振性能を得ることができると共に、耐久性能の向上を図ることができる。つまり、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を図ることができる。
また、クリープ変形などを抑制し耐久性能を高めるにあたっても、第四の形態と同様、硬度の高い材料を積極的に採用する必要がないから、材質や硬度の選定が容易になり、開発時の検証時間の短縮と共に製造時の品質管理や識別管理も容易になる。また、第四の形態と同様、弾性部材13の半径方向肉厚を変更する必要がないから、内筒11及び外筒12の製造金型や内筒11と外筒12との間に弾性部材13を成形する際の製造金型を流用することで共通化できる。
即ち、本形態によっても、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立をコストの増大を招くことなく実現することができる。
図10は、図8及び図9に記載の構成を組み合わせた防振具20の更に他の変形例であって、本発明の第六の形態としての防振具を、モータ取付側から軸線OMを含む断面にて示す斜視断面図である。なお、同図も、防振具20を、弾性部材13を省略した状態で示し、また、先に説明した部分と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
本形態では、内筒11の最外径、即ち、同図に示すように、軸線OMを中心として内筒11の外周面11fに設けた円周方向延在部21pの先端e21に接する内筒先端径Dと、外筒12の最内径、即ち、同図に示すように、軸線OMを中心として外筒12の内周面12fに設けた円周方向延在部22pの先端e22に接する外筒先端径dとをD>dに設定し、円周方向延在部21p,22pが互いに干渉しないように離して同軸配置する。
また、内筒11と外筒12とは、同図に例示するように、円周方向延在部21p,22pそれぞれの先端e21,e22を軸線OM方向から見てオーバーラップさせる。これにより、その相互間に、軸線OM方向に沿って半閉鎖領域AYを有する連続空間R2を形成している。
本形態によれば、弾性部材13における、軸線OMを含む断面形状は、内筒11側の円周方向延在部21pと、外筒12側の円周方向延在部22pとが軸線OM方向に沿って交互に差し込まれた形状となる。
このため、軸線OM方向に応力σが生じて、外筒側円周方向延在部22p(内筒側円周方向延在部21p)から半閉鎖領域AYを通って弾性部材13の一部が膨出すると、この膨出部分は、外筒側円周方向延在部22p(内筒側円周方向延在部21p)と隣り合う内筒側円周方向延在部21p(外筒側円周方向延在部22p)に偏るが、この偏りは、内筒側円周方向延在部21p(外筒側円周方向延在部22p)と隣り合う外筒側円周方向延在部22p(内筒側円周方向延在部21p)で保持される。即ち、軸線OM方向に沿って連続的な応力σを生じても、かかる応力σは、剛性の高い内筒11及び外筒12の円周方向延在部21p,22pによって確実に抑制される。
この結果、弾性部材13にて、その軸線OM方向に連続的に作用する応力σは円周方向延在部21p,22pで分断されることにより抑制され、弾性部材13の耐久性、ひいては、防振具の耐久性を容易に向上させることができる。また、互いに隣り合う円周方向延在部21p,22p間に形成された開放領域Amでも、軸線OM方向に沿って圧縮作用と伸張作用とが働くことで、防振具としての制振効果、特に軸線OM方向における制振効果を更に向上させることができる。
また、弾性部材13により構成される開放領域Am及び半閉鎖領域AYにて、その半径方向(軸線OMに向かう方向)に応力σが加わる場合も、当該弾性部材13に係る、内筒側外周面11fと外筒側内周面12fとの間、内筒側外周面11fと外筒側円周方向延在部22pとの間、外筒側内周面12fと内筒側円周方向延在部21pとの間及び、内筒側並びに外筒側円周方向延在部21p,22pでの弾性力によって確実に保持される。
加えて、弾性部材13の軸線OM方向に沿った断面形状は、内筒側円周方向延在部21pと、外筒側円周方向延在部22pとが円周方向θに沿って交互に差し込まれた形状となることから、弾性部材13と内筒11との接合面積及び弾性部材13と外筒12の接合面積が増大するため、内筒11及び外筒12と弾性部材13との接合状態がより強固になると共に、内筒11及び外筒12と弾性部材13との接合面にて生じる応力σも軽減される。
このため、従来の課題となっていた弾性部材13の面積(厚み)増大や、材料の選定による硬度低下があっても、これらを行うことにより、効果的な防振性能を得ることができると共に、耐久性能の向上を図ることができる。つまり、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を図ることができる。
また、クリープ変形などを抑制し耐久性能を高めるにあたり、硬度の高い材料を積極的に採用する必要がないことから、材質や硬度の選定が容易になり、開発時の検証時間の短縮と共に製造時の品質管理や識別管理も容易になる。更に、弾性部材13の半径方向肉厚を変更する必要がないから、内筒11及び外筒12の製造金型や内筒11と外筒12との間に弾性部材13を成形する際の製造金型を流用することで共通化できる。
即ち、内筒側先端径Dと、外筒側先端径dとをD≧dに設定すれば、相反する特性を有する防振性能の向上と耐久性能の向上との両立を更なるコストの低下を図りつつ実現することができる。
また、図8〜10に記載の形態にて、防振性能や耐久性能についても、用途等に応じてより広範囲の調整を行うにあたっては、内筒11及び外筒12に設けた円周方向延在部21p,22pの形状、軸線OM方向の厚さ、半径方向の高さ、又は、円周方向延在部21p,22pの個数を適宜変更・組み合わせるだけでよい。このため、上述の各形態によれば、防振性能や耐久性能について、用途等に応じたより広範囲の調整を容易に実現することができる。
しかも、円周方向延在部21p,22pそれぞれをオーバーラップさせたことで、同図に示す矢印のように、互いに隣り合う円周方向延在部21p,22p間に形成された領域Amでは、軸線OM方向の圧縮作用及び伸張作用が、より効率的に発生する。
即ち、軸線OM方向に沿って連続的な応力σを生じても、軸線OM方向の圧縮作用及び伸張作用が領域Amに効率的に発生することで、かかる応力σは、剛性の高い円周方向延在部21p,22pによって確実に抑制される。
従って、本形態の如く、円周方向延在部21p,22pを、内筒外周面11fと、外筒内周面12fとにそれぞれ、軸線OM方向に沿って互いに干渉しないように離して同軸配置し、内筒先端径Dと、外筒先端径dとをD>dに設定することで、円周方向延在部21p,22pのそれぞれを軸線OM方向でオーバーラップさせれば、図8及び図9の形態における効果が一層顕著なものとなる。
特に、図8〜10に示す形態の如く、円周方向延在部21p,22pを、円周方向θの全周に亘って形成された環状部にすれば、弾性部材13を円周方向θの全周に亘って保持することができるので、上述した効果が一層顕著なものとなる。
図11は、図10に示す防振具の変形例であって、本発明の第七の形態としての防振具20を、モータ取付側から軸線OMを含む断面にて示す斜視断面図である。なお、同図も、防振具20を、弾性部材13を省略した状態で状態を示し、また、先に説明した部分と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
本形態では、円周方向延在部21p,22pの外周縁(先端)e21,e22を、円周方向θに沿って形成された凹凸形状としている。この場合、内筒11と弾性部材13との相互間に作用する応力(特に、円周方向θに対するせん断力)σや、外筒12と弾性部材13との相互間に作用する応力(特に、円周方向θに対するせん断力)σを有効に受けることができるので、より強固な接合を確保することができる。
また、本形態では、円周方向延在部21p,22pに、軸線OM方向に貫通する貫通孔21a,22aを形成している。かかる構成によれば、円周方向延在部21p,22pの外周縁e21,e22を、円周方向θに沿って凹凸形状に形成した場合と同様の作用効果を奏する。
ところで、内筒11と外筒12にそれぞれ、円周方向延在部21p,22pをオーバーラップさせて設けるにあたり、円周方向延在部21p、22pの少なくとも一方が軸線方向に複数存在す場合、内筒11をこれと別体である外筒12に同軸配置することは困難である。
また、内筒11と外筒12とを例えば樹脂射出成形用金型にて成形する場合、これに用いる金型はスライドコアを利用した複雑な金型を必要とするが、こうしたスライドコアを用いないことが金型上、成形上及びコスト上は好ましい。加えて、内筒11や外筒12の形状如何では製造が困難な場合もあり得る。
図12は、図10に示す防振具の変形例であって、本発明の第八の形態としての防振具20を、モータ取付側から示す正面図であり、また、図13は、同形態を、モータ取付側から軸線OMを含む断面にて示す斜視断面図である。なお、同図も、防振具20を、弾性部材13を省略した状態で示し、また、先に説明した部分と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
本形態において、内筒11の外周面11fには、円周方向θの全周に亘って環状のフランジ部21fが一体に成形されており、このフランジ部21fを介して、4つの円周方向延在部21pが、軸線OMを中心に円周方向θに沿って90度の間隔で断続的に一体に形成されている。
これに対し、外筒12の円周方向延在部22pは、外筒12の内周面12fに一体に形成されている。更に、円周方向延在部22pは、図13に示すように、軸線OMに沿って間隔を空けて、風上側の円周方向延在部22p1と、風下側の円周方向延在部22p2との二列に構成されている。また、円周方向延在部22p1及び円周方向延在部22p2もそれぞれ、円周方向θに沿って4つずつ90度の間隔で断続的に形成され、且つ、22p1、22p2は円周方向に相対的に45度ずらして配置されている。
こうすることで形成される外筒12は、半径方向内側に向かう円周方向延在部22pが軸線OM方向に複数存在しても、樹脂射出成形用の金型の開閉方向でアンダーカットが生ずることがなく、よって、スライドコアを必要としない金型で成形することが可能となる。
また、内筒側円周方向延在部21pと、外筒側円周方向延在部22p1及び22p2とを互いに干渉しないように円周θ方向の一方にずらした状態で軸線OMに沿って挿入し、そのまま円周θ方向に回転させれば、図12等に示すように、内筒11の円周方向突出部21pと外筒12の円周方向突出部22p1及び22p2とを容易に位置決めすることができ、しかも、内筒側円周方向延在部21p及び外筒側円周方向延在部22p1と、内筒側円周方向延在部21p及び外筒側円周方向延在部22p2とをそれぞれ、同図に示すように、軸線OM方向から見て干渉する位置関係に配置することができる。
図14は、図1等に記載の第一の形態に係る構成と図10に記載の第六の形態に係る構成とを組み合わせた防振具であって、本発明の第九の形態としての防振具30を、外筒12を透視した状態でモータ取付側から示す斜視図である。また、図15は、同形態を、軸線OMを含む断面にて示す側面図である。なお、各図も、防振具20を、弾性部材13を省略した状態で示し、また、先に説明した部分と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
本形態では、内筒11と外筒12とにそれぞれ、円周方向θに互い違いに複数の軸線方向延在部11p,12pを設け、内筒側先端径Dと、外筒側先端径dとをD>dに設定することで、両先端e11,e12をそれぞれ、半径方向にオーバーラップさせると共に、内筒11と外筒12とにそれぞれ、軸線OM方向に沿って互い違いに円周方向延在部21p,22pを設け、内筒側先端径Dと、外筒側先端径dとをD>dに設定することで、両先端e21,e22をそれぞれ、軸線OM方向から見てオーバーラップさせることにより、内筒11と外筒12との間に、軸線OM方向及び円周方向θに沿って複数の半閉鎖領域AX及びAYを有する連続空間R3を設け、この連続空間R3に弾性部材13を設けている。
本形態によれば、円周方向θ及び軸線OM方向の両方向に対する防振性能と耐久性能との向上が図れるため、防振性能と耐久性能とのより一層の向上を更なるコストの増大を招くことなく実現することができる。
図16は、第九の形態の変形例であって、本発明の第十の形態としての防振具30を、風下側から示す正面図であり、また、図17は、同形態を、風下側から示す斜視図である。なお、図16.17は、弾性部材13を省略した状態で示し、また、先に説明した部分と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
内筒31は、その外周面fに、円周方向θに全周に亘って円周方向延在部31fが一体に形成されている。
円周方向延在部31fの外周縁efは、図16に示すように、円周方向θに沿って形成された凹凸形状をし、このうち、凸形状部分にそれぞれ、内筒31の外周面fに設けられた軸線方向延在部31pが一体に繋がる。即ち、円周方向延在部31fには、円周方向θに間隔を空けて、軸線OMに沿って延在する8つの軸線方向延在部31pが一体に形成されている(図では符号31pを例示的に1箇所のみ付記)。
また、外筒12の内周面12fには、モータ取付側に、円周方向θに沿って全周に亘って環状の円周方向延在部22fが一体に形成されていると共に、軸線方向延在部12pが一体に形成されている。
本形態は、軸線方向延在部31p,12pの先端e31,e12を円周方向θに沿ってオーバーラップさせると共に、円周方向延在部22f,31fの先端e22,efを半径方向にオーバーラップさせることで、内筒11と外筒12との間に、軸線OM方向及び円周方向θに沿って複数の半閉鎖領域を有する連続空間R3を設けているが、円周方向延在部31fの外周縁efのうち、その凹形状部分が、図16に示すように、円周方向延在部22fの先端部e22とオーバーラップしない構成となっている。
本発明に係る防振具を用いれば、当該防振具と送風用ファンとを有する送風用ファン構造体として一体に成形した場合、振動や騒音の発生が更に抑制された安価な送風用ファン構造体を提供することができる。
本発明に係る防振具は、プロペラファンに代表される軸流ファンやターボファン、シロッコファンに代表される遠心ファン、斜流ファンや横流ファン(クロスフローファン)等、その用途に応じた様々な送風用ファンに採用することができる。
上述したところは、本発明の好適な形態であるが、当業者によれば、特許請求の範囲内で種々の変更を加えることができる。例えば、本発明によれば、上述した各形態の部材やその形態、又は、その周辺構造等は用途に応じてそれぞれ組み合わせて使用することができる。