JP5512647B2 - シリコンの精製方法、吸収ユニット、およびシリコン精製装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコンの精製方法、吸収ユニット、およびシリコン精製装置に関する。
近年、環境問題から、石油などの代替として自然エネルギーの利用が注目されている。太陽電池は大きな発電設備を必要とせず、稼働時に騒音などが出ないこともあり、日本および欧州などで特に積極的に導入されてきている。昨今ではカドミウムテルルなどの化合物半導体からなる太陽電池が登場してきたものの、物質自体の安全性およびこれまでの実績などから依然として結晶シリコンからなる基板を用いた太陽電池(結晶シリコン太陽電池)が大きなシェアを占めている。
シリコンを太陽電池用材料として用いる場合、シリコンに含まれる不純物が太陽電池の品質に影響を与えることはよく知られている。そのため、高純度のシリコンを太陽電池用材料として用いることが好ましい。
高純度のシリコンを得る方法として、珪石を還元して得られる純度98%以上の金属シリコンをシラン(SiH4)またはトリクロルシラン(SiHCl3)などのガスに変換し、そのガスをベルジャー炉内で水素還元するという方法がある。このようにして得られたポリシリコンを単結晶成長させることにより、LSI等の電子デバイス用のシリコンウェハを製造可能である。
電子デバイス用材料に用いられるシリコンには、純度11Nという非常に高い純度が要求される。そのため、金属シリコンをシランなどのガスに変換する設備への投資およびベルジャー炉の設備投資が膨大となっても、また気相反応を利用するために高純度のシリコンの生産性がそれほど高くなくても、金属シリコンをシランなどのガスに変換してベルジャー炉内で水素還元するという方法を採用せざるを得ない。しかし、太陽電池用材料としてのシリコンには、6N程度の純度が要求される。よって、金属シリコンをシランなどのガスに変換してベルジャー炉内で水素還元するという方法により得られたシリコンでは、太陽電池用材料としての品質を十分に満たすが、コストが非常に高くなる。以上のことから、太陽電池用材料としてのシリコン(純度が6N程度のシリコン)の安価な製造技術の確立が強く求められており、凝固偏析等を利用した冶金学的手法により前述した純度98%程度の金属シリコンを精製する手法が近年注目されている。
ここで、金属シリコン中に不純物として比較的多く含まれるものには、鉄、アルミニウム、またはチタン等がある。鉄は金属シリコン中に100〜5000ppmW程度含まれており、アルミニウムは金属シリコン中に100〜2000ppmW程度含まれており、チタンは金属シリコン中に1〜10ppmW程度含まれている。
鉄、アルミニウムまたはチタンなどの不純物はシリコン中の偏析係数(平衡分配係数)が小さいことで知られている。例えば、シリコン中の鉄の偏析係数値は6.4×10-6であり、シリコン中のアルミニウムの偏析係数値は2.8×10-3であり、シリコン中のチタンの偏析係数値は7.37×10-6であることが報告されている。そのため、凝固偏析を利用して鉄、アルミニウムまたはチタンなどの不純物の除去が可能である。つまり、シリコン融液が凝固する際、偏析係数の小さな不純物(鉄、アルミニウムまたはチタン)がシリコン融液中に分配されて固体中にほとんど取り込まれないため、析出したシリコンにおいて上記不純物の濃度が低下する。これにより、高純度のシリコンが得られる。
析出されたシリコン(以下では「シリコン塊」と記すことがある)における不純物濃度Csは、シリコン融液が凝固する進行度つまり固相率(固相率はシリコン塊の質量とシリコン融液の質量との合計量に対するシリコン塊の質量の割合である)に伴って変化し、下記式(1)で表わされる。なお、下記式(1)において、kはシリコン中における不純物の偏析係数であり、C0はルツボに供給されるシリコンにおける不純物濃度であり、fsは固相率である
s=k×C0×(1−fsk-1・・・(1)。
また、シリコン融液における不純物濃度C1は、下記式(2)で表わされる。なお、下記式(2)において、f1は液相率(液相率は、シリコン塊の質量とシリコン融液の質量との合計量に対するシリコン融液の質量の割合である)であり、fs+f1=1である
1=C0×f1 k-1・・・(2)。
シリコン原料から溶出した不純物がシリコン融液内で均一に拡散する条件でシリコン融液が凝固する場合(たとえばシリコン融液の凝固速度が十分低速である場合)、不純物の偏析係数としては平衡偏析係数k0を用いれば良い。しかし、シリコン塊の生産性の向上という観点からは、シリコン融液の凝固速度を速くすることが好ましい。この場合には、不純物の偏析係数としては、平衡偏析係数k0ではなく、実効偏析係数keを用いることが好ましい。実効偏析係数keは下記式(3)で表される。ここで、下記式(3)において、Rはシリコンが凝固する際の固液界面移動速度であり、δはシリコン融液における不純物濃縮層の厚さであり、Dはシリコン融液中の不純物の拡散係数である
e=k0/{k0+(1−k0)exp[−(Rδ/D)]・・・(3)。
上記式(3)から、シリコン塊の生産性を低下させない程度にシリコン融液の凝固速度を稼ぎつつ不純物の実効偏析係数keを小さくするためには、シリコン融液における不純物濃縮層の厚さδを薄くすることが有効であるということが分かる。これを踏まえて、固液界面でのシリコン融液の撹拌を促進するということが行なわれている。たとえば特許文献1には、溶融ケイ素を不活性ガス雰囲気中において凝固温度を超えた状態で保持してから、溶融ケイ素中で回転冷却体を回転させて当該回転冷却体の外周面に高純度のケイ素を晶出させる方法が記載されている。
特公平7−53569号公報
凝固偏析の原理を利用したシリコン塊の精製においては、上記式(1)により、固相率が高くなるに従いシリコン塊における不純物濃度が高くなることが分かる。また、上記式(2)により、固相率が高くなる(液相率が低くなる)に従いシリコン融液における不純物濃度が高くなることが分かる。
得られたシリコン塊をたとえば太陽電池用材料として使用する場合、シリコン塊における不純物濃度に基づいてシリコン塊の良否を判断することが好ましい。不純物濃度がCUL以下であるシリコン塊を良品とみなす場合、ルツボ内に残るシリコン融液における不純物濃度はCUL/ke未満であることが好ましい。よって、良品なシリコン塊を生産するためには、高濃度な不純物を含むシリコン融液(シリコン残湯)をルツボ内から取り除くことが好ましい。
従来においては、ルツボ自体を交換することによって、シリコン残湯をルツボ内から取り除いていた。ルツボを交換するためには、炉内を冷却する必要がある。しかし、炉内を冷却するとルツボが破損するので、ルツボの耐久性などが限界となる前に当該ルツボを交換する必要がある。そのため、ルツボ1個当たりから得られる高純度のシリコン塊の量の低下を招く。ルツボは一般に黒鉛からなるため高価であることから、従来においては高純度シリコン塊の製造コストが高かった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで高純度のシリコン塊を製造可能なシリコンの精製方法、吸収ユニット、およびシリコン精製装置を提供することにある。
シリコンの精製方法は、ルツボ内に保持されたシリコン融液内においてシリコン融液よりも高純度なシリコン塊を析出させてシリコン塊をルツボから取り出す工程と、ルツボ内におけるシリコン融液の分量が第1所定量に達したときに、ルツボ内に残留するシリコン残湯に吸収体の少なくとも一部を接触させて吸収体にシリコン残湯を吸収させることによりシリコン残湯をルツボ内から取り除く工程とを備える。
シリコン残湯をルツボ内から取り除く工程は、ルツボ内におけるシリコン残湯の分量が第1所定量よりも少ない第2所定量に達するまで行われることが好ましい。
シリコン残湯をルツボ内から取り除く工程の後に、シリコン原料およびシリコン融液の少なくとも一方をルツボ内に補充する工程をさらに備えることが好ましい。また、シリコン原料およびシリコン融液の少なくとも一方をルツボ内に補充した後に、シリコン塊をルツボから取り出す工程を再び行なうことが好ましい。
シリコン原料は、シリコン塊をルツボから取り出す工程で得られたシリコン塊のうち、ルツボ内におけるシリコン融液の分量が第1所定量よりも多い第3所定量以下であって第1所定量以上であるときにシリコン融液内で析出したシリコン塊であることが好ましい。
ルツボから取り出す工程は、シリコン融液内に挿入された回転冷却体を回転することにより回転冷却体の表面に析出したシリコン塊を取り出すというものであってもよい。
吸収ユニットは、本発明のシリコンの精製方法で使用され、ルツボ内に残留したシリコン残湯を吸収させるための吸収体と、吸収体を保持するための保持具とを備える。
吸収体は、毛細管現象によりシリコン残湯を吸い上げるように構成されていることが好ましく、より好ましくは炭素繊維からなるフェルトである。
保持具は、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、および黒鉛のうちの少なくとも1つを主成分として含む材料からなることが好ましい。ここで、「保持具は、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、および黒鉛のうちの少なくとも1つを主成分として含む」とは、保持具が、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、および黒鉛のうちの少なくとも1つを90質量%以上含むことを意味する。
シリコン精製装置は、シリコン融液を保持するためのルツボと、本発明の吸収ユニットとを備える。
本発明では、ルツボ内に残留したシリコン残湯の除去に要するコストを低く抑えることができるため、高純度のシリコンを低コストで製造することができる。
本発明のシリコンの精製方法の一例を示すフロー図である。 本発明のシリコン精製装置の一例を示す断面図である。 本発明のシリコン精製装置の別の一例を示す断面図である。 本発明の吸収ユニットが本発明のシリコン精製装置に固定される構造を説明するための断面図である。 本発明の別の吸収ユニットが本発明のシリコン精製装置に固定される構造を説明するための断面図である。 本発明における取り出し工程の一例を示すフロー図である。
以下、本発明のシリコンの精製方法、シリコン精製装置、および吸収ユニットについて図面を用いて説明する。なお、説明の都合上、以下では、シリコン精製装置および吸収ユニットを説明しつつシリコンの精製方法を説明する。また、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
<シリコンの精製方法>
図1は、本発明のシリコンの精製方法の一例を示すフロー図である。図1に示すシリコンの精製方法は、シリコン塊の取り出し工程(以下では単に「取り出し工程」と記す)S101とシリコン残湯の除去工程(以下では単に「除去工程」と記す)S102とを備え、好ましくはシリコンの補充工程(以下では単に「補充工程」と記す)S103を備えるとともに補充工程S103の後に取り出し工程S101を再度行なうというものである。より好ましくは、図1に示すシリコンの精製方法は、取り出し工程S101と除去工程S102と補充工程S103とを繰り返し行なうことである。また、取り出し工程S101、除去工程S102、および補充工程S103のそれぞれを連続して複数回行なっても良い。
<取り出し工程>
取り出し工程S101では、ルツボ内に保持されたシリコン融液内においてシリコン融液よりも高純度のシリコン塊を析出させ、得られたシリコン塊をルツボから取り出す。
高純度のシリコン塊を析出させる方法は特に限定されず、たとえば図2に示すシリコン精製装置を用いることが好ましい。図2は、本発明のシリコン精製方法で使用されるシリコン精製装置の一例を示す断面図である。
図2に示すシリコン精製装置は、気密容器1内に設けられたルツボ3、加熱部材5、および断熱部材7を備え、給気用管11および回転冷却体17をさらに備える。図2に示すシリコン精製装置では、回転冷却体17の内部に冷却流体を流通させることにより回転冷却体17の表面を冷却しながら当該回転冷却体17をルツボ3内のシリコン融液15内で回転させることにより、回転冷却体17の表面にシリコン塊18が析出する。つまり、図1に示すシリコン精製装置は、凝固偏析を利用して高純度のシリコン塊(シリコン塊18)を得るための装置である。
気密容器1の構成は特に限定されない。たとえば、気密容器1は、気密容器1内の気体が気密容器1の外へ漏れることを防止可能に構成されていることが好ましい。その一方で、気密容器1は、回転冷却体17をルツボ3内のシリコン融液15内へ挿入可能に構成されていることが好ましく、給気用管11により不活性ガスなどをルツボ3内へ供給可能に構成されていることが好ましい。
気密容器1の材料は特に限定されない。たとえば、気密容器1は、SUSなどの金属からなり且つ水冷されていることが好ましい。
気密容器1の大きさおよび形状は図2に示す大きさおよび形状に限定されない。しかし、気密容器1内には、ルツボ3と加熱部材5と断熱部材7とが設けられるため、気密容器1は、ルツボ3と加熱部材5と断熱部材7とを収容可能な大きさおよび形状に構成されていることが好ましい。
ルツボ3はシリコン融液15を保持可能に構成されていることが好ましく、ルツボ3の大きさおよび形状は図2に示す大きさおよび形状に限定されない。
ルツボ3の材料は、特に限定されないが、シリコンの融点(たとえば1412℃)以上の温度で安定な材料であることが好ましく、黒鉛、シリカ、石英、炭化ケイ素、アルミナ、またはムライトなどが好適であり、黒鉛、シリカ、石英、または炭化ケイ素などがより好適である。ルツボ3が黒鉛、シリカ、石英、または炭化ケイ素などからなれば、ルツボ3からシリコン融液15への不純物の混入を抑制できる。
ここで、シリコン融液15は、ルツボ3内でシリコン原料を溶融することにより得られたものであっても良いし、ルツボ3とは異なる装置内でシリコン原料を溶融することにより得られたものであっても良い。また、シリコン原料は、多結晶シリコンインゴットから角柱状のシリコンブロックを切り出した際に発生するシリコン端材であっても良いし、金属シリコンから凝固偏析を利用して除去することが難しい不純物(たとえばボロンまたはリンなど)が予め除去されたシリコンであっても良い。
加熱部材5は、ルツボ3の外側に設けられており、ルツボ3およびルツボ3内に保持されたシリコン融液15の少なくとも一方を加熱する。加熱部材5は、シリコン融液15の溶融状態が保持されるようにルツボ3およびシリコン融液15の少なくとも一方を加熱できるのであれば特に限定されず、誘導加熱を利用した加熱装置であっても良いし、抵抗加熱を利用した加熱装置であっても良い。
加熱部材5の材料は、特に限定されないが、シリコンの融点(たとえば1412℃)以上の温度で安定な材料であることが好ましい。加熱部材5が抵抗加熱を利用した加熱装置である場合、加熱部材5の材料は、黒鉛が好適であり、黒鉛からなる稠密材がより好適である。加熱部材5が黒鉛からなれば、加熱部材5からシリコン融液15への不純物の混入を抑制できる。
断熱部材7は、加熱部材5の外側に設けられており、ルツボ3および加熱部材5からの熱の少なくとも一部が気密容器1へ伝わることを防止する。よって、断熱部材7は、気密容器1の内面上に設けられていることが好ましい。
断熱部材7の材料は、特に限定されないが、ルツボ3および加熱部材5からの熱の少なくとも一部が気密容器1へ伝わることを防止可能な材料であることが好ましく、またシリコンの融点(たとえば1412℃)以上の温度で安定な材料であることが好ましい。たとえば、断熱部材7の材料は、黒鉛からなる成形体が好適である。断熱部材7が黒鉛からなる成形体からなれば、断熱部材7からシリコン融液15への不純物の混入を抑制できる。
給気用管11は、アルゴンガスなどの不活性ガスをルツボ3の内部空間内に供給するための管であり、気密容器1の外から気密容器1と断熱部材7とを貫通してルツボ3の内部空間内へ挿入されていることが好ましい。アルゴンガスなどの不活性ガスをルツボ3の内部空間内に供給しながらシリコン塊18を製造すれば、シリコン融液15の酸化を防止できる。
給気用管11の材料は特に限定されないが、給気用管11の先端がルツボ3の内部空間内に挿入されることを考慮すればシリコンの融点(たとえば1412℃)以上の温度で安定な材料であることが好ましく、黒鉛、シリカ、石英、炭化ケイ素、アルミナ、またはムライトなどが好適であり、黒鉛がより好適である。
回転冷却体17は、シリコン塊18を表面に析出させるための部材であり、シリコン融液15内に挿入され且つシリコン融液15内で回転する。回転冷却体17は、軸部17Aと、軸部17Aの先端に設けられた冷却部17Bとを有し、冷却部17Bの表面をシリコンの融点温度よりも低い温度に保持可能に構成されていることが好ましく、たとえば冷却流体(液体であっても良いし気体であっても良い)が冷却部17Bの内部に設けられたノズルから冷却部17Bの内面へ向かって噴出可能に構成されていることが好ましい。
回転冷却体17の材料は特に限定されないが、たとえば黒鉛であることが好ましい。また、回転冷却体17は設定された回転数で回転可能に構成されていることが好ましく、たとえば回転冷却体17の回転数を制御するモータなどが回転冷却体17に接続されていることが好ましい。
図2に示すシリコン精製装置を用いてシリコン原料を精製する方法を示す。加熱部材5によりルツボ3内においてシリコン融液15の溶融状態を保ちつつ、シリコン融液15内に回転冷却体17を挿入して(図6に示す挿入工程S101Aに相当)回転冷却体17を回転させる。冷却部17Bの表面温度はシリコン融液15の温度よりも低いため、シリコン融液15は冷却部17Bの表面で抜熱されて冷却部17Bの表面に析出する。このとき、凝固偏析の原理に従ってシリコン塊18が冷却部17Bの表面に析出するため、シリコン塊18はシリコン融液15よりも高純度となる。
シリコン塊18が表面に析出された回転冷却体17をシリコン融液15から引き上げて、シリコン塊18を回収する(図6に示す回収工程S101Bに相当)。シリコン塊18の回収方法としては特に限定されず、シリコン塊18に物理的衝撃を与えることでシリコン塊18を破砕して冷却部17Bの表面から分離させても良いし、シリコン塊18を切断して冷却部17Bの表面から分離させても良い。
一般に、シリコン原料を精製するにつれて、ルツボ内におけるシリコン融液の量は減少し、シリコン融液における不純物濃度は高くなる。そのため、得られたシリコン塊における不純物濃度は高くなる。
しかし、得られたシリコン塊における不純物濃度が許容される不純物濃度以下であれば、または図2に示すように回転冷却体の表面に高純度のシリコン塊を析出させる場合にシリコン融液内における回転冷却体の浸漬深さが所望値以上であれば、図6に示すように、シリコン融液15内に回転冷却体17を挿入する工程(挿入工程)S101Aと、シリコン塊18が表面に析出された回転冷却体17をシリコン融液15から引き上げてシリコン塊18を回収する工程(回収工程)S101Bとを繰り返し行なうことが好ましい。ここで、図6は、取り出し工程S101の一例を示すフロー図である。
また、挿入工程S101Aおよび回収工程S101Bを繰り返し行うことによりルツボ内のシリコン融液の量が減少したときには、または図2に示すように回転冷却体の表面に高純度のシリコン塊を析出させる場合においてシリコン融液内における回転冷却体の浸漬深さが所望値を下回ったときには、シリコン原料またはシリコン融液15をルツボ3に補充する工程(補充工程)S101Cを行ってから、挿入工程S101Aおよび回収工程S101Bを繰り返し行なうことが好ましい。
シリコン原料またはシリコン融液をルツボ内に補充せずに高純度のシリコン塊の析出および高純度のシリコン塊の回収を繰り返し行なった場合には、シリコン融液における不純物濃度は上記式(2)で表される。シリコン原料またはシリコン融液をルツボ内に補充して高純度のシリコン塊の析出および高純度のシリコン塊の回収を繰り返し行なった場合には、シリコン融液における不純物濃度は上記式(2)と補充されたシリコン原料またはシリコン融液における不純物濃度とを用いて逐次計算可能である。
不純物の偏析係数が十分に小さい場合には、シリコン原料における不純物が全てシリコン融液内に残ると仮定して、シリコン融液における不純物濃度を近似的に計算することができる。すなわち、シリコン原料における不純物濃度をC0とし、ルツボ内に補充されたシリコン原料の累積量をMとし、ルツボ内におけるシリコン融液の量をmとすると、シリコン融液における不純物濃度C1
1=C0×M÷m・・・(4)
で表わされる。得られたシリコン塊における不純物濃度の許容値をCULとし、不純物の実効偏析係数をkeとしたときに、シリコン融液における不純物濃度C1
1≧CUL÷ke・・・(5)
を満たすと、許容量を超える量の不純物がシリコン塊に取り込まれることとなり、よって、シリコン塊の純度低下を招く。したがって、除去工程S102を行なう。
<除去工程>
除去工程S102では、ルツボ内におけるシリコン融液の分量が第1所定量(以下「m1」と表わすことがある)に達したときに、ルツボ内に残留するシリコン残湯に吸収体の少なくとも一部を接触させて吸収体にシリコン残湯を吸収させることによりシリコン残湯を前記ルツボ内から取り除く。このように、本発明においては、炉内からのルツボの取り出しが不要なため、ルツボの耐久性などが限界となる前に当該ルツボが破損して使用できなくなることを防止できる。よって、シリコン残湯の除去に要するコストを低く抑えることができるため、高純度のシリコン塊の製造コストの低減を図ることができる。それだけでなく、除去工程S102の後にシリコン原料またはシリコン融液をルツボに補充してから上記取り出し工程S101を再び行なえば、高純度のシリコン塊を低コストで量産可能となる。
吸収体が有するシリコン残湯の吸収能とルツボへのシリコン残湯の濡れ性との兼ね合いなどから、吸収体にシリコン残湯の全量を吸収させることは難しい。たとえば、ルツボ内におけるシリコン残湯の量が第2所定量(<第1所定量、以下「m2」と表わすことがある)に達するまで、除去工程S102を行なうことが好ましい。これにより、吸収体をルツボの深い位置まで浸漬させなくても良いので、吸収体がルツボの底面などに接触して破損することを防止できる。吸収体が破損またはルツボ内に落下すると、その後にシリコン原料またはシリコン融液をルツボ内に補充しても、シリコン塊の回収の妨げとなる。そのため、吸収体が破損またはルツボ内に落下したときには、ルツボごと交換せざるを得ない。しかし、ルツボ内におけるシリコン残湯の量が第2所定量に達した時点で除去工程S102の実施を停止すれば、吸収体の破損を防止できるため、高純度のシリコン塊の製造コストのさらなる低減に貢献する。
第1所定量は、吸収体によるシリコン残湯の吸収に要するコストと吸収率(m2÷m1)とを勘案して決定することが好ましく、より好ましくは吸収率が高くなるように決定することである。吸収体のサイズおよびルツボのサイズなどからm2>0に設定されたとき、m1を大きくすれば、吸収率が高くなる。しかし、m1が大きくなると、吸収体が吸収するシリコン残湯の絶対量(m1−m2)が多くなるため、多量のシリコン残湯を吸収可能な吸収体の開発が必要となり、吸収体のコスト上昇を招くことがある。したがって、様々なパターンを検証して、m1およびm2を最適化することが好ましい。m1およびm2を最適化する方法としては、たとえば、吸収体のサイズおよびルツボのサイズなどからm2を決定し、m2÷m1≧0.5となるようにm1を決定するという方法が挙げられる。
除去工程S102について具体的に示す。除去工程S102では、吸収体の少なくとも一部をシリコン残湯に接触させ、所定の時間が経過してからその吸収体をシリコン残湯から引き離す。好ましくは、除去工程S102では、吸収体の少なくとも一部をシリコン残湯内に浸漬させ、所定の時間が経過後にその吸収体をシリコン残湯内から引き上げる。
吸収体の少なくとも一部をシリコン残湯に接触させる方法および吸収体をシリコン残湯から引き離す方法は特に限定されないが、たとえば、図3に示すように回転冷却体17の軸部17Aの先端に吸収体31を固定して除去工程S102を行なうことが好ましい。図3は、吸収体が固定されたシリコン精製装置の構成を示す断面図である。
回転冷却体17の軸部17Aの先端に吸収体31を固定して除去工程S102を行うと、シリコン精製装置が備える昇降機構(たとえば回転冷却体17を昇降させる機構)によって、吸収体31の少なくとも一部をシリコン残湯25へ接触させることができるとともに吸収体31をシリコン残湯25から引き離すことができる。これにより、シリコン精製装置に対して吸収体31を昇降させる機構を別途設けなくても良いため、除去工程S102の低コスト化をさらに図ることができ、よって、シリコン塊18の製造コストの更なる低減に貢献できる。
除去工程S102においては、シリコン残湯25の温度はシリコンの融点よりも高いことが好ましく、より好ましくはシリコンの融点よりも50℃以上200℃以下高いことである。これにより、吸収体31にシリコン残湯25を十分に吸収させることができる。また、吸収体31の損傷を招くことなくシリコン残湯25を吸収体31に吸収させることが出来るので、吸収体31の吸収能などが限界となるまで当該吸収体31を使用できる。よって、除去工程S102の高コスト化をさらに防止できるので、シリコン塊18の製造コストのさらなる低減に貢献する。
吸収体31をシリコン残湯25に接触させる時間(吸収体31の接触時間)は、シリコン残湯25の温度、吸収体31の形状、およびシリコン残湯25に対する吸収体31の接触程度(たとえばシリコン残湯25における吸収体31の浸漬深さ)などにより異なるため一概に言えない。たとえば、予備実験を行なって吸収体31の接触時間を最適化させることが好ましい。
吸収体31の構成は特に限定されないが、シリコン残湯25に対する濡れ性、耐熱性およびシリコン残湯25に対する低汚染性などを考慮して、選定されることが好ましい。吸収体31は、毛細管現象によりシリコン残湯25を吸い上げるように構成されていることが好ましく、たとえば炭素繊維からなるフェルトであることが好ましい。
炭素繊維からなるフェルトとしては、嵩密度が0.02g/cm3以上0.3g/cm3以下のものが好適に用いられ、より望ましくは嵩密度が0.05g/cm3以上0.15g/cm3以下のものである。嵩密度が0.02g/cm3以上であれば、毛細管現象によるシリコン残湯25の吸い上げ効果が十分に発揮される。また、フェルトの形状を所定の形状に維持することが可能となる。よって、フェルトに吸収されるシリコン残湯25の量の低減を防止できる。したがって、除去工程S102を効率良く行なうことができるので、シリコン塊18の生産効率が向上する。
嵩密度が0.3g/cm3以下であれば、フェルトにおける隙間の大きさおよび個数を確保できるため、シリコン残湯25をフェルト全体に浸透させることができる。よって、嵩密度が高くなりすぎたことに起因するフェルトへのシリコン残湯25の吸収量の低減を防止できる。したがって、除去工程S102を効率良く行なうことができるので、シリコン塊18の生産効率が向上する。
吸収体31は、保持具によって回転冷却体17の軸部17Aの先端に回転冷却体17の軸部17Aの先端に固定されることが好ましい。図4は吸収体31と保持具32とを有する吸収ユニット30が回転冷却体17の軸部17Aに固定される構造を説明するための断面図である。なお、図4には、回転冷却体17の軸部17Aに関しては、軸部17Aの先端のみを図示している。
図4に示す吸収ユニット30では、吸収体31は筒状の保持具32内に収容されており、保持具32の側壁には、貫通孔32aが形成されている。シリコン残湯25は、貫通孔32aを通って保持具32内へ流入して、保持具32内に設けられた吸収体31に吸収される。
保持具32の材料は、特に限定されないが、たとえば酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、および黒鉛のうちの少なくとも1つを主成分として含むことが好ましい。耐熱性またはシリコン残湯25への低汚染性を考慮すれば、保持具32の材料は、ルツボ3と同一の材料であることが好ましく、たとえば等方性黒鉛であることが好ましい。
吸収ユニット30を回転冷却体17の軸部17Aの先端に固定する方法としては、連結用部材51(連結用部材51は保持具32の側壁の上面に固定されている)に形成された螺子溝に回転冷却体17の軸部17Aの先端を螺合させるという方法(図4参照)であっても良いし、回転冷却体17の軸部17Aの先端に形成された螺子溝に連結用部材51を螺合させるという方法であっても良い。
なお、保持具32は柱状の母材をくりぬいて成形されるため、保持具32の製造コストが高くなるおそれがあり、その結果、シリコン塊18の製造コストを低く抑えることができない場合がある。この不具合を回避するためには、図5に示す保持具42を用いることができる。図5は吸収体31と保持具42とを有する吸収ユニット40が回転冷却体17の軸部17Aに固定される構造を説明するための断面図である。なお、図5には、回転冷却体17の軸部17Aに関しては、軸部17Aの先端のみを図示している。
図5に示す吸収ユニット40では、吸収体31は保持具42の土台部41上に設けられており、土台部41上に設けられた支持棒43が吸収体31に貫通している。このように、吸収ユニット40では、吸収体31の外面は保持具42に覆われていないので、図4に示す吸収ユニット30に比べてシリコン残湯25と吸収体31との接触が容易となり、よって、吸収体31によるシリコン残湯25の吸収速度が向上する。したがって、除去工程S102に要する時間を短縮できるので、シリコン塊18の生産効率が更に向上する。
保持具42の材料については、保持具32の材料と同一のことが言える。また、支持棒43による吸収体31の保持性を考慮すれば、支持棒43は、強度に優れたCC材(カーボンコンポジット材)からなることが好ましい。
吸収ユニット40を回転冷却体17の軸部17Aの先端に固定する方法については、吸収ユニット30を回転冷却体17の軸部17Aの先端に固定する方法と同様のことが言える。
所定の時間(吸収体31の接触時間)が経過したら、吸収体31をシリコン残湯25から引き離す。これにより、吸収体31の温度が低下するので、吸収体31に吸収されたシリコン残湯25は冷却されて凝固する。吸収体31を取り替えたのち吸収体31をシリコン残湯25へ接触させる工程を複数回くりかえしても良い。
<補充工程>
補充工程S103では、シリコン原料およびシリコン融液の少なくとも一方をルツボ内に補充する。このとき、ルツボ内におけるシリコン融液の分量が第1所定量よりも多くなるように、シリコン原料およびシリコン融液の少なくとも一方をルツボ内に補充することが好ましい。
補充工程S103が終了すれば、上記取り出し工程S101を再び行なう。
なお、本発明のシリコン精製方法は、図1に示す方法に限定されない。たとえば、補充工程S103において補充されるシリコン原料は、当該補充工程S103を行なう前に得られたシリコン塊のうち、ルツボ内におけるシリコン融液の分量が第1所定量以上であり第3所定量(>第1所定量)以下であるときにシリコン融液内で析出したシリコン塊であっても良い。第1所定量を上記式(4)および(5)から算出されたm(ルツボ内におけるシリコン残湯の量、上記「第3所定量」に相当する)よりも小さい値に設定した場合、ルツボ内におけるシリコン融液の分量が第1所定量以上であり第3所定量以下であるときに析出されたシリコン塊には許容量を超える不純物が混入することがある。許容量を超える不純物が混入したおそれのあるシリコン塊をシリコン原料として用いて取り出し工程S101を行なえば、許容量を超える不純物が混入したおそれのあるシリコン塊の用途拡大につながるため、シリコン塊18の製造コストの低減に貢献できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、図2に示すシリコン精製装置を用いてシリコンを精製した。図2に示すシリコン精製装置の具体的な構成を示す。SUS製の水冷された気密容器1の内周面上に、成形材(成形材は黒鉛繊維が成形されてなる)からなる断熱部材(厚さ100mm)7が設けられており、断熱部材7の内側には、等方性黒鉛材製の加熱部材5(抵抗加熱ヒーター)が設けられていた。気密容器1の中央であって加熱部材5の内側には、等方性黒鉛材製の円筒形状のルツボ(外径630mm)3が設けられており、このルツボ3は、400kgのシリコン融液を保持可能に構成されていた。黒鉛製の回転冷却体17がルツボ3の直上からルツボ3内のシリコン融液15に浸漬されており、回転冷却体17はその内部において窒素ガス(冷却流体)を流通可能に構成されていた(窒素ガスを流通させる構造は図示せず)。気密容器1内には、給気用管11によりArが導入され、これにより、気密容器1内は、常圧のAr雰囲気となった。
<取り出し工程>
Fe(不純物)を100ppmW含むシリコン原料をルツボ3内に供給してから、加熱部材5によりシリコン原料をルツボ3内で融解させた。これにより、400kgのシリコン融液15が得られた。
回転冷却体17をシリコン融液15内に挿入し、回転冷却体17を回転させた。そして、回転冷却体17の冷却部17Bの表面に15kgのシリコン塊18が析出したら、回転冷却体17をシリコン融液15から取り出して、シリコン塊18を回収した。その後、回転冷却体17をシリコン融液15内に再び浸漬させた。シリコン融液15内への回転冷却体17の浸漬、シリコン塊18の析出、およびシリコン塊18の回収を1サイクルとして、12サイクル行なった。
ルツボ3内のシリコン融液15の質量が220kgまで減少したところで、180kgのシリコン原料をルツボ3に補充し、補充したシリコン原料を溶融した。そして、ルツボ3内のシリコン融液15の質量を400kgとして、上記サイクルを行なった。
上記サイクルおよびシリコン原料の補充を繰り返し行なうと、ルツボ3内に残留するシリコン融液において不純物が濃縮され、その結果、凝固偏析を利用してシリコンを精製しても純度に優れたシリコン塊を得にくい。本実施例では、Feに対する実効偏析係数keが5×10-5となる条件でシリコンを精製し、シリコン塊18における不純物濃度の許容値CULを0.1ppmWとしたので、シリコン残湯25における不純物濃度の許容値は2000ppmWとなった(上記式(5)参照)。また、本実施例では、シリコン融液15への回転冷却体17の浸漬深さを確保するという観点から、ルツボ3内におけるシリコン融液15の分量が220kg(第3所定量(m3))に達するまで回転冷却体17をシリコン融液15内へ浸漬させることとした。よって、シリコン原料の累積量Mが4400kgであり、引き上げたシリコン塊が4180kgとなった時点で、シリコン残湯(220kg)におけるFe濃度は2000ppmWであった。なお、シリコン原料におけるFe濃度のバラツキおよび精製条件による実効偏析係数のバラツキなどが存在するため、シリコン残湯を吸収体に吸収させるタイミングを決定するという目的のために上記計算を行なったに過ぎず、得られたシリコン塊における不純物濃度をICP分析により測定して良否判断を行なった。
シリコン融液15の分量が220kgとなるとシリコン融液15への回転冷却体17の浸漬深さを確保することは難しかったが、シリコン融液15内への回転冷却体17の浸漬、シリコン塊の析出、およびシリコン塊の回収という上記サイクルをさらに行なって100kgのシリコン塊を回収した。なお、このシリコン塊は、それまでに得られたシリコン塊18とは分別して回収された。そして、シリコン融液15の分量が120kg(第1所定量(m1))に達したら、シリコン残湯25をルツボ内から除去する除去工程を行なった。
<除去工程>
具体的には、炭素繊維からなるフェルトを巻き回して円筒状(直径が260mmであり、高さが320mm)の吸収体31を作製し、図4に示す保持具(等方性黒鉛製)32内に収容した。このようにして得られた吸収ユニット30を、連結用部材51を介して回転冷却体17の軸部17Aの先端に固定した。シリコン残湯25の温度を1600℃に保った状態で、保持具32の底面から100mmの深さまで吸収ユニット30をシリコン残湯25内に浸した。5分間経過してから、吸収ユニット30をシリコン残湯25内から引き上げ、その吸収ユニット30を気密容器1内で1時間冷却してから気密容器1の外へ取り出した。吸収ユニット30の質量を測定すると、吸収ユニット30の質量はシリコン残湯25内に浸漬する前に比べて40kg増加したことが分かった。すなわち、吸収体31が40kgのシリコン残湯25を吸い上げたことが分かった。
上記方法と同様の方法でシリコン残湯25を吸収体31に吸収させ、合計80kgのシリコン残湯25を吸収体31に吸収させた。ルツボ3内におけるシリコン残湯25の質量が40kg(第2所定量、m2)に達した時点で、除去工程を終了させた。なお、除去工程の開始時、シリコン残湯25におけるFe濃度は約3666ppmWと想定されるが、除去工程の終了時においても、ルツボ3内のシリコン残湯25におけるFe濃度は除去工程の開始時と同一である。
<補充工程>
シリコン融液15の分量が220kgとなってから回収されたシリコン塊100kgとシリコン原料(Fe(不純物)を100ppmW含むシリコン)260kgとをルツボ3内に補充して、ルツボ3内で溶融させた。なお、シリコン融液15の分量が220kgとなってから回収されたシリコン塊におけるFe濃度が0.2ppmWであることを想定すると、補充後のシリコン融液15におけるFe濃度は、
{(3666ppmW×40kg)+(0.2ppmW×100kg)+(100ppmW×260kg)}÷400kg=431ppmW
となる。
その後、上記取り出し工程を行ない、シリコン融液15内への回転冷却体17の浸漬、シリコン塊18の析出、およびシリコン塊18の回収を1サイクルとして、14サイクル行なった。これにより、2520kgのシリコン塊18が回収され、ルツボ3内のシリコン残湯25におけるFe濃度が2000ppmとなった。
その後、上記除去工程、上記補充工程、および上記取り出し工程を繰り返し行なった。1ヶ月が経過した時点でシリコンの精製を停止し、気密容器1内が冷却してからルツボ3を交換した。そして、シリコンの精製開始からシリコンの精製を停止するまでの間に使用したルツボ3および吸収体31のコスト(シリコン塊18の単位質量あたりのコスト)を算出した。
<実施例2>
実施例2では、図5に示す保持具42を用いて吸収体31を保持したことを除いては上記実施例1と同様の方法にしたがって、シリコンを精製した。
本実施例における保持具42は直径が300mmの皿状の土台部(等方性黒鉛製)41と直径が20mmの支持棒(カーボンコンポジット材)43とを有し、支持棒43の一端は土台部41に螺合されており、支持棒43の他端は連結用部材51に螺合されていた。なお、螺子溝が形成された部分を除く支持棒43の長さは330mmであった。
炭素繊維からなるフェルトを、支持棒43の周囲に巻き付けて炭素繊維製の紐で支持棒43に括りつけた。これにより、円筒状の吸収体(直径が265mmであり、高さが320mm)31が支持棒43に固定されてなる吸収ユニット40が得られた。そして、シリコンの精製開始からシリコンの精製を停止するまでの間に使用したルツボ3および吸収体31のコスト(シリコン塊18の単位質量あたりのコスト)を算出した。
<比較例>
比較例では、シリコン原料の累積投入量を4400kgとしてシリコンを精製し、4180kgのシリコン塊を回収した。シリコン残湯におけるFe濃度が2000ppmWとなった時点で、除去工程を行なわずにシリコンの精製を停止させた。気密容器1内が冷却してからルツボ3を交換した。そして、シリコンの精製開始からシリコンの精製を停止するまでの間に使用したルツボ3および吸収体31のコスト(シリコン塊18の単位質量あたりのコスト)を算出した。
<結果と考察>
結果を表1に示す。なお、表1では、比較例を基準として実施例1〜2の結果を記している。
Figure 0005512647
表1に示すように、実施例1では、比較例に比べて、シリコン塊18の単位質量あたり77円、コストが低下した。この理由としては次に示すことが考えられる。比較例1では、シリコン残湯における不純物濃度が高くなるとルツボを交換したため、耐久性などが低下する前にルツボを交換することがあった。しかし、実施例1では、除去工程を行なうので、シリコン残湯における不純物濃度が高くなるたびにルツボを交換しなくても良く、よって、耐久性などが低下するまでルツボを使用することができた。これにより、実施例1では、比較例1に比べて、吸収体の追加によるコスト増よりもルツボの交換頻度の低下によるコスト減の方が大きくなり、高純度のシリコンの製造コストが低減した。
実施例2では、実施例1よりも、シリコン塊18の単位質量あたりのコストがさらに低下した。この理由としては、実施例2では、実施例1に比べて保持具42のコストが低下したことが挙げられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 気密容器、3 ルツボ、5 加熱部材、7 断熱部材、11 給気用管、15 シリコン融液、17 回転冷却体、17A 軸部、17B 冷却部、18 シリコン塊、25 シリコン残湯、30,40 吸収ユニット、31 吸収体、32,42 保持具、32a 貫通孔、41 土台部、43 支持棒、51 連結用部材。

Claims (9)

  1. ルツボ内に保持されたシリコン融液内において前記シリコン融液よりも高純度なシリコン塊を析出させて、前記シリコン塊を前記ルツボから取り出す工程と、
    前記ルツボ内における前記シリコン融液の分量が第1所定量に達したときに、前記ルツボ内に残留するシリコン残湯に吸収体の少なくとも一部を接触させて前記吸収体に前記シリコン残湯を吸収させることにより前記シリコン残湯を前記ルツボ内から取り除く工程とを備え
    前記ルツボから取り出す工程は、前記シリコン融液内に挿入された回転冷却体を回転することにより前記回転冷却体の表面に析出したシリコン塊を取り出すというものであるシリコンの精製方法。
  2. 前記シリコン残湯を前記ルツボ内から取り除く工程は、前記ルツボ内における前記シリコン残湯の分量が前記第1所定量よりも少ない第2所定量に達するまで行われる請求項1に記載のシリコンの精製方法。
  3. 前記シリコン残湯を前記ルツボ内から取り除く工程の後に、シリコン原料およびシリコン融液の少なくとも一方を前記ルツボ内に補充する工程をさらに備え、
    前記シリコン原料および前記シリコン融液の少なくとも一方を前記ルツボ内に補充した後に、前記シリコン塊を前記ルツボから取り出す工程を再び行なう請求項1または2に記載のシリコンの精製方法。
  4. 前記シリコン原料は、前記シリコン塊を前記ルツボから取り出す工程で得られたシリコン塊のうち、前記ルツボ内における前記シリコン融液の分量が前記第1所定量よりも多い第3所定量以下であって前記第1所定量以上であるときに前記シリコン融液内で析出したシリコン塊である請求項3に記載のシリコンの精製方法。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のシリコンの精製方法で使用され、
    ルツボ内に残留したシリコン残湯を吸収させるための吸収体と、
    前記吸収体を保持するための保持具とを備えた吸収ユニット。
  6. 前記吸収体は、毛細管現象により前記シリコン残湯を吸い上げるように構成されている請求項に記載の吸収ユニット。
  7. 前記吸収体は、炭素繊維からなるフェルトである請求項またはに記載の吸収ユニット。
  8. 前記保持具は、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、および黒鉛のうちの少なくとも1つを主成分として含む材料からなる請求項のいずれかに記載の吸収ユニット。
  9. シリコン融液を保持するためのルツボと、
    前記ルツボ内に残留したシリコン残湯を吸収させるための請求項のいずれかに記載の吸収ユニットとを備えたシリコン精製装置。
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