JP5506367B2 - 水硬性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、砒素の含有量が多い廃棄物を原料として大量に使用することができる水硬性組成物に関する。
近年、資源循環型社会の構築に対する機運が高まり、セメント産業においても産業廃棄物、一般廃棄物等の廃棄物や汚染土壌を原料として大量に使用したセメントクリンカーの開発が行われている。
前記廃棄物や汚染土壌には、砒素が含まれているものがあり、これらを原料としてセメントクリンカーを製造すると、得られるセメントクリンカー中に砒素が含まれることになる。砒素含有量が多いセメントクリンカーを粉砕して得たセメントをモルタルやコンクリートにして使用した場合、砒素が溶出し、水質汚染や土壌汚染等を引き起こす可能性がある。
一方、有機ヒ素含有汚染物の処理方法として、有機ヒ素化合物を含有する汚染物に、該汚染物中の有機ヒ素化合物含有量に応じたプラスチック系産業廃棄物を加えて混合物とし、その後に、該混合物を800〜1100℃の温度で加熱処理する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2009−95736号公報
しかしながら、上記の有機ヒ素含有汚染物の処理方法においては、加熱処理して得られる生成物の有効利用方法については提案されていなく、資源循環型社会の構築に貢献できる技術とは言いがたいものであった。
そこで、本発明においては、砒素を含有する廃棄物や汚染土壌等を原料として大量に使用した場合であっても、モルタルやコンクリートからの砒素の溶出を抑制でき、資源循環型社会の構築に貢献できる水硬性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の水硬率、ケイ酸率および鉄率を有し、かつ、特定量の砒素を含有する焼成物の粉砕物と、石膏とを組み合わせた水硬性組成物であれば、砒素を含有する廃棄物や汚染土壌等を原料として大量に使用することができるうえ、モルタルやコンクリートからの砒素の溶出を抑制できることを見いだし、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、水硬率(H.M.)が1.8〜2.3、ケイ酸率(S.M.)が1.0〜2.3、鉄率(I.M.)が1.3〜2.8で、砒素の含有量が350〜500(mg/kg)である焼成物の粉砕物と、石膏を含むことを特徴とする水硬性組成物を提供するものである。
本発明の水硬性組成物は、砒素を含有する廃棄物や汚染土壌等を原料として大量に使用することができるうえ、モルタルやコンクリートに好適に使用することができるので、資源循環型社会の構築に貢献することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する焼成物は、水硬率(H.M.)が1.8〜2.3、ケイ酸率(S.M.)が1.0〜2.3、鉄率(I.M.)が1.3〜2.8のものである。
焼成物の水硬率(H.M.)が小さくなると、該焼成物中の3CaO・Al2O3(以降、C3Aと略す)と4CaO・Al2O3・Fe2O3(以降、C4AFと略す)の含有量が多くなり、水硬性組成物の水和熱が上昇するうえ、モルタルやコンクリートの流動性が低下する傾向にある。また、焼成物の焼成も困難となる。一方、水硬率(H.M.)が大きくなると、モルタルやコンクリートの初期強度は向上するが、長期強度の伸びが鈍くなる傾向にある。そのため、水硬率(H.M.)は1.8〜2.3が好ましく、より好ましくは2.0〜2.2である。
焼成物のケイ酸率(S.M.)が小さくなると、該焼成物中のC3AとC4AFの含有量が多くなり、水硬性組成物の水和熱が上昇するうえ、モルタルやコンクリートの流動性が低下する傾向にある。また、焼成物の焼成も困難となる。一方、ケイ酸率(S.M.)が大きくなると、モルタルやコンクリートの流動性面では好ましいが、C3AとC4AFの含有量が少なくなり、焼成物の焼成が困難になる。また、廃棄物をセメント原料として大量に使用することも困難になる。さらに、砒素含有量が多くなると、モルタルやコンクリートからの砒素の溶出を抑制することも困難になる。そのため、ケイ酸率(S.M.)は1.0〜2.3が好ましく、より好ましくは1.05〜2.2であり、特に好ましくは1.1〜2.0である。
焼成物の鉄率(I.M.)が小さくなると、モルタルやコンクリートの流動性面では好ましいが、焼成物の粉砕性が低下する。一方、鉄率(I.M.)が大きくなると、焼成物中のC3Aの含有量が多くなり、水硬性組成物の水和熱が上昇するうえ、モルタルやコンクリートの流動性が低下する傾向にある。そのため、鉄率(I.M.)は1.3〜2.8が好ましく、より好ましくは1.5〜2.6であり、特に好ましくは1.6〜2.4である。
本発明で使用する焼成物は、砒素含有量が40〜500(mg/kg)のものである。
砒素含有量が少なくなると、砒素を含有する廃棄物や汚染土壌等を原料として大量に使用することが困難になる。一方、砒素含有量が大きくなると、モルタルやコンクリートからの砒素の溶出を抑制することが困難になる。そのため、砒素含有量は40〜500(mg/kg)が好ましく、より好ましくは110〜450(mg/kg)であり、特に好ましくは150〜400(mg/kg)である。
本発明で使用する焼成物は、産業廃棄物、一般廃棄物等の廃棄物や建設発生土、汚染土壌等の土を原料として使用することができる。産業廃棄物としては、例えば石炭灰;生コンスラッジ、下水汚泥、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥等の各種汚泥;ボーリング廃土、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉2次灰、建設廃材、コンクリート廃材などが挙げられ;一般廃棄物としては、例えば下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等が挙げられる。建設発生土としては、建設現場や工事現場等から発生する土壌や残土、さらには廃土壌等が挙げら、汚染土壌としては、重金属(砒素、クロム等)汚染土壌や有機物(有機塩素化合物、揮発性有機化合物等)汚染土壌等が挙げられる。
なお、砒素含有廃棄物としては、非鉄系金属スラグ、廃油等が挙げられる。
また、本発明で使用する焼成物は、一般のポルトランドセメントクリンカー原料、例えば、石灰石、生石灰、消石灰等のCaO原料、珪石、粘土等のSiO2原料、粘土等のAl2O3原料、鉄滓、鉄ケーキ等のFe2O3原料も、原料として使用することができる。
上記各原料を所定のH.M.、S.M.、I.M.で、所定の砒素含有量となるように混合し、好ましくは1200〜1550℃で焼成することにより、焼成物が製造される。より好ましい焼成温度は1350〜1450℃である。
各原料を混合する方法は、特に限定するものではなく、慣用の装置等で行えばよい。
また、焼成に使用する装置も特に限定するものではなく、例えば、ロータリーキルン等を使用することができる。ロータリーキルンで焼成する際には、燃料代替廃棄物、例えば、廃油、廃タイヤ、廃プラスチック等を使用することができる。
なお、本発明で使用する焼成物においては、モルタルやコンクリートの強度発現性、特に初期強度発現性を向上させる観点から、フリーライム量が0.5〜1.0質量%であることが好ましい。
本発明の水硬性組成物は上記焼成物の粉砕物と、石膏を含むものである。石膏としては、2水石膏、α型又はβ型半水石膏、無水石膏等を単独又は2種以上組み合わせてを使用することができる。
本発明においては、水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合は40質量%以上であることが好ましい。水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合が40質量%未満では、水硬性組成物の水和熱が大きくなり、またモルタルやコンクリートの流動性が低下するので好ましくない。水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合は、モルタルやコンクリートの流動性向上の観点や減水剤との相性等から、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。
また、本発明においては、水硬性組成物中の2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合はSO3換算で30質量%以上であることが好ましい。2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合がSO3換算で30質量%未満では、水硬性組成物の水和熱が大きくなり、またモルタルやコンクリートの凝結時間が極端に短くなる、流動性が低下する、硬化体の寸法安定性が低下する等の理由から好ましくない。2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合は、モルタルやコンクリートの水和熱低減や流動性向上の観点から、40〜90質量%が好ましい。
なお、2水石膏・半水石膏の定量は、特開平6-242035号公報に記載される試料容器を使用した熱分析(熱重量測定等)により行うことができる。また、水硬性組成物中の全SO3の定量は、化学分析により行うことができる。
水硬性組成物中の石膏量は、モルタルやコンクリートの流動性や強度発現性等から、焼成物の粉砕物100質量部に対して、SO3換算で1〜5質量部であることが好ましく、1.5〜3.5質量部であることがより好ましい。
本発明の水硬性組成物の製造方法について説明する。
水硬性組成物の製造方法としては、例えば、
(1)焼成物と石膏を同時に粉砕する方法、
(2)焼成物を粉砕し、該粉砕物に、石膏を混合する方法、
等が挙げられる。
上記(1)の場合は、焼成物と石膏はブレーン比表面積2500〜4800cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4600cm2/gに粉砕することがより好ましい。
上記(2)の場合は、焼成物はブレーン比表面積2500〜4800cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4600cm2/gに粉砕することがより好ましい。また、石膏としてはブレーン比表面積2500〜5000cm2/gのものを使用するのが好ましく、3000〜4500cm2/gのものを使用するのがより好ましい。
なお、本発明において、水硬性組成物のブレーン比表面積は、モルタルやコンクリートの流動性や強度発現性等から、2500〜4800cm2/gであることが好ましく、3000〜4600cm2/gであることがより好ましい。
本発明の水硬性組成物は、ペースト、モルタル又はコンクリートの状態で使用される。 減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤(AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤も含む)が使用できる。
モルタル又はコンクリートの状態で使用する場合は、通常モルタル、コンクリートの製造に使用されている細骨材・粗骨材、すなわち、川砂、陸砂、砕砂等や、川砂利、山砂利、砕石等を使用することができる。また、都市ゴミ、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を溶融して製造した溶融スラグ、あるいは高炉スラグ、製鋼スラグ、銅スラグ、碍子屑、ガラスカレット、陶磁器廃材、クリンカーアッシュ、廃レンガ、コンクリート廃材等の廃棄物を細骨材・粗骨材の一部または全部に使用することができる。
なお、必要に応じて、支障のない範囲内で、空気連行剤、消泡剤等の混和剤を使用することは差し支えない。
ペースト、モルタル又はコンクリートの混練方法は、特に限定するものではなく、例えば、(1)各材料を一括してミキサに投入して1分以上混練する方法、(2)水以外の材料をミキサに投入して空練りした後に、水を投入して1分以上混練する方法等で行うことができる。混練に用いるミキサは、特に限定するものではなく、ホバートミキサ、パンタイプミキサ、二軸ミキサ等の慣用のミキサで混練すれば良い。
ペースト、モルタル又はコンクリートの成形方法は、特に限定するものではなく、例えば、振動成形等を行えば良い。
また、養生条件も、特に限定するものではなく、例えば、気中養生、水中養生、蒸気養生等を行えば良い。
以下、実施例により本発明を説明する。
1.実施例1
(1)焼成物の製造:
原料として、下水汚泥、建設発生土、砒素原料(亜砒酸ナトリウム(試薬))と、石灰石等の一般のポルトランドセメントクリンカー原料を使用して、水硬率;2.2、ケイ酸率;2.2、鉄率;1.8、砒素含有量;350(mg/kg)の焼成物を、電気炉を用いて1450℃で焼成して製造した。
なお、該焼成物中のフリーライム量は0.6質量%、SO3量は0.2質量%であった。
(2)水硬性組成物の製造
上記焼成物100質量部に対して、排脱ニ水石膏(住友金属社製)及び前記排脱ニ水石膏を140℃で加熱して得た半水石膏を添加し、バッチ式ボールミルでブレーン比表面積が3250cm2/gとなるように同時粉砕して、水硬性組成物を製造した。
なお、該水硬性組成物中のニ水石膏量(SO3換算)は焼成物の粉砕物100質量部に対して0.8質量部であり、半水石膏量(SO3換算)は焼成物の粉砕物100質量部に対して0.8質量部である。
(3)評価
上記水硬性組成物について、以下の方法で圧縮強度と砒素の溶出量を測定した。
(1)圧縮強度
モルタルの圧縮強度(3日、7日および28日)を「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じて測定した。なお、モルタルの配合は、水/水硬性組成物(質量)比=0.5、細骨材/水硬性組成物(質量)比=3.0とした。
(2)砒素の溶出量
上記(1)で作成したモルタル(材齢28日)からの砒素の溶出量を環境庁告示46号法に準じて測定した。
その結果、3日の圧縮強度は30.6(N/mm2)、7日の圧縮強度は45.5(N/mm2)、28日の圧縮強度は60.4(N/mm2)で、砒素の溶出量は0.001(mg/L)であった。
2.実施例2
実施例1と同じ原料を使用して焼成物(水硬率;2.05、ケイ酸率;1.50、鉄率;1.80、砒素含有量;370(mg/kg)、フリーライム量0.6質量%、SO3量0.3質量%)を製造した。
上記焼成物100質量部に対して、排脱ニ水石膏(住友金属社製)及び前記排脱ニ水石膏を140℃で加熱して得た半水石膏を添加し、バッチ式ボールミルでブレーン比表面積が4200cm2/gとなるように同時粉砕して、水硬性組成物を製造した。
なお、該水硬性組成物中のニ水石膏量(SO3換算)は焼成物の粉砕物100質量部に対して1.2質量部であり、半水石膏量(SO3換算)は焼成物の粉砕物100質量部に対して1.5質量部である。
該水硬性組成物について、圧縮強度と砒素の溶出量を実施例1と同様にして測定した。
その結果、3日の圧縮強度は31.0(N/mm2)、7日の圧縮強度は44.8(N/mm2)、28日の圧縮強度は57.7(N/mm2)で、砒素の溶出量は0.0006(mg/L)未満であった。
3.実施例3
実施例1と同じ原料を使用して焼成物(水硬率;2.05、ケイ酸率;1.20、鉄率;1.80、砒素含有量;400(mg/kg)、フリーライム量0.6質量%、SO3量0.4質量%)を製造した。
上記実施例2と同様にして水硬性組成物を製造した。
該水硬性組成物について、圧縮強度と砒素の溶出量を実施例1と同様にして測定した。
その結果、3日の圧縮強度は31.4(N/mm2)、7日の圧縮強度は44.2(N/mm2)、28日の圧縮強度は55.2(N/mm2)で、砒素の溶出量は0.0006(mg/L)未満であった。
4.比較例1
実施例1と同じ原料を使用して焼成物(水硬率;2.11、ケイ酸率;2.60、鉄率;1.80、砒素含有量;350(mg/kg)、フリーライム量は0.6質量%、SO3量0.2質量%)を製造した。
上記焼成物100質量部に対して、排脱ニ水石膏(住友金属社製)及び前記排脱ニ水石膏を140℃で加熱して得た半水石膏を添加し、バッチ式ボールミルでブレーン比表面積が3250cm2/gとなるように同時粉砕して、水硬性組成物を製造した。
なお、該水硬性組成物中のニ水石膏量(SO3換算)は焼成物の粉砕物100質量部に対して0.8質量部であり、半水石膏量(SO3換算)は焼成物の粉砕物100質量部に対して0.8質量部である。
該水硬性組成物について、圧縮強度と砒素の溶出量を実施例1と同様にして測定した。
その結果、3日の圧縮強度は30.5(N/mm2)、7日の圧縮強度は46.1(N/mm2)、28日の圧縮強度は61.2(N/mm2)で、砒素の溶出量は0.004(mg/L)であった。
上記のように、本発明の水硬性組成物では、砒素含有量が多くてもモルタルからの砒素の溶出を抑制できることがわかる。従って、本発明の水硬性組成物では、砒素を含有する廃棄物や砒素汚染土壌等を原料として大量に使用することができる。
なお、本発明の水硬性組成物を使用したモルタルでは、強度発現性も良好であった。

Claims (2)

  1. 水硬率(H.M.)が1.8〜2.3、ケイ酸率(S.M.)が1.0〜2.3、鉄率(I.M.)が1.3〜2.8で、砒素の含有量が350〜500(mg/kg)である焼成物の粉砕物と、石膏を含むことを特徴とする水硬性組成物。
  2. 水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合が40質量%以上であり、かつ、2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合がSO3換算で30質量%以上である請求項1記載の水硬性組成物。
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