JP5514550B2 - シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤 - Google Patents

シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤 Download PDF

Info

Publication number
JP5514550B2
JP5514550B2 JP2009534314A JP2009534314A JP5514550B2 JP 5514550 B2 JP5514550 B2 JP 5514550B2 JP 2009534314 A JP2009534314 A JP 2009534314A JP 2009534314 A JP2009534314 A JP 2009534314A JP 5514550 B2 JP5514550 B2 JP 5514550B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
insol
ethylene
syringe
sol
polypropylene resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009534314A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2009041381A1 (ja
Inventor
隆 荒井
弘幸 上北
板倉  啓太
橋詰  聡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Prime Polymer Co Ltd
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Prime Polymer Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=40511266&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP5514550(B2) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Mitsui Chemicals Inc, Prime Polymer Co Ltd filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Priority to JP2009534314A priority Critical patent/JP5514550B2/ja
Publication of JPWO2009041381A1 publication Critical patent/JPWO2009041381A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5514550B2 publication Critical patent/JP5514550B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F297/00Macromolecular compounds obtained by successively polymerising different monomer systems using a catalyst of the ionic or coordination type without deactivating the intermediate polymer
    • C08F297/06Macromolecular compounds obtained by successively polymerising different monomer systems using a catalyst of the ionic or coordination type without deactivating the intermediate polymer using a catalyst of the coordination type
    • C08F297/08Macromolecular compounds obtained by successively polymerising different monomer systems using a catalyst of the ionic or coordination type without deactivating the intermediate polymer using a catalyst of the coordination type polymerising mono-olefins
    • C08F297/083Macromolecular compounds obtained by successively polymerising different monomer systems using a catalyst of the ionic or coordination type without deactivating the intermediate polymer using a catalyst of the coordination type polymerising mono-olefins the monomers being ethylene or propylene
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61MDEVICES FOR INTRODUCING MEDIA INTO, OR ONTO, THE BODY; DEVICES FOR TRANSDUCING BODY MEDIA OR FOR TAKING MEDIA FROM THE BODY; DEVICES FOR PRODUCING OR ENDING SLEEP OR STUPOR
    • A61M5/00Devices for bringing media into the body in a subcutaneous, intra-vascular or intramuscular way; Accessories therefor, e.g. filling or cleaning devices, arm-rests
    • A61M5/178Syringes
    • A61M5/31Details
    • A61M5/3129Syringe barrels

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Infusion, Injection, And Reservoir Apparatuses (AREA)
  • Graft Or Block Polymers (AREA)
  • Containers Having Bodies Formed In One Piece (AREA)
  • Wrappers (AREA)
  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Description

本発明は、シリンジ用ポリプロピレン樹脂、該樹脂を射出成形することによって生産される筒部(バレル)に押し子(プランジャー)を備えてなるシリンジ、および該シリンジに薬液を充填したプレフィルドシリンジ製剤に関する。
近年、誤った投薬処理などによる問題を減少させる目的で、薬液充填プレフィルドシリンジ製剤が注目されている。
一般に薬液充填プレフィルドシリンジの筒部(バレル)はガラスや環状ポリオレフィンを原料として生産されているが、価格が高く市場普及が進んでいない。一方、ポリプロピレン樹脂は化学的特性、物理的特性および成形加工性に優れ、しかも安価であることから前記シリンジの原料としての使用が検討されている。しかし、内容液との相互作用によるシリンジの耐衝撃性低下による割れや低分子量物質の溶出、特にシリンジ成形時のコア金型抜き取り時の傷付が大きな問題となっている。そのためシリンジの安定生産ができていないのが現状である。
いわゆる従来のポリプロピレン樹脂の代表として、例えば特許文献1や特許文献2の実施例ではプロピレン系ランダム共重合体が使用されているが、これらの共重合体は強度が不十分である。またシリンジには不溶性微粒子の存在を視認できるために透明性が必要とされるが、透明性を保とうとポリプロピレン樹脂の組成を調節すると、強度が不十分になってしまう。具体的には特許文献3では、メタロセン触媒系プロピレン系ランダム共重合体の射出成形品への応用が開示されている。同公報に開示された方法によると、剛性と透明性とに優れた射出成形品を得ることができるが、その射出成形品は耐衝撃性に劣るという問題がある。
以上のように、医療用シリンジについて機械的強度、透明性、射出成形時のコア金型引き抜き時のシリンジ傷付、低分子量物質の溶出とロングラン生産性および耐衝撃性が問題となっている。さらに衛生性の問題もあり、これらの問題を全て解消した医療用シリンジの原料となるポリプロピレン樹脂は無く、それゆえこれらの問題を全て解決した薬液充填プレフィルドシリンジの生産は困難である。
このような問題を安価なポリプロピレン樹脂を用いる事で解決できれば、広く薬液充填プレフィルドシリンジ製剤の普及に貢献でき、高齢患者の医療費抑制を達成することができるなど、非常に社会貢献度が高い。
特許第3195434号公報 特許第2528443号公報 特開平06−192332号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、衛生性、耐熱性および透明性に優れ、低分子量物質の溶出もほとんどないシリンジの原料となる、成形時の気泡発生抑制とロングラン成形性、更には射出成形時のコア金型抜き取り時の傷付抑制の全てを従来成し得なかったレベルで満足したシリンジ用ポリプロピレン樹脂を提供することを課題とする。
さらに本発明は、従来では困難であった低温の耐衝撃性をも満足するシリンジを提供することと、pHが5.0〜9.0である各種薬液を充填した、ESCR(薬剤によって物質の強度や耐衝撃性が低下する現象に対する耐性を示す言葉で、耐環境応力破壊とも言う)による耐衝撃性および薬剤安定性をも考慮した安価なプレフィルドシリンジ製剤を提供することによって、医療現場への更なる安全性を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の要件を満たすエチレンプロピレンブロック共重合体からなるポリプロピレン樹脂が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が10〜60g/10分であり、
室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)85〜97重量%と室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)3〜15重量%とから構成され(ただし前記DinsolとDsolとの合計は100重量%である)、
前記Dinsolが下記要件(1)〜(3)を満たし、かつ前記Dsolが下記要件(5)〜(7)を満たすエチレンプロピレンブロック共重合体(A)からなることを特徴とするシリンジ用ポリプロピレン樹脂。
(1)Dinsolの融点が150〜165℃
(2)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(3)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0〜13モル%
(5)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(6)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
(7)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜25モル%
[2]
前記Dinsolが、更に下記要件(4)を満たすことを特徴とする[1]に記載のシリンジ用ポリプロピレン樹脂。
(4)Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%以下
[3]
前記Dinsolが、更に下記要件(1')を満たすことを特徴とする[1]または[2]に記載のシリンジ用ポリプロピレン樹脂。
(1')Dinsolの融点が150〜160℃
[4]
前記Dinsolが、更に下記要件(3')を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のシリンジ用ポリプロピレン樹脂。
(3')Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0〜4モル%
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のシリンジ用ポリプロピレン樹脂を射出成形して得られる筒部(バレル)に押し子(プランジャー)を備えてなるシリンジ。
[6]
[5]記載のシリンジにpHが5.0〜9.0である薬液を充填した事を特徴とするプレフィルドシリンジ製剤。
本発明によれば、以下の3つのものが提供される。
(1)衛生性、耐熱性および透明性に優れ、低分子量物質の溶出もほとんどないシリンジの原料となる、成形時の気泡発生抑制とロングラン成形性、更には射出成形時のコア金型抜き取り時の傷付抑制の全てを従来成し得なかったレベルで満足したシリンジ用ポリプロピレン樹脂
(2)該樹脂を原料として製造された筒部(バレル)に押子(プランジャー)を備えてなるシリンジ
(3)前記シリンジにpHが5.0〜9.0である各種薬液を充填してなる、ESCRによる耐衝撃性および薬剤安定性をも達成した安価なプレフィルドシリンジ製剤。
そして前記プレフィルドシリンジ製剤は、当然のことながら薬液充填後に加熱滅菌した場合にも透明性の低下や低分子量物質の溶出がほとんど起こらないものであり、市場に急速に浸透するものと期待される。
以下、本発明に係るポリプロピレン樹脂およびその用途について具体的に説明する。
(1)シリンジ用ポリプロピレン樹脂
本発明に係るシリンジ用ポリプロピレン樹脂は、メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が10〜60g/10分であり、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)85〜97重量%と室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)3〜15重量%とから構成され(ただし前記DinsolとDsolとの合計は100重量%である)、前記Dinsolが下記要件(1)〜(3)を満たし、かつ前記Dsolが下記要件(5)〜(7)を満たすエチレンプロピレンブロック共重合体(A)からなることを特徴としている。
(1)Dinsolの融点が150〜165℃
(2)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(3)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0〜13モル%
(5)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(6)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
(7)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜25モル%
<エチレンプロピレンブロック共重合体(A)>
本発明のポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、好適にはメタロセン触媒系の存在下で、
第一重合工程にてプロピレンを単独重合、またはプロピレンと少量のエチレンとを(共)重合させてプロピレン系(共)重合体を製造し、引き続き第二重合工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを製造して得られる。
エチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、メルトフローレートが10〜60g/10分であり、第一重合工程で製造されるプロピレン系(共)重合体を主成分とする室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)85〜97重量%、好ましくは88〜95重量%、より好ましくは90〜94重量%と、第二重合工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを主成分とする室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)3〜15重量%、好ましくは5〜12重量%、より好ましくは6〜10重量%とから構成される。ただし前記DinsolとDsolとの合計は100重量%である。
ここでエチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、メタロセン触媒系で重合して得られたものであることが望ましい。
本発明に係るシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)のMFRは10〜60g/10分の範囲であるが、前記重合体の分子量分布が2.0以上2.5未満の場合は、特に30〜60g/10分であることが好ましく、40〜60g/10分であることがより好ましい。また、分子量分布が2.5以上3.5以下の場合は10〜40g/10分であることが好ましく、20〜35g/10分であることがより好ましく、20〜30g/10分であることがさらに好ましい。
MFRがこの範囲にある場合、本発明のシリンジ用ポリプロピレン樹脂の流動性が良好なためシリンジの多数個取りの射出成形が可能であり、且つ耐衝撃性も保持できる。MFRがこの範囲にない場合、即ちMFRが10未満の場合、シリンジの多数個取りの射出成形ができず、実生産性に乏しく、MFRが60を超える場合、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)が低分子量すぎて耐衝撃性が保てない。また射出成形してシリンジとした場合に、低分子量物質の溶出が起こる可能性もある。
そして、本発明のエチレンプロピレンブロック共重合体(A)において、前記Dinsolは下記要件(1)〜(3)を満たし、さらに前記Dsolは下記要件(5)〜(7)を満たす。
(1)Dinsolの融点が150〜165℃
(2)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(3)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0〜13モル%
(5)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(6)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
(7)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜25モル%
さらに上記エチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、前記Dinsolが、上記要件に加えて、下記要件(4)を満たすことが好ましい。
(4)Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%以下
以下、上記要件(1)〜(7)について詳細に説明する。
要件(1)
本発明のポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)の室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)の融点は150〜165℃であり、好ましくは150〜160℃である。
融点をこの範囲とすることによる第一のメリットは、本発明にかかるシリンジ用ポリプロピレン樹脂を射出成形して得られるシリンジの透明性の改善である。融点を上記範囲内とすると、シリンジの水蒸気滅菌後の透過率低下をも抑制できる。
第二のメリットはシリンジの耐衝撃性向上である。シリンジ成形では、筒状の部位(バレル)を、ポリプロピレン樹脂を溶融させて成形することにより形成する為、歪みとウェルドが残りやすく、且つポリプロピレンの流動配向結晶化(流動して結晶化しながら固化する)によって更に歪みが生じる。これによって、衝撃が加わった時に破損しやすくなる問題がある。融点を上記範囲内とすることにより、特にポリプロピレンの配向結晶化を大幅に低減でき、耐衝撃性を向上させる事ができる事を本発明者らは新たに発見した。
第三のメリットは、上記範囲内の融点を有するn-デカンに不溶な部分(Dinsol)と室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)の相互作用によってシリンジの低温耐衝撃性が改善される事である。
要件(2)
本発明のシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)の室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)のGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.5、好ましくは1.5〜3.2、更に好ましくは1.8〜3.0である。上記のように分子量分布が狭い範囲にあることにより、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)中の低分子量成分が非常に少ないので、本発明にかかるポリプロピレン樹脂を用いて製造したシリンジでは低分子量物質の溶出がほとんど起こらない。
また、このようにエチレンプロピレンブロック共重合体(A)の一部を構成する室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)について、GPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)を上述のように狭くできるのは、触媒としてメタロセン触媒系を用いているからである。そして、Mw/Mnが3.5よりも大きいと、低分子量成分が増える為にブリードアウトが発生して溶出量が増大し、水蒸気滅菌処理後のシリンジの透明性が低下する場合がある。
要件(3)
本発明のシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)の室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量は0〜13モル%、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜8モル%、更に好ましくは0〜4モル%、最も好ましくは0〜2モル%である。Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量を少なくすると、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)の融点(Tm)が高くなり、耐熱性が向上する。そして、Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が13モル%よりも多いと、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)の融点が低くなり、シリンジの高温下での剛性が低下する等の不具合が発生する傾向がある。
要件(4)
本発明のシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、下記要件(4)を満たすことが好ましい。
(4)室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%以下
より好ましくは、前記エチレンプロピレンブロック共重合体(A)のDinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和は、0.1モル%以下である。Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%よりも多い場合、プロピレンとエチレンとのランダム共重合性が低下し、その結果、室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)中のプロピレン−エチレン共重合体ゴムの組成分布が広くなる。その為、シリンジの耐衝撃性が低下し、さらに、水蒸気滅菌処理後に透明性が低下するなどの不具合が発生する場合がある。
要件(5)
本発明のシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)の室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)のGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.5、好ましくは1.2〜3.0、更に好ましくは1.5〜2.5である。上記のように分子量分布が狭い範囲にあることにより、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)中には低分子量成分が非常に少ないので、本発明にかかるポリプロピレン樹脂を用いて製造したシリンジでは低分子量物質の溶出がほとんど起こらない。
また、このようにエチレンプロピレンブロック共重合体(A)の室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)について、GPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)を上述のように狭くできるのは、触媒としてメタロセン触媒系を用いているからである。そして、Mw/Mnが3.5よりも大きいと、Dsolに低分子量プロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムが増える為、ブリードアウトが発生してシリンジの水蒸気滅菌処理後の透明性が低下し、またシリンジの耐衝撃性の低下等の不具合が生ずる場合がある。
要件(6)
本発明のシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)の室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃デカリン中における極限粘度[η]は1.5〜4dl/g、好ましくは1.5〜3.5dl/gであり、さらに好ましくは1.8〜3.5dl/g、最も好ましくは2.0〜3.0dl/gである。
こうしたブロック共重合体の製造において、本発明で好適に使用されるメタロセン触媒系以外の現行メタロセン触媒を用いたのでは、Dsolの極限粘度[η]が1.5dl/gを超えるエチレンプロピレンブロック共重合体を製造することは極めて困難であり、特にDsolの極限粘度[η]が1.8dl/g以上のエチレンプロピレンブロック共重合体を製造することはほとんど不可能である。
また、Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が4dl/gよりも高いと、第二重合工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを製造する際に、超高分子量乃至高エチレン量プロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムが微量に副生する。この微量に副生したプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムは、エチレンプロピレンブロック共重合体中に不均一に存在する為、そのような共重合体を原料として製造されたシリンジは、耐衝撃性が低下している傾向がある。
要件(7)
本発明のシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)のn-デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量は15〜25モル%、好ましくは15〜22モル%、更に好ましくは16〜20モル%である。Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15モル%よりも低いと、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)の耐衝撃性が低下する場合がある。また、Dsol中におけるエチレンに由来する骨格の含有量が25モル%よりも高いと、シリンジでの透明性が低下する場合がある。
<シリンジ用ポリプロピレン樹脂の製造方法>
次に、本発明にかかるシリンジ用ポリプロピレン樹脂の製造方法を詳細に説明する。
本発明に係るシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、特定のメタロセン系重合用触媒と助触媒の存在下に、好適には第一重合工程([工程1])でプロピレンを単独重合、またはプロピレンと少量のエチレンとを(共)重合させてプロピレン系(共)重合体を製造し、引き続いて第二重合工程([工程2])でプロピレンと第一工程よりも多量のエチレンとを共重合してプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを製造することによって得られる。
前記メタロセン重合用触媒として好ましいのはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒であり、WO01/27124号パンフレットに記載された以下に示すような触媒を例示することができる。
Figure 0005514550
上記一般式[I]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。このような炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、tert-ブチル基、アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基等を挙げることができる。ケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。
また、一般式[I]において、置換基R5〜R12は隣接する置換基と相互に結合して環を形成してもよい。このような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基等を挙げることができる。
前記一般式[I]において、シクロペンタジエニル環に結合するR1、R2、R3、R4は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。さらに好ましくはR3が炭素数1〜20の炭化水素基である。
前記一般式[I]において、フルオレン環に結合するR5〜R12は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前掲の炭化水素基を例示することができる。置換基R5〜R12は、隣接する置換基が相互に結合して環を形成してもよい。
前記一般式[I]において、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYは周期律表第14族元素であることが好ましく、より好ましくは炭素、ケイ素、ゲルマニウムであり、さらに好ましくは炭素原子である。このYに結合するR13、R14は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。これらは相互に同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前掲の炭化水素基を例示することができる。さらに好ましくはR14は炭素数6〜20のアリール(aryl)基である。
アリール基としては、前述の環状不飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有環状不飽和炭化水素基を挙げることができる。また、R13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。このような置換基としては、フルオレニリデン基、10-ヒドロアントラセニリデン基、ジベンゾシクロヘプタジエニリデン基などが好ましい。
また、上記一般式[I]で表されるメタロセン化合物は、R1、R4、R5またはR12から選ばれる置換基と架橋部のR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式[I]において、Mは好ましくは周期律表第4族遷移金属であり、さらに好ましくはTi、Zr、Hfである。
また、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。jは1〜4の整数であり、jが2以上のときは、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、炭化水素基の具体例としては前掲と同様のものなどが挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。Qは少なくとも1つがハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましい。
このような架橋メタロセン化合物としては、イソプロピル(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3、6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(フェニル)メチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、[3-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-tert-ブチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド(下記式[II]参照)などが好ましく挙げられる。
Figure 0005514550
なお、本発明で使用されるメタロセン触媒において、前記一般式[I]で表わされる第4族遷移金属化合物とともに用いられる助触媒は、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体からなる。これらについては、本出願人による前記公報(WO01/27124号パンフレット)あるいは特開平11-315109号公報中に開示された化合物を制限無く使用することができる。
本発明にかかるポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、例えば二つ以上の反応装置を直列に連結した重合装置を用い、以下に説明する二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。
([工程1])
[工程1]では、通常重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンを単独重合させるか、またはプロピレンと少量のエチレンとを共重合させる。[工程1]では、プロピレンに対してエチレンのフィード量をゼロまたは少量とすることによって、[工程1]で製造されるプロピレン系(共)重合体がDinsolの主成分となるようにする。プロピレンの単独重合、およびプロピレンとエチレンとの共重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法によっても行うことができ、複数の反応器を用いた多段重合で行うこともできる。また[工程1]は、プロピレンに対するエチレンのフィード量を変化させたブロック重合として行うこともできる。
([工程2])
[工程2]では、通常重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる。[工程2]では、プロピレンに対するエチレンのフィード量を[工程1]のときよりも多くすることによって、[工程2]で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合ゴムがDsolの主成分となるようにする。
このようにすることにより、Dinsolに係る要件(1)〜(4)は、[工程1]における重合条件の調整によって、Dsolに係る要件(5)〜(7)は、[工程2]における重合条件の調整によって、満足させることが可能となる。
また、本発明のポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)が満足すべき物性については、使用するメタロセン触媒の化学構造により決定されることが多い。具体的には、要件(2)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)、要件(4)Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和、要件(5)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)については、主として、[工程1]および[工程2]において用いられるメタロセン触媒を適切に選択することによって、本発明の要件を満足するように調節することができる。本発明において好ましく用いられるメタロセン触媒については前述の通りである。
さらに、要件(3)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量については、[工程1]におけるエチレンのフィード量などによって調整することが可能である。要件(6)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]については、[工程2]における水素などの分子量調節剤のフィード量などによって調節することが可能である。要件(7)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量については、[工程2]におけるエチレンのフィード量などによって調節することが可能である。さらに、[工程1]と[工程2]とで製造する重合体の量比を調整することによって、DinsolとDsolとの組成比、およびエチレンプロピレンブロック共重合体(A)のメルトフローレートを適切に調節することが可能である。
また、本発明のエチレンプロピレンブロック共重合体(A)は、前記方法の[工程1]で製造されるプロピレン系(共)重合体と、前記方法の[工程2]で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムとを、メタロセン化合物含有触媒の存在下で個別に製造した後に、これらを物理的手段を用いてブレンドして製造してもよい。
本発明にかかるシリンジ用ポリプロピレン樹脂は、成形時の気泡発生抑制とロングラン成形性、更には射出成形時のコア金型抜き取り時の傷付抑制の全てを従来成し得なかったレベルで満足しており、そのような樹脂を用いて射出成形を行うことによって、衛生性、耐熱性および透明性に優れ、低分子量物質の溶出もないシリンジを得ることができる。
本発明に係るポリプロピレン樹脂は、必要に応じてリン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ハイドロタルサイトを代表とする塩酸吸収剤を含有してもよい。
リン系酸化防止剤としては、特に制限はなく、従来公知のリン系酸化防止剤を用いることができる。なお、リン系酸化防止剤の使用が1種類のみであると、ブリードによる内容物汚染が少ないため好ましい。リン系酸化防止剤としては、3価の有機リン化合物が好ましく、具体的には、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤は、本発明にかかるポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、通常0.03〜0.3重量部、好ましくは0.05〜0.2重量部、特に好ましくは0.08〜0.15重量部の割合で用いられる。
アミン系酸化防止剤としては、ピペリジン環を持つ化合物が例示される。具体的には、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6- テトラメチルピペリジン重縮合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[[6-[1-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル][[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]などが挙げられる。
アミン系酸化防止剤は、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、通常0.01〜0.3重量部、好ましくは0.01〜0.2重量部、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部、特に好ましくは0.03〜0.06重量部の割合で用いられる。
塩酸吸収剤としては、滅菌方法や薬液との白濁物生成、造核剤との相互作用を考慮すると、ハイドロタルサイトが好ましい。ただし、薬液との反応性などが無い場合に限っては、適宜脂肪酸金属塩を極力減量したハイドロタルサイトとの併用系も使用できる。塩酸吸収剤添加量は、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)100重量部に対して通常0.02〜0.20重量部、好ましくは0.02〜0.10重量部、より好ましくは0.02〜0.05重量部である。
本発明に係るポリプロピレン樹脂は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに耐熱安定剤、帯電防止剤、離型剤、スリップ剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等を含有してもよい。
また、本発明に係るポリプロピレン樹脂に対して、透明性を付与するため、造核剤を添加してもよい。造核剤としては一般的な造核剤が使用可能である。例えば有機リン酸エステルに代表されるアデカスタブNA−11が最も一般的である。但し、第15改正日本薬局方一般試験法『プラスチック製医薬品容器試験法』のプラスチック製水性注射剤容器(ポリエチレン製またはポリプロピレン製注射剤容器)規格である紫外吸収スペクトルを満足する為には、ソルビトール系造核剤は添加しないことが望ましい。
造核剤は、エチレンプロピレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、通常0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.2重量部、より好ましくは0.08〜0.15重量部の割合で用いられる。
本発明に係るシリンジ用ポリプロピレン樹脂は、前記エチレンプロピレンブロック共重合体(A)に対して、必要に応じて造核剤および他の添加剤、たとえばリン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、塩酸吸収剤等を添加し、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどを用いて混合した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練することによって、上記各成分および添加剤が均一に分散混合された状態で得ることが出来る。
(2)シリンジ
本発明に係るシリンジは、本発明にかかるシリンジ用ポリプロピレン樹脂を射出成形して得られる筒部(バレル)に押子(プランジャー)を備えてなる。前記シリンジ用ポリプロピレン樹脂の射出成形の方法としては、通常用いられる方法を用いることが出来る。前記シリンジ用ポリプロピレン樹脂は成形時の気泡発生抑制とロングラン成形性、更には射出成形時のコア金型抜き取り時の傷付抑制の全てを従来成し得なかったレベルで満足している。そのため、その樹脂を用いて射出成形を行うことによって、衛生性、耐熱性、透明性に優れ、低分子量物質の溶出もほとんどない、低温耐衝撃性を更に改善したシリンジを提供することができる。
なお、押子(プランジャー)としては公知の押子(プランジャー)を制限なく用いることができる。
(3)プレフィルドシリンジ製剤
本発明に係るプレフィルドシリンジ製剤において用いられる薬液はpHが5.0〜9.0である事が望ましい。pHが上記の範囲内の薬液であれば、水蒸気滅菌や長期保存においてシリンジへの薬液成分の吸着等によって薬液の効能が失効することもない。
薬液は上記のpH範囲のものであれば特に限定されないが、例えばヘパリン水溶液や塩化カリウム水溶液に代表される中性(pHが7.0近傍)の薬液である事が特に望ましい。高揮発性製剤や高濃度アルコール製剤は滅菌時に内圧上昇によるシリンジの変形を引き起こすため、pHによらず薬液から除外する。
本発明に係るプレフィルドシリンジ製剤は、本発明にかかるシリンジ用ポリプロピレン樹脂を射出成形して得られる筒部(バレル)に押子(プランジャー)を備えてなるシリンジに、pHが5.0〜9.0の薬液を充填してなる。前記シリンジ用ポリプロピレン樹脂は成形時の気泡発生抑制、ハイサイクル生産性を保持し、ロングラン射出成形におけるシリンジ内面への傷付抑制について従来成し得なかったレベルを満足している。そのため、それを射出成形することによって剛性、耐熱性、衛生性、特に従来到達しえない高い透明性を有し、耐衝撃性に優れ、低分子量物質の溶出もほとんどないシリンジを製造することができる。
また本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、その製造にあたって121℃の蒸気で一度ないし二度滅菌されるため、蒸気でシリンジが変形しない高い耐熱性が要求される。本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、シリンジが高い耐熱性を有するため、滅菌後のシリンジの変形も起きない。
以上のように前記シリンジや該シリンジにpHが5.0〜9.0の薬液を充填してなるプレフィルドシリンジ製剤は、従来のポリプロピレン樹脂では達成できなかった、全ての性質についての優れたバランスを達成している。
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例等において、物性は以下の方法により測定した。
(1)メルトフローレート(MFR)
MFRは、ASTM D 1238に準拠し、230℃、荷重2.16kgで測定した。
(2)エチレン含有量
エチレン含有量はIRによる定量を実施することにより測定した。
(3)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。ここで測定した第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
(測定条件)
第1step : 10℃/minで240℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step : 10℃/minで60℃まで降温する。
第3step : 10℃/minで240℃まで昇温する。
(4)室温n-デカン可溶部量(Dsol
最終生成物(すなわち、本発明のポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A))のサンプル5gにn-デカン200mlを加え、145℃で30分間加熱溶解した。約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(以下、n-デカン不溶部:Dinsol)を濾別した。濾液を約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させた(析出物(A))。析出物(A)とアセトンを濾別し、析出物を乾燥した。なお、濾液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。
n-デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n-デカン可溶部量(wt%)=〔析出物(A)重量/サンプル重量〕×100。
(5)Mw/Mn測定〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)〕
ウォーターズ社製GPC-150C Plusを用い以下の様にして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6−HT及びTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業(株))および酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株))0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー(株)製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
(6)極限粘度[η]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
[η]= lim(ηsp/C) (C→0)。
(7)2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量の測定
13C−NMRを用いて、特開平7-145212号公報に記載された方法に従って、プロピレンの2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量を測定した。
(8)曲げ弾性率
ASTM D 790に準拠して曲げ試験を行ない、その結果から曲げ弾性率を算出した。
(9)加熱変形温度
ASTM D 648に準じて行った。単位は℃である。
(10)透明性(視認性)評価
実施例および比較例のポリプロピレン樹脂の長さ12cm、幅11cm、厚み1mmの角板を溶融温度200℃/金型温度30℃にて射出成形し、第15改正日本薬局方一般試験法『プラスチック製医薬品容器試験法』のプラスチック製水性注射剤容器(ポリエチレン製またはポリプロピレン製注射剤容器)に準じ、121℃1時間でシリンジを水蒸気滅菌した。滅菌前後での純水中での成形物の並行透過光率(%)を測定した。
日本薬局方基準は並行透過光率で55%以上であるが、製品形状や肉厚によって同じ原料から製造された製品であっても並行透過光率の数値は異なる。シリンジの場合1mm〜1.2mm肉厚にて設計されているので、55%を1mmとして、1.2mm肉厚の場合を想定し、1mmの55%の2割増しである66%以上を合格判定基準○とし、66%未満の並行透過光率で×とした。
(11)成形性の評価
容積20ml、厚み1mmの注射器外筒8本取り金型を有する150t電動射出成形機にて、シリンジ生産サイクルタイム(秒)をもとめ、6秒以上となるものは×とした。また、バリ等の外観不良を生じたものも成形性×とした。前記二つのいずれにも該当しないものを○とした。
(12)加熱による変形の有無の評価
上記シリンジに、ヘパリン(500u/ml)水溶液を入れて押し子をし、日本薬局方溶出物試験の、121℃1時間での水蒸気滅菌後のシリンジの変形を目視で評価した。
(13)耐衝撃性
シリンジ破壊高さは重さ45gの四角錘を上記シリンジ胴部に種々の高さから落下させ、破壊高さの平均(n=10)をもとめ、高さ50cm以下で割れた場合を×とした。測定は室温(23℃)で実施した。
次に、実施例で使用したシリンジの原料を示す。
1)エチレンプロピレンブロック共重合体(A)(物性および製造方法については、下記の製造例にて説明する)
2)造核剤(B)
ナトリウム-2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート(アデカ社製、商品名 アデカスタブNA−11UY)
3)リン系酸化防止剤(C)
トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名 イルガフォス168)
4)アミン系酸化防止剤(D)
コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名 チヌビン622LD)
5)塩酸吸収剤(E)
Mg4Al2(OH)12CO3・3H2Oで表されるハイドロタルサイト(協和化学社製、商品名 DHT−4A)。
[製造例1]
(1)固体触媒担体の製造
容量1リットルの枝付フラスコにSiO2(AGCエスアイテック製サンスフェアH121)300gをサンプリングし、トルエン800mlを入れ、スラリー化した。
次にスラリーを容量5リットルの4つ口フラスコへ移液し、トルエン260mlを加えた。
ここにメチルアルミノキサン(以下、MAOと呼ぶ)−トルエン溶液(アルベマール社製10wt%溶液)を2830ml導入し、室温のままで、30分間攪拌した。1時間かけて溶液を110℃に昇温し、4時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで、置換率が95%になるまで置換を行い、MAO/SiO2/トルエンスラリーを調製した。
(2)固体触媒成分の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、容量5リットルの4つ口フラスコにイソプロピル(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3、6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドを1.4g秤取った。フラスコをグローブボックスの外に出し、トルエン0.5リットルと上記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー2.0リットル(固体成分として140g)を窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。
得られたイソプロピル(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3、6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
(3)前重合触媒の製造
ヘプタン75リットルの入った内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブにトリエチルアルミニウム156ml、前記の(2)で調製した固体触媒成分144gを順に装入し、トータルヘプタン量を80リットルに調整した。内温15〜20℃に保ち、エチレンを1440g導入し、180分間攪拌しながら反応させた。
重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度が1g/リットルとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
(4)本重合
本重合−1([工程1])
内容量58リットルのジャケット付き循環式管状重合器にプロピレンを45kg/時間、水素を12.5Nリットル/時間、上記(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として2.5g/時間、トリエチルアルミニウム1.7ml/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.9MPa/Gであった。
本重合−2([工程1])
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを67kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.45mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力2.8MPa/Gで重合を行った。
本重合−3([工程1])
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを11kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.45mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.8MPa/Gで重合を行った。
本重合−4([工程1])
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを14kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.45mol%になるように供給した。重合温度67℃、圧力2.7MPa/Gで重合を行った。
共重合([工程2])
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、共重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.1mol%になるように供給した。さらに、重合温度63℃、圧力2.9MPa/Gを保つようにエチレンを供給し重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、エチレンプロピレンブロック共重合体(A1)を得た。得られたエチレンプロピレンブロック共重合体(A1)を、80℃で真空乾燥させた。
[製造例2]
(1)固体触媒担体の製造
上記製造例1の(1)と同様にして、MAO/SiO2/トルエンスラリーを調製した。
(2)固体触媒成分の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、容量5リットルの4つ口フラスコにWO2006/068308号パンフレットに記載の製造方法に従って合成された[3−(1',1',4',4',7',7',10',10'−オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3−トリメチル−5−tert−ブチル−1,2,3,3a−テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライドを2.0g秤り取った。フラスコをグローブボックスの外に出し、トルエン0.46リットルと上記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リットルとを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。
得られた[3−(1',1',4',4',7',7',10',10'−オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3−トリメチル−5−tert−ブチル−1,2,3,3a−テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
(3)前重合触媒の製造
前記の(2)で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109ml、ヘプタン100リットルを内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに導入し、内温15〜20℃に保ち、エチレンを2020g導入し、180分間攪拌しながら反応させた。
重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/リットルとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
(4)本重合
本重合−1([工程1])
内容量58リットルのジャケット付き循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、上記(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として1.6g/時間、トリエチルアルミニウム1.0g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。
本重合−2([工程1])
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が0.37mol%、水素を気相部の水素濃度が0.65mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
本重合−3([工程1])
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が0.37mol%、水素を気相部の水素濃度が0.65mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
本重合−4([工程1])
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が0.37mol%、水素を気相部の水素濃度が0.65mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
共重合([工程2])
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、共重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.1mol%になるように供給した。さらに重合温度63℃、圧力2.9MPa/Gを保つようにエチレンを供給し重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、エチレンプロピレンランダムブロック共重合体(A2)を得た。得られたエチレンプロピレンランダムブロック共重合体(A2)を、80℃で真空乾燥させた。
[製造例3〜8]
本重合−2および共重合の方法を表1のように変えた以外は、製造例2と同様の方法で行った。
上記の製造例で得られたエチレンプロピレンブロック共重合体(A1)〜(A8)の物性値を表2に示す。なお、製造例6は製造例2と比較し、共重合槽の重合温度を63℃から51℃に低下させたため、共重合成分のエチレン量が増大している。
Figure 0005514550
Figure 0005514550
[実施例1]
エチレンプロピレンブロック共重合体(A1)100重量部をヘンシェルミキサー中に供給し、さらに、造核剤(B)0、10重量部、リン系酸化防止剤(C)0.10重量部、アミン系酸化防止剤(D)0.04重量部、塩酸吸収剤(E)0.03重量部を添加し、攪拌混合した。
次いで、得られた混合物を、日本製鋼所製高速二軸押出機CIM50Sと単軸押出機P65EXT(65mmφ)のタンデム機を用いて、樹脂温度200℃で溶融混練し、その混練物を押出し、水槽にて冷却・切断してポリプロピレン樹脂のペレットを得た。
次いで、そのペレットを用いて、射出成形により溶融温度200℃、金型温度30℃にて厚み1mmのシート状試験片、溶融温度200℃、金型温度40℃にて曲げ強度試験用の試験片(ASTM D 790、厚み3.2mm、長さ127mm、幅12.7mm)、および加熱変形温度試験用の試験片(ASTM D 648、厚み6.4mm、長さ127mm、幅12.7mm)を作製した。これら試験片を用いて、前述の方法に従って物性を測定した。結果を表3に示す。
[実施例2]
実施例1において、エチレンプロピレンブロック重合体(A1)をエチレンプロピレンブロック重合体(A2)に変更した以外は実施例1と同様に行った。物性測定結果を表3に示す。
[実施例3]
実施例1において、エチレンプロピレンブロック重合体(A1)をエチレンプロピレンブロック重合体(A3)に変更した以外は実施例1と同様に行った。物性測定結果を表3に示す。
〔比較例1〕
実施例1において、エチレンプロピレンブロック重合体(A1)をエチレンプロピレンブロック重合体(A4)に変更した以外は実施例1と同様に行った。物性測定結果を表3に示す。
〔比較例2〕
実施例1において、エチレンプロピレンブロック重合体(A1)をエチレンプロピレンブロック重合体(A5)に変更した以外は実施例1と同様に行った。物性測定結果を表3に示す。
〔比較例3〕
実施例1において、エチレンプロピレンブロック重合体(A1)をエチレンプロピレンブロック重合体(A6)に変更した以外は実施例1と同様に行った。物性測定結果を表3に示す。
〔比較例4〕
実施例1において、エチレンプロピレンブロック重合体(A1)をエチレンプロピレンブロック重合体(A7)に変更した以外は実施例1と同様に行った。物性測定結果を表3に示す。
〔比較例5〕
実施例1において、エチレンプロピレンブロック重合体(A1)をエチレンプロピレンブロック重合体(A8)に変更した以外は実施例1と同様に行った。物性測定結果を表3に示す。
Figure 0005514550
表3に示された物性測定結果から、本発明に係る高度に制御されたポリプロピレン樹脂により、成形品(シリンジ)が、従来なし得なかった透明性と耐衝撃性と剛性のバランス、耐熱性、およびロングラン成形性の改善を達成したことがわかる。
本発明にかかるシリンジ用ポリプロピレン樹脂を構成するエチレンプロピレンブロック共重合体(A)によって初めて、このようなすべてのシリンジとしての必要物性を満足できる事を見出し、それを実施化した事の工業的意義は非常に大きい。
また、このシリンジにpHが5.0〜9.0である各種薬液を充填し、薬剤安定性をも達成したプレフィルドシリンジ製剤を得た。
本発明にかかるシリンジ用ポリプロピレン樹脂を使用した場合、他の高価な副原料を用いることなくシリンジを製造することができるため、薬価の低いプレフィルドシリンジ製剤の市場供給に大いに貢献し、また医療現場への安全性の提供という点においても大いに貢献できる。
また本発明にかかるシリンジおよびプレフィルドシリンジ製剤は、今後市場へ浸透することが大いに期待でき、医療現場での注射剤の誤使用や破損の防止、内容液の視認性など安全性の向上に寄与し、非常に有用である。

Claims (6)

  1. メルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重)が10〜60g/10分であり、
    室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)85〜97重量%と室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)3〜15重量%とから構成され(ただし前記DinsolとDsolとの合計は100重量%である)、
    前記Dinsolが下記要件(1)〜(3)を満たし、かつ前記Dsolが下記要件(5)〜(7)を満たすエチレンプロピレンブロック共重合体(A)からなるシリンジ用ポリプロピレン樹脂を射出成形して得られる筒部(バレル)に押し子(プランジャー)を備えてなるシリンジ
    (1)Dinsolの融点が150〜165℃
    (2)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
    (3)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0〜13モル%
    (5)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
    (6)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
    (7)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜22モル%
  2. 前記エチレンプロピレンブロック共重合体(A)における、室温n−デカンに不溶な部分(D insol )が90〜97重量%であり、室温n−デカンに可溶な部分(D sol )が3〜10重量%である(ただし前記D insol とD sol との合計は100重量%である)ことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
  3. 前記Dinsolが、更に下記要件(4)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のシリンジ。
    (4)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量の和が0.2モル%以下
  4. 前記Dinsolが、更に下記要件(1')を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリンジ。
    (1')Dinsolの融点が150〜160℃
  5. 前記Dinsolが、更に下記要件(3')を満たすことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のシリンジ。
    (3')Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0〜4モル%
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリンジにpHが5.0〜9.0である薬液を充填した事を特徴とするプレフィルドシリンジ製剤。
JP2009534314A 2007-09-28 2008-09-22 シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤 Active JP5514550B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009534314A JP5514550B2 (ja) 2007-09-28 2008-09-22 シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007254735 2007-09-28
JP2007254735 2007-09-28
PCT/JP2008/067074 WO2009041381A1 (ja) 2007-09-28 2008-09-22 シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤
JP2009534314A JP5514550B2 (ja) 2007-09-28 2008-09-22 シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2009041381A1 JPWO2009041381A1 (ja) 2011-01-27
JP5514550B2 true JP5514550B2 (ja) 2014-06-04

Family

ID=40511266

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009534314A Active JP5514550B2 (ja) 2007-09-28 2008-09-22 シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20100234810A1 (ja)
EP (1) EP2196483B1 (ja)
JP (1) JP5514550B2 (ja)
KR (1) KR101161969B1 (ja)
CN (1) CN101809052A (ja)
WO (1) WO2009041381A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102844063B (zh) * 2010-02-15 2016-01-20 利贝尔-弗拉施姆有限公司 针筒产品及相关的方法和用途
US20120046411A1 (en) 2010-08-20 2012-02-23 Becton, Dickinson And Company Recycled Resin Compositions And Disposable Medical Devices Made Therefrom
US10780228B2 (en) 2012-05-07 2020-09-22 Medline Industries, Inc. Prefilled container systems
CN102764467A (zh) * 2012-07-09 2012-11-07 中国人民解放军第二军医大学 预灌封注射针筒
KR101699658B1 (ko) 2013-03-12 2017-01-24 미쓰이 가가쿠 가부시키가이샤 올레핀 중합체의 제조방법 및 올레핀 중합용 촉매
JP6135517B2 (ja) * 2014-01-10 2017-05-31 日本ポリプロ株式会社 プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体およびその製造方法
US20160030728A1 (en) * 2014-07-31 2016-02-04 Tekni-Plex, Inc. Extrudable tubing and solvent bonded fitting for delivery of medicinal fluids
CN112451797B (zh) * 2020-11-05 2023-04-18 山东永聚医药科技有限公司 高分子预灌封注射器

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004344423A (ja) * 2003-05-22 2004-12-09 Terumo Corp 注射筒
WO2006068308A1 (ja) * 2004-12-22 2006-06-29 Mitsui Chemicals, Inc. プロピレン系重合体、該重合体を含む組成物及びこれらから得られる成形体
JP2006213800A (ja) * 2005-02-02 2006-08-17 Nipro Corp 薬剤包装用基材、薬剤包装用容器およびこれらを用いた製剤
JP2006212148A (ja) * 2005-02-02 2006-08-17 Nipro Corp 薬剤包装用基材、薬剤包装用容器およびこれらを使用した製剤
WO2007116709A1 (ja) * 2006-03-29 2007-10-18 Mitsui Chemicals, Inc. プロピレン系ランダムブロック共重合体、該共重合体を含む樹脂組成物およびそれからなる成形体

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3195434B2 (ja) * 1991-09-10 2001-08-06 第一製薬株式会社 薬液充填シリンジ製剤
TW272985B (ja) * 1992-09-11 1996-03-21 Hoechst Ag
EP1209165B1 (en) * 1993-06-07 2006-04-19 Mitsui Chemicals, Inc. Propylene elastomer
TWI246520B (en) * 1997-04-25 2006-01-01 Mitsui Chemicals Inc Processes for olefin polymerization
EP1138687B1 (en) * 1999-10-08 2007-04-11 Mitsui Chemicals, Inc. Metallocenes, their preparation, olefin polymerisation catalysts and a process for producing polyolefins

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004344423A (ja) * 2003-05-22 2004-12-09 Terumo Corp 注射筒
WO2006068308A1 (ja) * 2004-12-22 2006-06-29 Mitsui Chemicals, Inc. プロピレン系重合体、該重合体を含む組成物及びこれらから得られる成形体
JP2006213800A (ja) * 2005-02-02 2006-08-17 Nipro Corp 薬剤包装用基材、薬剤包装用容器およびこれらを用いた製剤
JP2006212148A (ja) * 2005-02-02 2006-08-17 Nipro Corp 薬剤包装用基材、薬剤包装用容器およびこれらを使用した製剤
WO2007116709A1 (ja) * 2006-03-29 2007-10-18 Mitsui Chemicals, Inc. プロピレン系ランダムブロック共重合体、該共重合体を含む樹脂組成物およびそれからなる成形体

Also Published As

Publication number Publication date
KR20100075965A (ko) 2010-07-05
US20100234810A1 (en) 2010-09-16
EP2196483A1 (en) 2010-06-16
JPWO2009041381A1 (ja) 2011-01-27
WO2009041381A1 (ja) 2009-04-02
EP2196483B1 (en) 2012-10-24
CN101809052A (zh) 2010-08-18
EP2196483A4 (en) 2011-05-25
KR101161969B1 (ko) 2012-07-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5514550B2 (ja) シリンジ用ポリプロピレン樹脂およびこれを原料として得られるシリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤
JP5967856B2 (ja) ポリプロピレン樹脂およびブロー容器
EP2006314B1 (en) Propylene random block copolymer, resin compositions containing the copolymer, and moldings of both
JP5770103B2 (ja) ランダムプロピレンコポリマー組成物、製品及び方法
ES2646820T3 (es) Compuestos de organosilicio bicíclicos como donantes de electrones para catalizadores de poliolefina
US11001651B2 (en) Polypropylene for use in BOPP applications
JP2008184498A (ja) プロピレン系ブロック共重合体の製造方法
JP5124517B2 (ja) ポリプロピレン系ブロー成形体
JP6236897B2 (ja) プロピレン系樹脂組成物およびその成形品
JP5687295B2 (ja) 4−メチル−1−ペンテン系重合体、その製造方法およびその用途
JP5776604B2 (ja) 医療用チューブ
EP3963003B1 (en) Soft polypropylene composition with improved optical behavior
JP4236995B2 (ja) ポリプロピレン樹脂組成物およびその用途
JP7014819B2 (ja) プロピレン系樹脂組成物、成形体および容器
JP4705703B2 (ja) ポリプロピレン系医療用ブロー容器
JP2003147156A (ja) プロピレン系樹脂組成物
JP5572502B2 (ja) プロピレン系樹脂組成物を用いた成形品
KR102086055B1 (ko) 폴리프로필렌계 수지 조성물
JP2019156913A (ja) ポリエチレン樹脂組成物及び容器
JP5020477B2 (ja) ポリプロピレン樹脂組成物および該組成物よりなる医療用器具ならびにプレフィルドシリンジ
JP2021017496A (ja) 分岐状ポリプロピレン系重合体
JP4987339B2 (ja) 医療用シリンジ用プロピレン樹脂およびこれを射出成形して得られる医療用シリンジ並びにプレフィルドシリンジ製剤
JP5684024B2 (ja) プロピレン系樹脂組成物
JP2025059042A (ja) プロピレン系重合体の製造方法
JP6564224B2 (ja) プロピレン系樹脂組成物、成形体および容器

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130305

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130507

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140304

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140331

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5514550

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250