[第1実施例]
図3は、本発明の第1実施例による基板処理装置30の構成を示す。
図3を参照するに、前記基板処理装置30は被処理基板32を保持する保持台31Aを有する処理容器31を含み、前記処理容器31中には前記保持台31A上の被処理基板32に対向して石英等の紫外光を透過させる材料よりなるシャワーヘッド31Bが設けられる。前記処理容器31は排気口31Cを介して排気され、一方前記シャワーヘッド31Bに外部のガス源からO2などの酸化性ガスが供給される。
前記処理容器31にはさらに前記シャワーヘッド31Bの上方に前記シャワーヘッド31Bおよびその下の被処理基板32を露出するように、石英などの紫外線を透過する材料よりなる光学窓31Dが形成されている。前記保持台31A中には前記被処理基板32を加熱するヒータ31aが設けられている。
さらに前記処理容器31上には、前記光学窓31Dに対応して設けられた結合部33を介して紫外光露光装置34が設けられている。
前記紫外光露光装置34は、前記光学窓31Dに対応した石英光学窓34Aと、前記石英光学窓34Aおよび光学窓31Dを介して紫外光を前記被処理基板32上に照射する紫外光源34Bとを含み、前記紫外光源34Bはロボット34Cにより図3中に矢印で示すように、前記光学窓34Aに平行な方向に移動が可能に保持されている。図示の例では、前記紫外光源34Bは、前記移動方向に対して略直角に延在するように設けられた線状の光源よりなる。かかる線状の光源としては、例えば波長が172nmのエキシマランプを使うことができる。
また図3の構成では、前記紫外光源34Bにより形成された紫外線が前記光学窓31Dを介して前記処理容器31中に導入されるに先立って空気中の酸素により吸収されてしまうのを回避するため、前記結合部33には外部のガス源(図示せず)よりN2などの不活性ガスがライン33Aを介して供給され、前記不活性ガスは前記紫外光露光装置34の光学窓34Aの取り付け部に形成された隙間を通って前記紫外光露光装置34中の空間34Dに流入する。
さらに前記紫外光源の駆動に伴い、前記紫外光源34Bの直下に大気中の酸素が巻き込まれ流入するのを抑制するため、紫外光源34Bの両側面に遮蔽板34Fを設け、さらに前記遮蔽板34Fの下において、前記紫外光源34Bに対向する光学窓34Aと遮蔽板34Fとの間に形成される高さがせいぜい1mm程度の狭い領域に、ライン34bを介してN2などの不活性ガスが供給される。この領域には、前記ライン33Aからの不活性ガスも供給され、その結果、この領域において紫外光を吸収する酸素が効果的に排除される。
前記遮蔽板34F下の領域を通過した不活性ガスは前記空間34Dに流れ出し、さらに前記紫外光露光装置34中に形成された排気口34Eを通って外部に排出される。
図3の基板処理装置では、前記紫外光露光装置34において前記ロボット34Cにより前記紫外光源34Bの移動・走査を制御することができ、その結果、前記被処理基板32の表面に紫外線活性化酸化処理により酸化膜を形成する際に、紫外線露光照射量を制御することにより膜厚の分布を制御することが可能になる。前記ロボット34Cはコンピュータなどの制御装置35により制御される。また、前記制御装置35は前記紫外光源34Bの駆動をも制御する。
図4(A)〜(C)は図3の基板処理装置30を使い、様々な条件下でSiO2膜をSi基板上に形成した場合の、得られたSiO2膜のエリプソメトリにより求めた膜厚分布をÅ単位で示す。ただし図4(A)〜(C)において、被処理基板32としては8インチのSi基板が、表面自然酸化膜を後で説明する表面前処理工程により除去した状態で使われている。また図4(A)〜(C)の各々において、前記処理容器31中の内圧は約0.7kPa(5Torr)に設定され、基板温度は300°Cに設定されている。
図示の結果は、前記処理容器31中にO2を1slmの流量で5分間供給した場合のもので、図4(A)は紫外光の照射を行わなかった場合を、また図4(B),(C)は前記紫外光源34Bにより、光源直下で30mW/cm2の照度の紫外光を照射した場合を示す。図4(B)は、前記紫外光源34Bを410mmの範囲で、すなわち前記被処理基板32の全面が一様に露光されるように一様に走査した場合を示す。
図4(A)を参照するに、紫外光照射を行わなかった場合はSi基板表面に形成されるSiO2膜の厚さは0.2〜0.3nm程度であり、実質的な膜形成は生じていないのに対し、図4(B)の場合には前記Si基板表面に約0.8nmのSiO2膜が形成されているのがわかる。さらに図4(B)の場合には、前記紫外光源34Bを400mmの範囲で一様に走査したにもかかわらず、前記8インチSi基板32の中央部において形成されたSiO2膜の膜厚が減少しているのがわかる。その結果、前記Si基板上に形成されたSiO2膜の膜厚変動は2.72%と比較的大きい値になっているが、これは使用した基板処理装置30に固有の特性を反映しているものと考えられる。
これに対し図4(C)は、前記Si基板32の中央部付近で100nmの限られた範囲で前記紫外光源34Bを走査した場合のSiO2膜の膜厚分布を示す。
図4(C)を参照するに、このようにして形成されたSiO2膜の膜厚は0.92〜0.93nmの範囲に収まり、膜厚変動1.35%まで減少しているのがわかる。
図5は、図4(A)〜(C)の実験において、前記処理容器31中に導入されるO2の流量を様々に変化させた場合について、紫外線露光時間と形成されるSiO2膜の厚さとの関係を求めた結果を示す。
図5よりわかるように、形成されるSiO2膜の膜厚はO2流量にはほとんど依存せず、1分間を経過すると約1nmの値で飽和することがわかる。一方、露光時間が1分間より短い場合には、膜厚は露光時間共に増大する。図5は、図3の基板処理装置30を使ったSi基板表面へのベース酸化膜となる薄いSiO2膜の形成工程はごく短時間で十分であることを示している。
図6(A)〜(E)は図3の基板処理装置中において前記処理容器内圧を約0.7kPa(5Torr)、基板温度を450°Cに設定し、O2ガスを1slmの流量で供給しながら前記紫外光源34Bを100mmの範囲で走査した場合に得られるSiO2膜の膜厚分布をÅ単位で示す。簡単のため、Si基板は矩形形状で示してある。
このうち図6(A)は前記走査を基板中心を基点に、±50mmの範囲で行った場合を示すが、図6(A)の例では基板中心からy軸方向上上方に向かって、またx軸方向上右方に向かって前記SiO2膜の膜厚が増大する傾向が存在するのがわかる。この場合のSiO2膜の膜厚変動は3.73%となっている。
これに対して図6(B)は、前記走査の基点を基板中心からy軸方向上下方に向かって12.5mmずらした場合のSiO2膜の膜厚分布を、同じくÅ単位で示す。図6(B)よりわかるように、SiO2膜の膜厚変動は3.07%まで減少している。
さらに図6(C)は、前記走査の基点を基板中心からy軸方向下方に25.0mmずらした場合のSiO2膜の膜厚分布をÅ単位で示す。図6(C)よりわかるように、SiO2膜の膜厚変動は図6(B)の場合と同じで3.07%となっている。
これに対し、図6(D)は、前記走査の基点を基板中心からy軸方向下方に37.5mmずらした場合のSiO2膜の膜厚分布をÅ単位で示す。図6(D)よりわかるように、この場合SiO2膜の膜厚変動は2.70%まで減少している。
一方、図6(E)に示すように前記走査の基点を基板中心からy軸方向下方に50.0mmずらした場合には、前記SiO2膜の膜厚変動は5.08%まで増大している。
このことから、図3の基板処理装置30においては、前記紫外線源34Bの走査の基点を基板に対して最適化することでも、被処理基板32上に形成されるSiO2膜の膜厚変動を最小化できることが結論される。
次に図7(A)〜(E)は、図3の基板処理装置30において前記紫外線源34Bの走査幅を100mmとし、走査の基点を被処理基板32の中心からy軸方向下方に37.5mmずらした位置に設定し、照射量をそれぞれ3mW/cm2、6mW/cm2、12mW/cm2、18mW/cm2および24mW/cm2に設定してSiO2膜を形成した場合の膜厚分布をÅ単位で示している。
図7(A)〜(E)を参照するに、膜厚のばらつきは図7(A)の照射量を3mW/cm2に設定した場合が最も小さく、照射量が増大するにつれて膜厚のばらつきも増大しているのがわかる。
図7(A)〜(E)の結果は、図3の基板処理装置30において、紫外線源34Bの照射量を最適化することによっても、得られるSiO2膜の膜厚のばらつきを最小化できることを示している。
図8(A),(B)は比較対照例を示し、図8(A)は図7(A)〜(E)と同一条件下において、紫外光照射を行わずにSiO2膜を形成した場合を、また図8(B)は従来の急速熱酸化(RTO)処理によりSiO2膜を形成した場合を示すが、このいずれの場合においても4%を超える膜厚変動が観測されることがわかる。
図9,10は、上記の結果を踏まえた、図3の基板処理装置30における基板処理方法の最適条件を探索するフローチャートである。このうち、図9は最適走査領域の探索を行うフローチャートであり、図10は最適照射量の探索を行うフローチャートである。
図9を参照するに、最初にステップ1において被処理基板上の任意の領域が指定され、次にステップ2において前記基板処理装置30中に被処理基板32を導入し、前記紫外光源34Bを前記被処理基板32上の指定された領域において走査させ、SiO2膜を形成する。さらに、前記ステップ1およびステップ2を繰り返すことにより、各繰り返し毎に、新たな被処理基板32上に前記領域をずらした状態でSiO2膜を形成する。
さらにステップ3において各実験で得られたSiO2膜の膜厚分布を評価し、ステップ4において膜厚変動が最小となる最適走査領域を見出す。
図9の最適走査条件を探索の後、図10に示す最適照射条件の探索が行われる。
図10を参照するに、最初にステップ11において図9の手順により探索された最適走査領域が指定され、次にステップ12において紫外光源34Bの駆動エネルギが指定される。さらにステップ13において前記基板処理装置30中に被処理基板32を導入し、前記紫外光源34Bを前記被処理基板32上の指定された最適領域において、ステップ12により指定された駆動エネルギで走査させ、SiO2膜を形成する。さらに、前記ステップ12およびステップ13を繰り返すことにより、各繰り返し毎に、新たな被処理基板32上に前記駆動エネルギをずらした状態でSiO2膜を形成する。
さらにステップ14において各実験で得られたSiO2膜の膜厚分布を評価し、膜厚変動が最小となる紫外光源34Bの最適駆動エネルギを見出す。さらにステップ15において、かかる最適駆動エネルギにおいて膜形成がなされるように、前記基板処理装置30の紫外光源34Bを制御するプログラムを決定する。
このようにして決定されたプログラムに従って前記制御装置35は前記ロボット34Cおよび紫外光源34Bを動作させ、その結果前記紫外光源34Bは最適な基板領域を最適な駆動エネルギで走査し、その結果、前記前記被処理基板34上に0.3〜1.5nm、好ましくは1nm以下、より好ましくは0.8nm以下の厚さの、非常に薄い、しかも膜厚の一様なSiO2膜が形成される。
[第2実施例]
図11は、図3の基板処理装置30を組み込んだ、本発明の第2実施例による基板処理システム40の構成を示す。
図11を参照するに、前記基板処理システム40はクラスタ型処理装置であり、基板搬入/搬出のためのロードロック室41と、基板表面を窒素ラジカルN*と水素ラジカルH*、およびNF3ガスにより処理し、基板表面の自然酸化膜をN−O−Si−H系の揮発性膜に変換し、除去する前処理室42と、図3の基板処理装置30よりなるUV−O2処理室43と、基板上にTa2O5、Al2O3,ZrO2、HfO2,ZrSiO4,HfSiO4等の高誘電体膜を堆積するCVD処理室44と、基板を冷却する冷却室45とを真空搬送室46で連結した構成を有し、前記真空搬送室46中には搬送アーム(図示せず)が設けられている。
動作時には、前記ロードロック室41に導入された被処理基板は経路(1)に沿って前記前処理室42に導入され、自然酸化膜が除去される。前記前処理室42で自然酸化膜を除去された被処理基板42は経路(2)に沿って前記UV−O2処理室43に導入され、図3の基板処理装置30により、前記紫外光源34Bにより最適な領域を最適な駆動エネルギで走査させることにより、図1に示すSiO2ベース酸化膜12を厚さが1nm以下の一様な膜厚に形成される。
さらに、前記UV−O2処理室43において前記SiO2膜を形成された被処理基板は経路(3)に沿ってCVD処理室44に導入され、前記SiO2膜上に図1に示す高誘電体ゲート絶縁膜14が形成される。
さらに前記被処理基板は前記CVD処理室44から経路(4)に沿って冷却室45に移され、前記冷却室45で冷却された後、経路(5)に沿ってロードロック室41に戻され、外部に搬出される。
[第3実施例]
図12は、本発明の第3実施例による基板処理システム40Aの構成を示す。
図12を参照するに、基板処理システム40Aは前記基板処理システム40と類似した構成を有するが、前記CVD処理室44の変わりにプラズマ窒化処理室44Aが設けられている。
前記プラズマ窒化処理室44Aには、前記UV−O2処理室43においてSiO2膜を形成された被処理基板が経路(3)に沿って供給され、表面にプラズマ窒化処理により、SiON膜が形成される。
かかる工程を、前記UV−O2処理室43とプラズマ窒化処理室44Aとの間で繰り返すことにより、図13に示す、SiONゲート絶縁膜13Aを有する半導体装置10Aを形成することができる。ただし図13A中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図13の構造10Aでは、前記SiONゲート絶縁膜13Aは1.5〜2.5nmの厚さに形成されるが、その際図12の基板処理装置40Aを使うことにより、前記SiONゲート絶縁膜13Aの底部近傍においてOリッチに、また上部近傍においてNリッチになるように組成勾配を形成することも可能である。
[変形例]
なお、図3の基板処理装置30において、前記線状紫外光源34Bの移動は図3に示した矢印方向の往復運動に限定されるものではなく、図14に示すように前記被処理基板32に対して回転させ、これに往復運動を組み合わせるようにしてもよい。また、かかる光源34Bの被処理基板32に対する回転は、光源34B自体を回転させても、また被処理基板32を回転させてもよい。
また、図3の基板処理装置30において、前記線状紫外光源34Bの代わりに図15(A)に示すように点状の紫外光源34B'を使い、これを所定方向に往復運動させてもよい。さらに、図15(B)に示すようにかかる点状紫外光源34B'を前記被処理基板32上において縦横方向に走査させてもよい。
図16は、図3の基板処理装置30の別の変形例による基板処理装置301を示す。ただし図16中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図16を参照するに、前記基板処理装置301では前記石英シャワーヘッド31Bが除去され、その代わりに前記処理容器31中にO2を導入する複数のガス導入部31B'が、前記基板32上の領域を避けるように形成されている。さらに図14の構成では、図3の構成において前記紫外光露光装置34に前記結合部33に対応して形成されていた石英窓34Aが撤去されている。
かかる構成によれば、前記紫外光源34Bにより形成された紫外線の石英窓34Aあるいはシャワーヘッド31Bによる吸収が最小になる。
なお、図3あるいは図16の構成では、必要に応じて前記排気口34Eに排気ダクトを接続し、紫外光露光装置34からの排気を無害化した後環境中に排出するようにしてもよい。
[第4実施例]
本発明の発明者は、先に図3で説明した基板処理装置30を使って、Si基板32の(100)面上にSiO2膜を紫外光源34Bの駆動パワーを様々に変化させながら形成し、得られたSiO2膜について、膜厚をXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)法により測定する実験を行った。膜厚測定をXPSにより行うことにより、空気中で膜厚測定を行うエリプソメトリを使った場合にくらべて、大気中からの吸着成分(H2Oや有機物)によるSiO2膜の膜厚変化の効果を排除することができ、より正確な膜厚の測定が可能になる。
図17は、このようにして得られたSiO2膜の膜厚と紫外光パワーとの関係を示す。ただし図17の実験は紫外光のパワーを光源直下における50mW/cm2の照度を基準に、前記基準照度の10〜45%の間で照度を変化させた場合についてのもので、酸化時間は5分間としている。また図17の実験では、光源34Bの位置を先に図9で説明した手順により最適化してある。
図17を参照するに、XPS法で測定したSiO2膜の膜厚は、照射紫外光の照度が基準照度の約15〜25%の範囲では照度と共におおよそ直線的に、0.66nmから0.72nmまで略直線的に増加し、また基準照度の約35%から40%の範囲でもおおよそ直線的に0.73nmから0.78nmまで増加するのがわかる。さらに図17は、前記照射紫外光の照度が前記基準照度の約25〜35%の範囲では、SiO2膜の膜厚が0.72nmから0.73nmまで、わずか0.01nmしか変化しないことがわかる。
図18(A)〜(F)は、図17の実験で使ったSi基板上における前記紫外線活性化酸化処理工程により形成されたSiO2膜の膜厚分布を示す。
図18(A)〜(F)を参照するに、SiO2膜の膜厚変動は、このように照射紫外光の照度を減少させ、SiO2膜を膜厚が1.0nm以下になるように形成した場合、図18(C)の照度を基準照度の25%に設定した場合を除き、2%以下に抑制できることがわかる。特に図18(D),(E)に示すように紫外光照度を基準照度の30%あるいは35%に設定した場合、すなわち紫外光照度を図17におけるSiO2膜の膜厚増加が小さい照度領域に設定した場合、SiO2膜の膜厚変動は1.21〜1.31%まで抑制できることがわかる。
このようなSiO2膜の膜厚を1.0nm以下に減少させた場合に見られる膜厚分布の均一性の著しい向上、および特に図17に見られる照射紫外光照度に対するSiO2膜厚の階段状の変化は、紫外線活性化酸化処理工程における自己制御(セルフリミティング)効果の存在を示唆している。すなわち図17に見られるSiO2膜厚の階段状の変化は紫外光照射パワーについて観測されたものであるが、同様の階段状の変化は処理温度や処理時間についても観測されるものと考えられる。
図19は、かかる自己制御効果について、推測されるメカニズムの一つを示す。
図19を参照するに、被処理Si基板表面には酸化処理の際、酸素が侵入することにより3次元Si−O−Siネットワーク構造を有するSiO2膜が形成される。Si基板の酸化の進行はSi原子の結合の弱い部分からはじまる。しかるに基板結晶の1つの原子層がすべて酸化された図19のような状態ではそのような結合の弱い部分が少なくなると考えられる。そこであらたな酸化を起こすためには増えた膜厚分を酸素原子が侵入する必要とあいまってさらに多量の活性化された酸素が必要になると考えられ、その結果、かかる紫外線活性化酸化処理工程において紫外線強度に伴う活性酸素濃度の増加によっても酸化膜成長の促進が鈍化してしまう領域が生じるものと考えられる。かかる酸化膜成長の原子層酸化に伴うセルフリミッティング効果により、図17に示す階段状の酸化膜成長が生じるものと考えられる。
かかる均一性は、SiO2分子層にして5〜6層まで維持されるものと考えられる。
図17,18の結果より、図3の基板処理装置30において紫外光線活性化酸化処理は、SiO2膜が5〜6分子層以下、より好ましくは3分子層以下の厚さを有するように実行するのが好ましい。
[第5実施例]
次に、先の実施例の基板処理装置30'をさらに発展させ、来たるべき大口径被処理基板に対応させた本発明の第5の実施例による基板処理装置50について、図20(A),(B)および図21(A),(B)を参照しながら説明する。
図20(A),(B)を参照するに、図20(B)は先に図16で説明した基板処理装置装置30'の平面図を、また図20(A)は前記被処理基板32が300mmの直径を有する場合の前記基板32上における紫外線照射強度分布を示す。ただし図20(A)の照射強度分布は、前記300mm直径の被処理基板32を長さが330mmの線状紫外線源34Bにより、高さ100mmの位置から照射した場合における、前記紫外線源直下での照射紫外光強度分布を示す。図20(A),(B)中、先に説明した部分には対応する参照符号を付し、説明を省略する。
図20(A)より、図16の構成の基板処理装置30'を、そのまま300mm径を超える大口径基板の処理に使った場合には、被処理基板32の端部で照射光強度が30%ほども減衰するのがわかる。このような大口径被処理基板の処理に際して紫外光強度分布の均一性を向上させるためには、前記線状紫外線源34Bの長さをさらに延長することももちろん考えられるが、かかるアプローチは基板処理装置の大型化を招くため、好ましくない。
これに対し、図21(A),(B)は上記の課題を解決した、本発明の第5実施例による基板処理装置50の構成を示す。ただし図21(A),(B)中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。図20(A),(B)と同様に、図21(B)が基板処理装置50の平面図を、図21(A)が被処理基板32上における紫外光強度分布を示す。
図21(B)を参照するに、本実施例では前記線状紫外光源34Bを、単一の直線上に一直線状に配列した複数の線状紫外光源34B1,34B2および34B3より構成し、各々の紫外光源を対応する駆動装置351,352および353により駆動する。
図21(A)は、前記紫外光源34B1,34B2および34B3の光出力比を1:1.55:1に制御した場合の、被処理基板32上、紫外光源直下の領域における光の強度分布を示す。
図21(A)よりわかるように、紫外光強度の変動は図20(A)に示す約30%に達する変動に対し、約3.5%の変動幅まで改善されている。すなわち先の図3で説明した本発明の第1実施例の基板処理装置30、あるいは図16で説明した基板処理装置30'において線状紫外光源34Bを複数の線状紫外光源要素により構成し、各々の紫外光源要素を個別に駆動すると共に前記複数の紫外光源要素を全体として移動させ、被処理基板32の表面を走査することにより、非常に均一な厚さの酸化膜を被処理基板32上に形成することができる。
さらに図9に示したようなフローチャートと同様な、最適な膜厚分布に対応した駆動条件を探索する最適値探索手順を前記紫外光源要素の出力比に対して適用し、最適の出力比を求めることにより、基板処理装置に固有の不均一要因を補正し膜厚のさらなる均一化を図ることが可能になる。すなわち本実施例では図9のステップ1において走査領域の指定の代わりに紫外光源34B1〜34B3の駆動パワー比を変化させ、ステップ3で成膜結果を評価し、ステップ4で最適な走査領域の代わりに最適な駆動パワー比を選択する。
[第6実施例]
次に本発明の第6実施例による基板処理装置60の構成を、図22を参照しながら説明する。基板処理装置60は来るべき半導体装置のさらなる微細化に対応させたものであり、被処理基板の回転機構と単数または複数の線状紫外線源とを組み合わせる。
図22は本実施例による基板処理装置60の構成を示す。図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図22を参照するに、前記基板処理装置60は先の第1実施例で説明した基板処理装置30処理容器31と同様の処理容器61中において直径が300mmの被処理基板62Wを保持する保持台62を有し、前記保持台62は回転駆動部63により回転駆動される。また前記処理容器61の上部には単一の、長さが例えば330mmの線状の紫外光源64Aを含む光源ユニット64が設けられ、前記紫外光源64Aは紫外線透過窓65を介して前記保持台62上の被処理基板を照射する。前記処理容器61は真空ポンプ61Pにより排気され、さらに前記処理容器61中には前記被処理基板に対向するようにライン61aを介してO2を供給される石英シャワーノズル61Aが設けられている。また前記光源ユニット64には冷却水通路が設けられ、ライン64Wを通って循環する冷却水により水冷される。前記保持台62中にはヒータ等の熱源62Hが設けられ、被処理基板62Wの温度を制御する。
図22の構成では、前記保持台62に結合された回転軸62Aには樹脂製Oリングあるいはより理想的には磁気流体シール材よりなる真空シール62Bが設けられ、前記処理容器61内部がシールされている。また前記紫外光源64Aは、図22に示すように被処理基板の中心からずらして設けられている。前記回転保持台62中の熱源62Hを駆動する駆動ライン62hは、前記処理容器61の外部に、コンタクト62Cを介して引き出される。
図23(A)は図22の基板処理装置60において、前記被処理基板62Wを回転させた場合における被処理基板62W上における紫外線強度の径方向分布を、前記紫外光源64Aと被処理基板62Wとの相対配置を様々に変化させながら求めた結果を示す。ただし図23(A)中、横軸には被処理基板62Wの半径方向の距離を、また縦軸には各点における平均紫外線照射強度を示す。また図23(A)では前記被処理基板62Wと光源64Aとの間の高さ方向距離(ワークディスタンス)は100mmとしている。
図23(A)を参照するに、前記光源64Aを被処理基板62Wの中央付近(例えば0mm)に位置させると、対応するずれ量のプロットを見れば明らかなように中心(横軸の0mm)位置において照射強度は最大となり、被処理基板周辺部に向って紫外照射強度が減少しているのがわかる。一方、前記紫外光源64Aを被処理基板62Wの中心から半径方向に大きく、例えばだけ150mmずらしたところ、前記被処理基板62W上における照射強度分布は基板中心部において小さく、基板端部に向って増加する傾向を示す。特に前記紫外光源64Aを前記被処理基板62Wの中心から半径方向110mmの位置に置いた場合、照射紫外光強度の変化は最も小さく、概ね10%以内に収まるのがわかる。
このように、図22の基板処理装置60においては紫外光源64Aを図22中に示すように被処理基板62Wの半径方向に、前記被処理基板62Wの中心から110mmだけずらし、さらに前記紫外光源64Aの高さを100mmの高さに配置し、被処理基板62Wと紫外線源64Aとを相対的に回転させながら紫外線活性化酸化処理工程を行うことにより、非常に均一な厚さの酸化膜がシリコン基板上に形成されることがわかる。
さらにかかる最適位置から前記紫外光源64Aを図22に矢印で示したように限られた範囲、例えば前記被処理基板64Aの中心から75mmから125mmの範囲で変位させることにより、前記被処理基板64A上に形成される酸化膜の膜厚分布を変化させることも可能である。また先に図9で説明した最適な膜厚分布を探索するフローチャートを適用して前記紫外光源64Aについて最適のずれ量を求めることにより、基板処理装置60に固有の膜厚を不均一化する要因を補正し、膜厚の均一化を図ることができる。さらに本実施例の基板処理装置60では先の第1実施例における基板処理装置30あるいは30'に比べて紫外光源64Aの移動範囲が限定されており、このためその装置全体の大きさを小さくすることができる。
[第7実施例]
図24は本発明の第7実施例による基板処理装置70の構成を示す。ただし図24中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図24を参照するに、本実施例では先の実施例における基板処理装置60と同様な構成を有するが、単一の紫外光源64Aを可動に設けた光源ユニット64の代わりに、複数の固定紫外光源74A1,74A2を前記被処理基板62Wの中心から外して設け、前記固定紫外光源74A1および74A2をそれぞれの対応する駆動装置74a1および74a2により駆動する。図示の例では前記紫外光源74A1は被処理基板62Wの中心から25mmだけ半径方向上外側に変位した位置に、また紫外光源74A2は被処理基板62Wの中心から半径方向上175mm外側に変位した位置に設けられている。さらに前記光源ユニット74には前記紫外光源74A1および74A2に対応して紫外光透過窓74Bが設けられている。
図25は、図24の基板処理装置70における、前記紫外光源74A1のみによる被処理基板62W上での紫外光強度分布および前記紫外光源74A2のみによる被処理基板62W上での紫外光強度分布、さらに前記紫外光源74A1および74A2の両方を駆動した場合の紫外光強度分布を示す。ただし図25の実験において、前記紫外光源74A1は被処理基板62Wの中心から半径方向上外側に25mmだけ離間して設けられており、前記紫外光源74A2は前記被処理基板62Wの中心から半径方向上外側に175mm離間して設けられている。さらに図25においては前記紫外光源74A1は対応する駆動装置74a1により73%の出力で駆動され、一方前記紫外光源74A2は対応する駆動装置74a2により27%の出力で駆動されている。
図25よりわかるように、前記紫外光源74A1および74A2は単独では単調に変化する紫外光強度分布を被処理基板62W上に形成するが、その変化方向が逆になっているためそれぞれの駆動パワーを最適化することにより、被処理基板62W上に非常に一様な紫外光強度分布を実現することが可能になる。図25の例では、前記紫外光の照射強度変化が2%台に抑制されている。かかる最適な駆動パワーは先に説明した図9の最適値探索手順により、ステップ1において前記駆動装置74a1,74a2の駆動出力を変化させ、ステップ3において成膜結果を評価し、ステップ4において最適値を決定することにより求めることができる。
[第8実施例]
図26は本発明の第8実施例による基板処理装置80の構成を示す。ただし図26中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図26を参照するに、本実施例の基板処理装置80は先の実施例による基板処理装置70と類似した構成を有するが、基板処理装置70における光源ユニット74の代わりに、膨らんだ形状のアルミニウムドームよりなる光源ユニット84が設けられており、前記光源ユニット84上には前記紫外光源74A1および74A2が異なった高さで、すなわち被処理基板62Wの表面から測って異なった距離に取り付けられている。
図27は図26の基板処理装置80のうち、被処理基板62Wと紫外光源74A1,74A2との関係を示す。
図27を参照するに、前記紫外光源74A1は被処理基板62Wの中心Oから半径方向に距離r1だけ離れた位置において、第1のワークディスタンスWD1で設けられており、一方前記紫外光源74A2は被処理基板62Wの中心Oから半径方向により大きな距離r2だけ離れた位置において、より小さな第2のワークディスタンスWD2で設けられている。先の基板処理装置70と同様に、前記紫外光源74A1は駆動装置74a1により、また紫外光源74A2は駆動装置74a2により、独立に駆動される。
図28は図26の基板処理装置80において距離r1,r2をそれぞれ50mmおよび165mmに設定し、ワークディスタンスWD1およびWD2をそれぞれ100mmおよび60mmに設定した場合の前記被処理基板62W上における紫外光源74A1による紫外光強度分布および紫外光源74A2による紫外光強度分布、さらに前記紫外光源74A1および74A2による合成紫外光強度分布を示す。ただし図28では前記紫外光源74A1は64%の出力で、また紫外光源74A2は36%の出力で駆動されている。
図28を参照するに、前記紫外光源74A1および74A2による紫外光強度分布はいずれも単調かつ逆方向に変化し、前記紫外光源74A1による紫外光強度分布と紫外光源74A2による紫外光強度分布とを重ねることにより、紫外光照射強度変化を2%以下に抑制することが可能である。
本実施例においても、先の実施例と同様に図9と同様な最適地探索手順により、紫外光源74A1および74A2の最適駆動パワーを求めることができる。
[第9実施例]
次に、本発明の第9実施例によるリモートプラズマ源を使った基板処理装置について説明する。
図29(A)は通常のリモートプラズマ基板処理装置90の構成を示す。ただし図示の例では、基板処理装置90はSi基板上に形成されたSiO2膜の表面に窒化反応により窒化膜を形成する窒化処理に使われている。
図29(A)を参照するに、基板処理装置90は、排気ポート91Aにおいて排気される処理容器91中に被処理基板Wを保持する石英保持台92を有し、さらに前記処理容器91上には、前記被処理基板Wに対向してN2ガスを供給され、これをプラズマにより活性化して活性なN2ラジカルを形成するリモートプラズマ源93が形成されている。また前記石英保持台92の下には、前記被処理基板Wに対応してヒータ94が形成されている。また図29(A)中には、前記リモートプラズマ源93で形成されたN2ラジカルの濃度分布が示されている。当然ながら、N2ラジカルの濃度は前記リモートプラズマ源93の直下、すなわち前記リモートプラズマ源93を被処理基板Wの中心位置に形成していた場合には、前記被処理基板Wの中心において最大となる。
図30は、前記リモートプラズマ源93の構成を詳細に示す。
図30を参照するに、前記リモートプラズマ源93は、一端において前記基板処理容器91に装着され、他端にN2あるいはAr等のプラズマガスを導入する入り口93aを形成され、石英ライニング93bを有する本体93Aと、前記本体93A上の前記他端に形成されマイクロ波を給電されるアンテナ93Bと、前記本体93Aの前記一端に形成され、前記リモートプラズマ源93で形成された活性ラジカルを多数の開口部を介して前記処理容器91に供給する石英拡散板93Cとよりなり、前記本体93Aの外側には前記一端と他端の中間にマグネット93Dが配設される。かかるリモートプラズマ源93では、前記導入口93aを介して前記本体93A中にN2ガスやArガスを導入し、さらに前記アンテナ93Bにマイクロ波を給電することにより、前記本体93A中に前記マグネット93Dの位置に対応してプラズマが形成され、プラズマによりN2ガスが活性化されることにより形成された窒素ラジカルN*が前記拡散板93Cを介して前記処理容器91中に導入される。
図29(B)は図29(A)の基板処理装置90により前記SiO2膜を形成されたSi被処理基板W上にSiON膜を様々な条件で形成した場合の、基板表面におけるNの濃度分布を示す。ただし図29(B)中、Nの濃度分布は被処理基板Wの中心を原点として、半径方向に測定したプロファイルを示す。
図29(B)を参照するに、被処理基板W上にはNの非一様な濃度分布が生じており、前記被処理基板Wの中心において濃度が最大となることがわかる。さらに前記Nの濃度分布は被処理基板Wの中心に対して略対称的であり、このような対称的な濃度分布が生じている場合には、基板を回転させても前記非一様な濃度分布を一様にすることはできない。
これに対し、図31(A),(B)は本発明の第9実施例による基板処理装置100の構成を示す。ただし図31(A)は断面図を、また図31(B)は平面図を示す。図31(A),(B)中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図31(A),(B)を参照するに、本実施例では複数のリモートプラズマ源931および932が被処理基板Wの中心を外して、それぞれの位置(x1,0),(x2,0)に形成されており、その結果前記被処理基板W上にはこれらのリモートプラズマ源の各々に起因するラジカル濃度分布を重畳したラジカル濃度分布が基板Wの半径方向に形成される。そこで図31(A),(B)に示すように被処理基板Wを回転させることにより、基板W上におけるラジカルの濃度分布が平均化される。
図32(A)は、前記被処理基板Wとして表面にSiO2膜を形成したSi基板を使い、被処理基板Wを固定した場合、すなわち回転させない場合における、窒化処理後の基板表面のN濃度分布を示す。一方図32(B)は、前記Si基板Wの窒化処理の際に基板Wを中心の周りで回転させた場合の基板表面におけるN濃度分布を示す。ただし図32(A),(B)中、■,◆および△で示した点は、それぞれリモートプラズマ源931のみを使った場合、リモートプラズマ源932のみを使った場合、およびリモートプラズマ源931および932の双方を使った条件でSiON膜を形成した場合に対応する。
図32(A)を参照するに、前記基板Wを回転させない場合には基板の半径方向にゆるやかに変化するN濃度分布が得られるのに対し、前記基板Wを回転させた場合には、図32(B)に示すように非常に一様なN濃度分布が得られるのがわかる。
図31(A),(B)の基板処理装置100では、前記被処理基板を回転させた場合に図32(B)に示す一様なN濃度分布が得られるように、前記リモートプラズマ源931,932を前記処理容器91上に、図31(A),(B)中において矢印で示したように、変位可能に装着されており、前記リモートプラズマ源931,932は図32(B)のような一様なN濃度分布が得られる最適な位置において前記処理容器91上に固定されている。
図33は、かかる最適位置を求める手順を示すフローチャートである。
図33を参照するに、最初にステップ11において被処理基板上の任意の位置がリモートプラズマ源931,932に対して指定され、前記リモートプラズマ源931,932が前記指定位置において前記処理容器91上に固定される。次にステップ22において前記基板処理装置100中に被処理基板Wを導入し、前記被処理基板Wを回転させながら前記リモートプラズマ源931,932を駆動することにより、SiON膜を形成する。さらに、前記ステップ21およびステップ22を繰り返すことにより、各繰り返し毎に、新たな被処理基板W上に前記リモートプラズマ源931,932の位置をずらした状態でSiON膜を形成する。
さらにステップ23において各実験で得られたSiON膜のN濃度分布を評価し、ステップ24において濃度分布の変動が最小となる最適位置を前記リモートプラズマ源931,932について見出す。
図34は、このように前記リモートプラズマ源931,932を前記処理容器91上に変位可能に装着する機構を示す。ただし図34中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図34を参照するに、前記本体93Aには前記処理容器91の外壁と係合する装着フランジ93cが形成されており、前記本体93Aは前記処理容器91に、前記装着フランジ93cをネジ孔93Eにおいてネジ93Fによりねじ止めすることにより固定される。その際、図34の構成では前記ネジ孔93Eを前記ネジ93Fよりも大きく形成することにより、前記ネジ93Fをゆるめた状態で前記本体93Aを矢印の方向に移動させることが可能である。
図34の構成において、前記ネジ93Fおよびネジ孔93Eを省略し、前記フランジ93cを前記処理容器91の外壁に対して摺動可能に形成することもできる。
さらに本実施例では、図33のリモートプラズマ源931,932の位置についての最適化に続き、図35に示すように駆動パワーの最適化がなされる。
図35を参照するに、最初にステップ31において図33の手順により探索された最適位置が前記リモートプラズマ源931,932に対して指定され、次にステップ32において前記リモートプラズマ源931,932の駆動エネルギが指定される。さらにステップ33において前記基板処理装置100中に被処理基板Wを導入し、前記リモートプラズマ源931,932を前記被処理基板W上の指定されたそれぞれの最適位置において、ステップ32により指定された駆動エネルギで駆動し、SiON膜を形成する。さらに、前記ステップ32およびステップ33を繰り返すことにより、各繰り返し毎に、新たな被処理基板W上に前記駆動エネルギをずらした状態でSiON膜を形成する。
さらにステップ34において各実験で得られたSiON膜中の窒素濃度分布を評価し、濃度変動が最小となる最適駆動エネルギを、前記リモートプラズマ源931および932について見出す。さらにステップ35において、かかる最適駆動エネルギにおいて膜形成がなされるように、前記基板処理装置100のリモートプラズマ源931,932を制御するプログラムを決定する。
図36は、前記リモートプラズマ源931,932の駆動回路95の構成を示す。
図36を参照するに、駆動回路95はマイクロ波電源95Aにより駆動されるマイクロ波発生器95Bを含み、前記マイクロ波発生器95Bで形成された典型的には周波数が2.45GHzのマイクロ波が導波管95Cを通ってインピーダンス整合器95Dに供給され、さらに前記アンテナ93Bに供給される。前記駆動回路95はさらに前記インピーダンス整合器95Dのインピーダンスを前記アンテナ93Bのインピーダンスに整合させる同調回路95Eを備えている。
かかる構成の駆動回路95では、図35のステップ32において、前記マイクロ波発生器95Bを制御することにより、前記リモートプラズマ源931,932の駆動エネルギを最適化することが可能である。
図37(A),(B)は、本実施例の一変形例による基板処理装置100Aの構成を示す。ただし図37(B)は図37(A)の一部を拡大した拡大断面図である。
図37(A),(B)を参照するに、本実施例では前記基板処理容器91上にはフランジ部96Aおよび96Bを有するベローズ96が前記フランジ部96Aにより装着され、さらに前記ベローズ96上には前記リモートプラズマ源931あるいは932の本体93Aが、前記装着フランジ93cをフランジ96Bに係合させることにより装着されている。
かかる構成の基板処理装置100Aでは、前記リモートプラズマ源の前記被処理基板Wに対する角度を、前記ベローズ96を変形することにより変化させることが可能で、従って先に説明した図33の工程において、前記最適位置の決定の変わりに、最適角度を前記リモートプラズマ源931,932に対して決定することも可能である。
図38は本実施例のさらに別の変形例による基板処理装置100Bを示す。ただし図38中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図38を参照するに、基板処理装置100Bでは前記リモートプラズマ源931,932に加えて第3のリモートプラズマ源933が、同様に矢印で示すように変位可能に設けられている。本発明はこのように3つ以上のリモートプラズマ源を有する基板処理装置に対しても有効である。また、本発明は単一のリモートプラズマ源のみを有する基板処理装置に対しても有効である。
また本実施例は表面にSiO2膜を形成したSi基板の窒化反応によるSiON膜の形成のみならず、酸化反応によるSiO2膜の形成やSiN膜の形成、さらにプラズマCVD法によるTa2O5膜、ZrO2膜、HfO2膜、ZrSiO4、HfSiO4膜等の高誘電体膜の形成にも有効である。
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において、様々な変形・変更が可能である。