JP5524887B2 - 重質油からの水素化分解油の製造方法 - Google Patents

重質油からの水素化分解油の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、重質油からの水素化分解油の製造方法に関し、詳細には、重質油を鉄系触媒の存在下で水素化分解した際に発生する固形物を有効利用可能な形態に処理しながら、重質油からより軽質化された水素化分解された油を製造する方法に関する。
原油は様々な留分から構成され、低沸点留分の軽質分から高沸点留分の重質分まで様々な成分が含まれている。しかし、供給原油として近年、重質分の含有率の高い重質原油が増えつつある。一方、需要サイドからは、軽質油の需要が依然として高い。この需給ギャップを解消するために、余剰の重質油から軽質油を製造する重質油分解技術が注目されている。
重質油の分解方法として、これまで様々な方法が提案されている。例えば特許文献1には、重質油を鉄系触媒の存在下スラリー床反応器中で水素化分解する方法が開示されている。特許文献1に開示される方法によれば、安価な鉄系触媒を使い捨てで用いているため、触媒の長期使用による触媒の被毒による触媒性能の低下を気にしなくて済む。
特開2001−89772号公報
しかし、特許文献1に開示される方法では、重質油の水素化分解に伴い、使用済みの鉄系触媒が比較的多量に発生するため、その処理や処分が課題となる。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、重質油の水素化分解に伴い発生する固形物を有効利用可能な形態に処理することができ、廃棄物の発生が少ない水素化分解油の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することができた本発明の水素化分解油の製造方法とは、(a)重質油を、鉄系触媒の存在下、スラリー床反応器中で水素化分解を行う工程と、(b)工程(a)で得られた反応生成物を固液分離して、鉄系触媒を含有する固形物を得る工程と、(c)前記固形物と、水蒸気と分子状酸素を含有する第1ガスとを第1反応器に供給し、固形物を第1ガスと接触させる工程と、(d)工程(c)で処理された固形物と、水蒸気を含有する第2ガスとを第2反応器に供給し、工程(c)で処理された固形物を第2ガスと接触させる工程、を有するところに特徴を有する。
本発明の製造方法によれば、水素化分解で使用された鉄系触媒を工程(b)で固形物として分離し、それを工程(c)および工程(d)で処理することにより、酸化鉄として回収することができる。このように回収された酸化鉄は製鉄原料等に有効利用することができる。また鉄系触媒は硫化鉄の形態で存在しているところ、この硫化鉄形態の鉄系触媒を、第1反応器で水蒸気と分子状酸素を含有する第1ガスと接触させた後、第2反応器で水蒸気を含有する第2ガスと接触させることにより、二酸化硫黄の発生を少量に抑えつつ、硫化鉄形態の鉄系触媒を水素や硫化水素に転化することができる。このように得られた水素や硫化水素は、工程(a)の水素化分解反応の水素源や鉄系触媒の失活防止剤として用いることができる。そのため、本発明によれば、廃棄物の発生の少ない環境に優しい水素化分解油の製造方法が実現できる。
工程(b)で得られた固形物を工程(c)と工程(d)で処理する際、上記のように所望する反応を進行させるためには、第1ガスと第2ガスの組成および温度は次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、第1ガスは、水蒸気/分子状酸素モル比が5以上20以下であることが好ましい。第2ガスは、水蒸気/分子状酸素モル比が20より大きいことが好ましい。第1反応器内の温度は第2反応器内の温度より低いことが好ましい。特に、第2反応器内の温度が700℃以上1000℃以下であることが好ましい。
第2反応器に供給する第2ガスは、第1反応器からの排出ガスに水蒸気を加えることにより得てもよい。第1反応器からの排出ガスを第2ガスの一部に用いることで、第1反応器からの排出ガスの保有熱を工程(d)で有効に利用できるようになる。
工程(d)で生成した硫化水素および/または水素は、工程(a)のスラリー床反応器に供給することが好ましい。硫化水素は、工程(a)で鉄系触媒の失活防止剤として用いることができ、水素は、工程(a)で水素化分解反応の水素源として用いることができる。つまり、工程(d)で生成した硫化水素および/または水素を工程(a)のスラリー床反応器に供給することにより、工程(b)で得られた固形物の反応生成物を有効利用できるようになる。
本発明の製造方法は、さらに、工程(c)および/または工程(d)で生成した硫化水素と二酸化硫黄をクラウス反応器に導入してクラウス反応させ、単体硫黄を得る工程(e)を有し、単体硫黄を工程(a)のスラリー床反応器に供給することが好ましい。本発明の製造方法によれば、工程(b)で得られた固形物を工程(c)と工程(d)で処理した際、二酸化硫黄の発生量を低く抑えることができる。そのため、工程(c)と工程(d)からの排出ガス中のH2S/SO2モル比が2以上となりやすくなる。このような比率で硫化水素と二酸化硫黄が生成すれば、クラウス反応により二酸化硫黄が硫化水素と反応して単体硫黄(S)が生成し、排出ガス中から二酸化硫黄を除去することができる。生成した単体硫黄は、工程(a)で鉄系触媒の助触媒として用いることができる。
また、工程(c)と工程(d)からの排出ガス中のH2S/SO2モル比が2より大きければ、クラウス反応器から排出される排ガス中に硫化水素が含まれることとなる。このような場合は、クラウス反応器から排出され硫化水素を含有する排出ガスを、工程(a)のスラリー床反応器に供給することが好ましい。その結果、クラウス反応器からの排出ガス中の硫化水素を、鉄系触媒の失活防止剤として用いることができるようになる。
本発明によれば、重質油の水素化分解に伴い発生した固形物を有効利用可能な形態に処理することができ、廃棄物の発生が少ない水素化分解油の製造方法が実現できる。
本発明の水素化分解油の製造方法に係るシステムフローチャートの一例を表す。
本発明に係る重質油からの水素化分解油の製造方法は、まず工程(a)において、重質油を鉄系触媒の存在下スラリー床反応器中で水素化分解を行う。重質油を水素化分解することにより重質油が低分子化され、水素化分解油が得られる。水素化分解油としては、例えば、軽質油、中質油、中重質油等が挙げられる。
重質油としては、例えば、原油の常圧蒸留残渣、減圧蒸留残渣や、天然に存在するビチューメン(タールサンド、オイルサンド等)のような重金属を含有する超重質油を用いてもよい。重質油としては、例えば、525℃以上の留分が50質量%以上であるような油を用いることができる。
鉄系触媒としては、触媒活性を有する鉄化合物を与えるものであれば特に限定されず、例えば、リモナイト、パイライト(FeS2)、ヘマタイト(α−酸化鉄;Fe23)、硫酸鉄等を用いることができる。中でも、鉄系触媒としては、重質油の水素化分解反応に対する触媒活性が高い点から、リモナイトを用いることが好ましい。リモナイトは、α−オキシ水酸化鉄(α−FeOOH)を含有し、褐鉄鉱とも称される鉱物である。
スラリー床反応器としては、例えば、気泡塔型反応器を用いればよい。このような反応器を用いれば、液体媒体(重質油)と触媒粒子の懸濁物に水素ガスを導入した際、固体、液体、気体の3相が好適に共存しやすくなり、重質油の水素化分解が良好に行われるようになる。
工程(a)では、重質油に鉄系触媒を添加して懸濁液(スラリー)とし、ここに水素を供給して、重質油の水素化分解を行う。この際、助触媒として、前記懸濁液に硫黄(単体硫黄)または硫黄化合物を添加する。水素としては、分子状水素(水素ガス)を用いてもよいが、例えば、分子状水素を与える化合物として一酸化炭素と水蒸気を供給して、CO+H2O → CO2+H2 の反応式で示されるシフト反応により生成した分子状水素を供給してもよい。水素化分解は、例えば、反応温度430℃〜455℃、反応圧力10MPa〜16MPa、反応時間60分〜120分の反応条件で行えばよい。このような条件で重質油を水素化分解すれば、コーク生成量が低く抑えられ、軽質化された油を高収率で得やすくなる。
工程(a)では、次のように鉄系触媒が活性化されると考えられる。鉄系触媒は助触媒として添加された硫黄や硫黄化合物により硫化され、ピロータイト(pyrrhotite;Fe1-xS)と称される硫化鉄が生成し、これが触媒活性を発現する活性種となる。このとき、鉄系触媒は、ピロータイトに転換する温度が低い程、触媒活性が高くなる。ピロータイトへの転換温度が低い鉄系触媒は、重質油が熱分解し始める前に高い触媒活性を有しやすくなり、重質油の熱分解ラジカルに対し、鉄系触媒から速やかに水素供与されるようになる。その結果、重質油の熱分解ラジカルどうしの重合化が抑制され、重質油の軽量化が効率良く行われるようになる。この点、リモナイトはピロータイトへの転換温度が低く、触媒活性が高い。例えば、リモタイトを構成するα−オキシ水酸化鉄はピロータイトへの転換温度が200℃であり、ヘマタイト(Fe23)のピロータイトへの転換温度350℃やパイライト(FeS2)のピロータイトへの転換温度350℃と比べて転換温度が低いことが分かる。
上記の理由から、本発明においては、鉄系触媒としてリモナイトを用いることが好ましい。ところで、天然のリモナイトには不純物としてヘマタイトが含まれる場合があるが、鉄系触媒としてリモナイトを用いる場合は、上記の理由から、リモナイトはヘマタイト(α−酸化鉄)含有量ができるだけ低いことが好ましい。具体的には、X線回折分析で分析されるα−酸化鉄の量が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
鉄系触媒としてリモナイトを用いる場合、リモナイトは、重質油の供給量に対し鉄成分として0.3質量%〜2.0質量%の範囲で添加することが好ましい。リモナイトが重質油に対し0.3質量%以上の割合で添加されれば、水素化分解の際にコーク生成量が低く抑えられる。一方、リモナイトが重質油に対し2.0質量%を超える割合で添加されても、得られる軽質化された油の収率がそれ以上大きく増加せず、かえってコスト高となる。
助触媒として硫黄を用いる場合、硫黄は、懸濁液に供給される鉄系触媒の鉄成分の量に対し、原子比で1倍以上の割合で添加されることが好ましい。このような割合で硫黄が添加されれば、鉄系触媒からピロータイトが十分に生成しやすくなる。一方、硫黄添加量が多すぎても、過剰の硫黄と水素ガスとの反応により水素が多量に消費されやすくなり、経済的観点から好ましくない。従って、硫黄は、懸濁液に供給される鉄系触媒の鉄成分の量に対し、3倍モル以下の割合で添加されることが好ましい。
工程(a)では、重質油を水素化分解することにより、重質油が軽質化された油が得られる。重質油が軽質化された油は、水素化分解の程度により気相または液相に移行し、ガス状反応生成物または液状反応生成物として回収される。本発明の製造方法では、このガス状反応生成物を水素化分解油として回収してもよく、ガス状反応生成物にさらに水素化処理等を施してもよい。工程(a)の液状反応生成物は、未反応の重質油が含まれ得るとともに、鉄系触媒や副製されたコーク等の固形物と混合された状態で得られる。
工程(a)のガス状反応生成物は、高品位化するために、Ni−Mo系触媒またはCo−Mo系触媒を用いて、水素化処理を施すことが好ましい。具体的には、例えば、工程(a)のガス状反応生成物を水素ガスとともにNi−Mo系触媒またはCo−Mo系触媒が充填された固定床反応器に導入して、反応温度310℃〜380℃で接触水素化させればよい。反応温度が310℃以上であれば水素化反応が速やかに進み、反応温度が380℃以下であれば、炭化水素ガスの生成が抑えられ、油分収率が向上する。ガス状反応生成物は、例えば、空間速度0.3hr-1〜2.0hr-1で固定床反応器に導入すればよい。水素化処理により工程(a)からのガス状反応生成物がさらに軽質化されるとともに、脱硫および脱窒される。本発明の製造方法では、上記のような条件にて、工程(a)のガス状反応生成物にさらに水素化処理を施し、水素化処理油を得てもよい。
工程(a)の液状反応生成物は、工程(b)において固液分離されて、鉄系触媒を含有する固形物が得られる。工程(b)での固液分離により得られる固形物は、引き続く工程(c)で処理される。工程(b)での固液分離により得られる液体成分は、未反応の、あるいは十分に水素化分解されていない重質油が含まれ得ることから、工程(a)に循環され、再び水素化分解されることが好ましい。
固液分離方法は公知の方法を採用すればよく、沈降分離、遠心分離、フィルター分離、浮上分離等を用いることができる。なお、固液分離のための装置が単純であり、高温の反応生成物も取り扱い可能である点から、固液分離方法としては沈降分離を採用することが好ましい。さらに、反応生成物の固液分離を促進したり、分離効率を高めるために、軽質溶剤を反応生成物に添加してもよい。軽質溶剤としては、例えば、芳香族系軽質溶剤にナフサを混合したものが用いられる。
工程(b)での固液分離により得られる固形物には、鉄系触媒が含まれる。鉄系触媒は、上記説明したように工程(a)においてスラリー床反応器中で硫化鉄に変化したり、あるいは当該反応器より前段に設けられる予熱器内で硫化鉄に変化するため、工程(b)で得られる固形物中に含まれる鉄系触媒は硫化鉄形態となっている。しかし硫化鉄形態の鉄は、そのままの形態で有効利用することは難しい。例えば、硫化鉄をセメントクリンカー燃料として利用する場合は、硫化鉄中に硫黄成分が高濃度で含まれることから、大量に当該用途に用いることは難しく、また高有価で引き取ってもらうことは難しい。固形物中に含まれる鉄系触媒の有効利用を促進するためには、硫化鉄形態の鉄を酸化鉄形態にすることが好ましい。酸化鉄形態の鉄であれば、製鉄原料として好適に有効利用できるためである。硫化鉄を酸化鉄に転化するには、例えば、鉄系触媒を含有する固形物を流動床炉等で燃焼させればよいが、この場合は、硫化鉄の硫黄成分に由来して二酸化硫黄が生成し、排出ガス中に含まれる二酸化硫黄の処理が問題となる。排出ガス中に含まれる二酸化硫黄は、例えば、石灰スラリーに吸収させて排出ガス中から除去することができるが、その結果生成する硫酸カルシウムもまたその処分が問題となる。
そこで本発明の製造方法では、工程(b)で得られた前記固形物と、水蒸気と分子状酸素を含有する第1ガスとを、固形物処理用の第1反応器に供給し、前記固形物を前記第1ガスと接触させる工程(c)を設け、さらに、工程(c)で処理された固形物と、水蒸気を含有する第2ガスとを第2反応器に供給し、前記工程(c)で処理された固形物を前記第2ガスと接触させる工程(d)を設けている。工程(b)で得られた固形物を、工程(c)および工程(d)により順に処理することで、鉄系触媒が酸化鉄として回収されるとともに、二酸化硫黄の生成量が低減し、排出ガス性状も改善される。以下、工程(c)と工程(d)について詳しく説明する。
工程(c)で第1反応器に供給する固形物は、工程(b)の固液分離により得られる固形物をそのまま用いてもよいが、工程(c)および工程(d)での固形物の処理効率を高めるために、固形物は必要に応じて粉砕してもよい。例えば、固形物は、目開き4.0mm(より好ましくは目開き2.0mmであり、さらに好ましくは目開き1.0mm)のふるいの通過粒分が90質量%となることが好ましい。このような条件を満たさない場合は、工程(b)での固液分離により得られる固形物は、粉砕して前記条件を満たすようにして、工程(c)に供給することが好ましい。
固形物中に含まれる硫化鉄形態の鉄系触媒は、理論上は、下記反応式(1),(2)に示すように、水蒸気と反応して酸化鉄を与えるとともに、二酸化硫黄の生成も抑制できる。つまり、工程(b)で得られた固形物を、工程(d)で水蒸気を含有する第2ガスと接触させるだけで、理論上は、製鉄原料として好適に有効利用できる酸化鉄が得られるとともに、排出ガス中の二酸化硫黄生成量も低減できるように思われる。
3FeS+10H2O → Fe34+3SO2+10H2 ・・・ (1)
3H2+SO2 → H2S+2H2O ・・・ (2)
しかし、実際に工程(b)で得られた固形物を水蒸気を含有するガスと接触させたところ、硫化鉄はほとんど水蒸気と反応せず、固形物中に硫黄が残留した。その原因を検討したところ、硫化鉄の表面を炭素成分が覆い、硫化鉄と水蒸気の接触が阻害されていることが推察された。
そこで本発明の製造方法では、工程(b)で得られた固形物を、まず工程(c)において、分子状酸素および水蒸気を含有する第1ガスと接触させている。工程(c)では、第1ガスが分子状酸素を含有しているため、分子状酸素が硫化鉄の表面を覆っている炭素成分と反応して炭素成分が除去され、引き続く工程(d)において硫化鉄が水蒸気と反応することにより、所望の効果が達成されると考えられる。また、工程(c)で用いられる第1ガスには分子状酸素に加え水蒸気も含まれるため、分子状酸素による硫化鉄の酸化反応が過度に進行せず、二酸化硫黄の過剰な生成も抑制される。
工程(c)では、工程(b)で得られた固形物と、水蒸気と分子状酸素を含有する第1ガスとを第1反応器に供給する。第1反応器内では、固形物が第1ガスと接触して、第1ガスと固形物中の硫化鉄や炭素成分との反応が進行する。第1反応器の種類は特に限定されず、例えば、固定床反応器であっても、移動床反応器であっても、流動床反応器であってもよい。
第1ガスに含まれる分子状酸素と水蒸気の比率は特に限定されないが、第1ガスの水蒸気/分子状酸素モル比(第1ガスに含まれる分子状酸素に対する水蒸気のモル比)は5以上が好ましく、7以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。第1ガスの水蒸気/分子状酸素モル比が5以上であれば、硫化鉄の分子状酸素による酸化反応が過度に進行せず、二酸化硫黄の過剰な生成が抑えられる。またこの場合、工程(c)と工程(d)でH2SがSO2の2倍モル以上生成しやすくなり、つまり、工程(c)と工程(d)からの排出ガス中のH2S/SO2モル比(工程(c)と工程(d)の両方合わせた排出ガス中に含まれるSO2に対するH2Sのモル比)が2以上となりやすくなる。このような比率でH2SとSO2が生成すれば、下記反応式(3)に示すクラウス反応によりSO2がH2Sと反応して単体硫黄(S)が生成し、排出ガス中から二酸化硫黄を除去することができる。なお、生成した単体硫黄は工程(a)で鉄系触媒の助触媒として用いることができる。
2H2S+SO2 → 3S+2H2O ・・・ (3)
一方、第1ガスの水蒸気/分子状酸素モル比は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。第1ガスの水蒸気/分子状酸素モル比が20以下であれば、第1ガスに含まれる分子状酸素が硫化鉄表面の炭素成分と反応して、硫化鉄表面から炭素成分が好適に除去される。従って、後段の工程(d)において、硫化鉄と水蒸気との反応が良好に進行しやすくなる。
第1ガスに含まれる分子状酸素は、純酸素として供給してもよく、空気等の分子状酸素含有ガスとして供給してもよい。処理コストを低く抑える点からは、分子状酸素としては空気を用いることが好ましい。この場合、第1ガスはさらに窒素等を含有することとなる。このように、第1ガスは分子状酸素と水蒸気に加え、他の成分を含有していてもよい。
第1ガスは、水蒸気と分子状酸素を合わせたモル分率が0.60以上であることが好ましく、0.70以上であることがより好ましい。第1ガス中の水蒸気と分子状酸素を合わせたモル分率が0.60以上であれば、第1ガスと鉄系触媒との反応が好適に進行しやすくなる。第1ガス中の水蒸気と分子状酸素を合わせたモル分率の上限は特に限定されず、1.0以下であればよい。分子状酸素として空気を用いる場合、第1ガスは基本的に水蒸気と分子状酸素と分子状窒素から構成されることが好ましい。なお分子状酸素として空気を用いる場合、分子状窒素/分子状酸素のモル比は78/21となる。
工程(c)において、第1反応器内の温度は、硫化鉄表面の炭素成分が第1ガス中の分子状酸素と酸化反応する温度であれば特に限定されないが、少なくとも工程(d)の第2反応器内の温度より低いことが好ましい。工程(c)では比較的穏和な条件で固形物と第1ガスとの反応を行うことが好ましく、第1ガスが硫化鉄そのものと過度に反応しないことが好ましいためである。第1反応器内の温度としては、具体的には、500℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、また700℃未満が好ましく、650℃以下がより好ましい。第1反応器内の温度が500℃以上であれば、第1ガス中の分子状酸素と硫化鉄表面の炭素成分との反応が速やかに進みやすくなり、第1反応器内の温度が700℃未満であれば、第1ガスと硫化鉄との反応が過度に進行しにくくなり、第1ガス中の分子状酸素と硫化鉄の反応による二酸化硫黄の過剰な生成が抑えられる。
工程(c)において、第1反応器内の圧力は特に限定されないが、常圧以上であればよく、0.1MPa〜1.0MPaの範囲内が好ましい。
工程(c)では、固形物の硫黄除去率は60%以下とすることが好ましい。工程(c)では、固形物(代表的には硫化鉄)中の硫黄成分が第1ガスといくらか反応して、二酸化硫黄と硫化水素が生成する場合がある。このとき、工程(c)において固形物の硫黄除去率が60%以下であれば、後段の工程(d)に持ち込まれる硫黄成分量が十分確保され、工程(d)において十分な量の硫化水素が生成しやすくなる。その結果、工程(c)と工程(d)からの排出ガス中のH2S/SO2モル比が2以上となりやすくなり、クラウス反応により排出ガス中から二酸化硫黄を好適に除去できるようになる。なお、工程(c)における固形物の硫黄除去率は、次式により算出される:固形分の硫黄除去率(%)=[1−(CS2/CFe2)/(CS1/CFe1)]×100。ここで、CS1とCFe1はそれぞれ工程(c)に供給する固形物中のS濃度とFe濃度を表し、CS2とCFe2はそれぞれ工程(c)で処理された固形物中のS濃度とFe濃度を表す。固形物中のS濃度は燃焼赤外線吸光法により測定し、Fe濃度はICP発光分光分析法により測定する。
工程(c)の処理時間は特に限定されないが、工程(c)での硫黄除去率が60%以下となるように適宜調整することが好ましい。工程(c)での硫黄除去率は、第1反応器内の温度や工程(c)の処理時間により変わる。例えば、第1反応器内の温度が600℃の条件で工程(c)を行う場合、工程(c)の処理時間は10分〜40分の範囲内で行えばよい。第1反応器内の温度が600℃の条件において、工程(c)を処理時間40分以下で行えば工程(c)での硫黄除去率60%以下にしやすくなる。一方、工程(c)の処理時間が短くても、硫化鉄表面の炭素成分が十分に除去されず、引き続く工程(d)において硫化鉄と水蒸気との反応が進行しにくくなることから、第1反応器内の温度が600℃の条件においては工程(c)の処理時間を10分以上とすることが好ましい。第1反応器内の温度が600℃より低い場合は、工程(c)の処理時間を、第1反応器内の温度が600℃の場合より長くすればよく、第1反応器内の温度が600℃より高い場合は、工程(c)の処理時間を、第1反応器内の温度が600℃の場合より短くすればよい。なお、工程(c)の処理時間とは、固形物が第1反応器に供給されてから排出されるまでの時間(平均滞留時間)を意味する。
工程(c)で処理された固形物は、工程(d)において、水蒸気を含有する第2ガスと接触させる。つまり工程(d)では、工程(c)で処理された固形物と、水蒸気を含有する第2ガスを第2反応器に供給し、第2反応器内で、工程(c)で処理された固形物を第2ガスと接触させる。その結果、固形物中の硫化鉄が水蒸気と反応して酸化鉄が生成する。工程(d)では、上記反応式(1),(2)に示す反応が起こっていると考えられる。このようにして得られた酸化鉄は、製鉄原料として好適に有効利用できる。
工程(d)ではまた、上記反応式(1),(2)に示す反応により、硫化水素が生成する。工程(d)で生成した硫化水素は、工程(c)で生成した二酸化硫黄とクラウス反応させることにより、排出ガス中の二酸化硫黄を除去することができる。このとき、工程(c)で生成した硫化水素もクラウス反応に供してもよい。クラウス反応は公知の方法により行えばよく、活性アルミナや二酸化チタン等の触媒が充填されたクラウス反応器を用い、250℃〜350℃程度でクラウス反応を行えばよい。クラウス反応により得られる生成ガス(クラウス反応器からの排出ガス)は、130℃〜150℃程度に冷却することにより、単体硫黄が凝縮生成する。このようにして得られた単体硫黄は、工程(a)で鉄系触媒の助触媒として用いることができる。つまり、本発明の製造方法は、工程(c)および/または工程(d)で生成した硫化水素と二酸化硫黄をクラウス反応器に導入してクラウス反応させ、単体硫黄を得る工程(e)をさらに有し、単体硫黄を工程(a)のスラリー床反応器に供給し、鉄系触媒の助触媒として用いてもよい。
硫化水素が二酸化硫黄よりも過剰に生成した場合、すなわち工程(c)と工程(d)からの排出ガス中のH2S/SO2モル比が2より大きくなる場合、クラウス反応により未反応の硫化水素が余ってくる。この場合、余剰の硫化水素は、工程(a)のスラリー床反応器に供給することより、鉄系触媒の失活防止剤として用いることができる。
工程(d)ではまた、上記反応式(1),(2)に従い、水素も生成する。生成した水素は、工程(a)のスラリー床反応器に供給し、重質油の水素化分解の水素源として用いることができる。この場合、例えば、工程(c)と工程(d)からの排出ガスをクラウス反応器に導入した後、クラウス反応器からの排出ガスを工程(a)のスラリー床反応器に供給すればよい。
上記では、工程(d)からの硫化水素および水素を含有する排出ガスをクラウス反応器に導入する態様について説明したが、工程(d)で生成した硫化水素および/または水素は、クラウス反応器を介さず、工程(a)のスラリー床反応器に供給してもよい。この場合、工程(c)からの排出ガスに含まれる二酸化硫黄は、石灰スラリー等のアルカリ吸収液と接触させて、硫酸カルシウム等として除去することが好ましい。このように処理しても、鉄系触媒を含有する固形物を単に燃焼処理する場合と比較して二酸化硫黄発生量が減少するため、それに伴い生成する硫酸カルシウム等の処分量も減ることとなる。
固形物中には、鉄系触媒とともに、コーク等の炭素成分も含まれ得る。固形物中に炭素成分が含まれる場合は、工程(d)で炭素成分が水蒸気と反応して、下記反応式(4),(5)に示すように一酸化炭素や水素が生成し得る。
C+H2O → CO+H2 ・・・ (4)
C+2H2O → CO2+2H2 ・・・ (5)
上記反応式(4),(5)に従い生成した水素もまた、工程(a)のスラリー床反応器に供給して、重質油の水素化分解の水素源として用いることができる。さらに、上記反応式(4)に従い生成した一酸化炭素は、水蒸気とともに工程(a)のスラリー床反応器に供給することにより、下記反応式(6)に示すシフト反応により、水素が生成し得る。シフト反応により生成した水素も、重質油の水素化分解の水素源として用いることができる。
CO+H2O → CO2+H2 ・・・ (6)
工程(d)で用いられる第2反応器の種類は特に限定されず、工程(c)の第1反応器として使用可能な反応器を採用できる。
第2ガスは少なくとも水蒸気を含有していればよく、さらに他の成分を含有していてもよい。例えば、工程(c)の第1反応器からの排出ガスに水蒸気を加えて第2ガスとして用いてもよい。この場合、第1反応器からの排出ガスの保有熱を工程(d)で有効に利用できる点で利点がある。
工程(d)において、硫化鉄や炭素成分の酸化反応が抑制されるようにする点から、第2ガスは分子状酸素の含有率が低い方が好ましく、分子状酸素を含有しなくてもよい。第2ガスが分子状酸素を含有する場合でも、第2ガスの水蒸気/分子状酸素モル比は20より大きいことが好ましく、25以上であることがより好ましく、30以上であることがさらに好ましい。なお、第2ガスの水蒸気/分子状酸素モル比の上限値は特に限定されるものではないが、酸素を含有する場合に想定される上限値としては1000程度になると考えられる。
工程(d)において、第2反応器内の温度は、硫化鉄が第2ガス中の水蒸気と反応する温度であれば特に限定されないが、当該温度は700℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、また1000℃以下が好ましく、950℃以下がより好ましい。第2反応器内の温度が700℃以上であれば、第2ガス中の水蒸気と硫化鉄との反応が速やかに進みやすくなる。一方、第2反応器内の温度が1000℃より高ければ、第2ガスの加熱に必要な熱量が過大となり、非経済的となりやすい。
工程(d)において、第2反応器内の圧力は特に限定されないが、常圧以上であればよく、0.1MPa〜1.0MPaの範囲内が好ましい。
工程(d)の処理時間は、100分以上が好ましく、150分以上がより好ましく、また300分以下が好ましく、240分以下がより好ましい。処理時間が100分以上であれば、硫化鉄と水蒸気との反応が十分に進行しやすくなる。一方、処理時間が300分を超えてもそれ以上反応が進行せず、エネルギー的に非効率的となり、非経済的となりやすい。なお、工程(d)の処理時間とは、固形物が第2反応器に供給されてから排出されるまでの時間(平均滞留時間)を意味する。
本発明の製造方法によれば、工程(b)で得られた固形物を、工程(c)において分子状酸素および水蒸気を含有する第1ガスと接触させ、さらに工程(d)において水蒸気を含有する第2ガスと接触させることにより、固形物中の硫黄含有量を95%以上低減することが可能となる。固形物中に含まれていた硫化鉄形態の鉄系触媒は、酸化鉄として回収することができ、製鉄原料等に有効利用することが容易となる。さらに、硫化鉄形態の鉄系触媒は、水蒸気と反応させることにより水素や硫化水素に転化することができ、これらは工程(a)の水素化分解の水素源や鉄系触媒の失活防止剤として用いることができる。そのため本発明によれば、廃棄物の発生の少ない環境に優しい水素化分解油の製造方法が実現できる。
本発明の製造方法は、特開2001−89772号公報、特開2003−327971号公報、特開2006−241317号公報、特開2007−246719号公報、特開2008−163097号公報に開示された内容を合わせて実施することができ、本発明はこれらの文献に開示された内容も包含する。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(1)実施例1
図1に示すシステムフローチャートに従い、石油系重質油の水素化分解を行い、水素化分解油を製造した。原料となる重質油として表1に示す留分組成の減圧蒸留残渣(以下、「VR」と称する場合がある)を用い、鉄系触媒としてリモナイトを用いた。鉄系触媒は、原料VR100質量部に対し鉄原子として1質量部加え、助触媒として硫黄を鉄系触媒の鉄添加量の1.2倍モル加えた。スラリー床反応器には、原料VR、鉄系触媒、助触媒がそれぞれ供給され、さらに後段プロセスから循環する343℃−525℃留分と+525℃留分からなる重質反応生成物が供給された。重質反応生成物の各留分の量は、343℃−525℃留分が原料VR100質量部に対し59質量部(59%VR)であり、+525℃留分が原料VR100質量部に対し50質量部(50%VR)であった。なお、原料VRに対する質量基準の割合を「%VR」で表記する。スラリー床反応器では、圧力12MPa、温度450℃の条件で90分間、水素ガスを供給しながら重質油の水素化分解を行い、水素化分解油を得た。水素化分解により、各留分が表2に示す収率で得られた。オイル(C5−525℃)収率は86.8%VRであった。
Figure 0005524887
Figure 0005524887
スラリー床反応器から排出された水素化分解の反応生成物は、気液分離装置によりガス状反応生成物と液状反応生成物に分離した。ガス状反応生成物は水素化処理反応器に導入して水素化処理を行った。液状反応生成物は、一部を重質反応生成物としてスラリー床反応器に循環させ、他部を固液分離装置に供給した。固液分離装置では、液状反応生成物が上澄みと固形物とに分離され、上澄みは重質反応生成物としてスラリー床反応器に循環させた。固液分離により得られた固形物は、下記表3に示す組成を有しており、鉄系触媒として加えられたリモナイトと、リモナイトから生成したピロータイト(硫化鉄)に由来して、Fe含有量とS含有量が高いことが分かる。表3中、金属にはAl、Si、Ni、Cr等が含まれる。なお、固形物の組成は、硫黄と炭素が燃焼赤外線吸光法を利用した炭素・硫黄分析装置(LECO Corporation製、CS-444)により測定し、鉄やその他の金属はICP発光分光分析装置(島津製作所製、ICPV-1017)により測定した。
Figure 0005524887
固形物は、1mm以下に粉砕した後、第1反応器に供給した。第1反応器には、水蒸気71容量%、空気29容量%からなる第1ガスが予熱器で加熱されて供給され、固形物は第1反応器内で常圧下600℃で30分間第1ガスで処理した。その後、固形物を第1反応器から排出した。第1反応器から排出された固形物の組成、および、排出ガスの組成と収支を表4に示す。排ガス組成は、H2Sについてはアルカリ吸収/メチレンブルー吸光光度法、SO2についてはアルカリ吸収/イオンクロマトグラフ法(DIONEX Corporation製、DX500)、その他のガスについてはガスクロマトグラフ(Varian, Inc.製、CP-4900)により測定した。なお表4に示す組成は、第1反応器に供給する固形物質量に対する各成分の質量割合を表し、収支は、第1反応器に供給する固形物質量100kg当たりの各成分の物質量を表す。
Figure 0005524887
第1反応器から排出された固形物は、続いて第2反応器に供給した。第1反応器からの排出ガスに水蒸気が加えられたガスが予熱器で加熱され、第2ガスとして第2反応器に供給された。第2ガスには水蒸気が82容量%含まれ、第2ガスの水蒸気/分子状酸素モル比は50であった。固形物は第2反応器内で常圧下900℃で150分間第2ガスで処理した。その後、固形物を第2反応器から排出した。第2反応器から排出された固形物は、X線回折分析により、Fe23およびFe34であることが確認された。第2反応器から排出された固形物の組成、および、排出ガスの組成と収支を表5に示す。なお表5に示す組成は、第1反応器に供給する固形物質量に対する各成分の質量割合を表し、収支は、第1反応器に供給する固形物質量100kg当たりの各成分の物質量を表す。
Figure 0005524887
第2反応器からの排出ガスは、凝縮器で水蒸気を分離し、さらに二酸化炭素を除去した後、クラウス反応器に導入した。クラウス反応器では、硫化水素と二酸化硫黄との反応により単体硫黄が生成した。この硫黄は水素化分解を行うスラリー床反応器に供給し、鉄系触媒の助触媒として用いた。第2反応器からの排出ガスには、H2SがSO2の2倍モル以上含まれるため、クラウス反応によりSO2が完全に除去された。クラウス反応器からの排出ガスには未反応の硫化水素が残存しており、さらに第2反応器から排出された水素と一酸化炭素が含まれていたため、クラウス反応器からの排出ガスを、水素化分解を行うスラリー床反応器に供給し、水素化分解の水素源および鉄系触媒の失活防止剤として用いた。
(2)比較例1
実施例1において固液分離装置で分離され1mm以下に粉砕された固形物を、反応ガスとして水蒸気のみが供給されている反応器に供給した。固形物は、反応器内で常圧下600℃、800℃、または900℃で45分間処理した。処理前および処理後の固形物の組成、および、反応器からの排出ガスの組成を表6に示す。なお表6に示す組成は、反応器に供給する固形物質量に対する各成分の質量割合を表す。
Figure 0005524887
表6の結果から分かるように、鉄系触媒を含有する固形物を水蒸気と接触させて処理するだけでは、固形物のS含有量はほとんど減少しない。これは、硫化鉄の表面が炭素成分で覆われ、硫化鉄と水蒸気の接触が阻害されているためと考えられた。このようにS含有量の高い固形物は、Fe含有量が高くても、製鉄原料として有効利用することは難しい。
(3)比較例2
実施例1において、第1反応器に空気のみからなる第1ガスを供給し、固形物を第1反応器内で常圧下500℃で10分間第1ガスで処理した以外は、実施例1と同様にして重質油の処理を行った。第1反応器から排出された固形物の組成、および、排出ガスの組成と収支を表7に示し、第2反応器から排出された固形物の組成、および、排出ガスの組成と収支を表8に示す。なお表7および表8に示す組成は、第1反応器に供給する固形物質量に対する各成分の質量割合を表し、収支は、第1反応器に供給する固形物質量100kg当たりの各成分の物質量を表す。
Figure 0005524887
Figure 0005524887
表7および表8の結果から分かるように、第1ガスとして空気を用いた場合は、第2反応器から排出される固形物中のS含有量は十分に低減し、鉄系触媒は最終的に酸化鉄として回収できる。しかし、第1反応器および第2反応器からの二酸化硫黄発生量が増えるため、二酸化硫黄の処理が問題となる。第1反応器および第2反応器からの排出ガスをクラウス反応させるとしても、H2SがSO2の2倍モル未満となり、クラウス反応させても二酸化硫黄が残存する。第1ガスとして空気のみを用いた場合は、鉄系触媒を含有する固形物を比較的低温で短時間で第1反応器で処理しても、二酸化硫黄の発生量を低く抑えることは難しい。従って、二酸化硫黄の発生量を低減するためには、第1ガスとしては、空気(分子状酸素)とともに水蒸気を用いることが必要であることが分かる。
本発明は、原油の常圧蒸留残渣や減圧蒸留残渣等の重質油から水素化分解油を得るのに適用できる。

Claims (8)

  1. (a)重質油を、鉄系触媒の存在下、スラリー床反応器中で水素化分解を行う工程と、
    (b)前記工程(a)で得られた反応生成物を固液分離して、前記鉄系触媒を含有する固形物を得る工程と、
    (c)前記固形物と、水蒸気と分子状酸素を含有する第1ガスとを500℃以上700℃未満の第1反応器に供給し、前記固形物を前記第1ガスと接触させる工程と、
    (d)前記工程(c)で処理された固形物と、水蒸気を含有する第2ガスとを700℃以上1000℃以下の第2反応器に供給し、前記工程(c)で処理された固形物を前記第2ガスと接触させる工程
    を有することを特徴とする重質油からの水素化分解油の製造方法。
  2. 前記第1ガスの水蒸気/分子状酸素モル比が5以上20以下である請求項1に記載の水素化分解油の製造方法。
  3. 前記第2ガスの水蒸気/分子状酸素モル比が20より大きい請求項1または2に記載の水素化分解油の製造方法。
  4. 前記第1反応器内の温度は前記第2反応器内の温度より低い請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素化分解油の製造方法。
  5. 前記第1反応器からの排出ガスに水蒸気を加えて前記第2ガスとして用いる請求項1〜のいずれか一項に記載の水素化分解油の製造方法。
  6. 前記工程(d)で生成した硫化水素および/または水素を、前記工程(a)の前記スラリー床反応器に供給する請求項1〜のいずれか一項に記載の水素化分解油の製造方法。
  7. さらに、前記工程(c)および/または前記工程(d)で生成した硫化水素と二酸化硫黄をクラウス反応器に導入してクラウス反応させ、単体硫黄を得る工程(e)を有し、
    前記単体硫黄を、前記工程(a)の前記スラリー床反応器に供給する請求項1〜のいずれか一項に記載の水素化分解油の製造方法。
  8. 前記クラウス反応器から排出され硫化水素を含有する排出ガスを、前記工程(a)の前記スラリー床反応器に供給する請求項に記載の水素化分解油の製造方法。
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