以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4間に配置されている硬化物層3とを備える。硬化物層3は、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している。硬化物層3は、接着剤を硬化させることにより形成されている。接続構造体1では、硬化前の接着剤として、ペーストが用いられており、かつ該ペーストは導電性粒子5を含む異方性導電材料である。すなわち、接続構造体1では、導電性粒子5を含む異方性導電ペーストが用いられている。
第1の接続対象部材2は上面2aに、複数の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4aに、複数の電極4bを有する。第1の接続対象部材2の電極2bと第2の接続対象部材4の電極4bとは、電気的に接続されている。接続構造体1では、電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。電極2bと電極4bとは導電性粒子を介さずに、直接接続されていてもよい。この場合に、導電性粒子を含まない接着剤を用いてもよい。
硬化物層3は、第1の接続対象部材2側に第1の硬化物層部分3aと、第2の接続対象部材4側に第2の硬化物層部分3bとを有する。第1の硬化物層部分3aと第2の硬化物層部分3bとで弾性率が異なる。第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aの25℃での弾性率は、第2の接続対象部材4側における第2の硬化物層部分3bの25℃での弾性率よりも高い。
上記弾性率は、以下のようにして測定することができる。
上記接続構造体を、上記第1の接続対象部材の下面側から水平に研磨して、上記第1の硬化物層部分の1/2の厚み部分の断面を露出させる。すなわち、上記第1の硬化物層部分の厚みをaとしたときに、上記第1の硬化物層部分をa/2の厚み部分まで研磨して除去する。微小硬度計(Fischer社製「FischerSCOPE HP100C」)を用いて、かつ30μm×30μmFLATのビッカース圧子を用いて、最大試験荷重300mN及び荷重時間10秒の条件にて、上記第1の硬化物層部分の露出した断面のヤング率を7回測定する。測定されたヤング率の平均値を、上記第1の硬化物層部分の弾性率とする。
また、接続構造体を、第2の接続対象部材の上面側から水平に研磨して、第2の硬化物層部分の1/2の厚み部分の断面を露出させる。すなわち、上記第2の硬化物層部分の厚みをbとしたときに、上記第2の硬化物層部分をb/2の厚み部分まで研磨して除去する。微小硬度計(Fischer社製「FischerSCOPE HP100C」)を用いて、かつ30μm×30μmFLATのビッカース圧子を用いて、最大試験荷重300mN及び荷重時間10秒の条件にて、上記第2の硬化物層部分の露出した断面のヤング率を7回測定する。測定されたヤング率の平均値を上記第2の硬化物層部分の弾性率とする。
上記接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第1の硬化物層部分の25℃での弾性率は、上記第2の硬化物層部分の25℃での弾性率よりも100MPa以上高いことが好ましく、500MPa以上高いことが好ましい。
上記接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第1の硬化物層部分の25℃での弾性率は、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは1500MPa以上、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは4500MPa以下である。接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第2の硬化物層部分の25℃での弾性率は、好ましくは500MPa以上、より好ましくは1000MPa以上、好ましくは3000MPa以下、より好ましくは2500MPa以下である。
上記接続構造体は、低温下に晒されたり、熱履歴を受けたりすることがある。低温での第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたり、熱履歴を受けた場合に第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記第1の硬化物層部分の−30℃での弾性率は、上記第2の硬化物層部分の−30℃での弾性率よりも高いことが好ましく、100MPa以上高いことが好ましく、500MPa以上高いことが好ましい。
低温での第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたり、熱履歴を受けた場合に第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記第1の硬化物層部分の−30℃での弾性率は、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは1500MPa以上、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは4500MPa以下である。低温での第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたり、熱履歴を受けた場合に第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記第2の硬化物層部分の−30℃での弾性率は、好ましくは500MPa以上、より好ましくは1000MPa以上、好ましくは3000MPa以下、より好ましくは2500MPa以下である。
上記接続構造体は、高温下に晒されたり、熱履歴を受けたりすることがある。高温での第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたり、熱履歴を受けた場合に第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記第1の硬化物層部分の80℃での弾性率は、上記第2の硬化物層部分の80℃での弾性率よりも高いことが好ましく、50MPa以上高いことが好ましく、250MPa以上高いことが好ましい。
高温での第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたり、熱履歴を受けた場合に第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記第1の硬化物層部分の80℃での弾性率は、好ましくは500MPa以上、より好ましくは750MPa以上、好ましくは2500MPa以下、より好ましくは2250MPa以下である。高温での第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたり、熱履歴を受けた場合に第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記第2の硬化物層部分の80℃での弾性率は、好ましくは250MPa以上、より好ましくは500MPa以上、好ましくは1500MPa以下、より好ましくは1250MPa以下である。
第1の接続対象部材2は、第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方に張り出した領域を有する。第1の接続対象部材2は、第2の接続対象部材4よりも大きい。第1の接続対象部材2の平面積は、第2の接続対象部材4の平面積よりも大きい。
硬化物層3は、第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方に張り出した領域を有する。硬化物層3は、第2の接続対象部材4よりも大きい。硬化物層3の平面積は、第2の接続対象部材4の平面積よりも大きい。
第1の接続対象部材2は、硬化物層3の外周側面よりも側方に張り出した領域を有する。第1の接続対象部材2は、硬化物層3よりも大きい。第1の接続対象部材2の平面積は、硬化物層3の平面積よりも大きい。
また、接続構造体1では、第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方の全領域に、硬化物層3が至っており、該硬化物層3によるフィレットXが形成されている。このようにフィレットが形成されていることで、上記第1,第2の接続対象部材を強固に接続させることができ、特に上記第2の接続対象部材の剥離を生じ難くすることができる。従って、上記接続構造体における第1,第2の接続対象部材の接続信頼性を高めることができる。
なお、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の少なくとも一部の領域に、上記硬化物層が至っていればよく、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の全領域に、上記硬化物層が至っていなくてもよい。すなわち、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の全領域において、フィレットが形成されていてもよく、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の一部の領域に、フィレットが部分的に形成されていてもよい。
上記、第2の接続対象部材に対して、第1の接続対象部材が張り出した構造を、第2の接続部材の少なくとも1辺に有する接続構造体も本発明の範囲である。例えば、FOGや、FOBの場合に上記接続構造であることがある。
上記第2の接続対象部材が矩形状である場合には、長さ方向において上記第2の接続対象部材が湾曲し、第2の接続対象部材の剥離が生じやすい傾向がある。第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記第2の接続対象部材が矩形状であり、上記第2の接続対象部材の短辺の外周側面よりも側方の領域に、上記硬化物層が至っており、上記硬化物層によるフィレットが形成されていることが好ましい。この場合に、上記第2の接続対象部材の長辺の外周側面よりも側方の領域に、上記硬化物層が至っており、該硬化物層によるフィレットが形成されていてもよい。
第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高める観点からは、フィレットの角度αは、好ましくは30度以上、より好ましくは45度以上、好ましくは90度以下、より好ましくは60度以下である。
本明細書において、フィレットの角度αとは、フィレット上端と下端とを結ぶ直線と、第2の接続対象部材の外周側面とのなす角度をいう。接続構造体1では、フィレットXの上端は、上方の第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方の領域に位置する先端であり、フィレットXの下端は、下方の第1の接続対象部材2の上面2aと接している。なお、図1では、フィレットXの上面は、直線状に延びている。フィレットの上面は、凹状であってもよい。
フィレットの高さは、第2の接続対象部材の側面にて、好ましくは20μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。また、フィレットの高さは、第2の接続対象部材の厚みの、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下である。
フィレットの幅は、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
上記フィレット高さ及び幅はそれぞれ、第2の接続対象部材の1辺における平均値である。
接続構造体1に用いた上記異方性導電ペーストは、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤と導電性粒子5とを含む異方性導電材料である。また、該異方性導電ペーストは、熱硬化性化合物であるエポキシ基又はチイラン基を有する化合物と、熱硬化剤と、光硬化性化合物である(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料である。第1の硬化物層部分3aにおいて、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物と(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物とが非相溶であることが好ましい。さらに、第1の硬化物層部分3aと第2の硬化物層部分3bとで、硬化物層3が層分離していることが好ましい。
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
第2の接続対象部材は、半導体チップであることが好ましい。第2の接続対象部材である半導体チップの上面を加熱及び加圧して、半導体チップの下方に位置する接着剤を硬化させると、半導体チップが反りやすく、半導体チップの剥離が生じやすい傾向がある。これに対して、本発明に係る接続構造体では、剥離が生じやすい傾向がある半導体チップを用いても、半導体チップの剥離を十分に抑制できる。従って、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性を高めることができる。
図1に示す接続構造体1は、例えば、以下のようにして得ることができる。
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。また、導電性粒子5を含む異方性導電材料を用意する。ここでは、熱硬化性化合物と光硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化開始剤と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを用いている。また、ここでは、熱硬化性化合物として、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物を用いており、光硬化性化合物として(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いている。但し、異方性導電材料は、熱硬化のみを行う場合には光硬化性化合物と光硬化開始剤とを用いなくてもよく、光硬化のみを行う場合には熱硬化性化合物と熱硬化剤とを用いなくてもよい。また、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物以外の熱硬化性化合物を用いてもよい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物以外の光硬化性化合物を用いてもよい。
次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成して配置する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。ここでは、上記異方性導電材料として、異方性導電ペーストを用いているので、異方性導電ペーストの積層は、異方性導電ペーストの塗布により行われている。また、異方性導電材料層3Aは異方性導電ペースト層である。
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射又は熱を付与することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する。ここでは、異方性導電材料層3Aに光を照射して、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化している。図2(b)に示すように、異方性導電材料層3AのBステージ化により、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成する。Bステージ化された異方性導電材料層3Bは、Bステージ化された異方性導電ペースト層である。本実施形態において、異方性導電材料層3Bでは、第1の接続対象部材2側における第1の異方性導電材料層部分3Ba(第1の異方性導電ペースト層部分)の硬化度は、第2の接続対象部材4が積層される側における第2の異方性導電材料層部分3Bb(第2の異方性導電ペースト層部分)の硬化度よりも高い。第1の異方性導電材料層部分3Baと第2の異方性導電材料層部分3Bbとで、異方性導電材料層3は層分離している。
第1の異方性導電材料層部分3Baの硬化度を、第2の異方性導電材料層部分3Bbの硬化度よりも高くすることによって、異方性導電材料層3Bに含まれている導電性粒子5が、硬化段階でより一層流動し難くなる。このため、導電性粒子5を電極2b,4b間により一層精度よく配置でき、接続されてはならない隣接する電極2b,2b間又は電極4b,4b間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。さらに、異方性導電材料層3B全体の濡れ広がりを抑制でき、濡れ広がった異方性導電材料層3Bによる汚染を抑制できる。
異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるために、光を照射する際の光照射強度は、0.1〜100mW/cm2の範囲内であることが好ましい。光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電材料を塗布しながら、異方性導電材料層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電材料層3Aに光を照射することも好ましい。塗布と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電材料層の流動をより一層抑制できる。このため、接続構造体1における電極2b,4b間の導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料を塗布してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。
また、異方性導電材料層3AをBステージ化するために、異方性導電材料層3Aに熱を付与して、硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化してもよい。
熱の付与により異方性導電材料層3AをBステージ化する際の加熱温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3cに、第2の接続対象部材4を積層する。異方性導電材料層部分3Bbの上面に、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電材料層3Bに熱を付与することにより、異方性導電材料層3Bをさらに硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Bに熱を付与してもよい。第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電材料層3Bに熱を付与し、異方性導電材料層3Bを硬化させることが好ましい。
熱の付与により異方性導電材料層3Bを硬化させる場合には、異方性導電材料層3Bを充分に硬化させるための加熱温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは250℃以上、より好ましくは200℃以下である。
異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。
このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。接続構造体1を得る際に、異方性導電材料層3Aに光を照射し、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成した後、Bステージ化された異方性導電材料層3Bに熱を付与することが好ましい。
第1の硬化物層部分3aは、第1の異方性導電材料層部分3Baが硬化することにより形成されている。第2の硬化物層部分3bは、第2の異方性導電材料層部分3Bbが硬化することにより形成されている。前述のように、第1の異方性導電材料層部分3Baと第2の異方性導電材料層部分3Bbとは硬化度が異なり、第1の異方性導電材料層部分3Baの硬化度が第2の異方性導電材料層部分3Bbの硬化度よりも高い。このため、硬化物層3における第1の硬化物層部分3aと第2の硬化物層部分3bとの弾性率を異ならせることができる。具体的には、第1の硬化物層部分3aの−30〜80℃での弾性率を第2の硬化物層部分3bの−30〜80℃での弾性率よりも高くすることができる。
上記のようにして、接続構造体1を作製することで、導電性粒子5を電極2b,4b間により一層精度良く配置でき、接続されてはならない隣接する電極2b,2b間又は電極4b,4b間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。さらに、異方性導電材料層が意図しない領域に濡れ広がった後に硬化した硬化物層部分の形成を抑制でき、異方性導電材料層の濡れ広がりによる硬化物層部分による汚染を抑制できる。
さらに、上記のようにして、接続構造体1を作製することで、第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方の領域に、硬化物層3を至らせて、該硬化物層3によるフィレットを形成することができる。このため、第1,第2の接続対象部材2,4の接続信頼性を高めることができ、熱履歴を受けた場合でも、第1,第2の接続対象部材2,4の接続信頼性を高めることができる。
本発明に係る接続構造体における接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board)等が挙げられる。なかでも、本発明に係る続構造体の接続は、COGであることが好ましい。本発明に係る接続構造体では、上記第1の接続対象部材としてガラス基板を用いることが好ましく、上記第2の接続対象部材として半導体チップを用いることが好ましい。
COG用途では、特に、半導体チップとガラス基板との電極間を、異方性導電材料の導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、COG用途の場合には、半導体チップの隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が10〜20μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る接続構造体では、導電性粒子を電極間に精度よく配置することができることから、半導体チップとガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
本発明に係る接続構造体では、接着剤として、導電性粒子を含む異方性導電材料が好適に用いられる。上記異方性導電材料は、異方性導電ペーストであることが好ましい。異方性導電材料では、塗布が容易で凹凸追従性が高い一方で、異方性導電材料が濡れ広がりやすく、異方性導電材料中に含まれている導電性粒子が流動しやすいという問題がある。これに対して、本発明のように硬化物層における弾性率を制御することによって、異方性導電材料の濡れ広がりを抑制し、更に異方性導電材料中に含まれている導電性粒子の流動を抑制できる。従って、導電性粒子を精度よく配置できる。さらに、異方性導電ペーストの使用により、硬化物層による良好なフィレットを形成可能である。
上記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤と導電性粒子とを含む異方性導電材料を用いることが好ましい。この場合には、弾性率を制御することが容易であり、第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分の−30〜80℃での弾性率を第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分の−30〜80℃での弾性率よりも高くすることが容易である。
上記熱硬化性化合物はエポキシ基又はチイラン基を有する化合物であることが好ましい。また、上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。このような好ましい熱硬化性化合物や光硬化性化合物を用いることにより、硬化度の制御がより一層容易になり、更に第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分の−30〜80℃での弾性率を第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分の−30〜80℃での弾性率よりも高くすることがより一層容易になる。
第1の接続対象部材側における上記第1の硬化物層部分において、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とが非相溶であることが好ましい。このような第1の硬化物層部分を有する硬化物層を形成することで、異方性導電材料の濡れ広がりによる汚染の抑制と、導電性粒子の配置精度とをより一層高いレベルで両立することができる。
第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分とで、上記硬化物層は層分離していることが好ましい。このような第1,第2の硬化物層部分を有する硬化物層を形成することで、異方性導電材料の濡れ広がりによる汚染の抑制と、導電性粒子の配置精度とをさらに一層高いレベルで両立することができる。さらに、硬化物層の内部での層間剥離を抑制できる。
上記第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分とは、1つの接着剤を用いて形成されていることが好ましい。この場合には、複数の異方性導電材料等の接着剤を容易する必要がなく、更に接続構造体の製造効率を高めることができる。本発明に係る接続構造体では、硬化前の接着剤は、多層異方性導電フィルムではないことが好ましく、異方性導電フィルムではないことが好ましい。
第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分の−30〜80℃での弾性率を、第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分の−30〜80℃での弾性率よりも高くする方法としては、(1)酸素が多い雰囲気や空気下で酸素による硬化阻害によって硬化が進行し難い接着剤を用いて、硬化段階で第1の接続対象部材の上面に配置された接着剤層の上面を酸素が多い雰囲気や空気下で、接着剤層に光を照射又は熱を付与して、接着剤層を光硬化又は熱硬化させる方法、並びに(2)雰囲気を冷却しつつ、第2の接続対象部材を加熱することで、異方導電材料の温度を、表面より、第2の接続対象部材側を高くする方法等が挙げられる。
以下、上記接着剤に含まれている各成分の詳細を説明する。
(熱硬化性化合物)
上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記接着剤の硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。熱硬化をより一層速やかに進行させる観点からは、上記熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物であることが好ましい。
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
[光硬化性化合物]
上記接着剤は、光の照射によって硬化するように、光硬化性化合物を含有していてもよい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化させ、硬化性化合物の流動性を低下させることができる。
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリル樹脂及び環状エーテル基含有樹脂等が挙げられる。
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、上記接着剤は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、10:90〜40:60で含むことが更に好ましい。
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤、酸無水物及びカチオン硬化剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
接着剤を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、接着剤の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記接着剤を充分に熱硬化させることができる。
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
酸素が多い雰囲気下又は空気下で重合が阻害されることから、硬化物層における硬化度を部分的に異ならせることが容易であるので、上記光硬化開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(チバ・スペシャリティ社製「Irg819」)又は2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(チバ・スペシャリティ社製「TPO」)であることが好ましい。
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記接着剤を適度に光硬化させることができる。上記接着剤に光を照射し、Bステージ化することにより、上記接着剤の流動を抑制できる。
(導電性粒子)
上記接着剤に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。上記接着剤100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
(他の成分)
上記接着剤は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、接着剤の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フィラーの含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、上記フィラーの含有量は好ましくは5重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下である。上記フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接着剤の硬化物の潜熱膨張を充分に抑制でき、更に接着剤中にフィラーを充分に分散させることができる。
上記接着剤は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは4重量部以下である。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、接着剤を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
上記接着剤は、エピスルフィド化合物とともに、フェノール性化合物をさらに含むことが好ましい。上記エピスルフィド化合物と熱硬化剤とフェノール性化合物との併用により、接着剤の保管時にチイラン基がより一層開環し難くなる。また、電極間に接着剤を配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記接着剤は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、接着剤の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
上記接着剤は、貯蔵安定剤を含むことが好ましい。上記接着剤は、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの貯蔵安定剤の使用により、特に亜リン酸エステルの使用により、上記エピスルフィド化合物の保存安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記接着剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸の誘導体及びイソアスコルビン酸の塩からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分の配合により、接着剤の保存安定性が高くなる。
上記接着剤は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの作製
熱硬化性化合物であるエピコート828(三菱化学社製「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」)80重量部と、EPR4023(ADEKA社製、CTBN変性エポキシ樹脂)20重量部と、光硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)10重量部と、熱硬化剤であるアミノアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23」」)10重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)0.5重量部と、光硬化開始剤である光ラジカル開始剤(チバスペシャリティ社製「Irg819」)0.1重量部と、フィラーであるシリカ(平均粒子径0.25μm)50重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)50重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子20重量部を添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、接着剤である異方性導電ペーストを得た。
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
(2)接続構造体の作製
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明なガラス基板(第1の接続対象部材、縦24mm×横52mm)を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの金電極パターンが下面に形成された半導体チップ(第2の接続対象部材、縦2mm×横15mm)を用意した。
上記ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。異方性導電ペーストの塗布後すぐに、空気下ですなわち異方性導電ペースト層の上面付近の雰囲気が空気である状態で、紫外線照射ランプを用いて異方性導電ペースト層に紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化(Bステージ化)させた。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が210℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、10kg/cm2の圧力をかけて異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。
(実施例2)
光硬化性化合物を脂肪酸変性エポキシアクリレート(ダイセルサイテック社製「EBECRYL3702」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を作製した。
(比較例1)
実施例1で得られた異方性導電ペーストを用意した。
実施例1と同様に、透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。異方性導電ペーストの塗布後すぐに、紫外線照射ランプを用いて紫外照射を行わずに、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が210℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、10kg/cm2の圧力をかけて異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。
(比較例2)
実施例1で得られた異方性導電ペーストを用意した。
実施例1と同様に、透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。異方性導電ペーストの塗布後すぐに、窒素パージ下ですなわち異方性導電ペースト層の上面近傍の雰囲気が窒素である状態で、紫外線照射ランプを用いて異方性導電ペースト層に紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させた。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が210℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、10kg/cm2の圧力をかけて異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。
(比較例3)
光硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと光硬化開始剤である光ラジカル開始剤とを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を作製した。
(評価)
(1)硬化物層における層分離の有無
得られた接続構造体において、第1の接続対象部材側と第2の接続対象部材側とで、異方性導電ペースト層が硬化した硬化物層が層分離しているか否かを評価した。層分離している場合を「A」、層分離していない場合を「B」と判定した。
(2)硬化物層の厚み
断面研磨装置(丸元ストアル社製「Struers TegraPol−11」)を用いて、接続構造体を研磨し、接続構造体の断面を露出させた。光学顕微鏡を用いて、露出した硬化物層の断面を観察し、硬化物層の全体厚みを測定した。硬化物層が層分離している場合に、第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分と第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分との厚みを測定した。
(3)弾性率
硬化物層が層分離している場合に、得られた接続構造体を、第1の接続対象部材であるガラス基板の下面側から水平に研磨して、第1の硬化物層部分の1/2の厚み部分の断面を露出させた。研磨には、断面研磨装置(丸元ストアル社製「Struers TegraPol−11」)を用いた。微小硬度計(Fischer社製「FischerSCOPE HP100C」)を用いて、かつ30μm×30μmFLATのビッカース圧子を用いて、−30℃、25℃及び80℃、並びに最大試験荷重300mN及び荷重時間10秒の条件にて、第1の硬化物層部分の露出した断面のヤング率を7回測定した。測定されたヤング率の平均値を第1の硬化物層部分の弾性率とした。
また、硬化物層が層分離している場合に、得られた接続構造体を、第2の接続対象部材である半導体チップの上面側から水平に研磨して、第2の硬化物層部分の1/2の厚み部分の断面を露出させた。研磨には、断面研磨装置(丸元ストアル社製「Struers TegraPol−11」)を用いた。微小硬度計(Fischer社製「FischerSCOPE HP100C」)を用いて、かつ30μm×30μmFLATのビッカース圧子を用いて、−30℃、25℃及び80℃、並びに最大試験荷重300mN及び荷重時間10秒の条件にて、第2の硬化物層部分の露出した断面のヤング率を7回測定した。測定されたヤング率の平均値を第2の硬化物層部分の弾性率とした。
(4)フィレットの有無
得られた接続構造体において、上記硬化物層が、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方に張り出した領域を有し、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の領域に、上記硬化物層によるフィレットが形成されているか否かを評価した。また、フィレットが形成されている場合に、フィレットの角度αを測定した。
(5)第2の硬化物部分における相溶性
硬化物層が層分離している場合に、半導体チップ側における第2の硬化物層部分において、用いた熱硬化性化合物の硬化物成分と用いた光硬化性化合物の硬化物成分とが相溶しているか否かを評価した。非相溶である場合を「A」、相溶している場合を「B」として結果を下記の表1に示した。
(6)電極間における導電性粒子の捕捉率(導電性粒子の配置精度)
得られた接続構造体における対向する上下の電極間に存在する導電性粒子の数を光学顕微鏡にてカウントした。導電性粒子の捕捉率を下記の判定基準で判定した。
[導電性粒子の捕捉率の判定基準]
○:各電極間に存在する粒子が10個以上
×:各電極間に存在する粒子が9個以下
(7)導通性評価
得られた接続構造体を四端子法用にて、20箇所の抵抗値を4端子法にて評価した。導通信頼性を下記の判定基準で判定した。
[導通信頼性の判定基準]
○:全ての箇所で抵抗値が3Ω以下にある
△:抵抗値が3Ω以上の箇所が1箇所以上ある
×:全く導通していない箇所が1箇所以上ある
(8)絶縁性評価
得られた接続構造体の隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。絶縁性を下記の判定基準で判定した。
[絶縁性の判定基準]
○:リーク箇所が全くない
×:リーク箇所がある
(9)接続信頼性
得られた接続構造体において、85℃及び85%RHの条件で1000時間放置する耐湿熱試験後に、導通信頼性を評価することにより、半島体チップとガラス基板との接続信頼性を評価した。接続信頼性を下記の判定基準で判定した。
[接続信頼性の判定基準]
○:全ての箇所で抵抗値が3Ω以下にある
×:抵抗値が3Ω以上の箇所が1箇所以上ある
(10)熱履歴を受けた場合の接続信頼性
得られた接続構造体200個を、−40℃で5分間保持し、次に125℃まで25分で昇温し、125℃で5分間保持した後、−40℃まで25分で降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を実施した。500サイクル及び1000サイクル後に、それぞれ100個の接続構造体を取り出した。
500サイクルの冷熱サイクル試験後の100個の接続構造体、並びに1000サイクルの冷熱サイクル試験後の100個の接続構造体について、上下の電極間の導通不良が生じているか否かを評価した。100個の接続構造体のうち、導通不良が生じている個数が1個以下である場合を「○○」、2個以上、3個以下である場合を「○」、4個を超える場合を「×」と判定した。
(11)汚染の有無(異方性導電材層の流動性)
得られた接続構造体における硬化物層を観察して、該硬化物層が第2の接続対象部材外周より500μm外側の位置にあるか否かにより、硬化前及び硬化時における異方性導電材料層の流動性を評価した。
異方性導電ペースト層が第2の接続対象部材外周より500μm外側まで濡れ広がらずに硬化している場合を「○」、異方性導電ペースト層が第2の接続対象部材外周より500μm外側まで濡れ広がって硬化しており、汚染が生じている場合を「×」と判定した。
結果を下記の表1に示す。下記の表1において、「−」は評価していないことを示す。