以下に本発明をさらに具体的に説明する。
1.食道ガン関連マーカー
1.1 食道ガン関連標的核酸(1)
本発明の組成物、キット又はDNAチップを使用して食道ガンの存在及び転移を検出、判定又は予測するための食道ガン転移関連マーカーとしての標的核酸には、例えば、配列番号1〜47で表される塩基配列を含むヒト遺伝子(すなわち、それぞれ、AXL、C6orf54、ZBTB11、TNFRSF14、NSUN5、SPEN、LTBP3、SYNGR1、ARL3、SLC13A1、RALGDS、ADD3、MAP3K12、AVPI1、GIMAP6、FLJ11259、C3AR1、PCGF2、PDE6D、PLCG2、GPR148、ARF6、NISCH、GLYAT、IGHM、FBXO38、SLC12A1、PGDS、CD48、IMPA2、HSPA6、EIF3S9、ZNF659、RAB6C、NOL1、DAB2、EBI3、PRSS3、GLB1、SAMSN1、AQP3、CAPZA2、B4GALT2、ARHGEF3、POGK、PRAF1およびHPGD)、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体が含まれる。ここで、遺伝子、同族体、転写産物、cDNA、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。好ましい標的核酸は、配列番号1〜47で表される塩基配列を含むヒト遺伝子、それらの転写産物又はcDNA、より好ましくは該転写産物又はcDNAである。
本発明において食道ガン転移の標的となる上記遺伝子はいずれも、手術時にリンパ節転移があった患者由来の食道ガン組織に比較して、手術時にリンパ節転移がなかった患者由来の食道ガン組織において発現レベルが有意に変化(すなわち、増加又は低下)しているものである。
第1の標的核酸は、AXL遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにAXL遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第2の標的核酸は、C6orf54遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにC6orf54遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第3の標的核酸は、ZBTB11遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにZBTB11遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第4の標的核酸は、TNFRSF14遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにTNFRSF14遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第5の標的核酸は、NSUN5遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにNSUN5遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第6の標的核酸は、SPEN遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにSPEN遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第7の標的核酸は、LTBP3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにLTBP3遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第8の標的核酸は、SYNGR1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにSYNGR1遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第9の標的核酸は、ARL3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにARL3遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第10の標的核酸は、SLC13A1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにSLC13A1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第11の標的核酸は、RALGDS遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにRALGDS遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第12の標的核酸は、ADD3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにADD3遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第13の標的核酸は、MAP3K12遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにMAP3K12遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第14の標的核酸は、AVPI1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにAVPI1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第15の標的核酸は、GIMAP6遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにGIMAP6遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第16の標的核酸は、FLJ11259遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにFLJ11259遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第17の標的核酸は、C3AR1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにC3AR1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第18の標的核酸は、PCGF2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにPCGF2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第19の標的核酸は、PDE6D遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにPDE6D遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第20の標的核酸は、PLCG2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにPLCG2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第21の標的核酸は、GPR148遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにGPR148遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第22の標的核酸は、ARF6遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにARF6遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第23の標的核酸は、NISCH遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにNISCH遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第24の標的核酸は、GLYAT遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにGLYAT遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第25の標的核酸は、IGHM遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにIGHM遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第26の標的核酸は、FBOX38遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにFBOX38遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第27の標的核酸は、SLC12A1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにSLC12A1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第28の標的核酸は、PGDS遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにPGDS遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第29の標的核酸は、CD48遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにCD48遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第30の標的核酸は、IMPA2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにIMPA2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第31の標的核酸は、HSPA6遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにHSPA6遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第32の標的核酸は、EIF3S9遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにEIF3S9遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第33の標的核酸は、ZNF659遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにZNF659遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第34の標的核酸は、RAB6C遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにRAB6C遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第35の標的核酸は、NOL1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにNOL1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第36の標的核酸は、DAB2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにDAB2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第37の標的核酸は、EBI3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにEBI3遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第38の標的核酸は、PRSS3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにPRSS3遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第39の標的核酸は、GLB1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにGLB1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第40の標的核酸は、SAMSN1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにSAMSN1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第41の標的核酸は、APQ3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにAPQ3遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第42の標的核酸は、CAPZA2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにCAPZA2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第43の標的核酸は、B4GALT2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにB4GALT2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第44の標的核酸は、ARHGEF3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにARHGEF3遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第45の標的核酸は、POGK遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにPOGK2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第46の標的核酸は、PRAF1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにPRAF1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第47の標的核酸は、HPGD遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。HPGD遺伝子は食道ガン株化細胞の転移性亜株で発現が増加していることが、Kawamata,H.ら、2003年、Cancer Science、第94巻、p.699―706に示されている。
1.2 食道ガン関連標的核酸(2)
本発明の組成物、キット又はDNAチップを使用して食道ガン又は食道ガン細胞の存在を検出、判定又は予測するための食道ガン関連マーカーとしての標的核酸の別の例には、例えば、配列番号142〜161で表される塩基配列を含むヒト遺伝子(すなわち、それぞれ、GALNS, fgf3, CAMK2B, CaMKIINalpha, PSARL, XRCC3, CAPG, GRHPR, TROAP, RRM2, SATB2, C14orf162, SEPT6, M6PR, SPRR3, EML1, YPEL5, EIF4EBP2, SLC2A14及びSLIT2)、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体が含まれる。ここで、遺伝子、同族体、転写産物、cDNA、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。好ましい標的核酸は、配列番号142〜161で表される塩基配列を含むヒト遺伝子、それらの転写産物又はcDNA、より好ましくは該転写産物又はcDNAである。
本発明において食道ガンの標的となる上記遺伝子はいずれも、非ガン組織に比べて食道ガン組織において該遺伝子の発現レベルが有意に低下しているものである。
第1の標的核酸は、GALNS遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
GALNS遺伝子は、N―アセチルガラクトサミン−6−硫酸スルファターゼの遺伝子である(Tomatsu,s.ら、1991 年、Biochemical Biophysical Research Communication、第181巻、p.677−683)。この遺伝子の翻訳産物はライソゾーム内でグリコサミノグリカン、硫酸ケラタン、コンドロイチン6−硫酸などの代謝に関与しており、この遺伝子の欠損、欠失、変異は遺伝性ムコ多糖類症であるモルキオA症候群を引き起こすことが知られている(Fukuda, S.ら、1992年、Journal of Clinical Investigation、 第90巻、p.1049−1053など)。モルキオA症候群は、角膜混濁、大動脈弁閉鎖不全、硫酸ケラタンの尿中排泄や骨病変を主な症状とする。しかしながら、これまでにGALNS遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第2の標的核酸は、fgf3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
fgf3遺伝子は、線維芽細胞成長因子ファミリーに属する遺伝子である(Brookes,S.ら、1989年、Oncogene、第4巻、p.429−436)。この遺伝子の翻訳産物は耳の形成に寄与していることが示唆されているほか、プロトオンコジーンとしてヒト食道ガン細胞を含む多くの種のヒト及びマウスのガン組織で増幅していることが見出されている(Kitagawa, Yら、1991年、Cancer Research、第51巻、p.1504−1508)。しかしながら、これまでにfgf3遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第3の標的核酸は、CAMK2B遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
CAMK2B遺伝子は、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIβの遺伝子である(Tombes,r.M.ら、1997年、Biochimica et Biophysica Acta、第1355巻、p.281−292)。この遺伝子の翻訳産物は様様な基質のセリン・スレオニン残基をリン酸化し、細胞周期の調節や中枢神経系の形成に寄与していることが示唆されている。肺小細胞ガン細胞においてCAMK2Bの活性化が細胞周期の促進を起こすことが示唆されているが(Williams,C.L.ら、1996年、Biochemical Pharmacology、第51巻、p.707−715)、しかしながら、これまでにcMAK2B遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第4の標的核酸は、CaMKIINalpha遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
CAMKIINalpha遺伝子は、Calcium/calmodulin−Dependent protein kinase IIの遺伝子である(Strausberg,R.L.ら、2002年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第99巻、p.16899−16903)。CaM−kinase II inhibitor alpha(rat LOC287005)に強い相同性があり、LOC287005は脳に特異的なCalcium/calmodulin−Dependent protein kinase IIの阻害タンパク質であることが知られている(Chang.B.H.ら、2001年、Neuroscience、第102巻、p.767−777)。しかしながら、これまでにCaMKIINalpha遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第5の標的核酸は、PSARL遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
PSARL遺伝子は、Presenilin−associated Rhomboid−like proteinの遺伝子である(Pellegrini,Lら、2001年、Journal of Alzheimer’s Disease、第3巻、p.181−190)。S.cerevisiaeのPSARLホモログであるRbd1の翻訳産物は、ミトコンドリア内膜に存在し、欠損によって呼吸不全を引き起こすことが知られている(MacQuibban,Gら、2003年、Nature、第423巻、p.537−541)。しかしながらこれまでにPSARL遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第6の標的核酸は、XRCC3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
XRCC3遺伝子は、X−ray repair complementing defective repair in chinese hamster cell 3の遺伝子である(Tebbes,R.S.ら、1995年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第92巻、p.6354−6358)。XRCC3遺伝子の翻訳産物は遺伝子障害の修復に関与し、XRCC3遺伝子の変異が乳癌(Kuschel,B.ら、2002年、Human molecular genetics、第11巻、p.1399−1407)及びメラノーマ(Winsey,L.ら、2000年、Cancer Research、第60巻、p.5612−5616)において有意に高いという報告がある。しかしながらこれまでにXRCC3遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第7の標的核酸は、CAPG遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
CAPG遺伝子は、ゲルゾリン/ビリンファミリーに属するアクチンキャッピングタンパク質の遺伝子である(Dabiri,G.A.ら、1992年、Journal of Biological Chemistry、第267巻、p.16545−16552)。この遺伝子の翻訳産物は、アクチン線維の矢尻端に結合するが、アクチン線維の切断能はないとされる。マクロファージで最初に見出され、マクロファージ機能に関与している可能性が示唆されているが、これまでにCAPG遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第8の標的核酸は、GRHPR遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
GRHPR遺伝子は、Glyoxylate reductase−hydroxypyruvate reductaseの遺伝子である(Rumsby,Gら,1999年、Biochimica et Biophysica Acta 、第1446巻、p.383−388)。この遺伝子の翻訳産物はグリオキシレートをグリコレートに代謝するほか、ヒドロキシピルベートをD−グリセレートに可逆的に分解する。原発性2型高シュウ酸尿症の原因遺伝子であることが示唆されている(Cramer,S.D.ら、1999年、Human Molecular Genetics、第8巻、p.2063−2069)。しかしながら、これまでにGRHPR遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第9の標的核酸は、TROAP遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
TROAP遺伝子は、Trophinin−associated protein(TASTIN)の遺伝子である(Fukuda,M.N.ら、1995年、Genes and Development、第9巻、p.1199−1210)。この遺伝子の翻訳産物はTrophininと共同で働き、子宮内膜細胞への胚の着床時に、細胞接着に寄与していることが示唆されている(Fukuda,Mら、上記)。しかしながら、これまでにTROAP遺伝子又はその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第10の標的核酸は、RRM2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
RRM2遺伝子は、ribonucleotide−diphosphate reductase M2 chainの遺伝子である(Yang−Feng,T.L.ら、1987年、Genomics、第1巻、p.77−86)。この遺伝子の翻訳産物は、リボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドを産生する酵素のサブユニットであり、DNA合成の律速酵素となっている。浸潤性の乳癌などで発現が亢進していることが示されており(Jensen,R.A.ら、1994年、Proceedings of the national Academy of Sciences, USA、第91巻、p.9527−9261など)、ヒドロキシウレアの抗ガン作用のターゲット分子としても知られている(Yen,Y.ら、1994年、Cancer Research、第54巻、p.3686−3691)。またガン細胞株の抗ガン剤ゲムシタビンに対する耐性の発現に伴って発現量が増えていることが知られている(Goan,Y.G.ら、1999年、Cancer Research、第59巻、p.4204−4207など)。しかしながら、これまでにRRM2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第11の標的核酸は、SATB2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
SATB2遺伝子は、DNA配列結合タンパク質の遺伝子である(Kikuno.R.ら、1999年、DNA Research、第6巻、p.197−205)。この遺伝子の翻訳産物は、プレB細胞のイムノグロブリン遺伝子nuclear matrix attachment regionsへの結合と発現調節が知られているが(Dobreva,G.2003年、Genes & Development、第17巻、p.3048−3061)、しかしながら、これまでにSATB2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第12の標的核酸は、C14orf162遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
C14orf162遺伝子は、chromoseme 14 open reading frame 162の遺伝子である(Mao, Y.ら、2000年 Genbank Direct submission)。C14orf162遺伝子の機能は知られておらず、これまでにC14orf162遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第13の標的核酸は、SEPT6遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
SEPT6遺伝子は、septinファミリーに属する遺伝子である(Ono, R.ら、2002年、Cancer Research、第62巻、p.333−337)。この遺伝子の翻訳産物は、ATP−GTP結合部位と核内移行を示唆する配列をもつ。また数種の変異体が存在していることが知られている。Septin6遺伝子は染色体転移によって急性骨髄性白血病患者においてMLL遺伝子と融合することが知られている(Ono, R.ら、上記)。しかしながら、これまでにSEPTIN6遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第14の標的核酸は、M6PR遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
M6PR遺伝子は、small mannose 6−phosphate receptorの遺伝子である(Pohlmann,R.ら、1987年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第84巻、p.5575−5579)。この遺伝子の翻訳産物は、IGF−IIの受容体として働き、絨毛ガン細胞でその発現を抑制することにより細胞増殖能が抑制されることが示されている(O’Gorman,D.B.ら、1999年、Cancer Research、59巻、p.5692−5694)。しかしながら、これまでにM6PR遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第15の標的核酸は、SPRR3遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
SPRR3遺伝子は前述したように、食道ガンのマーカーとなることが知られている(国際公開第2003/042661パンフレット、Chen, B.S. ら、2000年、Carcinogenesis、第21巻、p.2147−2150、Abraham, J.M.ら、1996年、Cell Growth & Differentiation、第7巻、p.855−860)。
第16の標的核酸は、EML1遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
EML1遺伝子は、Echinoderm microtubule−associated protein−like 1の遺伝子である(Eudy,J.D.ら、 1997年、Genomics、第43巻、p.104−106)。EML1遺伝子の配列にはカルシウム結合モチーフやヒスチジン酸フォスファターゼ活性領域を推測させる配列が存在するが、これまでにEML1遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第17の標的核酸は、YPEL5遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
YPEL5遺伝子は、yippee−like 5(Drosophila)の遺伝子である(Roxstrom―Lindquist,K.ら、2001年、Insect molecular biology、第10巻、p.77−86)。YPEL5の翻訳産物は、zinc―bindingタンパク質ファミリーに属しているが、これまでにYPEL5遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第18の標的核酸は、EIF4EBP2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
EIF4EBP2遺伝子は、Eukaryotic translation initiation factor 4E−binding protein 2の遺伝子である(Pause,A.ら、1994年、Nature、第371巻、p.762−767)。EIF4EBP2の翻訳産物は、遺伝子発現の開始制御タンパク質であり、遺伝子変異がいくつかのガンにおいて見出されているが(Tsukiyama−Kohara,K.ら、1996年、Genomics、第38巻、p.353−363)、これまでにEIF4EBP2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第19の標的核酸は、SLC2A14遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
SLC2A14遺伝子は、Solute carrier family 2(facilitated glucose transporter),member 14の遺伝子である(Strausberg,R.L.ら、2002年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第99巻、p.16899−16903)。SLC2A14の翻訳産物は、精巣に特異的に発現しているグルコーストランスポーターであるが(Wu,Xら、上記)、これまでにSLC2A14遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
第20の標的核酸は、SLIT2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。
SLIT2遺伝子は、SLIT,Drosophila,homolog of 2の遺伝子である(Itoh, A.ら、1998年、Molecular Brain Research、第62巻、p.175−186)。この遺伝子の翻訳産物は、分泌タンパク質であり、神経線維の伸長や白血球遊走を阻害することが知られている(Wu, W.ら、1999年、Nature、第400巻、p.331−336)。しかしながら、これまでにSLIT2遺伝子及びその転写産物の発現の減少が食道ガンのマーカーになりうるという報告は知られていない。
1.3 食道ガン関連標的ポリペプチド(1)
本発明の組成物又はキットを使用して食道ガンの存在及び転移を検出、判定又は予測するための食道ガン転移関連マーカーとしての標的ポリペプチドには、例えば、配列番号1〜47で表される塩基配列を含む上記ヒト遺伝子、すなわち、それぞれ、AXL、C6orf54、ZBTB11、TNFRSF14、NSUN5、SPEN、LTBP3、SYNGR1、ARL3、SLC13A1、RALGDS、ADD3、MAP3K12、AVPI1、GIMAP6、FLJ11259、C3AR1、PCGF2、PDE6D、PLCG2、GPR148、ARF6、NISCH、GLYAT、IGHM、FBXO38、SLC12A1、PGDS、CD48、IMPA2、HSPA6、EIF3S9、ZNF659、RAB6C、NOL1、DAB2、EBI3、PRSS3、GLB1、SAMSN1、AQP3、CAPZA2、B4GALT2、ARHGEF3、POGK、PRAF1及びHPGD遺伝子、によってコードされるポリペプチド、例えば、配列番号95〜141で表されるアミノ酸配列を含むヒトポリペプチド、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体が含まれる。ここで、ポリペプチド、同族体、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。好ましい標的ポリペプチドは、配列番号95〜141で表されるアミノ酸配列を含むヒトポリペプチドである。
本発明において食道ガン転移の標的となる上記ポリペプチドはいずれも、対応する遺伝子及びその転写産物の発現量と同様に、手術時にリンパ節転移がなかった患者由来の食道ガン組織に比較して、手術時にリンパ節転移があった患者由来の食道ガン組織において発現レベルが有意に変化(すなわち、増加又は低下)しているものであること、或いは血液中の該ポリペプチドのレベルが手術時にリンパ節転移がなかった被験者と比べて手術時にリンパ節転移があった被験者において有意に変化(すなわち、増加又は低下)することによって特徴付けられる。
1.4 食道ガンの標的ポリペプチド(2)
本発明の組成物又はキットを使用して食道ガン又は食道ガン細胞の存在を検出、判定又は予測するための食道ガン関連マーカーとしての標的ポリペプチドには、上記GALNS, fgf3, CAMK2B, CaMKIINalpha, PSARL, XRCC3, CAPG, GRHPR, TROAP, RRM2, SATB2, C14orf162, SEPT6, M6PR, SPRR3, EML1, YPEL5, EIF4EBP2, SLC2A14及びSLIT2遺伝子によってコードされるポリペプチド、例えば、配列番号182〜201で表されるアミノ酸配列を含むヒトポリペプチド、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体が含まれる。ここで、ポリペプチド、同族体、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。好ましい標的ポリペプチドは、配列番号182〜201で表されるアミノ酸配列を含むヒトポリペプチドである。
本発明において食道ガンの標的となる上記ポリペプチドはいずれも、対応する遺伝子及びその転写産物の発現量と同様に、非ガン組織に比べて食道ガン組織においてその発現量が有意に低下すること、或いは血液中の該ポリペプチドのレベルが健常な被験者と比べて食道ガンに罹患した被験者において有意に低下することによって特徴付けられる。
1.5 食道ガン関連標的ポリペプチド(3)
本発明の組成物又はキットを使用して食道ガンをインビトロで検出するための別の食道ガンマーカーは、配列番号202〜233で表されるアミノ酸配列を有すポリペプチド、その変異体またはその断片である。
本発明の配列番号202〜233のポリペプチドを、その遺伝子名およびタンパク質番号(ジーンバンク登録名および登録番号)、ならびにそれらの特性とともに下記の表1に示す。これらのポリペプチドは、例えば食道ガン患者血漿中に特異的に検出され、健常者の血漿には検出されないか、または検出できるレベルにない。
本発明において食道ガン検出のための上記標的ポリペプチドはいずれも、食道ガン患者において、血液などの生体試料中の該ポリペプチドのレベルが、健常人と比べて食道ガンに罹患した被験者において有意にまたは格別に高いことによって特徴付けられる。
2.食道ガン診断用プローブ
本発明によれば、食道ガンの存在及び/又は転移を検出、判定又は予測するための、或いは被験者の術後の予後を予測するための、プローブは、下記のI群、II群及び/又はIII群:
I群:
(a)配列番号1〜46で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1〜46で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むその断片、
からなるポリヌクレオチド、
II群:
(f)配列番号142〜155、157〜161で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(g)配列番号142〜155、157〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(h)配列番号142〜155、157〜161で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(i)配列番号142〜155、157〜161で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(j)前記(f)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
からなるポリヌクレオチド、
III群:
(k)配列番号1〜46で表される塩基配列によってコードされるポリペプチド、又は配列番号95〜140で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、それらの変異体、或いはそれらの断片の少なくとも1つと特異的に結合する抗体、その断片或いはその化学修飾誘導体、
(l)配列番号142〜155、157〜161で表される塩基配列によってコードされるポリペプチド、或いは配列番号182〜195、197〜201で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、それらの変異体、或いはそれらの断片の少なくとも1つと特異的に結合する抗体、その断片或いはその化学修飾誘導体、及び
(m)配列番号202〜232で表されるポリペプチド、それらの変異体、或いはそれらの断片の少なくとも1つと特異的に結合する抗体、その断片或いはその化学修飾誘導体、
からなる抗体、その断片或いはその化学修飾誘導体、
から選択される。
上記のプローブは、いずれも上記1.1節から1.5節に記載された食道ガン関連マーカーのいずれかと結合可能なものであり、食道ガンの存在又は転移を検出、判定又は予測するために使用可能である。例えば、上記I群及びIII群(k)の各プローブによって食道ガンの存在又は転移を検出、判定又は予測することができる。また、上記II群及びIII群(l)、(m)の各プローブによって食道ガンの存在を検出、判定又は予測することができる。
本発明において、核酸プローブはDNA又はRNAを含み、一方、抗体プローブはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらの抗体断片、合成抗体、組換え抗体、多重特異的抗体、単鎖抗体などを含む。
本発明者らは、今回、上記I群からIII群に示したプローブが食道ガンの存在及び/又は転移の検出、判定又は予測に使用できることを初めて見出した。
3.食道ガン診断用組成物
3.1 核酸組成物(1)
本発明において、食道ガンの存在及び/又は転移を検出、判定又は予測するための核酸組成物は、上記2節のI群に記載した1又は2以上のプローブを含み、食道ガン転移関連の標的核酸としての、ヒト由来のAXL、C6orf54、ZBTB11、TNFRSF14、NSUN5、SPEN、LTBP3、SYNGR1、ARL3、SLC13A1、RALGDS、ADD3、MAP3K12、AVPI1、GIMAP6、FLJ11259、C3AR1、PCGF2、PDE6D、PLCG2、GPR148、ARF6、NISCH、GLYAT、IGHM、FBXO38、SLC12A1、PGDS、CD48、IMPA2、HSPA6、EIF3S9、ZNF659、RAB6C、NOL1、DAB2、EBI3、PRSS3、GLB1、SAMSN1、AQP3、CAPZA2、B4GALT2、ARHGEF3、POGK、PRAF1及びHPGD遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、或いはそれらの変異体又は誘導体の存在、発現量又は存在量を定性的及び/又は定量的に測定することを可能にする。
上記の標的核酸は、手術時にリンパ節転移がなかった患者由来の食道ガン組織に比較して、手術時にリンパ節転移があった患者由来の食道ガン組織においてその発現レベルが有意に変化(すなわち、増加又は低下)する。それゆえ、本発明の組成物は、手術時にリンパ節転移がなかった患者由来の食道ガン組織と手術時にリンパ節転移があった患者由来の食道ガン組織について標的核酸の発現レベルを測定し、それらを比較するために有効に使用することができる。
本発明で使用可能な組成物は、食道ガンに罹患した患者の生体組織において配列番号1〜47で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、該塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でそれぞれハイブリダイズするポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、ならびにそれらのポリヌクレオチド群の塩基配列において15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド群から選ばれた1又は複数のポリヌクレオチドの組み合わせを含む。
具体的には、本発明の組成物は、以下の1又は複数のポリヌクレオチド又はその断片を含むことができる。
(1)配列番号1〜46、47で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(2)配列番号1〜46、47で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(3)配列番号1〜46で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(4)配列番号1〜46で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(5)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(6)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(7)配列番号1〜46で表される塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(8)配列番号1〜46で表される塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(9)配列番号47で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(10)配列番号47で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(11)配列番号47で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(12)配列番号47で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(13)配列番号47で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(14)配列番号47で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
上記(1)〜(14)のポリヌクレオチドの断片は、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する15〜配列の全塩基数、15〜5000塩基、15〜4500塩基、15〜4000塩基、15〜3500塩基、15〜3000塩基、15〜2500塩基、15〜2000塩基、15〜1500塩基、15〜1000塩基、15〜900塩基、15〜800塩基、15〜700塩基、15〜600塩基、15〜500塩基、15〜400塩基、15〜300塩基、15〜250塩基、15〜200塩基、15〜150塩基、15〜140塩基、15〜130塩基、15〜120塩基、15〜110塩基、15〜100塩基、15〜90塩基、15〜80塩基、15〜70塩基、15〜60塩基、15〜50塩基、15〜40塩基、15〜30塩基又は15〜25塩基;25〜配列の全塩基数、25〜1000塩基、25〜900塩基、25〜800塩基、25〜700塩基、25〜600塩基、25〜500塩基、25〜400塩基、25〜300塩基、25〜250塩基、25〜200塩基、25〜150塩基、25〜140塩基、25〜130塩基、25〜120塩基、25〜110塩基、25〜100塩基、25〜90塩基、25〜80塩基、25〜70塩基、25〜60塩基、25〜50塩基又は25〜40塩基;50〜配列の全塩基数、50〜1000塩基、50〜900塩基、50〜800塩基、50〜700塩基、50〜600塩基、50〜500塩基、50〜400塩基、50〜300塩基、50〜250塩基、50〜200塩基、50〜150塩基、50〜140塩基、50〜130塩基、50〜120塩基、50〜110塩基、50〜100塩基、50〜90塩基、50〜80塩基、50〜70塩基又は50〜60塩基;60〜配列の全塩基数、60〜1000塩基、60〜900塩基、60〜800塩基、60〜700塩基、60〜600塩基、60〜500塩基、60〜400塩基、60〜300塩基、60〜250塩基、60〜200塩基、60〜150塩基、60〜140塩基、60〜130塩基、60〜120塩基、60〜110塩基、60〜100塩基、60〜90塩基、60〜80塩基又は60〜70塩基などの範囲の塩基数を含むことができるが、これらに限定されないものとする。
本発明の実施形態により、配列番号1〜47で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドの断片はそれぞれ、配列番号48〜94で表される塩基配列又はその相補的配列、あるいはそれらの連続する15塩基以上の部分配列、を含むことが好ましい。
本発明の組成物には、例えば以下のポリヌクレオチドが包含される。
(1)配列番号1〜46で表される塩基配列またはその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(2)配列番号1〜46で表される塩基配列またはその相補的配列の各々において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(3)配列番号47で表される塩基配列またはその相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(4)配列番号47で表される塩基配列またはその相補的配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(5)配列番号1〜46で表される塩基配列において、それぞれ配列番号48〜93で表される塩基配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(6)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な配列において、それぞれ配列番号48〜93で表される塩基配列に相補的な配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(7)配列番号47で表される塩基配列において、配列番号94で表される塩基配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(8)配列番号47で表される塩基配列に相補的な配列において、配列番号94で表される塩基配列に相補的な配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
本発明で使用される上記ポリヌクレオチド類又はその断片類はいずれもDNAでもよいしRNAでもよい。
本発明の組成物としてのポリヌクレオチドは、DNA組換え技術、PCR法、DNA/RNA自動合成機による方法などの一般的な技術を用いて作製することができる。
DNA組換え技術及びPCR法は、例えばAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Willey & Sons, US (1993); Sambrookら, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, US (1989)などに記載される技術を使用することができる。
ヒト由来の、AXL、C6orf54、ZBTB11、TNFRSF14、NSUN5、SPEN、LTBP3、SYNGR1、ARL3、SLC13A1、RALGDS、ADD3、MAP3K12、AVPI1、GIMAP6、FLJ11259、C3AR1、PCGF2、PDE6D、PLCG2、GPR148、ARF6、NISCH、GLYAT、IGHM、FBXO38、SLC12A1、PGDS、CD48、IMPA2、HSPA6、EIF3S9、ZNF659、RAB6C、NOL1、DAB2、EBI3、PRSS3、GLB1、SAMSN1、AQP3、CAPZA2、B4GALT2、ARHGEF3、POGK、PRAF1およびHPGD遺伝子は公知であり、前述のようにその取得方法も知られている。このため、これらの遺伝子をクローニングすることによって、本発明の組成物としてのポリヌクレオチドを作製することができる。
本発明の組成物を構成するポリヌクレオチドは、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって約100塩基までの一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、ABI社、Applied BioSystems社などから市販されている。
あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAクローニング法によって作製することもできる。本発明において標的である上記遺伝子が発現される食道組織などの生体組織から抽出したtotal RNAをオリゴdTセルロースカラムで処理して得られるポリA(+)RNAからRT−PCR法によってcDNAライブラリーを作製し、このライブラリーからハイブリダイゼーションスクリーニング、発現スクリーニング、抗体スクリーニングなどのスクリーニングによって目的のcDNAクローンを得ることができる。必要に応じて、cDNAクローンをPCR法によって増幅することもできる。プローブ又はプライマーは、配列番号1〜47に示される塩基配列に基づいて15〜100塩基の連続する配列の中から選択し、合成しうる。cDNAクローニング技術は、例えばSambrook,J.& Russel,D. 著、Molecular Cloning, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の 第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17に記載されており、ポリヌクレオチドの作製のために利用しうる。
3.2 核酸組成物(2)
本発明において、食道ガン又は食道ガン細胞の存在を検出、判定又は予測するための核酸組成物の別の例は、上記2節のII群に記載した1又は2以上のプローブを含み、食道ガン関連の標的核酸としての、ヒト由来のGALNS, fgf3, CAMK2B, CaMKIINalpha, PSARL, XRCC3, CAPG, GRHPR, TROAP, RRM2, SATB2, C14orf162, SEPT6, M6PR, SPRR3, EML1, YPEL5, EIF4EBP2, SLC2A14及びSLIT2遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物又はcDNA、あるいはそれらの変異体又は誘導体の存在、発現量又は存在量を定性的及び/又は定量的に測定することを可能にする。
上記の標的核酸は、非ガン組織に比べて食道ガン組織においてその発現レベルが有意に低下する。それゆえ、本発明の組成物は、非ガン組織と食道ガン組織について標的核酸の発現レベルを測定し、それらを比較するために有効に使用することができる。
本発明で使用可能な組成物は、食道ガンに罹患した患者の生体組織において配列番号142〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、該塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でそれぞれハイブリダイズするポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、ならびにそれらのポリヌクレオチド群の塩基配列において15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド群から選ばれた1又は複数のポリヌクレオチドの組み合わせを含む。
具体的には、本発明の組成物は、以下の1又は複数のポリヌクレオチド又はその断片を含むことができる。
(1)配列番号142〜161で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(2)配列番号142〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(3)配列番号142〜155で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(4)配列番号142〜155で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(5)配列番号142〜155で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(6)配列番号142〜155で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(7)配列番号142〜155で表される塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(8)配列番号142〜155で表される塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(9)配列番号157〜161で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(10)配列番号157〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(11)配列番号157〜161で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(12)配列番号157〜161で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(13)配列番号157〜161で表される塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(14)配列番号157〜161で表される塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(15)配列番号156で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(16)配列番号156で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(17)配列番号156で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(18)配列番号156で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(19)配列番号156で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(20)配列番号156で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
上記(1)〜(14)のポリヌクレオチドの断片は、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する15〜配列の全塩基数、15〜5000塩基、15〜4500塩基、15〜4000塩基、15〜3500塩基、15〜3000塩基、15〜2500塩基、15〜2000塩基、15〜1500塩基、15〜1000塩基、15〜900塩基、15〜800塩基、15〜700塩基、15〜600塩基、15〜500塩基、15〜400塩基、15〜300塩基、15〜250塩基、15〜200塩基、15〜150塩基、15〜140塩基、15〜130塩基、15〜120塩基、15〜110塩基、15〜100塩基、15〜90塩基、15〜80塩基、15〜70塩基、15〜60塩基、15〜50塩基、15〜40塩基、15〜30塩基又は15〜25塩基;25〜配列の全塩基数、25〜1000塩基、25〜900塩基、25〜800塩基、25〜700塩基、25〜600塩基、25〜500塩基、25〜400塩基、25〜300塩基、25〜250塩基、25〜200塩基、25〜150塩基、25〜140塩基、25〜130塩基、25〜120塩基、25〜110塩基、25〜100塩基、25〜90塩基、25〜80塩基、25〜70塩基、25〜60塩基、25〜50塩基又は25〜40塩基;50〜配列の全塩基数、50〜1000塩基、50〜900塩基、50〜800塩基、50〜700塩基、50〜600塩基、50〜500塩基、50〜400塩基、50〜300塩基、50〜250塩基、50〜200塩基、50〜150塩基、50〜140塩基、50〜130塩基、50〜120塩基、50〜110塩基、50〜100塩基、50〜90塩基、50〜80塩基、50〜70塩基又は50〜60塩基;60〜配列の全塩基数、60〜1000塩基、60〜900塩基、60〜800塩基、60〜700塩基、60〜600塩基、60〜500塩基、60〜400塩基、60〜300塩基、60〜250塩基、60〜200塩基、60〜150塩基、60〜140塩基、60〜130塩基、60〜120塩基、60〜110塩基、60〜100塩基、60〜90塩基、60〜80塩基又は60〜70塩基などの範囲の塩基数を含むことができるが、これらに限定されないものとする。
本発明の実施形態により、配列番号142〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドの断片はそれぞれ、配列番号162〜181で表される塩基配列又はその相補的配列、あるいはそれらの連続する15塩基以上の部分配列、を含むことが好ましい。
本発明の組成物には、例えば以下のポリヌクレオチドが包含される。
(1)配列番号142〜155で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(2)配列番号142〜155で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(3)配列番号157〜161で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(4)配列番号157〜161で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(5)配列番号142〜155で表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号162〜175で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(6)配列番号142〜155で表される塩基配列に相補的な配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号162〜175で表される塩基配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチド。
(7)配列番号157〜161で表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号177〜181で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(8)配列番号157〜161で表される塩基配列に相補的な配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号177〜181で表される塩基配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチド。
(9)配列番号156で表される塩基配列又はその相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(10)配列番号156で表される塩基配列又はその相補的配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(11)配列番号156で表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中に配列番号176で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(12)配列番号156で表される塩基配列に相補的な配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中に配列番号176で表される塩基配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチド。
本発明で使用される上記ポリヌクレオチド類又はその断片類はいずれもDNAでもよいしRNAでもよい。
本発明の組成物としてのポリヌクレオチドは、DNA組換え技術、PCR法、DNA/RNA自動合成機による方法などの一般的な技術を用いて作製することができる。
DNA組換え技術及びPCR法は、例えばAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Willey & Sons, US (1993); Sambrookら, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, US (1989)などに記載される技術を使用することができる。
GALNS, fgf3, CAMK2B, CaMKIINalpha, PSARL, XRCC3, CAPG, GRHPR, TROAP, RRM2, SATB2, C14orf162, SEPT6, M6PR, SPRR3, EML1, YPEL5, EIF4EBP2, SLC2A14及びSLIT2遺伝子は公知であり、その取得方法も知られている。このため、これらの遺伝子をクローニングすることによって、本発明の組成物としてのポリヌクレオチドを作製することができる。
GALNS遺伝子は、例えばTomatsu,S.ら、1991 年、Biochemical Biophysical Research Communication、第181巻、p.677−683に記載される方法によって得ることができる。
fgf3遺伝子は、例えばBrookes,S.ら、1989年、Oncogene、第4巻、p.429−436に記載される方法によって得ることができる。
CMK2B遺伝子は、例えばTombes,R.M.ら、1997年、Biochimica et Biophysica Acta、第1355巻、p.281−292に記載される方法によって得ることができる。
CAMKIINalpha遺伝子は、例えばStrausberg,R.L.ら、2002年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第99巻、p.16899−16903に記載される方法によって得ることができる。
PSARL遺伝子は、例えばPellegrini,L.ら、2001年、Journal of Alzheimer’s Disease、第3巻、p.181−190に記載される方法によって得ることができる。
XRCC3遺伝子は、例えばTebbes,R.S.ら、1995年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第92巻、p.6354−6358に記載される方法によって得ることができる。
CAPG遺伝子は、例えばDabiri,G.A.ら、1992年、Journal of Biological Chemistry、第267巻、p.16545−16552に記載される方法によって得ることができる。
GRHPR遺伝子は、例えばRumsby,G.ら,1999年、Biochimica et Biophysica Acta 、第1446巻、p.383−388に記載される方法によって得ることができる。
TROAP遺伝子は、例えばFukuda,M.N.ら、1995年、Genes and Development、第9巻、p.1199−1210に記載される方法によって得ることができる。
RRM2遺伝子は、例えばYang−Feng,T.L.ら、1987年、Genomics、第1巻、p.77−86に記載される方法によって得ることができる。
SATB2遺伝子は、例えばKikuno.R.ら、1999年、DNA Research、第6巻、p.197−205に記載される方法によって得ることができる。
C14orf162は、例えばMao,Y.ら、2000年にクローニングを報告している。
SEPT6遺伝子は、例えばOno,R.ら、2002年、Cancer Research、第62巻、p.333−337に記載される方法によって得ることができる。
M6PR遺伝子は、例えばPohlmann,R.ら、1987年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第84巻、p.5575−5579に記載される方法によって得ることができる。
SPRR3遺伝子は、例えばGibbs,S.ら、1993年、Genomics、第16巻、p.630−637に記載される方法によって得ることができる。
EML1遺伝子は、例えばEudy,J.D.ら、 1997年、Genomics、第43巻、p.104−106に記載される方法によって得ることができる。
YPEL5遺伝子は、例えばRoxstrom−Lindquist,K.ら、2001年、Insect molecular biology、第10巻、p.77−86に記載される方法によって得ることができる。
EIF4EBP2遺伝子は、例えばPause,A.ら、1994年、Nature、第371巻、p.762−767に記載される方法によって得ることができる。
SLC2A14遺伝子は、例えばStrausberg,R.L.ら、2002年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第99巻、p.16899−16903に記載される方法によって得ることができる。
SLIT2遺伝子は、例えばItoh, A.ら、1998年、Molecular Brain Research、第62巻、p.175−186に記載される方法によって得ることができる。
本発明の組成物を構成するポリヌクレオチドは、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって約100塩基までの一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、ABI社、Applied BioSystems社などから市販されている。
あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAクローニング法によって作製することもできる。本発明において標的である上記遺伝子が発現される食道組織などの生体組織から抽出したtotal RNAをオリゴdTセルロースカラムで処理して得られるポリA(+)RNAからRT−PCR法によってcDNAライブラリーを作製し、このライブラリーからハイブリダイゼーションスクリーニング、発現スクリーニング、抗体スクリーニングなどのスクリーニングによって目的のcDNAクローンを得ることができる。必要に応じて、cDNAクローンをPCR法によって増幅することもできる。プローブ又はプライマーは、配列番号142〜161に示される塩基配列に基づいて15〜100塩基の連続する配列の中から選択し、合成しうる。cDNAクローニング技術は、例えばSambrook,J.& Russel,D. 著、Molecular Cloning, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の 第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17に記載されており、ポリヌクレオチドの作製のために利用しうる。
3.3 抗体組成物
本発明の組成物は、食道ガン診断用プローブとして、上記2節のIII群に記載される抗体、その断片又は化学修飾誘導体を含むことができる。このような組成物は、食道ガンをもつ被験者における食道ガンの存在及び/又は転移をインビトロで検出、判定又は予測するために有用である。ここで、転移の予測は、被験者の術後の予後の良、不良の予測に導くことができる。
(A)本発明の抗体組成物の第1の例は、上記III群(k)に記載される配列番号95〜140で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変異体又はその断片に対する1または複数の抗体、その断片、またはそれらの化学修飾誘導体を含む組成物である。
本発明の組成物には、配列番号141で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変異体又はその断片に対する抗体、その断片またはそれらの化学修飾誘導体をさらに含むことができる。これらの抗体の併用によって、予後予測のための精度を高めることができる。
すなわち、本発明により、食道ガン転移マーカーとしての、上記AXL、C6orf54、ZBTB11、TNFRSF14、NSUN5、SPEN、LTBP3、SYNGR1、ARL3、SLC13A1、RALGDS、ADD3、MAP3K12、AVPI1、GIMAP6、FLJ11259、C3AR1、PCGF2、PDE6D、PLCG2、GPR148、ARF6、NISCH、GLYAT、IGHM、FBXO38、SLC12A1、PGDS、CD48、IMPA2、HSPA6、EIF3S9、ZNF659、RAB6C、NOL1、DAB2、EBI3、PRSS3、GLB1、SAMSN1、AQP3、CAPZA2、B4GALT2、ARHGEF3、POGK、PRAF1およびHPGD遺伝子によってコードされるポリペプチド、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体を検出するために、これらのポリペプチド、その変異体又はその断片に対する抗体を1又は複数組み合わせて含む、食道ガンの存在及び/又は転移を検出、判定又は予測するための組成物を提供する。
(B)本発明の抗体組成物の第2の例は、上記III群(l)に記載される配列番号182〜195、197〜201で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変異体又はその断片に対する1または複数の抗体、その断片、またはそれらの化学修飾誘導体を含む組成物である。
本発明の組成物には、配列番号196で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変異体又はその断片に対する抗体、その断片またはそれらの化学修飾誘導体をさらに含むことができる。
すなわち、本発明により、食道ガンマーカーとしての、上記GALNS, fgf3, CAMK2B, CaMKIINalpha, PSARL, XRCC3, CAPG, GRHPR, TROAP, RRM2, SATB2, C14orf162, SEPT6, M6PR, SPRR3, EML1, YPEL5, EIF4EBP2, SLC2A14及びSLIT2遺伝子によってコードされるポリペプチド、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体を検出するために、これらのポリペプチド、その変異体又はその断片に対する抗体を1又は複数組み合わせて含む、食道ガンの存在を検出、判定又は予測するための組成物を提供する。
(C)本発明の抗体組成物の第3の例は、上記III群(m)に記載される配列番号202〜232で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変異体又はその断片に対する1または複数の抗体、その断片、またはそれらの化学修飾誘導体を含む、食道ガンをもつ被験者における食道ガンの存在をインビトロで検出、判定又は予測するための組成物である。
本発明の組成物には、配列番号233で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変異体又はその断片の少なくとも1つと特異的に結合する抗体、その断片またはそれらの化学修飾誘導体をさらに含むことができる。
上記のポリペプチドは、上記の表1に記載の遺伝子によってコードされている。
これらのポリペプチドは、DNA組換え技術によって得ることができる。例えば、上記のようにして得られたcDNAクローンを発現ベクターに組み込み、該ベクターによって形質転換又はトランスフェクションされた原核又は真核宿主細胞を培養することによって該細胞又は培養上清から得ることができる。ベクター及び発現系はNovagen社、宝酒造、第一化学薬品、Qiagen社、Stratagene社、Promega社、Roche Diagnositics社、Invitrogen社、Genetics Institute社、Amersham Bioscience社などから入手可能である。
宿主細胞としては、細菌などの原核細胞(例えば大腸菌、枯草菌)、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシアエ)、昆虫細胞(例えばSf細胞)、哺乳動物細胞(例えばCOS、CHO、BHK)などを用いることができる。
ベクターには、該ポリペプチドをコードするDNAの他に、調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、複製開始点、ターミネーター、選択マーカーなどを含むことができる。
またポリペプチドの精製を容易にするために標識ペプチドをポリペプチドのC末端またはN末端につけた融合ポリペプチドとしてもよい。代表的な標識ペプチドには、6〜10残基のヒスチジンリピート、FLAG、mycぺプチド、GFPポリペプチドなどが挙げられるが、標識ペプチドはこれらにかぎられるものではない。またDNA組換え技術については、Sambrook, J. & Russel, D.(上記)に記載されている。
標識ペプチドを付けずに本発明に係るポリペプチドを生産した場合には、その精製法として例えばイオン交換クロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。またこれに加えて、ゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどを組み合わせる方法でもよい。一方、当該タンパクにヒスチジンリピート、FLAG、myc、GFPといった標識ペプチドを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれの標識ペプチドに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。単離・精製が容易となるような発現ベクターを構築するとよい。特にポリペプチドと標識ペプチドとの融合ポリペプチドの形態で発現するように発現ベクターを構築し、遺伝子工学的に当該ポリペプチドを調製すれば、単離・精製も容易である。
本発明における上記ポリペプチドの変異体は、上記定義のとおり、配列番号95〜141、182〜201、202〜233で表されるアミノ酸配列又はその部分配列おいて1以上、好ましくは1もしくは数個、のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは該アミノ酸配列又はその部分配列と約80%以上、約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体である。このような変異体には、例えば、ヒトと異なる哺乳動物種のホモログ、ヒトの多型性変異やスプライス変異に基づく変異体などの天然変異体が含まれる。
本発明における上記ポリペプチド又は変異体の断片は、該ポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5個、少なくとも7個、少なくとも10個、少なくとも15個、好ましくは少なくとも20個、少なくとも25個、より好ましくは少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基からなり、1個または複数のエピトープを保持する。このような断片は、本発明の抗体またはその断片と免疫特異的に結合することができるものである。上記ポリペプチドは、生体内に存在するプロテアーゼやぺプチダーゼなどの酵素によって切断され断片化されて存在することも予想される。
このようにして得られたポリペプチドを認識する抗体は、抗体の抗原結合部位を介して、該ポリペプチドに特異的に結合し得る。具体的には、配列番号95〜141、182〜201、202〜233のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその断片、その変異体ポリペプチド又は融合ポリペプチドなどを、それぞれに免疫反応性である抗体を産生するための免疫原として使用することが可能である。
より具体的には、ポリペプチド、断片、変異体、融合ポリペプチドなどは、抗体形成を引き出す抗原決定基またはエピトープを含むが、これら抗原決定基またはエピトープは、直鎖でもよいし、より高次構造(断続的)でもよい。なお、該抗原決定基またはエピトープは、当該技術分野に知られるあらゆるエピトープ解析法、例えばファージジスプレイ法、リバースイムノジェネティックス法など、によって同定できる。
本発明のポリペプチドによってあらゆる態様の抗体が誘導される。該ポリペプチドの全部若しくは一部又はエピトープが単離されていれば、慣用的技術を用いてポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれも調製可能である。方法には例えば、Kennetら(監修),Monoclonal Antibodies,Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses,Ple num Press,New York,1980に挙げられた方法がある。
ポリクローナル抗体は、鳥類(例えば、ニワトリなど)、哺乳動物(例えば、ウサギ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ネズミなど)などの動物に本発明に係るポリペプチドを免疫することによって作製することができる。目的の抗体は、免疫された動物の血液から、硫安分画、イオン交換クロマとグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの手法を適宜組み合わせて精製することができる。
モノクローナル抗体は、各ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を、慣用技術によってマウスにおいて産生することを含む手法によって得ることができる。こうしたハイブリドーマ細胞株を産生するための1つの方法は、動物を本発明の酵素ポリペプチドで免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を採取し、該脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして該酵素に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することを含む。モノクローナル抗体は、慣用技術によって回収可能である。
本発明の抗体としては、本発明の標的ポリペプチドまたはその断片と特異的に結合するものであれば特に限定されず、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でも使用することができるが、モノクローナル抗体を使用するのが好ましい。別の抗体には、組換え抗体、合成酵素、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、単鎖抗体、抗体断片などが含まれる。そのような抗体の例は、Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFvなどである。また、本発明の抗体のグロブリンタイプ及びクラスは、上記特徴を有するものである限り特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2などのいずれでもよい。
<モノクローナル抗体の作製>
(1)免疫及び抗体産生細胞の採取
標的ポリペプチドからなる免疫原を、哺乳動物、例えばラット、マウス(例えば近交系マウスのBalb/c)、ウサギなどに投与する。免疫原の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路などにより適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgとされる。免疫は主として皮下、腹腔内に免疫原を注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜10回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay)法などにより繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したときは、免疫原を静脈内または腹腔内に注射し、最終免疫とする。そして、最終免疫の日から2〜5日後、好ましくは3日後に、抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞または局所リンパ節細胞が好ましい。
(2)細胞融合
各標的ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を作製する。こうしたハイブリドーマは、慣用的技術によって産生し、そして同定することが可能である。こうしたハイブリドーマ細胞株を産生するための1つの方法は、動物を本発明のタンパク質で免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を採取し、該脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして該酵素に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することを含む。抗体産生細胞と融合させる骨髄腫細胞株としては、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。また株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。骨髄腫細胞株の具体例としては、BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株であるP3X63−Ag.8株(ATCC TIB9)などが挙げられる。
次に、上記骨髄腫細胞株と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを約1:1〜 20:1の割合で混合し、細胞融合促進剤の存在下にて融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1500〜4000ダルトンのポリエチレングリコール等を約10〜80%の濃度で使用することができる。また場合によっては、融合効率を高めるために、ジメチルスルホキシドなどの補助剤を併用してもよい。さらに、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを融合させることもできる。
(3)ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に200万個/ウェル程度まき、各ウェルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。培養温度は、20〜40℃ 、好ましくは約37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株またはチミジンキナーゼ欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞と骨髄腫細胞株のハイブリドーマのみを選択的に培養し、増殖させることができる。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウェルに含まれる培養上清の一部を採取し、酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immuno Assay、及びELISA)、放射免疫測定法(RIA:Radio Immuno Assay)等によって行うことができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。本発明のハイブリドーマは、後述するように、RPMI−1640、DMEM等の基本培地中での培養において安定であり、標的ポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体を産生、分泌するものである。
(4)抗体の回収
モノクローナル抗体は、慣用的技術によって回収可能である。すなわち樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法または腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10% ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地または無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5%CO2濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1000万個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水または血清を採取する。
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、またはこれらを組み合わせることにより、精製されたモノクローナル抗体を得ることができる。
<ポリクローナル抗体の作製>
ポリクローナル抗体を作製する場合は、前記と同様にウサギ等の動物を免疫し、最終の免疫日から6〜60日後に、酵素免疫測定法(EIA及びELISA)、放射免疫測定法(RIA)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。その後は、抗血清中のポリクローナル抗体の反応性をELISA法などで測定する。
<化学修飾誘導体>
本発明の抗体又はその断片は、化学修飾された誘導体であってもよい。例えば、酵素、蛍光団、放射性同位元素などのラベルによる標識化誘導体、或いはアセチル化、アシル化、アルキル化、リン酸化、硫酸化、グリコシル化誘導体、などの化学修飾誘導体を挙げることができる。
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、ペルオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β − ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素、アミラーゼまたはビオチン−アビジン複合体等の酵素を、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート、AlexaまたはAlexaFluoro等の蛍光性物質もしくは蛍光団を、そして放射免疫測定法の場合にはトリチウム、ヨウ素(131I,125I,123I,121I)、リン(32P)、イオウ(35S)、金属類(例えば68Ga,67Ga,68Ge,54Mn,99Mo,99Tc,133Xeなど)等の放射性同位元素を用いることができる。また、発光免疫測定法は、NADH−、FMNH2−、ルシフェラーゼ系、ルミノール−過酸化水素−POD系、アクリジニウムエステル系またはジオキセタン化合物系等の発光性分子、発光物質、生物発光物質を用いることができる。
また、必要に応じて、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を利用することも可能であり、この場合、本発明の抗体またはその断片に例えばビオチンを結合することもできる。標識物質と抗体との結合法は、酵素免疫測定法の場合にはグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法または過ヨウ素酸法等の公知の方法を、放射免疫測定法の場合にはクロラミンT法、ボルトンハンター法等の公知の方法を用いることができる。
4.食道ガン診断用キット
4.1 核酸キット
本発明はまた、上記2節のI群及びII群に記載されるポリヌクレオチド、上記3.1及び3.2節に記載されるポリヌクレオチド、それらの変異体及び/又はそれらの断片のうち1つ又は複数を含む食道ガンの存在又は転移をインビトロで検出、判定又は予測するためのキットを提供する。
本発明のキットには、以下に記載するようなI群及びII群からの核酸プローブを含有させることができる。これらのプローブの各々は単独で又は組み合わせて適当な容器に収納されうる。
<I群の核酸プローブ>
本発明によれば、本発明のキットに含有するI群の核酸プローブは、食道ガンの存在及び/又は転移の検出、判定又は予測のために使用されうる。
本発明のキットは、配列番号1〜46で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片を少なくとも1つ含むことができる。
本発明のキットは、さらに配列番号47で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片を少なくとも1つ含むことができる。
本発明のキットに含むことができるポリヌクレオチド断片は、例えば下記の(1)〜(5)からなる群より選択される1以上のDNAである:
(1)配列番号1〜46、47で表される塩基配列又はその相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むDNA。
(2)配列番号1〜46、47で表される塩基配列又はその相補的配列において、60以上の連続した塩基を含むDNA。
(3)配列番号1〜46、47で表される塩基配列又はその相補的配列において、それぞれ配列番号48〜93、94で表される塩基配列又はその相補的配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むDNA。
(4)配列番号48〜93、94で表される塩基配列からなるDNA。
(5)配列番号48〜93、94で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むDNA。
好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1〜46のいずれかで表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの15以上の連続した塩基を含む断片である。
別の好ましい実施形態では、本発明のキットは、上記のポリヌクレオチドに加えて、配列番号47で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの15以上の連続した塩基を含む断片をさらに含むことができる。
好ましい実施形態では、前記断片は、15以上、好ましくは60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチドであることができる。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号1〜46、47のいずれかで表される塩基配列において、それぞれ配列番号48〜93、94のいずれかで表される塩基配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドの配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号48〜93、94のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号48〜93、94のいずれかで表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号48〜93、94のいずれかで表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
上記の組み合わせの具体例は、配列番号1および2の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜3の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜4の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜5の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜6の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜7の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜8の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜9の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜10の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はその断片、配列番号1〜11の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜12の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜13の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜14の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜15の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜16の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜17の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド及び/又はその断片、配列番号1〜18の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜19の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜20の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号1〜21の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片配列番号1〜22の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜23の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜24の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜25の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜26の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜27の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜28の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜29の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜30の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜31の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜32の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜33の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜34の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜35の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜36の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜37の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜38の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜39の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜40の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜41の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜42の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜43の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜44の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜45の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜46の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片、配列番号1〜47の塩基配列またはその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはその断片である。
別のより好ましい実施形態によれば、本発明のキットは、配列番号48〜93、94で表される塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチドの2以上〜全部を含むことができる。
<II群の核酸プローブ>
本発明によれば、本発明のキットに含有するII群の核酸プローブは、食道ガンの存在の検出、判定又は予測のために使用されうる。
本発明のキットは、配列番号142〜155、157〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片を少なくとも1つ含むことができる。
本発明のキットは、さらに配列番号156で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片を少なくとも1つ含むことができる。
本発明のキットに含むことができるポリヌクレオチド断片は、例えば下記の(1)〜(5)からなる群より選択される1以上のDNAである:
(1)配列番号142〜161で表される塩基配列又はその相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むDNA。
(2)配列番号142〜161で表される塩基配列又はその相補的配列において、60以上の連続した塩基を含むDNA。
(3)配列番号142〜161で表される塩基配列又はその相補的配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号162〜181で表される塩基配列又はその相補的配列を含むDNA。
(4)配列番号162〜181で表される塩基配列からなるDNA。
(5)配列番号162〜181で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むDNA。
好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドが、配列番号142〜155、157〜161のいずれかで表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの15以上の連続した塩基を含む断片である。
別の好ましい実施形態では、本発明のキットは、上記のポリヌクレオチドに加えて、配列番号156で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの15以上の連続した塩基を含む断片をさらに含むことができる。
好ましい実施形態では、前記断片は、15以上、好ましくは60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチドであることができる。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号142〜161のいずれかで表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号162〜181のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドの配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号162〜181のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号162〜181のいずれかで表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
別の好ましい実施形態では、前記断片が、配列番号162〜181のいずれかで表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
好ましい実施形態によれば、本発明のキットは、配列番号142〜155で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの15以上の連続した塩基を含む断片から選択される1又は複数のポリヌクレオチドを含む。
前記ポリヌクレオチドは、限定されないが、例えば、配列番号142〜155のいずれかで表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号162〜175のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドの配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドであることができる。
好ましい別の実施形態によれば、本発明のキットは、配列番号157〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの15以上の連続した塩基を含む断片から選択される1又は複数のポリヌクレオチドを含む。
前記ポリヌクレオチドは、限定されないが、例えば、配列番号157〜161のいずれかで表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号177〜181のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドの配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
本発明のキットは、上記の2種類以上のポリヌクレオチドの任意の組み合わせを含むことができる。
そのような組み合わせの具体例は、配列番号142および143の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜144の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜145の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜146の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜147の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜148の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜149の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜150の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜151の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はその断片、配列番号142〜152の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜153の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜154の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜155の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜156の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド及び/又はその断片、配列番号142〜157の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜158の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜159の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜160の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片、配列番号142〜161の塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片である。
別のより好ましい実施形態によれば、本発明のキットは、配列番号162〜181で表される塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチドの2以上〜全部を含むことができる。
別の組み合わせの具体例は、配列番号162〜165、167、171、173、174及び176の塩基配列又はその相補的配列を含む(又は、からなる)ポリヌクレオド及び/又はその断片である。
さらに別の組み合わせの具体例は、配列番号162〜166、168〜172及び175の塩基配列又はその相補的配列を含む(又は、からなる)ポリヌクレオド及び/又はその断片である。
本発明において、上記のI群、II群のポリヌクレオチドの断片のサイズは、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する15〜配列の全塩基数、15〜5000塩基、15〜4500塩基、15〜4000塩基、15〜3500塩基、15〜3000塩基、15〜2500塩基、15〜2000塩基、15〜1500塩基、15〜1000塩基、15〜900塩基、15〜800塩基、15〜700塩基、15〜600塩基、15〜500塩基、15〜400塩基、15〜300塩基、15〜250塩基、15〜200塩基、15〜150塩基、15〜140塩基、15〜130塩基、15〜120塩基、15〜110塩基、15〜100塩基、15〜90塩基、15〜80塩基、15〜70塩基、15〜60塩基、15〜50塩基、15〜40塩基、15〜30塩基又は15〜25塩基;25〜配列の全塩基数、25〜1000塩基、25〜900塩基、25〜800塩基、25〜700塩基、25〜600塩基、25〜500塩基、25〜400塩基、25〜300塩基、25〜250塩基、25〜200塩基、25〜150塩基、25〜140塩基、25〜130塩基、25〜120塩基、25〜110塩基、25〜100塩基、25〜90塩基、25〜80塩基、25〜70塩基、25〜60塩基、25〜50塩基又は25〜40塩基;50〜配列の全塩基数、50〜1000塩基、50〜900塩基、50〜800塩基、50〜700塩基、50〜600塩基、50〜500塩基、50〜400塩基、50〜300塩基、50〜250塩基、50〜200塩基、50〜150塩基、50〜140塩基、50〜130塩基、50〜120塩基、50〜110塩基、50〜100塩基、50〜90塩基、50〜80塩基、50〜70塩基又は50〜60塩基;60〜配列の全塩基数、60〜1000塩基、60〜900塩基、60〜800塩基、60〜700塩基、60〜600塩基、60〜500塩基、60〜400塩基、60〜300塩基、60〜250塩基、60〜200塩基、60〜150塩基、60〜140塩基、60〜130塩基、60〜120塩基、60〜110塩基、60〜100塩基、60〜90塩基、60〜80塩基又は60〜70塩基などの範囲の塩基数である。
本発明のキットを構成する上記の組み合わせは、あくまでも例示であり、他の種々の可能な組み合わせのすべてが本発明に包含されるものとする。
本発明のキットには、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片に加えて、食道ガンの検出を可能とする既知の又は将来見出されるポリヌクレオチドも包含させることができる。
4.2 抗体キット
本発明はまた、上記2節のIII群に記載される抗体、その断片又はその化学修飾誘導体、上記3.3節に記載される抗体、その断片又はその化学修飾誘導体のうち1つ又は複数を含む食道ガンの存在又は転移をインビトロで検出、判定又は予測するためのキットを提供する。
本発明のキットには、以下に記載するようなIII群(k)、(l)及び(m)からの抗体、その断片又はその化学修飾誘導体プローブを含有させることができる。これらのプローブの各々は単独で又は組み合わせて適当な容器に収納されうる。
プローブの組み合わせの例は以下のとおりである。
第1の例は、食道ガン転移マーカーとしての、上記AXL、C6orf54、ZBTB11、TNFRSF14、NSUN5、SPEN、LTBP3、SYNGR1、ARL3、SLC13A1、RALGDS、ADD3、MAP3K12、AVPI1、GIMAP6、FLJ11259、C3AR1、PCGF2、PDE6D、PLCG2、GPR148、ARF6、NISCH、GLYAT、IGHM、FBXO38、SLC12A1、PGDS、CD48、IMPA2、HSPA6、EIF3S9、ZNF659、RAB6C、NOL1、DAB2、EBI3、PRSS3、GLB1、SAMSN1、AQP3、CAPZA2、B4GALT2、ARHGEF3、POGK、PRAF1およびHPGD遺伝子によってコードされるポリペプチド、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体を検出するために、これらのポリペプチド、その変異体又はその断片に対する抗体を1又は複数組み合わせて含む。これらのプローブは、食道ガンの存在及び/又は転移の検出、判定又は予測のために使用しうる。特に、転移の予測は、食道ガン患者の術後予後の予測に導くことができる。
具体的には、キットに含まれるプローブは、配列番号95〜140で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、それらの変異体、或いはそれらの断片の少なくとも1つと特異的に結合する1または複数の抗体、その断片、またはそれらの化学修飾誘導体である。
このキットには、さらに配列番号141で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体、その断片またはそれらの化学修飾誘導体を含ませることができる。併用により、転移の予測又は術後予後の予測のための精度を高めることができる。
第2の例は、食道ガンマーカーとしての、上記GALNS,fgf3,CAMK2B,CaMKIINalpha,PSARL,XRCC3,CAPG,GRHPR,TROAP,RRM2,SATB2,C14orf162,SEPT6,M6PR,SPRR3,EML1,YPEL5,EIF4EBP2,SLC2A14及びSLIT2遺伝子によってコードされるポリペプチド、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体を検出するために、これらのポリペプチド、その変異体又はその断片に対する抗体を1又は複数組み合わせて含む。これらのプローブは、食道ガンの存在の検出、判定又は予測のために使用しうる。
具体的には、キットに含まれるプローブは、配列番号182〜195、197〜201で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、それらの変異体、或いはそれらの断片の少なくとも1つと特異的に結合する1または複数の抗体、その断片又はそれらの化学修飾誘導体である。
このキットにはさらに、配列番号196で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体、その断片又はそれらの化学修飾誘導体を含ませることができる。
第3の例は、配列番号202〜232で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、それらの変異体、或いはそれらの断片の少なくとも1つと特異的に結合する1または複数の抗体、その断片又はその化学修飾誘導体である。
このキットにはさらに、配列番号233で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体、その断片又はそれらの化学修飾誘導体を含ませることができる。
本発明のキットに含まれる抗体は、個別にまたは混合物の形態で存在し得るし、あるいは固相担体に結合されていてもよいしまたは遊離の形態でもよい。さらに本発明のキットは、標識二次抗体、担体、洗浄バッファー、試料希釈液、酵素基質、反応停止液、精製された標準物質としてのマーカー(標的)ポリペプチド、使用説明書、等を含むことができる。
5.DNAチップ
本発明はさらに、上記の3節及び/又は4節に記載されるような、本発明の組成物及び/又はキットに含まれるものと同じポリヌクレオチド、変異体又は断片を単独で又は組み合わせて、好ましくは組み合わせて、食道ガンの存在又は転移をインビトロで検出、判定又は予測するためのDNAチップを提供する。
DNAチップの基板としては、DNAを固相化できるものであれば特に制限はなく、スライドガラス、シリコン製チップ、ポリマー製チップ及びナイロンメンブレンなどを例示することができる。またこれらの基板にはポリLリジンコートやアミノ基、カルボキシル基などの官能基導入などの表面処理がされていてもよい。
また固相化法については一般に用いられる方法であれば特に制限はなく、スポッター又はアレイヤーと呼ばれる高密度分注機を用いてDNAをスポットする方法や、ノズルより微少な液滴を圧電素子などにより噴射する装置(インクジェット)を用いてDNAを基板に吹き付ける方法、又は基板上で順次ヌクレオチド合成を行う方法を例示することができる。高密度分注機を用いる場合には、例えば多数のウェルを持つプレートのおのおののウェルに異なった遺伝子溶液を入れておき、この溶液をピン(針)で取り上げて基板上に順番にスポットすることによる。インクジェット法では、ノズルより遺伝子を噴射し,基板上に高速度で遺伝子を整列配置することによる。基板上でのDNA合成は、基板上に結合した塩基を光によって脱離する官能基で保護し、マスクを用いることにより特定部位の塩基だけに光を当て、官能基を脱離させる。その後、塩基を反応液に加えて、基板上の塩基とカップリングさせる工程を繰り返すことによって行われる。
固相化されるポリヌクレオチドは、上記で説明した本発明のポリヌクレオチドである。
例えば、そのようなポリヌクレオチドは、以下の1又は複数のポリヌクレオチド又はその断片を含むことができる。
(1)配列番号1〜46、47で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(2)配列番号1〜46、47で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(3)配列番号1〜46で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(4)配列番号1〜46で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群、それらの変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(5)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(6)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(7)配列番号1〜46で表される塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(8)配列番号1〜46で表される塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(9)配列番号47で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(10)配列番号47で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(11)配列番号47で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(12)配列番号47で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(13)配列番号47で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(14)配列番号47で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(15)配列番号1〜46で表される塩基配列またはその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(16)配列番号1〜46で表される塩基配列またはその相補的配列の各々において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(17)配列番号47で表される塩基配列またはその相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(18)配列番号47で表される塩基配列またはその相補的配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(19)配列番号1〜46で表される塩基配列において、それぞれ配列番号48〜93で表される塩基配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(20)配列番号1〜46で表される塩基配列に相補的な配列において、それぞれ配列番号48〜93で表される塩基配列に相補的な配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(21)配列番号47で表される塩基配列において、それぞれ配列番号94で表される塩基配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(22)配列番号47で表される塩基配列に相補的な配列において、それぞれ配列番号94で表される塩基配列に相補的な配列を含み、かつ60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
好ましい実施形態によれば、本発明のDNAチップは、配列番号48〜94で表される塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチドの2以上から全部を含むことができる。
さらに別の例において、DNAチップに結合しうるポリヌクレオチドは、以下の1又は複数のポリヌクレオチド又はその断片を含むことができる。
(1)配列番号142〜161で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(2)配列番号142〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(3)配列番号142〜155で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(4)配列番号142〜155で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(5)配列番号142〜155で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(6)配列番号142〜155で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(7)配列番号142〜155で表される塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(8)配列番号142〜155で表される塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(9)配列番号157〜161で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(10)配列番号157〜161で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(11)配列番号157〜161で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(12)配列番号157〜161で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
(13)配列番号157〜161で表される塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(14)配列番号157〜161で表される塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(15)配列番号142〜155で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(16)配列番号142〜155で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(17)配列番号157〜161で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(18)配列番号157〜161で表される塩基配列又はその相補的配列の各々において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(19)配列番号142〜155で表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号162〜175で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(20)配列番号142〜155で表される塩基配列に相補的な配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号162〜175で表される塩基配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチド。
(21)配列番号157〜161で表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号177〜181で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(22)配列番号157〜161で表される塩基配列に相補的な配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中にそれぞれ配列番号177〜181で表される塩基配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチド。
(23)配列番号156で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(24)配列番号156で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、その変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(25)配列番号156で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(26)配列番号156で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(27)配列番号156で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(28)配列番号156で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(29)配列番号156で表される塩基配列又はその相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(30)配列番号156で表される塩基配列又はその相補的配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(31)配列番号156で表される塩基配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中に配列番号176で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(32)配列番号156で表される塩基配列に相補的な配列において、60以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド中に配列番号176で表される塩基配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチド。
好ましい実施形態によれば、本発明のDNAチップは、配列番号162〜181で表される塩基配列又はその相補的配列を含むポリヌクレオチドの2以上〜全部を含むことができる。
本発明において、固相化されるポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、RNA(例えばmRNA、cRNA、aRNA)、合成DNA、合成RNAのいずれでもよいし、あるいは一本鎖でもよいし又は二本鎖でもよい。
標的遺伝子、RNA又はcDNAの発現レベルを検出、測定することができるDNAチップの例としては、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U133 Plus 2.0 Array、Agilent社のWhole human genome oligo microarray、タカラバイオ社のIntelliGene(R)HS Human Expression CHIP、凹凸構造を持つポリメチルメタクリレート製DNAチップ基板(日本国特開2004−264289)などを挙げることができる。
DNAマイクロアレイの作製について、例えば予め調製したプローブを固相表面に固定化する方法を使用することができる。予め調製したポリヌクレオチドプローブを固相表面に固定化する方法では、官能基を導入したポリヌクレオチドを合成し、表面処理した固相担体表面にオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを点着し、共有結合させる(例えば、J.B.Lamtureら、Nucleic.Acids.Research、1994年、第22巻、p.2121−2125、Z.Guoら、Nucleic.Acids.Research、1994年、第22巻、p.5456−5465)。ポリヌクレオチドは、一般的には、表面処理した固相担体にスペーサ−やクロスリンカーを介して共有結合される。ガラス表面にポリアクリルアミドゲルの微小片を整列させ、そこに合成ポリヌクレオチドを共有結合させる方法も知られている(G.Yershovら、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、1996年、第94巻、p.4913)。また、シリカマイクロアレイ上に微小電極のアレイを作製し、電極上にはストレプトアビジンを含むアガロースの浸透層を設けて反応部位とし、この部位をプラスに荷電させることでビオチン化ポリクレオチドを固定し、部位の荷電を制御することで、高速で厳密なハイブリダイゼーションを可能にする方法も知られている(R.G.Sosnowskiら、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、1997年、第94巻、p.1119―1123)。
6.食道ガンの存在又は転移の検出、判定又は予測法
本発明は、被験者由来の生体試料中の1又は複数の食道ガン関連標的核酸の存在又は存在量若しくは発現量を、上で定義したI群、II群及び/又はIII群から選択される1又は複数のプローブ、或いは本発明の組成物、キット、DNAチップ又はそれらの組み合わせを用いて測定することを含む、食道ガンの存在及び/又は転移をインビトロで検出、判定又は予測する方法を提供する。
上記I群のポリヌクレオチド、並びにIII群(k)の抗体、その断片又はその化学修飾誘導体は、食道ガンの存在及び/又は転移の検出、判定又は予測のために使用することができる。
上記II群のポリヌクレオチド、並びにIII群(l)、(m)の抗体、その断片又はその化学修飾誘導体は、食道ガンの存在の検出、判定又は予測のために使用することができる。
本発明の方法においては、食道ガンの存在又は転移の検出、判定又は予測は、対照試料からの変化を指標にして決定することができる。
例えば、被験者由来の生体試料中に食道ガン細胞又は転移性食道ガン細胞が含まれるかどうかをインビトロで判定するために、それぞれ正常もしくは非ガンの食道組織又は術後転移がなかった患者由来の食道ガン組織に対して、生体試料中の細胞の標的核酸の発現量が変化(すなわち、増加又は低下)している場合、生体試料中に食道ガン細胞又は転移性食道ガン細胞が存在すると判定することができる。
本発明はまた、上で定義したI群、II群及び/又はIII群から選択される1又は複数のプローブの、或いは本発明の組成物、キット又はDNAチップの、被験者由来の生体試料中の食道ガンの存在又は転移をインビトロで検出、判定又は予測するための使用方法も提供する。
本発明の食道ガンの存在又は転移の検出、判定、予測又は(遺伝子)診断において、本発明の組成物、キット又はDNAチップに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片からなる食道ガン診断用プローブは、プライマーとして又は検出プローブ(探索子)として用いることができる。プライマーとして用いる場合には、通常15〜50塩基、好ましくは15〜30塩基、より好ましくは18〜25塩基の塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、例えば15塩基〜全配列の塩基数、好ましくは25〜1000塩基、より好ましくは25〜100塩基の塩基長を有するものが例示できるが、この範囲に限定されない。
本発明の組成物又はキットに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片は、ノーザンブロット法、サザンブロット法、RT−PCR法、in situ ハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、定法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験者の食道組織又は食道ガン細胞の存在が疑われる生体組織の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、もしくは手術によって摘出した生体組織から回収する。さらにそこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される、cDNA、ポリA(+)RNAを含む各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
あるいは、生体組織における本発明の遺伝子、RNA、cDNAなどの核酸の発現量は、DNAチップ(DNAマクロアレイを含む)を用いて検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の組成物又はキットはDNAアレイのプローブとして使用することができる(例えば、アフィメトリックス社のHuman Genome U133 Plus 2.0 Arrayでは25塩基の長さのポリヌクレオチドプローブが用いられる)。かかるDNAアレイを生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNA又はRNAとハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズによって形成された上記プローブと標識DNA又はRNAとの複合体を、該標識DNA又はRNAの標識を指標として検出することにより、生体組織中での食道ガン関連遺伝子又は食道ガン転移関連遺伝子の発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することができる。本発明の方法では、DNAチップを好ましく使用できるが、これは、ひとつの生体試料について同時に複数遺伝子の発現の有無又は発現レベルの評価が可能である。
本発明の組成物、キット又はDNAチップは、食道ガンの存在又は転移の診断、すなわち検出、判定又は予測(例えば、罹患の有無や罹患の程度の診断)、のために有用である。具体的には、該組成物、キット又はDNAチップを使用した食道ガンの存在又は転移の診断は、被験者の食道ガン細胞の存在する生体組織と、手術時にリンパ節転移がなかった患者由来の食道ガン組織及び/又は手術時にリンパ節転移があった患者由来の食道ガン組織との比較、或いは手術時にリンパ節転移がなかった患者及び/又は手術時にリンパ節転移があった患者由来の生体組織との比較を行い、該診断用組成物で検出される遺伝子の発現レベルの違い(又は、差)を判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現の有無だけではなく、食道ガン細胞の存在する生体組織と正常組織の両者、或いは転移性食道ガン細胞の存在する生体組織と非転移性食道ガン細胞の存在する生体組織の両者、ともに発現がある場合でも、両者間の発現量を比較した時の差が検定上有意(p値 <0.05)である場合が含まれる。例えばSPRR3遺伝子は食道ガンで発現の誘導/減少を示すので、被験者の食道ガン組織では発現/減少しており、該発現量と正常組織の発現量と比べて検定を行った時に、その差が有意であれば、被験者について食道ガンの罹患が疑われる。また、例えばHPGD遺伝子は転移性食道ガンで発現誘導/減少を示すので、被験者の食道ガン組織では発現/減少しており、該発現量と非転移性食道ガン細胞の存在する生体組織の発現量と比べて検定を行った時に、その差が有意であれば、被験者について食道ガンの転移が疑われる。
本発明の組成物、キット又はDNAチップを利用した食道ガン(細胞)又は転移性食道ガン(細胞)の検出方法は、被験者の生体組織の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、もしくは手術によって摘出した生体組織から回収し、そこに含まれる遺伝子を、本発明のポリヌクレオチドプローブ群から選ばれた単数又は複数のポリヌクレオチド、その変異体又はその断片を用いて検出し、その遺伝子発現量を測定することにより、食道ガンの罹患の有無又はその程度、或いは食道ガンの転移の有無又はその程度、を診断することを含む。また本発明の食道ガン又は食道ガン転移の検出方法は、例えば食道ガン患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における該疾患の改善の有無又はその程度を検出、判定又は予測することもできる。
本発明の方法は、例えば以下の(a)、(b)及び(c)の工程:
(a)被験者由来の生体試料を、本発明の組成物、キット又はDNAチップのポリヌクレオチドと接触させる工程、
(b)生体試料中の標的核酸の発現レベルを、上記ポリヌクレオチドをプローブとして用いて測定する工程、
(c)(b)の結果をもとに、該生体試料中の食道ガン(細胞)又は転移性食道ガン(細胞)の存在又は不存在を判定する工程、
を含むことができる。
本発明方法で用いられる生体試料としては、被験者の生体組織、例えば食道組織及びその周辺組織、食道ガンの転移が疑われる組織など、から調製される試料を挙げることができる。具体的には該組織から調製されるRNA含有試料、或いはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料は、被験者の生体組織の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、もしくは手術によって摘出した生体組織から回収し、そこから常法に従って調製することができる。
ここで被験者とは、哺乳動物、例えば非限定的にヒト、サル、マウス、ラットなどを指し、好ましくはヒトである。
本発明の方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて工程を変更することができる。
例えば、測定対象物としてRNAを利用する場合、食道ガン(細胞)又は転移性食道ガン(細胞)の検出は、例えば下記の工程(a)、(b)及び(c):
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチド(cDNA)を、本発明の組成物、キット又はDNAチップのポリヌクレオチドと結合させる工程、
(b) 該ポリヌクレオチドに結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記ポリヌクレオチドをプローブとして用いて測定する工程、
(c) 上記(b)の測定結果に基づいて、食道ガン(細胞)又は転移性食道ガン(細胞)の存在又は不存在を判定する工程、
を含むことができる。
本発明によって食道ガン(細胞)又は転移性食道ガン(細胞)を検出、判定又は診断するために、例えば種々のハイブリダイゼーション法を使用することができる。かようなハイブリダイゼーション法には、例えばノーザンブロット法、サザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などを使用することができる。
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の組成物をプローブとして用いることによって、RNA中の各遺伝子発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の診断用組成物(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33P、35Sなど)や蛍光物質などで標識し、それを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーした被検者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせたのち、形成された診断用組成物(DNA)とRNAとの二重鎖を診断用組成物の標識物(放射性同位元素又は蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士写真フィルム株式会社、などを例示できる)又は蛍光検出器(例えば、STORM860、Amersham Bioscience社など)で検出、測定する方法を例示することができる。
定量RT―PCR法を利用する場合には、本発明の上記診断用組成物をプライマーとして用いることによって、RNA中の遺伝子発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被検者の生体組織由来のRNAから常法にしたがってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の各遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の組成物から調製した1対のプライマー(上記cDNAに結合する正鎖と逆鎖からなる)をcDNAとハイブリダイズさせて常法によりPCR法を行い、得られた二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、二本鎖DNAの検出法としては、上記PCRをあらかじめ放射性同位元素又は蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行う方法、PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドなどで二本鎖DNAを染色して検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーさせて標識した診断用組成物をプローブとしてこれとハイブリダイズさせて検出することを含む方法をとることができる。
DNAアレイ解析を利用する場合は、本発明の上記診断用組成物をDNAプローブ(一本鎖又は二本鎖)として基板に貼り付けたDNAチップを用いる。遺伝子群を基板に固相化したものには、一般にDNAチップ及びDNAアレイという名称があり、DNAアレイにはDNAマクロアレイとDNAマイクロアレイが包含されるが、本明細書ではDNAチップといった場合、該DNAアレイを含むものとする。
ハイブリダイゼーション条件は、限定されないが、例えば30℃〜50℃で、3〜4×SSC、0.1〜0.5% SDS中で1〜24時間のハイブリダイゼーション、より好ましくは40℃〜45℃で、3.4×SSC、0.3%SDS中で1〜24時間のハイブリダイゼーション、そしてその後の洗浄を含む。洗浄条件としては、例えば、2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び1×SSC溶液、0.2×SSC溶液による室温での連続した洗浄などの条件を挙げることができる。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウムおよび15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.2)である。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが望ましい。具体的にはこのような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%の同一性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
本発明の組成物又はキットからのポリヌクレオチド断片をプライマーとしてPCRを実施する際のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、例えば10mMTris−HCL(pH8.3)、50mMKCL、1〜2mM MgCl2などの組成のPCRバッファーを用い、当該プライマーの配列から計算されたTm+5〜10℃において15秒から1分程度処理することなどが挙げられる。かかるTmの計算方法としてTm=2×(アデニン残基数+チミン残基数)+4×(グアニン残基数+シトシン残基数)などが挙げられる。
これらのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」の他の例については、例えばSambrook, J. & Russel, D. 著、Molecular Cloning, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の 第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17などに記載されており、本発明において利用できる。
本発明はまた、上記I群、II群及び/又はIII群の1又は複数のプローブ、或いは本発明の組成物、キット、DNAチップ又はそれらの組み合わせ、を用いて、被験者由来の生体試料中の標的核酸又は遺伝子の発現量を測定し、食道ガン組織と正常組織、或いは転移性食道ガン組織と非転移性食道ガン組織、の遺伝子発現量を教師(訓練サンプル)としたサポートベクターマシーン(SVM)を判別式として、生体試料中に食道ガン細胞或いは転移性食道ガン細胞が含まれないこと及び/又は含まれることを判定する方法を提供する。
すなわち、本発明はさらに、上に定義されたI群から選択されるプローブ、或いは、該プローブを含む、本発明の組成物、キット又はDNAチップを用いて、転移を伴う食道ガン又は転移を伴わない食道ガン細胞を含む組織であることが既知の複数の生体試料中の食道ガン関連標的核酸の発現量をインビトロで測定する第1の工程、該第1の工程で得られた該標的核酸の発現量の測定値を教師とした判別式(サポートベクターマシーン)を作成する第2の工程、被験者の食道由来の生体試料中の該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にインビトロで測定する第3の工程、該第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量の測定値を代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、生体試料中に転移を伴うガン細胞が含まれないこと及び/又は転移を伴わないガン細胞が含まれることを判定する第4の工程を含む、食道ガンの転移を検出、判定又は予測する方法を提供する。
本発明はまた、上に定義されるII群から選択されるプローブ、或いは、該プローブを含む、本発明の組成物、キット又はDNAチップを用いて、食道ガン細胞を含む組織又は正常組織であることが既知の複数の生体試料中の標的核酸の発現量をインビトロで測定する第1の工程、該第1の工程で得られた該標的核酸の発現量の測定値を教師とした判別式(サポートベクターマシーン)を作成する第2の工程、被験者の食道由来の生体試料中の該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にインビトロで測定する第3の工程、該第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量の測定値を代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、生体試料中にガン細胞が含まれること又はガン細胞が含まれないことを判定する第4の工程を含む、食道ガンを検出する方法を提供する。
或いは、本発明の方法は、例えば下記の工程(a)、(b)及び(c):
(a)食道ガン細胞を含む組織又は正常組織であることが既知の生体試料、或いは転移がある患者由来の食道ガン細胞を含む組織又は転移がない患者由来の食道ガン細胞組織であることが既知の生体試料、中の標的遺伝子の発現量を、本発明による組成物、キット又はDNAチップを用いて測定する工程、
(b)(a)で測定された発現量の測定値を、下記の数1〜数5の式に代入して、SVMと呼ばれる判別式を作成する工程、
(c)被験者由来の生体試料中の該標的遺伝子の発現量を、本発明の組成物、キット又はDNAチップを用いて測定し、(b)で作成した判別式にそれらを代入して、得られた結果に基づいて該生体試料中に食道ガン細胞又は転移性食道ガン細胞が含まれるかどうかを判定する工程、
を含むことができる。
SVMとは2クラスの分類問題を解くためにつくられた1995年にAT&TのV.Vapnik(The Nature of Statistical Leaning Theory、Springer、1995年発行)によって統計的学習理論の枠組みで提案された学習機械である。SVMは線形の識別器であるが、後述するカーネルを組み合わせることによって非線形問題を扱うことができる。異なるクラスの訓練サンプルについて、それらを識別する多数の超平面のうち、その超平面と訓練サンプルとの最小距離が最大となる超平面を識別面とすることにより、新たに与えられるテストサンプルがどのクラスに属するかを最も正確に識別することができる。
SVMでは線形問題のみしか扱うことができないが、本質的に非線形な問題に対応するための方法として、特徴ベクトルを高次元へ非線形変換し、その空間で線形の識別を行う方法が知られている。こうすれば、元の空間で非線形モデルを用いているのと等価となる。しかし高次元への写像を行うと膨大な計算量が必要となり、汎化能力も減少する。SVMでは識別関数が入力パターンの内積のみに依存した形になっており、内積が計算できれば最適な識別関数を構成することが可能である。非線形に写像した空間での二つの要素の内積がそれぞれのもとの空間での入力のみで表現されるような式のことをカーネルと呼び、高次元に写像しながら、実際には写像された空間での特徴の計算を避けてカーネルの計算のみで最適な識別関数、すなわち判別式を構成することができる(例えば、麻生英樹ら著、統計科学のフロンテイア6「パターン認識と学習の統計学 新しい概念と手法」、岩波書店、東京、日本(2004年))。
本発明の方法で使用可能な判別式の算出例を以下に示す。
SVMを決めるためには食道ガン細胞を含む組織または正常組織であることが既知の生体試料中の標的遺伝子の発現量を教師(訓練サンプル)として用意し、以下の手順によって識別関数の定数を決定することができる。
訓練サンプルxiは(+1、−1)でクラス分けされる、食道ガン細胞を含む組織群、または正常組織群のいずれかに属しているとする。これらの訓練サンプルが超平面によって線形分離できるとき、識別関数は例えば次式となる。
(ここで、wは重み係数、bはバイアス定数、xはサンプルの変数を表す。)
ただし、この関数には制約条件:
(ここで、Tは内積、yはサンプルのクラス、ζはスラック変数を表す。)
があるため、Lagurangeの未定乗数法を用いることによりLagurange乗数αを用いた以下の最適化問題に帰着する。
(ここで、Cは実験により決定される制限条件パラメーターを表す。)
この問題を解くと最終的に、
が得られ、識別関数を一義的に得ることができる。この関数に新たに与えられる生体試料(食道ガン細胞を含むかどうか不明である組織の発現遺伝子量)についてのxを代入することによって、f(x)をクラス分け(すなわち、+1又は−1)することができ、生体試料がどちらのクラス(すなわち、食道ガン細胞を含む組織群又は正常組織、或いは転移がある患者由来の食道ガン細胞を含む組織群又は転移がない患者由来の食道ガン組織)に属するかを識別する。
以上に示すように、未知試料のクラス分けを行うためのSVMによる判定式の作成には2群の教師(訓練サンプル)が必要となる。この訓練サンプルは例えば本発明の場合、「転移のある食道ガン患者の食道ガン組織から得られた発現遺伝子(遺伝子 x1,x2,..xi,...xn)」の各患者に対応したセット、および「転移のない食道ガン患者の食道ガン組織から得られた発現遺伝子(遺伝子 x1,x2,..xi,...xn)」の各患者に対応したセット、の2群である。これらのセットについてそれぞれ測定される発現遺伝子数(n)は実験のデザインによって様々ではあるが、個々の遺伝子については、どのような実験においても2群間で大きく差がある場合と、比較的差が少ない、あるいは差がない場合が観察される。SVMによる判別式の精度を上げるためには、訓練サンプルとなる2群に、明確な差があることが条件となるため、遺伝子セットの中から2群間で発現量に差がある遺伝子のみを抽出して利用することが必要である。
このように、2群間で差がある遺伝子を抽出する方法としては、平均値の差を検出するパラメトリック解析であるt−検定、ノンパラメトリック解析であるMann―WhitneyのU検定などを利用できる。
本発明の方法において、例えば、上に記載したような配列番号1〜46、47に基づく1又は複数の上記ポリヌクレオチド、並びに/或いは、上に記載したような1〜46、47に基づく1又は複数のポリヌクレオチド、からの任意の組み合わせを用いて、かつ上記の47種の標的遺伝子の発現量がすべて有意に転移がある患者由来の食道ガン組織と転移がない患者由来の食道ガン組織間で異なり、転移がある患者由来の食道ガン組織において発現が増加/減少していることを指標にして、これら47種の遺伝子について発現量を測定することにより、食道ガンの転移を70%以上、80%以上、好ましくは84%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは86%以上の確率で見分けることができる(図1)。
さらにまた、例えば、上に記載したような配列番号142〜156及び162〜176に基づく1又は複数の上記ポリヌクレオチド、並びに/或いは、上に記載したような配列番号157〜161及び177〜181に基づく1又は複数のポリヌクレオチド、からの任意の組み合わせを用いて、かつ上記の20種の標的遺伝子の発現量がすべて有意に食道ガン組織と非ガン組織間で異なり食道ガン組織において発現が減少していることを指標にして、これら20種の遺伝子について発現量を測定することにより、食道ガン組織を89%以上、90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上の確率で見分けることができる(図4)。
本発明はさらに、上記47種の遺伝子(例えば、配列番号1〜47に相当する)又はその断片(例えば、配列番号48〜94に相当する)によってコードされるポリペプチド、例えば配列番号95〜141で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、に対する1又は複数の抗体又はその断片を用いて、転移がある患者由来の食道ガン組織と転移がない患者由来の食道ガン組織間での該ポリペプチドの発現量、或いは血液中の該ポリペプチドのレベル(又は存在量)、をインビトロで測定することを含む、食道ガンの転移を検出、判定又は予測する方法を提供する。
本発明はまた、上記20種の遺伝子(例えば、配列番号142〜161に相当する)又はその断片(例えば、配列番号162〜181に相当する)によってコードされるポリペプチド、例えば配列番号182〜201で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、に対する1又は複数の抗体又はその断片を用いて、食道ガン組織と非ガン組織間での該ポリペプチドの発現量、或いは血液中の該ポリペプチドのレベル(又は存在量)、をインビトロで測定することを含む、食道ガンの検出、判定又は予測する方法を提供する。
具体的には、上記の測定は、免疫学的方法によって行うことができる。
免疫学的測定法として例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応またはウェスタンブロット法が挙げられる。
上記の方法において、標識を用いた免疫測定法により実施する場合には、本発明の抗体を固相化するか、または試料中の成分を固相化して、それらの免疫学的反応を行うことができる。
固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックスまたは磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティックまたは試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。
固相化は、固相担体と本発明の抗体または試料成分とを物理的吸着法、化学的結合法またはこれらの併用等の公知の方法に従って結合させることにより行うことができる。
さらにまた、本発明においては、本発明の抗体と、試料中の標的ポリペプチドとの反応を容易に検出するために、本発明の抗体を標識することにより該反応を直接検出するか、または標識二次抗体を用いることにより間接的に検出する。本発明の検出方法においては、感度の点で、後者の間接的検出(例えばサンドイッチ法など)を利用することが好ましい。
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、ペルオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素、アミラーゼまたはビオチン−アビジン複合体等の酵素を、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート、AlexaまたはAlexaFluoro等の蛍光性物質もしくは蛍光団を、そして放射免疫測定法の場合にはトリチウム、ヨウ素(131I,125I,123I,121I)、リン(32P)、イオウ(35S)、金属類(例えば68Ga,67Ga,68Ge,54Mn,99Mo,99Tc,133Xeなど)等の放射性同位元素を用いることができる。また、発光免疫測定法は、NADH−、FMNH2−、ルシフェラーゼ系、ルミノール−過酸化水素−POD系、アクリジニウムエステル系またはジオキセタン化合物系等の発光性分子、発光物質、生物発光物質を用いることができる。
また、必要に応じて、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を利用することも可能であり、この場合、本発明の抗体またはその断片に例えばビオチンを結合することもできる。
標識物質と抗体との結合法は、酵素免疫測定法の場合にはグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法または過ヨウ素酸法等の公知の方法を、放射免疫測定法の場合にはクロラミンT法、ボルトンハンター法等の公知の方法を用いることができる。測定の操作法は、公知の方法(Current protocols in Protein Sciences、1995年、John Wiley & Sons Inc.、Current protocols in Immunology、2001年、John Wiley & Sons Inc.)により行うことができる。例えば、本発明の抗体を直接標識する場合には、試料中の成分を固相化し、標識した本発明の抗体と接触させて、マーカーポリペプチドと本発明の抗体との複合体を形成させる。そして未結合の標識抗体を洗浄分離して、結合標識抗体量または未結合標識抗体量より試料中の標的ポリペプチドの量を測定することができる。
また、例えば標識二次抗体を用いる場合には、本発明の抗体と試料とを反応させ(一次反応)、さらに標識二次抗体を反応させる(二次反応)。一次反応と二次反応は逆の順序で行ってもよいし、同時に行ってもよいし、または時間をずらして行ってもよい。一次反応及び二次反応により、固相化した標的ポリペプチド−本発明の抗体−標識二次抗体の複合体、または固相化した本発明の抗体−標的ポリペプチド−標識二次抗体の複合体が形成する。そして未結合の標識二次抗体を洗浄分離して、結合標識二次抗体量または未結合標識二次抗体量より試料中の標的ポリペプチドの量を測定することができる。
具体的には、酵素免疫測定法の場合は標識酵素にその至適条件下で基質を反応させ、その反応生成物の量を光学的方法等により測定する。蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫定法の場合には放射性物質標識による放射能量を測定する。発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。
本発明の方法では、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応または粒子凝集反応等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、目視的に測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液またはグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を反応系に含ませてもよい。
上記抗体又は断片は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片などを含む。ポリクローナル抗体は、精製ポリペプチドを結合した親和性カラムに結合させることを含む、いわゆる吸収法によって、特異的抗体として調製することができる。
測定は、慣用の酵素又は蛍光団で標識した抗体又は断片と、組織切片又はホモゲナイズした組織とを接触させる工程、抗原−抗体複合体を定性的に又は定量的に測定する工程を含むことができる。検出は、例えば免疫電顕により標的ポリペプチドの存在とレベルを測定する方法、ELISAや蛍光抗体法などの慣用法によって標的ポリペプチドのレベルを測定する方法などによって行い、転移がない患者由来の食道ガン組織と比べて転移がある患者由来の食道ガン組織において標的ポリペプチドの発現量が増加又は低下(もしくは、減少)している場合、或いは血液中の該ポリペプチドのレベルが、転移がない食道ガン患者と比べて転移がある食道ガン患者において有意に増加又は低下している場合、食道ガン転移があると決定する。言い換えれば、前記ポリペプチドの発現量又はレベルが、転移のない患者由来の値と比較して有意に増加又は低下している場合、食道ガン転移があると決定する。或いは、上記の方法によって、非ガン組織と比べて食道ガン組織において標的ポリペプチドの発現量が減少している場合、又は血液中の該ポリペプチドのレベルが健常な被験者と比べて食道ガンに罹患した被験者において有意に低下している場合、食道ガンであると決定する。言い換えれば、前記ポリペプチドの発現量又はレベルが、正常値と比較して有意に低下している場合、食道ガンであると決定する。ここで、有意にとは、統計学的に有意であることを意味する。
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されないものとする。
<実施例1>
1.実験者の臨床病理学的所見
インフォームドコンセントを得た119名の食道ガン患者から、食道ガン摘出手術時又は食道生検実施時に食道の摘出組織を得た。摘出された組織片について肉眼的及び/又は病理組織学的に食道ガン組織を判断し、食道ガン病変部と正常組織部を分けてただちに凍結し、液体窒素中で保存した。別途、周辺の所属リンパ節の採取を行い、食道ガン細胞の転移の有無を病理学的に診断した。
2.totalRNA抽出とcDNAの調製
試料として食道ガン患者の食道組織における食道ガン病変部の組織を用いた。おのおのの組織から、Trizol reagent(Invitrogen社)を用いて、同社推奨のプロトコールによりtotalRNAを調製した。
上述の方法で得られたtotalRNA 1μgについて、oligo(dT)プライマー及びランダムノナマーを併用し、CyScribe First−Strand cDNA Labeling Kit(GEヘルスケア社)を用いてメーカー推奨のプロトコールで逆転写反応を行った。食道ガン組織由来のtotalRNAにはCy3−dUTP(GEヘルスケア社)を、リファレンスtotalRNA(Stratagene社)にはCy5−dUTP(GEヘルスケア社)を添加して、メーカー推奨のプロトコールで逆転写反応時にcDNAの標識を行った。標識されたcDNAはQIA quick PCR purification Kit(QIAGEN社)で精製してからハイブリダイズに用いた。
3.オリゴDNAマイクロアレイの作製
オリゴDNAマイクロアレイとしてはAffymetrix社GeneChipTM(Human Genome U133 A)及び本明細書中で述べる方法に従って作製したDNAチップを使用した。
DNAチップの作製方法を以下に示す。最初に搭載するオリゴDNAの種類を決定するために、Affymetrix社GeneChipTMを用いて遺伝子の絞込みを行った。GeneChipTMの操作については、Complete GeneChipTM Instrument Systemなどの同社の定める手順に基づいて実施した。Complete GeneChipTMを用いた解析の結果、食道ガンによって発現変動が起こる可能性がある遺伝子及び実験対照となりうる遺伝子を計8961種抽出した。
抽出した8961種の遺伝子について、配列の重複をおこさないように配列特異性が高い部位の配列60−70残基をそれぞれ選択して合成した。4倍に希釈したSolution I(タカラバイオ社)に30 microMとなるように溶解した、配列番号21−40のオリゴDNAを含む、8961種の60又は70merからなる合成オリゴDNAを、MATSUNAMI・DNAマイクロアレイ用コートグラスDMSO対応 TypeIアミノ修飾オリゴDNA固定コート(松浪硝子工業株式会社)上にスポッター(GMS417arrayer,Affymetrix社)を用いて湿度環境50−60%でスポットした。
4.ハイブリダイゼーション
標識したcDNA 1μgをアンチセンスオリゴカクテル(QIAGEN)に溶解し、Gapカバーグラス(松浪硝子工業)を載せたDNAチップにアプライし、42℃で16時間ハイブリダイズを行った。ハイブリダイズ終了後、DNAチップを2xSSC/0.1%SDS、1xSSC、0.2xSSCで順次洗浄した。
5.遺伝子発現量の測定
上述の方法によりハイブリダイゼーションを行ったDNAチップをAgilentマイクロアレイスキャナー(Agilent社)を用いてスキャンし、画像を取得して蛍光強度を数値化した。統計学的処理はSpeed T.著「Statistical analysis of gene expression microarray data」Chapman & Hall/CRC、及びCauston H.C.ら著「A beginner’s guide Microarray gene expression data analysis」Blackwell publishingを参考にして行った。すなわちハイブリダイズ後の画像解析から得られたデータについて、それぞれの対数値をとり、global normalizationによる正規化とLOWESS(locally weighted scatterplot smoother)による平滑化を行い、MADによるスケーリング処理によってノーマライゼーション補正を行った。その結果、転移がある食道ガン病変部における発現量が、転移がない食道ガン病変部よりも多い/少ない遺伝子を見出すことができた。これらの遺伝子を食道ガン転移検出用遺伝子として利用することができると考えられる。
6.予測スコアリングシステム
50例の患者から得た検体を教師として、Genomic Profiler(三井情報開発)に搭載したSVMを用いる判別式を作成した。この判別式によって、ノーマライゼーションを行った全119例のデータについて、データの予測を行った。なおカーネルは、linear kernelを用いた。また遺伝子は二群間(転移がある食道ガン病変部と転移がない食道ガン病変部)でのt検定のp値をもとに選別した。
すべての検体を対象として解析を行い、転移がある食道ガン病変部と転移がない食道ガン病変部の比較でp値が小さい順の一覧(転移がある食道ガン病変部と転移がない食道ガン病変部での遺伝子転写産物の発現量比較と統計値)を得、この一覧から上位から47種の遺伝子を選んだ(表2)。
選ばれた47種の遺伝子について、食道ガン組織を識別するためのSVMによる判別マシーンを作成し、プローブとして配列番号48〜94のポリヌクレオチドを用いて測定した遺伝子発現を検討することにより、転移がある(すなわち、転移性)食道ガン病変部と転移がない(すなわち、非転移性)食道ガン病変部の判別式を作成したところ、用いる遺伝子の数に依存して確率が変動し、86%以上の確率で転移がある食道ガン病変部と転移がない食道ガン病変部を判別することができた(図1)。
<実施例2>
1.実験者の臨床病理学的所見
インフォームドコンセントを得た119名の食道ガン患者から、食道ガン摘出手術時又は食道生検実施時に食道の摘出組織を得た。摘出された組織片について肉眼的及び/又は病理組織学的に食道ガン組織を判断し、食道ガン病変部と正常組織部を分けてただちに凍結し、液体窒素中で保存した。
2.totalRNA抽出とcDNAの調製
試料として食道ガン患者の食道組織における食道ガン病変部の組織、及び同一食道組織における非ガン組織(正常組織)を用いた。おのおのの組織から、Trizol reagent(Invitrogen社)を用いて、同社推奨のプロトコールによりtotalRNAを調製した。
上述の方法で得られたtotalRNA 1マイクログラム(micro g)について、oligo(dT)プライマー及びランダムノナマーを併用し、CyScribe First−Strand CDNA Labeling Kit(GEヘルスケア社)を用いてメーカー推奨のプロトコールで逆転写反応を行った。正常組織由来又は食道ガン組織由来のtotalRNAにはCy3−dUTP(GEヘルスケア社)を、リファレンスtotalRNA(Stratagene社)にはCy5−dUTP(GEヘルスケア社)を添加して、メーカー推奨のプロトコールで逆転写反応時にcDNAの標識を行った。標識されたcDNAはQIA quick PCR purification Kit(QIAGEN社)で精製してからハイブリダイズに用いた。
3.オリゴDNAマイクロアレイの作製
オリゴDNAマイクロアレイとしてはAffymetrix社GeneChipTM(Human Genome U133 A)及び本明細書中で述べる方法に従って作製したDNAチップを使用した。
DNAチップの作製方法を以下に示す。最初に搭載するオリゴDNAの種類を決定するために、Affymetrix社GeneChipTMを用いて遺伝子の絞込みを行った。GeneChipTMの操作については、Complete GeneChipTM Instrument Systemなどの同社の定める手順に基づいて実施した。Complete GeneChipTMを用いた解析の結果、食道ガンによって発現変動が起こる可能性がある遺伝子及び実験対照となりうる遺伝子を計8961種抽出した。
抽出した8961種の遺伝子について、配列の重複をおこさないように配列特異性が高い部位の配列60−70残基をそれぞれ選択して合成した。4倍に希釈したSolution I(タカラバイオ社)に30 microMとなるように溶解した、配列番号162〜181のオリゴDNAを含む、8961種の60又は70merからなる合成オリゴDNAを、MATSUNAMI DNAマイクロアレイ用コートグラスDMSO対応 TypeIアミノ修飾オリゴDNA固定コート(松浪硝子工業株式会社)上にスポッター(GMS417arrayer,Affymetrix社)を用いて湿度環境50−60%でスポットした。
4.ハイブリダイゼーション
標識したcDNA 1μgをアンチセンスオリゴカクテル(QIAGEN)に溶解し、Gapカバーグラス(松浪硝子工業)を載せたDNAチップにアプライし、42℃で16時間ハイブリダイズを行った。ハイブリダイズ終了後、DNAチップを2xSSC/0.1%SDS、1xSSC、0.2xSSCで順次洗浄した。
5.遺伝子発現量の測定
上述の方法によりハイブリダイゼーションを行ったDNAチップをAgilentマイクロアレイスキャナー(Agilent社)を用いてスキャンし、画像を取得して蛍光強度を数値化した。統計学的処理はSpeed T.著「Statistical analysis of gene expression microarray data」Chapman & Hall/CRC,及びCauston H.C.ら著「A beginner’s guide Microarray gene expression data analysis」Blackwell publishingを参考にして行った。すなわちハイブリダイズ後の画像解析から得られたデータについて、それぞれの対数値をとり、global normalizationによる正規化とLOWESS(locally weighted scatterplot smoother)による平滑化を行い、MADによるスケーリング処理によってノーマライゼーション補正を行った。その結果、非ガン組織部(図2)、食道ガン病変部(図3)に示すようなM−Aプロットを得ることができた。この結果、食道ガン病変部における発現量が、非ガン組織部よりも少ない遺伝子を見出すことができた。これらの遺伝子を食道ガン検出用遺伝子として利用することができると考えられる。
6.予測スコアリングシステム
50例の患者から得た検体を教師として、Genomic Profiler(三井情報開発)に搭載したSVMを用いる判別式を作成した。この判別式によって、ノーマライゼーションを行った全119例のデータについて、データの予測を行った。なおカーネルは、linear kernelを用いた。また遺伝子は二群間(食道ガン病変部と正常組織部)でのt検定のp値をもとに選別した。
すべての検体を対象として解析を行い、食道ガン病変部と非ガン組織部の比較でp値が小さい順の一覧(食道ガン病変部と非ガン組織部での遺伝子転写産物の発現量比較と統計値)を得、この一覧から上位から20種の遺伝子を選んだ(表3)。
選ばれた20種の遺伝子(図2及び図3では白菱形印で示される)について、食道ガン組織を識別するためのSVMによる判別マシーンを作成し、プローブとして配列番号162〜181のポリヌクレオチドを用いて測定した遺伝子発現を検討することにより、食道ガン組織、非ガン組織の判別式を作成したところ、用いる遺伝子の数に依存して確率が変動し、89%以上の確率で食道ガン病変部と非ガン組織部を判別することができた(図4)。
教師となる検体として、手術切片及び生検試料から得た食道ガン病変部、手術切片のみから得た非ガン組織部を用いて解析を行い、食道ガン病変部と非ガン組織部での発現量差についてp値の小さい順に遺伝子を選別し、非ガン組織を識別するためのSVMによる判別マシーンを作成したところ、最適な組み合わせのプローブとして配列番号162〜165、167、171、173、174および176のポリヌクレオチドを用いて測定した遺伝子発現を検討することにより、93%の確率で非ガン組織を識別した。
教師となる検体として、手術切片のみから得た食道ガン病変部、手術切片及び生検試料から得た非ガン組織部を用いて解析を行い、食道ガン病変部と非ガン組織部での発現量差についてp値の小さい順に遺伝子を選別し、食道ガン組織を識別するためのSVMによる判別マシーンを作成したところ、最適な組み合わせのプローブとして配列番号162〜166、168〜172、175のポリヌクレオチドを用いて測定した遺伝子発現を検討することにより、96%の確率で食道ガン組織を識別した。
これらの2つの非ガン組織部を識別するSVMと食道ガン病変部を識別するSVMを同時に1つの被検組織の遺伝子発現量に対してあてはめ、解析を行うことができた。
その結果、ある被検組織について2つの識別式が同時に非ガン組織部であるという結果をもたらした場合、又は2つの識別式が同時に食道ガン病変部であるという結果をもたらした場合、それぞれの診断の確度は従来の1つの識別式によって診断する方法よりも有意に高いという結果を得た。
<実施例3>
1.RT−PCRによる検出
試料として食道ガン患者の食道組織における食道ガン病変部の組織、及び同一食道組織における非ガン組織(正常組織)を用い、おのおのの組織から、Trizol reagent(インビトロジェン社)を用いて、同社推奨のプロトコールによりtotalRNAを調製した。TotalRNAから、SuperScript IIITM FIRST−STRAND SUPER MIXを用いてcDNAを合成し、totalRNA20ng相当のcDNAについてTaKaRa TaqTM (タカラバイオ社、京都、日本)を用いて増幅反応を行った。上記II群に属するCaMKIINalphaおよびYPEL5遺伝子を検出するために、各遺伝子配列(配列番号145および158)に対応する20塩基からなるプライマー(タカラバイオ株式会社)を増幅反応に用いた。反応溶液の組成は提供されたプロトコールに従って調製した。反応条件として、最初に95℃1分間処理した後、95℃15秒、55℃30秒、72℃30秒の組み合わせ条件処理を23(GAPDH)〜26(CaMKIINalphaおよびYPEL5)サイクル行い、最後に72℃で7分間処理した。反応後の反応液を2% agarose gelで泳動し、各遺伝子の発現を確認した(図5)。
図5から明らかなように、CaMKIINalphaおよびYPEL5は食道ガン病変部組織において正常組織より発現が減少していることが示された。
2.定量的RT−PCR法による検出
試料として、1.RT−PCRにおける検出、と同様に作製したcDNAを用いた。定量的RT−PCR法は、タカラバイオ社(京都、日本)のwebページより提供される情報(http://www.takara−bio.co.jp/prt/guide.htm)に基づいて実施した。蛍光検出にはSYBR premix ExTaq(タカラバイオ社)およびABI PRISM 7000を用い、反応液の組成はSYBR premix ExTaq のプロトコールに、反応条件はABI PRISM 7000のプロトコールに準拠して、45サイクルの増幅反応を行った。CaMKIINalpha(配列番号145)およびGAPDH遺伝子を検出するために、各遺伝子配列に対応する20塩基からなるプライマー(タカラバイオ社)を増幅反応に用いた。定量PCRのための検量線を作成するにあたっては、CaMKIINalphaについては食道組織より調製したPCR断片を、定常発現遺伝子の一種であるGAPDH(ここで、定常発現遺伝子とは、ほとんどのヒト細胞・組織において発現量がほぼ一定である遺伝子であって、ハウスキーピングジーンとも呼ばれるものである。)についてはhuman reference RNA(Stratagene社)より合成したcDNAを、それぞれ任意の濃度に希釈して用いた。Total RNA10ng相当のcDNAについてCaMKIINalphaとGAPDHについて各組織で定量的PCR法を実施し、CaMKIINalpha発現量のGAPDH発現量に対する比を算定した。
その結果、食道ガン患者の食道組織における食道ガン病変部の組織のCaMKIINalpha/GAPDH発現比は0.41、正常組織のそれは3.16となり、食道ガン病変部において、CaMKIINalpha発現量が低下していることが示された。
3.結果
RT−PCRによって、食道ガン組織におけるCaMKIINalpha及びYPEL5のmRNAの発現量を確認したところ、正常食道組織に比べ減少している傾向が示された。
また、定量的RT−PCRによって、CaMKIINalphaのmRNAは食道ガン組織において正常食道組織に比べ約1/7.7に減少していることが示された。
4.半定量的RT−PCR
半定量的RT−PCRはライトサイクラー(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いて行った。試料として食道ガン患者の食道組織における食道ガン病変部の組織、及び同一食道組織における非ガン組織(正常組織)を用い、おのおのの組織から抽出したtotalRNAから、first strand synthesis kit(GEヘルスケア社)を用いてcDNAを合成した。上記II群に属するXRCC3およびRRM2、また内因性コントロールとしてGAPDHに対するプライマーについては、primer3(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて配列を決定した(XRCC3について5’−ACTGTGCCCCACAAAACTTC−3’(配列番号234)、5’−GACCCTCCTTCCTCTCAACC−3’(配列番号235)、RRM2について5’−GGCTGGCTGTGACTTACCAT−3’(配列番号236)、5’−AATCTGCGTTGAAGCAGTGA−3’(配列番号237)、GAPDHについて5’−TGGTATCGTGGAAGGACTCATGC−3’(配列番号238)、5’−ATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCAGC−3’(配列番号239))とした。得られた2μLのcDNAテンプレートについてプライマーを各50pmol、3mM MgCl2を2.4μL、LightCycler DNA MASTER SYBR GreenI,10x conc(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)2μLと混合し、ライトサイクラーを用いてPCR反応を行った。反応条件として、最初に95℃で反応溶液を処理した後、94℃1秒、アニール温度(XRCC3 58℃、RRM2 53.1℃)5秒、72℃18秒の組み合わせ条件処理を45サイクル行い、最後に0.2℃/秒の割合で95℃まで加温してmelting curveを確認した。すべての実験において試料を希釈することによってGAPDHの発現量定量曲線を作成し、食道ガン病変部組織と正常組織においてRRM2およびXRCC3の発現量を半定量した。
その結果、RRM2についてはその発現量が、正常組織:食道ガン病変部の比が1:0.06、XRCC3について1:0.11に減少していた。
<実施例4>
1.健常人および食道ガン患者血漿のタンパク質同定
50〜70歳代の食道ガン患者11名、および年齢を対応させた健常人8名より、EDTA添加の血漿成分をそれぞれ得た。健常人についてはランダムに4名分のプール血漿を作製し、解析に用いた。食道ガン患者の血漿は1例ずつ解析を行った。
血漿をポアサイズ0.22μmのフィルターでろ過して夾雑物質を取り除き、タンパク質濃度50mg/mLとなるように調整した。この血漿をさらに25mM重炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)12.5mg/mLに希釈し、中空糸フィルター(東レ)によって分子量分画を行った。分画後の血漿サンプル(全量1.8mL、最大250μgのタンパク質を含む)をProteomeLab(登録商標)PF2D System(Beckman Coulter社)逆相クロマトグラフィーで7分画に分離し、凍結乾燥後、100μLの25mM重炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)に再溶解した。このサンプルをタンパク質の50分の1量のトリプシンで37℃、2〜3時間消化し、ペプチド化した。各分画のペプチドをさらにイオン交換カラム(KYAテクノロジーズ)によって4分画化した。
その各々の分画を、逆相カラム(KYAテクノロジーズ)でさらに分画し、溶出されてきたペプチドについて、オンラインで連結された質量分析計Q−TOF Ultima(Micromass社)を用いて、サーベイスキャンモードで測定した。その測定データを、タンパク質同定ソフトウェアであるMASCOT(Matrix Science)を用いて解析することにより、網羅的にタンパク質同定を行った。その結果、健常人、食道ガン患者いずれの血漿成分からも、MASCOTスコア40以上(同定ペプチド数2個以上)の約3500種類のタンパク質が同定された。
2.健常人および食道ガン患者血漿のタンパク質発現比較
上記1で同定された血漿タンパク質について、健常人と食道ガン患者間で比較を行った。健常人で発現が検出されず、食道ガン患者において発現が検出されたタンパク質を見出した。これらのタンパク質は、上記表1に示した配列番号202〜233で表されるポリペプチドであり、所謂食道ガンマーカーとして食道ガンの検出において有用であることが判明した。各患者においての発現頻度を表4に示した。健常人4人を1群とした群については2群ともで検出されておらず(−で示す)、食道ガン患者では発現(+で示す)が11名中10名以上で検出された。
したがって、上記のポリペプチドの少なくとも1つを、例えばその特異抗体を用いて、該ポリペプチドの存在または量について、測定することによって、食道ガンを検出することができる。