JP5517768B2 - 金属管曲げ加工装置および方法 - Google Patents

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Description

この発明は、金属管の直線部と環状加熱機構とを直線的に相対移動させながら金属管の曲げ部を旋回させて金属管を曲げる金属管曲げ加工に関し、詳しくは、そのような直進および旋回による金属管の曲げ加工に際し金属管に引張力を付与して圧縮曲げを行う金属管曲げ加工装置および金属管曲げ加工方法に関する。
図7は、(a)〜(d)何れも従来の金属管加工装置の構造を一部断面で示した模式図であり、(a)が通常曲げ装置である金属管曲げ加工装置10、(b)が増厚装置である金属管圧縮加工装置41、(c)がトルク付与式の圧縮曲げ装置である金属管曲げ加工装置45、(d)が引張力付与式の圧縮曲げ装置である金属管曲げ加工装置49を示す。
図7(a)に一部断面模式図を示した金属管曲げ加工装置10は、旋回自由状態で推力だけで曲げる通常曲げ装置(例えば特許文献1参照)の要部であり、金属管8の曲げ加工対象部分に対して加熱を行うに際して幅の狭い環状部分(幅狭環状昇温部)をその外周から高温に加熱する環状加熱機構11と、金属管8の直線部を直進速度Vで環状加熱機構11の方へ直進させることで環状加熱機構11と金属管8とを相対移動させる直進機構20と、金属管8の曲げ部を旋回させる旋回機構30とを備えている。
環状加熱機構11は、例えば高周波誘導子からなり、加熱後に冷却が必要なら環状の放水冷却ユニット等が隣接設置される。
直進機構20は、図示の場合、駆動モータ23と、その出力軸の回転運動をクランパ21の直線運動に変換する送りネジ22と、金属管8の後端部を把持するクランパ21とからなるが、環状加熱機構11及び旋回機構30と相対移動できれば、車輪やレール等を用いた他の機構でも良い。直進速度Vは一定速度が基本であるが加減速があっても良い。
旋回機構30は、頑丈なアーム31と、その旋回端部のクランパ32と、アーム31を旋回可能に支持する支軸33とを具えており、曲げ半径Rを可変するクランパ位置調整機構が付設されていることもある。アーム31の旋回中心位置(33)と、金属管8の幅狭環状昇温部における曲げ加工時変形部位BP(ベンディングポイント)とは、対応していて、金属管8の直線部に直交する一の垂直面上(二点鎖線を参照)に位置している。
この金属管曲げ加工装置10を用いて金属管8に通常曲げ加工を施す場合、先ず、曲げる前の真っ直ぐな金属管8を環状加熱機構11に遊挿させて、金属管8の先端部をクランパ32に把持させるとともに、金属管8の後端部をクランパ21に把持させる。それから、環状加熱機構11にて金属管8の曲げ加工対象部位の局所(幅狭環状昇温部)を高温に加熱し続けるとともに、直進機構20にて金属管8を軸方向・長手方向に直進速度Vで送り続ける。そうすると、金属管8の後端側(直線部)が環状加熱機構11に向けて直進し、金属管8のうち環状加熱機構11のところに来た部分(幅狭環状昇温部)が加熱されて軟化し、金属管8の先端側(曲げ部)が旋回機構30にて向きを変えられてそこに曲げモーメントが作用するので、金属管8が幅狭環状昇温部の曲げ加工時変形部位BPで次々に曲がる。
その曲げ半径Rは旋回機構30の案内によって強制的に決まり、その規制の下で上記の曲げモーメントを発生させるのに必要な推力Psが直進機構20から金属管8の後端部に掛けられるので、その推力Psと同じ通常圧縮力Pnが金属管8の直線部および曲げ加工時変形部位BPに作用する。通常圧縮力Pnは、直進速度Vで曲げ加工したときの反力として生じるものなので、直接制御できる確定的な物理量ではないが、その見込値なら基準推力計算値Poに平均増肉率μを乗じることで算出できる。基準推力計算値Poは、通常圧縮力Pnによる増肉を無視して算出される推力であり、降伏点・耐力σと管径Dと管厚tと曲げ半径Rとから式[Po={σ・(D−t)・(D−t)・t}/R]で算出される。
このような先端側の自由旋回と後端側の直線移動とによる通常曲げでは、曲げ加工部のうち内側は圧縮にて増肉されるが、曲げ加工部のうち外側は引張にて減肉される。
減肉は、金属管8の強度低下などを招き、好ましくないため、減肉を抑制し更には解消するべく、圧縮曲げが行われる。圧縮曲げでは、金属管8の曲げ加工時変形部位BPに付加圧縮力Pcを付与しながら金属管8に先端側旋回運動と後端側直線移動とを行わせるが、同じ加工を先行の増厚加工と後行の通常曲げ加工とに分けて行うことも可能であり、その場合、増厚加工は金属管圧縮加工装置41を用いて真っ直ぐな金属管8に行われる。
図7(b)に一部断面模式図を示した金属管圧縮加工装置41は、金属管曲げ加工装置10の旋回機構30をブレーキ42で置き換えたものであり、ブレーキ42にて付加圧縮力Pcを発生させ、これを金属管8の先端から後ろ向きに作用させて金属管8を軸方向・長手方向に圧縮しながら環状加熱機構11にて熱処理するようになっている。金属管8が真っ直ぐなうちに金属管8に増厚加工を施して、金属管8を予め増肉させておくことで、後の通常曲げ加工による減肉がカバーされるのである。付加圧縮力Pcは、ブレーキ42の動作制御等で直接的に制御できるものであり、上述した基準推力計算値Poと特許文献2記載の圧縮力比mと同じく特許文献2記載の平均増肉率μとを用いて式[Pc=(m−μ)・Po]で算出される。
曲げ加工と同時に増厚加工も行う圧縮曲げ加工を実施する常用手段には二通りあり、その一つが、図7(c)に一部断面模式図を示した金属管曲げ加工装置45を用いるものである。この装置45は(例えば特許文献2,3参照)、上述の金属管曲げ加工装置10にトルク付与機構46を追加したものであり、トルク付与機構46にてアーム31を逆向きに旋回させようとするトルクを発生させ、そのトルクを旋回機構30経由で金属管8に伝達することで、金属管8に付加圧縮力Pcを作用させるようになっている。この場合、金属管8の直線部および曲げ加工時変形部位BPに掛かる合計圧縮力Paは、通常圧縮力Pnと付加圧縮力Pcとの和になり、通常圧縮力Pnを含むので、やはり直接制御はできないが、その見込値なら式[μ・Po+(m−μ)・Po]や式[m・Po]で算出できる。
圧縮曲げ加工のもう一つの常用手段が、図7(d)に一部断面模式図を示した金属管曲げ加工装置49を用いるものである。この装置49は(例えば特許文献4参照)、上述の金属管曲げ加工装置10に引張力付与機構50を追加して、金属管8の直線部および曲げ加工時変形部位BPに掛ける合計圧縮力Paを直進機構20と引張力付与機構50とに分担させるようになっている。旋回機構30は自由に旋回するので、合計圧縮力Paのうち通常圧縮力Pnを直進機構20が負担し、残りの付加圧縮力Pcを引張力付与機構50が負担するのが、圧縮力分担の基本形であるが、引張力付与機構50の取付状態、特に綱状体51の軸心・軸線からの偏倚量に応じて分担比率が変化する。
引張力付与機構50は、例えばスチールワイヤやチェーン等からなる可撓性の綱状体51(鋼索,縄索,索条)と、金属管8の両端に分かれて取り付けられる管端装着具52及び管端装着具53と、管端装着具53に取り付けられた引張力発生部材54とを具えている。引張力発生部材54は、油圧シリンダ等からなり、制御可能な引張力を発生する。そして、管端装着具52,53を金属管8に取り付けるとき、綱状体51が金属管8の中空内で管軸方向・長手方向に張られて、綱状体51の一端が管端装着具52に繋がれ、綱状体51の他端が引張力発生部材54に繋がれる。そして、引張力発生部材54に引張力を発生させると、その引張力が引張力付与機構50を介して付加圧縮力Pcとなって金属管8に作用するようになっている。なお、この金属管曲げ加工装置49では管内挿着具48も使用されている(特許文献4参照)。
特公昭54−28156号公報 特公平02−47287号公報 特開2009−12062号公報 特公昭54−30915号公報
このような従来の金属管曲げ加工装置では、トルク付与機構46から旋回機構30を介して金属管8に付加圧縮力Pcを作用させる金属管曲げ加工装置45の場合(図7(c)参照)、直進機構20が合計圧縮力Paに適う推力Psを出せるよう直進機構20を強化するとともに、旋回機構30が曲げ反力に加えて付加圧縮力Pcにも耐えるよう旋回機構30も強化する必要がある。これに対し、引張力付与機構50にて引張力を金属管8に作用させて圧縮曲げを行う金属管曲げ加工装置49の場合(図7(d)参照)、付加圧縮力Pcが概ね引張力付与機構50によって負担されるので、直進機構20や旋回機構30が通常曲げの金属管曲げ加工装置10のときと同じで足りることが多く、直進機構20は通常圧縮力Pnに適う推力Psを出せれば足り、旋回機構30も自由に旋回できる。
しかしながら、引張力を金属管に作用させる後者の装置49の場合、旋回機構30がブレーキ等で動作を制約されることなく自由に旋回できて負荷が軽いといっても、付加圧縮力Pcにて金属管の曲げ加工時の平均増肉率を増加させたことに伴って金属管の曲げ加工時変形部位BPに掛かる曲げモーメントも増加し、さらに、それに起因して旋回機構30の旋回抵抗の変動も大きくなる。そして、旋回抵抗が変動すると、通常圧縮力Pnひいては合計圧縮力Paが変動し、さらには増肉率が旋回機構30のアーム旋回中に変化する。言い換えれば減肉率が変動して安定しにくいのである。
このため、管厚の最も薄いところでも減肉率が要求仕様の値を超えるのを避けるには、予め変動分を見込んで、その分だけ多めに増肉・増厚させておかなければならないが、余分な増肉等は、好ましくないので、できる限り抑制したい。
そこで、引張力を金属管に作用させて圧縮曲げを行うにしても増肉率は安定させることができるように金属管曲げ加工装置や加工方法を改良することが技術的な課題となる。
本発明の金属管曲げ加工装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、加工対象の金属管をその外周から幅狭で高温に加熱する環状加熱機構と、前記金属管と前記環状加熱機構とを相対移動させる直進機構と、前記金属管の曲げ部を旋回させる旋回機構と、前記金属管の中空内に張った綱状体にて前記金属管の両端部を引っ張ることにより前記金属管に圧縮力を付与する引張力付与機構とを具備していて、前記金属管を移動加熱しながら曲げ加工する金属管曲げ加工装置において、前記引張力付与機構の引張力を可変調整する引張力調整部材と、前記直進機構の推力を検出する推力検出部材と、通常圧縮力と付加圧縮力との合計圧縮力に対応した制御目標値から前記推力の検出値を引いて引張力を算出しこの引張力算出値に基づいて前記引張力調整部材を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の金属管曲げ加工装置は(解決手段2)、上記解決手段1の金属管曲げ加工装置であって、前記引張力付与機構が、前記綱状体の一端を繋がれる引張力発生部材と、前記金属管の一端部に装着される管端装着具とを具備したものであり、前記引張力発生部材と前記管端装着具との連結部が、引張力発生部材の傾動を許容するものであることを特徴とする。
さらに、本発明の金属管曲げ加工装置は(解決手段3)、上記解決手段2の金属管曲げ加工装置であって、前記金属管の曲げ加工時変形部位における前記綱状体と前記金属管の軸方向との傾斜度を取得する傾斜度取得手段を備え、前記制御部が、前記引張力算出値と前記傾斜度取得手段の取得値とから、前記引張力算出値を管軸方向射影成分とする元の引張力を算出して、これを前記引張力調整部材の制御に用いるようになっていることを特徴とする。
また、本発明の金属管曲げ加工装置は(解決手段4)、上記解決手段3の金属管曲げ加工装置であって、前記傾斜度取得手段が、前記管端装着具に対する前記引張力発生部材の傾きを検出する傾斜検出部材であることを特徴とする。
また、本発明の金属管曲げ加工装置は(解決手段5)、上記解決手段3の金属管曲げ加工装置であって、前記傾斜度取得手段が、前記旋回機構の旋回角度を検出する旋回角度検出部材と、その検出角度値に基づいて前記傾斜度の値を算出する演算手段とを具えたものであることを特徴とする。
また、本発明の金属管曲げ加工装置は(解決手段6)、上記解決手段3の金属管曲げ加工装置であって、前記傾斜度取得手段が、前記直進機構による前記金属管と前記環状加熱機構との相対移動距離を検出する移動距離検出部材と、その移動距離検出値に基づいて前記傾斜度の値を算出する演算手段とを具えたものであることを特徴とする。
また、本発明の金属管曲げ加工装置は(解決手段7)、上記解決手段1〜6の金属管曲げ加工装置を用いて行う金属管曲げ加工方法であって、前記金属管の曲げ加工時変形部位に作用する合計圧縮力を前記直進機構と前記引張力付与機構とに分担させながら圧縮曲げを行うことを特徴とする金属管曲げ加工方法。
このような本発明の金属管曲げ加工装置にあっては(解決手段1)、金属管の中空内に張った綱状体にて金属管の両端部を引っ張って金属管に圧縮力を付与しながら金属管の移動加熱と曲げ加工を行う方式を踏襲しているため、綱状体が一部分でも金属管の内周面から浮いていれば、金属管の曲げ加工時変形部位に作用する合計圧縮力が直進機構と引張力付与機構とで分担されるので、直進機構や旋回機構の強化負担が軽くて済む。
しかも、そのような利点を確保したうえで、直進機構の推力を検出するとともに、合計圧縮力対応の制御目標値から推力検出値を引いた値に引張力を一致させる調整を行うようになっている。
これによって、金属管の曲げ加工時変形部位に作用する合計圧縮力が何時も制御目標値に一致させられることから、旋回抵抗の変動に起因して直進機構の推力が変動しても、その変動分が引張力の調整によって相殺されるので、金属管の曲げ加工時変形部位に作用する合計圧縮力には不所望な変動が発現しない。そのため、増肉率も減肉率も安定する。
したがって、この発明によれば、引張力を金属管に作用させて圧縮曲げを行っても増肉率は安定している金属管曲げ加工装置を実現することができる。
また、本発明の金属管曲げ加工装置にあっては(解決手段2)、引張力発生部材の傾動が許容されるので、曲げ加工の進行に伴って綱状体の向き等が変化した場合、それに追随して引張力発生部材が傾動して、引張力発生部材に曲げ力の掛かる不所望な事態が無理なく回避されるので、綱状体の向きを固定する管内挿着具など余分な部材を省くことができる。
さらに、本発明の金属管曲げ加工装置にあっては(解決手段3)、綱状体と管軸方向との傾斜度が引張力調整に反映されるようにしたことにより、増肉に有効な管軸方向射影成分が的確に制御されるので、綱状体の傾きの大小にかかわらず適切に引張力が調整される。
また、本発明の金属管曲げ加工装置にあっては(解決手段4)、引張力発生部材の傾動が許容されるようになっているのを利用して簡便かつ直接的に傾斜度を取得することができる。
また、本発明の金属管曲げ加工装置にあっては(解決手段5,6)、旋回角度や移動距離から算出して間接的に傾斜度を取得するので、直接取得の困難な場合や直接取得を避けたい場合でも、傾斜度を引張力調整に反映させることができる。
本発明の実施例1について、(a)が金属管曲げ加工装置の構造を一部断面で示した模式図、(b)が金属管の断面図、(c)が金属管に引張力付与機構を装着したところの一部断面模式図、(d)が曲げ加工開始時の状態を示す一部断面模式図、(e)が曲げ加工の途中や終了時の状態を示す一部断面模式図である。 (a)〜(c)何れも引張力発生部材の管端への装着状態を示す一部断面模式図であり、(a)が装着前の展開状態、(b)が曲げ加工開始時の状態、(c)が曲げ加工の途中や終了時の状態である。 本発明の実施例2について、(a)が金属管曲げ加工装置の構造と曲げ加工開始時の状態とを一部断面で示した模式図、(b)及び(c)が傾斜検出部材の装着状態を示す管端部の拡大模式図である。 (a)がS字曲げの状態を示す一部断面模式図、(b)が偏倚引張りの状態を示す一部断面模式図、(c)が傾斜引張りの状態を示す一部断面模式図である。 本発明の実施例3について、(a)が金属管曲げ加工装置の構造と曲げ加工開始時の状態とを一部断面で示した模式図、(b)が曲げ加工の途中や終了時の状態である。 本発明の実施例4について、曲げ加工の途中や終了時の状態を一部断面で示した模式図である。 (a)〜(d)何れも従来の金属管加工装置の構造を一部断面で示した模式図であり、(a)が通常曲げ装置、(b)が増厚装置、(c)がトルク付与式の圧縮曲げ装置、(d)が引張力付与式の圧縮曲げ装置である。
このような本発明の金属管曲げ加工装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜4により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1〜2,7(出願当初の請求項1〜2,7)を具現化したものであり、図3〜4に示した実施例2は、上述した解決手段3,4(出願当初の請求項3,4)を具現化したものであり、図5に示した実施例3は、上述した解決手段3,5(出願当初の請求項3,5)を具現化したものであり、図6に示した実施例4は、上述した解決手段3,6(出願当初の請求項3,6)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ベースや,フレーム,ボルト等の締結具,ヒンジ等の連結具,電気回路や電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
本発明の金属管曲げ加工装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が金属管曲げ加工装置60の一部断面模式図、(b)が金属管8の断面図、(c)が金属管8に引張力付与機構50を装着したところの一部断面模式図、(d)が曲げ加工開始時の状態を示す一部断面模式図、(e)が曲げ加工の途中や終了時の状態を示す一部断面模式図である。また、図2は、(a)〜(c)何れも引張力発生部材54の管端への装着状態を示す一部断面模式図であり、(a)が装着前の展開状態、(b)が曲げ加工開始時の状態、(c)が曲げ加工の途中や終了時の状態である。
この金属管曲げ加工装置60が既述した従来の金属管曲げ加工装置49と相違するのは(図1(a)参照)、引張力付与機構50の引張力を適切に制御するために推力検出部材62と引張力調整部材63と制御部65とが追加された点と、管内挿着具48を省けるように引張力発生部材54と管端装着具53との連結部61が引張力発生部材54の傾動を許容するものに改造された点である。
連結部61は、金属管8の曲げがシンプルな一回曲げやS字曲げなど一平面に収まる場合にはラジアル軸受などで良いが(図2参照)、立体曲げの場合にはボールジョイント等の自在継手が用いられる。そして、管端装着具53が金属管8の一端部に固定的に装着され、管端装着具53によって引張力発生部材54が傾動可能に支持され、引張力発生部材54の作用部たとえばシリンダロッド先端に綱状体51の一端が繋がれるので、綱状体51が傾動するとそれに対応して引張力発生部材54も傾動するものとなる。
推力検出部材62は、大荷重の計測に適したロードセル等が用いられ、直進機構20の金属管8に対する推力Psを検出するものであり、推力Psを検出できれば付設先は駆動モータ23でも送りネジ22など他の部材でも良い。
引張力調整部材63は、例えば電磁比例式リリーフ弁を組み込んだ油圧回路などが用いられ、引張力発生部材54の出す引張力を可変調整しうるようになっている。
制御部65は、例えばプログラマブルなマイクロプロセッサシステムやシーケンサ等からなり、推力検出部材62から推力Psの検出値を入力するとともに、推力Ps等から引張力Pbを算出し、この引張力算出値に基づいて引張力調整部材63を制御することにより、引張力発生部材54に引張力Pbで綱状体51を引っ張らせるようになっている。
その具現化のため、この制御部65には、目標値設定手段66と引張力算出手段67とがインストールされており、目標値設定手段66は、通常圧縮力Pnと付加圧縮力Pcとの合計圧縮力Paに対応している確定値を制御目標値PAとして設定するようになっている。その確定値は、曲げ加工を行う前に予め確定していれば良く、要求仕様値等から算出される設計値的なものでも良く、試験結果等から得られる実験値的なものでも良く、一定値でも良く、相対移動に伴って変化する値でも良い。
一定値のシンプルな算出例を挙げると、既述した圧縮力比mと基準推力計算値Poとから両者の積を算出して、それを制御目標値PAに設定するのでも良い。目標値設定手段66は、制御目標値PAの設定を行えれば足り、確定値の算出等は別途行って入力しても良く、装置緒元や要求仕様値等を入力して自動算出させるのでも良い。
引張力算出手段67は、制御目標値PAから推力Psの検出値を引く演算を行って引張力Pbを算出するようになっている。
この金属管曲げ加工装置60(図1(a)参照)を使用して圧縮曲げを行う場合、未だ真っ直ぐな金属管8をセットする準備段階では(図1(b)参照)、金属管8に引張力付与機構50を装着し(図1(c)参照)、それから、その一端側を直進機構20に保持させるとともに他端側を旋回機構30に保持させることは(図1(d)参照)、従来と同様であるが、それに加えて、制御部65の目標値設定手段66を用いて制御部65に制御目標値PAを設定することも行う。制御目標値PAは、合計圧縮力Paの見込み値であり、既述したように、圧縮力比mと基準推力計算値Poとの積[m・Po]で得られるが、通常圧縮力Pnと付加圧縮力Pcとの和[Pn+Pc]の見込み値でもある。
そして、金属管曲げ加工装置60が自動動作を開始すると(図1(d)参照)、環状加熱機構11の加熱によって曲げ加工時変形部位BPを含む幅狭環状昇温部が昇温し軟化するとともに、直進機構20の推力Psによって金属管8の後端側(直線部)が直進速度Vで環状加熱機構11に向けて直進する。そして、それに随伴した旋回機構30の旋回によって金属管8の先端側(曲げ部)が向きを変えられるので(図1(e)参照)、金属管8が曲げ加工時変形部位BPで曲がり続け、その結果、旋回機構30によって規定された曲げ半径Rで金属管8の曲げ加工対象部位が曲がり、金属管8が曲管になる。
このように目に見える機械的動作部分は従来同様であるが、金属管曲げ加工装置60にあっては、直進機構20が金属管8を直進させるのに出す推力Psが推力検出部材62によって検出され、制御部65によって制御目標値PAと推力Psの検出値とから引張力Pbの算出値が演算式[PA−Ps]で算出され、引張力付与機構50が金属管8の両端部を引っ張る力が引張力調整部材63の調整によって上記算出値の引張力Pbになる。
ここで、金属管8の直線部が長かったり管径が細かったりで、例え綱状体51が管軸方向と平行でなくなったときでも、引張力Pbと管軸方向射影成分とがほぼ等しいとする。
すると、引張力Pbがそのまま付加圧縮力Pcになると見なせるので、曲げ加工時変形部位BPに作用する合計圧縮力Paが何時でも制御目標値PAになる。すなわち、合計圧縮力Paは既述のように通常圧縮力Pnと付加圧縮力Pcとの和[Pn+Pc]であるが、そのうちの通常圧縮力Pnが推力Psとして検出されて制御部65のフィードバック制御の演算に組み入れられていて、推力Psと引張力Pbとの和が常に制御目標値PAになるからである。そのため、綱状体51がその全長に亘って金属管8の内周面に張り付いたままでいるという特異状態を除けば、金属管8の曲げ加工時変形部位BPに作用する合計圧縮力Paが直進機構20の推力Psと引張力付与機構50の引張力Pbとで賄われる。
また、金属管曲げ加工装置60にあっては、引張力付与機構50の綱状体51と金属管8の軸方向とのなす傾斜角度が、圧縮曲げ加工の進行に伴って変化し、曲げ開始時(図1(d),図2(b)参照)と曲げ途中や終了時(図1(e),図2(c)参照)とで異なったとしても、連結部61によって引張力発生部材54の傾動が許容されて、綱状体51の傾動に追随して引張力発生部材54も傾動するため、引張力発生部材54には引張力Pbとその反力は別として余分な曲げ力などは掛からないので、引張力調整部材63による引張力Pbの調整を損なうような不所望な力の作用など例えばシリンダのロッドの摩擦力の大変動などを避けることができる。そのため、増肉率・減肉率がより安定する。
本発明の金属管曲げ加工装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が金属管曲げ加工装置70の一部断面模式図、(b)及び(c)が傾斜検出部材71の装着状態を示す管端部の拡大模式図であり、(a)及び(b)は曲げ加工開始時の状態、(c)は曲げ加工の途中や終了時の状態である。また、図4は、(a)がS字曲げの状態を示す一部断面模式図、(b)が偏倚引張りの状態を示す一部断面模式図、(c)が傾斜引張りの状態を示す一部断面模式図である。
この金属管曲げ加工装置70が上述した実施例1の金属管曲げ加工装置60と相違するのは(図3(a)参照)、傾斜度φを取得する傾斜度取得手段として傾斜検出部材71が設けられた点と、傾斜度φを考慮していなかった制御部65の引張力算出手段67が傾斜度φを考慮する引張力算出手段72になった点である。
ここで、傾斜度取得手段の取得する傾斜度φは、金属管8の曲げ加工時変形部位BPにおける綱状体51と金属管8の軸方向との傾斜度である。
傾斜検出部材71は(図3(b),(c)参照)、例えば連結部61の軸回転を伝達するギヤ等に連結されたロータリエンコーダ等からなり、管端装着具53に対する引張力発生部材54の傾き具合を検出することで、それと値の等しい傾斜度φを検出するようになっている。
引張力算出手段72は(図3(a)参照)、引張力算出手段67では最終的な値としていた引張力算出値[PA−Ps]を、そのまま直ちに引張力Pbにするのでなく、先ずは引張力Pbの管軸方向射影成分に対応した中間算出値として扱い、その中間算出値と傾斜検出部材71の検出傾斜度φ(即ち傾斜度取得手段の取得値)とから、その中間算出値を管軸方向射影成分とする元の引張力Pbを式[(PA−Ps)/cosφ]にて算出して、これを引張力調整部材63の制御に用いるようになっている。
この場合、引張力付与機構50の出す引張力Pbが[(PA−Ps)/cosφ]に制御される。そして、引張力Pbのうち合計圧縮力Paに寄与する分力が、管軸方向射影成分の[PA−Ps]になる。そのため、曲げ加工時変形部位BPに作用する合計圧縮力Paが何時でも制御目標値PAになる。しかも、傾斜度φを組み込んだ演算式に基づいて引張力の可変制御が行われるので、金属管8の直線部が長かったり管径が細かったりで傾斜度φの影響が無視できる場合に限らず、金属管8が例え太く且つ短くて傾斜度φの影響が無視できない場合であっても、合計圧縮力Paが制御目標値PAになるので、増肉率・減肉率が安定する。
また、傾斜度φの影響分だけは引張力付与機構50の負担が増えるが、合計圧縮力Paが直進機構20と引張力付与機構50とで分担されるという利点も維持される。
さらに、曲げ加工の途中で旋回機構30の旋回の戻しと旋回機構30による金属管8の把持とを遣り直すことにより、何ら不都合なく簡便に、S字曲げや(図4(a)参照)、立体曲げも(図示せず)、行うことができる。
金属管8のセット段階で綱状体51を金属管8の軸心・軸線から偏倚させても良く(図4(b)参照)、やはり金属管8のセット段階で綱状体51を管軸方向から傾けても良いので(図4(c)参照)、気楽にセットできる。実施態様の選択範囲も広い。
図5(a),(b)に一部断面模式図を示した本発明の金属管曲げ加工装置80が上述した実施例2の金属管曲げ加工装置70と相違するのは、傾斜度取得手段が傾斜検出部材71でなく旋回角度検出部材81と傾斜算出手段82とになっている点である。
旋回角度検出部材81は、上述した傾斜検出部材71と同様のものでも別方式のものでも良いが、旋回機構30に付設されて、旋回機構30の旋回角度θを検出するようになっている。
傾斜算出手段82は、その旋回角度θの検出角度値から、金属管曲げ加工装置90及び金属管8の形状値と金属管8の曲げ仕様値とを用いた幾何学的な式の演算を行って、傾斜度φの値を算出するプログラムである。傾斜算出手段82は、制御部65にインストールされて、算出した傾斜度φを引張力算出手段72の演算に供するようになっている。
この場合、傾斜度φが旋回角度θから算出されて間接的に取得されるため、傾斜検出部材71が無くても、傾斜度φを勘案した適切な引張力調整がなされるので、やはり増肉率・減肉率が安定する。
図6に一部断面模式図を示した本発明の金属管曲げ加工装置90が上述した実施例2の金属管曲げ加工装置70と相違するのは、傾斜度取得手段が傾斜検出部材71でなく移動距離検出部材91と距離変換手段92と傾斜算出手段93とになっている点である。
移動距離検出部材91は、例えば金属管8の後端側のクランパ21の位置を検出する距離計や,送りネジ22の回転数を検出するエンコーダ等からなり、直進機構20による金属管8と環状加熱機構11との相対移動距離Sを検出するようになっている。
距離変換手段92は、その移動距離Sの検出値から、金属管曲げ加工装置90及び金属管8の形状値と金属管8の曲げ仕様値を用いた幾何学的な式の演算を行って、綱状体51の傾動の起点である連結部61と、綱状体51が金属管8の内周面に接している位置か接するであろう延長位置との離隔距離Lを算出するプログラムである。
傾斜算出手段93は、その離隔距離Lから三角関数の式で傾斜度φの値を算出するプログラムである。これらの距離変換手段92と傾斜算出手段93も、制御部65にインストールされて、算出した傾斜度φを引張力算出手段72の演算に供するようになっている。また、例えば傾斜算出手段93を改造して角度φの代わりに離隔距離Lからcosφを算出させることにより、あるいは距離変換手段92と傾斜算出手段93とを一体化して角度φの代わりに移動距離Sからcosφを算出させることにより、角度φよりも算出し易いcosφを得、これを傾斜度として引張力算出手段72に引き渡すようにしても良い。
この場合も、傾斜度(φやcosφ)が移動距離Sから算出されて間接的に取得されるため、傾斜検出部材71が無くても、傾斜度を勘案した適切な引張力調整がなされるので、やはり増肉率・減肉率が安定する。
[その他]
上記実施例では、引張力算出手段67,72での引張力Pbの算出式が何時でも同じであったが、加工開始前は推力Psがゼロであり、加工を開始しても直後は未だ推力Psが通常圧縮力Pnに達せず、このような過渡的状態では合計圧縮力Paを直進機構20と引張力付与機構50とで分担する機能が十分に機能しないため、例えば推力Psや直進速度Vなどを監視して、加工開始前や過渡的状態では引張力Pbを付加圧縮力Pcの見込み値[(m−μ)・Po]に固定してオープン制御を行い、定常状態に近づいたら上述の算出式でのフィードバック制御に切り替えるようにしても良い。
本発明の金属管曲げ加工装置および方法は、鋼管への適用が典型的であるが、その他、各種の金属管、例えばステンレス,アルミ系,チタン系,鋳鋼,鋳鉄などの素材からなる金属管にも適用することができる。圧縮力比mや平均増肉率μの算出に際して、鋼管など降伏点の明瞭な金属管の場合は、降伏点σを用いて演算し、非鉄金属など降伏点の不明瞭な金属管の場合は、例えば0.2%耐力などの耐力σを用いて演算すると良い。
8…金属管、10…金属管曲げ加工装置、11…環状加熱機構、
20…直進機構、21…クランパ、22…送りネジ、23…駆動モータ、
30…旋回機構、31…アーム、32…クランパ、33…支軸、
41…金属管圧縮加工装置、42…ブレーキ、45…金属管曲げ加工装置、
46…トルク付与機構、49…金属管曲げ加工装置、50…引張力付与機構、
51…綱状体(縄索,索条)、52,53…管端装着具、54…引張力発生部材、
60…金属管曲げ加工装置、
61…連結部、62…推力検出部材、63…引張力調整部材、
65…制御部、66…目標値設定手段、67…引張力算出手段、
70…金属管曲げ加工装置、71…傾斜検出部材、72…引張力算出手段、
80…金属管曲げ加工装置、81…旋回角度検出部材、82…傾斜算出手段、
90…金属管曲げ加工装置、91…移動距離検出部材、92…距離変換手段、
93…傾斜算出手段、V…直進速度、Po…基準推力計算値、
Pn…通常圧縮力、Pc…付加圧縮力、Pa…合計圧縮力、
Ps…推力、PA…制御目標値、Pb…引張力、
m…圧縮力比、μ…平均増肉率、R…曲げ半径、D…管径、t…管厚、
σ…降伏点・耐力、φ…傾斜度、θ…旋回角度、S…移動距離、L…離隔距離

Claims (5)

  1. 加工対象の金属管をその外周から幅狭で高温に加熱する環状加熱機構と、前記金属管の曲げ部を旋回させる旋回機構と、前記金属管と前記環状加熱機構および前記旋回機構とを相対移動させる直進機構と、前記金属管の中空内に張った綱状体にて前記金属管の両端部を引っ張ることにより前記金属管に圧縮力を付与する引張力付与機構とを具備していて、前記金属管を移動加熱しながら曲げ加工する金属管曲げ加工装置において、
    前記引張力付与機構の引張力を可変調整する引張力調整部材と、前記直進機構の推力を検出する推力検出部材と、前記直進機構の推力による通常圧縮力と前記引張力付与機構の引張力による付加圧縮力との合計圧縮力に対応した制御目標値から前記推力の検出値を引いて引張力を算出しこの引張力算出値に基づいて前記引張力調整部材を制御する制御部とを備えており、
    前記引張力付与機構が、前記綱状体の一端を繋がれる引張力発生部材と、前記金属管の一端部に装着される管端装着具とを具備したものであり、前記引張力発生部材と前記管端装着具との連結部が、前記引張力発生部材の傾動を許容するものであり、
    前記金属管の曲げ加工時変形部位における前記綱状体と前記金属管の軸方向との傾斜度を取得する傾斜度取得手段を備え、前記制御部が、前記引張力算出値と前記傾斜度取得手段の取得値とから、前記引張力算出値を管軸方向射影成分とする元の引張力を算出して、これを前記引張力調整部材の制御に用いるようになっていることを特徴とする金属管曲げ加工装置。
  2. 前記傾斜度取得手段が、前記管端装着具に対する前記引張力発生部材の傾きを検出する傾斜検出部材であることを特徴とする請求項記載の金属管曲げ加工装置。
  3. 前記傾斜度取得手段が、前記旋回機構の旋回角度を検出する旋回角度検出部材と、その検出角度値に基づいて前記傾斜度の値を算出する演算手段とを具えたものであることを特徴とする請求項記載の金属管曲げ加工装置。
  4. 前記傾斜度取得手段が、前記直進機構による前記金属管と前記環状加熱機構との相対移動距離を検出する移動距離検出部材と、その移動距離検出値に基づいて前記傾斜度の値を算出する演算手段とを具えたものであることを特徴とする請求項記載の金属管曲げ加工装置。
  5. 請求項1乃至請求項の何れかに記載された金属管曲げ加工装置を用いて金属管を曲げる金属管曲げ加工方法であって、前記金属管の曲げ加工時変形部位に作用する合計圧縮力を前記直進機構と前記引張力付与機構とに分担させながら圧縮曲げを行うことを特徴とする金属管曲げ加工方法。
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