JP5508797B2 - 忌避剤 - Google Patents

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Description

本発明は、樹木精油を徐々に放出する忌避剤に関し、特に、樹木精油の保持材料に生分解性ポリマーを用いた忌避剤に関する。
従来、例えば、農園や公園などにおける害虫・動物駆除には、農薬や忌避薬剤の散布など多大な労力を要してきた。これらの問題を解決する一手段として、例えば、忌避成分を徐々に放出し、長期間にわたりその効果を維持することが可能な徐放剤を挙げることができる。
例えば、以下の特許文献1には、超臨界流体を用いて、性フェロモン剤を樹脂成形体又は溶融樹脂中に含浸させる技術が記載され、さらに環境面から基材に生分解性の樹脂を用いることが記載されている。また、特許文献2には、超臨界二酸化炭素を用いて、テルペン系忌避成分の一種として知られているd−リモネンを生分解性のポリ乳酸共重合体に含浸させる技術が記載されている。
特開2002−356403号公報 特開2008−037858号公報
しかしながら、従来の徐放剤は、単位時間当たりの忌避成分の放出量が安定せず、忌避剤として長期間機能しないことがあった。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、生分解性を有しつつ、優れた徐放能を有し、長期間使用が可能な忌避剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、徐放対象成分としてα-ピネンを主成分とする樹木精油を用い、基材としてポリ乳酸共重合体を用いることにより、樹木精油を基材の内部まで含浸させることができ、放出量をほぼ一定にすることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る忌避剤は、L−ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとδ−バレロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとテトラメチレンカーボネートとの共重合体、及びL−ラクチドと1,5−ジオキセパン−2−オンとの共重合体から選択される少なくとも1種から構成されるポリ乳酸共重合体に、α-ピネンを主成分とする樹木精油を含浸させてなることを特徴としている。
また、本発明に係る忌避剤の製造方法は、L−ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとδ−バレロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとテトラメチレンカーボネートとの共重合体、及びL−ラクチドと1,5−ジオキセパン−2−オンとの共重合体から選択される少なくとも1種から構成されるポリ乳酸共重合体に、α-ピネンを主成分とする樹木精油を含浸させることを特徴としている。
本発明によれば、徐放対象成分としてα-ピネンを主成分とする樹木精油を用い、基材としてL−ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとδ−バレロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとテトラメチレンカーボネートとの共重合体、及びL−ラクチドと1,5−ジオキセパン−2−オンとの共重合体から選択される少なくとも1種から構成されるポリ乳酸共重合体を用いることにより、樹木精油を内部まで含浸させることができ、放出量をほぼ一定にすることができる。よって、長期間にわたり安定的に忌避成分を放出させることができる。
PLLArVL(組成比85/15)とPLLA(H440)の加水分解試験とガス測定の結果を示すグラフである。 プロティナーゼKによるPLLA(H440)の酵素分解試験と残存する精油含量の結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の具体例として示す忌避剤は、ポリ乳酸共重合体からなる基材に、α-ピネンを主成分とする樹木精油を含浸させるようにしたものである。α-ピネンは、ヒノキやスギの木などに含まれているテルペン系炭化水素であり、一般に昆虫などに対して忌避効果を有する。
ポリ乳酸共重合体は、L−ラクチド(以下、LLAと略す。)と他の環状化合物とを開環共重合することにより得られる。具体的には、所定量のLLAと他の環状化合物とを、モノマーとしてシュレンクチューブに仕込み、触媒を加え、脱気とアルゴンガス置換をした後、所定温度のオイルバスにて開環共重合させることにより得られる。
他の環状化合物としては、グリコリド、D,L−ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクト、ε−カプロラクトン、DL−マバロノラクトン、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5−ジオキセパン−2−オン、モルフォリン−2,5−ジオン、3,6−ジメチルモルフォリン−2,5−ジオン、(R)−or(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノライド(MOHEL)、エチレンオキシド、5−メチル−5−ベンジロキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン等が挙げられる。
このようなポリ乳酸共重合体の中でも、LLAとε−カプロラクトンとの共重合体(以下、PLLArCLと略す。)、LLAとδ−バレロラクトンとの共重合体(以下、PLLArVLと略す。)、LLAとテトラメチレンカーボネートとの共重合体(以下、PLLArTEMCと略す。)、及びLLAと1,5−ジオキセパン−2−オンとの共重合体(以下、PLLArDXOと略す。)は、特に、樹木精油の含浸性が高い。
また、ポリ乳酸共重合体は、LLAが80〜91モル%の割合で重合されたものであることが好ましい。この範囲の割合で重合することにより、α-ピネンを主成分とする樹木精油の含浸量を増加させることができる。つまり、徐放期間内に高濃度のα-ピネンを放出させることが可能となる。
また、ポリ乳酸共重合体からなる基材の形状は、目的に応じて成形することが好ましいが、含浸量を増加させるためには、フィルム状であることが好ましい。
α-ピネンを主成分とする樹木精油のポリ乳酸共重合体への注入は、一般的な混練法や溶媒溶解法を用いることができるが、超臨界流体を用いた超臨界含浸法を用いることが好ましい。これにより、低沸点化合物を含浸することができる。また、溶媒溶解法のように、残存有機溶媒や溶媒除去時の樹木精油の揮発が問題となることがない。
超臨界流体を用いた超臨界注入法は、具体的には、基材と樹木精油とを高圧セルに封入し、所定の温度及び圧力に設定するとともに、例えば二酸化炭素を高圧セルに供給した後、超臨界二酸化炭素(scCO)の状態にし、この状態を所定時間放置して、樹木精油の担持を行うものである。そして、樹木精油担持後、背圧弁を解放し圧力を低下させることによってscCOを気体の状態に戻し、基材から放散除去し、樹木精油が担持された基材を得る。なお、超臨界流体は、樹木精油の沸点、LLAとCLとの共重合体の融点等に応じて、二酸化炭素(臨界温度:304.1K,臨界圧力:7.38MPa)、エタン(臨界温度:305.45K,臨界圧力:18.7MPa)、窒素(臨界温度:126K,臨界圧力:3.4MPa)等を用いることができる。
このようにして得られる忌避剤のα-ピネンの含浸率は、4〜12モル%であることが好ましい。α−ピネンの含浸率が4モル%以上であることにより、忌避剤として十分機能する。また、α−ピネンの含浸率が12%を越える忌避剤を作製することは技術的に困難である。
以下、実施例について、次に挙げる実験を参照してさらに説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.α−ピネンの含浸実験 (表1、2)
2.α−ピネン濃度に対する含浸率の測定 (表3)
3.放出ガス量の測定 (図1)
4.酵素分解試験 (図2)
5.まとめ
<1.α−ピネンの含浸実験>
ポリ乳酸共重合体からなる基材として、L−ラクチド(以下、LLAと略す。)とε−カプロラクトン(以下、CLと略す。)との共重合体(以下、PLLArCLと略す。)、LLAとδ−バレロラクトン(以下、VLと略す。)との共重合体(以下、PLLArVLと略す。)、LLAとテトラメチレンカーボネート(以下、TEMCと略す。)との共重合体(以下、PLLArTEMCと略す。)、及びLLAと1,5−ジオキセパン−2−オン(以下、DXOと略す。)との共重合体(以下、PLLArDXOと略す。)を用意した。
また、他の基材として、ポリL−ラクチド(以下、PLLAと略す。)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、PBSAと略す。)、ポリブチレンサクシネート(以下、PBSと略す。)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、PBATと略す。)、及びポリエチレンサクシネート(以下、PESと略す。)を用意した。
これらの各基材にα-ピネンを主成分(含有量92%)とする樹木精油を含浸させ、その含浸量を測定した。
(実施例1)所定量のLLA((3S)-cis-3,6-Dimethyl-1,4-dioxane-2,5-dione:Sigma-Aldrich社製)とCL(特級、和光純薬工業(株)社製)とをモノマーとして、シュレンクチューブ(φ16mm×110mm:二葉理化製作所社製)に仕込んだ。触媒としてStannous 2-Ethyl-Hexanoate(Sigma-Aldrich社製)を加え、脱気とアルゴンガス置換をした後、150℃のオイルバスにて24時間重合を行い、PLLArCLを合成した。この共重合体の組成比(LLA/CL)をH NMR(核磁気共鳴装置:JNM-ECP400、日本電子(株)社製)により測定したところ、91/9であった。また、このサンプルをフィルム厚さ100μmのフィルム状に成形した。
PLLArCLへのα−ピネンの含浸は、超臨界二酸化炭素流体装置((株)AKICO社製)により実施した。ステンレス製耐圧容器(0.5L)にPLLArCL0.3g、及び耐圧容器内の濃度が4.0g/Lになるようにα−ピネンをセットし、scCO雰囲気下(温度40℃、圧力20MPa)で3時間攪拌(100rpm)した。その後、圧力を3時間かけて緩やかに減圧し、サンプルを耐圧容器から取り出し、重量を測定した。注入処理後のサンプルには、α−ピネンの他に二酸化炭素が含まれているため、α−ピネンの注入量をH NMR(核磁気共鳴装置:JNM-ECP400、日本電子(株)社製)により測定した。
(実施例2)組成比(LLA/CL)が81/19のPLLArCLを基材に用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例3)実施例1と同様にCLの代わりにVL(特級、和光純薬工業(株)社製)を用いて、組成比(LLA/VL)91/9のPLLArVLを合成し、これを基材として、同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例4)組成比(LLA/VL)が85/15のPLLArVLを基材に用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例5)実施例1と同様にCLの代わりにTEMC(東京化成工業(株)社製)を用いて、組成比(LLA/TEMC)89/11のPLLArTEMCを合成し、これを基材として、同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例6)組成比(LLA/TEMC)が80/20のPLLArTEMCを基材に用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例7)実施例1と同様にCLの代わりにDXO(東京化成工業(株)社製)を用いて、組成比(LLA/DXO)90/10のPLLArDXOを合成し、これを基材として、同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例8)組成比(LLA/DXO)が83/17のPLLArDXOを基材に用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(比較例1)基材にPLLA(H100)(三井化学(株)社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(比較例2)基材にPLLA(H440)(三井化学(株)社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(比較例3)基材にPBSA(昭和高分子(株)社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(比較例4)基材にPBS(昭和高分子(株)社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(比較例5)基材にPBAT(BASFジャパン(株)社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(比較例6)基材にPES((株)日本触媒社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてα−ピネンを含浸した。
表1に実施例1〜8及び比較例1〜6の実験結果を示す。また、表2に各ポリマーの熱的特性を示す。これらの熱的特性は、DSC(示差走査熱量計:Thermo plus2/DSC8230、(株)リガク社製)により測定した。
Figure 0005508797
Figure 0005508797
ポリ乳酸共重合体(PLLArCL、PLLArVL、PLLArTEMC、PLLArDXO)及びPLLAを除く4種(PBSA、PBS、PBAT、PES)のポリマーは、精油含浸率がPLLAやポリ乳酸共重合体と比べて低く、最も高いもので1.9%のPBSAやPBATであった(比較例3〜6)。PLLA(H100、H440)は、上記4種のブチレン系あるいはエチレン系の生分解性ポリマーと比べて含浸率は高く、H100、H440の含浸率は、それぞれ3.9%、5.4%となっており、融点、融解熱、ガラス転移点が含浸率に影響しているものと考えられる(比較例1、2)。
ポリ乳酸共重合体については、PLLArDXOを除く共重合体で含浸率はPLLAよりも高く、中でも組成比が80/20のPLLArTEMCは含浸率が8.1%となっており、PLLA(H440)よりも1.5倍、さらにPLLA(H100)よりも2.1倍含浸率が増加した(実施例6)。PLLArTEMC(80/20)は、融点の存在しない非晶性ポリマーであることから含浸実験で融解が見られた。融解が見られなく、含浸率の最も高いポリ乳酸共重合体はPLLArCL(91/9)であり、含浸率は6.6%であった(実施例1)。
特開2008−037858号公報では、同じ条件(温度40℃、圧力20MPa、処理時間3時間)でPLLArCL(85/15)に同じテルペン系炭化水素であるd−リモネンを3.19%含浸させることができた。一方、今回の実験では、組成比91/9あるいは81/19のPLLArCLにα−ピネンを含浸させたところ、その含浸率はそれぞれ、6.6%(2.1倍)、5.8%(1.8倍)でかなり含浸量を高めることができた(実施例1、2)。
また、特開2008−037858号公報において、PLLArCL(85/15)よりも高濃度でd−リモネンを含浸させることのできるPLLArTMC(86/14)とPLLArTEMC(81/19)の含浸率はほぼ同じで、それぞれ5.35%、5.28%であった。一方、今回の実験では、PLLArCLと同様に、α−ピネンのPLLArTEMC(80/20)への含浸率は8.1%と1.5倍に増加した(実施例6)。
この含浸実験から分かるように、ポリ乳酸共重合体を基材に用いることにより、α−ピネンを主成分とする樹木精油の含浸量を高めることができる。
<2.α−ピネン濃度に対する含浸率の測定>
含浸率に関する因子としてα−ピネン濃度について検討した。なお、ここでは、基材にPLLA(H440)、PLLArCL(91/9)、PLLArVL(85/15)、PLLArTEMC(89/11)、PLLArDXO(90/10)を用いて含浸を行った。
(実施例9)所定量のLLA((3S)-cis-3,6-Dimethyl-1,4-dioxane-2,5-dione:Sigma-Aldrich社製)とCL(特級、和光純薬工業(株)社製)とをモノマーとして、シュレンクチューブ(φ16mm×110mm:二葉理化製作所社製)に仕込んだ。触媒としてStannous 2-Ethyl-Hexanoate(Sigma-Aldrich社製)を加え、脱気とアルゴンガス置換をした後、150℃のオイルバスにて24時間重合を行い、PLLArCLを合成した。この共重合体の組成比(LLA/CL)をH NMR(核磁気共鳴装置:JNM-ECP400、日本電子(株)社製)により測定したところ、91/9であった。また、このサンプルをフィルム厚さ100μmのフィルム状に成形した。
PLLArCL(91/9)へのα−ピネンの含浸は、超臨界二酸化炭素流体装置((株)AKICO社製)により実施した。ステンレス製耐圧容器(0.5L)にPLLArCL(91/9)0.3g、及び耐圧容器内の濃度が20.0g/Lになるようにα−ピネンをセットし、scCO雰囲気下(温度40℃、圧力20MPa)で3時間攪拌(100rpm)した。その後、圧力を3時間かけて緩やかに減圧し、サンプルを耐圧容器から取り出し、重量を測定した。含浸処理後のサンプルには、α−ピネンの他に二酸化炭素が含まれているため、α−ピネンの含浸量をH NMR(核磁気共鳴装置:JNM-ECP400、日本電子(株)社製)により測定した。
(実施例10)組成比(LLA/VL)が85/15のPLLArVLを基材に用いた以外は、実施例9と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例11)組成比(LLA/TEMC)が89/11のPLLArTEMCを基材に用いた以外は、実施例9と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(実施例12)組成比(LLA/DXO)が90/10のPLLArDXOを基材に用いた以外は、実施例9と同様にしてα−ピネンを含浸した。
(比較例7)PLLA(H440)を基材に用いた以外は、実施例9と同様にしてα−ピネンを含浸した。
実施例9〜12及び比較例7の実験結果を表3に示す。
Figure 0005508797
精油濃度4.0g/Lの時、PLLA(H440)の含浸率は5.4%であったが、精油濃度を20.0g/Lに増加させて実験を行ったところ含浸率は11.1%(2.1倍)にまで増加した(比較例7)。ほかのポリ乳酸共重合体を用いた実験においても精油充填量を増加させたところ含浸率は1.7〜2.1倍増加した(実施例9〜12)。以上のことから、精油濃度が含浸率に大きく影響を及ぼすことが確認できた。
精油濃度4.0g/Lの実験(実施例1〜8)では、実験後に耐圧容器内に精油は残存していなかったが、精油濃度20.0g/Lの実験(実施例9〜12及び比較例7)においては、実験後に、精油が少量残存していたことから、精油濃度4.0g/Lでは、精油はscCOに完全に溶解するが、20.0g/Lでは飽和状態になっていたことが考えられる。以上のことから、濃度をこれ以上上げても含浸率はほとんど変わらないものと予想され、含浸率の上限が12%程度であることが予想される。
<3.放出ガス量の測定>
(実施例13)実際に放出されるガス状態の精油量を評価するために、ポリマーの分解過程において、発生したガス量をGC(ガスクロマトグラフ:GC-14B、(株)島津製作所社製)により測定した。ポリマーの分解は、1L容のテトラバックにリン酸緩衝溶液(pH7)50mlと精油を含浸させたポリマーとしてPLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)280mgを入れ、37℃で加水分解を行った。所定の日数ごとにバック内のガスを採取し、GCで測定することにより精油の放出ガス量(ppm)を求め、徐放性について評価した。
(実施例14)精油を含浸させたポリマーにPLLArVL(組成比85/15)(精油含量6.0%)を用いた以外は、実施例13と同様に分解試験を行い、ガス量を測定した。
(比較例8)精油を含浸させたポリマーにPLLA(H440)(精油含量10.7%)を用いた以外は、実施例13と同様に分解試験を行い、ガス量を測定した。
図1は、PLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)、PLLArVL(組成比85/15)(精油含量6.0%)、PLLA(H440)(精油含量10.7%)の加水分解試験とガス測定の結果を示すグラフである。図中の実線はポリマーの残存重量率を、破線は放出されたガス量を表している。
(比較例8について)PLLA(H440)は、加水分解により徐々に分解されており、7日、28日、56日後にそれぞれ残存重量率は95.3%、92.1%、91.1%となっており、この分解に伴い放出ガス量は7日で530ppmとなり、56日後に1400ppmにまで増加した。PLLA(H440)に含浸させた精油は10.7%(重量換算量30.0mg)であり、この精油が全て放出された場合、最大で濃度は4900ppmとなる。56日以降の分解で、さらに放出ガス量は増加するものと考えられる。しかし、PLLA(H440)の約500日の分解時間のうち、約200日で全て放出されてしまうことになる。これは、精油がPLLAの表面にだけ含浸し、内部まで十分に含浸されていないからだと推測できる。
(実施例13について)PLLA(H440)(精油含量10.7%)と徐放性を比較するために精油含量がほぼ同じPLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)を用いて同様の分解試験を行い、比較した。PLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)は、7日、28日、56日後にそれぞれ残存重量率は約93%、約73%、約50%となっており、PLLA(H440)と同様に分解に伴い、放出ガス量は増加した。PLLA(H440)と精油含浸率がほぼ同じPLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)は、PLLA(H440)よりも加水分解速度が速かったことから、同時間での放出ガス濃度はPLLA(H440)よりもかなり高かった。7日、28日、56日後の放出ガス量の差は100ppm、560ppm、800ppmとなっており、時間の経過とともに放出ガス量の差は拡大する傾向にあった。PLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)から放出されたガス量は、56日後で2200ppmであったが、このポリマー中には4800ppm相当の精油が含浸していることから、56日以降の分解においても発生ガス量は増加するものと推測できる。また、PLLArVL(組成比85/15)の約100日の分解時間で全て放出されることから、精油が内部まで十分に含浸されていると推測できる。よって、PLLArVL(組成比85/15)の分解に伴う単位時間当たりの忌避成分の放出量をほぼ一定に保つことができる。
(実施例14について)PLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)よりも精油含量が低いPLLArVL(組成比85/15)(精油含量6.0%)を用いて同様の分解試験を行い、比較した。PLLArVL(組成比85/15)(精油含量6.0%)は、PLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)の56%しか精油を含有していないため、分解中の放出ガス量は、PLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)と比べて44%〜55%の範囲内であった。28日以降に限って言えば、PLLArVL(組成比85/15)(精油含量6.0%)のPLLArVL(組成比85/15)(精油含量10.4%)に対する含量の割合(56%)は、放出されたガス量の割合(53%〜55%)にほぼ一致していた。すなわち、実施例13と同様、精油が内部まで十分に含浸されていると推測できる。よって、PLLArVL(組成比85/15)の分解に伴う単位時間当たりの忌避成分の放出量をほぼ一定に保つことができる。
放出ガス量の測定結果から、ポリ乳酸共重合体は、単独重合体(PLLA)よりも樹木精油を内部まで含浸させ易いものと推定され、分解に伴う単位時間当たりの忌避成分の放出量をほぼ一定に保つことができることが分かる。
<4.酵素分解試験>
α−ピネンが含浸された忌避剤とd−リモネンが含浸された忌避剤との分解性及び徐放性の違いを明らかにするために、忌避成分が内部まで含浸しにくいPLLAを基材に用い、PLLAに対して高い分解活性を示す酵素の一つであるプロティナーゼK(PTK)による酵素分解試験を行った。
各忌避剤の分解性及び徐放性は、ポリマーの残存重量とポリマー中に残存する精油含量によりそれぞれ評価した。精油含量は、H NMR(核磁気共鳴装置:JNM-ECP400、日本電子(株)社製)により測定した。
(実施例15)α−ピネンを含浸させたPLLA(H440)をトリシン緩衝溶液(pH8)中においてPTKにより37℃で酵素分解させた。
(比較例9)d−リモネンを含浸させたPLLA(H440)をトリシン緩衝溶液(pH8)中においてPTKにより37℃で酵素分解させた。
図3は、PTKによるα−ピネン含有のPLLA(H440)、d−リモネン含有のPLLA(H440)の酵素分解試験と残存する精油含量の結果を示すグラフである。図中の実線は各ポリマーの分解曲線(残存重量率)を、破線はポリマー中のα−ピネン(□)及びd−リモネン(○)含量を表している。ポリマーの残存重量率は、分解前のポリマー量に対する分解後のポリマー量の割合を、分解過程中のα−ピネン及びd−リモネンの含量は、分解前のポリマー中の含有量に対する分解後の含有量の割合で表している。
α−ピネンまたはd−リモネンをそれぞれ含浸させたポリ乳酸の分解性はほとんど同じであったが、分解過程におけるポリマー中に残存する精油含量(%)は、かなりの差がみられ、ポリマーの残存重量率が70%前後に達する40時間までは、ポリマーに含有のα−ピネンとd−リモネンで15〜18%の差であった。
以上のことから、テルペン化合物を忌避成分として用いる場合、d−リモネンは分解初期において、放出量が多いことからd−リモネンを含浸させたポリマーは短期間で使用しなければならないが、これに対して、α−ピネンはd−リモネンよりも単位時間当たりの放出率が少なく、α−ピネン含量の変化量はd−リモネンの場合よりも小さいことから、徐放性は安定しているといえる。また、α−ピネンは、d−リモネンに比べて基材内部まで含浸し易いものと推定できる。
<5.まとめ>
これらの結果をまとめると、α−ピネンはd−リモネンと同じテルペン系忌避化合物であるが、他の実験条件を全て同じとして実験を行った場合、d−リモネンよりも含浸量を約2倍増加させることができることが分かった。さらに、放出性はd−リモネンを含浸させたものよりもα−ピネンを含浸させた方が安定していた。よって、ポリ乳酸共重合体にα−ピネンを含浸させた忌避剤は、d−リモネンよりも高濃度で忌避成分であるα−ピネンを放出することができ、かつ、長期間の使用に耐えうる優れた徐放性を有する。

Claims (3)

  1. L−ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとδ−バレロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとテトラメチレンカーボネートとの共重合体、及びL−ラクチドと1,5−ジオキセパン−2−オンとの共重合体から選択される少なくとも1種から構成されるポリ乳酸共重合体に、α-ピネンを主成分とする樹木精油を含浸させてなる忌避剤。
  2. 上記ポリ乳酸共重合体は、L−ラクチドが80〜91モル%の割合で重合されてなる請求項記載の忌避剤。
  3. L−ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとδ−バレロラクトンとの共重合体、L−ラクチドとテトラメチレンカーボネートとの共重合体、及びL−ラクチドと1,5−ジオキセパン−2−オンとの共重合体から選択される少なくとも1種から構成されるポリ乳酸共重合体に、α-ピネンを主成分とする樹木精油を含浸させる忌避剤の製造方法。
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