JP5526745B2 - 光学薄膜およびその製造方法、光学薄膜を含む光学多層膜、光学薄膜を有する光学部品、光学部品を含む露光装置および露光方法 - Google Patents

光学薄膜およびその製造方法、光学薄膜を含む光学多層膜、光学薄膜を有する光学部品、光学部品を含む露光装置および露光方法 Download PDF

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本発明は、光学薄膜およびその製造方法、光学薄膜を含む光学多層膜およびその光学多層膜を用いた光学部品に関する。更に、その光学部品を含む露光装置および露光方法に関する。
最近の半導体製造用縮小投影露光装置は、水銀ランプより短波長域の光を発振でき、かつ高出力なレーザを光源としている。光源であるレーザには、KrFエキシマレーザ(波長248nm)やArFエキシマレーザ(波長193nm)などがある。レーザを光源とした露光装置の光学系において、レンズなどの光学部品の表面反射による光量損失やフレア・ゴーストなどを低減するために、反射防止膜を形成する必要がある。また、レーザ光の光路折り曲げのためにはミラーを形成する必要がある。このような反射防止膜やミラーは、高屈折率の誘電体の薄膜(光学薄膜)と、低屈折率の誘電体の薄膜(光学薄膜)の交互積層体(光学多層膜)で構成される。そのほかにも、露光装置の性能を発揮させるため、露光装置には様々な目的で光学薄膜が使用されている。
光に対して吸収の大きい物質や、耐レーザ性の低い物質によって光学薄膜(反射防止膜やミラー)を構成すると、吸収による光量損失、吸収発熱による基板面変化や膜破壊などを起こしやすくなる。このため、光学薄膜に使用する物質は、低吸収・高レーザ耐性を有しているものが望ましい。このような観点から、200nm以下の波長の光に対して使用できる物質は、主にフッ化ランタン(LaF)やフッ化マグネシウム(MgF)のようなフッ素化合物、また、一部の酸化物(酸化アルミニウム(Al)や二酸化ケイ素(SiO)等)である。特に波長200nm以下における高屈折物質の光学薄膜としては、フッ化ランタン(LaF)やフッ化ガドリニウム(GdF)が有効である。
これらフッ化物の薄膜の製造には、抵抗加熱式の真空蒸着法が一般に用いられている。薄膜の製造方法には、電子ビーム加熱式真空蒸着法やスパッタ法など抵抗加熱式真空蒸着法よりも効率的な手法がいくつもあるが、フッ素欠陥を有さない薄膜を形成するためには、穏やかな成膜方法である抵抗加熱式の真空蒸着法が適している。
従来の真空蒸着法により形成されたフッ化物による光学薄膜は、そのほとんどが柱状構造を有し密度が低い。柱状構造の一つの柱の典型的な大きさは、大きいもので100nm程度であり、半導体製造用露光装置で使用する光の波長と同程度に大きいため、光の散乱を生ずる。また、柱状構造は、表面積が非常に大きい多孔質構造を取る。したがって、空気中の水分や酸素などによって表面が酸化・水酸化され、フッ化物膜が紫外線に対して吸収を持つ原因となる。さらに、膜は空隙部に空気・水蒸気を含み、フッ化物結晶と混合状態にあるため、稠密なフッ化物(例えば単結晶状のバルク体)に比べて、屈折率は低下してしまう。
これに対し、フッ素系ガスクラスターイオンビームを真空蒸着時に蒸着面へ照射し、フッ化物薄膜の表面粗さを低下させ、緻密な膜を得る技術がある(特許文献1)。本技術は、フッ化物原料を電子ビーム蒸着する一方で、フッ素系ガスを蒸着槽内に導入し、これをイオン化してガス分子同士が緩やかに結合された状態のビームを形成し、蒸着面に対して照射する手法である。この結果、薄膜の表面粗さが改善され、電子ビーム蒸着に伴う薄膜中のフッ素抜けを防止する。
一方、フッ化アルミニウム(AlF)やクリオライト(NaAlF)などは、真空蒸着法により成膜しても非晶質状となり、柱状構造は取らないことが知られている。このため、表面の凹凸は小さく、膜内部における結晶界面での散乱等も小さい。
特開2005-232534号公報
本発明の態様の目的は、汎用の製造設備を用いて製造可能なフッ化物からなる光学薄膜であって、従来使用されている物質よりも高屈折率を示し、緻密な構造の光学薄膜およびその製造方法を提供することである。また、本発明の態様の目的は、光学薄膜を用いた多層膜、光学薄膜を有する光学部品を提供することである。更に、本発明の態様の目的は、その光学部品を用いた露光装置および露光方法を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、光学薄膜であって、ランタンとガドリニウムのフッ化物を含み、前記ランタンと前記ガドリニウムの合計モル数に対する前記ガドリニウムのモル数の比が0.1〜0.7である光学薄膜が提供される。
本発明の第2の態様に従えば、光学薄膜の製造方法であって、基板を用意することと、ランタンとガドリニウムの合計モル数に対する前記ガドリニウムのモル数の比が0.1〜0.7となるように、フッ化ランタンとフッ化ガドリニウムを混合した蒸着原料を用意することと、真空中で前記蒸着原料を加熱して蒸発させ、前記基材上に前記蒸着原料を堆積させることを含む光学薄膜の製造方法が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、第1の態様の前記光学薄膜と、前記光学薄膜より屈折率の低い、低屈折率薄膜を含む光学多層膜が提供される。
本発明の第4の態様に従えは、第1の態様の前記光学薄膜を表面に有する光学部品が提供される。
本発明の第5の態様に従えは、第4の態様の光学部品が用いられる露光装置が提供される。
本発明の第6の態様に従えは、第5の態様の露光装置を用いて露光を行う露光方法が提供される。
本発明の態様によれば、光学薄膜のランタンとガドリニウムの合計モル数に対するガドリニウムのモル比を0.1〜0.7とすることで、フッ化ランタン及びフッ化ガドリニウムの各単一成分からなる薄膜よりも高い屈折率を得ることができる。
本発明の態様の光学薄膜は、特別な設備を必要とせず、従来の設備をそのまま用いて製造することができる。
実施例1における蒸着原料のランタンとガドリニウムの合計モル数に対するガドリニウムのモル比と、光学薄膜内のランタンとガドリニウムの合計モル数に対するガドリニウムのモル比との関係を示す図である。 実施例1における蒸着原料のランタンとガドリニウムの合計モル数に対するガドリニウムのモル比と、波長550nmおよび193nmの光に対する光学薄膜の屈折率との関係を示す図である。 試料1で作製した光学薄膜(LaF単独成分)の断面および表面のSEM写真である。 試料7で作製した光学薄膜(x=0.5)の断面および表面のSEM写真である。 (a)〜(d)は、それぞれ、試料3(x=0.05)、試料5(x=0.10)、試料6(x=0.30)および試料7(x=0.50)で作製した光学薄膜の断面のSEM写真である。 実施例1における蒸着原料のランタンとガドリニウムの合計モル数に対するガドリニウムのモル比と、光学薄膜表面の表面粗さとの関係を示す図である。 実施例1における蒸着原料のランタンとガドリニウムの合計モル数に対するガドリニウムのモル比と、光学薄膜の膜密度との関係を示す図である。 実施例1で作製した光学薄膜のX線回折パターンを示す図である。 実施例2でシュミレーションした、波長190〜250nmの光に対する反射防止膜の反射率を示す図である。 実施例3でシュミレーションした、波長190〜250nmの光に対する誘電体ミラーの反射率を示す図である。 実施例4における露光装置の構成を示す概略図である。 実施例4における露光装置を用いた露光工程を含む、半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。 実施例4における露光装置を用いた露光工程を含む、液晶表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
つぎに、本発明の光学薄膜およびその製造方法について、実施例を挙げて詳細に説明する。
[蒸着原料の作製]
蒸着原料の合成には、特開2009-51966号公報に記載される水熱合成法により生成したフッ化ランタン(LaF)およびフッ化ガドリニウム(GdF)の微結晶粒子を使用した。蒸着原料におけるランタン(La)とガドリニウム(Gd)の合計モル数に対するガドリニウム(Gd)のモル比(Gd/(La+Gd)、以下、適宜xと称する)が所定の値となるように、LaFおよびGdFの微結晶粒子を秤量して混合し、水に分散させた。得られた分散液を乾燥して粉末を取り出し、円柱状ペレットに成形して、冷間等方圧加圧法(CIP法)により50〜100MPaに加圧した。この成形体を温度800〜900℃に設定した電気炉において1時間加熱して高温焼結した。本焼結体を粉砕し、粉砕片をふるいによって大きさ1〜4mm程度に分級した。この粉砕片を蒸着原料として成膜に使用した。
[光学薄膜の形成]
光学薄膜の成膜は金属ボートを用いて抵抗加熱式の真空蒸着法により行った。基板は平行平板形状の石英ガラス(Φ30mm)を使用し、成膜前に十分な洗浄を行った。成膜中は、基板を赤外線ヒータにより約300℃に加熱しつつ蒸着をおこなった。この際、水晶振動子によって蒸着レートおよび膜厚をモニターしながら成膜した。蒸着レートは試料1〜6については5Å/s、試料7〜12については2Å/sとし、膜厚は約100nmとした。蒸着時の真空度は4.0×10−4Paとした。
試料1〜12において光学薄膜の形成に用いた蒸着原料のLaとGdのモル比を表1に示す。
Figure 0005526745
[蒸着原料と光学薄膜の組成比較]
エネルギー分散型蛍光X線(EDX)分析法により、試料1〜12の光学薄膜中のLaとGdの合計モル数に対するGdのモル比を測定した。蒸着原料中のGdモル比(横軸)と、その蒸着原料を用いて作製した光学薄膜中のGdモル比(縦軸)の関係を図1に示す。図1において、各試料の測定結果が傾き1の直線を示すことから、光学薄膜中のGdのモル比は、蒸着原料中のGdのモル比とほぼ一致することがわかる。
この結果から、所望の組成比の混合物を蒸着原料として用いることにより、蒸着原料と同組成比の光学薄膜が得られることがわかった。本実施例のように、混合物を蒸着原料とすると、蒸着源を2つ用意して互いの蒸着レートを制御して同時多元成膜を行う必要がなく、簡便な手法で所望の組成の光学薄膜が得られる。
[薄膜の屈折率測定]
各光学薄膜の波長550nmおよび193nmにおける屈折率を測定した。屈折率は、各光学薄膜試料の分光透過率と反射率を測定し、その結果からForouhi−Bloomerモデルに基づいて算出した。LaとGdの合計モル数に対するGdのモル比xと、光学薄膜の屈折率の関係を図2に示す。更に比較のため、図2に下記(式1)により求められる、GdFおよびLaFの単成分からなる薄膜の屈折率をそれらのモル分率によって平均した平均屈折率、すなわち屈折率に加成性が成立する場合の予測値も直線として示す。
Figure 0005526745
ave:薄膜の平均屈折率
LaF3:LaF薄膜の屈折率
GdF3: GdF薄膜の屈折率
図2より、波長550nmおよび波長193nmにおける光学薄膜の屈折率は、Gdのモル比xの増加に伴い高くなり、Gdのモル比xが0.5付近で最大となることがわかる。波長550nmにおける屈折率は、Gdのモル比xが0.1を超え0.8までの範囲で、平均屈折率より高い屈折率を示した。また、この範囲の波長550nmにおける屈折率は、LaF薄膜の屈折率およびGdF薄膜の屈折率より高い値を示す。また、波長193nmにおける屈折率は、Gdのモル比xが0.01〜0.95の範囲で、平均屈折率より高い屈折率を示し、更に、LaF薄膜の屈折率およびGdF薄膜の屈折率と同等以上の屈折率であった。以上から、LaF−GdF系薄膜は、少なくともGdのモル比xが0.01〜0.95の範囲において、波長200nm以下の光学薄膜に用いる高屈折材料として、従来の高屈折率材料よりも高い屈折率を有することが分かる。
[薄膜の表面および断面の観察]
各薄膜試料の表面および断面の観察を高分解能走査電子顕微鏡(SEM)を用いて行った。試料1(x=0)および試料7(x=0.5)の表面および断面のSEM写真を図3および図4にそれぞれ示す。また、試料3(x=0.05)、試料5(x=0.1)、試料6(x=0.3)および試料7(x=0.5)の断面のSEM写真を図5(a)〜(d)にそれぞれ示す。
図3に示すように、Gdのモル比xが0、つまりGdFを含まないLaF単独成分の光学薄膜は、おおよそ60nm程度の大きさをもつ結晶状の突起が密集していた。これに対し、図4に示す、Gdのモル比xが0.5の光学薄膜は、密集する突起部が細かくなり(約2〜30nm)、粒子の境界が不明瞭でいくつかの柱同士が融合していた。更に、Gdのモル比xが0.5の光学薄膜は、薄膜内部の構造の変化に伴い、LaF単独成分の薄膜と比較して、光学薄膜の表面の粗さが小さくなっていることが観察できた。
図5に示すように、Gdのモル比xが大きくなるにしたがって柱状結晶間の境界が不明瞭となり、Gdのモル比が0.3以上では明確な柱状構造が観察できなくなり、薄膜内部の微細構造に変化が生じることがわかった。以上の観察結果から、少なくともガドリニウムのモル比xが0.3以上の薄膜では、柱状結晶と柱状結晶の間隙が減少し、薄膜が高密度化していることがわかる。
図2において、LaF−GdF系薄膜の屈折率が平均屈折率より高くなる理由は、図3〜5のSEM写真が示すように、LaとGdが共存する薄膜ではLaF単一相の薄膜にみられる柱状結晶が微細化または消滅し、膜が緻密化して空隙が減少するなど、膜構造の変化が生じるためと考えられる。
[薄膜の表面粗さ測定]
次に、各薄膜試料の表面粗さを走査プローブ顕微鏡(SPM)により測定した。測定領域は1μm×1μmとした。LaとGdの合計モル数に対するGdのモル比xと、表面粗さ(Ra)との関係を図6に示す。
図6に示すように、まず、Gdのモル比xが増加すると表面粗さRaは低下し、さらにxが増加すると表面粗さRaは増加に転じる。Gdのモル比xが0.7ではLaF単独成分の薄膜(x=0)と同等であり、更に、Gdのモル比xの増加に伴いRaは増加する。
図6から、Gdのモル比xが、少なくとも0.7までの範囲の薄膜の表面粗さxは、LaF単独成分の薄膜およびGdF単独成分の薄膜の表面粗さの同等以下であることがわかる。更に、ガドリニウムのモル比xが0.1から0.5の範囲では、表面粗さは約1nmであり、GdF単独成分の薄膜(x=100)の表面粗さに対して約70%、LaF単独成分の薄膜(x=0)の表面粗さに対して約35%、表面粗さが減少している。
このように、LaF−GdF系薄膜の表面粗さが小さくなる理由は、図3〜5のSEM写真が示すように、LaとGdの共存によってLaFの薄膜にみられる柱状結晶が微細化または消滅し、膜が緻密化して空隙が減少するなど、膜構造の変化が生じるためと考えられる。LaF単独成分の薄膜と比較して、Gdのモル比xが0.5の薄膜の表面の粗さが小さくなっているという薄膜表面観察の結果(図3および4のSEM写真)は、図6に示す表面粗さの測定結果と一致する。
[膜密度]
次に、各薄膜の膜密度をX線反射率法(XRR)を用いて測定した。LaとGdの合計モル数に対するGdのモル比xと、膜密度との関係を図7に示す。更に比較のため、図7に下記(式2)により求められる、GdFおよびLaFの単成分からなる薄膜の膜密度をそれらのモル分率によって平均した平均膜密度、すなわち膜密度の予測値も直線として示す。
Figure 0005526745
ρave :薄膜の平均膜密度
ρLaF3:LaF薄膜の膜密度
ρGdF3: GdF薄膜の膜密度
図7より、膜密度は、蒸着原料中のGdのモル比xの増加に伴い高くなり、ピークを迎え、それ以降は、Gdのモル比xの増加に伴い低下することがわかる。また、GdとLaを混合した全ての範囲において、各薄膜の膜密度は、理論膜密度よりも高い。Gdモル比xが0.7の薄膜では、理論膜密度に対して約5%高密度化した。
図7において、LaF−GdF系薄膜の膜密度が平均膜密度より高くなる理由は、図3〜5のSEM写真が示すように、LaとGdの共存によってLaF単独成分の薄膜にみられる柱状結晶が微細化または消滅し、膜が緻密化して空隙が減少するなど、膜構造の変化が生じるためと考えられる。
以上の評価結果から、以下のことがわかる。図2から、LaF−GdF系薄膜は、高屈折材料として用いられるLaF単独成分の薄膜およびGdF単独成分の薄膜と同等以上の高屈折の薄膜であることがわかる。高屈折率の薄膜の使用条件を考慮すると、高屈折率であるという他に、膜密度が高く、表面粗さが小さい薄膜であることが好ましい。図6から、表面粗さを低減するためには、蒸着原料中のGdのモル比xが0.01〜0.7であることが好ましく、更に、0.1〜0.5が特に好ましい。図3〜5に示す薄膜の断面観察および図7に示す薄膜の密度測定結果から、明確に薄膜の結晶構造が変化して膜密度を向上させるには、少なくともGdのモル比xが0.3以上が好ましい。以上を総合的に勘案すると、高屈折率材料として用いる光学薄膜は、LaとGdの合計モル数に対するGdのモル比xの下限は、0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.3以上であることが更に好ましい。また、LaとGdの合計モル数に対するGdのモル比xの上限は、0.95以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。
本実施例の光学薄膜は、緻密な構造をとるので空気中の水分や酸素などによる酸化・水酸化が抑制され、長期間に渡って安定した光学性能を維持することができる。また、フッ化物からなる高密度かつ高屈折率の薄膜でありながら、フッ素系ガスの安全対策や、特別なイオンビーム照射装置等を必要とせず、従来の真空蒸着装置を用いて容易に製造することができるという特徴を有するものである。
[X線回折]
次に、実施例1において作製した各光学薄膜の結晶構造を解析するために、各光学薄膜のX線回折(XRD)を測定した。図8に、横軸を面間隔dとしたXRDの測定結果を示す。
図8において、●印のピークはLaF結晶に帰属されるピーク、×印のピークは、GdF結晶に帰属されるピークを示す。Gdのモル比xが、0〜0.7までの薄膜では、主なピークはLaF結晶のXRDパターンに帰属できる。更に、Gdのモル比xが増加した、Gdのモル比xが0.8の薄膜では、LaF結晶のピークに加えて、GdF結晶のピークもみられる。Gdのモル比xが0.9〜1.0の薄膜では、主なピークはGdF結晶のXRDパターンに帰属できる。また、Gdのモル比xが0〜0.7までの薄膜では、Gdのモル比xの増加に伴い、LaFの(002)面の面間隔dが徐々に小さくなっている。
以上の結果から、Gdのモル比xが0.7以下のLaF−GdF系薄膜は、LaF結晶のLaサイトにGdが固溶した(La、Gd)F固溶体であるといえる。この範囲の薄膜はLaF型の結晶構造をとっているが、GdがLaを置換する形で固溶しているため結晶構造が歪み、(002)面の面間隔dが徐々に小さくなったと考える。この結晶構造の歪みが、図3〜5のSEM写真が示す、柱状結晶の微細化、膜の緻密化等の膜構造の変化の原因と考えられる。光学薄膜中のLaとGdの合計モル数に対するGdのモル比が0.3〜0.7の光学薄膜は、(La、Gd)F固溶体であり、そのため、屈折率および膜密度が高く、表面粗さが小さいと考える。
実施例1で作製した薄膜(x=0.5)を用いた多層膜からなる反射防止膜を想定し、その光学特性についてシミュレーションを行った。基板、反射防止膜各層の材料および膜厚を表2に示す。ここで、λは設計中心波長であり、193.4nmとした。光学膜厚(屈折率n×膜厚d)は、中心波長λに対する比で示した。実施例1で作製した薄膜は、第2層および第4層に用いた。尚、媒体は空気とした。
Figure 0005526745
反射防止膜の光学特性として、波長190〜250nmにおける反射率を計算し、図9にその結果を示す。本実施例の反射防止膜の反射率は、中心波長λ(193.4nm)で0.002%以下であり、反射防止性能を有している。
実施例1で作製した光学薄膜は緻密で膜密度が高い。したがって、本実施例の反射防止膜は、曲率の大きなレンズ表面へ形成しても、レンズ周辺部において発生する、膜密度の低下に起因する特性の悪化が軽減される。
実施例1で作製した光学薄膜(x=0.5)を用いた多層膜ミラー(レーザミラー)を想定し、その光学特性についてシミュレーションを行った。基板は石英ガラスとし、その上に高屈折率材料および低屈折率材料を交互に積層することを20回繰り返した構造を想定した。高屈折率材料および低屈折率材料は、それぞれ、実施例2で作製した光学薄膜(x=0.5)およびフッ化マグネシウムとした。設計中心波長λは193.4nmとし、いずれの光学膜厚(屈折率n×膜厚d)も中心波長λの1/4とした。また、媒質は空気とした。
多層膜ミラーの光学特性として、波長190〜250nmにおける反射率を計算し、図10にその結果を示す。本実施例の多層膜ミラーの反射率は、中心波長λ(193.4nm)で98%以上の高い反射率を示す。
実施例2で作製した光学薄膜は緻密で表面粗さが小さい。したがって、本実施例のように数十層からなる多層膜ミラーを構成した場合でも、従来の光学薄膜を用いたものより表面の凹凸が抑制され、散乱損失が低減される。
次に、実施例2の反射防止膜が形成された光学レンズおよび実施例3の多層膜ミラーを用いた露光装置および露光方法を含むデバイスの製造方法について説明する。
[露光装置]
図11に示すように、露光装置100は、主に光源1、照明光学系IL、レチクルRを保持するレチクルステージRS、投影光学系PLおよびウェハWを保持するウェハステージWSを備える。図11には、投影光学系PLの基準光軸AXを示す。図11において、投影光学系PLの基準光軸AXに平行にZ軸を、基準光軸AXに垂直な面内において図11の紙面に平行にY軸を、図11の紙面に垂直にX軸をそれぞれ設定している。
光源1は、紫外領域の照明光を供給するArFエキシマレーザ光源を備えている。光源1から射出された光は、照明光学系ILを介して、所定のパターンが形成されたレチクルRを重畳的に照明する。なお、光源1と照明光学系ILとの間の光路はケーシング(不図示)で密封されており、光源1から照明光学系IL中の最もレチクル側の光学部材までの空間は、露光光の吸収率が低い気体であるヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。
レチクルRは、レチクルホルダRHを介して、レチクルステージRS上においてXY平面に平行に保持されている。レチクルRには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。レチクルステージRSは、図示を省略した駆動系の作用により、レチクル面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はレチクル移動鏡RMを用いた干渉計RIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
レチクルRに形成されたパターンからの光は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にレチクルパターン像を形成する。ウェハWは、ウェハホルダテーブルWTを介して、ウェハステージWS上においてXY平面に平行に保持されている。そして、レチクルR上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上ではX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状の露光領域にパターン像が形成される。ウェハステージWSは、図示を省略した駆動系の作用によりウェハ面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はウェハ移動鏡WMを用いた干渉計WIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
本実施例の照明光学系ILは、光源1からの露光光を反射させる複数のミラーからなるミラー光学系2を備える。ミラー光学系2には、実施例3の多層膜ミラーを用いる。また、本実施例の投影光学系PLは、複数のレンズからなるレンズ光学系3を備える。レンズ光学系3のレンズの表面には、実施例2の反射防止膜が形成されている。
本実施例の露光装置を構成する光学系は、実施例2の反射防止膜及び実施例3の多層膜ミラーを備えているので、従来の光学系よりも反射損失及び散乱損失が低減され、耐久性に優れたものになっている。したがって本実施例の露光装置は従来の露光装置よりもスループットが高く、長期間安定して稼動させることができるという特徴を有する。
[露光方法を含むデバイスの製造方法]
上述の露光装置100は、光源1および照明光学系ILによってマスク(レチクルR)を照明し(照明工程)、投影光学系PLを用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板(ウェハW)に露光する(露光工程)ことができる。露光した基板を現像し、加工及び組み立てることにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。
以下、本実施形態の露光装置100を用いてウェハWに所定の回路パターンを露光する工程を含む、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを製造する方法を図12のフローチャートを参照して説明する。
先ず、図12のステップ1において、ウェハ上に金属膜を蒸着する。次のステップ2において、そのウェハ上の金属膜上にフォトレジストを塗布する。その後、ステップ3において、図11に示す露光装置100を用いて、マスク上のパターンの像をその投影光学系を介して、ウェハ上の各ショット領域に順次露光転写する。その後、ステップ4において、ウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ5において、ウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行う。これにより、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスを製造する。
なお、ステップ1〜ステップ3では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行ってもよい。
更に、本実施形態の露光装置100を用いて、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を製造することもできる。以下、図13のフローチャートを参照して説明する。図13において、パターン形成工程(ステップ11)では、本実施形態の露光装置100を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、感光性基板上には複数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程(ステップ12)へ移行する。
カラーフィルター形成工程(ステップ12)では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に複数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程(ステップ12)の後に、セル組み立て工程(ステップ13)が実行される。セル組み立て工程(ステップ13)では、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程では、例えば、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
その後、モジュール組み立て工程(ステップ14)にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。
なお、本実施例では、マスクおよび基板を投影光学系に対して相対移動させながら基板の各露光領域に対してマスクパターンをスキャン露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置を用いた例である。しかしながら、これに限定されることなく、マスクと基板とを静止させた状態でマスクのパターンを基板へ一括的に転写し、基板を順次ステップ移動させて各露光領域にマスクパターンを逐次露光するステップ・アンド・リピート方式の露光装置を用いることができる。また、本実施例では、実施例2の反射防止膜が形成された光学レンズおよび実施例3の多層膜ミラーを含む露光装置を用いた例を説明したが、本発明の態様の光学薄膜を有する光学部品が、光学レンズまたは多層膜ミラーの一方のみである露光装置を用いることもできる。
100 露光装置
1 光源
2 ミラー光学系
3 レンズ光学系
IL 照明光学系
R レチクル
RS レチクルステージ
PL 投影光学系
W ウェハ
WS ウェハステージ
AX 基準光軸
RH レチクルホルダ
RS レチクルステージ
RM レチクル移動鏡
RIF 干渉計
WT ウェハホルダテーブル
WM ウェハ移動鏡
WIF 干渉計

Claims (16)

  1. 光学薄膜であって、
    ランタンとガドリニウムのフッ化物を含み、
    前記ランタンと前記ガドリニウムの合計モル数に対する前記ガドリニウムのモル数の比が0.1〜0.7である光学薄膜。
  2. 前記ランタンと前記ガドリニウムの合計モル数に対する前記ガドリニウムのモル数の比が0.3〜0.7である請求項1に記載の光学薄膜。
  3. 前記フッ化物が、(La,Gd)F固溶体である請求項1または2に記載の光学薄膜。
  4. 前記光学薄膜の波長193nmにおける屈折率が、フッ化ランタンのみからなる薄膜の屈折率より高く、且つフッ化ガドリニウムのみからなる薄膜の屈折率より高い請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学薄膜。
  5. 前記光学薄膜の表面粗さが、フッ化ランタンのみからなる薄膜の表面粗さより小さく、且つフッ化ガドリニウムのみからなる薄膜の表面粗さより小さい請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学薄膜。
  6. 光学薄膜の製造方法であって、
    基板を用意することと、
    ランタンとガドリニウムの合計モル数に対する前記ガドリニウムのモル数の比が0.1〜0.7となるように、フッ化ランタンとフッ化ガドリニウムを混合した蒸着原料を用意することと、
    前記基材上に前記蒸着原料を蒸着することを含む光学薄膜の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記光学薄膜と、
    前記光学薄膜より屈折率の低い低屈折率薄膜を含む光学多層膜。
  8. 前記光学薄膜と前記低屈折率薄膜を交互に積層した多層膜である請求項7記載の光学多層膜。
  9. 前記光学多層膜が、反射防止膜である請求項8記載の光学多層膜。
  10. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記光学薄膜を表面に有する光学部品。
  11. 請求項7〜9のいずれか一項に記載の前記光学多層膜を表面に有する光学部品。
  12. 前記光学部品が、レンズである請求項11に記載の光学部品。
  13. 前記光学部品が、レーザミラーである請求項11記載の光学部品。
  14. 請求項10〜13のいずれか一項に記載の光学部品を備える露光装置。
  15. 前記露光装置は、
    波長200nm以下のレーザ光源と、
    前記レーザ光を所望の方向へ反射させるレーザミラーを有する照明光学系と、
    所定のパターンが形成されたマスクを保持するマスクステージと、
    複数のレンズを有する投影光学系と
    前記マスクのパターンが投影される基板を保持する基板ステージを備えており、
    前記レーザミラーおよび/または前記レンズが、前記光学部品である請求項14記載の露光装置。
  16. 請求項14または15に記載の露光装置を用いて露光を行う露光方法。
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