JP2000147198A - 多層膜反射鏡及びその製造方法 - Google Patents

多層膜反射鏡及びその製造方法

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JP2000147198A JP11206837A JP20683799A JP2000147198A JP 2000147198 A JP2000147198 A JP 2000147198A JP 11206837 A JP11206837 A JP 11206837A JP 20683799 A JP20683799 A JP 20683799A JP 2000147198 A JP2000147198 A JP 2000147198A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来よりも反射率を増大させた多層膜反射鏡
を得ることができる多層膜反射鏡の製造方法を提供する
こと。 【解決手段】 スパッタリング法を用いて基板8の上
に、屈折率が相対的に小さい第1物質の層(第1物質
層)と屈折率が相対的に大きい第2物質の層(第2物質
層)とを交互に複数回積層することにより多層膜反射鏡
を製造する方法において、前記第1物質層を形成した
後、前記第2物質層を形成する前に、形成した前記第1
物質層の表面にイオンビーム11を照射して表面を平滑
化する工程を設けるか、前記第2物質層を形成した後、
前記第1物質層を形成する前に、形成した前記第2物質
層の表面にイオンビーム11を照射して表面を平滑化す
る工程を設けるか、或いは、前記両工程を設けることを
特徴とする多層膜反射鏡の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線または中性子
線の反射鏡として用いられる多層膜反射鏡及びその製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】X線領域における物質の屈折率は、真空
の屈折率(=1)との差が非常に小さいので、屈折を利
用したレンズを使用することができない。また、反射を
利用しようとしても反射率は著しく低い。なお、屈折率
は1よりも僅かに小さいので、平滑な表面にすれすれの
小さい角度でX線を斜入射させると、屈折率によって決
まるある角度(全反射臨界角)以下では全反射が起こ
り、高い反射率を示すようになる。このようなミラー
は、斜入射鏡と呼ばれている。
【0003】しかし、斜入射鏡はX線を反射させる角度
の制限が大きいので、収差を補正した複雑な光学系を構
成することができないという欠点を有する。そこで、反
射面を多数設けて各反射面で反射したX線の位相を揃え
ることにより、全体として高い反射率を得る多層膜反射
鏡が開発された。この多層膜反射鏡は、屈折率が相対的
に小さい第1物質の層(第1物質層)と屈折率が相対的
に大きい第2物質の層(第2物質層)とを基板上に交互
に複数回積層したもの(交互多層膜を基板上に設けたも
の)である。
【0004】なお、基板上に隣接して設ける層は、第1
物質層と第2物質層のどちらでも構わない。例えば、基
板上にMo/Siの交互多層膜を設けた多層膜反射鏡を
用いると、波長13nmの軟X線を60%以上の反射率
で垂直に反射することも可能である。
【0005】このような多層膜反射鏡は、X線望遠鏡、
X線顕微鏡、X線縮小投影露光装置またはX線レーザー
共振器など、様々なX線光学の分野で利用されている。
一方、中性子線に対する物質の屈折率も非常に1に近い
ので、X線と同様に多層膜反射鏡が利用されている。中
性子線は波長が短い(エネルギーが大きい)ので、垂直
に反射することはできないが、斜入射鏡の表面に多層膜
を形成すると、全反射臨界角を拡大することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来技術では、実際に作製した多層膜反射鏡の反
射率が計算上予想される値よりも低いという問題があ
り、この問題は反射対象の波長が短くなるほど顕著であ
った。本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであ
り、従来よりも反射率を増大させた多層膜反射鏡を得る
ことができる多層膜反射鏡及びその製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】そのため、本発明は第一
に「スパッタリング法を用いて基板の上に、屈折率が相
対的に小さい第1物質の層(第1物質層)と屈折率が相
対的に大きい第2物質の層(第2物質層)とを交互に複
数回積層することにより多層膜反射鏡を製造する方法に
おいて、前記第1物質層を形成した後、前記第2物質層
を形成する前に、形成した前記第1物質層の表面にイオ
ンビームを照射して表面を平滑化する工程を設けるか、
前記第2物質層を形成した後、前記第1物質層を形成す
る前に、形成した前記第2物質層の表面にイオンビーム
を照射して表面を平滑化する工程を設けるか、或いは、
前記両工程を設けることを特徴とする多層膜反射鏡の製
造方法(請求項1)」を提供する。
【0008】また、本発明は第二に「前記イオンビーム
のイオン種は、不活性ガスであることを特徴とする請求
項1記載の製造方法(請求項2)」を提供する。また、
本発明は第三に「前記イオンビームのエネルギーは、50
eV以上1000eV以下であることを特徴とする請求項1また
は2記載の製造方法(請求項3)」を提供する。
【0009】また、本発明は第四に「前記基板は接地電
位にあるか、或いは前記基板には直流バイアス電圧が印
加されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
に記載の製造方法(請求項4)」を提供する。また、本
発明は第五に「スパッタリング法を用いて基板の上に、
屈折率が相対的に小さい第1物質の層(第1物質層)と
屈折率が相対的に大きい第2物質の層(第2物質層)と
が交互に積層された多層膜反射鏡において、イオンビー
ムが照射され、平滑化された前記第1物質層と前記第2
の物質層との界面を有することを特徴とする多層膜反射
鏡(請求項5)」を提供する。
【0010】また、本発明は第六に、「前記第1物質層
の膜厚と前記第2物質層の膜厚の和である周期長をdと
し、前記基板の表面粗さRMS値をσsubとした場合、
前記界面粗さRMS値であるσintは、本請求項の後述
の式1又は式2に示す範囲まで平滑化された界面を有す
ることを特徴とする請求項5に記載の多層膜反射鏡。式
1:d≧5nmの多層膜では、σint−σsub<0.2n
m 式2:d<5nmの多層膜では、σint−σsub<0.5
nm(請求項6)」 を提供する。
【0011】また、本発明は第七に、「前記第1物質層
を形成する物質と前記第2物質層を形成する物質とが前
記界面で互いに拡散する領域が1nm以下になる様に平
滑された前記界面を有することを特徴とする請求項5に
記載の多層膜反射鏡(請求項7)。」を提供する。ま
た、本発明は第八に、基板の上に、屈折率が相対的に小
さい第1物質の層(第1物質層)と屈折率が相対的に大
きい第2物質の層(第2物質層)とが交互に積層された
多層膜反射鏡において、前記多層膜の周期長をdとし、
前記基板の表面粗さRMS値をσsubとした場合、前記
界面の粗さRMS値であるσintは、本請求項の後述の
式3又は式4に示す範囲であることを特徴とする請求項
5に記載の多層膜反射鏡。
【0012】式3:d≧5nmの多層膜では、σint−
σsub<0.2nm 式4:d<5nmの多層膜では、σint−σsub<0.5
nm(請求項8)」 を提供する。また、本発明は第9に、基板の上に、屈折
率が相対的に小さい第1物質の層(第1物質層)と屈折
率が相対的に大きい第2物質の層(第2物質層)とが交
互に積層された多層膜反射鏡において、前記第1物質層
を形成する物質と前記第2物質層を形成する物質とが拡
散する領域が1nm以下である前記第1物質層と前記第
2の物質層との界面を有することを特徴とする多層膜反
射鏡(請求項9)。」を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者は、前記従来技術におけ
る、実際に作製した多層膜反射鏡の反射率が計算上予想
される値よりも低いという問題(反射対象の波長が短く
なるほど顕著)の主たる原因は、多層膜の界面(第1物
質層と第2物質層の界面)粗さにあると考えた。
【0014】多層膜反射鏡の界面粗さによる反射率の低
下は次の式5で与えられる。 R/R0=exp[−{(4πσsinθ)/λ}2]・・・・式5 ここで、R0:計算上の理想的な多層膜反射鏡の反射率 R:実際に作製した多層膜反射鏡の反射率 σ:界面粗さの二乗平均値 θ:斜入射角(法線ではなく反射面から測った入射角) λ:反射対象の波長 また、本発明者は、界面に相互拡散層が形成されると、
屈折率のコントラストが低下するので反射率は低下する
と考えた。
【0015】ところで、多層膜を設ける基板の表面粗さ
が充分小さくなければ、多層膜反射鏡の界面粗さを小さ
く抑えることはできないので、多層膜反射鏡の基板には
表面を0.1〜0.3nmRMS程度にまで平滑に研磨
した基板を用いる。しかし、このように非常に平滑な基
板を用いて、その基板上に従来技術により多層膜を形成
しても、多層膜の界面粗さは、前記平滑基板の表面粗さ
よりも大きな数値になってしまう。
【0016】これは、平滑な基板上に多層膜の各層(第
1層及び第2層)を形成するときに、完全に下地(平滑
基板)と同じ形状には層が成長しないためである。良く
知られているように、薄膜の成長過程においては、基板
表面に付着した原子が基板表面上を移動しながら互いに
集合して成長核が形成されたり、再び分解したりする現
象が生じる。そして、この成長核が一定の大きさを越え
ると安定になり、更に大きく成長していく。
【0017】そのため、薄膜形成の初期過程では不連続
な島状の成長が起こり、ある程度の厚さにまで成長して
初めて島同士が繋がって連続的な薄膜となる(例えば、
金原あきら、藤原英夫著「薄膜」裳華房 1979年
参照)。このような成長過程は、基板へ入射する原子の
運動エネルギーに大きく依存し、運動エネルギーが比較
的小さい(0.1eV以下)蒸着法による場合と比較し
て、運動エネルギーが大きい(数十eV)スパッタリン
グ法による場合の方が薄くても連続的で表面粗さの小さ
い薄膜が得られる。
【0018】X線用または中性子線用の多層膜反射鏡で
は、交互多層膜を構成する各層の厚さが数nm〜数十n
mと小さく、不連続な島状の状態から連続な薄膜になる
厚さと同程度である。従って、各層の成長の初期過程が
界面の粗さの大小に大きく影響することになり、蒸着法
により作製した多層膜反射鏡よりも、スパッタリング法
により作製した多層膜反射鏡の方が通常は高い反射率が
得られる。
【0019】なお、蒸着法により作製した多層膜反射鏡
の界面粗さを低減する手法として、各層を形成した後に
その表面をイオンビームで研磨する方法が研究されてい
る。例えば、E. Spiller, "Smoothing of multilayer x
-ray mirrors by ion polishing", Appl. Phys. Lett.,
54 (1989) 2293 には、蒸着法によるRh/C多層膜に
イオンビーム研磨を施すと、イオンビーム研磨を施さな
かったものと比べて、波長4.8nmにおける反射率が約2
倍向上したことが報告されている。
【0020】この他にも、蒸着法とイオンビーム研磨を
組み合わせた多層膜の作製は多数報告されている。しか
しながら、このような方法を用いても、スパッタリング
法により作製した多層膜反射鏡と同等またはそれ以下の
反射率しか得ることができなかった。そこで、本発明者
らは、本来蒸着法よりも高い反射率を得ることができる
スパッタリング法にイオンビーム研磨を組み合わせるこ
とにより、通常のスパッタリング法による場合よりも更
に高い反射率を有する多層膜反射鏡を製造することとし
た。
【0021】即ち、スパッタリング法を用いて基板の上
に、屈折率が相対的に小さい第1物質の層(第1物質
層)と屈折率が相対的に大きい第2物質の層(第2物質
層)とを交互に複数回積層することにより多層膜反射鏡
を得る場合、前記第1物質層を形成した後、前記第2物
質層を形成する前に、形成した前記第1物質層の表面に
イオンビームを照射して表面を平滑化する工程を設ける
か、前記第2物質層を形成した後、前記第1物質層を形
成する前に、形成した前記第2物質層の表面にイオンビ
ームを照射して表面を平滑化する工程を設けるか、或い
は、前記両工程を設けることとした。
【0022】従って、本発明によれば、従来よりも反射
率を増大させた多層膜反射鏡を得ることができる。本発
明にかかる製法(一例)により多層膜反射鏡を製造する
際には、まず表面を充分に平滑に研磨した基板を用意す
る。基板の材料は表面が平滑であれば特に限定されない
が、石英等のガラスやシリコン、シリコンカーバイドな
どが使用される。
【0023】次に、基板表面に、スパッタリング法によ
り物質Aの層(前記第1物質層または第2物質層)を形
成する。ここで、スパッタリング法とは、板状部材(タ
ーゲットと称す)にアルゴン等の不活性ガスのイオンを
加速して衝突させ、その運動エネルギーにより前記ター
ゲットの材料を原子状に蒸発させる方法である。蒸着法
では熱により材料を蒸発させるので、その運動エネルギ
ーは加熱温度によって決まり0.1eV以下であるが、スパ
ッタリング法ではイオンの衝突エネルギーにより、ター
ゲット材料の原子が叩き出されるので、その運動エネル
ギーは数eV〜数十eVとなり、蒸着法の場合よりもかなり
大きな値となる。
【0024】そのため、基板に付着した原子の基板表面
における動きは、蒸着法よりもスパッタリング法の方が
大きく、より安定な位置に落ち着くことができるので、
表面の凹凸が小さい薄膜が形成される。しかし、スパッ
タリング法であっても、成膜後の薄膜表面は、図2
(a)に示すように、原子レベルでは完全に平坦ではな
く局所的な凹凸が生じている。図2において、白丸は物
質Aを構成する原子、黒丸は物質Bを構成する原子を模
式的に示す。
【0025】ここで、物質A層の上に物質Bの層をスパ
ッタリング法により形成すると、物質Aと物質Bが互い
に混じり合いにくい性質を有する場合は、物質Aからな
る薄膜の表面に形成されていた凹凸を埋めるように物質
Bの原子が付着して、図2(b)に示すように粗さのあ
る界面が形成される。また、物質Aと物質Bが互いに混
じり合いやすい性質を有する場合は、物質Aからなる薄
膜表面の凹凸部分は、その周辺を取り巻く原子の数が少
ないためにより物質Bと拡散しやすく、図2(c)に示
すように相互拡散層を形成する。
【0026】実際には、この二つの現象が同時に起こっ
て複雑な界面が形成され、このような界面粗さや相互拡
散層は、多層膜反射鏡の反射率を劣化させる主要因とな
る。そこで、本発明にかかる製造方法(一例)では、物
質A層を形成した後に、その表面にアルゴン、キセノ
ン、クリプトン等の不活性ガスのイオンを照射して表面
を平滑化する。これをイオンビーム研磨という。
【0027】なお、不活性ガスを用いるのは、薄膜表面
と化学的な反応を生じることがなく、運動エネルギーの
伝搬のみを行わせるためである。図2(a)に示すよう
な薄膜表面に不活性ガスのイオンを照射すると、凸部を
構成する原子が衝突により取り去られるので、或いは凸
部を構成する原子に基板表面を移動する運動エネルギー
が与えられて該原子が凹部へ移動するので、図2(d)
に示すように、表面を平滑にすることができる。
【0028】このとき、イオンに用いる元素の種類、入
射エネルギー、入射角度が重要なパラメータとなり、多
層膜反射鏡の交互多層膜を構成する物質に対して、それ
ぞれ最適化することが好ましい。例えば、入射エネルギ
ーは50eV〜1000eVの範囲であることが好ましい。また、
基板は、入射イオンの電荷を逃がすために接地されてい
るか、或いは直流のバイアス電位が印加されていること
が好ましい。
【0029】イオン源から引き出すことができるイオン
の運動エネルギーは、一般にあまり大きく変化させるこ
とはできないので、基板バイアスを併用することにより
基板へ入射するイオンのエネルギーの選択範囲を拡大す
ることができる。以上のように、本発明にかかる製法に
より多層膜反射鏡を製造すれば、多層膜反射鏡の反射率
を劣化させる主要因となる界面粗さや相互拡散層を解消
または低減できるので、従来よりも反射率を増大させた
多層膜反射鏡を得ることができる。
【0030】なお、上述のように、各層を成膜後にイオ
ンビーム研磨を行う場合、第1物質層と第2物質層の界
面の粗さRMS値であるσintを次に示す範囲に収まる
まで、イオンビーム研磨を行うことが好ましい。例え
ば、第1物質層の厚さと第2物質層の厚さの和である周
期長が5nm以上である場合、基板表面の粗さRMS値
をσsubとすると、σint−σsub<0.2nmの範囲に
収めるまで研磨することが好ましい。
【0031】例えば、使用波長13.5nmで、第1物
質としてシリコン、第2物質としてモリブデンを用いた
多層膜反射鏡を考える。この波長におけるモリブデンと
シリコンを用いた多層膜の周期長は、ほぼ垂直入射で
6.8nm程度である。なお、このモリブデンとシリコ
ンからなる多層膜反射鏡は、反射理論値73%に対し
て、実際に製作される場合には67%の反射率しか稼げ
ない。
【0032】ところで、前述の通り基板は、表面粗さR
MS値が0.1nm程度のものを用いることができる。
そして、その基板表面に形成される各層の界面粗さは、
基板の表面粗さと成膜中に生じる粗さによって決まるの
で、少なくとも基板の表面粗さよりも大きくなる。しか
し、上述のように各層を成膜後にイオンビーム研磨を行
えば、成膜時に生ずる粗さ成分は、このイオンビーム研
磨により除去できるので、成膜後の膜表面の粗さRMS
値を0.3nmより小さくすることができる。
【0033】ところで、波長13.5nmにおける垂直
入射で使用する多層膜反射鏡の界面粗さの変化に対する
反射率の低下の割合を図3に示した。界面粗さのRMS
値が0.3nmのときには、界面粗さRMS値が0の場
合に比べて、8%程度低下した反射率を得ることができ
る。そして、この界面粗さのRMS値よりも小さい界面
粗さを有していれば、反射率が従来のもの比べて、高い
多層膜反射鏡を得ることができる。
【0034】特に、この波長域は後述する露光装置に用
いられる光である。そして、露光装置には、少なくとも
2枚以上の反射鏡が必要である。そこで、一枚一枚の反
射鏡の反射率を少しでも向上することで、全ての反射鏡
の反射した後の光量は、格段に向上することができる。
例えば、一枚の反射鏡の反射率をRから、ΔR分向上さ
せた場合、n枚の反射鏡からなる光学系全体の反射率
(透過率)は、次の式6に示す通りである。
【0035】
【数1】
【0036】このようにnRn−1ΔRも反射率が向上
するのである。本発明にかかる反射鏡は、このような複
数の反射鏡で構成される光学機器に対して有効な手段で
ある。また、周期長が5nm未満の場合は、σint−σs
ub<0.5nmの範囲に該当するまで界面をイオンビー
ム研磨することが好ましい。
【0037】前述の式5と次数が1の場合のBragg
の式を用いて、次に示す式7の用に変形することができ
る。 R/R0=exp{−(2πσ/d)2}・・・・式7 この式7からわかるように、多層膜の周期長が短くなる
と界面粗さの影響が急激におおきくなる。しかしなが
ら、前述のイオンビーム研磨を施すことにより、成膜時
に生ずる粗さは低減することができ、実際には成膜中に
生じる粗さを0.5nm以下に抑えることができる。
【0038】波長4.5nmで入射角60度の多層膜反
射鏡をモデルに考えると、周期長が4.5nmとなる。
このような多層膜反射鏡の界面粗さによる反射率の低下
をグラフにしたものを図4に示す。このように、周期長
が短く粗さの向上が期待できない波長域の反射鏡でも、
イオンビーム研磨を用いて最終的な界面粗さRMS値を
0.6nm以下にすることで、反射率の低下の割合を5
0%程度に抑えることができた。
【0039】なお、この波長はCuKα特性X線の波長
であり、実験室に使用できる軟X線波長として知られて
いる。多層膜反射鏡を構成する膜物質としては、ニッケ
ル・クロム合金と、炭素が用いられる。また、これより
僅かに波長の短い2.4nm〜4.4nmの範囲では、
水とタンパク質の吸収計数の差が大きいいわゆる「水の
窓」として知られており、生体試料観測用のX線顕微鏡
に使用される。
【0040】このように、本発明に係るイオンビーム研
磨を施すことにより界面粗さを低減した多層膜反射鏡を
用いることで、反射率の向上が得られる。このような多
層膜反射鏡を複数用いた光学機器、特に後述する露光装
置に用いた場合ではウェハーへの露光量が向上するので
露光処理能力が向上する。ところで、多層膜反射鏡の反
射率を低下させる要因には、他に前述のとおり界面拡散
層の発生がある。この界面拡散層の発生に対してイオン
ビーム研磨により低減させることができる。なお、生成
される拡散層が1nm以内に抑えられるようにイオンビ
ーム研磨を施すことが好ましい。図5に示すグラフは、
界面拡散層の厚さ毎に、波長に対する反射率特性を示し
たものである。また、膜種としては、モリブデンとシリ
コンとかならる多層膜で、周期長7.5nm、積層数5
0対、入射角20度の条件における波長に対する反射率
特性の変化を示している。
【0041】そして、図5は界面拡散層の厚さ毎に波長
に対する反射率特性を示しているが、この図5を見ると
わかるように、界面拡散層が0の多層膜の反射率に対し
て、界面拡散層が1nmまでは大体95%程度の反射率
を得ることができる。なお、界面拡散層が1nmよりも
大きくなると、拡散層の増加に対する反射率の低下の割
合が大きくなってしまう。このことから、界面拡散層が
1nm程度の多層膜反射鏡を得ることが好ましいことが
わかる。
【0042】次に、本発明にかかる多層膜反射鏡の製造
方法に使用する成膜装置の一例であるイオンビームスパ
ッタ装置(図1)と、該装置を用いた多層膜反射鏡の製
造について詳しく説明する。本装置では、真空チャンバ
ー9の中にスパッタ用イオン源1、ターゲット支持機構
3、基板ホルダー7、イオン研磨用イオン源10などが
設けられている。
【0043】ターゲット支持機構3には、少なくとも二
つの材料からなるターゲット4、5が装着されており、
ターゲット支持機構3は、いずれのターゲットもスパッ
タ用イオン源1に対向する位置に動かせるように回転機
構を備えている。スパッタ用イオン源1及びイオン研磨
用イオン源10には、カウフマン型イオン源、バケット
型イオン源、ECRイオン源等のイオン源を使用するこ
とができる。
【0044】多層膜反射鏡を製造する際は、図1(a)
に示すように、まずスパッタ用イオン源1から不活性ガ
スのイオン2を引き出して、ターゲット4(またはター
ゲット5)へ照射する。そうすると、ターゲット4(ま
たはターゲット5)を構成する原子がイオンの衝突によ
って叩き出され、原子状の蒸気6が発生する。ターゲッ
ト4(またはターゲット5)に対向する位置には、基板
8を装着した基板ホルダー7が設置されており、蒸気6
は基板8上に付着して薄膜層(交互多層膜を構成する一
方の薄膜層)が形成される。
【0045】基板ホルダー7には、膜厚分布の均一性を
改善するために、自転機構が設けられている。次に、図
1(b)に示すように、イオン研磨用イオン源10から
不活性ガスのイオン11を引き出して基板8へ照射する
と、基板8上に形成されていた薄膜層の表面がイオン1
1の衝突によって平滑化される。
【0046】その後は、ターゲット支持機構3を回転さ
せることにより、先ほどとは別のターゲット5(または
ターゲット4)をスパッタ用イオン源1に対向させて、
交互多層膜を構成する他方の薄膜層を形成する。これら
の操作を交互に繰り返すことにより、基板上に数十から
数百の層からなる多層膜を設けた多層膜反射鏡を製造す
る。
【0047】なお、イオンビーム研磨は、交互多層膜を
構成する両方の層に対して施しても良いし、一方の層の
みに施しても良い。次に、本発明にかかる多層膜反射鏡
の製造方法に使用する成膜装置の一例である高周波マグ
ネトロンスパッタ装置(図6)と、該装置を用いた多層
膜反射鏡の製造について詳しく説明する。
【0048】本装置では、真空チャンバー29の中に、
少なくとも2基の高周波マグネトロンスパッタ源21,
23、基板ホルダー27、イオン研磨用イオン源26な
どが設けられている。それぞれの高周波スパッタ源2
1,23には、異なる材料からなるターゲット22,2
4が装着されている。
【0049】高周波マグネトロンスパッタ源の代わり
に、直流のスパッタ源を用いても良いし、ヘリコン波を
利用したスパッタ源等を用いても良い。イオン研磨用イ
オン源26には、カウフマン型イオン源、バケット型イ
オン源、ECRイオン源等のイオン源を使用することが
できる。多層膜反射鏡を製造する際は、図6(a)に示
すように、まず真空チャンバー29内にアルゴン等の不
活性ガスを導入して、一方の高周波スパッタ源21に電
圧を加えて、ターゲット22の直上にグロー放電による
プラズマを発生させる。
【0050】プラズマ中では、不活性ガスのイオン(図
示せず)が生成される。プラズマとターゲットの間には
自己バイアス電位が発生し、この電位勾配によってイオ
ンは加速されてターゲット22へ衝突する。この衝突に
よりターゲット22を構成する原子が叩き出されて、原
子状の蒸気25が発生する。ターゲット22に対向する
位置には、基板28を装着した基板ホルダー27が設置
されており、蒸気25は基板28上に付着して薄膜層
(交互多層膜を構成する一方の薄膜層)が形成される。
【0051】基板ホルダー27には、膜厚分布の均一性
を改善するために、自転機構が設けられている。次に、
図6(b)に示すように、イオン研磨用イオン源26か
ら不活性ガスのイオン30を引き出して基板28へ照射
すると、基板28上に形成されていた薄膜層の表面が、
イオン30の衝突によって平滑化される。
【0052】その後は、先ほどとは別の高周波マグネト
ロンスパッタ源23に電圧を加えて、交互多層膜を構成
する他方の薄膜層を形成する。これらの操作を交互に繰
り返すことにより、基板上に数十から数百の層からなる
多層膜を設けた多層膜反射鏡を製造する。なお、イオン
ビーム研磨は、交互多層膜を構成する両方の層に対して
施しても良いし、一方の層のみに施しても良い。
【0053】このようにして、製造された多層膜反射鏡
は、図7に示す露光装置に用いられる。この露光装置
は、露光用の照明光として軟X線領域の光(EUV光)
を用いて、ステップ・アンド・スキャン方式により露光
動作を行う投影露光装置である。なお、図7において
は、マスク40の縮小像をウエハ42上に形成する投影
系の光軸方向をZ方向とし、このZ方向と直交する紙面
内方向をY方向とし、これらYZ方向と直交する紙面垂
直方向をX方向とする。
【0054】この露光装置は、投影原版としての反射型
マスク40を用い、反射型マスク40に描画された回路
パターンの一部の像を投影系41を介して基板としての
ウエハ42上に投影しつつ、マスク40とウエハ42と
を投影系41に対して1次元方向(ここではY軸方向)
に相対走査することによって、反射型マスク40の回路
パターンの全体をウエハ42上の複数のショット領域の
各々にステップアンドスキャン方式で転写するものであ
る。
【0055】ここで、露光用の照明光である軟X線(以
下、EUV光)は、大気に対する透過率が低いため、E
UV光が通過する光路は真空チャンバー43により覆わ
れて外気より遮断され真空になっている。また、使用す
る光源としては、ターゲットをキセノンとしたレーザプ
ラズマX線源を用いている。このレーザプラズマX線源
は、真空チャンバー36bと窓36aからなる真空容器
内に、励起光源であるレーザ光源31と集光光学系32
以外の構成が設置されている。特にこのレーザプラズマ
X線源は、キセノンガスを放出するノズルからデブリが
発生するため、真空チャンバー43とは別の真空容器に
配置する必要がある。
【0056】まず、本第1の実施の形態における露光装
置の照明系について説明する。レーザ光源31は、赤外
域〜可視域の波長のレーザ光を供給する機能を有し、例
えば半導体レーザ励起によるYAGレーザやエキシマレ
ーザなどを使用する。このレーザ光は集光光学系32に
より集光されて、位置34に集光する。ノズル33はキ
セノンガスを位置34へ向けて噴出し、この噴出された
キセノンガスは位置34において高照度のレーザ光を受
ける。このとき、噴出されたキセノンガスがレーザ光の
エネルギで加熱され、プラズマ状態に励起され、低ポテ
ンシャル状態へ遷移する際にEUV光を放出する。
【0057】この位置34の周囲には、集光光学系を構
成する楕円鏡35が配置されており、この楕円鏡35
は、その第1焦点が位置34とほぼ一致するように位置
決めされている。楕円鏡35の内表面には、EUV光を
反射するために前述の多層膜が設けられており、ここで
反射されたEUV光は、真空容器の窓36aを通過し
て、楕円鏡35の第2焦点で一度集光した後、コリメー
ト反射鏡としての放物面鏡37へ向かう。この放物面鏡
37は、その焦点が楕円鏡34の第2焦点位置とほぼ一
致するように位置決めされており、その内表面には、E
UV光を反射するための多層膜が設けられている。
【0058】放物面鏡37から射出されるEUV光は、
ほぼコリメートされた状態でオプティカルインテグレー
タとしての反射型フライアイ光学系38へ向かう。反射
型フライアイ光学系38は、複数の反射面(複数のミラ
ー要素)を集積してなる第1の反射素子群38aと、こ
の第1の反射素子群38aの複数の反射面と対応した複
数の反射面を有する第2の反射素子群38bとで構成さ
れている。これら第1及び第2の反射素子群38a,3
8bを構成する複数の反射面上にもEUV光を反射させ
るための多層膜が設けられている。
【0059】放物面鏡37からのコリメートされたEU
V光は、第1の反射素子群38aにより波面分割され、
各々の反射面からのEUV光が集光されて複数の光源像
が形成される。これら複数の光源像が形成される位置の
近傍のそれぞれには、第2の反射素子群38bの複数の
反射面が設置されており、これら第2の反射素子群38
bの複数の反射面は、実質的にフィールドミラーの機能
を果たす。このように、反射型フライアイ光学系38
は、放物面鏡37からの略平行光束に基づいて、2次光
源としての多数の光源像を形成する。尚、このような反
射型フライアイ光学系38については、本願出願人によ
る特願平10−47400号に提案されている。
【0060】さて、反射型フライアイ光学系38により
形成された2次光源からのEUV光は、この2次光源位
置の近傍が焦点位置となるように位置決めされたコンデ
ンサミラー39へ向かい、このコンデンサミラー39に
て反射集光された後に、光路折り曲げミラー39aを介
して、反射型マスク40上に達する。これらコンデンサ
ミラー39及び光路折り曲げミラー39aの表面には、
EUV光を反射させる多層膜が設けられている。そし
て、コンデンサミラー39は、2次光源から発するEU
V光を集光して、反射型マスク40上の所定の照明領域
を重畳的に均一照明する。
【0061】なお、本実施形態では、反射型マスク40
へ向かう照明光と、該反射型マスク40にて反射されて
投影系41へ向かうEUV光との光路を空間的に分離す
るために、照明系は非テレセントリック系であり、かつ
投影系41もマスク側非テレセントリックな光学系とし
ている。さて、反射型マスク40上には、EUV光を反
射する多層膜からなる反射膜が設けられており、この反
射膜は、感光性基板としてのウエハ42上へ転写すべき
パターンの形状に応じたパターンとなっている。この反
射型マスク40にて反射されて、反射型マスク40のパ
ターン情報を含むEUV光は、投影系41に入射する。
【0062】本第1の実施の形態の投影系41は、凹面
形状の第1ミラー41a、凸面形状の第2ミラー41
b、凸面形状の第3ミラー41c及び凹面形状の第4ミ
ラー41dの計4つのミラー(反射鏡)から構成されて
いる。各ミラー41a〜41dは、基材上にEUV光を
反射する多層膜を設けたものからなり、それぞれの光軸
が共軸となるように配置されている。
【0063】ここで、各ミラー41a〜41dにより形
成される往復光路を遮断しないために、第1ミラー41
a、第2ミラー41b及び第4ミラーには切り欠きが設
けられている。また、第3ミラー41cの位置には、図
示無き開口絞りが設けられている。反射型マスク40に
て反射されたEUV光は、第1ミラー41a〜第4ミラ
ー41dにて順次反射されてウエハ42上の露光領域内
に、所定の縮小倍率β(例えば|β|=1/4,1/
5,1/6)のもとで反射型マスク40のパターンの縮
小像を形成する。この投影系41は、像側(ウエハ42
側)がテレセントリックとなるように構成されている。
【0064】なお、図7には不図示ではあるが、反射型
マスク40は少なくともY方向に沿って移動可能なレチ
クルステージにより支持されており、ウエハ42はXY
Z方向に沿って移動可能なウエハステージ(基板ステー
ジ)により支持されている。露光動作の際には、照明系
により反射型マスク40上の照明領域に対してEUV光
を照射しつつ、投影系41に対して反射型マスク40及
びウエハ42を、投影系の縮小倍率により定まる所定の
速度比で移動させる。これにより、ウエハ42上の所定
のショット領域内には、反射型マスク40のパターンが
走査露光される。
【0065】このような露光装置に、先の実施の形態で
説明された界面粗さ又は界面拡散層が抑えられた多層膜
反射鏡を用いることで、レーザプラズマX線源で得られ
る光を効率的にウェハー42に照射できる露光装置を得
ることが出来る。特に、このような露光装置では、反射
型マスクを含めると11枚の多層膜反射鏡を用いてウェ
ハー42上に照射している。
【0066】したがって、各反射鏡の反射率が希望値か
ら8パーセント低下するとなると、希望値を73%とし
た場合、ウェハー上に照射される強度は、希望値通りの
反射率が得られる反射鏡を用いた場合に対して、40パ
ーセントの強度しか得られなくなる。このように一枚当
たりの反射率を低下させない発明である本発明の様に界
面粗さ又は界面拡散層を低減し、その様な多層膜反射鏡
を光学機器に用いることで、光の利用効率を格段と高く
することができる。
【0067】以下、本発明を実施例により説明するが、
本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0068】
【実施例1】図1に示したイオンビームスパッタ装置を
用いて基板上にNi/Tiの交互多層膜を形成すること
により、中性子反射用の多層膜反射鏡を作製した。基板
にはシリコン製の研磨基板(寸法100mm×100mm×5mm)
を用いた。また、交互多層膜の周期長は2.5nmとし、積
層数は300層対とした。
【0069】Ni層を形成した後Ti層を形成する前に
毎回、イオンビーム研磨を行った。イオンビーム研磨に
はArイオンを用い、100eVに加速して基板の法線に対し
て80゜の角度で入射させた。こうして作製した多層膜反
射鏡のX線反射率をCuKα特性X線(波長0.154nm)
を使用して測定したところ、イオンビーム研磨をしなか
ったNi/Ti交互多層膜の反射鏡と比較して約30倍の
反射率が得られた。
【0070】また、中性子反射率の測定を行ったとこ
ろ、イオンビーム研磨をしなかったNi/Ti交互多層膜の
反射鏡と比較して約8倍の高い中性子反射率が得られ
た。ところで、Ni/Tiの交互多層膜は、周期長を小
さくするとNi層の島状構造が著しくなり、界面の粗さ
が増加して反射率が著しく低下することが知られてい
る。そして、この問題を改善するために、Ni層にCを
混ぜるという方法が提案されている(特開平4-232900)
が、本発明者の実験によると、このNi層にCを混ぜると
いう方法では、中性子反射率は高々数割しか増加しなか
った。
【0071】従って、本発明がNi/Ti交互多層膜の
反射鏡に対して非常に有効であることが確認された。
【0072】
【実施例2】図1に示したイオンビームスパッタ装置を
用いて基板上にNi/Cの交互多層膜を形成することに
より、波長5nm付近のX線用多層膜反射鏡を作製した。
基板には3インチのシリコンウェハを用いた。また、交
互多層膜の周期長は3nmとし、積層数は100層対とした。
【0073】Ni層を形成した後C層を形成する前に毎
回、イオンビーム研磨を行った。イオンビーム研磨には
Arイオンを用い、300eVに加速して基板の法線に対し
て70゜の角度で入射させた。こうして作製した多層膜反
射鏡のX線反射率をCuKα特性X線(波長0.154nm)
を使用して測定したところ、イオンビーム研磨をしなか
ったNi/C交互多層膜の反射鏡と比較して約20倍の反
射率が得られた。
【0074】また、波長5nmのX線反射率の測定を行っ
たところ、イオンビーム研磨をしなかったNi/C交互
多層膜の反射鏡と比較して約5倍の高い反射率が得られ
た。
【0075】
【実施例3】図6に示した高周波スパッタ装置を用いて
基板上にMo/Siの交互多層膜を形成することによ
り、軟X線縮小投影露光装置用の多層膜反射鏡を作製し
た。基板には石英製の研磨基板(直径300mm)を用い
た。また、交互多層膜の周期長は6.7nmとし、積層数は5
0層対とした。
【0076】Mo層を形成した後とSi層を形成した後
に毎回、イオンビーム研磨を行った。イオンビーム研磨
にはXeイオンを用い、Mo層に対しては、500eVに加速
して基板の法線に対して45度の角度で入射させ、Si層
に対しては、250eVに加速して基板の法線に対して30
度の角度で入射させた。こうして作製した多層膜反射鏡
のX線反射率をCuKα特性X線(波長0.154nm)を使
用して測定したところ、イオンビーム研磨をしなかった
Mo/Si交互多層膜の反射鏡と比較して同程度の反射
率が得られた。
【0077】一方、波長13nmの軟X線の反射率測定を行
ったところ、イオンビーム研磨をしなかったMo/Si
交互多層膜の反射鏡よりも5%高い軟X線反射率が得られ
た。反射率の増加は僅かであるが、多数の多層膜反射鏡
から構成される軟X線縮小投影露光装置では、僅かな反
射率の増加でも露光装置のスループットを向上させる上
で重要となる。
【0078】
【実施例4】図1に示したイオンビームスパッタ装置を
用いて基板上にNiCr/V2O5の交互多層膜を形成
することにより、生物観測用のX線顕微鏡用多層膜反射
鏡を作製した。 基板にはSiC製の研磨基板(直径80
mm)を用いた。また、交互多層膜の周期長は2.2nmと
し、積層数は200層対とした。
【0079】NiCr層を形成した後とV2O5層を形
成した後に毎回、イオンビーム研磨を行った。イオンビ
ーム研磨にはArイオンを用い、NiCr層に対して
は、80eVに加速して基板の法線に対して80゜の角度で入
射させ、V2O5層に対しては、450eVに加速して基板
の法線に対して50゜の角度で入射させた。こうして作製
した多層膜反射鏡のX線反射率をCuKα特性X線(波
長0.154nm)を使用して測定したところ、イオンビーム
研磨をしなかったNiCr/V2O5交互多層膜の反射
鏡と比較して約40倍の反射率が得られた。
【0080】また、波長3.8nmのX線反射率の測定を行
ったところ、イオンビーム研磨をしなかったNiCr/
V2O5交互多層膜の反射鏡と比較して約10倍の高い反
射率が得られた。
【0081】
【実施例5】図6に示した高周波スパッタ装置を用いて
基板上にMo/B4Cの交互多層膜を形成することによ
り、波長7nm付近のX線用多層膜反射鏡を作製した。基
板には直径3インチのシリコンウェハを用いた。また、
交互多層膜の周期長は4nmとし、積層数は150層対とし
た。
【0082】Mo層を形成した後B4C層を形成する前に
毎回、イオンビーム研磨を行った。イオンビーム研磨に
はKrイオンを用い、700eVに加速して基板の法線に対
して20度の角度で入射させた。こうして作製した多層膜
反射鏡のX線反射率をCuKα特性X線(波長0.154n
m)を使用して測定したところ、イオンビーム研磨をし
なかったMo/B4C交互多層膜の反射鏡と比較して約
2倍の反射率が得られた。
【0083】また、波長7nmの軟X線の反射率測定を行
ったところ、イオンビーム研磨をしなかったMo/B4
C交互多層膜の反射鏡と比較して約3倍の高い軟X線反
射率が得られた。
【0084】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
従来よりも反射率を増大させた多層膜反射鏡を得ること
ができる。即ち、本発明にかかる製法により多層膜反射
鏡を製造すれば、多層膜反射鏡の反射率を劣化させる主
要因となる界面粗さや相互拡散層を解消または低減でき
るので、従来よりも反射率を増大させた多層膜反射鏡を
得ることができる。
【0085】また、本発明にかかる多層膜反射鏡の製造
方法は、X線用や中性子線用以外にも、紫外線用、可視
光用、赤外線用の多層膜反射鏡にも適用可能であり、同
様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明にかかる多層膜反射鏡の製造方法に
使用する成膜装置の一例であるイオンビームスパッタ装
置の概略構成図である。
【図2】は、本発明の作用を説明するための多層膜の界
面の状況を示す図である。
【図3】は、周期長が50オングストロームより大きい
多層膜反射鏡における界面粗さと反射率低下の割合を示
したグラフである。
【図4】は、周期長が50オングストロームより小さい
多層膜反射鏡における界面粗さと反射率低下の割合を示
したグラフである。
【図5】は、界面拡散層の厚さ毎に、波長に対する反射
率特性を示した図である。
【図6】は、本発明にかかる多層膜反射鏡の製造方法に
使用する成膜装置の一例である高周波マグネトロンスパ
ッタ装置の概略構成図である。
【図7】は、本発明にかかる多層膜反射鏡を用いた露光
装置の概略構成図である。
【主要部分の符号の説明】
1 スパッタ用イオン源 2 イオンビーム 3 ターゲット支持機構 4,5 ターゲット 6 スパッタされた蒸気 7 基板ホルダー 8 基板 9 真空チャンバー 10 イオンビーム研磨用イオン源 11 イオンビーム 21,23 高周波マグネトロンスパッタ源 22,24 ターゲット 25 スパッタされた蒸気 26 イオンビーム研磨用イオン源 27 基板ホルダー 28 基板 29 真空チャンバー 30 イオンビーム 31 レーザ光源 32 集光光学系 33 ノズル 35 楕円鏡 36 真空容器 36a窓 36b 真空容器 37 放物面鏡 38 反射型フライアイ光学系 38a 第1の反射素子群 38b 第2の反射素子群 39 コンデンサミラー 40 反射型マスク 41 投影系 42 ウエハ 43 真空チャンバー

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スパッタリング法を用いて基板の上に、
    屈折率が相対的に小さい第1物質の層(第1物質層)と
    屈折率が相対的に大きい第2物質の層(第2物質層)と
    を交互に複数回積層することにより多層膜反射鏡を製造
    する方法において、 前記第1物質層を形成した後、前記第2物質層を形成す
    る前に、形成した前記第1物質層の表面にイオンビーム
    を照射して表面を平滑化する工程を設けるか、 前記第2物質層を形成した後、前記第1物質層を形成す
    る前に、形成した前記第2物質層の表面にイオンビーム
    を照射して表面を平滑化する工程を設けるか、 或いは、前記両工程を設けることを特徴とする多層膜反
    射鏡の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記イオンビームのイオン種は、不活性
    ガスであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記イオンビームのエネルギーは、50eV
    以上1000eV以下であることを特徴とする請求項1または
    2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記基板は接地電位にあるか、或いは前
    記基板には直流バイアス電圧が印加されていることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 スパッタリング法を用いて基板の上に、
    屈折率が相対的に小さい第1物質の層(第1物質層)と
    屈折率が相対的に大きい第2物質の層(第2物質層)と
    が交互に積層された多層膜反射鏡において、 イオンビームが照射され、平滑化された前記第1物質層
    と前記第2の物質層との界面を有することを特徴とする
    多層膜反射鏡。
  6. 【請求項6】 前記第1物質層の膜厚と前記第2物質層
    の膜厚の和である周期長をdとし、前記基板の表面粗さ
    RMS値をσsubとした場合、前記界面の粗さRMS値
    であるσintは、本請求項の後述の式1又は式2に示す
    範囲まで平滑化された界面を有することを特徴とする請
    求項5に記載の多層膜反射鏡。 式1:d≧5nmの多層膜では、σint−σsub<0.2
    nm 式2:d<5nmの多層膜では、σint−σsub<0.5
    nm
  7. 【請求項7】 前記第1物質層を形成する物質と前記第
    2物質層を形成する物質とが互いに拡散する領域が1n
    m以下になるように平滑された前記界面を有することを
    特徴とする請求項5に記載の多層膜反射鏡。
  8. 【請求項8】 基板の上に、屈折率が相対的に小さい第
    1物質の層(第1物質層)と屈折率が相対的に大きい第
    2物質の層(第2物質層)とが交互に積層された多層膜
    反射鏡において、 前記多層膜の周期長をdとし、前記基板の表面粗さRM
    S値をσsubとした場合、前記界面の粗さRMS値であ
    るσintは、本請求項の後述の式3又は式4に示す範囲
    であることを特徴とする請求項5に記載の多層膜反射
    鏡。 式3:d≧5nmの多層膜では、σint−σsub<0.2
    nm 式4:d<5nmの多層膜では、σint−σsub<0.5
    nm
  9. 【請求項9】 基板の上に、屈折率が相対的に小さい第
    1物質の層(第1物質層)と屈折率が相対的に大きい第
    2物質の層(第2物質層)とが交互に積層された多層膜
    反射鏡において、 前記第1物質層を形成する物質と前記第2物質層を形成
    する物質とが界面で互いに拡散する領域が1nm以下で
    ある前記第1物質層と前記第2の物質層との界面を有す
    ることを特徴とする多層膜反射鏡。
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