JP4166180B2 - コンクリート - Google Patents

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Description

本発明は、構成材料に廃棄物や廃棄物を起源とする材料を多量に使用したコンクリートに関するものである。なお、本発明では、モルタルを含めてコンクリートという。
近年、資源の有効利用の観点から、種々の廃棄物がコンクリート用材料として利用されている。例えば、ゴミ焼却場、火力発電所、下水処理場等から排出する焼却灰を溶融して得られるスラグや、碍子屑、陶磁器廃材、廃レンガ、クリンカーアッシュを細骨材あるいは粗骨材として用いたコンクリートが知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2)。
コンクリート工学、Vol.34、No.2、72-79頁、(1996) セメント・コンクリート論文集、No.52、274-278頁、(1998)
しかし、上記のように廃棄物を細骨材あるいは粗骨材として使用したコンクリートでは、砂、砂利等の通常の骨材を用いたコンクリートに比べて強度発現性が低下するという欠点があった。このように、廃棄物を使用したコンクリートでは、廃棄物の使用原単位の増加により、強度発現性の低下を生じる傾向が認められるため、廃棄物の使用量を増加することが困難であった。
本発明は、上記従来技術の問題点、知見に鑑みなされたものであって、その目的は、廃棄物や廃棄物を起源とする材料を多量に使用しながらも、強度発現性の低下が少ないコンクリートを提供することにある。
本発明者らは、廃棄物や廃棄物を起源とする材料を多量に使用しながらも、強度発現性の低下が少ないコンクリートについて鋭意研究した結果、特定の水硬率、ケイ酸率および鉄率を有する焼成物から製造される水硬性組成物を使用することにより、上記課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として製造した水硬率(H.M.)が2.1〜2.16、ケイ酸率(S.M.)が1.3〜2.3、鉄率(I.M.)が1.3〜2.8である焼成物の粉砕物100質量部と、SO 3 換算で1〜5質量部の石膏とからなる水硬性組成物を用い、骨材の一部または全部に廃棄物を用いたコンクリートであって、骨材の最大粒径が20mm以下で、水硬性組成物中の全SO 3 に対する2水石膏及び半水石膏中のSO 3 の割合が40質量%以上であり、かつ、2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合がSO 3 換算で60質量%以上であることを特徴とするコンクリートである(請求項1)。このような構成のコンクリートであれば、廃棄物を多量に使用しながらも、強度発現性の低下が少ないコンクリートとすることができる。
骨材として使用する廃棄物としては、都市ゴミ、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を溶融して製造した溶融スラグ、あるいは高炉スラグ、製鋼スラグ、銅スラグ、碍子屑、ガラスカレット、陶磁器廃材、クリンカーアッシュ、廃レンガ、コンクリート廃材から選ばれる一種以上のものを使用することができる(請求項2)。
本発明においては、水硬性組成物中の2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合は、SO3換算で60質量%以上であることが好ましい。半水石膏の割合を高めることによって、コンクリートの流動性の向上を図ることができる。また、発熱量を低減することもできる。また、本発明においては、水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合は、40質量%以上であることが好ましい。水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合を高めることによって、コンクリートの流動性の向上を図ることができる。また、発熱量を低減することもできる。
本発明のコンクリートは、強度発現性が良好であるので、廃棄物や廃棄物を起源とする材料を多量に用いることができ、産業廃棄物等の有効利用をより促進させることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する焼成物は、水硬率(H.M.)が2.1〜2.16、ケイ酸率(S.M.)が1.3〜2.3、鉄率(I.M.)が1.3〜2.8のものである。
焼成物の水硬率(H.M.)が小さくなると、該焼成物中の3CaO・SiO2(以降、C3Sと略す)の含有量が少なくなり、コンクリートの初期強度発現性が低下する。また、該焼成物中の3CaO・Al2O3(以降、C3Aと略す)と4CaO・Al2O3・Fe2O3(以降、C4AFと略す)の含有量が多くなり、該焼成物から製造された水硬性組成物を使用したコンクリートの流動性が低下する傾向にある。また、焼成物の焼成も困難となる。一方、水硬率(H.M.)が大きくなると、コンクリートの初期強度発現性は向上するが、長期強度の伸びが鈍くなる傾向にある。また、水和熱が大きくなり、コンクリートの断熱温度上昇が高くなる傾向にある。そのため、水硬率(H.M.)は1.8〜2.3が好ましい。
焼成物のケイ酸率(S.M.)が小さくなると、該焼成物中のC3AとC4AFの含有量が多くなり、該焼成物から製造された水硬性組成物を使用したコンクリートの流動性が低下する傾向にある。また、焼成物の焼成も困難となる。一方、ケイ酸率(S.M.)が大きくなると、コンクリートの流動性面では好ましいが、C3AとC4AFの含有量が少なくなり、焼成物の焼成が困難になる。そのため、ケイ酸率(S.M.)は1.3〜2.3が好ましい。
焼成物の鉄率(I.M.)が小さくなると、コンクリートの流動性面では好ましいが、焼成物の粉砕性が低下する。また、コンクリートの凝結が遅くなる、初期強度発現性が低下する傾向にある。一方、鉄率(I.M.)が大きくなると、焼成物中のC3Aの含有量が多くなり、コンクリートの流動性が低下する傾向にある。そのため、鉄率(I.M.)は1.3〜2.8が好ましい。
焼成物の原料としては、一般のポルトランドセメントクリンカー原料、すなわち石灰石、生石灰、消石灰等のCaO原料、珪石、粘土等のSiO2原料、粘土等のAl2O3原料、鉄滓、鉄ケーキ等のFe2O3原料を使用することができる。
なお、本発明においては、焼成物の原料として、前記原料に加えて、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を使用することができる。焼成物の原料として、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上のものを使用することは、該焼成物自体も廃棄物を起源とする材料となり廃棄物の有効利用をより促進させることができ好ましいことである。ここで、産業廃棄物としては、例えば、石炭灰、生コンスラッジ、各種汚泥(例えば、下水汚泥、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥等)、ボーリング廃土、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉2次灰、建設廃材、コンクリート廃材等が挙げられる。一般廃棄物としては、例えば、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等が挙げられる。建設発生土としては、建設現場や工事現場等から発生する土壌や残土、さらには廃土壌等が挙げられる。
上記各原料を所定のH.M.、S.M.、I.M.となるように混合し、好ましくは1200〜1550℃で焼成することにより、焼成物が製造される。より好ましい焼成温度は1350〜1450℃である。
各原料を混合する方法は、特に限定するものではなく、慣用の装置等で行えばよい。
また、焼成に使用する装置も特に限定するものではなく、例えば、ロータリーキルン等を使用することができる。ロータリーキルンで焼成する際には、燃料代替廃棄物、例えば、廃油、廃タイヤ、廃プラスチック等を使用することができる。
なお、本発明で使用する焼成物においては、コンクリートの強度発現性、特に初期強度発現性を向上させる観点から、フリーライム量が0.5〜1.0質量%であることが好ましい。
石膏としては、ニ水石膏、α型又はβ型半水石膏、無水石膏等を単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明においては、水硬性組成物中の2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合は、SO3換算で30質量%以上であることが好ましい。水硬性組成物中の2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合をSO3換算で30質量%以上にすることにより、コンクリートの流動性の向上や、発熱量の低減等を図ることができる。2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏のより好ましい割合は、SO3換算で60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。
また、本発明においては、水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合が40質量%以上であることが好ましい。水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3の割合を40質量%以上にすることにより、コンクリートの流動性の向上や、発熱量の低減等を図ることができる。水硬性組成物中の全SO3に対する2水石膏及び半水石膏中のSO3のより好ましい割合は、50〜95質量%であり、特に好ましくは60〜90質量%である。
なお、2水石膏・半水石膏の定量は、特開平6-242035号公報に記載される試料容器を使用した熱分析(熱重量測定等)により行うことができる。また、水硬性組成物中の全SO3量の定量は、化学分析により行うことができる。
水硬性組成物中の石膏量は、コンクリートの流動性や強度発現性等から、焼成物の粉砕物100質量部に対して、SO3換算で1〜5質量部であることが好ましく、2〜3.5質量部であることがより好ましい。
水硬性組成物の製造方法について説明する。
水硬性組成物の製造方法としては、例えば、
1)焼成物と石膏を同時に粉砕する方法、
2)焼成物を粉砕し、該粉砕物に、石膏を混合する方法、
等が挙げられる。
上記1)の場合は、焼成物と石膏はブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。
上記2)の場合は、焼成物はブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。また、石膏としてはブレーン比表面積2500〜5000cm2/gのものを使用するのが好ましく、3000〜4500cm2/gのものを使用するのがより好ましい。
なお、本発明において、水硬性組成物のブレーン比表面積は、コンクリートの流動性や強度発現性等から、2500〜4500cm2/gであることが好ましく、3000〜4500cm2/gであることがより好ましい。
本発明のコンクリートは、上記水硬性組成物を使用し、骨材の一部または全部に廃棄物を使用したものである。ここで骨材として使用する廃棄物としては、例えば、都市ゴミ、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を溶融して製造した溶融スラグ、あるいは高炉スラグ、製鋼スラグ、銅スラグ、碍子屑、ガラスカレット、陶磁器廃材、クリンカーアッシュ、廃レンガ、コンクリート廃材等が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、ニ種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、溶融スラグは、冷却の方法によって水砕スラグと空冷スラグの2種があるが、本発明では両者とも使用可能である。
本発明においては、骨材として用いる廃棄物は、その最大粒径が80mm以下であり、コンクリートの流動性や強度発現性等から、最大粒径が20mm以下であることが好ましい。廃棄物の最大粒径が80mmを越えると、コンクリートの流動性や強度発現性が低下し好ましくない。
本発明のコンクリートにおいては、廃棄物の有効利用の促進や、コンクリートの作業性や強度発現性等から、骨材として用いる廃棄物は、コンクリートの全骨材中の5〜100質量%であることが好ましい。
廃棄物以外の骨材としては、川砂、砕砂等の細骨材や、砂利、砕石等の粗骨材を使用することができる。
本発明においては、前記水硬性組成物と骨材に加えて、高炉スラグ粉末、石炭灰、鋳物粉末から選ばれる一種以上の混和材を用いることは、廃棄物の使用割合を高めることができるうえ、強度発現性も向上するので好ましいことである。
混和材のブレーン比表面積は、コンクリートの作業性や強度発現性等の観点から、1000〜10000cm2/gが好ましく、2000〜8000cm2/gがより好ましい。
本発明においては、水は、水道水やコンクリートスラッジからの回収水等を用いることができる。
なお、本発明においては、コンクリートの流動性や強度発現性等から、減水剤を使用することは差し支えない。減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤(AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤も含む)が挙げられる。
なお、減水剤は、液状又は粉末状どちらでも使用可能である。
本発明のコンクリートの混練方法は、特に限定するものではなく、例えば、1)各材料を一括してミキサに投入して1分以上混練する方法、2)水以外の材料をミキサに投入して空練りした後に、水を投入して1分以上混練する方法等で行うことができる。混練に用いるミキサは、特に限定するものではなく、パンタイプミキサ、二軸ミキサ等の慣用のミキサで混練すれば良い。
本発明のコンクリートの成形方法は、特に限定するものではなく、例えば、振動成形等を行えば良い。
また、養生条件も、特に限定するものではない。
以下、実施例により本発明を説明する。
1.焼成物の製造
原料として、下水汚泥、建設発生土と、石灰石等の一般のポルトランドセメントクリンカー原料を使用して、表1に示す水硬率(H.M.)、ケイ酸率(S.M.)および鉄率(I.M.)となるように原料を調合した。調合原料を小型ロータリーキルンで1400〜1450℃で焼成して、焼成物を製造した。この際、燃料として一般的な重油のほかに、廃油や廃プラスチックを使用した。使用した下水汚泥、建設発生土の化学組成(質量%)は、表2に示すとおりである。
なお、各焼成物中のフリーライム量は0.6〜1.0質量%であった。
Figure 0004166180
Figure 0004166180
2.水硬性組成物の調製
表1の各焼成物100質量部に対して、排脱ニ水石膏(住友金属社製)を140℃で加熱して得た半水石膏をSO3換算で3.0質量部となるように添加し、バッチ式ボールミルでブレーン比表面積が3250±50cm2/gとなるように同時粉砕して、水硬性組成物を調製した。
3.コンクリート用材料
水硬性組成物以外の材料を以下に示す。
1)細骨材;下水汚泥溶融スラグ(最大粒径5mm以下、粗粒率3.18)
2)粗骨材;砕石2005
3)水;水道水
4)減水剤;リグニンポリオール系AE減水剤(「ポゾリスNo.70N」)
4.コンクリートの製造および評価
水硬性組成物および上記各材料を表3に示す配合で混練し、コンクリートを製造した(スランプ12cm程度)。得られたコンクリートについて、圧縮強度(3日、7日および28日)を「JIS A 1108(コンクリートの圧縮試験方法)」に準じて測定した。
その結果を表4に示す。
Figure 0004166180
Figure 0004166180
表4より、本発明のコンクリート(実施例1〜3)では、廃棄物や廃棄物を起源とする材料を多量に使用しているにもかかわらず強度発現性が良好であることが分かる。
5.水硬性組成物の調製
表1の焼成物(No.3)100質量部に対して、排脱ニ水石膏(住友金属社製)及び前記排脱ニ水石膏を140℃で加熱して得た半水石膏を表5に示す量添加し、バッチ式ボールミルでブレーン比表面積が3250±50cm2/gとなるように同時粉砕して、粉砕物を調製した。
Figure 0004166180
6.モルタル用材料
水硬性組成物以外の材料を以下に示す。
1)細骨材;下水汚泥溶融スラグ(最大粒径5mm以下、粗粒率3.18)
2)減水剤;ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(エヌエムビー社製「レオビルドSP8N」)
3)水;水道水
7.ミルタルの製造および評価
上記5の水硬性組成物および6の各材料を用いてモルタルを混練し、混練直後のモルタルをフローコーン(上面直径5cm、下面直径10cm、高さ15cm)に投入し、フローコーンを上方へ取り去った際のモルタルの広がりを測定し、フロー値を求めた。なお、モルタルの配合は、水/水硬性組成物(質量)比=0.35、細骨材/水硬性組成物(質量)比=2.0、減水剤/水硬性組成物(質量)比=0.0065とした。
その結果を表6に示す。
Figure 0004166180
表6より、2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合が高いほど、モルタルの流動性が大きくなることが分かる。

Claims (2)

  1. 産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として製造した水硬率(H.M.)が2.1〜2.16、ケイ酸率(S.M.)が1.3〜2.3、鉄率(I.M.)が1.3〜2.8である焼成物の粉砕物100質量部と、SO 3 換算で1〜5質量部の石膏とからなる水硬性組成物を用い、骨材の一部または全部に廃棄物を用いたコンクリートであって、
    骨材の最大粒径が20mm以下で、
    水硬性組成物中の全SO 3 に対する2水石膏及び半水石膏中のSO 3 の割合が40質量%以上であり、かつ、2水石膏及び半水石膏の合量に対する半水石膏の割合がSO 3 換算で60質量%以上であることを特徴とするコンクリート。
  2. 骨材として使用する廃棄物が、都市ゴミ、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を溶融して製造した溶融スラグ、あるいは高炉スラグ、製鋼スラグ、銅スラグ、碍子屑、ガラスカレット、陶磁器廃材、クリンカーアッシュ、廃レンガ、コンクリート廃材から選ばれる一種以上である請求項1記載のコンクリート。
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