そこで、本発明の課題は、サーミスタ等の温度検出部分に検出精度のばらつきがあっても、温度の管理が必要な温泉卵等の調理を確実にできる加熱調理器を提供することにある。
本発明をより理解し易くするために、本発明が行った加熱調理の試行過程を、以下の第1参考例の方法および第2参考例の方法で説明する。尚、それら第1参考例の方法および第2参考例の方法は、本発明を理解し易くするために記載するものであって、従来技術でなく、公知技術ではない。
図14〜16は、第1参考例の方法を説明する図である。
第1参考例の方法は、ユーザが、三種類の選択肢、すなわち、標準、しっかり、ひかえめ、から一の選択肢を選択することにより、制御が行われるようになっている。また、この第1参考例の方法は、選択肢によって、庫内温度を変化させない一方、選択肢によって、加熱時間を変化させるようになっている。
詳しくは、図14に示すように、この第1参考例の方法では、サーミスタ等の温度検出部の検出精度が高くて、庫内温度が設定温度と同一の70℃である場合、標準では、加熱時間が25分に設定されて、最適な温泉卵を調理できるようになっている。また、ユーザの嗜好によって、かための温泉卵を好む場合、ユーザがしっかりを選択することにより、加熱時間が30分になって、しっかりめの温泉卵を調理できる。また、ユーザの嗜好によって、やわらかめの温泉卵を好む場合、ユーザがひかえめを選択することにより、加熱時間が20分になって、やわらかめの温泉卵を調理できる。
また、図15に示すように、サーミスタ等の温度検出部の温度検出誤差があって、実際の庫内温度が設定値の70℃よりも5℃高くて75℃の場合には、ユーザがひかえめを選択することにより、加熱温度が20分になって、最適で良好な温泉卵を調理できる。また、ユーザが標準、または、しっかりを選択した場合でも、ひかえめよりかは、かための温泉卵を調理できる。
しかし、この第1参考例の方法では、図16に示すように、サーミスタ等の温度検出部の温度検出誤差があって、実際の庫内温度が設定値の70℃よりも5℃低い場合には、実際の庫内温度が、標準、しっかり、ひかえめのいずれにおいても、65℃になるから、卵白が固まらず、温泉卵を調理できないという問題がある。
この問題を改善するため、本発明者は、温泉卵を調理する温度と加熱時間の制御方法として、次に示す第2参考例の方法(上述のように、この第2参考例の方法も、第1参考例の方法と同様に、本願出願時において、公知ではなく、従来例ではない)を考えついた。
この第2参考例の方法は、ユーザが、三種類の選択肢、すなわち、標準、しっかり、ひかえめ、から一の選択肢を選択することにより、制御が行われるようになっている。また、この第2参考例の方法は、加熱時間の調整を行わず、いずれの選択肢でも、加熱時間が25分に設定される一方、選択肢により、庫内温度を変化させるようになっている。
図17〜19は、第2参考例の方法を説明する図である。
図17に示すように、この第2参考例の方法では、サーミスタ等の温度検出部の検出精度が高くて、庫内温度が設定温度と同一の70℃である場合、最適な温泉卵を調理できるようになっている。また、ユーザの嗜好によって、かための温泉卵を好む場合、ユーザがしっかりを選択することにより、庫内温度が、標準を選択した場合と比較して、5℃高く設定されるようになっていて、庫内温度が75℃になって、かための温泉卵を調理できる。一方、ユーザが、ひかえめを選択した場合、庫内温度が、標準を選択した場合と比較して、5℃低く設定されるようになっていて、庫内温度が65℃になる。この場合には、庫内温度が65℃になるから、卵白が固まらず、温泉卵を調理できなくなる。
また、図18に示すように、サーミスタ等の温度検出部の温度検出誤差があって、実際の庫内温度が設定値の70℃よりも5℃高い場合には、標準状態で、実際の庫内温度が75℃になる。この場合、ユーザがひかえめを選択することにより、庫内温度が、標準を選択した場合と比較して、5℃低く設定されて、庫内温度が70℃になる。したがって、ユーザがひかえめを選択することにより、良好な温泉卵を調理することができる。また、ユーザが、標準またはしっかりを選択した場合でも、ひかえめで調理される温泉卵よりも、かたい温泉卵を調理できる。
一方、図19に示すように、サーミスタ等の温度検出部の温度検出誤差があって、実際の庫内温度が設定値の70℃よりも5℃低い場合には、実際の庫内温度が、標準の場合に、65℃、しっかりの場合に、標準の庫内温度よりも5℃高い70℃、また、ひかえめの場合に、標準の庫内温度よりも5℃低い60℃に設定されるようになっている。この場合、ユーザがしっかりを選択することにより、良好な温泉卵を調理できるようになっている。一方、ユーザが、標準またはひかえめを選択した場合には、温泉卵が調理できなくなる。
この第2参考例の方法は、サーミスタ等の温度検出部の検出精度が低くて、実際の庫内温度が設定値の70℃よりも5℃低い場合においても、ユーザが、しっかりを選択することにより、温泉卵を調理することができる。したがって、この点において、サーミスタ等の温度検出部の検出精度が低くて、実際の庫内温度が設定値の70℃よりも5℃低い場合に、いずれの選択肢を選択しても、温泉卵を調理できない第1参考例の方法よりも優れる。しかし、この第2参考例の方法は、図17に示すサーミスタ等の温度検出部の検出精度が高い場合に、理想的な場合であるにも拘わらず、ユーザがひかえめを選択すると、庫内温度が、65℃になって、温泉卵を調理できないという問題がある。
したがって、本発明は、これらの問題を解消すべく発明されたものである。
上記課題を解決するために、この発明の加熱調理器は、
ケーシングと、
上記ケーシング内に設けられ、被加熱物を収容する加熱室と、
上記加熱室内の上記被加熱物を加熱するための加熱部と、
上記加熱部を制御する制御装置と、
上記加熱室内の温度を検出する温度検出部と、
第1設定温度と第1設定時間とで特定される第1選択肢、上記第1設定温度と上記第1設定時間よりも短い第2設定時間とで特定される第2選択肢、または、上記第1設定温度よりも高い第2設定温度と上記第1設定時間とで特定される第3選択肢を選択するための選択部と
を備え、
上記制御装置は、
上記第1選択肢が選択されたときには、上記温度検出部が上記第1設定温度を検出する状態を維持するように、上記加熱部を制御し、上記第2選択肢が選択されたときには、上記温度検出部が上記第1設定温度を検出する状態を維持するように、上記加熱部を制御し、上記第3選択肢が選択されたときには、上記温度検出部が上記第2設定温度を検出する状態を維持するように、上記加熱部を制御する温度制御部と、
上記第1選択肢が選択されたときには、上記加熱部の駆動時間が上記第1設定時間になるように、上記加熱部の駆動時間を制御し、上記第2選択肢が選択されたときには、上記加熱部の駆動時間が上記第2設定時間になるように、上記加熱部の駆動時間を制御し、上記第3選択肢が選択されたときには、上記加熱部の駆動時間が上記第1設定時間になるように、上記加熱部の駆動時間を制御する時間制御部と
を有することを特徴としている。
本発明は、第1選択肢との比較において、第2選択肢は、庫内の温度が変化しない一方、加熱時間が短縮される。すなわち、第1選択肢との比較において、第2選択肢は、加熱の程度がひかえめになる。また、第1選択肢との比較において、第3選択肢は、加熱時間が変化しない一方、加熱温度が高くなる。すなわち、第1選択肢との比較において、第3選択肢は、加熱の程度がしっかりめになる。
ここで、第1選択肢を、標準状態とし、食材の所望の調理温度を、第1設定温度に設定すると、温度検出部の温度の測定誤差が略0である理想的な場合において、第1選択肢よりも加熱の程度がひかえめな第2選択肢が選択されても、庫内温度は、第1選択肢と同等になるから、食材の調理の下限の閾値を下回ることがなく、その食材の料理を行うことができる。また、ユーザが、その嗜好によって、第3選択肢を選択した場合、第1選択肢よりも庫内温度を上昇させることができて、第1選択肢よりも加熱の程度がしっかりめの調理を行うことができる。したがって、食材の料理の温度に下限がある場合において、サーミスタ等の温度検出部の検出精度が高くて、温度検出部の検出温度と庫内温度とが、一致している理想的な場合に、ユーザが如何なる選択をしても、食材の料理を行うことができる。
また、本発明によれば、温度検出部の温度検出誤差があって、庫内の実際の温度が、温度検出部が検出した温度よりも低くて、庫内の実際の温度が、第1選択肢で食材の調理の下限の閾値を下回っている場合、ユーザが、しっかりめの第3選択肢を選択することにより、庫内の温度を上げることができる。したがって、ユーザが第3選択肢を選択することで、食材の調理の上記下限の閾値を上回る温度で調理をすることができ、庫内の実際の温度が、温度検出部が検出した温度よりも低くても、ユーザの選択により、食材の調理を行うことができる。
また、本発明によれば、温度検出部の温度検出誤差があって、庫内の実際の温度が、温度検出部が検出した温度よりも高い場合、ユーザが第2選択肢を選択することで、より好適に上記下限の閾値がある料理を調理できる。また、ユーザは、嗜好によって、第1選択肢または第3選択肢を選択することで、第2選択肢よりかは、加熱の度合いが、しっかりした調理を行うことができる。
したがって、本発明によれば、サーミスタ等の温度検出部の検出精度が低くて、庫内の実際の温度が、温度検出部が検出した温度よりも低い場合に、ユーザがしっかりめの第3選択肢を選択することで、所望の調理を行うことができる点で、上記第1参考例の方法よりも優れる。
また、サーミスタ等の温度検出部の検出精度が高くて、温度検出部の検出温度と庫内温度とが、一致している理想的な場合には、ユーザがいかなる選択をした場合においても、所望の調理を行うことができる点で、上記第2参考例の方法よりも優れる。
すなわち、本発明によれば、好適に調理できる温度範囲が狭く、かつ、調理可能な温度の下限が存在する料理においても、調理の選択肢の自由度を大きくできると共に、温度検出部の温度検出誤差に基づく庫内温度の変動の範囲内の如何なる温度になっても、目的の料理を調理することができる。また、料理に好適な温度と、その料理ができなくなる下限の温度とが近接していて、その温度が、サーミスタ等の温度検出部の検出温度の誤差の範囲内に収まる場合であっても、調理を行うことができ、かつ、その調理の幅の自由度を大きくすることができる。
また、一実施形態では、
上記制御装置は、選択された上記第1、第2および第3選択肢を時系列的に記憶すると共に、上記第2選択肢が、予め定められた回数選択されたときに、上記第1設定温度をその第1設定温度よりも低い更新第1設定温度に更新して記憶する一方、上記第3選択肢が、予め定められた回数選択されたときに、上記第1設定温度をその第1設定温度よりも高い更新第1設定温度に更新して記憶する設定温度記憶更新部を備える。
上記実施形態によれば、例えば、ユーザの過去の選択によって、ユーザがより好む状態を、標準状態である第1選択肢に、自動的に再調整することができる。また、ユーザの選択によって、ユーザが好む設定状態を、標準状態に再設定することができるから、常に強め、弱めを押す手間が省ける。
また、一実施形態では、
上記被加熱物が、温泉卵になるべき卵であり、
上記第1設定温度の初期設定値が、70℃であり、
上記第2設定温度の初期設定値が、75℃であり、
上記第1設定時間が、25分であり、
上記第2設定時間が、20分である。
上記実施形態によれば、サーミスタ等の温度検出部の温度の測定誤差が±5℃程度存在したとしても、調理温度にセンシティブな料理である温泉卵を適切に調理できる。また、温泉卵の調理の幅の自由度を、大きくすることができる。
詳しくは、上記実施形態によれば、温度検出部の温度の測定誤差が±5℃程度ある調理器において、温度検出部の温度の測定誤差が略0である場合には、ユーザが第1〜第3選択肢のいかなる選択肢を選択しても、庫内温度が、70℃程度から75℃程度の範囲に収まり、温泉卵を調理できる。
また、上記実施形態によれば、温度検出部の温度の測定誤差によって、庫内温度が、温度検出部が検出した温度よりも5℃程度低くて、第1選択肢で65℃程度であっても、ユーザが、しっかりめの第3選択肢を選択すれば、庫内温度が70℃程度になって、温泉卵の調理を好適に行うことができる。
また、上記実施形態によれば、温度検出部の温度の測定誤差によって、庫内温度が、温度検出器が検出した温度よりも5℃程度高くて、第1選択肢で75℃程度であっても、ユーザが、ひかえめの第2選択肢を選択すれば、加熱時間が短縮され、より好適な温泉卵を調理することができる。また、ユーザが、その嗜好によって、第1選択肢、第3選択肢を選択しても、第2選択肢よりかは、よりかための温泉卵を調理できる。
したがって、上記第1参考例の方法の場合と異なり、温度検出部の温度の測定誤差により、庫内温度が設定温度から上下のどちらにずれても、温泉卵の調理を行うことができる。また、上記第2参考例の方法の場合と異なり、温度検出部の温度の測定誤差が略0である場合には、ユーザが如何なる選択肢を選択しても、温泉卵を調理することができる。
本発明の加熱調理器によれば、好適な調理の温度範囲が狭くて、調理可能な温度の下限が存在し、調理が適切な範囲が、温度検出部の温度の測定誤差の範囲内に収まる料理でも、適切に調理でき、かつ、調理の選択肢の自由度が大きくなる。
また、本発明の加熱調理器によれば、ユーザが加熱方法を三種類選択でき、かつ、温度検出部の温度の測定誤差により、庫内温度が設定温度から高温側および低温側のいずれ側にずれても、ユーザの選択により、所望の料理を調理でき、かつ、温度検出部の温度の測定誤差が略0である場合には、ユーザが如何なる選択をしても、所望の料理を調理することができる。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の加熱調理器の正面斜視図を示している。
この加熱調理器は、図1に示すように、直方体形状のケーシング1の正面に、下端側の辺を略中心に回動する扉2が取り付けられている。この扉2の上部にハンドル3を取り付けると共に、扉2の略中央に耐熱ガラス4を取り付けている。また、扉2の右側に操作パネル5を設けている。この操作パネル5は、カラー液晶表示部6とボタン群7を有している。また、ケーシング1の上側かつ右側後方に排気ダクト8を設けている。さらに、ケーシング1の扉2の下方に、露受容器9を着脱自在に取り付けている。
図2は、上記加熱調理器の縦断面の模式図を示している。図2に示すように、水タンク11から供給された水を蒸気発生装置12で加熱して飽和水蒸気を生成する。蒸気発生装置12で生成された飽和水蒸気は、蒸気供給通路(図示せず)を介して、加熱室を構成する加熱庫13の右側面に取り付けられた循環ユニット14の蒸気吸込口15の加熱庫13側に供給される。
上記蒸気供給通路に接続された蒸気供給管34を、加熱庫13の右側面と平行になるように、循環ユニット14の蒸気吸込口15の近傍に取り付けている。また、循環ユニット14内には、蒸気吸込口15に対向するように循環ファン18を配置している。循環ファン18は、ファンモータ19によって回転駆動される。
上記加熱庫13の上面および左側面を覆うように、L字状に屈曲した蒸気ダクト100を取り付けている。この蒸気ダクト100は、加熱庫13の上面側に固定された第1ダクト部110と、第1ダクト部110の左側方から下側に屈曲する屈曲部120と、加熱庫13の左側面側に固定され、屈曲部120を介して第1ダクト部110に連なる第2ダクト部130とを有している。
この蒸気ダクト100の第1ダクト部110に、過熱蒸気生成ヒータ20を収納している。蒸気ダクト100の第1ダクト部110と、過熱蒸気生成ヒータ20で過熱蒸気生成装置21を構成している。なお、過熱蒸気生成装置は、蒸気ダクトとは別に設けてもよい。
そして、蒸気ダクト100の第1ダクト部110の右側は、循環ユニット14の上部に設けられた蒸気供給口22に連通している。加熱庫13の天面には、複数の第1蒸気吹出口24が設けられており、蒸気ダクト100の第1ダクト部110は、第1蒸気吹出口24を介して加熱庫13内に連通している。一方、蒸気ダクト100の第2ダクト部130は、加熱庫13の左側面に設けられた複数の第2蒸気吹出口25を介して加熱庫13内に連通している。
上記加熱庫13と蒸気ダクト100との隙間は、耐熱樹脂などによりシールされている。また、加熱庫13と蒸気ダクト100は、加熱庫13の前面開口を除いて断熱材により覆われている。
上記循環ユニット14と過熱蒸気生成装置21と加熱庫13とそれらを接続する接続部材とによって、蒸気の循環経路が形成されている。そして、この循環経路における循環ユニット14の加熱庫13との境界部に、蒸気発生装置12で生成された飽和水蒸気が供給される。
また、加熱庫13の下部にはマグネトロン(図示せず)が配置されている。このマグネトロンで発生したマイクロ波は、導波管(図示せず)によって加熱庫13の下部中央に導かれ、モータ37によって駆動される回転アンテナ38によって攪拌されながら加熱庫13内の上方に向かって放射されて被加熱物27を加熱する。
また、ケーシング1内の下側には、冷却ファン部(図示せず)と、電装部品17と、マグネトロン46(図10に示す)を配置している。電装部品17は、加熱調理器の各部を駆動する駆動回路やこの駆動回路を制御する制御回路等を有している。
図3は、図1の操作パネル5を拡大した概略図である。
上記ボタン群7は、戻りキー71、取り消しキー72、手動キー73およびあたためスタートキー74で構成されている。戻りキー71は、後述するカラー液晶パネル61の画面表示を直前の画面表示に戻すときに押す。また、取り消しキー72は、途中で加熱をやめるときや、操作を取り消すときに押す。そして、手動キー73は、高周波出力および加熱出力を手動で設定するときに押す。また、あたためスタートキー74は、加熱を開始するときに押す。なお、戻りキー71、取り消しキー72、手動キー73およびあたためスタートキー74は、操作部を構成している。
図4は、図3のF4−F4線から見た模式断面図である。
上記カラー液晶表示部6は、カラー液晶パネル61上にタッチパネル62を重ねて構成される。このカラー液晶パネル61は、文字、数字、写真等をカラー表示できるものであり、加熱の種類、料理名、加熱時間、温度、料理の写真等を表示する。また、タッチパネル62は、ユーザがタッチすると表面電荷を変化させる透明素材からなる静電容量方式のタッチパネルである。これにより、ユーザはタッチパネル62をタッチして、カラー液晶パネル61に表示される画像を選択できるようになっている。また、ユーザがタッチパネル62をタッチして、カラー液晶パネル61に表示される選択可能な画像を選択すると、その画像の色が変わるようになっている。つまり、カラー液晶パネル61に表示される画像は、選択状態の色が非選択状態の色と異なるようになっている。なお、タッチパネル62は、例えば、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式または電磁誘導方式のタッチパネルに換えてもよい。また、カラー液晶パネル61は表示部の一例であり、タッチパネル62は操作部の一例である。
図5は、この実施形態の加熱調理器のカラー液晶表示部6の一形態の表示内容を示す図である。
今、この調理器で、例えば、温泉卵を調理しようとする場合、カラー液晶表示部6の10個の選択肢から、蒸す・煮ると記載されているキー309を選択する。そうすると、蒸す・煮る料理が、1頁に所定の数(例えば8個)表示される。その後、カラー液晶表示部6を操作して、温泉卵が表示されているページを選択し、その後、温泉卵を、選択する。尚、温泉卵を選択するには、図5に310で示す、お料理から撰ぶと記載されているキーを選択した後、多数の料理から温泉卵を選択することもできる。
図6は、温泉卵を選択したときに、カラー液晶表示部6に現れる表示を示す図である。
図6に示すように、温泉卵を選択した場合、ユーザは、標準と表示されたキー(以下、標準キーという)80か、しっかりと表示されたキー(以下、しーかりキーという)81か、または、ひかえめと表示されたキー(以下、ひかえめキーという)82を、選択できる。この標準キー80、しっかりキー81およびひかえめキー82は、選択部を構成している。
ここで、ユーザは、上記標準キー80を、押圧することにより、第1選択肢を選択でき、ひかえめキー81を、押圧することにより、第2選択肢を選択でき、しっかりキー82を、押圧することにより、第3選択肢を選択することができるようになっている。
以下、温泉卵を調理する場合の制御について説明する。
図7〜図9は、温泉卵を調理する場合に、各キー80,81,82を選択した場合の加熱制御を説明する図である。
この加熱調理器では、第1選択肢を選択する標準キー80を選択すると、加熱部を構成する加熱蒸気生成ヒータ(図10参照)が駆動されて、庫内温度が、温度検出部の一例であるサーミスタが第1設定温度の一例としての70℃を検出する温度(庫内温度は、サーミスタの温度の測定誤差が存在する場合には70℃とは限らない)になり、かつ、この状態を、第1設定時間の一例としての25分間継続した後、上記加熱蒸気生成ヒータが停止するようになっている。
また、第2選択肢を選択するひかえめキー81を選択すると、上記加熱蒸気生成ヒータ等が駆動されて、庫内温度が、温度検出部の一例であるサーミスタが70℃を検出する温度になり、かつ、この状態を、第2設定時間の一例としての20分間継続した後、加熱蒸気生成ヒータが停止するようになっている。
また、第3選択肢を選択するしっかりキー82を選択すると、上記加熱蒸気生成ヒータ等が駆動されて、庫内温度が、温度検出部の一例であるサーミスタが、第1設定温度である70℃(初期値が70℃の意味)に対して比較温度差に対応する5℃大きい第2設定温度の一例としての75℃(初期値が75℃の意味)を検出する温度になり、かつ、この状態を、25分間継続した後、上記加熱蒸気生成ヒータが停止するようになっている。
図7は、サーミスタの温度の測定誤差がなく、設定温度と、庫内温度とが一致している場合の制御を示す図である。
この場合には、三つの状態を設定した場合の設定温度および設定時間と、庫内温度および加熱時間とが、一致する。ここで、この場合では、第1選択肢である標準状態の加熱温度と、第2選択肢であるひかえめ状態の加熱温度とが、同じ庫内温度で調理されることになるから、サーミスタの温度測定誤差が存在しない理想的な状態においては、ユーザが、三つのキー80,81,82のいずれを選択しても、庫内温度が、温泉卵が調理できる下限の温度である65℃を下回ることがない。したがって、ユーザが、三つのキー80,81,82のいずれを選択しても、上述の温度制限がある温泉卵を調理することができて、ユーザは、その嗜好によって、温泉卵の三つの状態を選択することができる。したがって、第2参考例と比較して、サーミスタの温度の測定誤差がない状態で、ひかえめ状態を選択しても、温泉卵を好適に料理することができる。
図8は、サーミスタの温度の測定誤差が存在し、庫内温度が、サーミスタ等の温度検出部の検出温度と比較して5℃低い場合の制御を示す図である。
図8に示すように、この場合には、第1選択肢である標準状態、第2選択肢であるひかえめ状態において、庫内温度が65℃になり、卵白が固まらなくなり、温泉卵が調理できない。しかしながら、ユーザが第3選択肢であるしっかり状態を選択することにより、庫内温度を温泉卵料理で理想的な70℃まで上昇させることができて、温泉卵を好適に調理できる。したがって、上記第1参考例と比較して、庫内温度が、設定温度と比較して5℃低くても、温泉卵を好適に料理することができる。
図9は、サーミスタの温度の測定誤差が存在し、庫内温度が、サーミスタ等の温度検出部の検出温度と比較して5℃高い場合の制御を示す図である。
この場合は、いずれの状態を選択しても、温泉卵を調理できるが、特に、ひかえめ状態を選択することにより、加熱時間が20分となって、標準、しっかりの加熱時間である25分と比較して短くなり、良好な温泉卵を調理することができる。
図10は、上記加熱調理器の制御ブロック図を示している。この加熱調理器は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなる制御装置200を電装品部17(図2に示す)内に備えている。制御装置200は、加熱蒸気生成ヒータ20,循環ファン用モータ19,冷却ファン用モータ16,給気ダンパ用モータ44,排気ダンパ用モータ60,操作パネル5,庫内温度センサの一例としてのサーミスタ29,解凍センサ50,給水ポンプ70,蒸気発生装置12およびマグネトロン46が接続されている。操作パネル5からの信号およびサーミスタ29,解凍センサ50からの検出信号に基づいて、制御装置200は、加熱蒸気生成ヒータ20,循環ファン用モータ19,冷却ファン用モータ16,給気ダンパ用モータ44,排気ダンパ用モータ60,操作パネル5,給水ポンプ70,蒸気発生装置12およびマグネトロン46などを制御する。上記図6に示す、標準キー80、ひかえめキー81およびしっかりキー82は、操作パネル5の操作によって選択される。
また、上記制御装置200は、中央演算処理装置(以下、CPUという)201と、設定温度記憶更新部202とを備え、CPU201は、温度制御部203と、時間制御部204とを有する。
上記温度制御部203は、温泉卵料理の場合には、標準キー80、ひかえめキー81またはしっかりキー82が選択されたことを表す信号と、温度検出部の一例としてのサーミスタ29からの信号とを受けて、加熱調理器の加熱庫内の温度を設定温度にするべく、加熱蒸気生成ヒータ20等を制御するようになっている。
また、上記時間制御部204は、温泉卵料理の場合には、操作パネル5を介した、標準キー80、ひかえめキー81またはしっかりキー82が選択されたことを表す信号を受けて、調理時間を、20分または25分に設定することになっている。
また、上記設定温度記憶更新部202は、上記卵料理が選択された場合において、標準キー80、ひかえめキー81またはしっかりキー82のいずれが選択されたかを、時系列的に記憶するようになっている。
また、上記設定温度記憶更新部202は、第2選択肢、すなわち、ひかえめ状態が、3回連続でユーザに選択された場合には、第1選択肢の第1設定温度を、更新するようになっている。詳しくは、上記設定温度記憶更新部202は、第2選択肢、すなわち、ひかえめ状態が、3回連続でユーザに選択された場合には、更新第1設定温度をなす更新後の第1設定温度を、更新前の第1設定温度に対して比較温度差の一例としての5℃低く設定するようになっている。
このような状況は、特に、サーミスタの温度検出誤差が5℃程度あって、サーミスタが表示している温度よりも庫内温度が5℃程度高い場合(庫内温度が75℃)に起こりえると考えられる。
図11は、ひかえめ状態が、3回連続で選択された場合に、設定変更が行われた後の制御を示す図である。
この場合には、第1選択肢の設定温度、すなわち、サーミスタが表示している温度が、設定温度記憶更新部204によって、再設定の比較温度差の一例としての5℃低い温度、すなわち、70−5=65℃に設定されるようになっている。
したがって、庫内の実際の温度は、75℃から5℃程度低下して、70℃程度になり、標準状態で、好適な温泉卵を調理できるようになる。
これに対し、本実施形態の加熱調理器は、第3選択肢、すなわち、しっかりめ状態が、3回連続でユーザに選択された場合には、設定温度記憶更新部204が、第1選択肢の設定温度を、5℃高く設定するようになっている。詳しくは、上記設定温度記憶更新部202は、第3選択肢、すなわち、しっかりめ状態が、3回連続でユーザに選択された場合には、更新第1設定温度をなす更新後の第1設定温度を、更新前の第1設定温度に対して比較温度差の一例としての5℃高く設定するようになっている。
このような状況は、サーミスタの温度検出誤差が5℃程度あって、サーミスタが表示している温度よりも庫内温度が5℃程度低い場合(65℃程度)に起こりえると考えられる。
図12は、しっかり状態が、3回連続で選択された場合に、設定変更が行われた後の制御を示す図である。
この場合には、第1選択肢の設定温度、すなわち、サーミスタが表示している温度が、再設定の比較温度差の一例としての5℃高い温度、すなわち、70+5=75℃に設定される。
したがって、庫内の実際の温度は、65℃から5℃程度上昇して、70℃程度になり、標準状態で、好適な温泉卵を調理できるようになる。
図13は、図6において、ユーザが、標準キー80、ひかえめキー81またはしっかりキー82を選択した場合に、現れる画面である。
この画面は、水タンクマークを表示することによって、温泉卵が、水を使用する料理であることをユーザに喚起する役割を果たしている。
上記構成の加熱調理器は、過熱蒸気によって加熱調理を次のように行うようになっている。
すなわち、図2に示す過熱蒸気生成ヒータ20をオンすると共に、循環ファン18を回転駆動する。そうすると、蒸気発生装置12から循環ユニット14の蒸気吸込口15の近傍上流側に供給された飽和水蒸気は、循環ファン18の回転によって負圧になっている循環ユニット14内に蒸気吸込口15を介して吸い込まれて、蒸気供給口22から過熱蒸気生成装置21内に吹き出される。そして、過熱蒸気生成装置21の過熱蒸気生成ヒータ20によって加熱されて過熱蒸気となる。この過熱蒸気の一部は、下側の加熱庫13の天面に設けられた複数の第1蒸気吹出口24から、加熱庫13内に下方に向かって吹き出す。また、過熱蒸気の他の一部は、蒸気ダクト100を介して加熱庫13の第2蒸気吹出口25から加熱庫13内に吹き出す。
そして、加熱庫13内に供給された過熱蒸気は、トレイ30上の網40に搭載された被加熱物27を加熱した後、加熱庫13の右壁面に循環ユニット14の蒸気吸込口15に対向して形成された吸込口28から循環ユニット14内に吸い込まれる。そうして、再び循環経路を通って加熱庫13内に戻るという循環を繰り返す。
これに対して、非過熱蒸気によって被加熱物27を蒸すかまたは暖める運転を行う場合には、過熱蒸気生成ヒータ20をオフすると共に、循環ファン18を停止する。そうすると、循環ファン18が停止しているため、循環経路内に循環気流が発生することがなく、蒸気発生装置12から循環ユニット14の蒸気吸込口15の近傍上流側に供給された飽和水蒸気は、循環ユニット14内に強制的に吸い込まれない。これにより、蒸気圧によって自然に加熱庫13内に流れ込む飽和水蒸気により、被加熱物27を蒸すかまたは暖める。
ここで、加熱庫13内の左壁面および右壁面には、図2に示すように、トレイ30の両端部を係止する係止部39a,39b,39cが上下方向に3段に設けられている。そして、蒸気供給管34は、上段の係止部39aよりもやや上側に位置するように配置されている。「蒸し暖めモード」において、被加熱物27を搭載した2つのトレイ30を上段と中段とに配置する場合には、蒸気導入室36内に架設された蒸気供給管34の総てのノズル(図2の34の円形部の左側開口)を加熱庫13方向に斜め下向きにしておく。こうすることにより、被加熱物27を搭載したトレイ30が上段および中段の何れの位置にあっても、蒸気供給管34の斜め下向きのノズルから引き出された飽和水蒸気を被加熱物27に当てることができる。したがって、蒸気供給管34のノズルからの吹き出し方向を操作することなく、上中2段の被加熱物27に蒸し斑や暖め斑が生ずることがないようにできる。
尚、上記実施形態では、第1設定温度の初期値が、70℃で、第1設定温度の初期温度と第2設定温度の初期温度との比較温度差が、5℃で、第2設定温度の初期値が、75℃で、更新後の第1設定温度に対する更新前の第1設定温度の比較温度差が±5℃で、第1設定時間が、25分で、第2設定時間が、20分であった。しかしながら、この発明では、これらの要素の具体的な時間や、具体的な設定温度は、料理の種類や、サーミスタ等の温度検出部の種類に起因する温度検出誤差等によって、適宜、変化させることができるのは、勿論である。
例えば、鶏の卵と、ダチョウの卵では、凝固温度が異なり、温泉卵の調理にかぎっても、ダチョウの卵の場合には、上記設定温度や、設定時間を、変動させなければならないのは、明らかである。
また、プリンや、茶碗蒸しは、調理ができる下限値があり、グラタンや、ピザや、パエリア等も、所望の温度が存在する。すなわち、各料理の調理に好適なように、上記設定温度や、設定時間を料理に基づいて、適宜決めることができるのである。
また、上記実施形態では、ひかえめ状態が、3回連続でユーザに選択された場合には、設定温度記憶更新部202が、第1選択肢の第1設定温度を、5℃低く設定するようになっていた。しかしながら、この発明では、第2選択肢が、1回選択されるか、2回連続で選択されるか、または、N(Nは、4以上の自然数)回連続で選択された場合に、設定温度記憶更新部が、第1選択肢の第1設定温度を、5℃以外の温度低下させる制御を行っても良い。
また、上記実施形態では、しっかりめ状態が、3回連続でユーザに選択された場合には、設定温度記憶更新部202が、第1選択肢の第1設定温度を、5℃高く設定するようになっていた。しかしながら、この発明では、第3選択肢が、1回選択されるか、2回連続で選択されるか、または、N(Nは、4以上の自然数)回連続で選択された場合に、設定温度記憶更新部が、第1選択肢の第1設定温度を、5℃以外の温度上昇させる制御を行っても良い。
また、本発明によれば、設定温度記憶更新部が存在しなくて、第1選択肢の第1設定温度や、他のファクタが初期設定値から変更されないようになっていても良い。
尚、上記実施形態においては、図6に示すように、第1選択肢が、標準状態で、第2選択肢が、ひかえめ状態で、第3選択肢が、しっかり状態であったが、言葉の表現は、如何様にも、変えることができることは、勿論である。例えば、第1選択肢を、[普通]と記載し、第2選択肢を、[やわらかめ]と記載し、第3選択肢を[かため]と記載しても良い。また、第1選択肢を、[普通]と記載し、第2選択肢を、[弱め]と記載し、第3選択肢を[強め]と記載しても良い。また、加熱の度合いを表現する他の如何なる言葉を用いても良い。
また、この発明の加熱調理器としては、例えば、過熱水蒸気を使用するオーブンレンジのみならず、過熱水蒸気を使用するオーブン、過熱水蒸気を使用しないオーブンレンジ、過熱水蒸気を使用しないオーブンなどがある。また、この発明の加熱調理器としては、電子レンジ等、水蒸気を使用しない調理器がある。
また、この発明の一実施形態の加熱調理器では、オーブンレンジなどにおいて、過熱水蒸気または飽和水蒸気を用いることによって、ヘルシーな調理を行うことができる。例えば、本発明の一実施形態の加熱調理器では、温度が100℃以上の過熱水蒸気または飽和水蒸気を食品表面に供給し、食品表面に付着した過熱水蒸気または飽和水蒸気が凝縮して大量の凝縮潜熱を食品に与えるので、食品に熱を効率よく伝えることができる。また、凝縮水が食品表面に付着して塩分や油分が凝縮水と共に滴下することにより、食品中の塩分や油分を低減できる。さらに、加熱庫内は過熱水蒸気または飽和水蒸気が充満して無酸素状態となることにより、食品の酸化を抑制した調理が可能となる。尚、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができることは、言うまでもない。