JP5523531B2 - 遊合形フランジ - Google Patents

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本発明は、遊合形フランジに関する。
大口径の金属管は、現場での施工が非効率的であることから、予め工場内でユニットを製作し、現場でユニット同士を接続する手法が広く用いられている。その接続は、配管作業性、接続部の機械強度の点からフランジ接合が望ましい。ねじ込み式や溶接式の固定形フランジでは、所定数設けられたボルト孔同士の位置合わせが困難であるので、遊合形フランジが約20年前に開発された経緯がある。その利便性から使用量は年々増加している。例えば、JIS B2220の遊合形フランジ(図11、図12の実線、図13、及び、表1参照)が用いられている。図13及び表1は、JIS B2220付表5のLJ呼び径65A〜 200Aに関する抜粋を示す。
Figure 0005523531
しかし、JIS B2220の遊合形フランジは、図11と図12に示すように、フランジ重量に加え、ボルトb、ナットn、平座金dを含めた継手総重量が重いという欠点があった。これは、例えば、ボルトb、ナットn、平座金dの設置数が多いことに起因する。そして、作業工程数が多く、作業者の接続箇所への運搬重量も増加するので、作業者負担が大きいという欠点があった。すなわち、ユニット配管は吊り込み作業なので作業者負担はさほど大きくないが、ボルトb、ナットn、平座金dは作業者が接続箇所まで腰袋に入れて運搬するので、高所・狭所での作業時には特に作業負担が大きかった。さらに、ボルトb、ナットn、平座金dの設置数が多く、配管接続の作業時間が長くなるという欠点があった。
管端鍔出しは工場あるいは現場にて管端鍔出し加工機を用いて行われる。パイプpの端部pを円錐ローラーで押し拡げて鍔形状とするので、鍔部aでは端面pに近いほど肉厚が薄くなる。すなわち、ガスケット押さえ面sはほぼ垂直となるが、フランジ押さえ面sは約 2.5°の勾配のついた斜面となる。また、鍔出し加工時のクランプによるパイプpの撓み(戻り)や溶接部の残留応力等の影響により、円周方向にも歪みが生じている。ボルトb、ナットnの締込み時にこの歪みをある程度矯正しながらガスケットgを圧縮していくが、遊合形フランジfの剛性不足により遊合形フランジfに撓みが生じ、伝達効率が悪い。すなわち、ボルトb、ナットnの締込みトルクが大きいという問題があった。
また、鋼管の場合は表面に防錆剤を塗布するのが一般的であるが、塗料膜厚のムラがガスケットgの圧縮ムラにつながる。固定形フランジはフランジ本体で直接ガスケットを圧縮するので上記の不具合はないが、遊合形フランジfは管端鍔出し部(鍔部a)を介してのガスケット圧縮になるので、総じてシール性は悪化する傾向にある。そして、ノンアスベストガスケットの止水性が悪い(なかなか透過漏れが止まらない)という問題があった。
ボルトb、ナットn、平座金dの設置数を低減させる手法として、ゴムパッキン(弾性ガスケット)を用いることも1つの解決策として検討されるが、配管要求寿命の長期化、水環境の変化(塩素の高濃度化やオゾン殺菌の導入等)及び使用環境の変化等(長時間稼働物件の増加)に対して、ゴムパッキンは長期耐久性・信頼性に懸念が残る。また、圧縮量の設定、配管自重や配管の線熱膨張による過圧縮防止のために金属製スペーサー(補強リング)との組み合わせが必要となるので、高コストとなる(例えば、特許文献1参照)。
実用新案登録第3136954号公報
解決しようとする課題は、ボルト、ナット、平座金を含めた継手総重量が重く、作業負担が大きい点である。また、ボルト、ナット、平座金の設置数が多く、作業時間が長くなる点である。また、フランジの剛性不足によりフランジに撓みが生じ、ボルト、ナットの締込トルクの伝達効率が悪い点である。すなわち、締込トルクが大きい点である。そして、ノンアスベストパッキンの止水性が悪い(なかなか透過漏れが止まらない)点である。また、ゴムパッキンを用いると、長期耐久性、信頼性に欠け、高コストとなる点である。
そこで、本発明に係る遊合形フランジは、JIS B2220の遊合形フランジと比較して、厚さ寸法を大きく設定することによりボルト孔の数を少なく設定し、かつ、頂点から辺の中央に向かってしだいに幅寸法を減少させて軽量化したものである。
また、ボルト孔の数を、JIS B2220の遊合形フランジのボルト孔の数の50%以上75%以下に設定したものである。
また、辺に薄肉部を設けたものである。
また、パイプの鍔部との対向面の内周側に逃げ部を形成して鍔部と対向面の初期接円をJIS B2220の遊合形フランジの初期接円よりも大きくするとともに、ボルト締込みに従って鍔部の歪みが矯正されて逃げ部の平坦面が鍔部を押圧するように構成したものである。
本発明の遊合形フランジによれば、ボルト、ナット、平座金を含めた継手総重量を軽くして、作業負担を低減させることができる。また、本発明の遊合形フランジは、十分な剛性を有し撓みが生じにくく、ボルト、ナットの締込トルクの伝達効率が良く、締込トルクを軽減することができる。また、シール性の確保が困難なノンアスベストパッキンを用いることが可能となり、そのノンアスベストパッキンであっても、(あるいは、PTFEクッションガスケットを用いて、)十分なシール性を得ることができ、長期耐久性、信頼性を有し、低コストで作製することができる。
本発明の第1の実施の形態の使用状態を示す要部断面図である。 図1の要部拡大断面図である。 正面図である。 図3のX−X断面図である。 FEM解析図である。 他のFEM解析図である。 第2の実施の形態を示す正面図である。 図7のY−Y断面図である。 第3の実施の形態を示す正面図である。 図9のZ−Z断面図である。 従来例の使用状態を示す要部断面図である。 従来例を実線をもって、かつ、本発明の一例を2点鎖線をもって、描いた正面図である。 JIS B2220の遊合形フランジを示す断面図である。
図1・図2は、本発明の第1の実施の形態の使用状態を示す。あらかじめパイプPの端部Pに鍔部Aを形成し、2本の鍔付き管(パイプP)にてガスケット(パッキン)Gを挟み、さらに、本発明の遊合形フランジFにて挟んで、ボルトB、ナットN、平座金D等で締結する。遊合形フランジFは、例えば、球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル)から成る。
図3・図4に示すように、遊合形フランジFは、JIS B2220の遊合形フランジf(図11、及び、図12の実線参照。以下、「従来の遊合形フランジf」とも言う。)と比較して、厚さ寸法Tを大きく設定する(例えば、JIS B2220の遊合形フランジfで厚さ18mmのものに対して、本発明の遊合形フランジFでは厚さ22mmとする)ことによりボルト孔1の本数を少なく設定し、かつ、頂点E(ボルト孔1近傍)から辺H(頂点Eと頂点Eとの間)の中央に向かってしだいに幅寸法Wを減少させて軽量化(例えば約40%減)されている。図12に2点鎖線にて本発明の遊合形フランジFを示し、同図の実線が従来遊合形フランジfを示す。
具体的には、厚さ寸法Tを、ボルト孔中心線Qから鍔部Aと対向面2との初期接円(図1・図2では点Kが対応する。)までの距離であるオーバーハング量J(図1参照)以上の肉厚寸法とする。例えば、オーバーハング量Jが21.5mmに対して、厚さ寸法Tを、22mm以上40mm以下に設定する。厚さ寸法Tがオーバーハング量Jより薄い場合、ボルト締結の際に遊合形フランジFが撓みやすく、パッキンGを締付ける荷重がロスする。そして、撓みが発生すると、ボルト位置も変化することになり抵抗力が発生し、ボルト締付トルクが重くなる。すなわち、同じトルクでボルトBを締めてもねじ込み量が減少し、パッキン締付荷重への変換も低下する。
ボルト孔1の数を、JIS B2220の遊合形フランジf(呼び径65A〜 200Aのもの)のボルト孔c(図11・図12参照)の数の50%以上75%以下に設定する。例えば、JIS B2220の呼び径80A〜 150Aの遊合形フランジfは、ボルト孔cの数が8個に規定されているところ、本発明の呼び径80A〜 150Aの遊合形フランジFは、ボルト孔1の数を4個とする。
図5・図6に於て、ボルト孔1の数を減少させることができた理由を説明する。図5及び図6は、FEM解析図であって、底面Mが123.74mm×20mmの長方形で高さ10mmの四角柱と、底面が123.74mm×20mmの長方形で上面Mが20mm×20mmの正方形の立体を合わせた形状の上面Mから鉛直下方へ50.7kNの荷重をかけたときの相当応力(ミーゼス応力)を表す。図5は薄い(全体の高さが30mm)場合を示し、図6は厚い(全体の高さが45mm)場合を示す。図5・図6より、応力は上面(押し面) Mから(角度θ、角度θが)約60°〜70°の範囲に影響を与えることが分かる。すなわち、底面Mに於て、広範囲に影響を与えるためには、高さ(厚さ)が必要だと分かる。本発明では、ボルトB(図1参照)を締結した際、図3の裏面側に於て2点鎖線10の内側の範囲(従来の遊合形フランジfの場合よりも広範囲)にまで応力が及ぶ。従って、ボルト本数(ボルト孔1の数)を減少させることができる。
図3に示すように、頂点Eから辺Hの中央に向かってしだいに幅寸法Wを減少させて軽量化することができた理由は、ボルト締結による応力の及ぶ範囲が上述のように図3の2点鎖線10の内側なので、辺Hの部分の幅寸法Wを減少させても、強度的に問題がないことによる。
図1・図2に戻って、パイプPの鍔部Aとの対向面2の内周側に逃げ部3を形成して鍔部Aと対向面2の初期接円(図示省略)をJIS B2220の遊合形フランジfの初期接円(図示省略)よりも大きくする(すなわち図2と図11の断面図に於て、2点鎖線で示すような従来の遊合形フランジfの場合は鍔部A(鍔部a)と点kで接していたが、本発明の遊合形フランジFの場合は鍔部Aと点Kがまず接する)とともに、ボルト締込みに従って鍔部Aの歪みが矯正されて逃げ部3の平坦面4が鍔部Aを押圧するように構成する。
言い換えると、オーバーハング量Jを従来の遊合形フランジfよりも小さく設定する。ただし、鍔部Aの強度に対して適切であり、かつ、ガスケットGの幅の中央付近を挟むように(オーバーハング量Jが小さくなり過ぎないように)設定する。例えば、JIS B2220の遊合形フランジfのオーバーハング量j(図11参照)が24mmなのに対して、本発明の遊合形フランジFのオーバーハング量Jを21.5mmに設定する。
図7・図8は、第2の実施の形態を示す。大きな引張応力が発生する遊合形フランジFの内周縁部5に、撓みに対する補強のためのボス部(環状突条部)6が設けられている。遊合形フランジFの撓みをさらに抑制することができる。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
図9・図10は、第3の実施の形態を示す。辺Hに薄肉部7が設けられる。言い換えると、辺Hに(正面視弧状の)凹部8が設けられる。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
ところで、上記ガスケットGとしては、上述のようなシンプルな形状のノンアスベストガスケット以上に、次のようなガスケットを使用するも好ましい場合がある。即ち、クッション性のあるノンアスベストジョイントシートやノンアスベストペーパー等を中芯材として、薄肉のフッ素系樹脂(PTFE)を被覆したPTFE包み型ガスケット(本発明では、「PTFEクッションガスケット」と言う)を使用するも好ましい。なお、PTFEクッションガスケットの上記の薄肉のフッ素系樹脂(PTFE)の外皮は、上記中芯材の内周面及び両側平面部を被覆すれば十分である。
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、JIS B2220の呼び径65Aの遊合形フランジfは、ボルト孔cの数が4個のところ、本発明の呼び径65Aの遊合形フランジFは、ボルト孔1の数を3個とするも良い。また、JIS B2220の呼び径 170A及び 200Aの遊合形フランジは、ボルト孔cの数が12個のところ、本発明の呼び径 170A及び 200Aの遊合形フランジは、ボルト孔1の数を8個とするも良い。また、図9と図10に示したように凹部8を形成せずに、辺Hの中央に向かって、厚さ寸法Tを漸減させる形状とするも、自由である。
また、ボルト孔1の横断面形状を四角や六角等の非円形とし、ボルトBの一部を、その非円形に対応させた横断面形状として、ボルト螺進・螺退時に、スパナ等の作業工具にてナットNのみを回動させて、作業能率を向上するも望ましい。
以上のように、本発明は、JIS B2220の遊合形フランジfと比較して、厚さ寸法Tを大きく設定することによりボルト孔1の数を少なく設定し、かつ、頂点Eから辺Hの中央に向かってしだいに幅寸法Wを減少させて軽量化したので、ボルトB、ナットN、平座金Dを含めた継手総重量が軽くなり、作業負担を低減させることができる。また、短時間で螺進(配管)作業をすることができる。また、フランジFが十分な剛性を有し撓みが生じにくく、ボルトB、ナットNの締込トルクの伝達効率が良く、締込トルクを軽減することができる。また、シール性の確保が困難なノンアスベストパッキン、又は、PTFEクッションガスケットを用いることを可能として、このノンアスベストパッキン(又は、PTFEクッションガスケット)によって、十分なシール性を得ることができ、長期耐久性、信頼性を有し、低コストで作製することができる。
また、ボルト孔1の数を、JIS B2220の遊合形フランジfのボルト孔cの数の50%以上75%以下に設定したので、作業工程数が少なく、作業者の接続箇所への運搬重量も減少するので、作業者負担が小さいという利点がある。すなわち、ボルトB、ナットN、平座金Dは作業者が接続箇所まで腰袋に入れて運搬するが、高所・狭所での作業時にも容易に運搬することができ、作業時間も短くてすむ。
また、辺Hに薄肉部7を設けたので、さらに軽量化することができる。
また、パイプPの鍔部Aとの対向面2の内周側に逃げ部3を形成して鍔部Aと対向面2の初期接円をJIS B2220の遊合形フランジfの初期接円よりも大きくするとともに、ボルト締込みに従って鍔部Aの歪みが矯正されて逃げ部3の平坦面4が鍔部Aを押圧するように構成したので、オーバーハング量Jが小さくなり、遊合形フランジFの撓みがより小さくなり、ボルト締込トルクの伝達効率がさらに良くなる。
1 ボルト孔
2 対向面
3 逃げ部
4 平坦面
7 薄肉部
A 鍔部
c ボルト孔
E 頂点
f 遊合形フランジ
H 辺
P パイプ
T 厚さ寸法
W 幅寸法

Claims (4)

  1. JIS B2220の遊合形フランジ(f)と比較して、厚さ寸法(T)を大きく設定することによりボルト孔(1)の数を少なく設定し、かつ、頂点(E)から辺(H)の中央に向かってしだいに幅寸法(W)を減少させて軽量化したことを特徴とする遊合形フランジ。
  2. 上記ボルト孔(1)の数を、JIS B2220の遊合形フランジ(f)のボルト孔(c)の数の50%以上75%以下に設定した請求項1記載の遊合形フランジ。
  3. 辺(H)に薄肉部 (7)を設けた請求項1又は2記載の遊合形フランジ。
  4. パイプ(P)の鍔部(A)との対向面(2)の内周側に逃げ部(3)を形成して上記鍔部(A)と上記対向面(2)の初期接円をJIS B2220の遊合形フランジ(f)の初期接円よりも大きくするとともに、ボルト締込みに従って上記鍔部(A)の歪みが矯正されて上記逃げ部(3)の平坦面(4)が上記鍔部(A)を押圧するように構成した請求項1,2又は3記載の遊合形フランジ。
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